説明

発光素子

【課題】光取出し面おける電流密度分布の偏りを小さくすることを目的とする
【解決手段】本発明に係る発光素子100は、第1主面及び第2主面を有する半導体部10と、第1主面上に配置された第1電極20と、第2主面上に配置された第2電極30と、を備える発光素子であって、第1主面の形状は矩形であり、第1電極20は矩形の対向する一対の辺のうち一方の辺12a側に設けられた第1接続部21及び第2接続部22と、第1接続部から他方の辺に向かって延伸する第1延伸部23と、第2接続部から他方の辺に向かって延伸する第2延伸部24と、第1延伸部から第2延伸部に向かって延伸する2つの第3延伸部25と、2つの第3延伸部で挟まれた領域において第2延伸部から第1延伸部に向かって延伸する第4延伸部26と、を有し、第3延伸部25と第4延伸部26との間隔は、第1及び第2接続部から離れるに従って狭くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関し、特に、p側電極とn側電極とが対向して半導体部を挟んで配置された発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子は、光取出し面内で均一な発光分布であることが求められ、そのために光取出し面内における電流密度が均一であることが求められている。例えば、図5に示すように、p側電極とn側電極とが同一面上に設けられた同一電極構造の発光素子では、p側電極とn側電極との間で対向する部分を多くさせるとともに等間隔の電極パターンにすることで、光取出し面での電流密度分布の偏りを小さくでき、均一な発光分布となることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−319704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、p側電極とn側電極とで半導体部を挟んだ対向電極構造の発光素子の場合、従来技術のような光取出し面で等間隔の電極パターンにすると、光取出し面における電流密度分布を均一にすることができない。これは、対向電極構造の発光素子の場合、電流がp側電極とn側電極とを結ぶ方向である半導体部厚み方向に流れ易く、電極平面方向には流れにくい傾向があるため、電極面内において外部から電流が供給される地点(以下、電流供給地点)から離れるほど、供給される電流量が少なくなり、電流密度が低下するためである。そのため電流供給地点とその地点から離れた地点とでは供給される電流量が異なるため、光取出し面における電流密度分布の偏りが生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みてなされたものであり、光取出し面における電流密度分布の偏りを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光素子は、第1主面及び第2主面を有する半導体部と、第1主面上に配置された第1電極と、第2主面上に配置された第2電極と、を備える発光素子であって、第1主面の形状は矩形であり、第1電極は矩形の対向する一対の辺のうち一方の辺側に設けられた第1接続部及び第2接続部と、第1接続部から他方の辺に向かって延伸する第1延伸部と、第2接続部から他方の辺に向かって延伸する第2延伸部と、第1延伸部から第2延伸部に向かって延伸する2つの第3延伸部と、2つの第3延伸部で挟まれた領域において第2延伸部から第1延伸部に向かって延伸する第4延伸部と、を有し、第3延伸部と第4延伸部との間隔は、第1及び第2接続部から離れるに従って狭くなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光取出し面における電流密度分布の偏りを小さくすることができ、発光分布の輝度ムラを抑制可能な発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光素子を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る発光素子のX−Y断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る発光素子を示す平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る発光素子を示す平面図である。
【図5】従来の発光素子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る発光素子について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。各図面が示す部材のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0010】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る発光素子100について、図1及び図2を参考にしながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る発光素子100を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る発光素子100のX−Y断面図である。
【0011】
第1実施形態に係る発光素子100は、第1主面11a及び第2主面11bを有する半導体部10と、第1主面11a上に配置された第1電極20と、第2主面11b上に配置された第2電極30と、を備える。発光素子100は、図1に示すように、第1主面11a側から見て、第1主面11aの形状は矩形であり、第1電極20は矩形の対向する一対の辺のうち一方の辺12a側に設けられた第1接続部21及び第2接続部22と、第1接続部21から他方の辺12bに向かって延伸する第1延伸部23と、第2接続部22から他方の辺12bに向かって延伸する第2延伸部24と、第1延伸部23から第2延伸部24に向かって延伸する2つの第3延伸部25と、2つの第3延伸部25で挟まれた領域において第2延伸部24から第1延伸部23に向かって第3延伸部23と対向するように延伸する第4延伸部26と、を有し、第3延伸部25と第4延伸部26との間隔は、第1及び第2接続部(21、22)から離れるに従って狭くなることを特徴とする。ここで、「矩形」とは、4つの角が実質的に直角である四角形を指し、正方形や長方形が含まれる。また、「一方の辺12a側」とは、対向する一対の辺(12a及び12b)のそれぞれから等距離に位置する中間線(図示なし)と一方の辺12aとに挟まれた領域を指す。
【0012】
これより、他方の辺12b側(すなわち、電流供給地点である第1及び第2接続部から離れる)ほど、第3延伸部と第4延伸部との間の電流密度を高めることができる。対向電極構造は、他方の辺12b側ほど供給される電流量が少なくなるため、電流密度が低下するが、上記した構成にすることで、その電流密度の低下を補うことができる。したがって、一方の辺12a側と他方の辺12b側との電流密度差を小さくでき、第1主面11aにおいて電流密度分布の偏りが小さい発光素子とすることができる。
【0013】
以下、発光素子100を構成する主な構成要素について説明する。
【0014】
(半導体部)
半導体部10は、発光素子100における発光機能を果たす部材である。半導体部10は、図2に示すように、半導体部10を挟んで対向する第1主面11a及び第2主面11bを有し、第1主面11aが光取出し面となる。また、半導体部10は、第1主面側から見て矩形として形成されており、本実施形態では1辺が約1mmの正方形である。半導体部10は、図示は省略したが、第1主面側から順に、第1半導体部、発光部、第2半導体部が設けられた構造を有する。
【0015】
第1半導体部は、半導体部の第1主面側に形成され、第1電極と接続させるための部位である。また、第2半導体部は、半導体部の第2主面側に形成され、第2電極と接続させるための部位である。第1半導体部及び第2半導体部は、互いに異なる極性を有する。本実施形態では、第1半導体部をn型半導体、第2半導体部をp型半導体とする。
【0016】
第1半導体部及び第2半導体部を構成する材料については限定されず、種々のものを用いることができる。本実施形態では、第1半導体部及び第2半導体部を構成する材料として、InAlGa1−x−yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1)を用いた。
【0017】
第1半導体部の上面、すなわち半導体部の第1主面には、図2に示すように、波状の凹凸部が形成されている。凹凸(ディンプル加工)部は、半導体部の第1主面側にあり、この波状の凹凸部によって半導体部内の光の角度を変えることができる。従って、半導体部の上面に凹凸部を形成することで、光の全反射によって半導体部の外部に出射されない光を外部に取り出すことができ、光取出し効率を向上させることができる。なお、この凹凸部の深さは、光取出し効率を適切に向上させるという観点から、0.2〜3.0μmとすることが好ましく、1.0〜1.5μmとすることがより好ましい。
【0018】
発光部は、n型半導体である第1半導体部とp型半導体である第2半導体部とに挟まれており、第1半導体部及び第2半導体部から注入される電子及び正孔の再結合によって生成するエネルギーを光として放出する部位である。発光部の構成については限定されず、種々のものを用いることができる。本実施形態では、多重量子構造の活性層を用いた。
【0019】
(第1電極)
第1電極20は、第1主面11a側から半導体部10に対して電流を供給するための電極であり、本実施形態では、発光素子100が備える正負一対の電極のうち、負極であるn側電極として機能する。第1電極20は、図2に示すように、半導体部10の第1主面上に形成され、半導体部10を介して第2電極30と対向している。第1電極20は、図1に示すように、第1接続部21及び第2接続部22と、第1〜5延伸部(23〜27)とを備える。
【0020】
(第1接続部及び第2接続部)
第1接続部21及び第2接続部22は、導電性のワイヤ等の接続部材を経由して外部から電流が供給される部位である。第1及び第2接続部(21、22)は、図1に示すように、矩形形状である第1主面11a上において、矩形の対向する一対の辺のうち一方の辺12a側に設けられる。さらに、第1及び第2接続部(21、22)は、一方の辺12aの近傍に設けられることが好ましい。これより、第1又は2接続部と外部とをつなぐワイヤが第1主面を覆う範囲を小さくすることができるため、第1主面における光取出し面積を大きくすることができる。
【0021】
第1及び第2接続部は、第1及び第2接続部の各中心点を結ぶ直線(図示なし)が、一方の辺12aと平行であることが好ましい。さらに好ましくは、第1及び2接続部は、一方の辺12aの中点と他方の辺12bの中点とを結ぶ直線(図示なし)に関して対称であることが良い。これより、前記した直線を境界として第1接続部が設けられる側と第2接続部が設けられる側とは、同一の電流密度分布となり、輝度ムラを抑制することができる。
【0022】
(第1延伸部及び第2延伸部)
第1延伸部23は、第1接続部21から延伸する部位であり、第2延伸部24は、第2接続部22から延伸する部位であり、第1及び第2接続部(21、22)に供給された電流を第1主面の平面方向に供給するための電極である。
【0023】
第1及び第2延伸部(23、24)は、図1に示すように、第1主面11aの他方の辺12b側に向かって延伸する。好ましくは、他方の辺12bの近傍まで延伸するのが良い。これより、一方の辺12a側から他方の辺12b側までの広範囲に電流を供給することができる。また、第1及び2延伸部は、第1接続部及び第2接続部の各中心点を結ぶ直線(図示なし)に対して垂直に延伸する、すなわち、第1主面11aにおける一方の辺12aに対して直交する辺と平行して延伸することが好ましい。なお、第1及び第2延伸部は、一方の辺12aに対して直交する辺と完全に平行でなく多少角度を有しても良い。
【0024】
なお、本実施形態では、第1及び第2接続部として接続部を2つ設けて、それぞれに後記する第3及び第4延伸部を設けるが、第1主面の大きさを考慮して、接続部を追加して設け、追加した接続部に延伸部を設けても良い。
【0025】
(第3延伸部及び第4延伸部)
第3延伸部25は、第1延伸部23から延伸する部位であり、第4延伸部26は、第2延伸部24から延伸する部位であり、第1及び第2延伸部ではカバーされない第1主面の領域に電流を供給するための電極である。
【0026】
本実施形態では、第1延伸部23から延伸する第3延伸部25が2つ、第2延伸部24から延伸する第4延伸部26が1つ設けられており、第4延伸部26が2つの第3延伸部で挟まれた領域において第1延伸部に向かって第3延伸部と対向するように延伸する。すなわち、第3延伸部25と第4延伸部26とが櫛状に互い違いで設けられる。これより、第1主面11aにおける第1延伸部と第2延伸部とで挟まれた領域にバランスよく電流を供給することができる。
【0027】
ここで、第3延伸部25は、第4延伸部に対向し一方の辺12a側に設けられる方を第3延伸部25a、第4延伸部に対向し他方の辺12b側に設けられる方を第3延伸部25bとする。第3延伸部25と第4延伸部26との間隔は、第1及び第2接続部から離れるに従って狭くなる。すなわち、図1に示すように、第4延伸部26と第3延伸部25bとの間隔(間隔B)は、第4延伸部26と第3延伸部25aとの間隔(間隔A)よりも小さいことが好ましい。これより、第4延伸部26と第3延伸部25bとの間の領域の電流密度を高めることができ、第1主面11aにおける電流密度分布の偏りを小さくすることができる。
【0028】
第3延伸部25の先端部と第2延伸部24との間隔及び第4延伸部26の先端部と第1延伸部23との間隔は、第1及び第2接続部(21、22)から離れるに従って狭くなることが好ましい。すなわち、第3延伸部25aの先端部と第2延伸部24との間隔、第4延伸部24の先端部と第1延伸部23との間隔、第3延伸部25bの先端部と第2延伸部24との間隔の順に狭くなることが好ましい。延伸部において枝分かれ部分が多いと、当該部分で電流集中が生じやすい。しかし、第3延伸部の先端部と第2延伸部とを離間させることにより、第1主面中における枝分かれ部分を減らし、当該部分における電流密度が過度に高くなることを抑制することができる。さらに、その間隔を第1及び第2接続部側に近いほど広くすることで、第3延伸部の先端部と第2延伸部との間、第4延伸部の先端部と第1延伸部との間で電流密度が過度に高くなることを抑制することができる。なお、第3延伸部は、第1延伸部から延伸して第2延伸部とつなげても良い。第4延伸部も同様に、第2延伸部から延伸して第1延伸部とつなげても良い。
【0029】
第3及び第4延伸部(25、26)は、互いに平行であることが好ましい。これより、第3及び第4延伸部が延伸する方向における第3延伸部と第4延伸部との間隔が一定となり、その間の電流密度を均一にすることができる。
【0030】
なお、本実施形態は、第3延伸部を2つ、第4延伸部を1つ設けているが、これに限定されることなく、第3延伸部を1つ、第4延伸部を2つにすることもできるし、さらに、発光素子又はその他の種々のパラメータを考慮して、第3及び第4延伸部の数を適宜選択しても良い。
【0031】
また、本実施形態の第3及び第4延伸部は、直線状に延伸し、その先端が丸みを帯びた形状であるが、これに限定されない。例えば、ギザギザ状または波状に延伸しても良いし、その先端は角張っていても良い。
【0032】
(第5延伸部)
第5延伸部27は、第1延伸部23の先端部と第2延伸部24の先端部とをつなぐように延伸する部位であり、第1主面11aの他方の辺12b側に電流を供給するための電極である。
【0033】
第5延伸部27と第5延伸部に対向する第3延伸部25bとの間隔(間隔C)は、第4延伸部26と第5延伸部に対向する第3延伸部25bとの間隔(間隔B)より小さいことが好ましい。より好ましくは、図1に示すように、第4延伸部26と第3延伸部25aとの間隔(間隔A)、第4延伸部26と第3延伸部25bとの間隔(間隔B)、第5延伸部27と第3延伸部25bとの間隔(間隔C)の順に狭くなること(すなわち、間隔A>間隔B>間隔C)が良い。このような関係を満たすように第5延伸部を設けることで、第1主面上における第3延伸部25bと第5延伸部27とで挟まれた領域の電流密度分布が、第1主面上における第3延伸部25aと第4延伸部26とで挟まれた領域及び第4延伸部と第3延伸部25bとで挟まれた領域の電流密度分布と同様にできるため、第1主面のより広範囲で電流密度分布の偏りを小さくすることができる。
【0034】
第5延伸部27は、第3延伸部25bと平行であることが好ましい。これより、第5延伸部が延伸する方向における第5延伸部27と第3延伸部25bとの間の電流密度を均一にすることができる。
【0035】
第5延伸部27から他方の辺12bまでの距離(すなわち、第3及び第4延伸部のうち最も他方の辺12b側に設けられる延伸部から他方の辺12bまでの距離)は、第3延伸部25aから一方の辺12aまでの距離(すなわち、第3及び第4延伸部のうち最も一方の辺12a側に設けられる延伸部から一方の辺12aまでの距離)より短いことが好ましい。第3延伸部25aは第5延伸部より第1接続部側に配置されるために第1接続部から供給される電流量が多くなるので、第3延伸部25aから一方の辺12aまでの距離を長くすることで、第3延伸部25aと一方の辺12aとの間の電流密度が増大しすぎることを抑制する。一方、第5延伸部27は第3延伸部より第1接続部から遠ざかって配置されるために第1接続部から供給される電流が少なくなるので、第5延伸部27から他方の辺12bまでの距離を短くすることで、第5延伸部27と他方の辺12bとの間の電流密度が増大できる。これより、第1主面の一方の辺12a側と他方の辺12b側との電流密度分布の偏りを小さくすることができる。
【0036】
第1電極20の厚さは限定されないが、導電性の観点から、例えば0.1〜5μmとすることが好ましい。また、第1電極の材料としては、Ni、Au、W、Pt、Ti、Al等を用いることができ、本実施形態では、Ti/Pt/Auの多層膜を用いた。なお、「Ti/Pt/Au」は、図2に示す本発明の発光素子の断面図において下側から順にTi、Pt及びAuが積層されていることを指す。
【0037】
なお、第5延伸部を設けない場合でも、本発明の効果を得ることができる。
【0038】
(第2電極)
第2電極30は、第2主面側から半導体部10に対して電流を供給するための電極であり、本実施形態では、発光素子100が備える正負一対の電極のうち、正極であるp側電極として機能する。第2電極30は、図2に示すように、半導体部10の下面に形成され、半導体部10を介して、第1電極20と対向している。
【0039】
第2電極30は、図2に示すように、第2電極直上に第1電極20が形成されない程度に設けられるのが好ましい。第1電極と第2電極との位置関係をこのような関係とすることで、第1電極20と第2電極30との間を流れる電流が半導体部10内を膜厚方向に最短で流れることがなく、電流が面内に広範囲に分散されるようになる。従って、半導体部内で比較的均一に発光するようになり、光取出し効率が向上する。
【0040】
また、第2電極の面積は、第1電極の面積よりも大きく形成することが好ましい。発光素子は、第1及び第2電極の面積をこのような関係とすることで、電流を注入する領域の面積を大きくすることができ、発光効率が向上させることができる。また、発光による熱の放熱性も向上させることができ、発光素子の放熱性を改善することができる。
【0041】
第2電極の厚さは限定されないが、導電性の観点から、例えば0.05〜0.5μmとすることが好ましい。また、第2電極の材料としては、Ni、Au、W、Pt、Ti、Al、Ir、Rh、RhO、Ag等を用いることができ、本実施形態では、Pt/Ti/Ni/Agの多層膜を用いた。
【0042】
(支持基板)
支持基板40は、電極や半導体部等の各部材を積層するためのものである。支持基板の面積は限定されず、半導体部の大きさによって適宜選択される。支持基板は、図2では半導体部より大きい面積を有するが、半導体部と同じ面積でも良い。また、支持基板の厚さは限定されないが、放熱性の観点から、例えば50〜500μmとすることが好ましい。
【0043】
支持基板の材料としては、Si、SiC、AlN、AlSiC、Cu−W、Cu−Mo、Cu−ダイヤ等の金属とセラミックの積層体等を用いることができる。そしてその中でも、安価でチップ化のしやすいSiを用いることが好ましい。
【0044】
(接合層)
接合層50は、支持基板40に第2電極30及び第2保護膜70を接合するとともに、支持基板40を介して第2電極30と後記する裏面メタライズ層80とを電気的に接続するための導電性の層である。接合層50は、図2に示すように、支持基板40の上部に形成される。
【0045】
接合層の厚さは限定されないが、接合性及び導電性の観点から、1〜5μmとすることが好ましい。また、接合層の材料としては、Ti、Pt、Au、Sn、Au、Ag、Cu、Bi、Pb、Zn等の金属材料及びこれらの合金を用いることができる。本実施形態では、TiSi/Pt/Au/AuSn/Au/Ptの多層膜を用いた。なお、「TiSi/Pt/Au/AuSn/Au/Pt」は、図2に示す本発明の発光素子の断面図において下側から順にTiSi、Pt、Au、AuSn、Au及びPtが積層されていることを指す。
【0046】
(第1保護膜)
第1保護膜60は、半導体部10及び第1電極20を、電流のショートや埃・塵の付着等による物理的ダメージから保護するための部材である。第1保護膜60は、図2に示すように、第1電極20及び半導体部10の第1主面11a上に形成される。但し、第1保護膜60は、第1及び第2接続部の開口部の上部では開口されており、第1及び第2接続部が外部に露出されるように構成される。なお、第1保護膜60は、図2では第1電極20の側面と隣接しているが、第1電極20と間隔を空けて設けることもできる。
【0047】
第1保護膜の材料は限定されず、種々のものを用いることができる。本実施形態では、SiOを用いた。第1保護膜の厚さは限定されないが、例えば0.2〜0.5μmとすることが好ましい。
【0048】
(第2保護膜)
第2保護膜70は、半導体部10及び第2電極30を、電流のショート等による物理的ダメージから保護するための部材である。第2保護膜70は、図2に示すように、接合層50上における第2電極30に隣接する領域に形成される。なお、第2保護膜70は、図2では第2電極30の側面と隣接しているが、間隔を空けて設けることもできる。
【0049】
第2保護膜の厚さは限定されないが、例えば0.2〜0.5μmとすることが好ましい。また、第2保護膜の材料としては、Ti、Al、Pt、SiO、ZrO等を用いることができ、本実施形態では、Ti/SiO/Ti/Ptの多層膜を用いた。
【0050】
(裏面メタライズ層)
裏面メタライズ層80は、発光素子100において、オーミック電極として機能する層である。裏面メタライズ層80は、図2に示すように、支持基板40において接合層50が形成されている側と対向する側に形成される。
【0051】
裏面メタライズ層の厚さは限定されないが、導電性の観点から、例えば0.5〜0.8μmとすることが好ましい。本実施形態では、裏面メタライズ層を構成する材料として、Au/AuSn/Pt/TiSiの多層膜を用いた。
【0052】
なお、本実施形態では、発光素子100は、支持基板40、接合層50、第1保護膜60、第2保護膜70及び裏面メタライズ層80を備える構成としているが、これらの部材を備えなくても本発明の効果を得ることができる。
【0053】
[発光素子の製造方法]
以下、本発明の第1実施形態に係る発光素子100の製造方法について説明する。発光素子100の製造方法は、半導体部形成工程と、第2電極形成工程と、第2保護膜形成工程と、接合層形成工程と、貼り合わせ工程と、第1電極形成工程と、第1保護膜形成工程と、を含む。以下、各工程について説明する。
【0054】
<半導体部形成工程>
半導体部形成工程は、異種基板上に第1半導体部、発光部及び第2半導体部からなる半導体部を形成する工程である。半導体部形成工程では、サファイア等からなる異種基板上の表面に、所定の半導体材料、ドーパントなどを含むガスを供給して、第1半導体部、発光部および第2半導体部の順に形成させる。
【0055】
<第2電極形成工程>
第2電極形成工程は、半導体部10上に第2電極30を形成する工程である。第2電極形成工程では、半導体部10の第2半導体層上の表面に、レジストを用いて第2電極30に対応したマスクを形成し、スパッタリング等で電極材料を積層することによって、第2電極30を形成する。
【0056】
<第2保護膜形成工程>
第2保護膜形成工程は、半導体部10上に第2保護膜70を形成する工程である。第2保護膜形成工程では、半導体部10の第2半導体部上の表面に、レジストを用いて第2保護膜70に対応したマスクを形成し、スパッタリング等で絶縁膜材料を積層することによって、第2保護膜70を形成する。
【0057】
<接合層形成工程>
接合層形成工程は、半導体部10、第2電極30及び第2保護膜70上に接合層50を形成する工程である。接合層形成工程では、半導体部10、第2電極30及び第2保護膜70上に、スパッタリング等で導電膜材料を積層することによって、接合層50を形成する。
【0058】
<貼り合わせ工程>
貼り合わせ工程は、半導体部10を備える異種基板と支持基板40とを貼り合わせる工程である。貼り合わせ工程では、前記した接合層50が同様に形成された支持基板40を用意し、支持基板40の接合層と異種基板の接合層とを貼り合わせ、互いに接合する。そして、異種基板を除去する。なお、貼り合わせ工程後、支持基板40の厚みを薄くすることで発光素子を小型化することもできる。
【0059】
<第1電極形成工程>
第1電極形成工程は、半導体部10上に第1電極20を形成する工程である。第1電極形成工程では、半導体部10の第1半導体層上の表面に、レジストを用いて第1電極に対応したマスクを形成し、スパッタリング等で電極材料を積層することによって、第1電極10を形成する。そして、レジストを除去することによって、第1電極20が形成されていない領域を形成する。なお、第1電極20を形成する前に、半導体部10の上面に凹凸(ディンプル加工)部を形成することもできる。
【0060】
<第1保護膜形成工程>
第1保護膜形成工程は、半導体部10上に第1保護膜60を形成する工程である。第1保護膜形成工程では、半導体部10上の表面に、スパッタリング等で絶縁膜材料を積層することによって、第1保護膜60を形成する。そして、第1保護膜60のうち第1電極20の第1及び第2接続部(21、22)に相当する領域を除去し、第1及び第2接続部(21、22)を露出させる。
【0061】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態に係る発光素子200について、図3を参照しながら説明する。図3は、第2実施形態に係る発光素子200を示す平面図である。発光素子200は、発光素子100と比べて第1電極20の配置のみが異なる構成である。前記した発光素子100と重複する構成については、同じ符号を付して説明を省略する。また、発光素子200は、前記した発光素子100と、断面構造(図2)及び製造方法についてもほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0062】
第2実施形態に係る発光素子200の第1電極120は、図3に示すように、第1及び第2接続部(121、122)と、第1〜5延伸部(23〜27)と、を備え、第1及び第2接続部(121、122)が第1主面11aの矩形の隣接する2つの隅部(すなわち、第1主面の隣り合う2つの角部)に設けられ、第1延伸部23は第1接続部121の第2接続部122側から第1接続部121と第2接続部122とを結ぶ直線に対して垂直な方向に延伸しており、第2延伸部24は第2接続部122の第1接続部121側から第1接続部121と第2接続部122とを結ぶ直線に対して垂直な方向に延伸している構成を有する。
【0063】
これより、第5延伸部27の長さを短くすることができるため、発光部からの光が第5延伸部27で遮られる面積は小さくなり、第1主面11aの光取出し面積を大きくすることができる。さらに、第1接続部121が第1主面11aの角部に設けられることで、ワイヤが第1主面11aからの光を遮断することなく第1接続部121から外部へ取り付けられる方向をより広範囲にできる。これより、発光素子を設計する際の自由度を高くすることができる。なお、第2接続部122についても同様の効果を得ることができる。
【0064】
ここで、第1延伸部23は、第1接続部121から他方の辺12b側に直線として延伸することに限定されず、第1主面11aの一方の辺12aの中点と他方の辺12bの中点とを結ぶ直線側に一旦延伸させた後に他方の辺12b側に延伸させるように、段階的に延伸させることもできる。第2延伸部24についても同様の構成にすることができる。
【0065】
[第3実施形態]
以下、第3実施形態に係る発光素子300について、図4を参照しながら説明する。図4は、第3実施形態に係る発光素子300を示す平面図である。第3実施形態に係る発光素子300は、図4に示すように、第2実施形態に係る発光素子200と比べて第1電極の第1及び第2接続部の形状のみが異なる構成である。すなわち、発光素子200における第1電極120の第1及び第2接続部(121、122)の形状は円形であるが、発光素子300おける第1電極220の第1及び第2接続部(221、222)の形状は四角形である。なお、四角形は、4隅が角部であることに限定されず、丸みを帯びていても良いし、さらに、四角形を構成する辺が直線であることに限定されず、曲線となっていても良い。
【符号の説明】
【0066】
100、200、300 発光素子
10 半導体部
11a 第1主面
11b 第2主面
12a 一方の辺
12b 他方の辺
20、120,220 第1電極
21、121、221 第1接続部
22、122、222 第2接続部
23 第1延伸部
24 第2延伸部
25、25a、25b 第3延伸部
26 第4延伸部
27 第5延伸部
30 第2電極

40 支持基板
50 接合層
60 第1保護膜
70 第2保護膜
80 裏面メタライズ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有する半導体部と、前記第1主面上に配置された第1電極と、前記第2主面上に配置された第2電極と、を備える発光素子であって、
前記第1主面の形状は、矩形であり、
前記第1電極は、前記矩形の対向する一対の辺のうち一方の辺側に設けられた第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部から他方の辺に向かって延伸する第1延伸部と、前記第2接続部から前記他方の辺に向かって延伸する第2延伸部と、前記第1延伸部から前記第2延伸部に向かって延伸する2つの第3延伸部と、前記2つの第3延伸部で挟まれた領域において前記第2延伸部から前記第1延伸部に向かって延伸する第4延伸部と、を有し、
前記第3延伸部と前記第4延伸部との間隔は、前記第1及び第2接続部から離れるに従って狭くなることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第3延伸部の先端部と前記第2延伸部との間隔及び前記第4延伸部の先端部と前記第1延伸部との間隔は、前記第1及び第2接続部から離れるに従って狭くなることを特徴とする請求項1に記載された発光素子。
【請求項3】
前記第1電極は、前記第1延伸部の先端部と前記第2延伸部の先端部とをつなぐ第5延伸部を有し、
前記第5延伸部と前記第5延伸部に対向する前記第3延伸部との間隔は、前記第4延伸部と前記第5延伸部に対向する前記第3延伸部との間隔より狭いことを特徴とする請求項1または2に記載された発光素子。
【請求項4】
前記第1主面は光取出し面であり、
前記第1及び第2接続部は、前記第1主面の矩形の隣接する2つの隅部に設けられることを特徴とする請求項3に記載された発光素子。
【請求項5】
前記第1延伸部は、前記第1接続部の前記第2接続部側から前記第1接続部と前記第2接続部とを結ぶ直線に対して垂直な方向に延伸しており、
前記第2延伸部は、前記第2接続部の前記第1接続部側から前記第1接続部と前記第2接続部とを結ぶ直線に対して垂直な方向に延伸していることを特徴とする請求項4に記載された発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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