説明

発光装置、その製造方法、及び電子機器

【課題】 均一な発光特性を得られる複数の発光素子を備えた発光装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の有機EL装置(発光装置)100は、素子基板102上に有機EL素子3を配列してなる発光領域103を備え、前記発光領域103には、有機物隔壁221が設けられ、該有機物隔壁221の開口部221aに前記有機EL素子3が形成されており、前記発光領域103の外側の前記素子基板102上に、前記発光領域103の有機物隔壁221を延設してなる隔壁を備えた第1のダミー領域104が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、その製造方法、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光材料を含む発光部を備えた有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置等の発光装置の開発が行われている。また、有機EL装置の製造方法として、有機蛍光材料等の機能材料をインク化し、該インク(組成物)を基材上に吐出する液滴吐出法によって機能材料のパターニングを行う方法が知られている。液滴吐出法は、マイクロオーダーの液滴を基体に配することが可能なため、材料の利用効率を考えると、スピンコートなどの方法に比べて有効である。
【0003】
下記特許文献1には、液滴吐出法を用いた有機EL装置の製造に際して、画素領域で構成される表示領域の周辺部における溶媒の蒸発速度に差異に起因する機能層の膜厚むらを改善するために、周辺部のさらに外側に表示に寄与しないダミー領域を形成する技術が開示されている。かかるダミー領域にも機能層と同一のインクを塗布することで、機能層の膜厚むらが生じるのを防止ないし抑制するのである。
【特許文献1】特開2002−252083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者が検討を重ねたところ、上記特許文献1に開示のダミー領域を形成する技術を用いた場合にも、十分な膜厚むらの解消に至らず、発光特性が素子間でばらつく場合があることが判明した。
本発明は、かかる事情に鑑みて成されたものであって、均一な発光特性を得られる複数の発光素子を備えた発光装置、及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発光装置は、上記課題を解決するために、基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を備え、前記発光領域に、複数の前記第1電極を区画する隔壁が設けられ、前記隔壁に囲まれる前記第1電極上に、前記発光部が形成されており、前記発光領域の外側の前記基板上には、前記隔壁を延設してなる隔壁形成領域が設けられていることを特徴とする。
この構成によれば、前記発光領域の外側に隔壁形成領域を設けたことで、前記発光領域の隔壁に対してプラズマ処理による表面処理を施すに際して、発光領域の端部においてプラズマ処理に不均一が生じるのを防止することができる。これにより、発光領域の隔壁に対して均一にプラズマ処理を施すことが可能になり、隔壁により区画された領域に形成される発光部が、発光素子間で均一なものとなる。従って本発明によれば、発光領域全体で均一な発光特性を備えた発光装置を得ることができる。
【0006】
本発明の発光装置では、前記発光素子が、前記発光部に有機発光層を含んでなる有機EL素子であることが好ましい。本発明は特に発光素子として有機EL素子を備えた有機エレクトロルミネッセンス装置について好適に用いることができるものである。
【0007】
本発明の発光装置では、前記発光領域が、基板面内に長手方向を有して形成され、前記隔壁形成領域が、前記発光領域の長手方向外側に設けられていることが好ましい。一方向に長手の部材に対するプラズマ処理では、部材の端縁部と中央部とでプラズマ処理の程度に差異が生じやすくなる。従って、前記隔壁成形領域を設ける本発明の構成は、かかる長手方向を有する発光領域について特に有効である。
【0008】
本発明の発光装置では、前記隔壁形成領域に配された前記隔壁に囲まれた領域内に、導電膜が形成されていることが好ましい。このように隔壁に囲まれる領域に導電膜を備えた構成とするならば、隔壁形成領域の表面の電気的構成を発光領域と同じくすることができるので、隔壁形成領域においてプラズマの状態に変化が生じるのを抑えることができ、さらにプラズマ処理の均一性を高めることができる。
【0009】
本発明の発光装置では、前記導電膜が、前記第1電極と同層に形成された導電膜であることが好ましい。この構成によれば、前記導電膜を第1電極と同工程で形成できるので、製造コストを上昇させることなく効率よく隔壁形成領域を形成することができる。
【0010】
本発明の発光装置では、前記隔壁形成領域に配された前記隔壁に囲まれた領域内に、前記発光部を構成する機能層の少なくとも一部が形成されている構成とすることもできる。すなわち、前記隔壁形成領域はダミー画素領域として用いることもできる。液相法を用いて機能層を形成する製造方法では、機能層を形成するためのインクを前記第1電極上に配置し、乾燥固化させることで発光部を形成するが、このインクを乾燥させる際に、発光領域の端部でインクに含まれる分散媒や溶媒の蒸発速度が発光領域中央部よりも速くなり、機能層に膜厚むらを生じることがある。そこで、本構成のように隔壁形成領域の隔壁に囲まれる領域内にも機能層を形成するようにすれば、発光領域端部での蒸発速度の不均一が解消され、発光領域全体で均一な膜厚の機能層を形成でき、均一な発光特性を有する発光部を形成することができる。
【0011】
本発明の発光装置では、前記隔壁形成領域が、平面的に区画された第1の隔壁形成領域と第2の隔壁形成領域とを有しており、前記第1の隔壁形成領域の前記隔壁に囲まれた領域内にのみ、前記機能層が形成されている構成とすることもできる。すなわち、隔壁形成領域の一部のみをダミー画素領域として用いてもよい。
【0012】
本発明の発光装置では、前記隔壁形成領域における前記隔壁の面積率が、前記発光領域における前記隔壁の面積率より大きい構成とすることもできる。このような構成とすることで、プラズマ処理の均一性をさらに高めることができる。
あるいは、本発明の発光装置では、前記隔壁形成領域における前記隔壁の平面パターン形状が、前記発光領域における前記隔壁の平面パターン形状と略同一である構成としてもよい。
【0013】
本発明の発光装置では、前記基板上に、前記発光素子と直接又は他の回路素子を介して接続された外部接続端子が設けられ、前記外部接続端子が、前記発光領域の長手方向延長上に配設された前記隔壁形成領域の近傍に配置されており、前記外部接続端子の近傍における前記隔壁形成領域における前記隔壁の形成密度が、他の隔壁形成領域における前記隔壁の形成密度より大きくされている構成とすることもできる。
前記外部接続端子は、基板上において比較的大きな導電体であるため、プラズマに与える影響も相応に大きくなるものと考えれられる。そこで、この外部接続端子の近傍に前記隔壁形成領域を配置し、さらに隔壁形成領域の面積率を大きくすることで、外部接続端子がプラズマに与える影響を小さくし、発光領域におけるプラズマ処理の均一性が損なわれるのを効果的に防止することができる。
【0014】
本発明の発光装置の製造方法は、基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を設けてなる発光装置の製造方法であって、前記基板上に前記第1電極を形成する電極形成工程と、前記発光領域となる領域にて前記第1電極を区画する隔壁を形成する隔壁形成工程と、前記隔壁が形成された前記基板の表面にプラズマ処理を施す表面処理工程と、を有し、前記隔壁形成工程にて、前記隔壁を前記発光領域の外側まで延設することを特徴とする。
この製造方法によれば、前記隔壁を発光領域の外側まで設けるので、後段のプラズマ処理において発光領域の端部でプラズマ処理の程度に差異が生じるのを防止することができ、発光領域に発光素子を形成する工程で均一な発光特性を有する発光素子を形成することができるようになる。
【0015】
本発明の発光装置の製造方法では、前記発光領域が前記基板上で一方向に長手に形成された発光装置を製造するに際し、前記隔壁形成工程において、前記隔壁を前記発光領域の長手方向外側に延設することもできる。本発明は特に、前記発光領域が一方向に長手の形状である場合に有効な製造方法である。
【0016】
本発明の発光装置の製造方法は、基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を設けてなる発光装置の製造方法であって、一方向に長手の前記発光領域を有する複数の前記発光装置を、該発光装置が形成される発光装置形成領域を前記長手方向と略直交する方向に配列形成してなる大型基板を用いて製造するに際し、前記大型基板上の前記各発光領域となる領域に、前記複数の第1電極を形成する電極形成工程と、前記各発光領域となる領域にて前記第1電極を区画する隔壁を前記大型基板上に形成する隔壁形成工程と、前記隔壁が形成された前記大型基板の表面にプラズマ処理を施す表面処理工程と、を有し、前記隔壁形成工程にて、前記隔壁を前記発光領域の長手方向外側まで延設することを特徴とする。すなわち本発明は、大型基板を用いて複数の発光装置を一括に製造する工程にも極めて有効な製造方法である。
【0017】
本発明の発光装置の製造方法では、前記隔壁形成工程において、前記隔壁を、前記発光装置形成領域の前記長手方向外側まで延設することもできる。このような製造方法とすることで、プラズマ処理時の不均一をさらに効果的に解消することができ、発光特性の均一性に優れた発光装置を製造することができる。
【0018】
本発明の発光装置の製造方法では、前記隔壁形成工程において、前記発光装置形成領域が配列形成されたさらに外側の前記大型基板上の領域であって、前記発光装置形成領域の配列方向の外側の領域に、前記発光領域に沿って延在する前記隔壁を形成することもできる。このように発光領域に沿って延在する隔壁をさらに形成することで、発光領域の延在方向のみならず、複数の発光装置間でもプラズマ処理の不均一を解消することができる。これにより、複数の発光装置を歩留まりよく効率的に製造することができる。
【0019】
本発明の発光装置の製造方法は、前記電極形成工程において、前記発光領域となる領域の外側の前記基板上に、前記第1電極と同層の導電膜を形成し、前記隔壁形成工程において、前記発光領域の外側の前記隔壁を前記導電膜を区画する位置に形成する製造方法とすることもできる。この製造方法によれば、第1電極と隔壁形成領域の導電膜とを同工程で形成でき、効率的に発光装置を製造することができる。
【0020】
本発明の発光装置の製造方法では、前記表面処理工程の後、液相法を用いて前記発光部を構成する機能層を前記第1電極上に形成する機能層形成工程を有しており、前記機能層形成工程において、前記機能層を形成する液体材料を、前記発光領域の外側の前記隔壁に囲まれる領域内にも配置することができる。このように発光領域の外側の領域にも前記液体材料を配置することで、発光領域に配置した液体材料の乾燥速度に差異が生じるのを防止することができ、均一な膜厚の機能層を具備した発光素子を発光領域に形成することができる。
【0021】
本発明の発光装置の製造方法は、前記表面処理工程において、一方向に長手のプラズマ処理部を有するプラズマ処理装置を用いて、前記プラズマ処理部により前記基板の表面を走査することを特徴とする。この製造方法によれば、大型の基板を小型のプラズマ処理装置により均一に表面処理することができる。特に本発明に係る発光装置の製造方法では、発光領域の外側に隔壁形成領域を設けているので、プラズマの長手方向端部における処理の不均一を効果的に解消でき、発光領域の部材に対して均一なプラズマ処理が可能である。
【0022】
本発明の発光装置の製造方法では、前記プラズマ処理部の走査方向が、前記大型基板における前記発光装置形成領域の配列方向と略平行であってもよい。あるいは、前記プラズマ処理部の走査方向が、前記大型基板における前記発光装置形成領域の配列方向と略直交する方向であってもよい。本発明に係る製造方法において発光領域の外側に設けられる隔壁により、上記いずれの走査方向においても均一なプラズマ処理を実現することができる。
【0023】
本発明の発光装置の製造方法では、前記プラズマ処理装置が、大気圧プラズマ処理装置であることが好ましい。大気圧プラズマ処理装置を用いることで、大型の真空装置が不要になり、低コスト、高効率に発光装置を製造することができる。
【0024】
次に、本発明の電子機器は、先に記載の本発明の発光装置を備えたことを特徴とする。この構成によれば、発光領域の全体で均一な発光特性を備えた発光装置を備えているので、均一な露光が可能な画像形成装置や、均一な表示が可能な画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。また、以下で参照する各図面においては、図面を見易くするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
本発明に係る発光装置の一実施形態である有機EL装置(有機エレクトロルミネッセンス装置)を用いたラインヘッドについて説明する。ラインヘッドは、後述する画像形成装置の露光手段として用いられるもので、具体的にはラインヘッドを含むラインヘッドモジュールの状態で用いられる。
【0026】
(ラインヘッドモジュール)
図1は、画像形成装置の露光手段として用いられるラインヘッドモジュールの側断面図である。図1に示すように、本実施形態のラインヘッドモジュール101は、複数の有機EL素子(発光素子)を備えたラインヘッド(有機EL装置/発光装置)100と、ラインヘッド100から射出された光を正立等倍結像させるSL素子31aを整列配置したSLアレイ31とを、対向配置させてヘッドケース52に固定した構成を備えている。
ラインヘッドモジュール101は、ラインヘッド100に整列配置された有機EL素子からの光をSLアレイ31を構成するSL素子31aに入射させ、図1中2点鎖線で示される感光体ドラム41の外周面に正立等倍結像させて露光するものとなっている。
【0027】
(ラインヘッド)
次に、本実施形態におけるラインヘッド100について図2〜4を参照し説明する。
図2は、前記ラインヘッド100を模式的に示した平面構成図である。図2に示すように、ラインヘッド100は、長細い矩形の素子基板102の一面側に、複数の有機EL素子(図示略)をY軸方向を長手に配列してなる発光領域103と、発光領域103の各有機EL素子と電気的に接続された駆動回路106とを備えている。発光領域103を挟んだY軸方向両側に、第1のダミー領域(第1の隔壁形成領域)104,104が形成されており、第1のダミー領域104,104を挟んだY軸方向両側には、第2のダミー領域(第2の隔壁形成領域)105,105が形成されている。
【0028】
素子基板102上には駆動回路106からY軸方向に延びる複数の接続配線108が形成されており、これらの接続配線108は、素子基板102の+Y側の端部であって、第2のダミー領域105の−X側に形成された外部接続端子群107と電気的に接続されている。また外部接続端子群107には、発光領域103の+Y側に設けられた第1のダミー領域104から導出された接続配線(陰極配線)109も電気的に接続されている。
【0029】
図3は、図2に示すラインヘッド100のうち、+Y側の第1のダミー領域104の周辺を含む部分110を拡大して示す平面構成図である。図3に示すように、素子基板102上には、発光領域103、第1のダミー領域104、及び第2のダミー領域105に跨ってY軸方向に延びる有機物隔壁221が形成されている。すなわち、図2に示した素子基板102をY軸方向に縦断するように有機物隔壁221が形成されている。
有機物隔壁221は、発光領域103において配列形成された複数の略円形状の開口部221aを有しており、これらの開口部221a内に有機EL素子3が形成されている。また、発光領域103から外側に延びた有機物隔壁221には、それぞれ複数の第1のダミー開口部221b及び第2のダミー開口部221cが形成されている。
【0030】
発光領域103には、Y軸方向に配列された略円形状の有機EL素子(発光素子)3からなる素子列が2列形成されている。これら2つの素子列は互いに半ピッチずれて配置され、Y軸方向における有機EL素子3の実質的なピッチが1/2になるように配置されている。
【0031】
発光領域103の+Y側に設けられた第1のダミー領域104には、略円形状の第1のダミー開口部221bが複数配列されている。第1のダミー開口部221bは、隣接する発光領域103に設けられた開口部221aに連続して配列されており、Y軸方向に関して開口部221aと同一ピッチで配列されている。
第1のダミー領域104には、発光領域103から延びた陰極50が形成されており、第1のダミー領域104の図示下側(−X側)の端部において上記陰極50と前記接続配線109とが電気的に接続されている。陰極50は、後述する有機EL素子3の一方の電極を成すものである。
【0032】
また、第2のダミー領域105において延在する有機物隔壁221には、複数の略円形状の第2のダミー開口部221cが配列形成されている。これら第2のダミー開口部221cは第1のダミー領域104に設けられた第1のダミー開口部221bの列に連続して配列されており、Y軸方向に関して第1のダミー開口部221bと同一ピッチ(すなわち有機EL素子3と同一ピッチ)にて配列されている。
【0033】
[有機EL素子]
図4は、ラインヘッド100の発光領域103における部分断面構成図である。図4に示すように、素子基板102の基体である基板5a上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。
前記有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極(第1電極)23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極(第2電極)50とを順に積層してなる構成を備えている。前記有機EL素子3は、画素電極23を区画する隔壁(無機物隔壁25と有機物隔壁221)によって区画された領域(開口部25a、221a内)に形成されている。また、前記正孔輸送層70及び発光層60が、有機EL素子3の発光部を構成する機能層に相当する。
上記構成を具備した有機EL素子3は、正孔輸送層70から発光層60に注入された正孔と陰極50から発光層60に注入された電子とが、発光層60内で再結合することにより発光するようになっている。
【0034】
上記有機EL素子3を構成する正孔輸送層70及び発光層60は、詳細は後述するが、これらの形成材料を含むインクを、液滴吐出法を用いて前記隔壁に囲まれた領域内に選択的に配置し、乾燥固化することで形成されたものである。液滴吐出法を用いて正孔輸送層70等の機能層を形成することで、高分子材料を容易かつ正確にパターニングすることができ、また材料の利用効率を高め、低コストに有機EL素子を形成することができる。
【0035】
[ダミー領域]
図3に示した第1のダミー開口部221bは、液滴吐出法を用いて有機EL素子3の正孔輸送層70、発光層60を形成する際に、これらを形成するためのインクないし同一の分散媒を第1のダミー開口部221b内に吐出配置するために設けられており、ダミー開口部221bにインク等を供給することで、発光領域103における分散媒の蒸発速度を均一化することができる。これにより、発光領域103の中央部と端縁部とで分散媒の蒸発速度が異なることによる膜厚むらが生じるのを防止することができる。
【0036】
第1のダミー開口部221bの具体的構成としては、種々の構成を採用することができる。例えば、第1のダミー開口部221bに、開口部221a内に形成される有機EL素子3と同一の構成の画素を形成してもよい。
あるいは、第1のダミー開口部221bとして、有機EL素子3の構成要素の一部を省略した構成とすることもできる。この場合、第1のダミー開口部221bは、上述したように分散媒の蒸発速度調整に用いられるため、少なくとも有機物隔壁221を備えていればよい。
本実施形態の場合、図3に示したように、第1のダミー領域104において素子基板102上の接続配線109と陰極50とが接続されるようになっているので、少なくとも発光領域103から延出された陰極50は、第1のダミー開口部221b上に配置される。
【0037】
また、第1のダミー開口部221bは、画素電極23と、無機物隔壁25と、有機物隔壁221とを備えた構成とすることもできる。このように画素電極23を設ける場合には、画素電極23が他の導電部材(配線等)と接続されていてもよく、絶縁されていてもよい。また、第1のダミー開口部221bは、図4に示した有機EL素子3から駆動用TFT123を含む駆動素子のみを省略した構成とすることもできる。
【0038】
第1のダミー開口部221bにおいて、正孔輸送層70及び発光層60は、必ずしも設けられるものではない。つまり、正孔輸送層70及び発光層60の形成工程において、第1のダミー開口部221bに、正孔輸送層を形成するためのインクや発光層を形成するためのインクが配置されれば、第1のダミー開口部221bには正孔輸送層70及び発光層60のいずれか又は両方が形成されることになるが、インクではなく分散媒のみを配置した場合には、これらの層は第1のダミー開口部221bに形成されない。
【0039】
第1のダミー領域104のY軸方向の長さは、上記蒸発速度の調整機能を得られる範囲であれば特に限定はないが、例えば、発光領域103の長さの1%程度とすればよい。従って、発光領域103の長さが200mmであれば、第1のダミー領域104の長さは2mm程度である。
【0040】
本実施形態では、第1のダミー開口部221bが、有機EL素子3とほぼ同一の平面形状である場合について図示しているが、第1のダミー開口部221bの平面形状は特に限定されない。例えば、図3のY軸方向に延びる長円形状を成す第1のダミー開口部221bを形成してもよく、矩形状の開口部としてもよい。
【0041】
次に、第2のダミー領域105には、複数の第2のダミー開口部221cが形成されている。この第2のダミー領域105は、ラインヘッド100の製造工程において、有機物隔壁221に施されるプラズマ処理を均一化するために設けられている。このプラズマ処理は、後段の「ラインヘッドの製造方法」の項に詳述しているが、正孔輸送層70、発光層60を形成するためのインクを、有機物隔壁221に囲まれる領域内に良好に閉じ込めるために、画素電極23の表面に親液性を付与する酸素プラズマ処理等、及びアクリル樹脂等の有機物材料からなる有機物隔壁221の表面に撥液性を付与するフッ素系ガスプラズマ処理等である。
【0042】
このように、第1のダミー領域104のさらに外側に素子基板102のY軸方向縁端まで延びる有機物隔壁221を備えた第2のダミー領域105が形成されていることで、素子基板102上の突起物であり、また絶縁物である有機物隔壁221の形成領域が素子基板102上で一様なものとなり、基板縁端でのプラズマの不均一に起因する表面処理のばらつきを抑えることができる。
【0043】
従って、本実施形態のラインヘッド100では、その製造時のプラズマ処理工程において、発光領域103に配置された画素電極23の表面、及び有機物隔壁221の表面を均一に表面処理することができる。これにより、後段の工程で発光領域103の画素電極23上に正孔輸送層70及び発光層60を形成するに際して、これらを形成するためのインクを、有機物隔壁221の開口部221a内に均一に濡れ広がらせつつ、開口部221a内に良好に閉じ込めることができ、均一な膜厚及び膜質の正孔輸送層70、発光層60を形成することができる。そして、発光領域103の有機EL素子3について、良好かつ素子間で均一な発光特性を得ることができる。
【0044】
第2のダミー領域105は、上記第1のダミー領域104よりさらに簡略化された構成を備えるものであってもよい。例えば、有機物隔壁221のみが素子基板102上に設けられている構成、あるいは無機物隔壁25と有機物隔壁221とが積層された隔壁が素子基板102上に設けられている構成が適用できる。また場合によっては、ダミー開口部221cを設けない構成も採用できる。なお、第1のダミー領域104と同様の構成とすることもできる。
【0045】
第2のダミー領域105には、導電材料からなる導電膜が設けられていてもよい。例えば、第2のダミー開口部221cに、有機EL素子3の画素電極23と同層、同一材質の導電膜を設けることができる。あるいは、有機EL素子3の下層側に形成される回路部11の一部の配線等と同層、同一材質の導電膜を第2のダミー開口部221cに配置してもよい。
【0046】
このようにダミー開口部221cに導電膜を設けておけば、第2のダミー領域105における素子基板102の表面状態は、絶縁体である有機物隔壁221により区画された領域に導電膜が配置された形態となり、導電体である画素電極23を絶縁体である有機物隔壁221により区画している発光領域103と同様の形態となる。これにより、発光領域103上と第2のダミー領域105上とでプラズマの状態を同じくすることができ、これにより発光領域103上でのプラズマの均一性を高め、発光領域103の表面処理をより均一なものとすることができる。
【0047】
ところで、素子基板102上には画素電極23と同様に導電体である外部接続端子群107が設けられている。外部接続端子群107は、画素電極23に比して平面積が大きいため、プラズマに与える影響も大きくなるものと考えられる。そこで、本実施形態のラインヘッド100では、外部接続端子群107を第2のダミー領域105の近傍に配置することで、第2のダミー領域105によりプラズマの状態変化を緩和し、プラズマの状態変化が発光領域103に影響を及ぼすのを防止する構成としている。
【0048】
さらに、上記外部接続端子群107の近傍に配される第2のダミー領域105において、有機物隔壁221の平面形状を変更してもよい。上記の如く外部接続端子群107は、比較的平面積が大きく、プラズマに対する影響も大きいと考えられる導電体であるから、第2のダミー領域105における有機物隔壁221の形成密度(面積率)を相対的に大きく、従ってダミー開口部221cの面積率を相対的に小さくすることが好ましい。これにより、外部接続端子群107からのプラズマへの影響を小さくすることができ、その結果、発光領域103におけるプラズマの均一性を高めることができる。
【0049】
第2のダミー領域105の長さは、少なくとも5〜10mm以上とされ、数cm〜10cm程度の長さとすることが好ましい。当該領域が小さいとプラズマの均一性を向上させる効果を十分に得られないため、発光領域103の端縁と素子基板102の端縁との距離に応じて数cm程度の長さとすることが好ましい。ただし、第2のダミー領域105の長さを優先して大きくし過ぎると、有効領域(発光領域103、駆動回路106の形成領域)が狭くなる。
【0050】
[有機EL素子の詳細構成]
次に、図4を参照して有機EL素子3の詳細な構成について説明する。
図4に示す基板5a上には、画素電極23に接続する回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。前記有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とを順に積層してなる構成を備えている。
【0051】
本実施形態の場合、有機EL素子3は、その発光光を素子基板102と反対側に射出する、いわゆるトップエミッション型となっていることから、素子基板102を構成する基板5aとしては、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。透明基板としては、ガラスや石英、プラスチック等を用いることができ、不透明基板としては、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
【0052】
画素電極23上にSiO等の親液性の絶縁材料からなる無機物隔壁25が形成されており、この無機物隔壁25は、画素電極23上に開口部25aを有している。無機物隔壁25は無機絶縁材料を用いて形成されており、画素電極23上の正孔輸送層70のうち、無機物隔壁25上に乗り上げている部分には電流が流れず、有機EL素子3の発光領域(発光面積)は、この無機物隔壁25の開口部25aによって規定されている。
【0053】
前記画素電極23は、トップエミッション型の有機EL装置であるラインヘッド100では、アルミニウムや銀などの光反射性の金属膜上に、仕事関数が比較的大きいITO(インジウム錫酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明導電膜を形成してなる積層膜である。ラインヘッド100がボトムエミッション型である場合には、画素電極23は、ITO等の透明導電材料を用いて形成される。
【0054】
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0055】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。
具体的な前記発光層60の形成材料としては、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0056】
また、前記発光層60を覆って陰極50が形成されている。陰極50の形成材料としては、トップエミッション型のラインヘッド100では、ITO、IZO、酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明導電材料が用いられる。本実施形態の場合、図3に示したように、陰極50は発光領域103から第1の隔壁形成領域104まで延びている。
なお、図示は省略したが、例えばITOからなる陰極50と発光層60との間には、陰極50からの電子注入口率を高めるために、例えばCaが5nm程度の厚さに成膜されている。
【0057】
陰極50を覆って封止層51が設けられている。この封止層51は透光性を有する樹脂材料からなり、たとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などである。この場合、陰極50上にパシベーション膜としてSiN、SiONなどを成膜しておくとよい。また、封止層51は、その内側に酸素や水分が浸入するのを防止するためのものであって、これにより陰極50及び発光層60から構成される有機EL素子3への酸素や水分の浸入を防止し、酸素や水分による前記有機EL素子3の劣化等を抑えることができる。
【0058】
この封止層51は、例えば無機膜と合成樹脂等の接着機能を有する有機膜とを交互に複数積層してもよい。無機膜と有機膜とを複数積層することによりクラックの発生を防止することができる。また、無機膜を多層に設けてもよい。この場合、例えばSiONを多層に設けるなど、1種類の材料からなる膜を多層に設けてもよいし、SiNとSiOとを積層するなど、異なる材料からなる膜を多層に設けてもよい。このように無機膜を多層にすることにより、前記有機EL素子3に対する封止性能をさらに高めることができる。
【0059】
有機EL素子3の下方(基板5a側)には、前述したように回路部11が設けられている。基板5aの表面にはSiOを主体とする下地保護層281が形成されており、下地保護層281上に半導体層241が形成されている。半導体層241の表面には、SiO及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0060】
また、半導体層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と対向する領域に駆動用TFT123のチャネル領域241aが形成されている。駆動用TFT123はいわゆるLDD(Lightly Doped Drain)構造を有するトランジスタであり、半導体層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられている。
【0061】
半導体層241と厚さ方向に対向するゲート電極242は、図示略の走査線と電気的に接続されている。ゲート電極242上の領域を含むゲート絶縁層282上には、SiO等を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。第1層間絶縁層283には、半導体層241に達するコンタクトホールが開口されており、第1層間絶縁層283上に形成されたソース電極243、及びドレイン電極244が、前記コンタクトホールを介してそれぞれ高濃度ソース領域241S、及び高濃度ドレイン領域241Dと電気的に接続されている。
【0062】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂等を用いて形成され、駆動用TFT123やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0063】
そして、画素電極23が、平坦化膜284上に形成され、画素電極23の一部は平坦化膜284に貫設されたコンタクトホールを介してドレイン電極244と電気的に接続されている。従って、画素電極23はドレイン電極244を経由して半導体層241の高濃度ドレイン領域241Dと電気的に接続されている。
【0064】
画素電極23が形成された平坦化膜284上に、画素電極23を一部覆うようにして無機物隔壁25が形成され、無機物隔壁25上に有機物隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上において、無機物隔壁25の前記開口部25aと、有機物隔壁221の開口部221aとの内側に、正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、有機物隔壁221及び発光層60を覆って陰極50が形成されている。
【0065】
(SLアレイ)
図5は、ラインヘッド100とともにラインヘッドモジュール101を構成するSLアレイ31の斜視構成図である。SLアレイ31は、日本板硝子株式会社製のSL素子31aを配列したものである。SL素子31aは、直径0.28mm程度の円形ファイバー状に形成されている。平面視で千鳥状に配列されたSL素子31aは、各SL素子31aの隙間に充填された黒色のシリコーン樹脂32と、SL素子31a及びシリコーン樹脂32を固定するフレーム34とにより支持されている。
【0066】
SL素子31aは、その中心から周辺にかけて放物線上の屈折率分布を有する光学素子であり、SL素子31aに入射した光はその内部を一定周期で蛇行しながら進行するようになっている。SL素子31aの長さを調整すれば、画像を正立等倍結像させることができる。
そして、正立等倍結像するSL素子31aを整列配置すれば、隣接するSL素子31aの作る像を重ね合わせることが可能になり、広範囲の画像を得ることができる。従って、図5のSLアレイは、ラインヘッド100全体からの光を精度よく結像させることができるようになっている。
【0067】
(ラインヘッドの製造方法)
次に、上記実施形態のラインヘッド100を製造する方法について説明する。
本実施形態では、複数のラインヘッド100を形成可能な大型基板500を用いている。図6(a)は、大型基板500に含まれる複数の基板5a(素子基板102)を示す平面構成図であり、図6(b)は、図6(a)に示す大型基板500の左上角部を拡大して示す平面構成図である。
なお、大型基板500ではなく、単体の基板5aを用いてラインヘッド100を製造することが可能であるのは勿論である。
【0068】
ラインヘッド100は、大型基板500の各基板5aに対応する領域上に、多数の有機EL素子3を有する発光領域103を形成した後、ダイシングラインDLに沿って大型基板500を複数の基板5aに分断することで製造できる。大型基板500において、基板5aに対応する領域はその幅方向(X軸方向)にストライプ状に形成されており、従って基板5aの長さ方向(Y軸方向)に沿って形成される発光領域も図6(a)に示すように、大型基板500上において幅方向にストライプ状に配列形成される。
【0069】
図7は、本実施形態のラインヘッドの製造工程を説明するための素子基板102の断面工程図である。
ラインヘッド100を製造するには、まず、図7(a)に示すように、基板5a(大型基板500)の表面に、下地保護層281を形成し、さらにこの下地保護層281上にポリシリコン層等を形成して、このポリシリコン層等から前記回路部11を形成する。そして、基板5a上に反射性の高いAgやAlなどの金属膜とITOとを積層して形成し、これをパターニングすることで画素電極23を形成する。このとき画素電極23の一部が、平坦化膜284に形成されたコンタクトホールに埋設されてドレイン電極と電気的に接続される。
また、上記回路部11を形成する際に、図2等に示した駆動回路106や外部接続端子群107を形成してもよく、特に駆動回路106を駆動用TFT123等と同時に形成すれば、製造工程を効率化できる。
【0070】
画素電極23を形成したならば、次に、画素電極23上及び平坦化膜284上に例えばSiO等の絶縁材料をCVD法等を成膜して無機物膜を形成し、続いて、この無機物膜を公知のフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングする。これにより、図7(a)に示すように、形成する各有機EL素子の画素領域毎に開口部25aを有する無機物隔壁25を形成する。
【0071】
その後、図6(a)に示すように、無機物隔壁25の所定位置、詳しくは画素領域を囲む位置に樹脂等によって有機物隔壁221を形成する。この有機物隔壁221は、有機EL素子3を形成する領域を区画するものであるが、先に記載のように、本実施形態のラインヘッド100はダミー領域104,105を備えたものであるから、かかる有機物隔壁221は、少なくとも基板5aの端縁部まで延びるように形成される。本実施形態の場合、図6(b)に示すように、有機物隔壁221は基板5aに対応する領域の外側の領域まで延設することで、基板5aの外側に第3のダミー領域(隔壁形成領域)111を形成する。
【0072】
なお、図5では有機物隔壁221のみを示して説明したが、ダミー領域104〜106に設けられる隔壁は、有機物隔壁221の単層構造に限らず、発光領域103と同様に無機物隔壁25と有機物隔壁221との積層構造としてもよい。
【0073】
さらに、図6(b)に示すように、大型基板500の辺端部であって、基板5aの+X側(ダイシングラインDLの外側)に、基板5aに沿って延びるダミー隔壁222を設けておくことが好ましい。このようなダミー隔壁222を設けることで、後段のプラズマ処理工程における基板端縁での処理のばらつきを抑えることができ、高歩留まりにラインヘッド100を製造することができる。
【0074】
ダミー隔壁222は、有機物隔壁221と同工程で同時に形成した有機物隔壁としてもよいし、無機物隔壁と有機物隔壁との積層構造としてもよい。なお、本実施形態では、基板5aに沿った細い直線状にダミー隔壁222を設けているが、ダミー隔壁222の平面形状はこれに限定されるものではない。例えば、基板5aと大型基板500の辺端との間の領域を覆うようにダミー隔壁222を設けてもよいし、ダミー隔壁222が、大型基板500の全ての辺端部に沿って平面視略矩形枠状に形成されていてもよい。
【0075】
以上の回路部11、画素電極23、無機物隔壁25、及び有機物隔壁221(及びダミー隔壁222)を基板5a上に形成したならば、次に、基板5aの表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成するためのプラズマ処理を施す。例えばプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、有機物隔壁221の表面および開口部221a〜221cの壁面ならびに画素電極23の電極面、無機物隔壁25の表面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、有機物隔壁221の上面および開口部221a〜221cの壁面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とを含む工程とすることができる。
【0076】
上記プラズマ処理工程において、予備加熱工程では、基板を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(Oプラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CFプラズマ処理)を行い、その後、冷却工程によりプラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0077】
なお、上記撥液化工程のCFプラズマ処理においては、画素電極23の電極面および無機物隔壁25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび無機物隔壁25の構成材料であるSiO、TiO等はフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれ、有機物隔壁221の表面のみが選択的に撥液化される。
【0078】
ここで図8は、上記プラズマ処理工程に好適に用いることができる大気圧プラズマ処理装置300の一構成例を示す図である。大気圧プラズマ処理装置300は、下部が開口しているチャンバー330の内部にプラズマ発生部332を備えている。プラズマ発生部332は、放電用のガス流路334を形成するために1mmから3mm程度のギャップを形成した一対の板状の誘電体336,336と、2枚の誘電体336を挟持して対向する一対の電極338,340とを備えて構成されている。これらの電極338,340は、ガス流路334内でグロー放電を発生させてプラズマを生成するためのもので、電極338,340に挟まれた誘電体336のギャップ空間がプラズマ生成領域342となっている。
【0079】
チャンバー330の下部は、大型基板500にプラズマを照射するプラズマ処理部となっており、大型基板500を支持したテーブル322がプラズマ発生部332の下方を通過する際に、プラズマ発生部332から大型基板500の表面に対してプラズマを照射するようになっている。
【0080】
プラズマ発生部332の一方の電極338は接地電極となっており、他方の電極340には、フィルタ回路346とインピーダンス整合部348とを介した高周波電源350と、フィルタ回路352と昇圧トランス354とを介した低周波電源356とが接続されている。従って、電極338,340間には、高周波電源350からの高周波電圧(例えば13.56MHz)と、低周波電源356からの電圧(例えば20kHz)とを重畳して印加できるようになっており、処理ガスを介した高周波放電を容易に発生させることができるようになっている。
【0081】
チャンバー330の上部には、中間チャンバー358が設けられている。中間チャンバー358には、それぞれガス配管360,361を介して処理ガス供給部362,363が接続されており、例えば処理ガス供給部362から酸素を、処理ガス供給部363からヘリウムを中間チャンバー358に供給し、中間チャンバー358内で処理ガスを混合することができるようになっている。
中間チャンバー358はまた、チャンバー330の上面部に貫設された連通孔364を介してガス流路334と連通しており、処理ガス供給部362から流入する処理ガスをガス流路334に供給し、プラズマ発生部332に供給するようになっている。
【0082】
上記構成の大気圧プラズマ処理装置300による大気圧プラズマの生成は、例えば酸素プラズマの場合であれば、以下のようにして行う。
ガス流路334は減圧せずに大気圧に保持したまま、処理ガス供給部362,363からそれぞれ制御された流量の酸素ガスとヘリウムガスとを中間チャンバー358に供給し、中間チャンバー358で混合された処理ガスをガス流路334を介してプラズマ発生部332に供給する。プラズマ生成領域342に供給する処理ガスは、例えば流量比で酸素が20%以下、ヘリウムが80%以上のものを用いることができる。その後、ガスを流通させた状態で電極338,340間に高周波電圧を印加する。そして、プラズマ生成領域342にグロー放電が確認された後、放電状態を維持しつつヘリウムガスを停止し、酸素ガス単体のプラズマとする。このようにヘリウムガスをトリガとして使用することで、酸素ガスプラズマを容易に生成することができる。先の撥液化工程で用いるCFガスのプラズマも、上記の方法により発生させることができる。
【0083】
図8に示した大気圧プラズマ処理装置300を用いたプラズマ処理工程では、一対の誘電体336に挟まれたガス流路の平面形状に対応した線状(カーテン状)の酸素ガスプラズマ又はCFガスプラズマによって、大型基板500の表面を走査することで所望のプラズマ処理を行う。
ここで図9は、大型基板500のプラズマ処理工程を平面的に示す説明図である。先に記載のように、大型基板500には、複数の基板5aに対応する領域がストライプ状に配列されているので、プラズマの延在方向と基板5aの延在方向との位置関係により、大型基板500上に形成された有機物隔壁221等へのプラズマの照射状態に差異が生じるものと考えられる。そこで、図9(a)に、大型基板500をプラズマに対して基板5aの幅方向(X軸方向)に移動させる場合、図9(b)には大型基板500をプラズマに対して基板5aの延在方向(Y軸方向)に移動させる場合を示している。
【0084】
本発明者の検討によれば、上記大気圧プラズマ処理装置300により基板のプラズマ処理を行うと、基板上の被照射部における処理の程度において、プラズマ生成領域342に生じる線状のプラズマの長さ方向(図9では上下方向)で分布が生じることが分かっている。つまり、図9(a)に示す場合では、被照射部である有機物隔壁221に対する処理の程度(例えば撥液性の程度)が、Y軸方向において異なることが確認されている。
【0085】
これに対して、本実施形態のように各基板5aに、第2のダミー領域105及び第3のダミー領域を設けた構成とした大型基板500を、図9(a)に示すようにX軸方向に走査してプラズマ処理を行ったところ、ダミー領域104,105,111に挟まれた発光領域103においては、画素電極23及び無機物隔壁25における親液性、並びに有機物隔壁221における撥液性のいずれもが、各開口部221a間で均一なものとなることが確認された。さらに、大型基板500の長辺端部にダミー隔壁222を設けることで、プラズマ処理の開始部、及び終了部であるX軸方向端の基板5aにおけるプラズマ処理も均一化することができ、大型基板500の全体で均一にプラズマ処理を行うことが可能となった。
またさらに、上記第2のダミー領域105のダミー開口部221c内に導電膜を形成し、発光領域103の画素と同様の電気的構成(導電膜を絶縁体で区画した構成)としている場合には、さらに効果的にプラズマ処理の均一性を向上させることができることが確認された。
【0086】
大型基板500の走査方向としては、図9(b)に示すように基板5aの延在方向(Y軸方向)とすることも考えられるが、この場合においても、大型基板500の長辺端部に設けたダミー隔壁222、及び基板5aの各端部に設けたダミー領域104,105,111の作用により、発光領域103全体で均一な親液/撥液処理が施された基板5aを得られることが確認された。
【0087】
本実施形態では、大型基板500の各辺端部にダミー領域ないしダミー隔壁を設けた構成としているが、上述したように大気圧プラズマ処理装置300を用いた場合の表面処理のばらつきは、プラズマの長さ方向において生じることが分かっているので、図9(a)、(b)のいずれの走査方向を採用する場合にも、少なくとも、プラズマの長さ方向における大型基板500の辺端部にダミー領域ないしダミー隔壁が設けられていればよいと考えられる。すなわち、図9(a)の場合であれば、ダミー領域105,111が設けられていればよく、図9(b)に示す場合であれば、2本のダミー隔壁222が設けられていれば、発光領域103内でのプラズマ処理の不均一を解消する効果を得ることができる。
【0088】
上記プラズマ処理工程を終了したならば、次に、図6(b)に示すように、前記有機物隔壁221に囲まれる開口部221a内に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層70を形成するに際しては、液滴吐出法が好適に採用される。すなわち、液滴吐出法により、正孔輸送層形成材料を含むインク70aを電極面上に選択的に配置する。その後、乾燥処理および熱処理を行うことで、画素電極23上に正孔輸送層70を形成することができる。本実施形態の場合、上述したように、インク70aが配置される開口部221a内の親液/撥液処理が適切に、かつ発光領域103全体で均一に成されているので、全ての開口部221a内に均一な膜厚の正孔輸送層70を形成することができる。
上記正孔輸送層70の形成材料としては、例えば前述のPEDOT:PSSをイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものを用いることができる。
【0089】
このインクジェット法による正孔輸送層70の形成にあたっては、インクジェットヘッドHAに正孔輸送層形成材料を含むインク70aを充填し、図6(b)に示すように、インクジェットヘッドHAの吐出ノズルを無機物隔壁25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面に対向させ、インクジェットヘッドと基板5a(大型基板500)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面に吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、前記インク70aに含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0090】
上記インクジェットヘッドHAとしては、通電により機械振動を生じる圧電素子を用いて液室内の圧力を変化させることによりノズルから液滴を吐出する方式の液滴吐出ヘッドを採用することが望ましい。なお、発熱体で液室内を局部的に加熱して気泡を発生させることによりノズルから液滴を吐出する方式の液滴吐出ヘッドを採用してもよい。これ以外にも、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式等を採用することもできる。
【0091】
吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面上にて広がり、無機物隔壁25の開口部25a内に満たされて該開口部25a内に臨むようになる。その一方で、撥液処理された有機物隔壁221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。従って、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が有機物隔壁221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が無機物隔壁25の開口部25a内に引き込まれる。
なお、この正孔輸送層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0092】
上記正孔輸送層形成工程では、図3に示したように、基板5a上の発光領域103の外側には、第1のダミー領域104が形成されているので、第1のダミー領域104に設けられているダミー開口部221bに、上記インク70a又はインク70aから正孔輸送層形成材料を除いた分散媒等を吐出配置する。これにより、ダミー開口部221bからの蒸発によって発光領域103の端部における分散媒等の蒸発速度が上昇するのを抑えることができ、発光領域103の各画素において均一な膜厚及び形状を備えた正孔輸送層70を形成することができる。また、本実施形態の場合、第1のダミー領域104の外側に第2のダミー領域105、及び第3のダミー領域111が設けられているので、これらの領域に配された有機物隔壁221に開口部が設けられているのであれば、かかる開口部に対して前記インク70aを配置しても構わない。またかかるダミー領域105,111の開口部を捨て打ち領域に用いてインクジェットヘッドHAの吐出量の安定を図ることもできる。
【0093】
次いで、図6(c)に示すように、前記有機物隔壁221に区画された領域に発光層60を形成する。
この発光層形成工程では、前記正孔輸送層70を形成する工程と同様に、上述したインクジェット法が好適に採用できる。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機物隔壁221に形成された開口部221a内、すなわち画素領域上に発光層60を形成する。発光層60の形成に際しても、少なくとも第1のダミー領域104のダミー開口部221bにはインクないし分散媒等の吐出配置を行う。これにより蒸発速度の不均一に起因する発光層60の層厚のばらつきを抑え、発光領域103全体で均一な発光特性を得られるようになる。
【0094】
次に、前記発光層60上に陰極50を形成する。この陰極50については、有機EL素子3を効率よく発光させるため、電子注入層と導電層のような積層構造を採用するのが一般的であり、本実施形態では上述したようにCaとITOとの積層膜から構成されている。
【0095】
陰極50は、基板5aと図示しないメタルマスクを位置合わせして蒸着法やスパッタ法等を用いて成膜することで形成することができる。本実施形態では、陰極50を形成するに際しては、発光領域103の有機物隔壁221上のみならず、第1のダミー領域104の有機物隔壁221上まで陰極50を延設し、この第1のダミー領域104に延びている陰極配線109に対して陰極50を電気的に接続する。
その後、封止工程によって前記陰極50及び有機物隔壁221上を含む基板5aの全面を覆うようにして、例えばマイクロディスペンサ等を用いることで封止層51を塗布する。
【0096】
上述した工程により、大型基板500上に、図4に示したような有機EL素子3を形成することができる。
その後、図6に示したダイシングラインDLに沿って、大型基板500から複数の基板5a(素子基板102)を切り出し、各ラインヘッド毎に分断する。このダイシング工程により、基板5aの外側に形成されていた第3のダミー領域111は基板5a上の有機物隔壁221から切り離され、発光領域103から素子基板102の端縁部に延びる第2のダミー領域105が形成されることとなる。
以上の工程により、本実施形態のラインヘッド100を製造することができる。
【0097】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の製造方法によれば、大型基板500上において、発光領域103の画素電極23を区画する有機物隔壁221を、発光領域103の外側まで延設し、さらにラインヘッド100の基体となる基板5aの外側まで延設することで、プラズマ処理工程における表面処理の均一性を向上させることができる。これにより、後段の正孔輸送層形成工程、発光層形成工程において、開口部221a内に配置されるインクを良好に制御することができ、発光領域103の全体で均一な膜厚の正孔輸送層70及び発光層60を形成することができる。従って、本実施形態の製造方法によれば、発光特性の均一性に優れ、また長寿命の有機EL素子3を備えたラインヘッドを製造することができる。そして、ラインヘッド100を備えたラインヘッドモジュール101を用いることにより、ラインヘッド100から出射された輝度の高い光をSLアレイ31を介することで感光体ドラム41上を確実に露光させることができる。
【0098】
上記実施形態では、プラズマ処理工程において大気圧プラズマ処理装置300を用いる場合について説明したが、プラズマ処理工程では、大気圧プラズマ処理装置に限らず、種々のプラズマ処理装置を用いることができ、例えば誘導結合型プラズマ(ICP)処理装置、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、マイクロ波プラズマ処理装置等を挙げることができる。
【0099】
図10は、本発明に係るラインヘッド(有機EL装置)の製造に用いることができるプラズマ処理装置(ICP処理装置)の一構成例を示す断面構成図である。
図10に示すプラズマ処理装置400は、内部を真空状態に密閉するチャンバー430と、チャンバー430の内部に配設されたテーブル460と、チャンバー430の底壁部に配設された真空ポンプ470とを備えて構成されている。チャンバー430の天井壁には、誘電体壁材420が設けられており、この誘電体壁材420の外側に、チャンバー430の内部に高周波誘導電界を形成するコイル状のICPアンテナ421が配置されている。チャンバー430内部には、また、誘電体壁材420と対向するシャワープレート440が設けられており、シャワープレート440と誘電体壁材420との間に処理ガス流路450が形成されている。
【0100】
ICPアンテナ421には、インピーダンス整合器422を介して高周波電源423が接続されており、大型基板500を支持するテーブル460には、インピーダンス整合器461を介して高周波バイアス電源462が接続されている。また、処理ガス流路450には、当該ガス流路に処理ガスを供給するガス配管が接続され、このガス配管にはバルブ451を介して処理ガス供給部452が接続されている。
【0101】
上記構成を備えたプラズマ処理装置400によるプラズマ処理を行うには、図10に示すように、チャンバー430内部のテーブル460に大型基板500を支持し、チャンバー内部を所定の真空状態とした後、シャワープレート440を介して処理ガスをチャンバー内に導入しつつ、高周波電源423から供給される高周波電圧をICPアンテナ421に印加することで、誘電体壁材420の内側のチャンバー内空間にプラズマ(ICP)を発生させる。そして、発生させたプラズマを大型基板500に照射することで、所定のプラズマ処理を大型基板500の表面に対して施すことができる。
【0102】
(ラインヘッドモジュールの使用形態)
次に、上記ラインヘッドモジュール101の使用形態について説明する。上記ラインヘッドモジュール101は、画像形成装置における露光装置として使用される。その場合、ラインヘッドモジュールは感光体ドラムに対向配置され、ラインヘッドからの光をSLアレイにより感光体ドラム上に正立等倍結像させて使用する。
以下に、一例としてタンデム方式の画像形成装置に関する実施形態について説明する。
【0103】
まず、タンデム方式の画像形成装置について説明する。
図11は、タンデム方式の画像形成装置の概略構成図であり、図11中符号80は画像形成装置である。この画像形成装置80は、本発明のラインヘッドモジュール101(本実施形態では、以下、これらをラインヘッドモジュール101K、101C、101M、101Yともよぶ)を、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光装置にそれぞれ配置したもので、タンデム方式のものとして構成されたものである。
【0104】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図11中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
【0105】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。
なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図11中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0106】
各感光体ドラム41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体ドラム41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明のラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0107】
また、このラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体ドラム41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0108】
ここで、各ラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)は、有機EL素子の配列方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各ラインヘッドモジュール101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0109】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0110】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0111】
なお、図11中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
【0112】
このような図11に示した画像形成装置80においては、図1に示したような本発明のラインヘッドモジュール101が露光手段として備えられている。従って、これら画像形成装置80にあっては、前述したようにラインヘッドモジュール101から射出される光の均一性に優れたものであるので、画像形成装置自体の印刷性能が向上し、得られるプリントの品質も高いものとなる。
なお、ラインヘッドモジュールを備えた画像形成装置は上記に限定されることなく、例えば4サイクル方式の画像形成装置としても構成することができるのは勿論である
【0113】
以上の実施の形態では、本発明に係る発光装置を、画像形成装置の露光部に用いられるラインヘッドモジュールに適用した例を挙げて説明したが、本発明に係る発光装置は、画像表示装置としても用いることができ、本発明によれば、均一な発光表示が得られる高画質の画像表示装置を提供することができる。そして、かかる画像表示装置を備えた電子機器は、表示部の表示性能に優れた高性能の電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】画像形成装置の露光手段たるラインヘッドモジュールの側断面図。
【図2】ラインヘッドを模式的に示した平面構成図。
【図3】ラインヘッドの一部を拡大して示す平面構成図。
【図4】発光領域103における部分断面構成図。
【図5】SLアレイの概略構造を示す斜視図。
【図6】ラインヘッドの製造に用いる大型基板の平面構成図。
【図7】ラインヘッドの製造方法を説明するための断面工程図。
【図8】大気圧プラズマ処理装置の一構成例を示す図。
【図9】プラズマ処理の複数の形態を示す平面構成図。
【図10】プラズマ処理装置の他の構成例を示す図。
【図11】画像形成装置の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0115】
3 有機EL素子(発光素子)、5a 基板、23 画素電極、50 陰極、60 発光層(発光部)、70 正孔輸送層(発光部)、100 ラインヘッド(発光装置、有機EL装置)、101 ラインヘッドモジュール、102 素子基板、103 発光領域、104 第1のダミー領域(第1の隔壁形成領域)、105 第2のダミー領域(第2の隔壁形成領域)、106 駆動回路、107 外部接続端子群、108 接続配線、109 陰極配線、111 第3のダミー領域(隔壁形成領域)、25 無機物隔壁、25a 開口部、221 有機物隔壁、221a 開口部、221b 第1のダミー開口部、221c 第2のダミー開口部、222 ダミー隔壁、300,400 プラズマ処理装置、500 大型基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を備え、
前記発光領域に、複数の前記第1電極を区画する隔壁が設けられ、
前記隔壁に囲まれる前記第1電極上に、前記発光部が形成されており、
前記発光領域の外側の前記基板上には、前記隔壁を延設してなる隔壁形成領域が設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子が、前記発光部に有機発光層を含んでなる有機EL素子であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光領域が、基板面内に長手方向を有して形成され、
前記隔壁形成領域が、前記発光領域の長手方向外側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記隔壁形成領域に配された前記隔壁に囲まれた領域内に、導電膜が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記導電膜が、前記第1電極と同層に形成された導電膜であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記隔壁形成領域に配された前記隔壁に囲まれた領域内に、前記発光部を構成する機能層の少なくとも一部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記隔壁形成領域が、平面的に区画された第1の隔壁形成領域と第2の隔壁形成領域とを有しており、
前記第1の隔壁形成領域の前記隔壁に囲まれた領域内にのみ、前記機能層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記隔壁形成領域における前記隔壁の面積率が、前記発光領域における前記隔壁の面積率より大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記隔壁形成領域における前記隔壁の平面パターン形状が、前記発光領域における前記隔壁の平面パターン形状と略同一であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記基板上に、前記発光素子と直接又は他の回路素子を介して接続された外部接続端子が設けられ、
前記外部接続端子が、前記発光領域の長手方向延長上に配設された前記隔壁形成領域の近傍に配置されており、
前記外部接続端子の近傍における前記隔壁形成領域における前記隔壁の形成密度が、他の隔壁形成領域における前記隔壁の形成密度より大きくされていることを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を設けてなる発光装置の製造方法であって、
前記基板上に前記第1電極を形成する電極形成工程と、
前記発光領域となる領域にて前記第1電極を区画する隔壁を形成する隔壁形成工程と、
前記隔壁が形成された前記基板の表面にプラズマ処理を施す表面処理工程と、
を有し、
前記隔壁形成工程にて、前記隔壁を前記発光領域の外側まで延設することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項12】
前記発光領域が前記基板上で一方向に長手に形成された発光装置を製造するに際し、
前記隔壁形成工程にて、前記隔壁を前記発光領域の長手方向外側に延設することを特徴とする請求項11に記載の発光装置の製造方法。
【請求項13】
基板上に、発光部を挟持して対向する第1電極及び第2電極を有する発光素子を配列してなる発光領域を設けてなる発光装置の製造方法であって、
一方向に長手の前記発光領域を有する複数の前記発光装置を、該発光装置が形成される発光装置形成領域を前記長手方向と略直交する方向に配列形成してなる大型基板を用いて製造するに際し、
前記大型基板上の前記各発光領域となる領域に、前記複数の第1電極を形成する電極形成工程と、
前記各発光領域となる領域にて前記第1電極を区画する隔壁を前記大型基板上に形成する隔壁形成工程と、
前記隔壁が形成された前記大型基板の表面にプラズマ処理を施す表面処理工程と、
を有し、
前記隔壁形成工程にて、前記隔壁を前記発光領域の長手方向外側まで延設することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記隔壁形成工程において、
前記隔壁を、前記発光装置形成領域の前記長手方向外側まで延設することを特徴とする請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記隔壁形成工程において、
前記発光装置形成領域が配列形成されたさらに外側の前記大型基板上の領域であって、前記発光装置形成領域の配列方向の外側の領域に、前記発光領域に沿って延在する前記隔壁を形成することを特徴とする請求項13又は14に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記表面処理工程において、
一方向に長手のプラズマ処理部を有するプラズマ処理装置を用いて、
前記プラズマ処理部により前記基板の表面を走査することを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記プラズマ処理部の走査方向が、前記大型基板における前記発光装置形成領域の配列方向と略平行であることを特徴とする請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記プラズマ処理部の走査方向が、前記大型基板における前記発光装置形成領域の配列方向と略直交する方向であることを特徴とする請求項16に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか1項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−73460(P2007−73460A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261710(P2005−261710)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】