発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器
【課題】陰極層の剥離やクラックの発生を防止可能な発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器を提供する。
【解決手段】発光装置1は、基体200上に、複数の第一電極23と、第一電極23の形成位置に対応した複数の開口部221aを有する隔壁221と、少なくとも開口部221aに配置される有機機能層60と、隔壁221及び有機機能層60を覆う第二電極50と、第二電極50を覆う第一無機層52と、第一無機層52を覆う第二無機層54と、第二無機層52を覆う有機緩衝層210と、有機緩衝層210を覆うガスバリア層30と、を有する。
【解決手段】発光装置1は、基体200上に、複数の第一電極23と、第一電極23の形成位置に対応した複数の開口部221aを有する隔壁221と、少なくとも開口部221aに配置される有機機能層60と、隔壁221及び有機機能層60を覆う第二電極50と、第二電極50を覆う第一無機層52と、第一無機層52を覆う第二無機層54と、第二無機層52を覆う有機緩衝層210と、有機緩衝層210を覆うガスバリア層30と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。この様な平面表示装置の一つとして、発光層を備えた有機EL装置が知られている。このような有機EL装置は、陽極と陰極との間に発光層を備えた構成が一般的である。更に、正孔注入性や電子注入性を向上させるために、陽極と発光層の間に正孔注入層を配置した構成や、発光層と陰極の間に電子注入層を配置した構成が提案されている。
【0003】
有機EL装置の発光層、正孔注入層、電子注入層に用いられる材料は、大気中の水分と反応し劣化し易いものが多い。これらの層が劣化すると、有機EL装置にダークスポットと呼ばれる非発光領域が形成されてしまい、発光素子としての寿命が短くなってしまう。従って、このような有機EL装置おいては、水分や酸素等の影響を抑えることが課題となっている。
このような課題を解決するために、有機EL装置の基板にガラスや金属からなる封止部材を接着して、水分や酸素の浸入を防止する方法が一般的に採用されてきた。しかし、ディスプレイの大型化及び薄型化/軽量化に伴い、接着した封止部材のみで水分や酸素の浸入を防ぐことが難しくなってきている。また、大型化に伴って駆動素子や配線を形成する面積を十分に確保するため、封止部材側から光を取り出すトップエミッション構造を用いる必要性も提案されている。このような要求を達成するために、透明でかつ軽量、耐強度性に優れた薄膜を用いた封止構造が求められている。
【0004】
そこで、近年では、表示装置の大型化及び軽薄化に対応するために、発光素子上に透明でガスバリア性に優れた珪素窒化物、珪素酸化物、セラミックス等の薄膜を高密度プラズマ成膜法(例えば、イオンプレーティング、ECRプラズマスパッタ、ECRプラズマCVD、表面波プラズマCVD、ICP−CVD等)によりガスバリア層として成膜させる薄膜封止と呼ばれる技術が用いられている(例えば、特許文献1〜4)。このような技術によれば、発光素子への水分の浸入を防ぐことが可能となっている。
【特許文献1】特開平9−185994号公報
【特許文献2】特開2001−284041号公報
【特許文献3】特開2000−223264号公報
【特許文献4】特開2003−17244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような技術を採用した場合でも、外部からの水分の浸入を完全に防ぐことができず、十分な発光特性や発光寿命が得られない。特に、画素隔壁等によって発生する外周部或いは段差部においてガスバリア層の剥離やクラックが発生して、そこからの水分の浸入が認められている。このため、ガスバリア層の下層側に、略平坦な上面を有する有機緩衝層を配置することにより、ガスバリア層におけるクラックの発生を防止することが考えられている。
ところが、このような有機緩衝層の形成が減圧雰囲気下において行われるため、特にトップエミション構造では透明性を得るために陰極を薄膜で用いるため、陰極層に負荷がかかり、陰極層の外周部或いは段差部において剥離やクラックが発生し、このため所望の発光特性を得ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第一の発明は、発光装置が、基体上に、複数の第一電極と、前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁と、少なくとも前記開口部に配置される有機機能層と、前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極と、前記第二電極を覆う第一無機層と、前記第一無機層を覆う第二無機層と、前記第二無機層を覆う有機緩衝層と、前記有機緩衝層を覆うガスバリア層と、を有するようにした。
この発明によれば、有機緩衝層を形成する等の製造プロセス中に、第二電極や第二無機層に加わる外力が緩和され、第二電極や第二無機層の剥離やクラック等の不具合発生が防止される。
【0008】
前記第二電極は、透明性を有する金属薄膜または/及び金属酸化物導電膜からなり、第一無機層及び第二無機層は絶縁性の無機化合物からなるようにした。
前記第一無機層が、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなるものでは、第二無機層に加えられた外力を第一無機層により緩和することができる。
前記第一無機層が、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなるものでは、第二無機層と一体となって第二電極を保護することができる。
前記第一無機層が、弾性率が10〜100GPaである材料からなるものでは、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
【0009】
前記第一無機層の膜厚が、前記第二無機層よりも厚く、かつ前記有機緩衝層よりも薄いものでは、第二無機層に加えられた外力のみを緩和するように機能させることができる。
前記第一無機層が、有機機能層及び画素隔壁、陰極の全てを被覆するようにより広い範囲を覆い、終端部はガスバリア層で被覆されるようにガスバリア層よりも狭い範囲で形成されるようにした。
前記第一無機層が、無機酸化物またはアルカリハライドからなるものでは、低い弾性率と高い透明性、低温でかつ短時間での厚膜成膜ができるために低コストの形成が可能であり、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
前記第二無機層と前記ガスバリア層とが、略同一の弾性率を有する材料からなるものでは、ガスバリア層と共に水分の浸入等を防止することができる。
【0010】
前記有機緩衝層が、エポキシ樹脂からなるものでは、ガスバリア層におけるクラック等の発生を防止することができる。
前記有機緩衝層の端部における接触角度が、20°以下に形成されているものでは、端部における剥離を防止することができる。
【0011】
第二の発明は、発光装置の製造方法が、基体上に、複数の第一電極を形成する工程と、前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁を形成する工程と、少なくとも前記開口部に配置される有機機能層を形成する工程と、前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極を形成する工程と、前記第二電極を覆う第一無機層を形成する工程と、前記第一無機層を覆う第二無機層を形成する工程と、前記第二無機層を覆う有機緩衝層を形成する工程と、前記有機緩衝層を覆うガスバリア層を形成する工程と、を有するようにした。
この発明によれば、第一無機層により、有機緩衝層形成工程において第二電極や第二無機層に加わる外力が緩和されるので、第二電極や第二無機層の剥離、クラック等の不具合発生が防止される。
【0012】
前記第一無機層が、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなるものでは、第二無機層に加えられた外力を第一無機層により緩和することができる。
前記第一無機層が、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなるものでは、第二無機層と一体となって第二電極を保護することができる。
前記第一無機層が、弾性率が10〜100GPaである材料からなるものでは、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
【0013】
前記第一無機層及び前記第二無機層は、同一の成膜装置内において連続的に形成されるものでは、製造効率の向上、製造コストの低減を図ることができる。
前記有機緩衝層が、減圧雰囲気下におけるスクリーン印刷法により配置されるものでは、有機緩衝層から水分を排除でき、また気泡の混入を防止できる。
【0014】
第三の発明は、電子機器が、第一の発明に係る発光装置を備えるようにした。この発明によれば、高品質が画像特性を有する表示部を備えた電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器の実施形態について、図を参照して説明する。なお、発光装置として、有機機能材料の一例である有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を用いたEL表示装置について説明する。
【0016】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るEL表示装置1の配線構造を示す図である。
EL表示装置(発光装置)1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型のEL表示装置である。
なお、以下の説明では、EL表示装置1を構成する各部位や各層膜を認識可能とするために、各々の縮尺を異ならせている。
【0017】
EL表示装置1は、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101と信号線102の各交点付近に画素領域Xが設けられる。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続される。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続される。
【0018】
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第一電極)23と、この画素電極23と陰極(第二電極)50との間に挟み込まれた有機機能層110とが設けられる。画素電極23と陰極50と有機機能層110により、発光素子(有機EL素子)が構成される。
【0019】
このEL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極23に電流が流れ、さらに有機機能層110を介して陰極50に電流が流れる。有機機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0020】
次に、EL表示装置1の具体的な構成について、図2〜図5を参照して説明する。
EL表示装置1は、図2に示すように、電気絶縁性を備えた基板20と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線(図示せず)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを具備して構成されたアクティブマトリクス型のものである。
なお、本発明においては、基板20と後述するようにこれの上に形成されるスイッチング用TFTや各種回路、及び層間絶縁膜などを含めて、基体200と称している(図3,図4参照)。
【0021】
画素部3は、中央部分の実表示領域4(図2中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向およびC−D方向にそれぞれ離間してマトリックス状に配置される。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80が配置される。これら走査線駆動回路80は、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
【0022】
さらに、実表示領域4の図2中上側には、検査回路90が配置される。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。なお、この検査回路90も、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
【0023】
走査線駆動回路80および検査回路90は、その駆動電圧が、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)および駆動電圧導通部340(図4参照)を介して、印加されるよう構成される。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を行う所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)および駆動電圧導通部350(図4参照)を介して、送信および印加される。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0024】
また、EL表示装置1は、図3、図4に示すように基体200上に画素電極23と有機隔壁層(画素隔壁)221、発光層(有機機能層)60と陰極50とを備えた発光素子(有機EL素子)を多数形成し、さらにこれらを覆って、第一陰極保護層(第一無機層)52、第二陰極保護層(第二無機層)54、有機緩衝層210、ガスバリア層30等を形成させたものである。
なお、発光層60としては、代表的には発光層(エレクトロルミネッセンス層)であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などのキャリア注入層またはキャリア輸送層を備えるもの。さらには、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子阻止層(エレクトロン阻止層)を備えるものであってもよい。
【0025】
基体200を構成する基板20としては、いわゆるトップエミッション型のEL表示装置の場合、この基板20の対向側であるガスバリア層30側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0026】
また、いわゆるボトムエミッション型のEL表示装置の場合には、基板20側から発光光を取り出す構成であるので、基板20としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。なお、本実施形態では、ガスバリア層30側から発光光を取り出すトップエミッション型とし、よって基板20としては上述した不透明基板、例えば不透明のプラスチックフィルムなどが用いられる。
【0027】
また、基板20上には、画素電極23を駆動するための駆動用TFT123などを含む回路部11が形成されており、その上に発光素子(有機EL素子)が多数設けられる。発光素子は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL材料を備える発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されたものである。
このような構成のもとに、発光素子はその発光層60において、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが結合することにより発光する。
【0028】
画素電極23は、本実施形態ではトップエミッション型であることから透明である必要はなく、反射性をより高めるために、例えば反射層/無機絶縁層/透明陽極ITOのような多層構造をとっても良い。反射層は、発光層から出る光を積極的に陰極側に反射させる層でアルミニウム合金などが用いられ、珪素窒化物などの無機絶縁層を介して、仕事関数が5eV以上の正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの金属酸化物導電膜が陽極に用いられる。
【0029】
正孔輸送層70の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いて正孔輸送層70を形成することができる。
【0030】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上述した高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
また、必要に応じて、このような発光層60の上に電子注入層を形成してもよい。
【0031】
また、本実施形態において正孔輸送層70と発光層60とは、図3,図4に示すように基体200上にて格子状に形成された親液性制御層25(図示せず)と有機隔壁層(画素隔壁)221とによって囲まれて配置され、これにより囲まれた正孔輸送層70および発光層60は単一の発光素子(有機EL素子)を構成する素子層となる。
なお、有機隔壁層221の開口部221aの各壁面の基体200表面に対する角度が、110度以上から170度以下となっている。このような角度としたのは、発光層60をウエットプロセスにより形成する際に、開口部221a内に配置されやすくするためである。
【0032】
陰極50は、図2〜図4に示すように、実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されたもので、発光層60と有機隔壁層221の上面、さらには有機隔壁層221の外側部を形成する壁面を覆った状態で基体200上に形成されたものである。なお、この陰極50は、図4に示すように有機隔壁層221の外側で基体200の外周部に形成された陰極用配線202に接続される。この陰極用配線202にはフレキシブル基板203が接続されており、これによって陰極50は、陰極用配線202を介してフレキシブル基板203上の図示しない駆動IC(駆動回路)に接続される。
【0033】
陰極50を形成するための材料としては、本実施形態はトップエミッション型であることから光透過性である必要があり、したがって透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー(登録商標))等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。
【0034】
また、陰極50は、電子注入効果の大きい(仕事関数が4eV以下)材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、これらの材料だけでは、電気抵抗が大きく電極として機能しないため、発光領域を避けるようにアルミニウムや金、銀、銅などの金属層をパターン形成したり、ITOや酸化錫などの透明な金属酸化物導電層との積層体と組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透明性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0035】
陰極50の上層部には、図3,図4に示すように、有機隔壁層221よりも広い範囲で、かつ陰極50を覆った状態で第一陰極保護層52が形成される。第一陰極保護層52は、第二陰極保護層54上に有機緩衝層210を形成する際に、第二陰極保護層54上に加わる負荷を緩和するために設けられるものである。
第一陰極保護層52は、第二陰極保護層54よりも弾性率が低い材料からなり、弾性率が10〜100GPaの範囲の無機材料である。例えば、ボトムエミッション構造では陰極層の金属材料であるMg、Zn、Al、Ag等を用いることができ、トップエミッション構造では透明な無機化合物材料であるSiO2などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを用いることができる。一般的に、これらの低弾性率の材料は耐水性に欠けるものが多い。
また、第一陰極保護層52の形成方法としては、発光層60にダメージを与えないように、低温で成膜が可能な真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法等が用いられる。
また、第一陰極保護層52の膜厚は、50〜200nm程度が好ましく、第二陰極保護層54よりも厚いことがより好ましい。
【0036】
第一陰極保護層52の上層部には、図3,図4に示すように、第二陰極保護層54が形成される。第二陰極保護層54は、第一陰極保護層52の耐水性の不足を補い、かつ有機緩衝層210の残留水分等に起因する製造プロセス時における陰極50へのダメージを防止するために設けられるものである。また、緩衝層材料の塗布形成時の平坦性や消泡性、密着性、側面端部の低角度化を目的として設けられるものである。
第二陰極保護層54は、透明性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を考慮して、緻密かつ高弾性率の珪素窒化物や珪素窒酸化物などの窒素を含む珪素化合物などの材料により形成されたものが好ましい。
第二陰極保護層54を形成する材料の弾性率としては、100GPa以上が好ましい。
また、第二陰極保護層54の形成方法としては、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が用いられる。
また、第二陰極保護層54の膜厚は、10〜50nm程度が好ましい。
【0037】
第二陰極保護層54の上層部には、図3,図4に示すように、有機隔壁層221よりも広い範囲で、かつ陰極50を覆った状態で有機緩衝層210が設けられる。なお、有機緩衝層210は、上記陰極保護層を終端部まで全て覆う必要は無く、また、画素部3上に形成された陰極50を覆う場合、更に基体200の外周部の陰極用配線202上に形成された陰極50も覆う場合のいずれであってもよい。
有機緩衝層210は、有機隔壁層221の形状の影響により、凸凹状に形成された陰極50の凸凹部分を埋めるように配置され、更に、その上面は略平坦に形成される。有機緩衝層210は、基体200の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、不安定な有機隔壁層221からの陰極50の剥離を防止する機能を有する。また、有機緩衝層210の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層210上に形成される硬い被膜からなるガスバリア層30も平坦化されるので、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリア層30へのクラックの発生を防止する。
【0038】
有機緩衝層210の形成は、減圧真空下におけるスクリーン印刷法を用いて、第二陰極保護層54上に塗布することが好ましい。スクリーンメッシュに樹脂硬化物で非塗布領域をパターン形成したマスクを基体200に接触させて、スキージで押し付けることで、有機緩衝層形成材料を基体200上(第二陰極保護層54上)に転写する。減圧雰囲気で塗布(転写)が行われるので、水分の少ない環境を維持しつつ、転写時に塗布面に発生する気泡を除去することができる。
【0039】
有機緩衝層210は、硬化前の原料主成分としては、減圧真空下で印刷形成するために、流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分の無い、全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0040】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
更に、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として、芳香続アミンやアルコール類、アミノフェノールなどの比較的分子量の高いものを添加することで、低温かつ短時間での硬化が可能となる。
硬化時間を短縮するためによく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤は、着色や急激な硬化収縮を発生するため好ましくないが、ガスバリア層30との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物等の補水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加剤が混入されていてもよい。
【0041】
これらの原料毎の粘度は、1000mPa・s(室温:25℃)以上が好ましい。塗布直後に発光層60へ浸透して、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を発生させないためである。また、これらの原料を混合した緩衝層形成材料の粘度としては、500〜20000mPa・s、特に2000〜10000mPa・s(室温)が好ましい。
【0042】
また、有機緩衝層210の膜厚としては、3〜10μmが好ましい。有機緩衝層210の膜厚が3μm以上であれば、異物が混入した場合であってもガスバリア層30の欠陥発生を防止することができるからである。
また、硬化後の特性としては、有機緩衝層210の弾性率が1〜10GPaであることが好ましい。10GPa以上では、有機隔壁層221上を平坦化した際の応力を吸収することができず、1GPa以下では耐摩耗性や耐熱性等が不足するためである。
【0043】
更に、有機緩衝層210の上層部には、図2〜図4に示すように、発光層60及び有機隔壁層221、陰極50を覆い、かつ封止層の中でも比較的に耐水性に欠ける有機隔壁層221及び第一陰極保護層52の終端部まで覆うような広い範囲で、ガスバリア層30が形成されている。
ガスバリア層30は、酸素や水分が浸入するのを防止するためのもので、これにより酸素や水分による陰極50や発光層60の劣化等を抑えることができる。ガスバリア層30は、透明性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。
ガスバリア層30の成膜法としては、水蒸気などのガスを遮断するため緻密で欠陥の無い被膜にする必要があり、好適には低温で緻密な膜を形成できる高密度プラズマ成膜法を用いて形成する。
ガスバリア層30の弾性率は、100GPa以上、具体的には200〜250Pa程度が好ましい。なお、上述した第二陰極保護層54と同一の弾性率を有する材料で形成してもよい。また、ガスバリア層30の膜厚は、200〜600nm程度が好ましい。200nm未満であると、異物に対する被覆性が不足し部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、600nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
【0044】
更に、ガスバリア層30としては、積層構造としてもよいし、その組成を不均一にして特にその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよい。
また、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層30は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0045】
ここで、有機緩衝層210の端部(外周領域)の構造について説明する。
図5は、有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
有機緩衝層210は、第二陰極保護層54上に形成され、その端部においてが第二陰極保護層54の表面と接触角αで接触している。ここで、接触角αは45°以下であり、より好ましくは、1°〜20°程度以下であることが好ましい。
これにより、有機緩衝層210の上層に形成されるガスバリア層30は、その端部に急激な形状変化がなく、なだらかに形状が変化するので、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。したがって、長期間に渡り、封止能力を維持することが可能となる。
【0046】
図3,図4に戻り、ガスバリア層30の上層部には、ガスバリア層30を覆う保護層204が設けられる。この保護層204は、ガスバリア層30側に設けられた接着層205と表面保護基板206とからなる。
接着層205は、ガスバリア層30上に表面保護基板206を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有し、発光層60やガスバリア層30の保護をするものである。当該接着層205に表面保護基板206が貼り合わされることで、保護層204が形成されている。接着層205は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、表面保護基板206より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されたものである。また、透明樹脂材料が好ましい。また、低温で硬化させるため硬化剤を添加する2液混合型の材料によって形成されたものでもよい。
なお、このような接着層205には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される接着層205とガスバリア層30との密着性がより良好になり、したがって機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。
また、特にガスバリア層30が珪素化合物で形成されている場合などでは、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層30との密着性を向上させることができ、したがってガスバリア層30のガスバリア性を高めることができる。
【0047】
表面保護基板206は、接着層205上に設けられて、保護層204の表面側を構成するものであり、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。
表面保護基板206の材質は、ガラス、DLC(ダイアモンドライクカーボン)層、透明プラスチック、透明プラスチックフィルムが採用される。ここで、プラスチック材料としては、例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が採用される。
更に、当該表面保護基板206には、紫外線遮断/吸収層や光反射防止層、放熱層、レンズ、色波長変換層やミラー等の光学構造が設けられていてもよい。また、カラーフィルタ機能を設けてもよい。
なお、EL表示装置1はトップエミッション型であるため、表面保護基板206、接着層205を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション型とする場合にはその必要はない。
【0048】
次に、本実施形態に係るEL表示装置1の製造方法の一例を、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面図に対応した図である。
なお、本実施形態においては、発光装置としてのEL表示装置1がトップエミッション型である場合であり、また、基板20の表面に回路部11を形成させる工程については、従来技術と変わらないので説明を省略する。
【0049】
まず、図6(a)に示すように、表面に回路部11が形成された基板20の全面を覆うように、画素電極23となる導電膜を形成され、更に、この透明導電膜をパターニングすることにより、第二層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成すると同時に、ダミー領域のダミーパターン26も形成する。
なお、図3,図4では、これら画素電極23、ダミーパターン26を総称して画素電極23としている。ダミーパターン26は、第二層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされる。すなわち、ダミーパターン26は、島状に配置され、実表示領域に形成されている画素電極23の形状とほぼ同一の形状を有する。もちろん、表示領域に形成されている画素電極23の形状と異なる構造であってもよい。なお、この場合、ダミーパターン26は少なくとも駆動電圧導通部310(340)の上方に位置するものも含むものとする。
【0050】
次いで、図6(b)に示すように、画素電極23、ダミーパターン26上、および第二層間絶縁膜上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25a(図3参照)において画素電極23からの正孔移動が可能とされている。逆に、開口部25aを設けないダミーパターン26においては、絶縁層(親液性制御層)25が正孔移動遮蔽層となって正孔移動が生じないものとされている。続いて、親液性制御層25において、異なる2つの画素電極23の間に位置して形成された凹状部に不図示のBM(ブラックマトリックス)を形成する。具体的には、親液性制御層25の凹状部に対して、金属クロムを用いスパッタリング法にて成膜する。
【0051】
そして、図6(c)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは上述したBMを覆うように有機隔壁層221を形成する。
具体的な有機隔壁層の形成方法としては、例えばアクリル系、イミド系材料などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機樹脂層を形成する。なお、有機樹脂層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチングなどによってパターニングし易いものであればどのようなものでもよい。
【0052】
更に、有機樹脂層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機樹脂層に開口部221aを形成することにより、開口部221aに壁面を有した有機隔壁層221を形成する。ここで、開口部221aを形成する壁面について、基体200表面に対する角度を110度以上から170度以下となるように形成する。
なお、この場合、有機隔壁層221は、少なくとも駆動制御信号導通部320の上方に位置するものを含むものとする。
【0053】
次いで、有機隔壁層221の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成する。具体的には、プラズマ処理を、予備加熱工程と、有機隔壁層221の上面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の上面をそれぞれ親液性にする親インク化工程と、有機隔壁層221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥インク化工程と、冷却工程とで構成する。
【0054】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70の形成を行う。この正孔輸送層形成工程では、例えばインクジェット法等の液滴吐出法や、スピンコート法などにより、正孔輸送層材料を電極面23c上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。
【0055】
次いで、発光層形成工程によって発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、例えばインクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機隔壁層221に形成された開口部221a内に発光層60を形成する。この発光層形成工程では、正孔輸送層70の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、正孔輸送層70に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
【0056】
次いで、図6(d)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50の形成を行う。この陰極層形成工程では、例えばイオンプレーティング法等の物理気相成長法によりITOを成膜して、陰極50とする。このとき、この陰極50については、発光層60と有機隔壁層221の上面を覆うのはもちろん、有機隔壁層221の外側部を形成する壁面についてもこれを覆った状態となるように形成する。
【0057】
次に、図7(a)に示すように、陰極50上に、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54を形成する。
例えば、Mg、Zn、Al、Ag等の無機材料、或いは透明無機材料としてのSiO2などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを、真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法により、50〜200nm程度の膜厚に成膜する。
次いで、珪素酸化物などの窒素を含む珪素化合物などの無機化合物を、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法により、10〜50nm程度の膜厚に成膜する。
なお、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54は、同一のプロセスチャンバ内において、同一のマスクを用いて、連続的に成膜することができる。このようにすれば、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54の成膜を効率的に行うことができる。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、有機緩衝層210をスクリーン印刷法により、第二陰極保護層54上に塗布する。この際、気泡を原因とする膜欠陥を発生させないよう100〜10000Pa範囲の減圧雰囲気下で塗布する。
【0059】
ここで、有機緩衝層210を減圧雰囲気下においてスクリーン印刷する手順を詳細に説明する。
図8は、スクリーン印刷法を工程順に示す図である。
スクリーン印刷法は、減圧雰囲気下で塗布が可能な方法であるため、比較的中〜高粘度の塗布液の使用を得意とする方式である。特に、スクリーン印刷法は、スキージの加圧移動により塗出制御が簡便で、スクリーンメッシュの使用により膜厚均一性およびパターニング性に優れる、という利点を有している。
【0060】
最初に、図8Aに示すように、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54まで形成した基体200を第一基板搬送室(不図示)に搬入し、第一基板搬送室内および印刷室(不図示)内を所定の圧力に調整した後に、基体200を印刷室内に搬入する。
そして、図8Bに示すように、スクリーンメッシュ551に対して位置合わせする。ここで、スクリーンメッシュ551の非塗布部には、材料を塗布しない部分を被覆する撥液性の乳剤硬化層551nが形成されている。
なお、スクリーンメッシュ551のパターン形状は、有機緩衝層210の周縁部を所定形状(例えば波形状)に形成するための型が形成されたものとなっている。
【0061】
次に、基体200を位置合わせした後、ステージ(不図示)上に保持する。基体200をステージに保持する方法としては、例えば真空吸着を用いることができる。
そして、図8Cに示すように、第一回目の圧力調整工程として、スクリーンメッシュ551上に緩衝層材料を滴下する前に、印刷室内を10〜1000Paの圧力に調整する。
次に、図8Dに示すように、スクリーンメッシュ551の一端(乳剤硬化層551n上)に硬化前の緩衝層材料Kをディスペンサノズル等によって所定量滴下する。
緩衝層材料Kには、上述したようにエポキシモノマー/オリゴマー材料に硬化剤、反応促進剤を混合した材料を使用する。これらの材料は塗布前に混合されてから用いられるが、混合後の粘度としては、室温(25℃)で500〜20000mPa・sの粘度範囲であることがよい。これよりも粘度が低い場合では、スクリーンメッシュ551からの液だれや乳剤硬化層551n上へのはみ出しが起こり、膜厚安定性やパターニング性が悪くなる。また、これよりも粘度が高い場合では、平坦性が悪くなるためにメッシュ痕が残留し、またメッシュ離脱時に巻き込む気泡が大きく成長するため、クレーター状の塗布抜けが発生しやすく、消泡工程後でも気泡が残留しやすくなる。
【0062】
更に、緩衝層材料Kの粘度としては、特に2000〜10000mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度を10000mPa・sよりも低くすることで、気泡の残留をさらに抑制することができる。また、1000mPa・sよりも高くすることで、スクリーン印刷工程において気泡が弾け難く、そして、クレーター状の欠陥が生じ難くなる。これによって、均一な膜を得ることが可能となる。また、後述するように、ダークスポットの発生を確実に抑制できる。したがって、材料の室温粘度を上記のように設定することで、緩衝層の形状保持、表面の平坦化、気泡の極微小化、側面端部の低角度化を確実に実現することができ、ダークスポットの発生を抑制することができる。
【0063】
また、有機緩衝層210の膜厚は、平坦化と、凹凸によって生じる応力の緩和を実現できるように有機隔壁層221の高さよりも厚くする必要があり、上述したように、3〜10μm程度が好ましい。これらの粘度と膜厚制御は、接触角の形成にも影響し、終端部の角度20°以下を達成するためにも重要である。応力はないことが好ましいが、わずかに引張応力が生じてもよい。極力応力を少なくするため、比較的密度の低い多孔質な膜であることが好ましく、上述したように、弾性率は1〜10GPaの範囲が好適である。
【0064】
次に、図8Eに示すように、スキージ553をスクリーンメッシュ551上で一辺側から他辺側に移動させ、緩衝層材料Kをスクリーンメッシュ551上に広げつつ、基体200上に押し込み、パターンを転写する。なお、スクリーンメッシュ551を基体200上に配置した際、スクリーンメッシュ551が基体200に完全に接触していてもよいし、間隔が1mm程度空いていてもよい。間隔が空いている場合でもスキージ553で材料を押し込んだ後は材料を介してスクリーンメッシュ551と基体200とは実質的に接触することになり、コンタクト方式のスクリーン印刷となる。したがって、後述するスクリーンメッシュの剥離工程が必要となる。
【0065】
またこの際、緩衝層材料Kがローリングしながら塗布されるため、材料中に気泡が混入する。そのため、図8Fに示すように、第二回目の圧力調整工程として印刷室内を2000〜5000Paの圧力に調整した上で所定時間保持し、気泡を除去する。すなわち、印刷室内への窒素ガスのパージにより第一回目の調整圧力である10〜1000Paから2000〜5000Paに圧力を上げる。この気泡は真空気泡であるから、圧力を上げることによって気泡をつぶし、消滅させることができる。
【0066】
次に、図8Gに示すように、基体200からスクリーンメッシュ551を剥離する。この際、図示していないが、例えば基体200の一辺側でスキージ553をステージに押し当てた状態でステージを下降させ、スクリーンメッシュ551からステージを離間させると、スキージ553を押し当てた箇所が支点となって反対側の辺からスクリーンメッシュ551の剥離が始まる。実際にスクリーンメッシュ551の剥離動作を行う際には、特に印刷室内の圧力を3000〜4000Paに調整することが望ましい。その理由は、剥離時には基体200がスクリーンメッシュ551に引っ張られ、ステージから基体200を引き剥がそうとする大きな力が加わるが、この時点で印刷室内の圧力が3000〜4000Pa以上であれば、真空吸着によって基体200がステージ上に確実に固定され、スクリーンメッシュ551の剥離を支障なく行うことができるからである。
【0067】
その後、図8Hに示すように、ステージの下降を続け、スクリーンメッシュ551が基体200から完全に離れたところで剥離が終了する。
次に、図8Iに示すように、緩衝層材料Kの印刷が終了した基体200を第二基板搬送室に搬入した後、図8Jに示すように、基体200を第二基板搬送室内に保持した状態で、第三回目の調整圧力として第二基板搬送室内を大気圧とした上で所定時間保持し、気泡を除去する。すなわち、第二基板搬送室内への窒素ガスのパージにより第二基板搬送室内を大気圧とし、基板周囲の雰囲気を第二回目の調整圧力である2000〜5000Paから大気圧にまで上昇させる。
【0068】
次に、図8Kに示すように、基体200を第二基板搬送室から加熱室に搬入した後、窒素ガス雰囲気下において緩衝層材料Kに60〜100℃の加熱処理を施す。これにより、緩衝層材料Kが硬化する。このような硬化工程を施すことにより、硬化前の緩衝層材料Kに含まれるエポキシモノマー/オリゴマー材料と硬化剤、反応促進剤とが反応し、エポキシモノマー/オリゴマーが三次元架橋し、ポリマーのエポキシ樹脂が形成される。
また、加熱処理を施すことにより、このような硬化現象が生じるだけでなく、緩衝層材料Kの側面端部の形状がだれて終端部の角度が20°以下(図5参照)になり、最終的な有機緩衝層210の形状となる。
【0069】
図7(c)に戻り、有機緩衝層210を覆って、ガスバリア層30を形成する。ガスバリア層30は、減圧下の高密度プラズマ成膜法等により形成される、主に珪素窒化物又は珪素酸窒化物からなる透明な薄膜が好ましい。また、小さな分子の水蒸気を完全に遮断するため緻密性を持たせており、若干の圧縮応力を持つことが好ましい。好ましい膜密度は、2.3/cm3以上、弾性率は100GPa以上、膜厚は無機緩衝層と合わせて1000nm以下にすることが好ましく、20〜600nmが好適である。
【0070】
なお、ガスバリア層30の具体的な形成方法としては、先にスパッタリング法やイオンプレーティング法等の物理気相成長法で成膜を行い、次いで、プラズマCVD法等の化学気相成長法で成膜を行ってもよい。スパッタリング法やイオンプレーティング法等の物理気相成長法は、有害な原料ガスを使わずに一般に異質な基板表面に対しても比較的密着性の良い緻密な膜が得られ、一方、化学気相成長法では、成膜速度が速く、応力が少なくステップカバーレッジ性に優れた欠陥が少なく緻密で良好な膜質のものが得られる。これらの方法は、量産性を考慮して適時選択できる。
また、ガスバリア層30の形成については、上述したように同一の材料によって単層で形成してもよく、また異なる材料で複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
【0071】
次いで、ガスバリア層30上に接着層205と表面保護基板206からなる保護層204を設ける(図3,図4参照)。接着層205は、スクリーン印刷法やスリットコート法などによりガスバリア層30上に略均一に塗布され、その上に表面保護基板206が貼り合わされる。
このようにガスバリア層30上に保護層204を設ければ、表面保護基板206が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、発光層60や陰極50、さらにはガスバリア層もこの表面保護基板206によって保護することができ、したがって発光素子の長寿命化を図ることができる。
また、接着層205が機械的衝撃に対して緩衝機能を発揮するので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層30やこの内側の発光素子への機械的衝撃を緩和し、この機械的衝撃による発光素子の機能劣化を防止することができる。
以上のようにして、EL表示装置1が形成される。
【0072】
[第二実施形態]
以下、本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2について説明する。なお、本実施形態においては、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
図9は、本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2の断面構造を示す模式断面図である。図10は、EL表示装置2における有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
EL表示装置2は、発光層として白色に発光する白色発光層60Wを採用したこと、および表面保護基板としてカラーフィルタ基板207を採用したことが、第一実施形態のEL表示装置1と相違している。
【0073】
白色有機発光材料としては、スチリルアミン系発光材料,アントラセン系ドーパミント(青色)、或いはスチリルアミン系発光材料,ルプレン系ドーパミント(黄色)が用いられる。
なお、白色発光層60Wの下層或いは上層に、トリアリールアミン(ATP)多量体正孔注入層、TDP(トリフェニルジアミン)系正孔輸送層、アルミニウムキノリノール(Alq3)層(電子輸送層)、LiF(電子注入バッファー層)を成膜ことが好ましい。
【0074】
また、第一実施形態のEL表示装置1のように、発光層60をR、G、B毎に区分けする必要がないので、白色発光層60Wが有機隔壁層221を跨ぐように各画素電極23上に形成されていてもよい。
そして、白色発光層60W上には、陰極50、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54が形成される。
なお、有機隔壁層221の上面にアルミニウムなどの金属材料からなる補助電極64を配置してもよい。補助電極64は、陰極50よりも低い抵抗値を有し、陰極50の途中部位とを電気的に接続することによって、抵抗値の高い陰極50の電圧降下を防止するものである。
【0075】
また、カラーフィルタ基板207は、基板本体207A上に赤色着色層208R、緑色着色層208G、青色着色層208B、およびブラックマトリクス209が形成されたものである。そして、着色層208R、208G、208B、およびブラックマトリクス209の形成面が接着層205を介して基体200に向けて対向配置されている。なお、基板本体207Aの材質は、第一実施形態の表面保護基板206と同様のものを採用することができる。
【0076】
また、着色層208R,208G,208Bの各々は画素電極23上の白色発光層60Wに対向して配置されている。これにより、白色発光層60Wの発光光が、着色層208R,208G,208Bの各々を透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に出射するようになっている。
このように、EL表示装置2においては、白色発光層60Wの発光光を利用し、かつ、複数色の着色層208を有するカラーフィルタ基板207によってカラー表示を行うようになっている。
【0077】
また、着色層208R,208G,208Bと白色発光層60Wとの距離は、白色発光層60Wの発光光が対向する着色層のみに出射するように、できるだけ短い距離とすることが要求される。これは、その距離が長い場合では、白色発光層60Wの発光光が隣接する着色層に対して出射される可能性が高くなるためであり、これを抑制するためにその距離を短くすることが好ましい。
具体的には、絶縁層284の表面からカラーフィルタ基板207までの間隔を15μm程度にすることが好ましい。これにより、白色発光層60Wの発光光は、対向する着色層のみに出射することとなり、隣接する着色層に発光光が漏れてしまうのを抑制することができる。これにより混色を抑制することができる。
【0078】
また、単色の白色発光層60Wを利用しているので、R、G、B毎に発光層を形成し分ける必要がない。具体的には、低分子系の白色発光層を形成するマスク蒸着工程や、高分子系の白色発光層を形成する液滴吐出工程等において、1種類の白色発光層を1工程で形成するだけでよいので、R、G、B毎の発光層を形成し分ける場合と比較して製造工程が容易になる。また、各発光層60の寿命のばらつきを抑えることができる。
【0079】
また、EL表示装置2においても、図10に示すように、有機緩衝層210は、第二陰極保護層54上に形成され、その終端部においてが第二陰極保護層54の表面と接触角αで接触している。ここで、接触角αは45°以下であり、より好ましくは、1°〜20°程度以下である。
これにより、有機緩衝層210の上層に形成されるガスバリア層30は、その端部に急激な形状変化がなく、なだらかに形状が変化するので、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。したがって、長期間に渡り、封止能力を維持することが可能となる。
また、層間絶縁膜292上に配置された平坦化絶縁膜294の端部も接触角βが45°以下となっており、平坦化絶縁膜294上に形成される第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54の形状がなだらかに変化するように形成されている。
これにより、平坦化絶縁膜294の上層に形成される第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54は、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。
【0080】
[実施例]
次に、陰極50上に、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54が形成した場合における不具合発生の有無について説明する。
図11は、約3μmの段差を有する有機隔壁層221と、それらを被覆する多層からなる発光層60、マグネシウム−銀合金10nmからなる陰極50上に、第一陰極保護層52を設けた場合における不具合発生の有無を示す図である。
具体的には、第一陰極保護層52を各種材料により形成し、更に第二陰極保護層54、有機緩衝層210、ガスバリア層30を積層した場合に、陰極50或いは第二陰極保護層54に不具合が発生したか否かを比較した。特に、発光層60,60W付近(段差部分)において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離やクラックが発生するか否か観察したものである。
なお、第二陰極保護層54は、珪素酸窒化物(SiOxNy)により形成した。
【0081】
図11に示すように、第一陰極保護層52として、LiFやMgF等のアルカリハライド、又はMg、Zn、Al、Ag、SiO2等の無機材料を用いた場合には、発光層60,60W付近において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離、クラック、発光異常等の不具合は見受けられなかった。これらの材料は、いずれも弾性率が10〜100GPaである。
一方、第一陰極保護層52として、Ti、Pt、MgO、SiOxNy、Si3N4、Al2O3等の無機材料を用いた場合には、発光層60,60W付近において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離、クラック、発光画素シュリンク等の不具合が発見された。これらの材料は、いずれも弾性率が100GPa以上である。
【0082】
このように、陰極50上に、弾性率の低い第一陰極保護層52、弾性率の高い第二陰極保護層54を形成することで、製造プロセス工程中、特に有機緩衝層210の形成工程中において、発光層60,60W付近における陰極50或いは第二陰極保護層54の不具合発生を容易に防止することができる。
【0083】
なお、上述したEL表示装置1,2の実施形態では、トップエミッション型を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ボトムエミッション型にも、また両側に発光光を出射するタイプのものにも適用可能である。
【0084】
また、ボトムエミッション型、あるいは両側に発光光を出射するタイプのものとした場合、基体200に形成するスイッチング用TFT112や駆動用TFT123については、発光素子の直下ではなく、親液性制御層25および有機隔壁層221の直下に形成するようにし、開口率を高めるのが好ましい。
また、EL表示装置1,2では、第一電極を陽極として機能させ、第二電極を陰極として機能させたが、これらを逆にして第一電極を陰極、第二電極を陽極としてそれぞれ機能させるよう構成してもよい。ただし、その場合には、発光層60と正孔輸送層70との形成位置を入れ替えるようにする必要がある。
【0085】
また、本実施形態では、発光装置にEL表示装置1,2を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、基本的に第二電極が基体の外側に設けられるものであれば、どのような形態の発光装置にも適用可能である。
【0086】
なお、EL表示装置1,2における第一陰極保護層52、第二陰極保護層54、有機緩衝層210、ガスバリア層30等の弾性率を測定する方法としては、例えばナノインデンテーション法を用いることができる。
ナノインデンテーション法は、圧子を高精度に制御しながら試料に押し込み、荷重−変位曲線の解析から、かたさや弾性率等の力学的性質を定量的に測定する方法である。特に、従来困難であった薄膜試料の測定が可能であり、また、簡便で高い再現性をもつことから、第一陰極保護層52等の弾性率の測定に好適に用いることができる。
【0087】
次に、本発明の電子機器について説明する。
電子機器は、上述したEL表示装置1,2を表示部として有したものであり、具体的には図12に示すものが挙げられる。
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、携帯電話1000は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1001を備える。
図12(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(b)において、時計(電子機器)1100は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1101を備える。
図12(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述したEL表示装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
図12(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図12(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上述したEL表示装置1を用いた表示部1306を備える。
【0088】
図12(a)〜(d)に示すそれぞれの電子機器は、上述したEL表示装置1,2を有した表示部1001,1101,1206,1306を備えているので、表示部の長寿命化が図られたものとなる。
また、図12(d)に示す薄型大画面テレビ1300は、面積に関係なく表示部を封止できる本発明を適用したので、従来と比較して大面積(例えば対角20インチ以上)の表示部1306を備えるものとなる。
【0089】
また、EL表示装置1,2を表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、EL表示装置1を露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第一実施形態に係るEL表示装置1の配線構造を示す図である。
【図2】EL表示装置1の構成を示す模式図である。
【図3】図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】図2のC−D線に沿う断面図である。
【図5】有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
【図6】EL表示装置1の製造方法を工程順に示す図である。
【図7】図6に続く工程を示す図である。
【図8】スクリーン印刷法を工程順に示す図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2の断面構造を示す模式図である。
【図10】有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
【図11】陰極50上に第一陰極保護層52を設けた場合における不具合発生の有無を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1,2…EL表示装置(発光装置)、23…画素電極(第一電極)、30…ガスバリア層、50…陰極(第二電極)、52…第一陰極保護層(第一無機層)、54…第二陰極保護層(第二無機層)、60…発光層(有機機能層)、200…基体、210…有機緩衝層、221…有機隔壁層(隔壁)、221a…開口部、1000…携帯電話(電子機器)、1100…時計(電子機器)、1200…情報処理装置(電子機器)、1300…薄型大画面テレビ(電子機器)、1001,1101,1206,1306…表示部(発光装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等に伴い、消費電力が少なく軽量化された平面表示装置のニーズが高まっている。この様な平面表示装置の一つとして、発光層を備えた有機EL装置が知られている。このような有機EL装置は、陽極と陰極との間に発光層を備えた構成が一般的である。更に、正孔注入性や電子注入性を向上させるために、陽極と発光層の間に正孔注入層を配置した構成や、発光層と陰極の間に電子注入層を配置した構成が提案されている。
【0003】
有機EL装置の発光層、正孔注入層、電子注入層に用いられる材料は、大気中の水分と反応し劣化し易いものが多い。これらの層が劣化すると、有機EL装置にダークスポットと呼ばれる非発光領域が形成されてしまい、発光素子としての寿命が短くなってしまう。従って、このような有機EL装置おいては、水分や酸素等の影響を抑えることが課題となっている。
このような課題を解決するために、有機EL装置の基板にガラスや金属からなる封止部材を接着して、水分や酸素の浸入を防止する方法が一般的に採用されてきた。しかし、ディスプレイの大型化及び薄型化/軽量化に伴い、接着した封止部材のみで水分や酸素の浸入を防ぐことが難しくなってきている。また、大型化に伴って駆動素子や配線を形成する面積を十分に確保するため、封止部材側から光を取り出すトップエミッション構造を用いる必要性も提案されている。このような要求を達成するために、透明でかつ軽量、耐強度性に優れた薄膜を用いた封止構造が求められている。
【0004】
そこで、近年では、表示装置の大型化及び軽薄化に対応するために、発光素子上に透明でガスバリア性に優れた珪素窒化物、珪素酸化物、セラミックス等の薄膜を高密度プラズマ成膜法(例えば、イオンプレーティング、ECRプラズマスパッタ、ECRプラズマCVD、表面波プラズマCVD、ICP−CVD等)によりガスバリア層として成膜させる薄膜封止と呼ばれる技術が用いられている(例えば、特許文献1〜4)。このような技術によれば、発光素子への水分の浸入を防ぐことが可能となっている。
【特許文献1】特開平9−185994号公報
【特許文献2】特開2001−284041号公報
【特許文献3】特開2000−223264号公報
【特許文献4】特開2003−17244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような技術を採用した場合でも、外部からの水分の浸入を完全に防ぐことができず、十分な発光特性や発光寿命が得られない。特に、画素隔壁等によって発生する外周部或いは段差部においてガスバリア層の剥離やクラックが発生して、そこからの水分の浸入が認められている。このため、ガスバリア層の下層側に、略平坦な上面を有する有機緩衝層を配置することにより、ガスバリア層におけるクラックの発生を防止することが考えられている。
ところが、このような有機緩衝層の形成が減圧雰囲気下において行われるため、特にトップエミション構造では透明性を得るために陰極を薄膜で用いるため、陰極層に負荷がかかり、陰極層の外周部或いは段差部において剥離やクラックが発生し、このため所望の発光特性を得ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
第一の発明は、発光装置が、基体上に、複数の第一電極と、前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁と、少なくとも前記開口部に配置される有機機能層と、前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極と、前記第二電極を覆う第一無機層と、前記第一無機層を覆う第二無機層と、前記第二無機層を覆う有機緩衝層と、前記有機緩衝層を覆うガスバリア層と、を有するようにした。
この発明によれば、有機緩衝層を形成する等の製造プロセス中に、第二電極や第二無機層に加わる外力が緩和され、第二電極や第二無機層の剥離やクラック等の不具合発生が防止される。
【0008】
前記第二電極は、透明性を有する金属薄膜または/及び金属酸化物導電膜からなり、第一無機層及び第二無機層は絶縁性の無機化合物からなるようにした。
前記第一無機層が、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなるものでは、第二無機層に加えられた外力を第一無機層により緩和することができる。
前記第一無機層が、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなるものでは、第二無機層と一体となって第二電極を保護することができる。
前記第一無機層が、弾性率が10〜100GPaである材料からなるものでは、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
【0009】
前記第一無機層の膜厚が、前記第二無機層よりも厚く、かつ前記有機緩衝層よりも薄いものでは、第二無機層に加えられた外力のみを緩和するように機能させることができる。
前記第一無機層が、有機機能層及び画素隔壁、陰極の全てを被覆するようにより広い範囲を覆い、終端部はガスバリア層で被覆されるようにガスバリア層よりも狭い範囲で形成されるようにした。
前記第一無機層が、無機酸化物またはアルカリハライドからなるものでは、低い弾性率と高い透明性、低温でかつ短時間での厚膜成膜ができるために低コストの形成が可能であり、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
前記第二無機層と前記ガスバリア層とが、略同一の弾性率を有する材料からなるものでは、ガスバリア層と共に水分の浸入等を防止することができる。
【0010】
前記有機緩衝層が、エポキシ樹脂からなるものでは、ガスバリア層におけるクラック等の発生を防止することができる。
前記有機緩衝層の端部における接触角度が、20°以下に形成されているものでは、端部における剥離を防止することができる。
【0011】
第二の発明は、発光装置の製造方法が、基体上に、複数の第一電極を形成する工程と、前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁を形成する工程と、少なくとも前記開口部に配置される有機機能層を形成する工程と、前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極を形成する工程と、前記第二電極を覆う第一無機層を形成する工程と、前記第一無機層を覆う第二無機層を形成する工程と、前記第二無機層を覆う有機緩衝層を形成する工程と、前記有機緩衝層を覆うガスバリア層を形成する工程と、を有するようにした。
この発明によれば、第一無機層により、有機緩衝層形成工程において第二電極や第二無機層に加わる外力が緩和されるので、第二電極や第二無機層の剥離、クラック等の不具合発生が防止される。
【0012】
前記第一無機層が、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなるものでは、第二無機層に加えられた外力を第一無機層により緩和することができる。
前記第一無機層が、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなるものでは、第二無機層と一体となって第二電極を保護することができる。
前記第一無機層が、弾性率が10〜100GPaである材料からなるものでは、第二電極や第二無機層におけるクラック発生や剥離を確実に防止できる。
【0013】
前記第一無機層及び前記第二無機層は、同一の成膜装置内において連続的に形成されるものでは、製造効率の向上、製造コストの低減を図ることができる。
前記有機緩衝層が、減圧雰囲気下におけるスクリーン印刷法により配置されるものでは、有機緩衝層から水分を排除でき、また気泡の混入を防止できる。
【0014】
第三の発明は、電子機器が、第一の発明に係る発光装置を備えるようにした。この発明によれば、高品質が画像特性を有する表示部を備えた電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る発光装置、発光装置の製造方法、及び電子機器の実施形態について、図を参照して説明する。なお、発光装置として、有機機能材料の一例である有機エレクトロルミネッセンス(EL)材料を用いたEL表示装置について説明する。
【0016】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係るEL表示装置1の配線構造を示す図である。
EL表示装置(発光装置)1は、スイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型のEL表示装置である。
なお、以下の説明では、EL表示装置1を構成する各部位や各層膜を認識可能とするために、各々の縮尺を異ならせている。
【0017】
EL表示装置1は、複数の走査線101と、各走査線101に対して直角に交差する方向に延びる複数の信号線102と、各信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101と信号線102の各交点付近に画素領域Xが設けられる。
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ線駆動回路100が接続される。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査線駆動回路80が接続される。
【0018】
さらに、画素領域Xの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT112と、このスイッチング用TFT112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量113と、該保持容量113によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT123と、この駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(第一電極)23と、この画素電極23と陰極(第二電極)50との間に挟み込まれた有機機能層110とが設けられる。画素電極23と陰極50と有機機能層110により、発光素子(有機EL素子)が構成される。
【0019】
このEL表示装置1によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用TFT112がオン状態になると、そのときの信号線102の電位が保持容量113に保持され、該保持容量113の状態に応じて、駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して、電源線103から画素電極23に電流が流れ、さらに有機機能層110を介して陰極50に電流が流れる。有機機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
【0020】
次に、EL表示装置1の具体的な構成について、図2〜図5を参照して説明する。
EL表示装置1は、図2に示すように、電気絶縁性を備えた基板20と、スイッチング用TFT(図示せず)に接続された画素電極が基板20上にマトリックス状に配置されてなる画素電極域(図示せず)と、画素電極域の周囲に配置されるとともに各画素電極に接続される電源線(図示せず)と、少なくとも画素電極域上に位置する平面視ほぼ矩形の画素部3(図2中一点鎖線枠内)とを具備して構成されたアクティブマトリクス型のものである。
なお、本発明においては、基板20と後述するようにこれの上に形成されるスイッチング用TFTや各種回路、及び層間絶縁膜などを含めて、基体200と称している(図3,図4参照)。
【0021】
画素部3は、中央部分の実表示領域4(図2中二点鎖線枠内)と、実表示領域4の周囲に配置されたダミー領域5(一点鎖線および二点鎖線の間の領域)とに区画される。
実表示領域4には、それぞれ画素電極を有する表示領域R、G、BがA−B方向およびC−D方向にそれぞれ離間してマトリックス状に配置される。
また、実表示領域4の図2中両側には、走査線駆動回路80が配置される。これら走査線駆動回路80は、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
【0022】
さらに、実表示領域4の図2中上側には、検査回路90が配置される。この検査回路90は、EL表示装置1の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段(図示せず)を備え、製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。なお、この検査回路90も、ダミー領域5の下側に配置されたものである。
【0023】
走査線駆動回路80および検査回路90は、その駆動電圧が、所定の電源部から駆動電圧導通部310(図3参照)および駆動電圧導通部340(図4参照)を介して、印加されるよう構成される。また、これら走査線駆動回路80および検査回路90への駆動制御信号および駆動電圧は、このEL表示装置1の作動制御を行う所定のメインドライバなどから駆動制御信号導通部320(図3参照)および駆動電圧導通部350(図4参照)を介して、送信および印加される。なお、この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路80および検査回路90が信号を出力する際の制御に関連するメインドライバなどからの指令信号である。
【0024】
また、EL表示装置1は、図3、図4に示すように基体200上に画素電極23と有機隔壁層(画素隔壁)221、発光層(有機機能層)60と陰極50とを備えた発光素子(有機EL素子)を多数形成し、さらにこれらを覆って、第一陰極保護層(第一無機層)52、第二陰極保護層(第二無機層)54、有機緩衝層210、ガスバリア層30等を形成させたものである。
なお、発光層60としては、代表的には発光層(エレクトロルミネッセンス層)であり、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などのキャリア注入層またはキャリア輸送層を備えるもの。さらには、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子阻止層(エレクトロン阻止層)を備えるものであってもよい。
【0025】
基体200を構成する基板20としては、いわゆるトップエミッション型のEL表示装置の場合、この基板20の対向側であるガスバリア層30側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えばアルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したもの、また熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、さらにはそのフィルム(プラスチックフィルム)などが挙げられる。
【0026】
また、いわゆるボトムエミッション型のEL表示装置の場合には、基板20側から発光光を取り出す構成であるので、基板20としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。なお、本実施形態では、ガスバリア層30側から発光光を取り出すトップエミッション型とし、よって基板20としては上述した不透明基板、例えば不透明のプラスチックフィルムなどが用いられる。
【0027】
また、基板20上には、画素電極23を駆動するための駆動用TFT123などを含む回路部11が形成されており、その上に発光素子(有機EL素子)が多数設けられる。発光素子は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL材料を備える発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されたものである。
このような構成のもとに、発光素子はその発光層60において、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが結合することにより発光する。
【0028】
画素電極23は、本実施形態ではトップエミッション型であることから透明である必要はなく、反射性をより高めるために、例えば反射層/無機絶縁層/透明陽極ITOのような多層構造をとっても良い。反射層は、発光層から出る光を積極的に陰極側に反射させる層でアルミニウム合金などが用いられ、珪素窒化物などの無機絶縁層を介して、仕事関数が5eV以上の正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)などの金属酸化物導電膜が陽極に用いられる。
【0029】
正孔輸送層70の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などを用いて正孔輸送層70を形成することができる。
【0030】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上述した高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
また、必要に応じて、このような発光層60の上に電子注入層を形成してもよい。
【0031】
また、本実施形態において正孔輸送層70と発光層60とは、図3,図4に示すように基体200上にて格子状に形成された親液性制御層25(図示せず)と有機隔壁層(画素隔壁)221とによって囲まれて配置され、これにより囲まれた正孔輸送層70および発光層60は単一の発光素子(有機EL素子)を構成する素子層となる。
なお、有機隔壁層221の開口部221aの各壁面の基体200表面に対する角度が、110度以上から170度以下となっている。このような角度としたのは、発光層60をウエットプロセスにより形成する際に、開口部221a内に配置されやすくするためである。
【0032】
陰極50は、図2〜図4に示すように、実表示領域4およびダミー領域5の総面積より広い面積を備え、それぞれを覆うように形成されたもので、発光層60と有機隔壁層221の上面、さらには有機隔壁層221の外側部を形成する壁面を覆った状態で基体200上に形成されたものである。なお、この陰極50は、図4に示すように有機隔壁層221の外側で基体200の外周部に形成された陰極用配線202に接続される。この陰極用配線202にはフレキシブル基板203が接続されており、これによって陰極50は、陰極用配線202を介してフレキシブル基板203上の図示しない駆動IC(駆動回路)に接続される。
【0033】
陰極50を形成するための材料としては、本実施形態はトップエミッション型であることから光透過性である必要があり、したがって透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITOが好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー(登録商標))等を用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いるものとする。
【0034】
また、陰極50は、電子注入効果の大きい(仕事関数が4eV以下)材料が好適に用いられる。例えば、カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、リチウム金属、又はこれらの金属化合物である。金属化合物としては、フッ化カルシウム等の金属フッ化物や酸化リチウム等の金属酸化物、アセチルアセトナトカルシウム等の有機金属錯体が該当する。また、これらの材料だけでは、電気抵抗が大きく電極として機能しないため、発光領域を避けるようにアルミニウムや金、銀、銅などの金属層をパターン形成したり、ITOや酸化錫などの透明な金属酸化物導電層との積層体と組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態では、フッ化リチウムとマグネシウム−銀合金、ITOの積層体を、透明性が得られる膜厚に調整して用いるものとする。
【0035】
陰極50の上層部には、図3,図4に示すように、有機隔壁層221よりも広い範囲で、かつ陰極50を覆った状態で第一陰極保護層52が形成される。第一陰極保護層52は、第二陰極保護層54上に有機緩衝層210を形成する際に、第二陰極保護層54上に加わる負荷を緩和するために設けられるものである。
第一陰極保護層52は、第二陰極保護層54よりも弾性率が低い材料からなり、弾性率が10〜100GPaの範囲の無機材料である。例えば、ボトムエミッション構造では陰極層の金属材料であるMg、Zn、Al、Ag等を用いることができ、トップエミッション構造では透明な無機化合物材料であるSiO2などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを用いることができる。一般的に、これらの低弾性率の材料は耐水性に欠けるものが多い。
また、第一陰極保護層52の形成方法としては、発光層60にダメージを与えないように、低温で成膜が可能な真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法等が用いられる。
また、第一陰極保護層52の膜厚は、50〜200nm程度が好ましく、第二陰極保護層54よりも厚いことがより好ましい。
【0036】
第一陰極保護層52の上層部には、図3,図4に示すように、第二陰極保護層54が形成される。第二陰極保護層54は、第一陰極保護層52の耐水性の不足を補い、かつ有機緩衝層210の残留水分等に起因する製造プロセス時における陰極50へのダメージを防止するために設けられるものである。また、緩衝層材料の塗布形成時の平坦性や消泡性、密着性、側面端部の低角度化を目的として設けられるものである。
第二陰極保護層54は、透明性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を考慮して、緻密かつ高弾性率の珪素窒化物や珪素窒酸化物などの窒素を含む珪素化合物などの材料により形成されたものが好ましい。
第二陰極保護層54を形成する材料の弾性率としては、100GPa以上が好ましい。
また、第二陰極保護層54の形成方法としては、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法が用いられる。
また、第二陰極保護層54の膜厚は、10〜50nm程度が好ましい。
【0037】
第二陰極保護層54の上層部には、図3,図4に示すように、有機隔壁層221よりも広い範囲で、かつ陰極50を覆った状態で有機緩衝層210が設けられる。なお、有機緩衝層210は、上記陰極保護層を終端部まで全て覆う必要は無く、また、画素部3上に形成された陰極50を覆う場合、更に基体200の外周部の陰極用配線202上に形成された陰極50も覆う場合のいずれであってもよい。
有機緩衝層210は、有機隔壁層221の形状の影響により、凸凹状に形成された陰極50の凸凹部分を埋めるように配置され、更に、その上面は略平坦に形成される。有機緩衝層210は、基体200の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、不安定な有機隔壁層221からの陰極50の剥離を防止する機能を有する。また、有機緩衝層210の上面が略平坦化されるので、有機緩衝層210上に形成される硬い被膜からなるガスバリア層30も平坦化されるので、応力が集中する部位がなくなり、これにより、ガスバリア層30へのクラックの発生を防止する。
【0038】
有機緩衝層210の形成は、減圧真空下におけるスクリーン印刷法を用いて、第二陰極保護層54上に塗布することが好ましい。スクリーンメッシュに樹脂硬化物で非塗布領域をパターン形成したマスクを基体200に接触させて、スキージで押し付けることで、有機緩衝層形成材料を基体200上(第二陰極保護層54上)に転写する。減圧雰囲気で塗布(転写)が行われるので、水分の少ない環境を維持しつつ、転写時に塗布面に発生する気泡を除去することができる。
【0039】
有機緩衝層210は、硬化前の原料主成分としては、減圧真空下で印刷形成するために、流動性に優れ、かつ溶媒や揮発成分の無い、全てが高分子骨格の原料となる有機化合物材料である必要があり、好ましくはエポキシ基を有する分子量3000以下のエポキシモノマー/オリゴマーが用いられる(モノマーの定義:分子量1000以下、オリゴマーの定義:分子量1000〜3000)。例えば、ビスフェノールA型エポキシオリゴマーやビスフェノールF型エポキシオリゴマー、フェノールノボラック型エポキシオリゴマー、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキレートなどがあり、これらが単独もしくは複数組み合わされて用いられる。
【0040】
また、エポキシモノマー/オリゴマーと反応する硬化剤としては、電気絶縁性や接着性に優れ、かつ硬度が高く強靭で耐熱性に優れる硬化被膜を形成するものが良く、透明性に優れ、かつ硬化のばらつきの少ない付加重合型がよい。例えば、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸無水物系硬化剤が好ましい。さらに、酸無水物の反応(開環)を促進する反応促進剤として1,6−ヘキサンジオールなど分子量が大きく揮発しにくいアルコール類を添加することで低温硬化しやすくなる。これらの硬化は60〜100℃の範囲の加熱で行われ、その硬化被膜はエステル結合を持つ高分子となる。
更に、酸無水の開環を促進する硬化促進剤として、芳香続アミンやアルコール類、アミノフェノールなどの比較的分子量の高いものを添加することで、低温かつ短時間での硬化が可能となる。
硬化時間を短縮するためによく用いられるカチオン放出タイプの光重合開始剤は、着色や急激な硬化収縮を発生するため好ましくないが、ガスバリア層30との密着性を向上させるシランカップリング剤や、イソシアネート化合物等の補水剤、硬化時の収縮を防ぐ微粒子などの添加剤が混入されていてもよい。
【0041】
これらの原料毎の粘度は、1000mPa・s(室温:25℃)以上が好ましい。塗布直後に発光層60へ浸透して、ダークスポットと呼ばれる非発光領域を発生させないためである。また、これらの原料を混合した緩衝層形成材料の粘度としては、500〜20000mPa・s、特に2000〜10000mPa・s(室温)が好ましい。
【0042】
また、有機緩衝層210の膜厚としては、3〜10μmが好ましい。有機緩衝層210の膜厚が3μm以上であれば、異物が混入した場合であってもガスバリア層30の欠陥発生を防止することができるからである。
また、硬化後の特性としては、有機緩衝層210の弾性率が1〜10GPaであることが好ましい。10GPa以上では、有機隔壁層221上を平坦化した際の応力を吸収することができず、1GPa以下では耐摩耗性や耐熱性等が不足するためである。
【0043】
更に、有機緩衝層210の上層部には、図2〜図4に示すように、発光層60及び有機隔壁層221、陰極50を覆い、かつ封止層の中でも比較的に耐水性に欠ける有機隔壁層221及び第一陰極保護層52の終端部まで覆うような広い範囲で、ガスバリア層30が形成されている。
ガスバリア層30は、酸素や水分が浸入するのを防止するためのもので、これにより酸素や水分による陰極50や発光層60の劣化等を抑えることができる。ガスバリア層30は、透明性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、好ましくは窒素を含む珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物などによって形成される。
ガスバリア層30の成膜法としては、水蒸気などのガスを遮断するため緻密で欠陥の無い被膜にする必要があり、好適には低温で緻密な膜を形成できる高密度プラズマ成膜法を用いて形成する。
ガスバリア層30の弾性率は、100GPa以上、具体的には200〜250Pa程度が好ましい。なお、上述した第二陰極保護層54と同一の弾性率を有する材料で形成してもよい。また、ガスバリア層30の膜厚は、200〜600nm程度が好ましい。200nm未満であると、異物に対する被覆性が不足し部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、600nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
【0044】
更に、ガスバリア層30としては、積層構造としてもよいし、その組成を不均一にして特にその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよい。
また、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層30は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0045】
ここで、有機緩衝層210の端部(外周領域)の構造について説明する。
図5は、有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
有機緩衝層210は、第二陰極保護層54上に形成され、その端部においてが第二陰極保護層54の表面と接触角αで接触している。ここで、接触角αは45°以下であり、より好ましくは、1°〜20°程度以下であることが好ましい。
これにより、有機緩衝層210の上層に形成されるガスバリア層30は、その端部に急激な形状変化がなく、なだらかに形状が変化するので、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。したがって、長期間に渡り、封止能力を維持することが可能となる。
【0046】
図3,図4に戻り、ガスバリア層30の上層部には、ガスバリア層30を覆う保護層204が設けられる。この保護層204は、ガスバリア層30側に設けられた接着層205と表面保護基板206とからなる。
接着層205は、ガスバリア層30上に表面保護基板206を固定させ、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有し、発光層60やガスバリア層30の保護をするものである。当該接着層205に表面保護基板206が貼り合わされることで、保護層204が形成されている。接着層205は、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、表面保護基板206より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されたものである。また、透明樹脂材料が好ましい。また、低温で硬化させるため硬化剤を添加する2液混合型の材料によって形成されたものでもよい。
なお、このような接着層205には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される接着層205とガスバリア層30との密着性がより良好になり、したがって機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。
また、特にガスバリア層30が珪素化合物で形成されている場合などでは、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層30との密着性を向上させることができ、したがってガスバリア層30のガスバリア性を高めることができる。
【0047】
表面保護基板206は、接着層205上に設けられて、保護層204の表面側を構成するものであり、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。
表面保護基板206の材質は、ガラス、DLC(ダイアモンドライクカーボン)層、透明プラスチック、透明プラスチックフィルムが採用される。ここで、プラスチック材料としては、例えば、PET、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が採用される。
更に、当該表面保護基板206には、紫外線遮断/吸収層や光反射防止層、放熱層、レンズ、色波長変換層やミラー等の光学構造が設けられていてもよい。また、カラーフィルタ機能を設けてもよい。
なお、EL表示装置1はトップエミッション型であるため、表面保護基板206、接着層205を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション型とする場合にはその必要はない。
【0048】
次に、本実施形態に係るEL表示装置1の製造方法の一例を、図6及び図7を参照して説明する。図6及び図7に示す各断面図は、図2中のA−B線の断面図に対応した図である。
なお、本実施形態においては、発光装置としてのEL表示装置1がトップエミッション型である場合であり、また、基板20の表面に回路部11を形成させる工程については、従来技術と変わらないので説明を省略する。
【0049】
まず、図6(a)に示すように、表面に回路部11が形成された基板20の全面を覆うように、画素電極23となる導電膜を形成され、更に、この透明導電膜をパターニングすることにより、第二層間絶縁層284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成すると同時に、ダミー領域のダミーパターン26も形成する。
なお、図3,図4では、これら画素電極23、ダミーパターン26を総称して画素電極23としている。ダミーパターン26は、第二層間絶縁層284を介して下層のメタル配線へ接続しない構成とされる。すなわち、ダミーパターン26は、島状に配置され、実表示領域に形成されている画素電極23の形状とほぼ同一の形状を有する。もちろん、表示領域に形成されている画素電極23の形状と異なる構造であってもよい。なお、この場合、ダミーパターン26は少なくとも駆動電圧導通部310(340)の上方に位置するものも含むものとする。
【0050】
次いで、図6(b)に示すように、画素電極23、ダミーパターン26上、および第二層間絶縁膜上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25a(図3参照)において画素電極23からの正孔移動が可能とされている。逆に、開口部25aを設けないダミーパターン26においては、絶縁層(親液性制御層)25が正孔移動遮蔽層となって正孔移動が生じないものとされている。続いて、親液性制御層25において、異なる2つの画素電極23の間に位置して形成された凹状部に不図示のBM(ブラックマトリックス)を形成する。具体的には、親液性制御層25の凹状部に対して、金属クロムを用いスパッタリング法にて成膜する。
【0051】
そして、図6(c)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは上述したBMを覆うように有機隔壁層221を形成する。
具体的な有機隔壁層の形成方法としては、例えばアクリル系、イミド系材料などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの各種塗布法により塗布して有機樹脂層を形成する。なお、有機樹脂層の構成材料は、後述するインクの溶媒に溶解せず、しかもエッチングなどによってパターニングし易いものであればどのようなものでもよい。
【0052】
更に、有機樹脂層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機樹脂層に開口部221aを形成することにより、開口部221aに壁面を有した有機隔壁層221を形成する。ここで、開口部221aを形成する壁面について、基体200表面に対する角度を110度以上から170度以下となるように形成する。
なお、この場合、有機隔壁層221は、少なくとも駆動制御信号導通部320の上方に位置するものを含むものとする。
【0053】
次いで、有機隔壁層221の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成する。具体的には、プラズマ処理を、予備加熱工程と、有機隔壁層221の上面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の上面をそれぞれ親液性にする親インク化工程と、有機隔壁層221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥インク化工程と、冷却工程とで構成する。
【0054】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70の形成を行う。この正孔輸送層形成工程では、例えばインクジェット法等の液滴吐出法や、スピンコート法などにより、正孔輸送層材料を電極面23c上に塗布し、その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。
【0055】
次いで、発光層形成工程によって発光層60の形成を行う。この発光層形成工程では、例えばインクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、有機隔壁層221に形成された開口部221a内に発光層60を形成する。この発光層形成工程では、正孔輸送層70の再溶解を防止するため、発光層形成材料に用いる溶媒として、正孔輸送層70に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
【0056】
次いで、図6(d)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50の形成を行う。この陰極層形成工程では、例えばイオンプレーティング法等の物理気相成長法によりITOを成膜して、陰極50とする。このとき、この陰極50については、発光層60と有機隔壁層221の上面を覆うのはもちろん、有機隔壁層221の外側部を形成する壁面についてもこれを覆った状態となるように形成する。
【0057】
次に、図7(a)に示すように、陰極50上に、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54を形成する。
例えば、Mg、Zn、Al、Ag等の無機材料、或いは透明無機材料としてのSiO2などの無機酸化物やLiFやMgF等のアルカリハライドを、真空蒸着法や高密度プラズマ成膜法により、50〜200nm程度の膜厚に成膜する。
次いで、珪素酸化物などの窒素を含む珪素化合物などの無機化合物を、ECRスパッタ法やイオンプレーティング法等の高密度プラズマ成膜法により、10〜50nm程度の膜厚に成膜する。
なお、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54は、同一のプロセスチャンバ内において、同一のマスクを用いて、連続的に成膜することができる。このようにすれば、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54の成膜を効率的に行うことができる。
【0058】
次に、図7(b)に示すように、有機緩衝層210をスクリーン印刷法により、第二陰極保護層54上に塗布する。この際、気泡を原因とする膜欠陥を発生させないよう100〜10000Pa範囲の減圧雰囲気下で塗布する。
【0059】
ここで、有機緩衝層210を減圧雰囲気下においてスクリーン印刷する手順を詳細に説明する。
図8は、スクリーン印刷法を工程順に示す図である。
スクリーン印刷法は、減圧雰囲気下で塗布が可能な方法であるため、比較的中〜高粘度の塗布液の使用を得意とする方式である。特に、スクリーン印刷法は、スキージの加圧移動により塗出制御が簡便で、スクリーンメッシュの使用により膜厚均一性およびパターニング性に優れる、という利点を有している。
【0060】
最初に、図8Aに示すように、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54まで形成した基体200を第一基板搬送室(不図示)に搬入し、第一基板搬送室内および印刷室(不図示)内を所定の圧力に調整した後に、基体200を印刷室内に搬入する。
そして、図8Bに示すように、スクリーンメッシュ551に対して位置合わせする。ここで、スクリーンメッシュ551の非塗布部には、材料を塗布しない部分を被覆する撥液性の乳剤硬化層551nが形成されている。
なお、スクリーンメッシュ551のパターン形状は、有機緩衝層210の周縁部を所定形状(例えば波形状)に形成するための型が形成されたものとなっている。
【0061】
次に、基体200を位置合わせした後、ステージ(不図示)上に保持する。基体200をステージに保持する方法としては、例えば真空吸着を用いることができる。
そして、図8Cに示すように、第一回目の圧力調整工程として、スクリーンメッシュ551上に緩衝層材料を滴下する前に、印刷室内を10〜1000Paの圧力に調整する。
次に、図8Dに示すように、スクリーンメッシュ551の一端(乳剤硬化層551n上)に硬化前の緩衝層材料Kをディスペンサノズル等によって所定量滴下する。
緩衝層材料Kには、上述したようにエポキシモノマー/オリゴマー材料に硬化剤、反応促進剤を混合した材料を使用する。これらの材料は塗布前に混合されてから用いられるが、混合後の粘度としては、室温(25℃)で500〜20000mPa・sの粘度範囲であることがよい。これよりも粘度が低い場合では、スクリーンメッシュ551からの液だれや乳剤硬化層551n上へのはみ出しが起こり、膜厚安定性やパターニング性が悪くなる。また、これよりも粘度が高い場合では、平坦性が悪くなるためにメッシュ痕が残留し、またメッシュ離脱時に巻き込む気泡が大きく成長するため、クレーター状の塗布抜けが発生しやすく、消泡工程後でも気泡が残留しやすくなる。
【0062】
更に、緩衝層材料Kの粘度としては、特に2000〜10000mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度を10000mPa・sよりも低くすることで、気泡の残留をさらに抑制することができる。また、1000mPa・sよりも高くすることで、スクリーン印刷工程において気泡が弾け難く、そして、クレーター状の欠陥が生じ難くなる。これによって、均一な膜を得ることが可能となる。また、後述するように、ダークスポットの発生を確実に抑制できる。したがって、材料の室温粘度を上記のように設定することで、緩衝層の形状保持、表面の平坦化、気泡の極微小化、側面端部の低角度化を確実に実現することができ、ダークスポットの発生を抑制することができる。
【0063】
また、有機緩衝層210の膜厚は、平坦化と、凹凸によって生じる応力の緩和を実現できるように有機隔壁層221の高さよりも厚くする必要があり、上述したように、3〜10μm程度が好ましい。これらの粘度と膜厚制御は、接触角の形成にも影響し、終端部の角度20°以下を達成するためにも重要である。応力はないことが好ましいが、わずかに引張応力が生じてもよい。極力応力を少なくするため、比較的密度の低い多孔質な膜であることが好ましく、上述したように、弾性率は1〜10GPaの範囲が好適である。
【0064】
次に、図8Eに示すように、スキージ553をスクリーンメッシュ551上で一辺側から他辺側に移動させ、緩衝層材料Kをスクリーンメッシュ551上に広げつつ、基体200上に押し込み、パターンを転写する。なお、スクリーンメッシュ551を基体200上に配置した際、スクリーンメッシュ551が基体200に完全に接触していてもよいし、間隔が1mm程度空いていてもよい。間隔が空いている場合でもスキージ553で材料を押し込んだ後は材料を介してスクリーンメッシュ551と基体200とは実質的に接触することになり、コンタクト方式のスクリーン印刷となる。したがって、後述するスクリーンメッシュの剥離工程が必要となる。
【0065】
またこの際、緩衝層材料Kがローリングしながら塗布されるため、材料中に気泡が混入する。そのため、図8Fに示すように、第二回目の圧力調整工程として印刷室内を2000〜5000Paの圧力に調整した上で所定時間保持し、気泡を除去する。すなわち、印刷室内への窒素ガスのパージにより第一回目の調整圧力である10〜1000Paから2000〜5000Paに圧力を上げる。この気泡は真空気泡であるから、圧力を上げることによって気泡をつぶし、消滅させることができる。
【0066】
次に、図8Gに示すように、基体200からスクリーンメッシュ551を剥離する。この際、図示していないが、例えば基体200の一辺側でスキージ553をステージに押し当てた状態でステージを下降させ、スクリーンメッシュ551からステージを離間させると、スキージ553を押し当てた箇所が支点となって反対側の辺からスクリーンメッシュ551の剥離が始まる。実際にスクリーンメッシュ551の剥離動作を行う際には、特に印刷室内の圧力を3000〜4000Paに調整することが望ましい。その理由は、剥離時には基体200がスクリーンメッシュ551に引っ張られ、ステージから基体200を引き剥がそうとする大きな力が加わるが、この時点で印刷室内の圧力が3000〜4000Pa以上であれば、真空吸着によって基体200がステージ上に確実に固定され、スクリーンメッシュ551の剥離を支障なく行うことができるからである。
【0067】
その後、図8Hに示すように、ステージの下降を続け、スクリーンメッシュ551が基体200から完全に離れたところで剥離が終了する。
次に、図8Iに示すように、緩衝層材料Kの印刷が終了した基体200を第二基板搬送室に搬入した後、図8Jに示すように、基体200を第二基板搬送室内に保持した状態で、第三回目の調整圧力として第二基板搬送室内を大気圧とした上で所定時間保持し、気泡を除去する。すなわち、第二基板搬送室内への窒素ガスのパージにより第二基板搬送室内を大気圧とし、基板周囲の雰囲気を第二回目の調整圧力である2000〜5000Paから大気圧にまで上昇させる。
【0068】
次に、図8Kに示すように、基体200を第二基板搬送室から加熱室に搬入した後、窒素ガス雰囲気下において緩衝層材料Kに60〜100℃の加熱処理を施す。これにより、緩衝層材料Kが硬化する。このような硬化工程を施すことにより、硬化前の緩衝層材料Kに含まれるエポキシモノマー/オリゴマー材料と硬化剤、反応促進剤とが反応し、エポキシモノマー/オリゴマーが三次元架橋し、ポリマーのエポキシ樹脂が形成される。
また、加熱処理を施すことにより、このような硬化現象が生じるだけでなく、緩衝層材料Kの側面端部の形状がだれて終端部の角度が20°以下(図5参照)になり、最終的な有機緩衝層210の形状となる。
【0069】
図7(c)に戻り、有機緩衝層210を覆って、ガスバリア層30を形成する。ガスバリア層30は、減圧下の高密度プラズマ成膜法等により形成される、主に珪素窒化物又は珪素酸窒化物からなる透明な薄膜が好ましい。また、小さな分子の水蒸気を完全に遮断するため緻密性を持たせており、若干の圧縮応力を持つことが好ましい。好ましい膜密度は、2.3/cm3以上、弾性率は100GPa以上、膜厚は無機緩衝層と合わせて1000nm以下にすることが好ましく、20〜600nmが好適である。
【0070】
なお、ガスバリア層30の具体的な形成方法としては、先にスパッタリング法やイオンプレーティング法等の物理気相成長法で成膜を行い、次いで、プラズマCVD法等の化学気相成長法で成膜を行ってもよい。スパッタリング法やイオンプレーティング法等の物理気相成長法は、有害な原料ガスを使わずに一般に異質な基板表面に対しても比較的密着性の良い緻密な膜が得られ、一方、化学気相成長法では、成膜速度が速く、応力が少なくステップカバーレッジ性に優れた欠陥が少なく緻密で良好な膜質のものが得られる。これらの方法は、量産性を考慮して適時選択できる。
また、ガスバリア層30の形成については、上述したように同一の材料によって単層で形成してもよく、また異なる材料で複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
【0071】
次いで、ガスバリア層30上に接着層205と表面保護基板206からなる保護層204を設ける(図3,図4参照)。接着層205は、スクリーン印刷法やスリットコート法などによりガスバリア層30上に略均一に塗布され、その上に表面保護基板206が貼り合わされる。
このようにガスバリア層30上に保護層204を設ければ、表面保護基板206が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、発光層60や陰極50、さらにはガスバリア層もこの表面保護基板206によって保護することができ、したがって発光素子の長寿命化を図ることができる。
また、接着層205が機械的衝撃に対して緩衝機能を発揮するので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層30やこの内側の発光素子への機械的衝撃を緩和し、この機械的衝撃による発光素子の機能劣化を防止することができる。
以上のようにして、EL表示装置1が形成される。
【0072】
[第二実施形態]
以下、本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2について説明する。なお、本実施形態においては、第一実施形態と同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
図9は、本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2の断面構造を示す模式断面図である。図10は、EL表示装置2における有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
EL表示装置2は、発光層として白色に発光する白色発光層60Wを採用したこと、および表面保護基板としてカラーフィルタ基板207を採用したことが、第一実施形態のEL表示装置1と相違している。
【0073】
白色有機発光材料としては、スチリルアミン系発光材料,アントラセン系ドーパミント(青色)、或いはスチリルアミン系発光材料,ルプレン系ドーパミント(黄色)が用いられる。
なお、白色発光層60Wの下層或いは上層に、トリアリールアミン(ATP)多量体正孔注入層、TDP(トリフェニルジアミン)系正孔輸送層、アルミニウムキノリノール(Alq3)層(電子輸送層)、LiF(電子注入バッファー層)を成膜ことが好ましい。
【0074】
また、第一実施形態のEL表示装置1のように、発光層60をR、G、B毎に区分けする必要がないので、白色発光層60Wが有機隔壁層221を跨ぐように各画素電極23上に形成されていてもよい。
そして、白色発光層60W上には、陰極50、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54が形成される。
なお、有機隔壁層221の上面にアルミニウムなどの金属材料からなる補助電極64を配置してもよい。補助電極64は、陰極50よりも低い抵抗値を有し、陰極50の途中部位とを電気的に接続することによって、抵抗値の高い陰極50の電圧降下を防止するものである。
【0075】
また、カラーフィルタ基板207は、基板本体207A上に赤色着色層208R、緑色着色層208G、青色着色層208B、およびブラックマトリクス209が形成されたものである。そして、着色層208R、208G、208B、およびブラックマトリクス209の形成面が接着層205を介して基体200に向けて対向配置されている。なお、基板本体207Aの材質は、第一実施形態の表面保護基板206と同様のものを採用することができる。
【0076】
また、着色層208R,208G,208Bの各々は画素電極23上の白色発光層60Wに対向して配置されている。これにより、白色発光層60Wの発光光が、着色層208R,208G,208Bの各々を透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に出射するようになっている。
このように、EL表示装置2においては、白色発光層60Wの発光光を利用し、かつ、複数色の着色層208を有するカラーフィルタ基板207によってカラー表示を行うようになっている。
【0077】
また、着色層208R,208G,208Bと白色発光層60Wとの距離は、白色発光層60Wの発光光が対向する着色層のみに出射するように、できるだけ短い距離とすることが要求される。これは、その距離が長い場合では、白色発光層60Wの発光光が隣接する着色層に対して出射される可能性が高くなるためであり、これを抑制するためにその距離を短くすることが好ましい。
具体的には、絶縁層284の表面からカラーフィルタ基板207までの間隔を15μm程度にすることが好ましい。これにより、白色発光層60Wの発光光は、対向する着色層のみに出射することとなり、隣接する着色層に発光光が漏れてしまうのを抑制することができる。これにより混色を抑制することができる。
【0078】
また、単色の白色発光層60Wを利用しているので、R、G、B毎に発光層を形成し分ける必要がない。具体的には、低分子系の白色発光層を形成するマスク蒸着工程や、高分子系の白色発光層を形成する液滴吐出工程等において、1種類の白色発光層を1工程で形成するだけでよいので、R、G、B毎の発光層を形成し分ける場合と比較して製造工程が容易になる。また、各発光層60の寿命のばらつきを抑えることができる。
【0079】
また、EL表示装置2においても、図10に示すように、有機緩衝層210は、第二陰極保護層54上に形成され、その終端部においてが第二陰極保護層54の表面と接触角αで接触している。ここで、接触角αは45°以下であり、より好ましくは、1°〜20°程度以下である。
これにより、有機緩衝層210の上層に形成されるガスバリア層30は、その端部に急激な形状変化がなく、なだらかに形状が変化するので、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。したがって、長期間に渡り、封止能力を維持することが可能となる。
また、層間絶縁膜292上に配置された平坦化絶縁膜294の端部も接触角βが45°以下となっており、平坦化絶縁膜294上に形成される第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54の形状がなだらかに変化するように形成されている。
これにより、平坦化絶縁膜294の上層に形成される第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54は、応力集中によるクラック等の欠陥の発生が防止される。
【0080】
[実施例]
次に、陰極50上に、第一陰極保護層52及び第二陰極保護層54が形成した場合における不具合発生の有無について説明する。
図11は、約3μmの段差を有する有機隔壁層221と、それらを被覆する多層からなる発光層60、マグネシウム−銀合金10nmからなる陰極50上に、第一陰極保護層52を設けた場合における不具合発生の有無を示す図である。
具体的には、第一陰極保護層52を各種材料により形成し、更に第二陰極保護層54、有機緩衝層210、ガスバリア層30を積層した場合に、陰極50或いは第二陰極保護層54に不具合が発生したか否かを比較した。特に、発光層60,60W付近(段差部分)において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離やクラックが発生するか否か観察したものである。
なお、第二陰極保護層54は、珪素酸窒化物(SiOxNy)により形成した。
【0081】
図11に示すように、第一陰極保護層52として、LiFやMgF等のアルカリハライド、又はMg、Zn、Al、Ag、SiO2等の無機材料を用いた場合には、発光層60,60W付近において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離、クラック、発光異常等の不具合は見受けられなかった。これらの材料は、いずれも弾性率が10〜100GPaである。
一方、第一陰極保護層52として、Ti、Pt、MgO、SiOxNy、Si3N4、Al2O3等の無機材料を用いた場合には、発光層60,60W付近において、陰極50或いは第二陰極保護層54に剥離、クラック、発光画素シュリンク等の不具合が発見された。これらの材料は、いずれも弾性率が100GPa以上である。
【0082】
このように、陰極50上に、弾性率の低い第一陰極保護層52、弾性率の高い第二陰極保護層54を形成することで、製造プロセス工程中、特に有機緩衝層210の形成工程中において、発光層60,60W付近における陰極50或いは第二陰極保護層54の不具合発生を容易に防止することができる。
【0083】
なお、上述したEL表示装置1,2の実施形態では、トップエミッション型を例にして説明したが、本発明はこれに限定されることなく、ボトムエミッション型にも、また両側に発光光を出射するタイプのものにも適用可能である。
【0084】
また、ボトムエミッション型、あるいは両側に発光光を出射するタイプのものとした場合、基体200に形成するスイッチング用TFT112や駆動用TFT123については、発光素子の直下ではなく、親液性制御層25および有機隔壁層221の直下に形成するようにし、開口率を高めるのが好ましい。
また、EL表示装置1,2では、第一電極を陽極として機能させ、第二電極を陰極として機能させたが、これらを逆にして第一電極を陰極、第二電極を陽極としてそれぞれ機能させるよう構成してもよい。ただし、その場合には、発光層60と正孔輸送層70との形成位置を入れ替えるようにする必要がある。
【0085】
また、本実施形態では、発光装置にEL表示装置1,2を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されることなく、基本的に第二電極が基体の外側に設けられるものであれば、どのような形態の発光装置にも適用可能である。
【0086】
なお、EL表示装置1,2における第一陰極保護層52、第二陰極保護層54、有機緩衝層210、ガスバリア層30等の弾性率を測定する方法としては、例えばナノインデンテーション法を用いることができる。
ナノインデンテーション法は、圧子を高精度に制御しながら試料に押し込み、荷重−変位曲線の解析から、かたさや弾性率等の力学的性質を定量的に測定する方法である。特に、従来困難であった薄膜試料の測定が可能であり、また、簡便で高い再現性をもつことから、第一陰極保護層52等の弾性率の測定に好適に用いることができる。
【0087】
次に、本発明の電子機器について説明する。
電子機器は、上述したEL表示装置1,2を表示部として有したものであり、具体的には図12に示すものが挙げられる。
図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、携帯電話1000は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1001を備える。
図12(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(b)において、時計(電子機器)1100は、上述したEL表示装置1を用いた表示部1101を備える。
図12(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(c)において、情報処理装置1200は、キーボードなどの入力部1202、上述したEL表示装置1を用いた表示部1206、情報処理装置本体(筐体)1204を備える。
図12(d)は、薄型大画面テレビの一例を示した斜視図である。図12(d)において、薄型大画面テレビ1300は、薄型大画面テレビ本体(筐体)1302、スピーカーなどの音声出力部1304、上述したEL表示装置1を用いた表示部1306を備える。
【0088】
図12(a)〜(d)に示すそれぞれの電子機器は、上述したEL表示装置1,2を有した表示部1001,1101,1206,1306を備えているので、表示部の長寿命化が図られたものとなる。
また、図12(d)に示す薄型大画面テレビ1300は、面積に関係なく表示部を封止できる本発明を適用したので、従来と比較して大面積(例えば対角20インチ以上)の表示部1306を備えるものとなる。
【0089】
また、EL表示装置1,2を表示部として備える場合に限らず、発光部として備える電子機器であってもよい。例えば、EL表示装置1を露光ヘッド(ラインヘッド)として備えるページプリンタ(画像形成装置)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第一実施形態に係るEL表示装置1の配線構造を示す図である。
【図2】EL表示装置1の構成を示す模式図である。
【図3】図2のA−B線に沿う断面図である。
【図4】図2のC−D線に沿う断面図である。
【図5】有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
【図6】EL表示装置1の製造方法を工程順に示す図である。
【図7】図6に続く工程を示す図である。
【図8】スクリーン印刷法を工程順に示す図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るEL表示装置2の断面構造を示す模式図である。
【図10】有機緩衝層210の端部(外周領域)を示す拡大図である。
【図11】陰極50上に第一陰極保護層52を設けた場合における不具合発生の有無を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1,2…EL表示装置(発光装置)、23…画素電極(第一電極)、30…ガスバリア層、50…陰極(第二電極)、52…第一陰極保護層(第一無機層)、54…第二陰極保護層(第二無機層)、60…発光層(有機機能層)、200…基体、210…有機緩衝層、221…有機隔壁層(隔壁)、221a…開口部、1000…携帯電話(電子機器)、1100…時計(電子機器)、1200…情報処理装置(電子機器)、1300…薄型大画面テレビ(電子機器)、1001,1101,1206,1306…表示部(発光装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、
複数の第一電極と、
前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁と、
少なくとも前記開口部に配置される有機機能層と、
前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極と、
前記第二電極を覆う第一無機層と、
前記第一無機層を覆う第二無機層と、
前記第二無機層を覆う有機緩衝層と、
前記有機緩衝層を覆うガスバリア層と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第二電極は、透明性を有する金属薄膜または/及び金属酸化物導電膜からなり、第一無機層及び第二無機層は絶縁性の無機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一無機層は、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第一無機層は、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第一無機層は、弾性率が10〜100GPaである材料からなることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第一無機層の膜厚は、前記第二無機層よりも厚く、かつ前記有機緩衝層よりも薄いことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第一無機層は、有機機能層、画素隔壁及び陰極の全てを被覆するようにより広い範囲を覆い、終端部はガスバリア層で被覆されるようにガスバリア層よりも狭い範囲で形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第一無機層は、無機酸化物またはアルカリハライドからなることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第二無機層と前記ガスバリア層とは、略同一の弾性率を有する材料からなることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記有機緩衝層は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記有機緩衝層の端部における接触角度は、20°以下に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10うちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
基体上に、
複数の第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁を形成する工程と、
少なくとも前記開口部に配置される有機機能層を形成する工程と、
前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を覆う第一無機層を形成する工程と、
前記第一無機層を覆う第二無機層を形成する工程と、
前記第二無機層を覆う有機緩衝層を形成する工程と、
前記有機緩衝層を覆うガスバリア層を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記第一無機層は、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料から形成からなることを特徴とする請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記第一無機層は、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第一無機層は、弾性率が10〜100GPaである材料からなることを特徴とする請求項12から請求項14のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記第一無機層及び前記第二無機層は、同一の成膜装置内において連続的に形成されることを特徴とする請求項12から請求項15のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記有機緩衝層は、減圧雰囲気下におけるスクリーン印刷法により配置されることを特徴とする請求項12から請求項16のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基体上に、
複数の第一電極と、
前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁と、
少なくとも前記開口部に配置される有機機能層と、
前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極と、
前記第二電極を覆う第一無機層と、
前記第一無機層を覆う第二無機層と、
前記第二無機層を覆う有機緩衝層と、
前記有機緩衝層を覆うガスバリア層と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第二電極は、透明性を有する金属薄膜または/及び金属酸化物導電膜からなり、第一無機層及び第二無機層は絶縁性の無機化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一無機層は、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第一無機層は、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第一無機層は、弾性率が10〜100GPaである材料からなることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第一無機層の膜厚は、前記第二無機層よりも厚く、かつ前記有機緩衝層よりも薄いことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第一無機層は、有機機能層、画素隔壁及び陰極の全てを被覆するようにより広い範囲を覆い、終端部はガスバリア層で被覆されるようにガスバリア層よりも狭い範囲で形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第一無機層は、無機酸化物またはアルカリハライドからなることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第二無機層と前記ガスバリア層とは、略同一の弾性率を有する材料からなることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記有機緩衝層は、エポキシ樹脂からなることを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記有機緩衝層の端部における接触角度は、20°以下に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10うちいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
基体上に、
複数の第一電極を形成する工程と、
前記第一電極の形成位置に対応した複数の開口部を有する画素隔壁を形成する工程と、
少なくとも前記開口部に配置される有機機能層を形成する工程と、
前記隔壁及び前記有機機能層を覆う第二電極を形成する工程と、
前記第二電極を覆う第一無機層を形成する工程と、
前記第一無機層を覆う第二無機層を形成する工程と、
前記第二無機層を覆う有機緩衝層を形成する工程と、
前記有機緩衝層を覆うガスバリア層を形成する工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記第一無機層は、前記第二無機層よりも弾性率が低い材料から形成からなることを特徴とする請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記第一無機層は、前記有機緩衝層よりも弾性率が高い材料からなることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記第一無機層は、弾性率が10〜100GPaである材料からなることを特徴とする請求項12から請求項14のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記第一無機層及び前記第二無機層は、同一の成膜装置内において連続的に形成されることを特徴とする請求項12から請求項15のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記有機緩衝層は、減圧雰囲気下におけるスクリーン印刷法により配置されることを特徴とする請求項12から請求項16のうちいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−157606(P2007−157606A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354359(P2005−354359)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]