説明

発光素子及び発光素子の製造方法

【課題】本発明は、チップに付着及び堆積する汚染物質を低減して発光素子の長寿命化及び動作の安定化を図るとともに、気密封止する構成を必要としない、または、厳密な制御を伴わず容易に気密封止することのできる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】光吸収膜5がレーザチップ1の光出射側の最表面に形成される。光吸収膜5は、酸素欠損膜又は酸化パラジウムを備えるとともに、光が通過する位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び発光素子の製造方法に関するものであり、特に、窒化物系半導体を用いたレーザ素子に代表される発光波長の短い半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族元素のAl、Ga、In等と、V族元素のNとの化合物である窒化物系半導体(例えば、AlN、GaN、InNなど、またこれらの固溶体であるAlGaN、InGaNなどを含む。なお、本願においてはこれらをまとめて窒化物系半導体と表現する)は、そのバンド構造や化学的安定性から、発光素子やパワーデバイス用の材料としての応用が期待されており、情報記録装置用の光源にもこの窒化物系半導体を適用することが注目されている。
【0003】
このような窒化物系半導体を用いたレーザ素子に備えられるレーザチップは、基板上に窒化物系半導体の各層や電極などを積層して得られるウエハを劈開や分割等することによって得られる。そして、このウエハを劈開することによって得られる端面、特に光出射側の端面には、出射される光に対して透明な物質(例えば、SiO2やAl23など)から成る単層あるいはこれらを組み合わせた少数の層による保護膜(低反射膜)が形成される。一方、光出射側の端面と反対側の端面には、Al23およびTa25などを多層に積層するなどした反射率の大きな保護膜(高反射膜)が形成される。このように保護膜を形成することで、反射率を調整して効率よく光を出射させたり、酸化などの化学反応により端面が変質することを防止したりする。
【0004】
また、このような保護膜の上から汚染物質が付着及び堆積する問題があり、特に500nm以下の短波長の光を出射する発光素子においてこの問題が顕著となっている。これは、チップから出射される短波長の光によって、発光素子が備えるチップの近傍に存在するSiとOの結合を有するシロキサンや、炭化水素化合物などが重合されて付着、体積するためであり、短波長の光を出射する上述の窒化物系半導体を用いた発光素子においても問題となっている。
【0005】
このチップに汚染物質が付着及び堆積する問題について図9のレーザチップの模式的な側面図を用いて説明する。図9に示すレーザチップ100は、保護膜として上述した低反射膜101と、高反射膜102と、を備えており、レーザチップ100の光出射側の端面において活性層103から出射された光は、低反射膜102を透過して破線で示すように端面から略垂直な方向に出射される。このとき、出射される光に反応した汚染物質104が低反射膜上に付着及び堆積してしまい、出射される光を吸収する。すると、駆動電流を大きくして光の出射量を維持する必要が生じ、このような駆動電流の増大によって素子寿命の悪化や発光素子の動作の不安定化が招来される。
【0006】
この具体例として、図9に示したレーザチップ100を備えたレーザ素子の動作試験の結果を図10に示す。また、図10は、発振波長が405nmのレーザ素子を光出力が15mW、温度が75℃でそれぞれ一定となるように駆動電流を制御して連続発振させたグラフである。図10に示すように、発振開始後から徐々に大気中の汚染物質104が付着及び堆積して厚くなっていくために、駆動時間の経過とともに駆動電流が増大している。具体的には、動作開始直後の電流値は60mA程度となっているが、500時間駆動させたときの電流値は倍以上の150mA程度まで増大している。また、駆動電流が数10mA単位で上下に変動し、動作が不安定なものとなっている。
【0007】
この問題を防ぐために、例えばキャンパッケージのように、チップをキャップによって気密封止するとともに、気密封止する雰囲気を制御して汚染物質の混入を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、気密封止する前にプラズマによりクリーニングを行って汚染物質を除去する方法や、汚染物質を吸着させる吸着部材を気密封止したパッケージ内に備えることによって汚染物質を除去する方法が提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−289010号公報
【特許文献2】特開2004−040051号公報
【特許文献3】特開2004−014820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの方法では、気密封止する雰囲気を厳密に制御する必要がある上に気密封止する構成が必要となるため、発光素子が巨大化する問題がある。そして、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)の光ピックアップに代表される情報記録装置用の光源に適用しようとすると、その発光素子の大きさゆえに適応することが困難となってしまう。また、発光素子の構成を、気密封止することのないフレームパッケージなどにすれば光ピックアップに適用することが容易となるが、使用時間の経過とともに図1に示すような汚染物質104が付着及び堆積していくために、素子寿命が悪化したり動作が不安定となったりする問題が生じてしまう。
【0010】
また、チップを気密封止するタイプのパッケージを採用したとしても、パッケージ内でAgペーストやシリコーン系、エポキシ系などの有機系の接着剤を使用する必要があるために、これらの接着剤の成分が揮発して汚染物質となってしまう。これについては、例えば、気密封止前にプラズマ等を照射して汚染物質を除去したり、気密封止を露点−15℃以下の乾燥空気中で行い汚染物質の混入を抑制したりすることによって、汚染物質の付着及び堆積をある程度防ぐことができるが、プラズマ照射や封止雰囲気の厳密な管理などを行う必要があるために製造工程が煩雑化する。さらに、素子が動作する際の熱によって事後的に汚染物質が封止雰囲気中に揮発することもあるため、汚染物質の付着及び堆積を完全に防ぐことは困難となる。また、確実に気密封止できたか否かを確認する工程が必要となるとともに、確実な気密封止ができていない発光素子は廃棄せざるを得ないため、歩留まりも低下する。
【0011】
そこで、本発明は、チップに付着及び堆積する汚染物質を低減して発光素子の長寿命化及び動作の安定化を図るとともに、気密封止する構成を必要としない、または、厳密な制御を伴わず容易に気密封止することのできる発光素子及び発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の発光素子は、光を出射するチップを備えた発光素子において、前記チップの光が出射される端面上の最表面に、出射される光の一部を吸収する光吸収膜を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記の発光素子において、前記チップが、当該チップの光が出射される端面に形成されるとともに当該端面を保護する保護膜を備え、前記光吸収膜が、当該保護膜の表面に形成されることとしても構わない。
【0014】
また、上記の発光素子において、前記保護膜が、アルミニウム、チタン、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム及びタンタルの群から選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物より成る酸化物膜を備えることとしても構わない。
【0015】
また、上記の発光素子において、前記保護膜が、アルミニウムの窒化物、ケイ素の窒化物、アルミニウムの酸窒化物、ケイ素の酸窒化物の少なくとも一つの化合物を含む膜を備えることとしても構わない。また、アルミニウムの窒化物またはアルミニウムの酸窒化物を、前記チップの端面に形成することとしても構わない。
【0016】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜が、金属から成る金属膜を備えることとしても構わなく、前記金属膜が、金、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムの群より選ばれた、少なくとも一つの元素を含むこととしても構わない。さらに、前記金属膜は、二つ以上の金属元素を組み合わせてなる合金膜であっても構わないし、複数の金属膜を重ねて成る複合膜であっても構わない。
【0017】
また、上記の発光素子において、前記複合膜の最表面が、金、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムの群より選ばれた少なくとも一つの元素を含む膜より成ることとしても構わない。これらの膜は、汚染物質の一つであるSi系の物質の付着係数が低いため、汚染物質の付着を抑制することができる。
【0018】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜が、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム、タングステン及びタンタルの群より選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物より成り、化学量論的組成よりも酸素が少ない組成である酸素欠損膜を、備えることとしても構わない。
【0019】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜が、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム、タングステン及びタンタルの群より選ばれた少なくとも一つの元素を含む窒化物より成る窒化膜を備えることとしても構わない。
【0020】
このように構成することで、アルミニウムの窒化物やアルミニウムの酸窒化物がチップの端面に密着性よく密着するため、保護膜が剥がれることを抑制し、歩留まりを改善することができる。また、端面の変質を防ぐことが可能となり、それによる端面の破断を防ぐことができる。さらに、熱膨張係数が小さく吸湿性のよいケイ素の窒化物やケイ素の酸窒化物を備えることによって、一定の光出力で動作させた時の駆動電流の上昇を防ぐことができる。
【0021】
また、上記の発光素子において、前記チップが、レーザ光を出射するレーザチップであることとしても構わない。
【0022】
また、上記の発光素子において、前記発光素子が、前記チップを気密封止しない構成であることとしても構わなく、フレームパッケージに前記チップを備えた構成であることとしても構わない。
【0023】
また、上記の発光素子において、前記発光素子が、HHLパッケージに前記チップを気密封止して備えることとしても構わないし、キャンパッケージに前記チップを気密封止して備えることとしても構わない。
【0024】
また、上記の発光素子において、前記発光素子が、有機物を含む接着剤とともに前記チップを気密封止して備えることとしても構わない。
【0025】
また、上記の発光素子において、前記チップが、窒化物系半導体から成る層を備えるものであることとしても構わない。
【0026】
また、本発明における発光素子の製造方法は、レーザ光を出射するレーザチップを備えた発光素子の製造方法において、前記レーザチップのレーザ光を出射する端面となる部分に当該端面を保護する保護膜を形成する第一工程と、当該第一工程の後に、前記保護膜の表面に前記レーザチップから出射されるレーザ光の一部を吸収する光吸収膜を形成する第二工程と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、上記の発光素子の製造方法において、前記レーザチップを、気密封止することなく実装する第三工程をさらに備えることとしても構わない。
【0028】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜が金属から成り、前記光吸収膜の少なくとも一部が、領域内の厚さが不均一となる不均一領域であるとともに、前記チップから出射される光の少なくとも一部が、前記不均一領域の少なくとも一部を通過して出射されることとしても構わない。
【0029】
このように構成することで、不均一領域中の光吸収膜の薄い部分において、効率よく光を通過させることが可能となる。即ち、光吸収膜を部分的に薄くすることで光吸収を抑制してスロープ効率を向上させ、駆動電流を低減することが可能となる。一方、光吸収膜は部分的に薄くなるものであるため、厚い部分も備えられることとなる。そのため、光吸収膜を備える効果、即ち汚染物質の付着及び堆積を抑制する効果が損なわれることを防ぐことができる。
【0030】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜の前記不均一領域が、前記光吸収膜が不連続となる不連続領域であることとしても構わない。
【0031】
このように構成することで、不連続となる、即ち、厚さが0となる部分が不均一領域に含まれることとなる。したがって、さらに効率よく光を出射させることが可能となる。
【0032】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜の前記不連続領域が、前記光吸収膜を成す前記金属から成る粒を備えた領域であることとしても構わない。
【0033】
このように構成することで、光吸収膜を成す金属を凝集させて粒状化することにより、不連続領域を形成することが可能となる。即ち、光吸収膜を成す金属を凝集させるだけで、容易に不連続領域を備える光吸収膜を形成することが可能となる。
【0034】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜の前記不均一領域が、前記光吸収膜を成す前記金属が連続した層と、当該層の表面に形成される前記金属から成る粒と、を備えた領域であることとしても構わない。
【0035】
このように連続した層が存在する構成としても、上述の不連続領域を備える場合と同様の効果を得ることができる。即ち、効率よく光を出射することが可能となる。
【0036】
また、上記の発光素子において、前記金属が、金、白金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム及びパラジウムの群より選ばれた、少なくとも一つの元素を含むこととしても構わない。
【0037】
また、上記の発光素子において、前記光吸収膜が、酸化パラジウムからなることとしても構わない。
【0038】
また、上記の発光素子において、前記発光素子が、前記チップを気密封止しない構成であることとしても構わないし、前記発光素子が、フレームパッケージに前記チップを備えた構成であることとしても構わない。
【0039】
また、本発明の発光素子は、光を出射するチップを備えた発光素子において、前記チップの光が出射される端面上の最表面に、金属から成る金属膜を備えることを特徴とする。
【0040】
また、上記の発光素子において、前記金属膜の少なくとも一部の領域が、前記金属膜を成す前記金属が粒状となる領域であることとしても構わないし、前記金属膜が、連続した層であることとしても構わない。
【発明の効果】
【0041】
本発明の構成によれば、光を出射する端面上に出射される光の一部を吸収する光吸収膜を形成することとしているため、光吸収膜の上、即ち、発光素子の光を出射する端面上に汚染物質が付着及び堆積することを抑制することができる。そのため、このような汚染物質が付着及び堆積することによって、出射される光の光出力が低減されることを防ぐことができる。また、光出力を保つために駆動電流を増加させる必要がなくなるため、発光素子の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】は、本発明の実施形態におけるレーザチップの模式的な側面図である。
【図2】は、本発明の実施形態におけるレーザ素子の動作試験の結果を示すグラフである。
【図3】は、AlN膜を備えたレーザチップの模式的な側面図である。
【図4】は、図3に示すレーザチップを備えたレーザ素子の動作試験の結果を示すグラフである。
【図5】は、本発明の第一実施例におけるレーザチップの模式的な斜視図及び側面図である。
【図6】は、本発明の第一実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。
【図7】は、本発明の第二実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。
【図8】は、本発明の第三実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。
【図9】は、従来のレーザチップの模式的な側面図である。
【図10】は、従来のレーザ素子の動作試験の結果を示すグラフである。
【図11】は、本発明の第十三実施例におけるレーザチップの模式的な斜視図である。
【図12】は、本発明の第十三実施例におけるレーザチップの断面を示した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明における実施形態について図1〜図8に基づき説明する。まず、本発明の基本構成について説明し、その後に各種実施例について説明する。
【0044】
<<基本構成>>
本発明の基本構成について、まず図1を用いて説明する。図1は、本発明におけるレーザチップの構成の一例を示す模式的な側面図であり、従来のレーザチップの構成について示した図9に相当するものである。
【0045】
図1に示すように、本発明では、活性層2よりレーザ光が出射されるレーザチップ1の光出射側の端面に低反射膜3、光出射側の端面と反対側の端面に高反射膜4を形成しており、特に光出射側の端面に形成される低反射膜3の表面に光吸収膜5を形成している。従来、光出射側の端面には出射される光の量を低減しないように出射される光に対して透明な材料のみを用いて低反射膜3を形成していたが、本発明では敢えてその低反射膜3の表面に、出射される光に対して透明ではない材料から成る光吸収膜5を形成することとする。
【0046】
光吸収膜5としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)などを含んだ金属膜や、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、タンタル(Ta)などの窒化物を含んだ窒化物膜、さらには、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、タンタル(Ta)などの酸化物であるとともに化学量論的組成から酸素が少なくなる方向に組成がずれている酸素欠損膜などを用いることが可能である。
【0047】
次に、光吸収膜5を形成したレーザチップを備えたレーザ素子の動作の一例について、図2を用いて説明する。図2は、図1の構成のレーザチップ1を備えたレーザ素子の動作試験の結果を示すグラフであり、従来のレーザ素子の動作試験の結果について示した図10に相当するものである。また、図2は、発振波長が405nmのレーザ素子を光出力が20mW、温度が75℃でそれぞれ一定となるように駆動電流を制御するとともに、レーザチップ1の気密封止を行わず、大気雰囲気中において連続発振させた場合のグラフである。
【0048】
図2に示すように、本発明における光吸収膜5を低反射膜3の表面に形成することによって、駆動時間の経過に伴う駆動電流の上昇を抑制することが可能となるとともに、駆動電流を安定化させることが可能となる。本例の場合では、光出力を図10の場合における15mWよりも増大させて汚染物質が反応しやすい条件としているにもかかわらず、駆動電流が発振開始後からほぼ変動せず、80mA程度の一定かつ安定した値となっている。
【0049】
これは、出射された光の一部が光吸収膜5で吸収されることで発生した熱によって、付着した汚染物質を再蒸発させられる、または、汚染物質の付着自体が防がれるために、汚染物質の付着及び堆積が抑制されているものと考えられる。そして、汚染物質の付着及び堆積を抑制することによって、長時間レーザ素子を駆動させても発光量の低下に伴う駆動電流の上昇を防ぐことが可能となり、レーザ素子の長寿命化を図ることができる。
【0050】
また、本発明による光吸収膜5をレーザチップ1に形成することによって、レーザチップ1の気密封止を行うことなく種々のパッケージに実装しても、駆動時間の経過に伴う駆動電流の増加を抑制することができる。そして、短波長の光を発するレーザ素子においても気密封止を行わないパッケージを採用することが可能となり、レーザ素子の小型化を図ることができる。また、気密封止が必要なパッケージを採用することとしても、露点などの厳密な封止条件の制御を行う必要がなくなるため、容易にレーザ素子を作製することができる。
【0051】
なお、これらの光吸収膜5を形成したチップの具体的な構成例や効果については後述する実施例において詳細に説明する。また、上述した光吸収膜5の材料は一例であり、これ以外の材料であっても光吸収膜5として使用することが可能である。また、光吸収膜5を多層膜としても構わない。
【0052】
また、本発明は短波長の光を発する発光素子全般に適用可能であり、レーザチップ1の他に、例えば発光ダイオードやスーパールミネッセンスダイオードなどの発光素子のチップに適用することとしても構わない。さらに、レーザチップに適用する場合においても、上述したようなレーザチップの端面(基板の各層を成長させる成長面に対して垂直な面)から光を出射する端面発光型のレーザチップにのみ適用するだけではなく、チップの端面と垂直な面(基板の各層を成長させる面と平行な面)から光を出射する面発光型のレーザチップにも適用することとしても構わない。いずれのチップに適用する場合も、光が出射される端面の最表面に光吸収膜5を形成することで、最表面に汚染物質が付着及び堆積することを防ぐことが可能となる。
【0053】
また、複数の素子を組み合わせて成る素子に含まれる、短波長の光を出力するチップにも適用することが可能である。例えば、ホログラム素子や受光素子などの光学素子とともにレーザチップを備えるホログラムレーザや、短波長の光を発するチップと蛍光板とから成り白色のような複数の波長が混在した光を出力する発光素子などに備えられるチップに適用することとしても構わない。
【0054】
また、短波長の光を発する材料から成る発光素子であれば、窒化物系半導体に限らず適用することが可能である。例えば、ZnSe系や、ZnO系などの材料から成る発光素子に本発明を適用することとしても構わない。
【0055】
また、端面に直接AlN膜などの六方晶系の半導体膜を形成することとしても構わない。このように構成することによって、保護膜を密着させ剥がれを防止する 効果や、保護膜が密着することによって端面がより強固に保護されるために特に高出力としたときに動作が安定する効果、を得ることができる。この効果について、図4のグラフを用いて説明する。図4は、図3に示すようなAlN膜32を光出射側の端面に形成してその上にAl23から成る低反射膜33を形成した構成のレーザチップ30を備えたレーザ素子の動作試験の結果である。また、図4は、発振波長が437nmであるレーザ素子を光出力が15mW、温度が75℃でそれぞれ一定となるように駆動電流を制御するとともに、気密封止を行わず大気雰囲気中で連続発振させたグラフである。
【0056】
図4に示すように、AlN膜32を端面に形成したレーザチップ30は、光出力が15mWで駆動電流が150mAを越えるような場合でも、1000時間以上破壊が生じることなく安定して動作することが可能となる。ただし、図3に示すようにこのレーザチップ30には本発明の効果と区別するために図1に示す光吸収膜5を備えていない構成としているため、駆動時間の経過とともに駆動電流が上昇している。具体的には、発振開始から500時間で30mA程度も駆動電流が上昇している。しかしながら、図3に示した構成の低反射膜33の表面に本発明における光吸収膜5を形成することとすれば、図2に示したように、駆動時間の経過に伴う電流の上昇を防ぐことが可能となる。
【0057】
また、図1に示す高反射膜4の反射率を低下させることによってレーザチップ1の高反射膜4側からも少量の光を出力させ、その出力される少量の光に基づいた制御信号をフィードバックすることで駆動電流を制御するように発光素子を構成する場合において、光吸収膜5を高反射膜4の表面に形成することとしても構わない。
【0058】
このように構成することによって、汚染物質が高反射膜4の表面に付着及び堆積することを防止することができるために、制御信号を作成するための光の出力を正確なものとすることができる。そのため、高反射膜4側から出力される光が汚染物質の付着及び堆積によって弱くなったことを発光素子からの発光が弱くなったものと誤認し、不適正に大きな電流を発光素子に供給することを防ぐことが可能となる。
【0059】
また、金属膜を光吸収膜5として利用する場合において、端面に直接金属膜を形成してしまうと金属膜を介して電流がショートして活性層に電流が流れなくなるおそれがある。また、金属膜に限らず、光吸収膜5から発生した熱が端面に損傷を与える可能性があるため、端面近傍に光吸収膜5を形成することは好ましくない。さらに、汚染物質が付着する場所は保護膜3、4の表面であるため、端面近傍より保護膜の表面近傍に光吸収膜5を形成した方が、より汚染物質の付着及び堆積を防ぐことができるため好ましい。
【0060】
<<実施例>>
次に、上述した基本構成を備えた本発明の実施例について説明する。なお、以下に示す実施例はそれぞれ一例に過ぎず、上述したように光吸収膜をチップの光が出射される端面上の最表面に備える構成である限り、本発明はどのような構成であっても構わない。
【0061】
<第一実施例>
まず、第一実施例について図5を用いて説明する。図5は、第一実施例におけるレーザチップの構成の一例を示した模式的な斜視図及び側面図である。まず、図5(a)の斜視図に示すように、本実施例におけるレーザチップ10は、n型GaN基板11上に積層される厚さ0.2μmのn型GaNから成るバッファ層12と、バッファ層12上に積層される厚さ2.3μmのn型Al0.06Ga0.94Nから成るn型クラッド層13と、n型クラッド層13上に積層される厚さ20nmのn型GaNから成るn型ガイド層14と、n型ガイド層上に積層されるとともに厚さ4nmのInGaNと厚さ8nmのGaNとがGaN/InGaN/GaN/InGaN/GaN/InGaN/GaNと積層される多重量子井戸活性層15と、多重量子井戸活性層15上に積層される厚さ70nmのGaNから成る保護層16と、保護層16上に積層される厚さ20nmのp型Al0.3Ga0.7Nから成る電流ブロック層17と、電流ブロック層17上に積層されるとともに上部が所定の方向に延びたストライプ状となるp型Al0.05Ga0.95Nから成るp型クラッド層18と、p型クラッド層18のストライプ状となった部分の上に積層される厚さ0.1μmのp型GaNから成るp型コンタクト層19と、を備える。
【0062】
これらの層12〜19は、基板11上に順にエピタキシャル成長して成るものであり、p型クラッド層18の一部及びp型コンタクト層19より成るストライプ状のリッジストライプ20は、p型コンタクト層19まで順に各層12〜19をエピタキシャル成長させた後に、p型クラッド層18及びp型コンタクト層19をエッチングによって除去することで形成される。また、本例におけるレーザチップ10の発振波長は405nmであり、リッジストライプ20の幅は、1.2μm〜2.4μmの間の値、例えば、1.5μm程度の値である。なお、照明用などの用途に用いるブロードエリアレーザの場合は、リッジストライプ20の幅を3μm〜50μm程度としても構わない。また、図5(a)に示すように、メサ形のリッジストライプ20としても構わない。
【0063】
また、レーザチップ10は、リッジストライプ20の両側を埋めるように形成されるSiO2/TiO2から成る絶縁膜21と、リッジストライプ20及び絶縁膜上に形成されるPd/Mo/Auから成るp電極22と、基板11のバッファ層12が積層された面と反対側の面に形成されるHf/Alから成るn電極23と、を備える。
【0064】
また、後述するが、リッジストライプ20の延びる方向と略垂直の面(面A及び面B)には、保護膜と、保護膜上に形成される光吸収膜と、を備える。なお、本実施例では、面Aを光出射側の端面として図1に示したような低反射膜3及び光吸収膜5が形成されることとして、面Bには高反射膜4が形成されることとする。
【0065】
このようなレーザチップ10に備えられる窒化物半導体層12〜19の積層には、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いても構わないし、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法や、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法などの方法を用いることができる。また、絶縁膜21や保護膜3、4などの形成には、マグネトロンスパッタ法やECR(Electron Cyclotron Resonance)スパッタ法などの各種スパッタ法やPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。また、電極21、22などの金属膜の形成には、EB(Electron Beam)蒸着法や、抵抗加熱蒸着法などの各種蒸着法や、上述した各種スパッタ法を用いることができる。また、光吸収膜5の形成には、光吸収膜に用いられる材料の種類に応じて適宜これらの方法から選択して使用することとしても構わない。
【0066】
また、保護膜及び光吸収膜の構成について図5(b)の側面図に示す。図5(b)に示すように、低反射膜3として面Aから順に酸窒化アルミニウム(AlOx1-x(ただし、0<x<1とする))膜3a、窒化ケイ素(SiN)膜3b、酸化アルミニウム(Al23)膜3cが形成されており、AlOx1-x膜3aの厚さは20nm、SiN膜3bの厚さは200nm、Al23膜3cの厚さは140nmとなっている。また、光吸収膜5はパラジウム(Pd)より成り厚さは3.5nmとなっている。
【0067】
一方、高反射膜は、面Bから順にAlOx1-x膜4a、SiN膜4bを形成して、さらに酸化ケイ素(SiO2)膜4c及び酸化チタン(TiO2)膜4dを四組組み合わせた膜をSiO2膜4cから順に形成する。そして、四組目のTiO2膜4dの上にさらにSiO2膜4eを形成する。このとき、AlOx1-x膜4aの厚さは20nm、SiN膜4bの厚さは80nm、組になっているSiO2膜4cの厚さは71nm、TiO2膜4dの厚さは46nmであり、四組目のTiO2膜4dの上に形成されるSiO2膜4eの厚さは142nmとなっている。
【0068】
ここで、上述した保護膜3、4及び光吸収膜5の形成方法の一例について、保護膜3、4の形成にECRスパッタ法を用い、光吸収膜5の形成にEB蒸着法を用いた場合を例に挙げて説明する。まず、光出射側の端面において低反射膜3を形成するために、ウエハを劈開することによって得られるバーを、ECRスパッタ装置の成膜室に挿入する。ここでバーとは、図5に示したレーザチップの複数が一体となって接続されている状態を表しており、複数のレーザチップ10が面A及び面Bを揃えるようにして、リッジの延びる方向と略垂直な方向に一列に複数接続しているものを表すこととする。そして、このバーを図5に示すレーザチップ10毎に分割することで、レーザチップ10が得られる。なお、保護膜を形成する前にレーザチップ10毎に分割することとしても構わない。
【0069】
ECRスパッタ装置へバーを挿入すると、次に窒素ガスを5.2ccmの流量で導入し、酸素ガスも0.1ccmの流量で導入する。そして、プラズマを発生させるためにアルゴンガスを20.0ccmの流量で導入する。また、Alターゲットに500WのRF(Radio Frequency)パワーを印加し、アルゴンプラズマの発生のためにマイクロ波パワーを500W印加して、AlOx1-x膜3aを形成する。なお、xについては窒素ガス及び酸素ガスの流量を適宜変更することで制御することができる。
【0070】
次に、ターゲットをSiに切り替えるとともに、窒素ガスを5ccm流してSiN3b膜を形成する。そして、再度ターゲットをAlに切り替えるとともに酸素ガスを5.8ccm流してAl23膜3cを形成する。なお、このときもアルゴンガスを20.0ccm流しており、Si、Alターゲットには500WのRFパワーを印加し、アルゴンプラズマの発生のためにマイクロ波パワーを500W印加する。
【0071】
そして、低反射膜3が形成されたバーをECRスパッタ装置から取り出し、EB蒸着装置にて150℃程度の温度でPdから成る光吸収膜5を形成する。なお、EB蒸着装置を用いずに、ECRスパッタ装置を用いて低反射膜3の形成に対して連続的に光吸収膜5を形成することとしても構わない。
【0072】
また、高反射膜4の形成も同様に行い、ECRスパッタ装置を用いて順に、AlOx1-x膜4a、SiN膜4b、SiO2膜4c及びTiO2膜4dの組み合わせを4組、SiO2膜4e、を順に形成する。そして、保護膜3、4及び光吸収膜5が形成されたバーを分割することで、図5に示すようなレーザチップ10が得られる。
【0073】
次に、得られたレーザチップ10を実装したレーザ素子の一例について説明する。本実施例では、気密封止を行わないフレームパッケージに実装する場合について図6を用いて説明する。図6は、本実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。
【0074】
図6に示すように、本実施例におけるレーザ素子60は、レーザチップ10と、レーザチップ10が固着されるサブマウント61と、サブマウント61が固着されるフレーム62と、フレーム62と一体となりフレーム62の両端に備えられる放熱フィン63と、レーザチップ10に電力を供給するためのリードピン64と、リードピン64a〜cとフレーム62とを一体として保持する樹脂モールド65と、を備えている。
【0075】
サブマウント61、フレーム62及び放熱フィン63は銅や鉄などの金属材料より成っており、レーザチップ10で発生した熱はサブマウント61を介してフレーム62や放熱フィンに伝達され、放熱される構成となっている。また、本実施例では三つのリードピン64a〜cが備えられる構成となっており、中央のリードピン64bがフレーム62と接続し、両端の二つのリードピン64a、64cは樹脂モールド65で固定されることによって、フレーム62と一体になっている。
【0076】
そして、このように構成されるレーザ素子60に電力を供給して連続発振させたときの駆動試験の結果が、本発明の基本構成において示した図2のグラフとなる。したがって、レーザ素子60を気密封止しない構成としても汚染物質の付着及び堆積を防止することが可能となり、駆動時間の経過に伴って駆動電流を増大させる必要が生じて素子寿命が短くなることや、動作が不安定となることを防ぐことができる。
【0077】
また、本実施例では、レーザチップ10を気密封止する構成が不要であるためにレーザ素子60の小型化を図ることができる。そのため、CDやDVDの光ピックアップに代表される情報記録装置用の光源にも容易に適用することが可能となる。
【0078】
<第二実施例>
次に、第二実施例について図7を用いて説明する。本実施例は、レーザチップの気密封止を要するキャンパッケージにレーザチップを実装するものであり、図7は、本実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。なお、本実施例で使用するレーザチップ10aは、ほぼ第一実施例で示した図5のレーザチップと同様の構成であるが、高反射膜4の反射率が70%〜80%程度となっており、図5に示したレーザチップ10よりも高反射膜4を形成する膜の数を減少させたり、一部の膜の厚みを変更したりするなどの設計変更がなされているものとする。
【0079】
また、本実施例では、低反射膜の表面だけでなく高反射膜の表面にも光吸収膜が形成されているものとする。この膜は、第一実施形態と同様にPdより成るものとし、厚さは4nmであるものとする。
【0080】
図7に示すように、本実施例におけるレーザ素子70は、レーザチップ10aと、レーザチップ10aが固着されるサブマウント71と、サブマウント71が固着されるブロック部72と、レーザチップ10aの高反射膜側から出射される光を受けて制御信号を作成するフォトダイオード73と、ワイヤ74aによってフォトダイオード73と電気的に接続されるピン75aと、ワイヤ74bによってレーザチップ10aと電気的に接続されるピン75bと、ブロック部72とフォトダイオード73とが一方の面上に配置されピン74a、75bがその一方の面と反対側の他方の面とを貫通して配置されるステム76と、ステム76の他方の面に接続してフォトダイオード73及びレーザチップ10aの共通の電極となるピン74cと、ステム76の一方の面に接続して気密封止するキャップ77と、キャップ77に備えられるとともにレーザチップ10aの低反射膜側から出射された光が透過するガラス窓78と、を備える。また、ブロック部72とステム76とは一体となって成型されており、銅や鉄などの金属材料から成っている。また、キャップ77やピン74a〜cも同様であり金属材料より成っている。
【0081】
また、この構成において、レーザチップ10aとサブマウント71との接着は半田によって行われ、サブマウント71とブロック部72及びフォトダイオード73とステム76との接続はAgペーストが用いられており、それぞれが電気的に接続されている。Agペーストは有機物系接着剤を含んでいるため、キャップ77をステム76に接着することによって気密封止しても、封止雰囲気内に有機物が漂うこととなる。そして、従来のレーザ素子の構成であれば、この有機物が汚染物質となってレーザチップの光出射側の端面に付着及び堆積する問題を低減するために、気密封止する乾燥空気の露点を厳密に制御(例えば、−35℃以下)していた。
【0082】
しかしながら、本実施例のようにレーザチップ10aの保護膜の表面に光吸収膜を備える構成であれば、封止雰囲気内に有機物が漂っていても、上述したように汚染物質となって付着及び堆積することを防ぐことができる。したがって、封止雰囲気を厳密に制御し、有機物の蒸気圧を抑制することを要せずに気密封止することが可能となる。そのため、製造工程の簡略化を図ることができる。また、Agペーストだけでなく、エポキシ系やシリコーン系など他の有機物系接着剤を用いたとしても汚染物質の付着及び堆積を防ぐことができるため、パッケージ内の設計の自由度を確保することができる。
【0083】
また、本実施例では、レーザチップ10aの高反射膜側から出射される光をフォトダイオード73が受けて、制御信号を作成するとともにピン75aを介してレーザ素子70の駆動装置(不図示)にフィードバックする構成としている。そのため、光が出射される高反射膜側にも汚染物質が付着及び堆積するおそれがあるが、本実施例では高反射膜の表面にも光吸収膜を形成する構成としているため、汚染物質の付着及び堆積が防止される。
【0084】
したがって、フォトダイオード73が受ける光が汚染物質の影響を受けないものとなり、誤った制御信号を駆動装置にフィードバックすることを防ぐことができる。特に、高反射膜側から出力される光が汚染物質の付着及び堆積によって弱くなったことをレーザ素子70の出力が低下したものと誤認し、不適正に大きな電流をレーザ素子70に供給することを防ぐことが可能となる。
【0085】
なお、図7に示すレーザ素子70の構成において、レーザチップ10a及びサブマウント71と、サブマウント71及びブロック部72と、がそれぞれ直接的に接続されており、電気的にもそれぞれ接続されている構成としているが、レーザチップ10aとブロック部72とをワイヤを用いて電気的に接続する構成としても構わない。
【0086】
また、サブマウント71及びステム76と、フォトダイオード73及びステム76と、のそれぞれの接続について、Agペーストを用いる代わりに半田を用いることとしても構わない。このように構成する場合、従来は、Agペーストに含まれる有機系の接着剤が揮発するおそれがなくなるため、封止雰囲気中の有機物系接着剤の蒸気圧を制御することが不要となり、気密封止する乾燥空気の露点の制御を若干緩く(例えば、−15℃以下)することができる効果を得ることができていた。
【0087】
これに対し、本発明の構成では、根本的に露点の制御自体を不要とすることができるため、この例のようにAgペーストの代わりに半田を用いた場合と比較して も大幅な製造工程の簡略化を図ることができる。また、Agペーストを用いるか否かに限らず、キャップ77とステム76との気密封止(例えば、溶接による)が十分でなければ安定した動作をすることができないために、この例においても気密封止が十分であるか否かを厳密に確認する確認工程を要し、かつ、歩留まりが低かった。しかしながら、本発明の構成とすることによって、気密封止が不十分でも汚染物質の付着及び堆積を防止することができるため、確認工程の削減や 歩留まりの向上を図ることができる。
【0088】
<第三実施例>
次に、第三実施例について図8を用いて説明する。本実施例は、第一実施例におけるレーザチップ10と同様のレーザチップ10を、気密封止を要するHHL(High Heat Load)パッケージに実装したものである。また、図8は本実施例におけるレーザ素子の模式的な斜視図である。なお、このHHLパッケージは、照明などの用途に使用されるワットクラスの高出力を可能とするパッケージである。
【0089】
図8に示すように、本実施例におけるレーザ素子80は、複数のレーザチップ10と、レーザチップ10が固着されるサブマウント81と、サブマウントが固着されるとともに放熱を行うヒートスプレッダー82と、レーザチップ10などのパッケージ内部に備えられる素子に電力を供給する配線が備えられる配線板83と、ヒートスプレッダー81や配線板82が内部に固着される本体部84と、本体部84を貫通するとともに本体部84内部に備えられた素子と電気的に接続するリードピン85と、本体部84と接続して気密封止するキャップ86と、キャップ86に備えられるとともにレーザチップ10の低反射膜側から出射された光が透過するガラス窓87と、を備える。
【0090】
また、このレーザ素子80の内部には、配線や、本体部の内部の温度を監視するサーミスタ、温度を下げるペルチェ素子、発光量を監視するフォトダイオードなどが備えられることがあるが、図8では簡単のためにこれらの部材を省略して示している。なお、複数備えられているリードピン85は、それぞれの素子やレーザチップ10と対応しており、対応するリードピン85に電力を供給することでそれぞれの素子が動作する。また、内部の温度や光出力から得られる制御信号もこのリードピンを介して出力され、レーザ素子80の駆動装置(不図示)にフィードバックされる。
【0091】
レーザ素子80をこのような構成とすると、複数の素子を本体に固着する必要があるために、接着する箇所が複数存在することとなり、接着剤の使用量が多くなる。また、内部の配線は有機物であるビニルによって被覆されているため、汚染物質の発生源が多数存在することとなる。
【0092】
また、キャップ86や本体部84は銅や鉄などの金属から成っており、キャップ86と本体部84との接続は溶接や低温半田などによって行われる。しかし、HHLパッケージは第二実施例において示したキャンパッケージと比較して接続が難しく、封止不良となる場合が多く発生するため従来は歩留まりが悪くなっていた。また、低温半田を用いて接続する場合、低温半田に含まれて接続面の金属の酸化皮膜などを除去して清浄な面とするためのフラックスが有機物であるロジ ンを含むものであるため、これによっても汚染物質が発生していた。
【0093】
しかしながら、本実施例のようにレーザチップ10の保護膜の表面に光吸収膜を備える構成とすれば、内部に有機物が漂ったり接続が不完全であったりしても、汚染物質がレーザチップに付着及び堆積することが防止されるため、問題なく駆動させることができる。具体的には、キャップ86と本体部84との接続が失敗することによる封止不良によって歩留まりが低下することや、レーザチップに汚染物質が付着及び堆積することによって駆動電流を増大させる必要が生じたり動作が不安定となったりすることを防ぐことができる。
【0094】
なお、第二実施例と同様に、パッケージ内部にフォトダイオードを備えレーザチップの高反射膜側から光を受ける構成とする場合は、レーザチップの構成を第二実施例と同様のものとしても構わない。即ち、高反射膜の反射率を70%〜80%とするとともに、高反射膜の表面に光吸収膜を形成することとしても構わない。
【0095】
また、光ピックアップなどの情報記録装置用の光源に用いられるホログラムレーザ素子も、上述したHHLパッケージと同様にレーザチップの他に複数の素子(信号検出用のフォトダイオードやホログラム素子などの光学素子)をパッケージ内に含む構成であるが、このような構成の場合にも、本実施例のように保護膜の表面に光吸収膜を形成したレーザチップを設けることができる。そして、不完全な気密封止による歩留まりの低下や、レーザチップに汚染物質が付着及び堆積することによって駆動電流を増大させる必要が生じたり動作が不安定となったりすることを防ぐ効果を得ることができる。
【0096】
<第四実施例>
上述した第一〜第三実施例では、主にチップの構成やパッケージの構成についての実施例を示したが、以下の第四実施例〜第十三実施例では、窒化物系半導体からなるレーザチップの光出射側の端面に形成する低反射膜及び光吸収膜の構成における実施例を示す。なお、以下では低反射膜及び光吸収膜の構成のみ示すこととするが、チップや高反射膜の構成やパッケージの構成については、どのような構成であっても構わない。また、以下に示す膜の組み合わせはそれぞれ一例に過ぎず、これ以外の組み合わせでも本発明の効果を得ることは可能である。
【0097】
第四実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜を、光出射側の端面から窒化アルミニウム(AlN)膜/窒化ケイ素(SiN)膜/酸化アルミニウム(Al23)膜の順に形成したものとする。そして、低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23膜上に、光吸収膜として金(Au)膜を形成している。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、Au膜が4.5nmである。
【0098】
光出射側の端面に形成するAlN膜は、チップを構成する窒化物系半導体や低反射膜を構成する他の膜と強固に密着する。そのため、このAlN膜を形成することで、端面から低反射膜が剥がれることを防止することが可能となり、歩留まりを向上させることができる。さらに、光出射側の端面とAlN膜とが密着することによって、端面に酸化などの反応が生じて変質することを抑制することができる。そして、端面の変質を防ぐことにより端面の表面における非輻射再結合の発生が抑制されるため、急激に非輻射再結合が増加することにより発生する熱によって端面が溶けて破断するCOD(catastrophic optical damage)の発生が防止され、安定した動作を行うことが可能となる。なお、上述したAlOx1-xもAlNと同様の特性を有しており、この材料から成る膜を利用しても同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、SiN膜は熱膨張係数が小さいため、熱を発生する光吸収膜を備えたとしても保護膜の構成を保持することができる。また、防湿性にも優れるため、端面が水分によって変質することを防ぐことができる。そのため、安定した動作(特に、光出力を一定とした場合における駆動時間に伴う駆動電流の上昇の防止)を行うことが可能となる。なお、酸窒化ケイ素(SiOx1-x(ただし、0<x<1とする))もSiNと同様の特性を有しており、この材料から成る膜を利用しても同様の効果を得ることができる。そして、上述した光出射側の端面にAlOx1-xもしくはAlNを形成する構造と併用した構造、即ち、光吸収膜とAlOx1-xもしくはAlNの間にSiOx1-xもしくはSiNを挟んだ構造とすると、より安定した動作を行うことが可能となるため好ましい。
【0100】
なお、半導体の端面に直接、SiOx1-xもしくはSiNを形成し、その上に光吸収膜を形成する二層構造としても構わない。さらに、半導体とSiOx1-xもしくはSiNの間に、酸化膜(例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンなど)や窒化膜(例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化チタンなど)などの他の膜を形成しても構わないし、SiOx1-xもしくはSiNと光吸収膜の間に、酸化膜や窒化膜などの他の膜を形成しても構わない。以上のように、半導体の端面と最表面の光吸収膜の間に、SiOx1-xもしくはSiNを挟む構造であれば、非気密パッケージにおいて問題となる水分に対する防湿性や、汚染物質の一つであるSi系の物質の付着を、同時に改善することができるため、好ましい。
【0101】
また、低反射膜の表面に光吸収膜であるAu膜を形成することで、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことができる。そのため、駆動時間の経過に伴って駆動電流を増大させる必要が生じたり動作が不安定となったりすることを防ぐ効果を得ることができる。そして、以上のように保護膜及び光吸収膜を形成することによって、大気雰囲気中でレーザ素子を駆動させたとしても長寿命かつ安定した動作を行うことが可能となる。
【0102】
なお、光吸収膜であるAu膜の厚さを、1nm、2nm、7nmと変化させても上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0103】
<第五実施例>
第五実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23膜上に光吸収膜として白金(Pt)膜を形成している。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が6nm、SiN膜が100nm、Al23膜が200nm、Pt膜が4nmである。
【0104】
このように低反射膜及びPtから成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第四実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。また、本実施例のようにAlN膜やSiN膜を第四実施例よりも薄く構成しても、同様の効果を得ることができる。
【0105】
なお、光吸収膜であるPt膜の厚さを、1nm、2nm、8nmと変化させても上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0106】
<第六実施例>
第六実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四及び第五実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23膜上にまずチタン(Ti)膜を形成し、さらにその上に金(Au)膜を形成する構成として、光吸収膜をTi膜及びAu膜の複合膜とする。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、Ti膜が1.5nm、Au膜が2.5nmである。
【0107】
このように低反射膜及び複合膜から成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第五実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0108】
なお、本実施例では光吸収膜をTi膜及びAu膜の複合膜で構成したが、Au膜を、Au膜と厚さの等しいPt膜に変更しても構わなく、この場合も同様の効果を得ることができる。
【0109】
<第七実施例>
第七実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第六実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23膜上に光吸収膜としてモリブデン(Mo)膜を形成する。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、Mo膜が4.0nmである。
【0110】
このように低反射膜及びMo膜から成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第六実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0111】
なお、光吸収膜であるMo膜の厚さを、1nm、2nm、12nmと変化させても上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0112】
<第八実施例>
第八実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第七実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23上にまずモリブデン(Mo)膜を形成し、さらにその上に白金(Pt)膜を形成する構成として、光吸収膜をMo膜及びPt膜の複合膜とする。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、Mo膜が1.5nm、Au膜が2.5nmである。
【0113】
このように低反射膜及び複合膜から成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第七実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0114】
なお、本実施例では光吸収膜をMo膜及びAu膜の複合膜で構成したが、Au膜を、Au膜と厚さの等しいPt膜に変更しても構わなく、この場合も同様の効果を得ることができる。
【0115】
<第九実施例>
第九実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第八実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23上に光吸収膜としてアルミニウム(Al)膜を形成する。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、Al膜が4.0nmである。
【0116】
このように低反射膜及びAlから成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第八実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0117】
<第十実施例>
第十実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第九実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23上に光吸収膜としてAlOx(0<x<1.5)で表される酸素欠損状態のアルミニウム膜、即ち、酸化アルミニウムの酸素欠損膜を用いる。ここで、AlOxは化学量論的組成であるAl:O=2:3の組成から酸素が少なくなる方向に組成がずれているものである。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、AlOx膜が60nmである。
【0118】
上述したように、Al23は出射されるレーザ光に対してほぼ透明であるが、AlOxのような酸素欠損膜とすることで光をよく吸収するようになるため、このような膜とすれば光吸収膜として用いることができる。
【0119】
AlOx膜の作製方法としては、例えば、第一実施例において示した例のようにECRスパッタ装置を用いる場合では、Al23膜を形成する場合の酸素ガスの流量(例えば、5.8ccm)を低減させる(例えば、4.3ccm)ことによって容易に得ることができる。なお、アルゴンガスの流量や供給する電力などの他の条件については第一実施例で示した条件と同様のもの、即ち、アルゴンガスの流量を20ccm、Alターゲットに与えるRFパワーを500W、プラズマ発生用のマイクロ波パワーを500Wとしても構わない。
【0120】
このように低反射膜及びAlOxから成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第九実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0121】
さらに、本実施例で光吸収膜として用いているAlOx膜は、組成のxの値と膜厚とによって光の吸収量が制御できるため、金属膜などの厚さのみで光の吸収量が制御される光吸収膜よりも厳密な調整を行うことができる。例えば、光吸収を極限まで抑えたい場合、金属膜を用いる場合ではごく薄く均一な膜を形成するために成膜方法や成膜条件を選択する必要があり困難なものとなるが、AlOx膜を用いる場合では厚い膜であってもxの値を1.5に近い値とすることで対応できるため、調整が容易なものとなる。
【0122】
また、スパッタ装置を用いて作製する場合、AlとSiのターゲットをセットして、供給するアルゴン、酸素、窒素の各ガスの流量を適宜変更するだけで低反射膜及び光吸収膜を形成することができるため、連続した工程で成膜を行うことができる。
【0123】
なお、光吸収膜としてAlOxを用いる代わりに、SiOx(0<x<2)で表される酸素欠損状態の酸化ケイ素膜(例えば、厚さ8nm)を用いることとしても構わない。ここで、SiOxは化学量論的組成であるSi:O=1:2の組成から酸素が少なくなる方向に組成がずれているものである。このようにSiOx膜を用いたとしても、AlOxを用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0124】
また、酸素欠損膜の代わりに、AlNx(0<x<1)で表される窒素欠損状態のアルミニウム膜や、SiNx(0<x<1.33…)で表される窒素欠損状態の窒化ケイ素膜を用いることとしても構わない。ここで、AlNxは化学量論的組成であるAl:N=1:1の組成から窒素が少なくなる方向に組成がずれているものであり、SiNxは化学量論的組成であるSi:N=3:4の組成から窒素が少なくなる方向に組成がずれているものである。
【0125】
AlNは、出射される光のごくわずかしか光を吸収しない。しかしながら、第十実施例に示した酸素欠損膜とする場合と同様に、窒素欠損膜とすることで光を吸収する量を増大させることが可能となり、光吸収膜として利用することができるようになる。スパッタ装置を用いた作製方法も酸素欠損膜と同様であり、窒素ガスの流量をAlN膜を作製する場合の流量よりも小さくすることによって容易に作製することができる。また、SiNは窒素欠損した状態であるが光の吸収量は少ないものとなっている。そのため、光吸収膜としてSiNxを利用する場合は、xの値をより小さくすることが好ましい。
【0126】
また、酸素欠損膜と同様に、AlNxやSiNxの窒素欠損膜においても組成のxの値と膜厚とによって光の吸収量を制御することができるため、金属膜などの厚さのみで制御可能な光吸収膜よりも厳密な調整を行うことができる。また、どちらの光吸収膜を作製する場合においても、スパッタ装置を用いて作製する場合、AlとSiのターゲットをセットして、供給するアルゴン、酸素、窒素の各ガスの流量を適宜変更するだけで低反射膜及び光吸収膜を形成することができるため、連続した工程で成膜を行うことができる。
【0127】
<第十一実施例>
第十一実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第十実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23膜上に光吸収膜として窒化チタン(TiN)膜を形成する。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、TiN膜が20nmである。
【0128】
TiN膜の作製にもスパッタ法を利用することが可能であり、上述したようなECRスパッタ装置において、窒素ガスとアルゴンガスとを導入するとともにTiターゲットを用いてスパッタを行うことにより容易に作製することができる。
【0129】
このように低反射膜及びTiNから成る光吸収膜を構成しても、上述した第一〜第十実施例と同様に、低反射膜を端面に強固に密着させることによる効果や、汚染物質が低反射膜及び光吸収膜上に付着及び堆積することを防ぐことによる効果を得ることができる。
【0130】
なお、TiN膜や上述したAlNx膜やSiNx膜に限らず、他の金属(例えば、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W))の窒化物膜であっても出射される光を吸収することが可能であり、光吸収膜として利用することとしても構わない。また、これらの膜を窒素欠損膜として利用することとしても構わない。
【0131】
<第十二実施例>
第十二実施例では、光出射側の端面に形成される低反射膜の材料を第四〜第十一実施例と同様のものとしている。即ち、光出射側の端面からAlN膜/SiN膜/Al23膜の順に形成したものとする。そして、本実施例では低反射膜を構成する最上面の膜であるAl23上に光吸収膜として酸化パラジウム膜を用いる。また、それぞれの膜の厚さは、AlN膜が20nm、SiN膜が300nm、Al23膜が80nm、酸化パラジウム膜が3nmである。
【0132】
酸化パラジウム膜の形成方法として、例えばPd金属膜を形成後、プラズマ発生装置内で酸素プラズマにて酸化させ形成する方法を用いることができる。また、酸化パラジウムターゲットを用いるとともに、蒸着やスパッタによって形成することも可能である。また、酸素を導入しながら膜を形成したり、膜の形成後に酸素プラズマなどを用いて酸化を行ったりしても構わない。
【0133】
また、酸化パラジウムの膜厚tについて、0nm<t≦100nmの範囲であれば好ましい。100nm以上では、光が吸収される割合が大きくなり、光取り出し効率が低下してしまう。なお、より好ましい条件としては0nm<t≦50nmであり、さらに好ましい条件としては0nm<t≦10nmである。また、光 吸収膜は少しでも付着していれば効果を得ることができる。
【0134】
また、上記の例では、光吸収膜として酸化パラジウムを用いる例を示したが、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)などの金属の酸化物を用いても構わない。また、これらの金属の酸化物を複数組み合わせたものとしても構わない。
【0135】
<第十三実施例>
第十三実施例では、低反射膜を、光出射側の端面からAlOx1-x膜/SiN膜の順に形成したものとする。そして、低反射膜を構成する最上面の膜であるSiN膜の表面に形成する光吸収膜としてパラジウム(Pd)膜を用いる。また、それぞれの膜の厚さは、AlOx1-x膜が20nm、SiN膜が160nm、Pd膜が5nmである。このレーザチップについて図11に示す。図11は、第十三実施例におけるレーザチップの模式的な斜視図であり、光吸収膜が形成される側を拡大するとともに模式的に示したものである。
【0136】
図11に示すように、本実施例におけるレーザチップ110は、低反射膜111の表面に形成される光吸収膜112の一部を凝集(ドット化)させている。ドット化させる方法として、例えば、レーザ素子を駆動させる方法がある。レーザ素子を駆動させてレーザ発振させると、出射されるレーザ光の一部が光吸収膜112を成すパラジウムによって吸収され、光吸収膜112の一部が発熱する。このとき発生する熱によって光吸収膜112をドット化させることが可能となり、図11に示すような、光吸収膜112の一部がドット化したレーザチップ110を得ることができる。
【0137】
また、ドット化が生じるのは主にレーザ光が通過する領域となる。このような領域ではレーザ光によって光吸収膜112が十分に加熱されるため、ドット化が促進されて光吸収膜112が粒状となった光吸収膜ドット112bが形成される。また、この光吸収膜ドット112bが形成される領域では、光吸収膜ドット112bの形成時に光吸収膜112を成すパラジウムが凝集するため、光吸収膜112が不連続となる(厚さが0となる部分が生じる)。このような不連続領域112a中には、低反射膜111の最上面の膜であるSiN膜が表出する部分が存在する。一方、不連続領域112a以外の連続領域112cでは、光吸収膜112が連続的な膜となり低反射膜111が表出しない。
【0138】
光吸収膜112のドット化は、例えば、光出力30mW、25℃で2時間程度、連続発振させることで生じさせることができる。このようにドット化を生じさせたレーザチップ110を、20mW、25℃で1000時間程度連続駆動させて動作試験を行った結果について、図12を用いて説明する。図12は、本発明の第十三実施例におけるレーザチップの断面を示した顕微鏡写真であり、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて撮像したものである。また、図11におけるレーザチップ110のA−A断面に相当する断面を示すものである。
【0139】
図12に示すように、窒化物半導体113の光出射側の端面に、厚さ20nmのAlOx1-x膜111aが備えられ、さらにその上面に厚さ160nmのSiN膜111bが備えられる。そして、SiN膜111bの上面に、厚さ5nmのパラジウムから成る光吸収膜112が備えられる。光吸収膜112は、領域内に光吸収膜ドット112bを備える不連続領域112aと、連続領域112cと、を備える。光吸収膜ドット112bの大きさは、形成する光吸収膜112の厚さに依存し、およそ0.5nm程度から50nm程度の大きさとなる。
【0140】
図12に示すように、光吸収膜112の一部をドット化させたレーザチップ110を駆動させたとしても、レーザチップ110の端面に汚染物質が付着及び堆積することが防止される。即ち、光吸収膜112が連続した層状でなく、粒状で途切れ途切れの状態であったとしても、端面に汚染物質が付着及び堆積することを防止することができる。
【0141】
また、本実施例の様に光吸収膜ドット112bを形成する構成とすると、光吸収膜ドット112bの周辺の光吸収膜112を成す金属(本実施例ではパラジウム)が無くなる(厚さが0となる)ため、光吸収量を減少させて効率よく光を出射することが可能となる。即ち、レーザ素子を駆動したときのスロープ効率を向上させることが可能となり、駆動電流を低減することが可能となる。
【0142】
また、本例のようにレーザ光を出射してドット化を行うこととすると、光が通過する部分を確実かつ容易にドット化させることが可能となる。
【0143】
なお、本実施例ではドット化の方法として、レーザ光を出射することによって凝集させる方法について説明したが、レーザチップ110全体を加熱してドット化させる方法を用いても構わない。このような場合、図11及び図12に示した構成と異なり、光吸収膜112の不連続領域112aが全体におよぶようになる。しかしながら、このように全体におよんだとしても、上述の各実施例と同様に汚染物質が付着及び堆積することを防止する効果を得ることができる。
【0144】
また、光や熱など、何らかのエネルギーを外部から光吸収膜112に与えることによってドット化を生じさせても構わない。このように構成することによって、任意の位置に不連続領域111aを形成することが可能となる。また、光吸収膜112の成膜時にドット化させても構わない。即ち、凝集させながら成膜しても構わない。また、最終的に光吸収膜112の少なくとも一部、特に出射されるレーザ光が通過する領域の少なくとも一部がドット化して不連続となる構成であれば、どのような方法を用いてドット化させても構わない。
【0145】
また、光吸収膜112が不連続領域112aを備えない構成としても、本例の効果を得ることができる。例えば、光吸収膜112が連続した層を備え、この層の表面に上述した光吸収膜ドット112bのような粒が形成される構成としても構わない。このような構成であったとしても、連続する層の厚さが十分薄いものとなれば光吸収は低減されるため、上述の不連続領域112aを形成する場合と同様に駆動電流を低減する効果を得ることができる。また、十分薄くしても表面には光吸収膜112の材料から成る粒が形成されるため、この粒によって汚染物質の付着及び堆積を防止することができる。
【0146】
また、光吸収膜112の厚さ、使用する材料の種類、下地層の種類などを選択することにより、ドット化の大きさなどを制御することができる。また、ドット化させる金属について、本実施例ではパラジウムを用いたが、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)などを用いても構わない。
【0147】
<変形例>
上述した第一〜第十三実施例において、低反射膜を二または三種類の膜によって構成した例について示したが、一種類の膜から成ることとしても構わない。また、保護膜として、Al、Si、Hf、Ti、Nb、Ta、W及びYから選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物や、AlやSiの窒化物、AlやSiの酸 窒化物を含むものとしても構わない。
【0148】
また、上述した第四〜第十三実施例では低反射膜側の構成についてのみ述べたが、高反射膜側からも一部の光を出射する構成とする場合において、それぞれの光吸収膜を高反射膜の表面に構成することとしても構わない。このように構成することによって、高反射膜側にも汚染物質が付着及び堆積することを防止することができる。また、高反射膜が形成される端面に、直接AlN膜、AlOx1-x膜のような密着性を高める膜を高反射膜の一部として形成することとしても構わない。さらに、高反射膜に、SiNやSiOx1-x膜を備える構成としても構わない。
【0149】
また、光吸収膜を備えるとともに、保護膜をSiNやSiOx1-xを含んだもので構成することによって、より駆動電流の上昇を低減することが可能となるため、これらの材料から成る膜を保護膜に備えることが好ましい。特に、SiOx1-x膜を用いた場合は、20nm以上の厚さのSiOx1-x膜を備えることで駆動電流の上昇を抑制する効果が得られる。そのため、SiOx1-x膜を20nm以上備える構成、さらには80nm以上備える構成とすると好ましい。
【0150】
また、光吸収膜の厚さtについて、0nm<t≦100nmの範囲であれば好ましい。100nm以上では、光が吸収される割合が大きくなり、光取り出し効率が低下してしまう。なお、より好ましい条件としては0nm<t≦50nmであり、さらに好ましい条件としては0nm<t≦10nmである。また、光吸収膜は少しでも付着していれば効果を得ることができる。
【0151】
また、光吸収膜として用いる材料について、Au、Pt,Rh、Ir、Pd、Os、Ruなどを用いると、汚染物質の一つであるSi系の物質の付着係数が低減され、付着しにくくなるために好ましい。また、上述した第六実施例及び第八実施例のように、二種類以上の膜で光吸収膜を形成する場合は、最表面の膜にこれらの金属から成る膜を用いることにより汚染物質の付着及び堆積を抑制する効果があるため好ましい。
【0152】
なお、光吸収膜は二種類以上の合金から成るものとしても構わない。また、光吸収膜が、金属膜と窒化物膜、窒化物膜と酸素欠損膜、などのように、いくつかの種類の膜が組み合わさった複合膜であることとしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光素子の製造方法に関するものであり、特に、窒化物系半導体を用いた短波長の光を出射するレーザ素子に代表される、光出射部にSi酸化物などの汚染物質が付着及び堆積する発光波長である半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【符号の説明】
【0154】
1、10 レーザチップ
2 活性層
3 低反射膜
3a AlOx1-x
3b SiN膜
3c Al23
4 高反射膜
4a AlOx1-x
4b SiN膜
4c SiO2
4d TiO2
4e SiO2
5 光吸収膜
11 基板
12 バッファ層
13 n型クラッド層
14 n型ガイド層
15 多重量子井戸活性層
16 保護層
17 電流ブロック層
18 p型クラッド層
19 p型コンタクト層
20 リッジストライプ
21 絶縁膜
22 p電極
23 n電極
110 レーザチップ
111 低反射膜
111a AlOx1-x
111b SiN膜
112 光吸収膜
112a 不連続領域
112b 光吸収膜ドット
112c 連続領域
113 窒化物半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射するチップを備えた発光素子において、
前記チップの光が出射される端面上の最表面に光吸収膜を備え、
前記光吸収膜は、酸素欠損膜又は酸化パラジウムを備え、前記光が通過する位置に設けられ、
前記酸素欠損膜は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム、タングステン及びタンタルの群より選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物より成り、化学量論的組成よりも酸素が少ない組成であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記チップが、当該チップの光が出射される端面に形成されるとともに当該端面を保護する保護膜を備え、前記光吸収膜は、当該保護膜の表面に形成されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記保護膜が、以下の(a)、(b)、(c)のいずれかを備えることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
(a)アルミニウムの窒化物ケイ素の窒化物、アルミニウムの酸窒化物、ケイ素の酸窒化物の少なくとも一つの化合物を含む膜
(b)アルミニウム、チタン、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム及びタンタルの群から選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物より成る酸化物膜
(c)アルミニウムの窒化物ケイ素の窒化物、アルミニウムの酸窒化物、ケイ素の酸窒化物の少なくとも一つの化合物を含む膜、及び、アルミニウム、チタン、イットリウム、ケイ素、ニオブ、ハフニウム及びタンタルの群から選ばれた少なくとも一つの元素を含む酸化物より成る酸化物膜
【請求項4】
前記発光素子が、前記チップを気密封止しない構成であるか、HHLパッケージに前記チップを気密封止して備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記発光素子が前記チップを気密封止しない構成である場合には、前記発光素子が、フレームパッケージに前記チップを備えた構成であり、
前記発光素子がHHLパッケージに前記チップを気密封止して備える場合には、前記発光素子が、有機物を含む接着剤とともに前記チップを気密封止して備えることを特徴とする請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記チップが、以下の(d)、(e)、(f)のいずれかであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発光素子。
(d)レーザ光を出射するレーザチップである
(e)窒化物系半導体から成る層を備えるものである
(f)レーザ光を出射するレーザチップであって、窒化物系半導体から成る層を備えるものである

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−231189(P2012−231189A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188501(P2012−188501)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2008−75804(P2008−75804)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】