説明

発光装置の製造方法、発光装置及び反射体

【課題】液晶性樹脂に無機フィラーを配合した液晶性樹脂組成物を用いて、表面が平滑な反射体及び当該反射体を製造する方法を提供する。
【解決手段】反射体の表面粗さRaと、反射体を製造するための金型の内壁面の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように反射体を製造する。使用する無機フィラーとしては、平均一次粒径が15μm以下のものが好ましい。また、無機フィラーの含有量は、液晶性樹脂100質量部あたり5質量部以上70質量部以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、発光装置及び反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を搭載した発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1に記載の発光装置は、光源としてのLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子(発光素子)が搭載された回路基板と、プリント基板上に設けられLED素子からの光を反射させるための反射体(リフレクタ)と、を備える。特許文献1に記載の発光装置では、反射体は、金属材料から構成されており、樹脂接着剤によって回路基板上に固定されている。
【0003】
ところで、近年、発光装置の薄型化、小型化が求められている。つまり、反射体も小型化、軽量化することが求められている。しかし、上記の通り、現状の反射体は、金属材料で構成されており、容易に小型化、軽量化することは困難である。そこで、特許文献2に記載されるように、樹脂材料からなる反射体を製造することが考えられる。樹脂材料は成形が容易である等の特徴を有するため、小型化、軽量化された反射体を容易に製造できると考えられる。
【0004】
特許文献2には、熱硬化性樹脂を原料に反射体を製造することが記載されている。しかし、特許文献2に記載の反射体は、硬化収縮により、寸法が安定しないことが問題となる。なお、熱可塑性樹脂と用いた場合であっても、成形後の冷却により樹脂が収縮するため、熱硬化性樹脂を用いる場合と同様に寸法の安定した反射体が得られないことが問題となる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−80723号公報
【特許文献2】特開2001−24233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成形後の収縮率が小さい樹脂として、液晶性樹脂が知られている。液晶性樹脂を原料に反射体を成形し、その成形体表面に金属層を形成することにより寸法の安定した反射体が得られると考えられる。
【0007】
ところで、発光装置の製造工程中において、反射体は高温に曝される。このため、液晶性樹脂を反射体の原料として用いる場合には、液晶性樹脂に無機フィラーを添加して耐熱性を高める必要がある。
【0008】
しかしながら、耐熱性を向上させるために、液晶性樹脂に無機フィラーを配合してなる樹脂組成物を原料に反射体を製造すると、反射体の表面が荒れる。反射体の表面が荒れると、LED素子からの光を反射するための金属層を反射体上に平滑に形成することができない。その結果、反射体は、LED素子からの光を効率よく反射することができない。
【0009】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液晶性樹脂に無機フィラーを配合した液晶性樹脂組成物を用いて、表面が平滑な反射体及び当該反射体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、反射体の表面粗さRaと、反射体を製造するための金型の内壁面の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように反射体を製造すれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1) 回路基板と、回路基板上に搭載された発光素子と、発光素子を囲むように前記回路基板上に配置される反射体と、を備え、前記反射体は、発光素子からの光を所望の方向に反射させるための傾斜面を有する発光装置の製造方法であって、液晶性樹脂組成物から反射体を製造する反射体製造工程と、前記反射体製造工程で得られる反射体の前記傾斜面に対して金属層を形成する金属層形成工程と、回路基板上に発光素子を搭載する発光素子搭載工程と、前記回路基板上に反射体を配置する反射体配置工程と、を備え、前記反射体製造工程は、反射体の表面粗さRaと、前記反射体を製造するための金型の内壁面の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように反射体を製造する工程である発光装置の製造方法。
【0012】
(2) 前記差(ΔRa)が、0.03mm以下である(1)に記載の発光装置の製造方法。
【0013】
(3) 回路基板と、回路基板上に搭載された発光素子と、発光素子を囲むように、前記回路基板上に配置された反射体と、を備え、前記反射体は、液晶性樹脂と、平均一次粒径が15μm以下の無機フィラーと、を含み、前記反射体の表面には金属層が配置される発光装置。
【0014】
(4) 前記無機フィラーは、板状フィラー及び/又は粒粉状フィラーである(3)に記載の発光装置。
【0015】
(5) 前記無機フィラーは平均一次粒径が0.7μm以下のシリカである(3)に記載の発光装置。
【0016】
(6) 前記無機フィラーの含有量は、前記液晶性樹脂100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下である(3)から(5)のいずれかに記載の発光装置。
【0017】
(7) 液晶性樹脂と、平均一次粒径が15μm以下の無機フィラーとを含み、表面に金属層を備える反射体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶性樹脂に無機フィラーを配合した液晶性樹脂組成物を用いても、表面が平滑な反射体が得られる。反射体の表面に形成される傾斜面も平滑になる結果、傾斜面上に形成される金属層も平滑になり、発光層からの光を効率よく反射することができる。
【0019】
さらに、本発明によれば、反射体の表面がほとんどフィブリル化しない。その結果、反射体の表面に形成される金属層は、反射体の表面のフィブリル化による剥がれを生じない。したがって、金属層と反射体表面との密着性は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の発光装置1を模式的に示した斜視図である。
【図2】本発明の反射体12を模式的に示す図であり、(a)は反射体12の斜視図であり、(b)は(a)におけるXX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0022】
<発光装置>
図1は本発明の発光装置1を模式的に示した斜視図である。図2は、本発明の反射体12を模式的に示す図であり、(a)は反射体12の斜視図であり、(b)は(a)におけるXX線断面図である。
【0023】
本発明の発光装置1は、回路基板10と、発光素子11と、反射体12とを備える。図1に示すように発光装置1は、回路基板10の一の面上に、発光素子11が配置され、この発光素子11を囲むように反射体12が配置される。
【0024】
回路基板10は、ガラスエポキシや液晶性樹脂等から構成される絶縁基材の上面上及び下面上に、それぞれ、複数の電極層(図示せず)が形成されている。
【0025】
発光素子11は、回路基板10の一の面上に配置される。発光素子11の個数は、特に限定されず、一個又は複数個の発光素子を回路基板の一の面上に配置することができる。
【0026】
発光素子11は、電極部(図示せず)を備え、この電極部は、回路基板10の電極層と電気的に接続されている。電極層に電圧が印加されると、この電気的な接続によって、発光素子11に電流が流れ、発光素子11は発光する。
【0027】
反射体12は、金型を用いて成形される板状の部品であり、底面と回路基板10の一の面とが接合するように回路基板10上に配置される。また、反射体12は、底面と上面とを貫通する開口部120と、発光素子からの光を反射させるための傾斜面121と、表面に形成される金属層122とを有する。なお、金属層122は、少なくとも傾斜面121に設けられていればよく、さらに反射体表面の傾斜面121以外の部分に設けられていてもよい。
【0028】
開口部120は、平面視で円形であり、底面から上面に向かってテーパー状に広がるように形成されている。
【0029】
傾斜面121は、開口部120の内側面である。上記の通り、開口部120は底面から上面に向かってテーパー状に広がるように形成されているため、傾斜面121は回路基板10の一の面に対して傾斜している。傾斜面が傾斜しているため、傾斜面121上に形成される金属層122で、発光素子からの光を効率よく上方に反射させることができる。ここでは、反射光が進む所望の方向を上方(回路基板10の一の面に垂直な方向)としたが、上方以外の方向に反射光を反射させるために、傾斜角度を調整して反射光の方向を調整してもよい。
【0030】
本発明は、反射体の表面粗さRaと、反射体を製造するための金型の内壁面の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように反射体12を製造する。表面粗さRaの差(ΔRa)が上記のように小さくなることは、反射体12の表面が平滑になることを意味する。反射体12の表面が平滑になると、反射体の表面の一部である傾斜面121も平滑になる。そして、平滑な傾斜面121上に形成される金属層122もその表面が平滑になる。金属層122の表面が平滑になると、反射率が向上し、発光素子からの光をより効率的に反射させることができる。以上の通り、本発明は、反射体12に特徴を有する。
以下、反射体12に使用する材料について、さらに詳細に説明する。
【0031】
本発明の発光装置1に用いられる反射体12は、液晶性樹脂と無機フィラーとを含む液晶性樹脂組成物からなる。以下、液晶性樹脂、無機フィラーの順で説明する。
【0032】
[液晶性樹脂]
液晶性樹脂は高い寸法安定性を有するため、液晶性樹脂を使用することで寸法の安定した反射体12を得ることができる。そして、液晶性樹脂は高い流動性を有するため、反射体12の小型化、薄型化も容易に行うことができる。
【0033】
本発明で使用する液晶性樹脂とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性樹脂は直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0034】
上記のような液晶性樹脂としては特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。これらは60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1重量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、さらに好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが使用される。
【0035】
本発明に適用できる液晶性樹脂としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドである。
【0036】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0037】
本発明に適用できる前記液晶性樹脂を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【化1】

(X:アルキレン(C1〜C4)、アルキリデン、−O−、−SO−、−SO−、−S−、−CO−より選ばれる基である)
【化2】

【化3】

(Y:−(CH−(n=1〜4)、−O(CHO−(n=1〜4)より選ばれる基である。)
【0038】
[無機フィラー]
無機フィラーは、液晶性樹脂組成物の耐熱性等の物性を向上させるために及び密着力の良好な金属層を形成するために添加される。また、無機フィラーは、反射体12に耐熱性等の物性を付与することもできる。無機フィラーの種類は特に限定されないが、無機フィラーによっては、成形体表面の毛羽立ちを防止する効果のないものが存在する。表面が毛羽立つ成形体では、成形体表面に金属層を形成した時に、金属層と成形体表面との密着が不充分になる傾向にあるが、表面が毛羽立たない成形体では、成形体表面に金属層を形成した時に、金属層と成形体表面との密着力が強い。つまり、反射体の表面が毛羽立たなければ、金属層が表面に強く密着した反射体を得ることができる。そのためには、反射体の表面粗さRaと、反射体を製造するための金型の内壁面の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように無機フィラーを選択する必要がある。上記表面粗さRaの差(ΔRa)が0.1mm以下になるように、液晶性樹脂の種類や無機フィラーのサイズに応じて適宜無機フィラーを選択する。具体的には、繊維状フィラー、粉粒状フィラー、板状フィラー等の一般的な無機フィラーの中から選択する。
【0039】
上記表面粗さRaの差(ΔRa)を0.1mm以下に調整するためには、無機フィラーの中でも、粒粉状フィラー、板状フィラーの使用が好ましい。粒粉状フィラーとしては、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、板状フィラーとしては、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、タルクの使用が最も好ましい。
【0040】
また、上記表面粗さRaの差(ΔRa)を0.1mm以下に調整するためには、平均一次粒径の小さい粒粉状フィラー及び平均一次粒径の小さい板状フィラーの使用が好ましい。平均一次粒径が小さいとは、15μm以下であることを指す。平均一次粒径が15μm以下であれば、無機フィラー含有による液晶性樹脂組成物の流動性低下が小さいため好ましい。
【0041】
なお、無機フィラーとしてシリカを使用する場合には、平均一次粒径が0.7μm以下のものが特に好ましい。
【0042】
以上の説明では上記表面粗さRaの差(ΔRa)が0.1mm以下になりやすい無機フィラーについて説明した。続いて、上記表面粗さRaの差(ΔRa)が0.1mm以下の場合に、無機フィラーが反射体12の表面でどのように存在するのかについて説明する。上記表面粗さの差(ΔRa)が0.1mm以下とは、反射体の表面特性が大幅に改善された状態を指す。表面特性が大幅に改善される結果、反射体12の表面が平滑になり、反射体12の表面の一部である傾斜面121も平滑になり、反射体12に形成される金属層122も平滑になるため、本発明の発光装置1は、発光素子11からの光を、傾斜面121上に形成された金属層122の表面で効率よく反射することができる。また、反射体12は、超音波洗浄しても、反射体12の表面がほとんどフィブリル化しない。つまり、上記反射体12においては、反射体の表面で毛羽立った状態になりにくい。その結果、良好な密着力の金属層を反射体表面に形成することが可能となる。
【0043】
特に、上記表面粗さRaの差(ΔRa)を0.03mm以下に抑えることができれば、反射体12の表面が非常に平滑になる。表面粗さRaの差(ΔRa)が0.03mm以下になることで、発光素子11からの光を金属層122の表面でより効率よく反射することができ、反射体の表面の毛羽立ちをより抑えやすくなる。無機フィラーとして、平均一次粒径が0.7μm以下のシリカ、平均一次粒径が2.0μm以下の板状フィラー、又は平均一次粒径が2.0μm以下の粉状フィラーを使用することで、上記表面粗さRaの差(ΔRa)を0.03mm以下に調整しやすくなる。
【0044】
最後に、反射体12中の無機フィラーの含有量について説明する。反射体12中の無機フィラーの含有量は特に限定されないが、液晶性樹脂100質量部に対して5質量部以上70質量部以下であることが好ましい。無機フィラーの含有量が5質量部以上であれば、安定して成形可能であるとともに、所望の物性(特に、耐熱性、流動性)を付与しやすいため好ましい。一方、無機フィラーの含有量が70質量部以下であれば、液晶性樹脂を使用することの上記メリット(例えば、流動性、寸法安定性)が得られやすいため好ましい。より好ましい無機フィラーの含有量は、液晶性樹脂100質量部あたり15質量部以上60質量部以下である。上記好ましい範囲であれば、液晶性樹脂組成物は充分な流動性と、高い耐熱性とを併せ持つ。
【0045】
液晶性樹脂組成物がどの程度の流動性を備えればよいかについては、特に限定されないが、例えば、実施例に記載の方法で測定した溶融粘度が5Pa・s以上50Pa・s以下であることが好ましい。また、液晶性樹脂組成物がどの程度の耐熱性を備えればよいかについては特に限定されないが、例えば、実施例に記載の方法で測定した荷重たわみ温度が200℃以上400℃以下であれば好ましく、250℃以上350℃以下であればより好ましい。なお、これらの物性は、無機フィラーの種類、平均一次粒径を変えることでも調整することができる。
【0046】
[その他の成分]
液晶性樹脂は、本発明の効果を害さない範囲で他の熱可塑性樹脂とポリマーブレンドをしたものであってもよい。この場合に使用する熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例を示すと、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール或いはオキシカルボン酸等からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホモ又はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリオキシフェニレンオキシド、ポリオキシフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。また、これらの樹脂には、機械的、電気的、化学的性質や難燃性等の諸性質を改善するため、必要に応じて種々の添加剤、強化剤、安定剤、酸化防止剤、顔料等を添加することが可能である。
【0047】
<発光装置の製造方法>
本発明の発光装置の製造方法は、回路基板10と、回路基板10上に搭載された発光素子11と、発光素子11を囲むように回路基板10上に配置された反射体12と、を備える発光装置1の製造方法であり、反射体製造工程と、金属層形成工程と、発光素子搭載工程と、反射体配置工程と、を備える。以下、各工程について説明する。
【0048】
反射体製造工程では、液晶性樹脂組成物から反射体12を製造する。反射体12の製造方法は、金型を用いて成形する方法であれば特に限定されず、金型を利用する一般的な成形方法を採用することができる。例えば、射出成形法により反射体12を製造することができる。
【0049】
金属層形成工程では、反射体製造工程で得られた反射体12の表面に金属層122を形成する。金属層122の形成のために、例えば、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、パラジウム、白金及び金等の各種金属を原料にすることができる。金属層122の形成方法は特に限定されず、金属メッキに代表されるウェットプロセス、並びに真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法に代表されるドライプロセスのいずれも採用可能である。これらの金属層122の形成方法は、金属層122の原料となる金属の種類等に応じて適宜使い分ければよい。
【0050】
金属層形成工程では、反射体製造工程で得られた反射体12の表面に金属層122を形成する。金属層122の形成のために、例えば、アルミニウム、銀、クロム、ニッケル、パラジウム、白金及び金等の各種金属を原料にすることができる。金属層122の形成方法は特に限定されず、金属メッキに代表されるウェットプロセス、並びに真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法に代表されるドライプロセスのいずれも採用可能である。これらの金属層122の形成方法は、金属層122の原料となる金属の種類等に応じて適宜使い分ければよい。
【0051】
発光素子搭載工程では、回路基板10の電極層が形成された一の面上の中央付近に発光素子11を配置する。具体的には、発光素子11を回路基板10の一の面上に接着剤等で固定し、発光素子11の電極部と電極層とを電気的に接続して、発光素子11を回路基板10上に搭載する。
【0052】
反射体配置工程では、反射体12を回路基板10上に配置する。反射体12の底面側の端面と回路基板10の一の面とが接し、発光素子11や電極層の周囲を傾斜面で囲むように、回路基板上に反射体12を配置する。接着剤等で反射体12を回路基板の一の面上に固定する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
<材料>
液晶性樹脂:ベクトラE950iSX(ポリプラスチックス社製)
ガラス繊維:ECS03T−786H(日本電気硝子社製)、繊維径10.5μm(後述するガラス繊維の繊維長は押出条件(スクリュー回転数、シリンダー温度)で調整した。)
真球状シリカ1:アドマファインSO−C2(アドマテックス社製)、平均一次粒径0.5μm
真球状シリカ2:デンカ溶融シリカ FB−5S DC(電気化学工業社製)、平均一次粒径4.0μm
ガラスビーズ:EGB731(ポッターズ・バロティーニ株式会社製)平均一次粒径18μm
タルク:クラウンタルクPP(松村産業株式会社製)平均一次粒径11μm
ノイブルグシリシャスアース:シリコロイドP87(ホフマンミネラル社製)平均一次粒径1.5μm
【0055】
<実施例及び比較例を製造するための組成物の調製>
液晶性樹脂100質量部に対して、表1、2に示す無機フィラーを、表1、2に示す添加量(質量部)で添加してなる液晶性樹脂組成物を調製した。
【0056】
<流動性評価>
実施例及び比較例の製造に使用した液晶性樹脂組成物の流動性確認するためにこれらの樹脂組成物の溶融粘度を、これらの樹脂組成物ペレットを用いて、L=20mm、d=1mmのキャピラリー式レオメータ(東洋精機製キャピログラフ1B型)を使用し、温度350℃、せん断速度1000/sでISO 11443に準拠して、溶融粘度を測定した。測定結果を表1、2に示した。
【0057】
<荷重たわみ温度(DTUL)>
実施例及び比較例の製造に使用した液晶性樹脂組成物を原料として、10mm×4mm×80mm射出成形片を得た。ISO75−1、2に準拠して、これらの射出成形試験片の荷重たわみ温度を測定した。測定結果を表1、2に示した。
【0058】
<反射体の製造>
表1、2に記載の樹脂組成物を成形し、それぞれの樹脂組成物を成形してなる図2に記載の反射体を製造した。製造した全ての反射体の表面の平滑性は、一様であることを確認した。
【0059】
<表面粗さRaの評価>
開口部が貫通する方向に半分に切断した反射体の中央部分について、超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(キーエンス社製)を用いて、傾斜面の表面粗さRaを測定した。また、金型の表面粗さRaも成形体と同様の方法で測定した。実施例及び比較例の反射体の傾斜面の表面粗さを表1,2に示した。また、傾斜面に対応する金型内壁面の表面粗さは0.25mmであり、実施例及び比較例について表面粗さの差(ΔRa)も表1、2に示した。
【0060】
<金属層の形成>
スパッタリング装置(日立製作所製 E102)を用い、先ず、真空槽内を0.05Torrまで高真空化した。次いで、電流値が15mAになるように設定した。最後に、白金パラジウムターゲットを用い、ターゲットから30mmの位置になる様に基板にセットした反射体にスパッタリングを行い、白金パラジウム膜を形成させた。その結果、金属層が表面全体に形成された反射体が得られた。全ての実施例、比較例について、上記の方法で金属層が表面に形成された反射体を得た。なお、金属層の表面の平滑性は、一様であった。
【0061】
反射体に形成された金属層表面の反射率は、反射体が小さすぎるために測定が困難であった。そこで、実施例及び比較例の製造に使用した液晶性樹脂組成物を原料として、80mm×80mm×1mmの射出成形試験片を作製し、この射出成形試験片に形成した金属層の反射率を測定した。金属層の形成方法は、反射体に形成した方法と同様の方法で形成した。
試験片を製造するための金型は、上記の実施例と同様に、内壁面の表面粗さRaが0.25mmのものを用いた。
また、得られた射出成形試験片の表面の平滑性は、一様であった。そこで、射出成形試験片の表面の中央部について、上述の方法で表面粗さRaの測定を行った。測定結果は、全ての射出成形試験片において、同じ組成物を用いて得られた実施例及び比較例の反射体の表面粗さと同様の結果となった。
各射出成形試験片について、金属層が形成された射出成形試験片中央部の上面の金属層側の面に対して、V−570型紫外線分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて、波長470nmの光で、反射率の測定を行った。測定結果を表1、2に示した。
【0062】
【表1】

【表2】

【0063】
表1、2の結果から明らかなように、反射体の表面粗さと、金型内壁面の表面粗さとの差(ΔRa)を0.1mm以下にすることで、反射体上に形成される金属層は、効率よく光を反射することが確認された。そして、この効果は、無機フィラーの種類によらず奏されることが、実施例1〜8から確認された。また、この効果は、無機フィラーのサイズによらず奏されることが実施例1〜4及び実施例5から確認された。また、実施例、比較例の結果から、無機フィラーとして板状フィラー、粒粉状フィラーを使用すると、表面粗さの差(ΔRa)を0.1mm以下に調整しやすいことが確認された。
【0064】
実施例1〜4の結果から、無機フィラーの含有量が少ないほど、表面粗さRaの差(ΔRa)が小さくなり、金属層表面の反射率が高くなることが確認された。また、無機フィラーの含有量が少ないほど、溶融粘度が小さくなることが確認された。つまり、無機フィラーの含有量が少ないほど、流動性が高く、薄肉、軽量製品になりやすいことが確認された。また、無機フィラーの含有量を、液晶性樹脂100質量部あたり10質量%程度に抑えても、充分な耐熱性を示すことが、荷重たわみ温度の評価から確認できた。
【0065】
実施例3、5〜8の結果から、無機フィラーの平均一次粒径が、およそ18μmを超えると流動性が大きく低下し(溶融粘度が大きく上昇し)、無機フィラーの平均一次粒径がおよそ11μm以下であれば、およそ30Pa・s以上40Pa・s以下の低い溶融粘度に調整できることが確認された。
【0066】
<傾斜面の毛羽立ち有無の確認>
実施例1〜5の金属層形成前の反射体を1分間、室温の水中で超音波洗浄機にかけた。その後、超音波洗浄機にかける前後の反射体を比較して、反射体表面の毛羽立ちを目視により評価した。評価は以下の4段階評価で行い、評価結果を表3に示した。
◎;毛羽立ちが全くない。
○;表面のほとんどが毛羽立たないことが目視で確認された。
△;毛羽立ちが目視で確認された。
×;表面のほとんどが毛羽立つことが目視で確認された。
【0067】
【表3】

【0068】
平均一次粒径が0.5μmのシリカを用いた実施例1〜4は、毛羽立ちが全く生じないのに対して、平均一次粒径が4.0μmのシリカを用いた実施例5は、若干の毛羽立ちが生じることが確認された。毛羽立ちが少ないほど成形体と金属層との密着力が良好であることを示すため、これらの結果は、上記表面粗さの差(ΔRa)がおよそ0.03mm以下であれば、反射体表面と金属層との密着力が著しく改善されることを示す。
【符号の説明】
【0069】
1 発光装置
10 回路基板
11 発光素子
12 反射体
120 開口部
121 傾斜面
122 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、回路基板上に搭載された発光素子と、発光素子を囲むように前記回路基板上に配置される反射体と、を備え、
前記反射体は、発光素子からの光を所望の方向に反射させるための傾斜面を有する発光装置の製造方法であって、
液晶性樹脂組成物から反射体を製造する反射体製造工程と、
前記反射体製造工程で得られる反射体の表面に対して金属層を形成する金属層形成工程と、
回路基板上に発光素子を搭載する発光素子搭載工程と、
前記回路基板上に反射体を配置する反射体配置工程と、を備え、
前記反射体製造工程は、前記反射体の表面粗さRaと、前記反射体を製造するための金型の内壁面の前記傾斜面に対応する位置の表面粗さRaと、の差(ΔRa)が0.1mm以下になるように反射体を製造する工程である発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記差(ΔRa)が、0.03mm以下である請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
回路基板と、
回路基板上に搭載された発光素子と、
発光素子を囲むように、前記回路基板上に配置された反射体と、を備え、
前記反射体は、液晶性樹脂と、平均一次粒径が15μm以下の無機フィラーと、を含み、
前記反射体の表面には金属層が配置される発光装置。
【請求項4】
前記無機フィラーは、板状フィラー及び/又は粒粉状フィラーである請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記無機フィラーは平均一次粒径が0.7μm以下のシリカである請求項3に記載の発光装置。
【請求項6】
前記無機フィラーの含有量は、前記液晶性樹脂100質量部に対して、5質量部以上70質量部以下である請求項3から5のいずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
液晶性樹脂と、平均一次粒径が15μm以下の無機フィラーとを含み、表面に金属層を備える反射体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−33726(P2012−33726A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172351(P2010−172351)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】