説明

発光素子

【課題】発光面積を維持しつつ、順方向電圧の上昇を抑制できる発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光素子1は、第1導電型の半導体層と、発光層25と、第1導電型とは異なる第2導電型の半導体層とを含む窒化物化合物半導体からなる半導体積層構造と、第2導電型の半導体層にオーミック接触するpコンタクト電極30と、pコンタクト電極30にオーミック接触する点状の第2電極と、第2導電型の半導体層及び発光層25の一部が除去されて露出した第1導電型の半導体層にオーミック接触すると共に、第2電極の数より多く設けられる複数の点状の第1電極とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の電極が同一面側に設けられる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体層上に形成されたpコンタクト電極と、当該pコンタクト電極表面を被覆するパッシベーション膜であって一部に開口部を有するパッシベーション膜と、上面にはんだ層を有する接合電極とを備え、pコンタクト電極表面には、パッシベーション膜の開口部の底部に開口部より大径で、かつ、その表面がpコンタクト電極の表面より平坦なバッファ電極が形成され、バッファ電極へ接合電極が接続する半導体発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体発光素子は、pコンタクト電極の表面にバッファ電極が形成され、このバッファ電極上においてパッシベーション膜にバッファ電極よりも小さな開口部が形成されており、バッファ電極の表面が平坦であるので、バッファ電極とパッシベーション膜との間の密着性を確保することができ、開口部をエッチングする際に、バッファ電極とパッシベーション膜との界面から横方向エッチング進行することを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−288548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の半導体発光素子は、n電極の数がpバッファ電極の数と同一であるか少なく、発光面積を拡大することを目的としてn電極のサイズを小さくすると、順方向電圧が上昇する場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、発光面積を維持しつつ、順方向電圧の上昇を抑制できる発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、第1導電型の第1半導体層と、発光層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層とが積層され、前記第2半導体層及び前記発光層の一部が除去されて前記第1半導体層が露出した窒化物化合物半導体からなる半導体積層構造と、前記第2半導体層にオーミック接触するpコンタクト電極と、前記pコンタクト電極にオーミック接触する点状の第2電極と、前記第1半導体層の露出部分にオーミック接触し、前記第2電極の数より多い複数の点状の第1電極と、を備える発光素子が提供される。
【0008】
また、上記発光素子は、前記第1半導体層は、n型半導体層であり、前記第2半導体層は、p型半導体層であり、前記n型半導体層は、前記pコンタクト電極のシート抵抗より高いシート抵抗を有することが好ましい。
【0009】
また、上記発光素子は、前記第1電極はn電極であり、前記第2電極はpバッファ電極であり、前記n電極と前記pバッファ電極との間の平面視における距離が最短になる部分が複数存在するようにしてもよい。
【0010】
また、上記発光素子は、複数の前記n電極は、平面視にて前記pバッファ電極を通る軸を対称軸として線対称の位置に設けられる少なくとも1つの対をなしてもよい。
【0011】
また、上記発光素子は、複数の前記pバッファ電極が前記pコンタクト電極上に直線的に配置される少なくとも1つのグループをなし、前記複数のn電極は、前記対称軸に対して線対称の位置に設けられてもよい。
【0012】
また、上記発光素子は、複数の前記pバッファ電極は、前記pコンタクト電極上に1つ設けられ、前記複数のn電極は、前記pバッファ電極を対称中心として点対称の位置に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発光素子によれば、発光面積を維持しつつ、順方向電圧の上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の縦断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図2A】図2Aは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図2B】図2Bは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図2C】図2Cは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の概要図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施の形態に係る発光素子の平面図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施の形態及び変形例に係る発光素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の縦断面の概要を示し、図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の上面の概要を示す。なお、図1Aは、図1BのA−A線における縦断面の概要を示している。
【0016】
(発光素子1の構成)
この発光素子1は、図1Aに示すように、C面(0001)を有するサファイア基板10と、サファイア基板10上に設けられるバッファ層20と、バッファ層20上に設けられるn型半導体からなるn側コンタクト層22と、n側コンタクト層22上に設けられるn側クラッド層24と、n側クラッド層24上に設けられる発光層25と、発光層25上に設けられるp側クラッド層26と、p側クラッド層26上に設けられるp型半導体からなるp側コンタクト層28とを含む半導体積層構造を備える。なお、n側コンタクト層22及びn側クラッド層24によりn型半導体層23を構成し、p側クラッド層26及びp側コンタクト層28によりp型半導体層27を構成している。
【0017】
また、発光素子1は、p側コンタクト層28から少なくともn側コンタクト層22の表面までエッチングして除去することにより露出したn側コンタクト層22上に設けられる第1電極としてのn電極40a〜40dと(図1B参照)、p側コンタクト層28上に設けられるpコンタクト電極30と、pコンタクト電極30上の一部の領域に設けられる第2電極としてのpバッファ電極42a,42bと、n側コンタクト層22上のn電極40a〜40dが配置される領域を露出させる開口52並びにpコンタクト電極30上のpバッファ電極42a,42bが配置される領域を露出させる開口52を有するパッシベーション膜としての絶縁層50と、絶縁層50の内部に配置される反射層60と、絶縁層50の上面の一部を覆うと共にn電極40a〜40d上の開口52に設けられる接合電極70と、絶縁層50の上面の一部を覆うと共にpバッファ電極42a,42b上の開口52に設けられる接合電極72とを備える。なお、n側の接合電極70及びp側の接合電極72は、各電極の側からバリア層とはんだ層とを有して形成することができる。
【0018】
ここで、バッファ層20と、n側コンタクト層22と、n側クラッド層24と、発光層25と、p側クラッド層26と、p側コンタクト層28とはそれぞれ、III族窒化物化合物半導体からなる層である。III族窒化物化合物半導体は、例えば、AlGaIn1−x−yN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の四元系のIII族窒化物化合物半導体を用いることができ、また、AlN、GaN、又はInN等の2元系のIII族窒化物化合物半導体、AlGa1−xN、AlIn1−xN、又はGaIn1−xN(ただし、0<x<1)の3元系のIII族窒化物化合物半導体を用いることもできる。
【0019】
本実施形態においては、バッファ層20は、AlNから形成される。そして、n側コンタクト層22とn側クラッド層24とは、所定量のn型ドーパント(例えば、Si)をドーピングしたn−GaNからそれぞれ形成される。また、発光層25は、InGaN/GaN/AlGaNから形成される多重量子井戸構造を有する。更に、p側クラッド層26とp側コンタクト層28とは、所定量のp型ドーパント(例えば、Mg)をドーピングしたp−GaNからそれぞれ形成される。
【0020】
また、本実施形態に係るpコンタクト電極30は酸化物半導体から形成され、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から形成される。ここで、本実施形態においてn側コンタクト層22は、pコンタクト電極30のシート抵抗より高いシート抵抗を有して形成される。そして、絶縁層50は、例えば、二酸化シリコン(SiO)から主として形成される。また、反射層60は、絶縁層50の内部に設けられ、発光層25が発する光を反射する金属材料から形成される。反射層60は、例えば、Alから形成される。絶縁層50全体の厚さは、例えば、0.1μm以上1μm以下であり、絶縁層50の内部に設けられる反射層60の厚さは、例えば、50nm以上500nm以下である。
【0021】
n電極40a〜40dは、図1Aに示すように、n側コンタクト層22上における、n側クラッド層24からp側コンタクト層28までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部分から離れた位置に設けられる。また、n電極40a〜40dは、バリア層70と接触する上面において、バリア層70と非接触の外縁部が絶縁層50に接する。本実施形態においては、複数のn電極40a〜40dは、平面視にて点状に形成され、互いに離間している。ここで、「点状」とは、例えば、円状、多角形状等を含む。例えば、n電極n電極40a〜40dを円状に形成する場合、平面視における発光層25の面積(すなわち、発光面積)を増大させることを目的として、5μm以上50μm以下の直径とすることが好ましい。
【0022】
一方、pバッファ電極42a,42bは、n側クラッド層24からp側コンタクト層28までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部分上に設けられるpコンタクト電極30上に形成される。また、pバッファ電極42a,42bは、バリア層70と接触する上面において、バリア層70と非接触の外縁部が絶縁層50に接する。複数のpバッファ電極42a,42bは、平面視にて点状に形成される。例えば、pバッファ電極42a,42bを円状に形成する場合、5μm以上30μm以下の直径とすることが好ましい。そして、絶縁層50は、pバッファ電極42a,42bの形成領域を除いてpコンタクト電極30及び上記メサ部分を覆い、n電極40a〜40dの形成領域を除いてn側コンタクト層22を覆っている。なお、図1Bに示すように、n側の接合電極70及びp側の接合電極72が表面に露出しているので、n電極40a〜40d、pバッファ電極42a,42bを平面視にて直接的に確認することはできない。
【0023】
(n電極及びpバッファ電極の配置の詳細)
本実施形態においては、pコンタクト電極30のシート抵抗より高いシート抵抗を有するn側コンタクト層22に接するn電極は、pバッファ電極より多く形成される。平面視における発光素子1の発光面積を増大させること、及び順方向電圧の上昇を抑制することを目的として、n電極の数をx個、pバッファ電極の数をy個とした場合、一例として、1<(x/y)<4の関係を満たすことができる。そして、複数のn電極は、発光層25への電流拡散が均一になるように、n電極とpバッファ電極との間の平面視における距離が最短になる部分が複数存在するように設けられる。また、複数のn電極は、発光層25への電流拡散が均一になるように、平面視にてpバッファ電極を通る軸に対して所定の位置に設けられる。
【0024】
具体的に、図1Bに示すように、発光素子1は平面視にて略正方形に形成され、複数のpバッファ電極42a,42b(本実施形態では2つのpバッファ電極)は、この正方形の中線上に設けられる。そして、この中線を軸100として規定する。複数のn電極(本実施形態では4つのn電極)のうち2つのn電極による対(図1Bでは、左上のn電極40aと左下のn電極40cとからなる対、及び、右上のn電極40bと右下のn電極40dとからなる対)はそれぞれ、この軸100を挟んだ位置であって、軸100からの距離が同一になる位置に設けられる。図1Bでは、左上のn電極40aと左下のn電極40cとは軸100を挟んで互いに反対の位置であって、軸100からの距離が同一の位置に設けられる。つまり、左上のn電極40aと左下のn電極40cとは軸100を対称軸として線対称の位置に設けられる。
【0025】
また、本実施形態では、左上のn電極40aと、左下のn電極40cと、左側のpバッファ電極42aとは平面視にて直線的に設けられる。すなわち、軸100を対称軸として線対称の位置に設けられるn電極を結ぶ線と軸100との交点に対応する位置に、pバッファ電極が設けられる。なお、pバッファ電極42aが軸100上に設けられている限り、pバッファ電極42aとn電極40a,40cとが平面視にて厳密に直線的に設けられていなくてもよい。右側のpバッファ電極42bと、右上のn電極40bと、右下のn電極40dとの位置関係も同様である。
【0026】
n電極40a〜40dは、例えば、Ni、Cr、Ti、Al、Pd、Pt、Au、V、Ir、及びRhの金属よりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を含んで形成される。また、pバッファ電極42a,42bは、pコンタクト電極30との接触部分にNiから主として構成される金属の層を有して形成される。更に、pバッファ電極42a,42bは、接合電極70との接触部分にAlから主として構成される金属の層を有して形成することができる。
【0027】
また、n電極40a〜40dと、pバッファ電極42a,42bとを同一材料から形成する場合、各電極は、Ni又はCrと、Auとを含む金属材料から形成することが好ましい。特にn側コンタクト層22がn型のGaNから形成される場合、n電極40a〜40dは、n側コンタクト層22の側からNi層とAu層とを含んで形成することができる。また、n電極40a〜40dを、n側コンタクト層22の側からCr層とAu層とを含んで形成することもできる。また、pコンタクト電極30が酸化物半導体から形成される場合、pバッファ電極42a,42bは、pコンタクト電極30の側からNi層とAu層とを含んで形成することができる。また、pバッファ電極42a,42bを、pコンタクト電極30の側からCr層とAu層とを含んで形成することができる。
【0028】
n側の接合電極70及びp側の接合電極72は、絶縁層50におけるpコンタクト電極30と反対側の表面(すなわち、図1A中の上面)に接触しており、絶縁層50の表面の所定の領域を覆っている。p側の接合電極72は平面視にて略長方形状に形成され、n側の接合電極70は平面視にてp側の接合電極72を半包囲するコの字状に形成される。
【0029】
n側の接合電極70及びp側の接合電極72は、絶縁層50との接触部分に主としてTiから構成される金属層をバリア層として有する。また、各接合電極70,72は、バリア層上に、共晶材料、例えば、AuSnから形成されるはんだ層を有することができる。はんだ層は、例えば、真空蒸着法(例えば、電子ビーム蒸着法、又は抵抗加熱蒸着法等)、スパッタ法、めっき法、スクリーン印刷法等により形成することができる。また、はんだ層は、AuSn以外の共晶材料からなる共晶はんだ又はSnAgCu等の鉛フリーはんだから形成することもできる。
【0030】
具体的に、バリア層は、絶縁層50、n電極40a〜40d又はpバッファ電極42a,42bに接触する第1のバリア層と、第1のバリア層上に形成され、はんだ層を構成する材料の拡散を抑制する第2のバリア層とを含んで形成することができる。第1のバリア層は、n電極40a〜40dを構成する材料、並びにpバッファ電極42a,42bを構成する材料に対してオーミック接触すると共に密着性が良好な材料から形成され、例えば、Tiから主として形成される。また、第2のバリア層は、はんだ層を構成する材料がn電極40a〜40d、並びにpバッファ電極42a,42b側に拡散することを抑制することのできる材料から形成され、例えば、Niから主として形成される。
【0031】
また、バリア層は、第1のバリア層及び第2のバリア層を1つのペア層として、複数のペア層を含むこともできる。バリア層が複数のペア層を含むことにより、はんだ層を構成する材料の拡散を更に抑制できる。そして、バリア層の第1のバリア層の膜厚は、例えば、150nm程度であり、第2のバリア層の膜厚は、例えば、100nm若しくは150nm程度である。更に、はんだ層は、例えば、2μm以上20μm以下の厚さを有して形成される。
【0032】
以上のように構成された発光素子1は、青色領域の波長の光を発するフリップチップ型の発光ダイオード(LED)である。例えば、発光素子1は、順電圧が2.9Vで、順電流が20mAの場合に、ピーク波長が450nmの光を発する。また、発光素子1は平面視にて略四角形状に形成される。発光素子1の平面寸法は、例えば、縦寸法及び横寸法がそれぞれ略350μmである。なお、発光素子1は、pバッファ電極及びn電極が同一面側に設けられているので、上記のようなフリップチップ型のLEDの他、フェイスアップ型のLED、垂直発光型のLEDに適用することもできる。垂直発光型のLEDは、例えば、成長基板上に半導体積層構造を形成し、成長基板の反対側の半導体積層構造の表面に異種基板を貼り付け、その後、成長基板を取り除くことにより形成される。
【0033】
なお、サファイア基板10の上に設けられるバッファ層20からp側コンタクト層28までの各層は、例えば、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy : MBE)、ハライド気相エピタキシー法(Halide Vapor Phase Epitaxy : HVPE)等によって形成することができる。ここで、バッファ層20がAlNから形成されるものを例示したが、バッファ層20はGaNから形成することもできる。また、発光層30の量子井戸構造は、多重量子井戸構造でなく、単一量子井戸構造、歪量子井戸構造にすることもできる。
【0034】
また、絶縁層50は、酸化チタン(TiO)、アルミナ(Al)、五酸化タンタル(Ta)等の金属酸化物、若しくはポリイミド等の電気絶縁性を有する樹脂材料から形成することもできる。そして、反射層60は、Agから形成することもでき、Al又はAgを主成分として含む合金から形成することもできる。また、反射層60は、屈折率の異なる2つの材料の複数の層から形成される分布ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflector : DBR)であってもよい。
【0035】
更に、発光素子1は、紫外領域、近紫外領域、又は緑色領域にピーク波長を有する光を発するLEDであってもよく、LEDが発する光のピーク波長の領域はこれらに限定されない。なお、他の変形例においては、発光素子1の平面寸法はこれに限られない。例えば、発光素子1の平面寸法を縦寸法及び横寸法がそれぞれ1mmとなるよう設計することもでき、縦寸法と横寸法とを互いに異なるようにすることもできる。
【0036】
(発光素子1の製造工程)
図2Aから図2Cは、第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程の一例を示す。具体的に、図2Aの(a)は、n側コンタクト層の表面を露出させるためのエッチングが施される前の縦断面図である。図2Aの(b)は、n側コンタクト層の表面を露出させるためのエッチングが施された後の縦断面図である。また、図2Aの(c)は、pコンタクト電極にマスクが形成された状態の縦断面図である。更に、図2Aの(d)は、pコンタクト電極をエッチングした後の縦断面図である。
【0037】
まず、サファイア基板10を準備して、このサファイア基板10の上に、n型半導体層と、発光層と、p型半導体層とを含む半導体積層構造を形成する。具体的には、サファイア基板10上に、バッファ層20と、n側コンタクト層22と、n側クラッド層24と、発光層25と、p側クラッド層26と、p側コンタクト層28とをこの順にエピタキシャル成長してエピタキシャル成長基板を形成する(半導体積層構造形成工程)。
【0038】
続いて、フォトレジストによるマスク200をエピタキシャル成長基板のp側コンタクト層28上にフォトリソグラフィー技術を用いて形成する(図2A(a))。次に、マスク200が形成された部分を除く一部の領域を、p側コンタクト層28からn側コンタクト層22の表面までエッチングした後、マスク200を除去する。これにより、n側クラッド層24からp側コンタクト層28までの複数の化合物半導体層から構成されるメサ部分が形成され、n側コンタクト層22の表面の一部が露出する(図2A(b)、除去工程)。なお、除去工程においては、マスク200が形成されていない部分のn側クラッド層24からp側コンタクト層28までを完全に除去することを目的として、n側コンタクト層22の一部までエッチングする。
【0039】
この後、n側コンタクト層22及びp側コンタクト層28の表面の全体にpコンタクト電極30を形成する。すなわち、露出しているn側コンタクト層22の表面、メサ部分の側面、及びp側コンタクト層28の表面(すなわち、メサ部分の上面)を覆うように、pコンタクト電極30を形成する。本実施形態においてpコンタクト電極30はITOであり、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。そして、n側コンタクト層28のシート抵抗よりもpコンタクト電極30のシート抵抗が低くなるようにpコンタクト電極30を形成する。なお、pコンタクト電極30は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法、又はゾルゲル法等により形成することもできる。そして、pコンタクト電極30を残す領域にフォトレジストによるマスク202を形成する(図2A(c))。続いて、マスク202に被覆されていないpコンタクト電極30をエッチングする。これにより、p側コンタクト層28の所定領域にpコンタクト電極30が形成される(図2A(d)、pコンタクト電極形成工程)。
【0040】
図2B(a)は、n電極及びpバッファ電極を形成した後の縦断面図である。また、図2B(b)は、第1の絶縁層を形成した後の縦断面図である。更に、図2B(c)は、反射層及び第2の絶縁層を形成した後の縦断面図である。
【0041】
まず、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、n電極40a〜40dをn側コンタクト層22の表面の予め定められた一部の領域に形成する。更に、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、pバッファ電極42a,42bをp側コンタクト層28上に設けられたpコンタクト電極30の表面の予め定められた一部の領域に形成する(図2B(a)、電極形成工程)。n電極40a〜40dを構成する材料と、pバッファ電極42a,42bを構成する材料とは互いに異なっていても、同一であってもよい。両者の材料が同一である場合、n電極40a〜40dと、pバッファ電極42a,42bとは同時に形成できる。なお、n電極40a〜40dと、pバッファ電極42a及びpバッファ電極42bとを形成した後、n側コンタクト層22とn電極40a〜40dとの間、並びにpコンタクト電極30とpバッファ電極42a,42bとの間のオーミック接触と密着性とを確保すべく、所定の温度、所定の雰囲気下で、所定の時間の熱処理を施すこともできる。
【0042】
続いて、n電極40a〜40d、並びにpバッファ電極42a,42bを覆う絶縁層50を形成する。具体的には、n側コンタクト層22、n電極40a〜40d、メサ部分、pコンタクト電極30、並びにpバッファ電極42a,42bを覆う第1の絶縁層50aを、プラズマCVD法により形成する(絶縁層形成工程における第1の絶縁層形成工程)。そして、第1の絶縁層50aの上であってn電極40a〜40d、並びにpバッファ電極42a,42bの上方を除く所定の領域に、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて反射層60を形成する(図2B(b)、絶縁層形成工程における反射層形成工程)。次に、図2B(b)の工程において形成された反射層60の上側と、反射層60が形成されていない部分の上側とに、プラズマCVD法を用いて第2の絶縁層50bを形成する(図2B(c)、絶縁層形成工程における第2の絶縁層形成工程)。これにより反射層60が第2の絶縁層50bにより被覆される。そして、第1の絶縁層50aと第2の絶縁層50bとから、本実施形態に係る絶縁層50が構成される。
【0043】
図2C(a)は、絶縁層の一部に開口を形成した後の縦断面図である。更に、図2C(b)は、バリア層及びはんだ層を形成した後の縦断面図である。
【0044】
続いて、絶縁層50におけるn電極40a〜40dの上側部分と、pバッファ電極42a,42bの上側部分とを、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて除去する。これにより、pバッファ電極42a,42bの上にスルーホールである開口52が形成されると共に、n電極40a〜40dの上にスルーホールである開口52が形成される(図2C(a)、開口形成工程)。
【0045】
次に、真空蒸着法及びフォトリソグラフィー技術を用いて、それぞれの開口52の内側に、バリア層を形成する(バリア層形成工程)。n電極40a〜40d上の開口52に形成されたバリア層はn電極40a〜40dに電気的に接続する。また、pバッファ電極42a,42b上の開口52に形成されたバリア層はpバッファ電極42a,42bに電気的に接続する。続いて、バリア層の上にはんだ層を形成する(はんだ層形成工程)。これにより、バリア層とはんだ層とからなる接合電極70が形成され、図2C(b)に示す発光素子1が製造される。
【0046】
なお、n電極40a〜40d、並びにpバッファ電極42a,42bはそれぞれ、スパッタリング法により形成することもできる。また、絶縁層50は、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition : CVD)により形成することもできる。そして、以上の工程を経て形成された発光素子1は、導電性材料の配線パターンが予め形成されたセラミック等から構成される基板の所定の位置に、フリップチップボンディングにより実装される。そして、基板に実装された発光素子1を、エポキシ樹脂又はガラス等の封止材で一体として封止することにより、発光素子1を発光装置としてパッケージ化できる。
【0047】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1は、同一面側にn電極及びpバッファ電極が設けられる発光素子において、シート抵抗がpコンタクト電極30より高いn側コンタクト層22に設けるn電極の数をpバッファ電極の数より多くしたので、平面視における発光素子1の発光面積を大きくすること、更に電極での光吸収を減少させることを目的としてn電極のサイズを、例えば50μm以下の径にしたとしても、発光素子1の順方向電圧の上昇を抑制することができる。また、発光素子1は、複数のn電極を設けることにより単数のn電極を備える場合に比べて、発光素子1に供給される電流をより均一に発光層25に分散させることができる。更に、複数のn電極を設けることにより、発光素子1の静電気耐圧を向上させることができる。
【0048】
また、本実施の形態に係る発光素子1は、n側コンタクト層22のシート抵抗をpコンタクト電極30のシート抵抗より小さくすることを要さないので、n側コンタクト層22のシート抵抗を低下させることを目的として、n側コンタクト層22の厚さを厚くすること、キャリア濃度を増加させることを要さない。したがって、n側コンタクト層22の厚さを厚くすることに起因して、発光素子の製造プロセスにおいて半導体積層構造が形成された基板が反ることがなく、また、キャリア濃度を増加させることに起因してエピタキシャル成長中の半導体層の表面が荒れることを防止できる。
【0049】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の上面の概要を示す。
【0050】
第2の実施の形態に係る発光素子2は、第1の実施の形態に係る発光素子1とは電極の数及び配置が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0051】
第2の実施の形態に係る発光素子2は平面視にて略正方形に形成され、pバッファ電極42a,42bは、この正方形の中線上に設けられる。そして、この中線を軸100に規定する。複数のn電極は、この軸100を挟んだ位置であって、軸100からの距離が同一になる位置に設けられる。本実施形態においては、6つのn電極40a〜40fと、2つのpバッファ電極42a,42bが形成され、3つのn電極40a〜40cが軸100の一方(図3中の上側)に配置され、3つのn電極40d〜40fが軸100の他方(図3中の下側)に配置されている。例えば、左上のn電極40aと左下のn電極40dとは軸100を挟んで互いに反対の位置であって、軸100からの距離が同一の位置に設けられる。つまり、左上のn電極40aと左下のn電極40dとは軸100を対称軸として線対称の位置に設けられ、1つの対をなす。また、中央上のn電極40bと中央下のn電極40eも対をなし、右上のn電極40cと右下のn電極40dも対をなしている。
【0052】
そして、本実施形態では、対をなすn電極同士を結ぶ線と軸100との交点から外れた位置にpバッファ電極42a,42bが設けられている。具体的には、左側のpバッファ電極42aは、左上のn電極40aと左下のn電極40dとを結ぶ線と軸100との交点から、左上のn電極40aと中央上のn電極40bとの間隔の半分の距離だけ発光素子2の中心側にずれた位置に設けられる。右側のpバッファ電極42bは、右上のn電極40cと右下のn電極40fとを結ぶ線と軸100との交点から、右上のn電極40cと中央上のn電極40bとの間隔の半分の距離だけ発光素子2の中心側にずれた位置に設けられる。
【0053】
[第3の実施の形態]
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の上面の概要を示す。
【0054】
第3の実施の形態に係る発光素子3は、第1の実施の形態に係る発光素子1とは電極の数及び配置が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0055】
第3の実施の形態に係る発光素子3は平面視にて略正方形に形成され、pバッファ電極42は、この正方形の中心に1つ設けられる。そして、pバッファ電極42を通る直線であって、この正方形の一辺に平行な直線(例えば、この正方形の中線)を軸100として規定する。複数のn電極は、この軸100を挟んだ位置であって、軸100からの距離が同一になる位置に設けられる。本実施形態においては、4つのn電極40a〜40dが設けられ、例えば、左上のn電極40aと左下n電極40cとは軸100を挟んで互いに反対の位置であって、軸100からの距離が同一の位置に設けられて1つの対をなす。つまり、左上のn電極40aと左下のn電極40cとは軸100を対称軸として線対称の位置に設けられる。右上のn電極40bと右下のn電極40dとの関係も同様である。更に、本実施形態において左上のn電極40aと右下のn電極40dと、右上のn電極40bと左下のn電極40cは、pバッファ電極42を対称中心として点対称の位置に設けられる。
【0056】
[第4の実施の形態]
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る発光素子の上面の概要を示す。
【0057】
第4の実施の形態に係る発光素子4は、第1の実施の形態に係る発光素子1とは電極の数及び配置が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0058】
第4の実施の形態に係る発光素子4は平面視にて略正方形に形成され、この正方形の一辺を三等分する第1軸102及び第2軸104上にそれぞれ複数のpバッファ電極が設けられる。具体的に、左右へ延びる第1軸102上に2つのpバッファ電極42a,42bが設けられ1つのグループをなし、左右へ延びる第2軸104上に2つのpバッファ電極42c,42dが設けられ1つのグループをなす。複数のn電極は、第1軸102又は第2軸104を挟んだ位置であって、第1軸102又は第2軸104からの距離が同一になる位置に設けられる。具体的には、n電極は、第1軸102の上方と、第1軸102と第2軸104の間と、第2軸104の下方とに、左右に並んで3つずつ配置される。例えば、上段左のn電極40aと中段左のn電極40dとは第1軸102を挟んで互いに反対の位置であって、第1軸102からの距離が同一の位置に設けられる。つまり、上段左のn電極40aと中段左のn電極40dとは第1軸102を対称軸として線対称の位置に設けられて1つの対をなす。なお、本実施形態においてn電極が「1つの対をなす」という場合における対をなすn電極は、ある軸からの距離が最短の位置に設けられるn電極同士をいう。
【0059】
同様にして、上段中央のn電極40bと中段中央のn電極40eと、上段右のn電極40cと中段右のn電極40fとはそれぞれ、第1軸102を対称軸として線対称の位置に設けられる。そして、上段中央のn電極40bと中段中央のn電極40eとで1つの対をなし、上段右のn電極40cと中段右のn電極40fとで1つの対をなす。同様にして、中段左のn電極40dと下段左のn電極40gと、中段中央のn電極40eと下段中央のn電極40hと、中段右のn電極40fと下段右のn電極40iとはそれぞれ、第2軸104を対称軸として線対称の位置に設けられ、それぞれ1つの対をなす。
【0060】
また、本実施形態では、第1軸102を対称軸として線対称の位置に設けられるn電極同士を結ぶ線と第1軸102との交点から外れた位置に、第1軸102上のpバッファ電極42a,42bが設けられている。第2軸104上のpバッファ電極42c,42dについても同様である。
【0061】
[第5の実施の形態]
図6(a)は、本発明の第5の実施の形態に係る発光素子の上面の概要を示し、図6(b)は、本発明の第5の実施の形態に係る発光素子の変形例の上面の概要を示す。
【0062】
第5の実施の形態に係る発光素子5及び6は、第1の実施の形態に係る発光素子1とは平面視における素子形状が異なる点を除き、略同一の構成及び機能を有する。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0063】
図6(a)を参照すると、第5の実施の形態に係る発光素子5は、平面視にて略長方形状に形成される。そして、pバッファ電極42は、この長方形の2本の対角線の交点に対応する位置に設けられる。ここで、この長方形の短辺に平行な線であって、pバッファ電極42を通る線を軸100として規定する。2つのn電極40a,40bが、この軸100を対称軸として線対称の位置に設けられる。また、第5の実施の形態においては、各n電極40a,40bとpバッファ電極42とは直線的に設けられる。
【0064】
また、図6(b)を参照すると、第5の実施の形態の変形例に係る発光素子6は、平面視にて略長方形状に形成される。そして、4つのpバッファ電極42a〜42dが、この長方形の短辺の中線上に直線的に設けられる。この中線を、対称の軸106として、計8つのn電極40a〜40hが、軸106について対称の位置に設けられる。第5の実施の形態の変形例においては、対をなす2つのn電極とpバッファ電極とは直線的に設けられる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0066】
1、2、3、4、5、6 発光素子
10 サファイア基板
20 バッファ層
22 n側コンタクト層
23 n型半導体層
24 n側クラッド層
25 発光層
26 p側クラッド層
27 p型半導体層
28 p側コンタクト層
30 pコンタクト電極
40a、40b、40c、40d、40e n電極
40f、40g、40h、40i n電極
42a、42b、42c、42d pバッファ電極
50 絶縁層
50a 第1の絶縁層
50b 第2の絶縁層
52 開口
60 反射層
70 接合電極
70a、70b、70c 接合電極
71 接合電極
72、72a、72b 接合電極
100、102、104、106 軸
200、202 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、発光層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層とが積層され、前記第2半導体層及び前記発光層の一部が除去されて前記第1半導体層が露出した窒化物化合物半導体からなる半導体積層構造と、
前記第2半導体層にオーミック接触するpコンタクト電極と、
前記pコンタクト電極にオーミック接触する点状の第2電極と、
前記第1半導体層の露出部分にオーミック接触し、前記第2電極の数より多い複数の点状の第1電極と、を備える発光素子。
【請求項2】
前記第1半導体層は、n型半導体層であり、
前記第2半導体層は、p型半導体層であり、
前記n型半導体層は、前記pコンタクト電極のシート抵抗より高いシート抵抗を有する請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1電極はn電極であり、前記第2電極はpバッファ電極であり、
前記n電極と前記pバッファ電極との間の平面視における距離が最短になる部分が複数存在する請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
複数の前記n電極は、平面視にて前記pバッファ電極を通る軸を対称軸として線対称の位置に設けられる少なくとも1つの対をなす請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
複数の前記pバッファ電極が前記pコンタクト電極上に直線的に配置される少なくとも1つのグループをなし、
前記複数のn電極は、前記対称軸に対して線対称の位置に設けられる請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記pバッファ電極は、前記pコンタクト電極上に1つ設けられ、
複数の前記n電極は、前記pバッファ電極を対称中心として点対称の位置に設けられる請求項3に記載の発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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