説明

発光素子材料および発光素子

【課題】発光効率に優れた発光素子を可能にする発光素子材料、およびこれを用いた発光素子を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフルオレン化合物を含有することを特徴とする発光素子材料。


(R〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基等である。R〜R14は、隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。nは1または2の整数である。Xは−O−、−S−、−NR15−の中から選ばれた基である。R15は、水素、アルキル基等である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、R〜R15のいずれか1つとの連結に用いられる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光色素や電荷輸送材として有用な発光素子材料およびこれを用いた発光素子であって、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり、注目を集めている。
【0003】
この研究は、イーストマンコダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜素子が高輝度に発光することが示されて以来、多くの研究機関が検討を行っている。コダック社の研究グループが提示した有機薄膜発光素子の代表的な構成は、ITOガラス基板上に、正孔輸送性のジアミン化合物、発光層であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)、そして陰極としてMg:Ag(合金)を順次設けたものであり、10V程度の駆動電圧で1000cd/mの緑色発光が可能であった(非特許文献1参照)。
【0004】
また、有機薄膜発光素子は、発光層に種々の蛍光材料を用いることにより、多様な発光色を得ることが可能であることから、ディスプレイなどへの実用化研究が盛んである。三原色の発光材料の中では緑色発光材料の研究が最も進んでおり、現在は赤色発光材料と青色発光材料において、特性向上を目指して鋭意研究がなされている。
【0005】
有機薄膜発光素子における課題の一つは、素子の発光効率と耐久性を両立させることである。特に青色発光素子に関しては、発光効率が優れ、信頼性の高い素子を提供する青色発光材料は少ない。例えば、フルオレン化合物を青色発光素子に用いる技術が開示されている。種々のフルオレン化合物(特許文献1〜4参照)を用いた青色発光素子が報告されているが、いずれも発光効率と耐久性が不十分であった。
【非特許文献1】アプライド フィジックス レターズ(Applied Physics Letters)(米国)1987年、51巻、12号、913−915頁
【特許文献1】特開2004−83481号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−302667号公報(請求項3)
【特許文献3】特開2006−140235号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】国際公開第2004/074399号パンフレット(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来の有機薄膜発光素子では、発光効率が高く、かつ耐久性に優れた青色発光素子が提供されていなかった。そこで本発明は、従来技術の問題を解決し、発光効率が高く、かつ耐久性に優れた青色発光素子を可能にする発光素子材料、およびこれを用いた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるフルオレン化合物を含有することを特徴とする発光素子材料である。
【0008】
【化1】

【0009】
〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基からなる群から選ばれた基である。R〜R14は、隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。nは1または2の整数である。Xは−O−、−S−、−NR15−の中から選ばれた基である。R15は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれた基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、R〜R15のいずれか1つとの連結に用いられる。
【0010】
また、本発明は、陽極と陰極の間に少なくとも発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、該発光素子が一般式(1)で表される発光素子材料を含有することを特徴とする発光素子である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、発光素子等に利用可能で、薄膜安定性に優れた発光素子材料を提供できる。さらに本発明によれば、上記発光素子材料を用いることによって、高い発光効率と優れた耐久性を有する発光素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において用いる一般式(1)で表されるフルオレン化合物について詳細に説明する。
【0013】
【化2】

【0014】
〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基からなる群から選ばれた基である。R〜R14は、隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。nは1または2の整数である。Xは−O−、−S−、−NR15−の中から選ばれた基である。R15は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれた基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、R〜R15のいずれか1つとの連結に用いられる。
【0015】
これらの置換基のうち、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0016】
シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。
【0017】
複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0018】
アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0019】
アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0020】
アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0021】
アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0022】
アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、ターフェニル基、ピレニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6〜40の範囲である。
【0023】
ヘテロアリール基とは、例えば、フラニル基、チオフェニル基、オキサゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、カルバゾリル基などの炭素以外の原子を環内に有する芳香族基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2〜30の範囲である。
【0024】
アミノ基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基は例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0025】
シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素化合物基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。シリル基の炭素数は、通常、1〜6である。
【0026】
また一般式(1)のR〜R14は隣接する置換基同士で環を形成してもよい。隣接基との間に形成される環とは、R〜R14の中から選ばれる任意の隣接2置換基(例えばRとR)が互いに結合して共役または非供役の縮合環を形成するものである。これら縮合環は環内構造に窒素、酸素、硫黄原子を含んでいてもよいし、さらに別の環と結合していてもよい。
【0027】
本発明の一般式(1)で表されるフルオレン化合物は、分子中にフルオレン骨格と電子供与性縮合芳香族であるベンゾフラン骨格、ベンゾチオフェン骨格、インドール骨格の中から選ばれる基を有しており、高い発光効率と優れた耐熱性を有している。ここで、R〜Rの少なくとも一つがR〜R15のうちいずれか一つとの連結に用いられるが、原料の入手性や合成の容易さから、R、Rのうち少なくとも一つがR〜R15のうちいずれか一つとの連結に用いられることが好ましい。さらに、一般式(1)のXが酸素原子または硫黄原子であると、より高い発光効率が得られるため好ましい。
【0028】
原料の入手性や合成の容易さの点、さらに高効率発光が可能となる点から一般式(2)で表されるフルオレン化合物であることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
16〜R31はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基の中から選ばれた基である。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。Xは−O−、−S−、−NR32−の中から選ばれた基である。R32は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれた基である。
【0031】
上記のような一般式(1)で表されるピレン化合物として、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物の合成には、公知の方法を使用することができる。フルオレン骨格へアリール基もしくはヘテロアリール基を導入する方法は、例えば、ハロゲン化フルオレン誘導体とアリールもしくはヘテロアリール金属試薬によるパラジウムやニッケル触媒下でのカップリング反応を用いる方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
次に、本発明における発光素子の実施形態について例をあげて詳細に説明する。本発明の発光素子は、少なくとも陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極の間に介在する発光素子材料からなる有機層とで構成されている。
【0038】
本発明で用いられる陽極は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料であれば特に限定されないが、比較的仕事関数の大きい材料を用いるのが好ましく、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが挙げられる。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0039】
陽極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよく、発光素子の消費電力の点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、100Ω/□以下の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常100〜300nmの間で用いられることが多い。
【0040】
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、陽極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0041】
本発明で用いられる陰極に用いられる材料は、電子を有機層に効率良く注入できる物質であれば特に限定されないが、一般に白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウムおよびマグネシウムならびにこれらの合金などが挙げられる。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は、一般に大気中で不安定であることが多いため、有機層に微量のリチウムやマグネシウム(真空蒸着の膜厚計表示で1nm以下)をドーピングして安定性の高い電極を得る方法が好ましい例として挙げることができる。また、フッ化リチウムのような無機塩の使用も可能である。更に、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を積層することが、好ましい例として挙げられる。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
【0042】
本発明の発光素子は、有機層が一般式(1)で表されるフルオレン化合物を含む発光素子材料により形成される。発光素子材料とは、自ら発光するもの、およびその発光を助けるもののいずれかに該当し、発光に関与している化合物を指すものであり、具体的には、正孔輸送材料、発光材料および電子輸送材料などが該当する。
【0043】
本発明の発光素子を構成する有機層は、少なくとも発光素子材料を有する発光層から構成される。有機層の構成例は、発光層のみからなる構成の他に、1)正孔輸送層/発光層/電子輸送層および、2)発光層/電子輸送層、3)正孔輸送層/発光層などの積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよい。正孔輸送層および電子輸送層が複数層を有する場合、電極に接する側の層をそれぞれ正孔注入層および電子注入層と呼ぶことがあるが、以下の説明では正孔注入材料は正孔輸送材料に、電子注入材料は電子輸送材料にそれぞれ含まれる。
【0044】
正孔輸送層は、正孔輸送材料の一種または二種以上を積層または混合する方法、もしくは、正孔輸送材料と高分子結着剤の混合物を用いる方法により形成される。また、正孔輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して正孔輸送層を形成してもよい。正孔輸送材料は、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましい。
【0045】
本発明において、発光層は単一層、複数層のどちらでもよく、各層の発光材料は単一の材料でも複数の材料(ホスト材料、ドーパント材料)の混合物であってもよいが、効率、色純度、寿命の観点から膜形成、正孔・電子輸送、発光の機能を分離できるホスト材料とドーパント材料との混合物の方が好ましい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくはドーパント材料のいずれか一種類のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料は発光層の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して20重量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着しても良い。
【0046】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物は正孔輸送材料や電子輸送材料として用いてもよいが、高い発光性能を有することから発光材料として好適に用いられる。また、本発明の発光素子材料は、青色領域に強い発光を示すことから、青色発光材料として好適に用いられるが、緑色〜赤色発光素子や白色発光素子用の材料としても用いることができる。本発明のフルオレン化合物はドーパント材料として用いてもよいが、薄膜安定性に優れることから、ホスト材料として好適に用いられる。
【0047】
本発明の一般式(1)で表されるフルオレン化合物のイオン化ポテンシャルは、特に限定されないが、好ましくは4.6eV以上6.2eV以下であり、より好ましくは4.8eV以上6.0eV以下である。なお、イオン化ポテンシャルの絶対値は測定方法により異なる場合があるが、本発明におけるイオン化ポテンシャルは、大気雰囲気型紫外線光電子分析装置(AC−1、理研機器(株)製)を用いて、ITOガラス基板上に30nm〜100nmの厚さに蒸着した薄膜を測定した値である。
【0048】
本発明で用いられるホスト材料は、本発明の一般式(1)で表されるフルオレン化合物一種のみに限る必要はなく、本発明の複数のフルオレン化合物を混合して用いたり、その他のホスト材料の一種類以上を本発明のフルオレン化合物と混合して用いてもよい。混合しうるホスト材料としては、発光体であるアントラセンやペリレンなどの縮合環誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピロロピロール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体が好適に用いられる。
【0049】
発光材料に含有されるドーパント材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデンなどのアリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられる。中でも、電子受容性置換基を有する縮合芳香環誘導体をドーパントとして用いると、本発明のフルオレン化合物が有する薄膜安定性の効果がより顕著になるため、好ましい。具体的には、1−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−3,8−ビス(4−メチルフェニル)ピレンに代表されるベンゾアゾール基を有するピレン化合物が特に好ましいドーパントとして挙げられる。
【0050】
本発明において、電子輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質で構成されることが望ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0051】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられるが、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成され、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0052】
本発明における電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環は、高い電子親和性を有し、電子輸送能に優れ、電子輸送層に用いることで発光素子の駆動電圧を低減できる。電子受容性窒素を含むヘテロアリール環は、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
【0053】
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の点から好ましく用いられる。
【0054】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属と混合して用いることも可能である。電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、特に限定されないが、好ましくは5.8eV以上8.0eV以下であり、より好ましくは6.0eV以上7.5eV以下である。
【0055】
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、印刷法、レーザー誘起熱転写法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0056】
層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmの間から選ばれる。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0057】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれる。
【0058】
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0059】
マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0060】
本発明におけるセグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0061】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。なお、下記の各実施例にある化合物の番号は上の化学式に記載した化合物の番号を指す。また構造分析に関する評価方法を下記に示す。
【0063】
H−NMRは超伝導FTNMR EX−270(日本電子(株)製)を用い、重クロロホルム溶液にて測定を行った。
【0064】
実施例1(化合物[17]の合成方法)
マグネシウム0.79gとテトラヒドロフラン5mlとの混合溶液に4−ブロモトルエン5.1gを窒素気流下、室温で滴下した後、50℃で4時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、2,7−ジブロモ−9−フルオレノン5gとテトラヒドロフラン20mlとの混合溶液を窒素気流下、室温で滴下した後、40℃で4時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水50mlを注入し、ジクロロメタン200mlで抽出した。有機層を水100mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、60℃下で真空乾燥し、2,7−ジブロモ−9−ヒドロキシ−9−(4−メチルフェニル)フルオレン6.2gを白色固体として得た。
【0065】
上記6.2gの2,7−ジブロモ−9−ヒドロキシ−9−(4−メチルフェニル)フルオレンとトルエン70mlとの混合溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸2.6mlを窒素気流下、室温で滴下した後、50℃で1時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水90mlを注入し、トルエン100mlで抽出した。有機層を水100mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。得られた濃縮物をジクロロメタン100ml、次いでメタノール100mlで撹拌洗浄した後、60℃下で真空乾燥し、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン6.8gを白色粉末として得た。
【0066】
上記1gの2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、2−ベンゾフランボロン酸0.71g、リン酸三カリウム1.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.26g、酢酸パラジウム18mgとジメチルホルムアミド40mlとの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水40mlを注入し、ジクロロメタン250mlで抽出した。有機層を水100mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、60℃下で真空乾燥し、化合物[17]0.81gを淡黄緑色粉末として得た。
【0067】
得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りである。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):2.35(s,6H), 6.70(s, 2H), 6.94-7.96(m, 22H)
尚、この化合物[17]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約230℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.4%、昇華精製後が99.6%であった。
【0068】
実施例2(化合物[26]の合成方法)
2,7−ジブロモ−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン1g、ベンゾ[b]チオフェン−2−ボロン酸0.78g、リン酸三カリウム1.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.26g、酢酸パラジウム18mgとジメチルホルムアミド40mlとの混合溶液を窒素気流下、120℃で6時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水40mlを注入し、ジクロロメタン250mlで抽出した。有機層を水100mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、60℃下で真空乾燥し、化合物[26]0.86gを淡黄緑色粉末として得た。
【0069】
得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りである。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):2.35(s,6H), 6.94-7.91(m, 24H)
尚、この化合物[26]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約230℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.1%、昇華精製後が99.7%であった。
【0070】
実施例3(化合物[34]の合成方法)
9−フルオレノンを用いた以外は、実施例1と同様にして、9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン5.8gを白色粉末として得た。
【0071】
上記2.8gの9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、塩化アセチル1.4g、塩化アルミニウム2.4gと二硫化炭素60mlとの混合溶液を窒素気流下、50℃で3時間加熱撹拌した。氷浴中で0℃まで冷却した後、1N塩酸水溶液100mlを滴下し、ジクロロメタン200mlで抽出した。有機層を水150mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、60℃下で真空乾燥し、2,7−ジアセチル−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン1.8gを黄色固体として得た。
【0072】
上記1.8gの2,7−ジアセチル−9,9−ジ(4−メチルフェニル)フルオレン、1−メチル−1−フェニルヒドラジン1.5gとエタノール41mlとの混合溶液に、酢酸1mlを窒素気流下、室温で滴下し後、80℃で3時間加熱撹拌した。室温に冷却した後、水100mlを注入し、析出した固体をろ過した。得られた固体をメタノール50mlで撹拌洗浄した後、60℃下で真空乾燥し、黄色粉末1.9gを得た。次いで、ポリリン酸50mlを加え、窒素気流下、50で1時間、70℃で1時間、110℃で1時間、160℃で4時間加熱撹拌した。この混合溶液を130℃まで冷却した後、水300mlに激しく撹拌しながら添加した。水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタン400mlで抽出した。有機層を水200mlで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレートにより濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、60℃下で真空乾燥し、化合物[34]0.13gを淡黄色粉末として得た。
【0073】
得られた粉末のH−NMR分析結果は次の通りである。
H−NMR(CDCl(d=ppm)):2.35(s,6H), 3.60(s, 6H), 6.52(s, 2H), 6.94-7.96(m, 22H)
尚、この化合物[34]は、油拡散ポンプを用いて1×10−3Paの圧力下、約230℃で昇華精製を行ってから発光素子材料として使用した。HPLC純度(測定波長254nmにおける面積%)は昇華精製前が99.0%、昇華精製後が99.1%であった。
【0074】
実施例4
ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(旭硝子(株)製、15Ω/□、電子ビーム蒸着品)を30×40mmに切断し、ITO導電膜をフォトリソグラフィ法によりパターン加工して、発光部分および電極引き出し部分を作製した。得られた基板をアセトン、“セミコクリン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールで15分間超音波洗浄してから熱メタノールに15分間浸漬させて乾燥させた。素子を作製する直前にこの基板を1時間UV−オゾン処理し、さらに真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−5Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔注入材料として、銅フタロシアニンを10nm、正孔輸送材料として、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルを50nm蒸着した。次に、発光材料として、ホスト材料として、化合物[17]を、またドーパント材料として下記式に示すD−1をドープ濃度が5%になるように35nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として、下記式に示すE−1を20nmの厚さに積層した。以上で形成した有機層上に、リチウムを0.5nmの厚さに蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニターの表示値である。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率4.6lm/Wの高効率青色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、輝度半減時間は2200時間であった。
【0075】
【化8】

【0076】
実施例5〜14
ホスト材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表1に示した。
【0077】
比較例1
ホスト材料として下記式に示すH−1を用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率2.8lm/Wの青色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、200時間で輝度半減した。
【0078】
【化9】

【0079】
比較例2〜6
ホスト材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。各比較例の結果は表1に示した。なお表1のH−2、H−3、H−4、H−5、H−6は下記式で表される化合物である。
【0080】
【化10】

【0081】
【表1】

【0082】
実施例15
ドーパント材料として下記式に示すD−2をドープ濃度が2%となるように用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率4.5lm/Wの高効率青色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、輝度半減時間は2000時間であった。
【0083】
【化11】

【0084】
実施例16、17
ホスト材料およびドーパント材料として表2に記載した材料を用いた以外は、実施例15と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表2に示した。なお表2のD−3、D−4は下記式で表される化合物である。
【0085】
【化12】

【0086】
実施例18
電子輸送材料として下記式で表されるE−2を用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率2.9lm/Wの高効率青色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、輝度半減時間は1900時間であった。
【0087】
【化13】

【0088】
実施例19、20
ホスト材料および電子輸送材料として表2に記載した材料を用いた以外は、実施例18と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表2に示した。なお表3のE−3、E−4は下記式で表される化合物である。
【0089】
【化14】

【0090】
【表2】

【0091】
実施例21
ドーパント材料を用いなかったこと以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率1.2lm/Wの青色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、輝度半減時間は1800時間であった。
【0092】
実施例22
ドーパント材料として下記に示すD−5をドープ濃度が2%となるように用いた以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率6.4lm/Wの高効率緑色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、輝度半減時間は2700時間であった。
【0093】
【化15】

【0094】
実施例23
発光材料として、ホスト材料として化合物[17]を、ドーパント材料としてD−1をドープ濃度が5%になるように5nmの厚さに蒸着したのち、さらに発光材料として、ホスト材料として化合物[17]を、ドーパント材料として下記に示すD−6をドープ濃度が1%になるように30nmの厚さに積層した以外は、実施例4と同様にして発光素子を作製した。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率6.2lm/Wの高効率白色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、輝度半減時間は3000時間であった。
【0095】
【化16】

【0096】
実施例24
ITO透明導電膜を150nm堆積させたガラス基板(旭硝子(株)製、15Ω/□、電子ビーム蒸着品)を30×40mmに切断し、ITO導電膜をフォトリソグラフィ法によって300μmピッチ(残り幅270μm)×32本のストライプ状にパターン加工した。ITOストライプの長辺方向片側は外部との電気的接続を容易にするために1.27mmピッチ(開口部幅800μm)まで広げてある。得られた基板をアセトン、“セミコクリン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で各々15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。続いて、イソプロピルアルコールで15分間超音波洗浄してから熱メタノールに15分間浸漬させて乾燥させた。この基板を素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、さらに真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、まず正孔輸送材料として4,4’−ビス(N−(m−トリル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルを150nm蒸着した。次に、ホスト材料として化合物[17]を、またドーパント材料としてD−1をドープ濃度が5%になるように35nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として、E−1を20nmの厚さに積層した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニターの表示値である。次に、厚さ50μmのコバール板にウエットエッチングによって16本の250μm開口部(残り幅50μm、300μmピッチに相当)を設けたマスクを、真空中でITOストライプに直交するようにマスク交換し、マスクとITO基板が密着するように裏面から磁石で固定した。そしてリチウムを0.5nm有機層にドーピングした後、アルミニウムを200nm蒸着して32×16ドットマトリクス素子を作製した。本素子をマトリクス駆動させたところ、クロストークなく文字表示できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるフルオレン化合物を含有することを特徴とする発光素子材料。
【化1】

(R〜R14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基からなる群から選ばれた基である。R〜R14は、隣接する置換基同士で環を形成していてもよい。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。nは1または2の整数である。Xは−O−、−S−、−NR15−の中から選ばれた基である。R15は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれた基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは、R〜R15のいずれか1つとの連結に用いられる。)
【請求項2】
一般式(1)のXが酸素原子または硫黄原子であることを特徴とする請求項1記載の発光素子材料。
【請求項3】
一般式(2)で表されるフルオレン化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の発光素子材料。
【化2】

(R16〜R31はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基、シリル基からなる群から選ばれた基である。Ar、Arはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アリール基またはヘテロアリール基である。Xは−O−、−S−、−NR32−の中から選ばれた基である。R32は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アリール基、ヘテロアリール基からなる群から選ばれた基である。)
【請求項4】
陽極と陰極の間に少なくとも発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、発光層が請求項1または3記載の発光素子材料を含有することを特徴とする発光素子。
【請求項5】
陽極と陰極の間に少なくとも発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、発光層がホスト材料とドーパント材料を有し、ホスト材料が請求項1または3記載の発光素子材料を含有することを特徴とする発光素子。
【請求項6】
発光層と陰極の間に少なくとも電子輸送層が存在し、電子輸送層が電子受容性窒素を含み、さらに、炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、リンの中から選ばれる元素で構成されるヘテロアリール環構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項4または5記載の発光素子。

【公開番号】特開2008−184566(P2008−184566A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20580(P2007−20580)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】