説明

発光装置の製造方法及び発光装置

【課題】発光素子から照射される光の発光効率を向上させると共に、演色性に優れる発光装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】発光装置の製造方法は、基材上に複数の発光素子を実装する実装工程と、複数の前記発光素子のなかで予め設定した第1発光素子に透明部材を被覆して透明部材被覆部を形成する透明部材被覆工程と、前記第1発光素子に被覆した透明部材被覆部、及び、その他の前記発光素子となる第2発光素子を、前記蛍光体を含む封止部材により被覆して封止部を形成する封止部材被覆工程と、を含み、前記封止部材被覆工程は、前記蛍光体が沈降して、前記透明部材の頂部より下となる前記基材上に堆積すると共に、前記第2発光素子の上面に堆積することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発光素子を搭載して使用される発光装置の製造方法、及び、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にLED等の発光素子を搭載する発光装置は、様々構成が提案されており、発光素子が搭載された領域を封止樹脂で封止し、その封止樹脂内に蛍光体を混入することで演色性を高めている。
例えば、特許文献1、2には、発光素子から所定間隔離れた位置に蛍光体を均等に配置する構成が記載されている。また、特許文献3には、蛍光物質が含有された封止樹脂で覆う前に発光素子及び基材電極が被覆部材で覆われている構成が記載されている。この発光装置は、その被覆部材の膜厚は発光素子の高さよりも薄くなるように構成されている。
【0003】
なお、発光素子が2つ配置された発光装置として、特許文献4に記載されているものがある。この発光装置は、隣り合う発光素子のそれぞれの封止樹脂に異なる色彩の蛍光体を含有させ樹脂中に分散させた状態となる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108981号公報
【特許文献2】特開2009−094351号公報
【特許文献3】特開2009−170825号公報
【特許文献4】特開2010−034184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した発光装置及び発光装置の製造方法では、以下に示すような問題点が存在していた。
特許文献1〜4では、発光素子に樹脂等を封止し、蛍光体を整列あるいは堆積または拡散させる工程により発光装置を製造している。したがって、製造された発光装置では、蛍光体が全ての発光素子から所定間隔離れた位置に整列あるいは堆積または拡散しているので、全ての発光素子からの所定波長の光が、必ず蛍光体を介して照射されることになり、所望の演色性を有する発光装置を得ようとすると、光取出し効率が悪くなることがある。
また、特許文献1〜3では、発光素子の発光波長を単一のものを使用しているので、演色性の制御を行うときに蛍光体によるところが大きく、演色性の制御を容易に行うことができなかった。
なお、特許文献4では、複数の発光素子を配置する構成が記載されているが、やはり、封止部材に蛍光体が拡散するように含有されている状態であるため、発光素子からの光の演色性を容易に制御することができなかった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、発光素子から照射される光の発光効率を向上させると共に、演色性に優れる発光装置の製造方法及び発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を達成するために、請求項1に記載の発光装置の製造方法は、発光素子を基材上に複数備える発光装置の製造方法において、基材上に複数の発光素子を実装する実装工程と、複数の前記発光素子のなかで予め設定した第1発光素子に透明部材を被覆して透明部材被覆部を形成する透明部材被覆工程と、前記第1発光素子に被覆した透明部材被覆部、及び、その他の前記発光素子となる第2発光素子を、前記蛍光体を含む封止部材により被覆して封止部を形成する封止部材被覆工程と、を含み、前記封止部材被覆工程は、前記蛍光体が沈降して、前記透明部材の頂部より下となる前記基材上に堆積すると共に、前記第2発光素子の上面に堆積することとした。
【0008】
かかる手順によれば、発光装置の製造方法は、予め設定された第1発光素子に透明部材が被覆され、透明部材が被覆された第1発光素子と、透明部材が被覆されていない第2発光素子とに、蛍光体を含む封止部材で封止される。そして、発光装置の製造方法では、封止部材に含まれる蛍光体が沈降して第2発光素子及び基材上に堆積した状態となり、第1発光素子の透明部材の形状により頂部に蛍光体が堆積しない状態となる。そのため、製造された発光装置では、第1発光体が透明部材により蛍光体の影響を受けない状態で光を照射できるようになり、演色性の制御がし易くなる。
【0009】
請求項2に係る発光装置の製造方法は、前記透明部材被覆工程において、前記透明部材により、前記基材から頂部に亘って直線又は曲線による傾斜面を有するように被覆して前記透明部材被覆部を形成することとした。
かかる手順を行うことで、発光装置の製造方法では、封止部材により透明部材被覆部及び第2発光素子を封止して蛍光体が沈降するときに、蛍光体が透明部材の傾斜面により透明部材に堆積することなく下方となる基材側等に沈降することになる。
【0010】
請求項3に係る発光装置の製造方法は、前記実装工程において、前記第1発光素子は、前記第2発光素子の発光波長と前記蛍光体の発光波長との間における波長の光を発光するものを前記基材上に実装することとした。
かかる手順によれば、発光装置の製造方法では、第1発光素子の光が透明部材により蛍光体の影響をほぼ受けずに照射できるので、発光効率がよく、かつ、異なる種類の発光素子を使用できるので、演色性の制御を容易とする。
【0011】
請求項4に係る発光装置の製造方法は、前記基材は、前記発光素子を実装する実装領域を囲む位置に光反射部材が光反射壁枠として設けられており、前記封止部材被覆工程において前記封止部材を前記光反射壁枠の内側に封止することとした。
かかる手順により、発光装置の製造方法では、光反射性樹脂設置工程により実装領域を囲む位置に光反射性樹脂を設けることで封止部材により封止部を設けやすくなる。
【0012】
請求項5に係る発光装置の製造方法は、前記封止部材被覆工程において、前記透明部材被覆部および第2発光素子が整列する縦列横列の一端から他端に向かう往復方向の往方向に一列に対して前記封止部材を被覆すると共に、被覆した前記一列の隣の一列の他端から一端に向かう往復方向の復方向に一列に対して前記封止部材を被覆する動作を繰り返して全ての当該縦列横列を被覆する手順で行っても構わない。
かかる手順により、発光装置の製造方法では、縦列横列において列ごとに封止部材を被覆するようにするため、封止部材の使用量を抑制することができる。
【0013】
請求項6に係る発光装置の製造方法は、前記封止部材被覆工程において、前記封止部材は、前記透明部材被覆部の頂部を露出するように設けるようにしてもよい。
かかる手順により、発光装置の製造方法では、封止部材の使用量をより少なくして、かつ、透明部材の頂部を露出するようにしているので、透明部材により被覆されている第1発光素子は蛍光体の影響を受けることがなく発光効率をより高めて演色性の制御が容易な発光装置を製造することができる。
【0014】
請求項7に係る発光装置の製造方法は、前記透明部材は、前記封止部材よりも粘度が高くしてもよい。
透明部材の粘度を高くして第1発光素子に被覆することで、頂部及び傾斜面を形成するときの取り扱いが容易となる。
【0015】
請求項8に係る発光装置は、基材上に実装した複数の発光素子を備える発光装置において、前記発光素子の予め設定された少なくとも一つが、蛍光体を含まない透明部材で被覆された透明部材被覆部と、前記透明部材被覆部及び当該透明部材被覆部で被覆されない他の前記発光素子を、前記蛍光体を含む封止部材で被覆された封止部と、を備え、前記透明部材被覆部は、前記基材側から頂部に向かって曲線または直線の傾斜面を有する形状に形成され、前記蛍光体は、沈降して前記基材上に堆積されると共に、前記第2発光素子の上面に堆積される構成とした。
【0016】
かかる構成により、発光装置は、透明部材が被覆されている発光素子では、封止部材に含まれる蛍光体が透明樹脂の頂部から傾斜面に沿って基材側に沈降するため、発光素子から透明部材を介して照射する光が蛍光体の影響をほとんど受けることなく出力されるので、発光効率がよく、かつ、演色性の制御を容易にする。
【0017】
請求項9に係る発光装置は、前記透明部材で被覆されている発光素子は、前記透明部材で被覆されていない発光素子の発光波長と前記蛍光体の発光波長の間の波長の光を発光するものである構成としてもよい。
かかる構成により、発光装置は、異なる発光波長の発光素子を使用することができ、個数や配置を適宜変更することで、発光面全体としての発光スペクトルが補正されて、より演色性を制御しやすいようになる。
【0018】
請求項10に記載の発光装置は、透明部材被覆部が、隣り合う二つ以上の発光素子に跨って設けられた構成としてもよい。
かかる構成により、発光装置は、透明部材により複数の発光素子をまとめて被覆して透明部材被覆部とすることにより作業性を向上することができる。
【0019】
請求項11に記載の発光装置は、前記透明部材被覆部は、前記基材の発光素子の実装領域の中央に対して線対称となる位置に設けられた構成としてもよい。
かかる構成により、発光装置は、透明部材被覆部が中央から線対称となる位置に設置されることで、演色性の制御をよりし易くなる。
【0020】
請求項12に記載の発光装置は、前記封止部材が、基材上に縦列横列に整列する前記発光素子及び透明部材被覆部に、縦列あるいは横列の一端から他端に向かって列状に設けられた構成としてもよい。
かかる構成により、発光装置は、封止部材が少なくて済み、場合によっては、実装領域の周囲を囲む枠を必要としない。
【0021】
請求項13に記載の発光装置は、前記封止部材が、前記透明部材被覆部の頂部を露出するように設けられる構成としてもよい。
かかる構成により、発光装置は、透明部材の頂部が封止部材から露出していることにより蛍光体の影響を受けることなく発光素子の光を照射できるので、より発光効率を向上することができる。
【0022】
請求項14に記載の発光装置は、前記発光素子の実装領域が円形状又は楕円形状の発光素子において、前記実装領域の周縁となる周縁位置の複数の発光素子を被覆した前記透明部材被覆部を設けるか、あるいは、前記実装領域の中央となる中央位置の複数の発光素子を被覆した前記透明部材被覆部を設けるかのいずれかとした構成であってもよい。
かかる構成により、発光装置は、実装領域の周縁位置あるいは中央位置に透明部材を設けることで、透明部材を設けた位置における発光素子から光を蛍光体の影響を受けることなく取り出すことができる。
【0023】
請求項15に記載の発光装置は、発光素子の実装領域の周囲に光反射性の部材である光反射性部材が設けられている構成としても構わない。
かかる構成により、発光装置は、実装領域の周囲となる位置に基材とは別の部材として後から光反射性部材の枠を設けることや、予め基材にキャビティ(凹部)を備えることで光反射性部材を設けている構成としてもよい。そして、光反射性部材の光反射壁枠を設けることにより、封止部材で封止するときに当該封止部材の流れ止めとしても使用でき、さらに、発光素子の光を反射して光取出し量を増やすことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る発光装置の製造方法及び発光装置は、以下に示すような優れた効果を奏するものである。
発光装置の製造方法では、封止部材の蛍光体が沈降したときに、透明部材の頂分より基材側に蛍光体が堆積するため、蛍光体の影響が小さな状態で、透明部材で被覆された第1発光素子からの光を照射できるようになり、発光効率がよく、演色性の制御に優れた発光装置を容易に製造することができる。
【0025】
発光装置の製造方法では、光反射性樹脂を実装領域の周囲に設けて、封止部材を設けるようにしているので、透明部材の粘度によらず封止部材被覆工程の操作がし易くなり、透明部材の頂部に蛍光体が堆積しないように設定する自由度を広げることができる。
【0026】
発光装置の製造方法では、封止部材被覆工程において、透明部材を露出するようにすることで、さらに発光効率がよく、演色性の制御がし易い発光装置を製造することができる。また、封止部材を列状に設けることで封止部材の使用量を低減することができる。そして、封止部材の粘度よりも透明部材の粘度を高くすることで、次工程となる封止部材被覆工程により早くシフトでき、発光装置の製造の効率化に貢献できる。
【0027】
発光装置は、頂部から傾斜面を有する透明部材により所定の発光素子が被覆された状態で、封止部材で封止されているので、所定の発光素子からは、蛍光体の影響が小さい状態で光を効率よく発光することができ、また、異なる発光波長の発光素子を用いることで演色性の制御が容易となる。
発光装置は、透明部材を隣り合う所定数の発光素子に亘って設けることで、透明部材を被覆した範囲が広がり、蛍光体の影響をより小さくした発光素子からの光を取り出すことができるので、演色性の制御がよりし易い。
【0028】
発光装置は、透明部材を実装領域の中央に対して線対称となる位置に設けることで、バランスの取れた演色性の制御をすることが可能となる。また、実装領域が円形状あるいは楕円形状であるときに、その実装領域の周縁位置あるいは中央位置の発光素子に対して透明部材を被覆することで演色性の制御を容易とすることができる。
発光装置は、光反射性部材が実装領域の周囲に設けられる構成とすることで、光取出し量を増やして演色性の制御を容易にすることが可能となる。また、封止部材を列状に設けることで封止部材の使用量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る第1実施形態における発光装置を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態における発光装置を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)、(b)は、本発明に係る第1実施形態における発光装置の透明部材被覆部を模式的に示す断面図及び平面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明に係る第1実施形態における発光装置の透明部材被覆部の他の構成を模式的に示す模式図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明に係る第1実施形態における発光装置の製造方法を模式的に示す模式図である。
【図6】(a)、(b)は、本発明に係る第2実施形態における発光装置を模式的に示す平面図及び断面図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明に係る第2実施形態における発光装置の実装領域及び透明部材被覆部の構成の他の例を示す平面図及び断面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明に係る第2実施形態における発光装置の実装領域及び透明部材被覆部の構成のさらに他の例を示す平面図及び断面図である。
【図9】(a)、(b)、(c)は、本発明に係る第3実施形態における発光装置を模式的に示す平面図、断面図及び断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る発光装置及び発光装置の製造方法について、各図面を参照して説明する。
はじめに、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態における発光装置1の構成について説明し、つづいて発光装置1の製造方法について図3を参照して説明する。
【0031】
図1に示すように、発光装置1は、パッケージ2と、このパッケージ2の基材である電極3の実装領域6上に実装された複数(図面では2つ)の発光素子7と、この発光素子7における第1発光素子7aに透明部材で被覆する透明部材被覆部9と、透明部材被覆部9及び発光素子7における第2発光素子7bを、蛍光体11が含まれている封止部材で被覆する封止部10と、を備えている。
【0032】
パッケージ2は、ここでは、発光素子7が実装される電極3と、この電極3における実装領域6を露出した状態で設けられる凹部4とにより構成されている。パッケージ2は、発光素子7を収容する電極3表面まで凹部4の中央に凹開口部5が形成され、その凹部4の一端側(底側)に2つの電極3(3a,3b)を支持するもので、発光素子7を保護するとともに、電極3と一体的に成形される成形物である。
【0033】
(凹部)
凹部4は、一端側に電極3を支持し、電極3の実装領域6を露出するように凹開口部5が形成されている。そして、凹部4は、その形状が、平面視において四角形またはこれに近い形状を有するものが好ましいが、特にこれに限定されるものではなく、三角形、多角形またはこれらに近い形状とすることができる。また、凹部4は、電極3とは反対側となる表面(上面)に、一段下がった段差部4aを設けることが好ましい。この段差部4aは、パッケージ成形時に、成形型から取り出す際のピン押し領域などとして利用することができるほか、各角部の形状を異ならせることによって、電極3の極性を示すカソードマークとして利用することができる。
【0034】
凹部4を構成する材料としては、絶縁性部材が好ましく、また、発光素子7からの光や、外光などが透過しにくい部材が好ましい。また、ある程度の強度を有するもので、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができ、具体的には、フェノール樹脂、ガラスエポキシ樹脂、BTレジン(ビスマレイミドトリアジン樹脂)や、PPA(ポリフタル酸アミド樹脂)などが挙げられる。特に熱硬化性樹脂であるトリアジン誘導体エポキシ樹脂を用いることが好ましい。他の熱硬化性樹脂では、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコン樹脂、変性シリコン樹脂、アクリレート樹脂、ウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、酸無水物、酸化防止剤、離型材、光反射部材、無機充填材、硬化触媒、光安定剤、滑剤、顔料等を含有できる。光反射部材としては、二酸化チタンやシリカを用いることができる。その他の凹部4を構成する材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素などのセラミックスを用いることができる。
【0035】
凹開口部5は、凹部4の表面(上面)に開口するように形成され、その凹開口内に発光素子7、保護素子などの電子部品が収容される実装領域6が設定されている。そして、この凹開口部5が発光装置における発光部(発光窓)Hとなる。このように、種々の電子部品が収容される凹開口部5は、それらが載置されるのに必要な面積を有する底面となる実装領域6を設定されるように形成し、実装領域6に露出される電極3と、これら電子部品とを導通させる導電性ワイヤ8などの接合領域も確保できるような大きさ及び形状とすることが好ましい。また、その凹開口部5の深さについては、凹開口部内に充填される封止樹脂によって前記電子部品及び透明部材被覆部9が封止可能な深さとすることが好ましい。
【0036】
凹開口部5の形状としては、略円形のものが好ましいが、特にこれに限定されるものではなく、パッケージ2の凹部4の形状、特に、凹部上面の形状に応じて、さらに、配光特性などを考慮して適宜選択することができる。凹部4の上面が略四角形である場合(図1参照)には、略円形の凹開口部5とするのが好ましいが、さらに発光面積を大きくしたい場合は、パッケージ上面と同様に略四角形とすることもでき、また、図示しないが、大きな凹開口部5を一つ設けるのではなく2つ以上の複数の凹開口部5を設けることもできる。
【0037】
凹開口部5の底には実装領域6が形成され、2つの電極3a、3bが露出され、露出された電極の少なくとも一方の電極3aの上に発光素子7が載置されていることが好ましい。2つの電極3a,3bは、実装領域6において略同一平面となるように露出されるのが好ましいが、段差を設けるなど、異なる面上となるように露出されていてもよい。また、凹開口部5の底部となる実装領域6には、2つの電極3a、3bの間を絶縁させるように、それらの間に凹部4の一部が絶縁部材を介在させた介在部4kを設けることが好ましい。
【0038】
凹開口部5の内壁は、発光素子7からの光を反射し、凹開口部5から効率よく光が放射されるように、凹開口部5の内壁が底部に向けて傾斜する傾斜反射面5aを設けるのが好ましい。傾斜反射面5aを形成する場合、所望に応じて角度を選択することができ、また、内壁の全体を傾斜させずに、部分的に傾斜させることもできる。
【0039】
(電極)
2つの電極3a、3bは、凹部4の凹開口部5に収容される発光素子7や保護素子等の電子部品に外部からの電流を供給するためのもので、凹部4に支持され、凹部4の裏面側に露出し、発光素子7と電気的に導通する位置に設けられている。具体的には、2つの電極3a、3bは、それぞれ発光素子7と導電性ワイヤ8を介して電気的に導通する位置から、凹部4の側面4bより突出する位置までに亘って配置されていることが好ましい(図1参照)。また、2つの電極3a、3bは、凹開口部5の底部において、ほぼ一定の間隔で離間するように配置され、一方または両方の電極3(3a、3b)の上に発光素子7が載置されていることが好ましい。
【0040】
電極3a,3bの各々は、一端側に凹部4の凹開口部5の底部に露出する実装領域6と、他端側に凹部4の側面4bから突出し、凹部4の裏面側に露出して電極露出面となる突出領域13(13a,13b)を有するように、凹部4に支持される平面視で略長方形の板状の電極3a,3bであることが好ましい。そして、ここでは、電極3a,3bの各々は、凹部4の内部で所定角度(例えば、90〜150度)に屈曲する2つの屈曲部17を有する構成としても構わない。
【0041】
なお、電極3a、3bに屈曲部17を設ける場合は、凹部4の成形後に屈曲させるのではなく、成形前にあらかじめ屈曲させておくことが好ましい。屈曲した電極3a,3bを用いて凹部4を一体成形によってパッケージ2を成形することによって、凹部4と電極3a、3bとの間に隙間が生じにくくなる。
【0042】
電極3a,3bの各々は、突出領域13a,13bの裏面形状が平面視で略長方形であって、突出領域13a,13bの長辺同士が平行になるように配置されることが好ましい。このように電極3を配置することで、基板30への実装時のずれを低減しやすくなる。
【0043】
電極3は、凹部4の側面4bと接する領域に貫通孔19を有することが好ましい。電極3に貫通孔19を設けることで、比較的厚い電極3であっても、屈曲しやすくなる。そして、この貫通孔19は、凹部4の素材によって充填されていることが好ましい。貫通孔19を凹部4の素材で充填することで、凹部4と電極3との密着性を向上させることができる。
【0044】
電極3を構成する材料としては、熱伝導率の比較的大きな材料が好ましく、これにより、発光素子7で発生する熱を効率よく外部に放出することができる。例えば、200W/(m・K)程度以上の熱伝導率を有しているものが好ましい。また、電極3は、比較的大きい機械的強度を有する材料、さらには打ち抜きプレス加工またはエッチング加工等が容易な材料で構成することが好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属またはニッケル合金、燐青銅等の合金が挙げられる。
【0045】
また、電極3の厚みや形状等については、得ようとする発光装置1の大きさ、形状等を考慮して適宜調整することができる。また、電極3を光が吸収しやすい材料で構成した場合には、表面に光を反射しやすい部材を設けるなど、電極3を積層構造とするのが好ましい。例えば、電極3を、タングステンや銅からなる導電性部材上に、銀をめっきするなどの積層構造とするのが好ましい。なお、電極3は、その基板30との接続する面において、凹部4の裏面と電極3との境界部分の少なくとも一部と接するように電極用溝部16を形成するようにしてもよい。この電極用溝部16があることで、封止部材が伝わってきても電極用溝部16に入り裏面側に広がることが抑制される。
【0046】
(発光素子)
発光素子7は、パッケージ2の凹開口部5の実装領域6に実装されて収容され、任意の波長の光を出力するもので、半導体発光素子が好ましい。半導体発光素子は、例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いたものを用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAs、InPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子7の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
また、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子7とすることができる。さらには、半導体発光素子とともに、受光素子、及びそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子(例えば、ツェナーダイオードやコンデンサー)、あるいはそれらを組み合わせたものを凹部4の凹開口部5に収容することができる。発光素子7は、ここでは2つが実装され、一例として、第1発光素子7aと第2発光素子7bとが、発光波長の同じものであっても、異なるものとしてもよい。そして、発光波長が異なる場合、第1発光素子7aは、第2発光素子7bの発光波長と、蛍光体11の発光波長との間である発光波長の光を照射するものを使用している。つまり、第1発光素子7aを青緑色あるいは緑色の発光波長の光を発光するものとし、第2発光素子7bを青色の発光波長の光を発光するものとし、かつ、蛍光体11の発光波長を黄色、赤色のものを使用するようにしても構わない。
【0048】
より具体的には、例えば、第1発光素子7aとしては、発光波長が495nm〜520nmのものを用い、また、第2発光素子7bとしては、例えば、発光波長が445nm〜465nmのものを用いることができる。第1発光素子7aとしては、少なくとも第2発光素子7bと発光波長が異なるものが選択され、さらには、蛍光体11を励起しないもの、少なくとも第2発光素子7bよりも蛍光体11を励起する割合(吸収される割合)の少ないものを選択することが好ましい。これによって、第1発光素子7aの発光が蛍光体11に吸収されることなく外部に取り出すことができるため、光の取り出し効率が向上し、発光効率が向上した高演色性の発光装置1を得ることができる。
【0049】
発光素子7は、電極3と導電性ワイヤ8を介して接続されることによって、電極3と電気的に導通する。また、発光素子7は、ダイボンド部材(図示せず)を介して電極3の上に載置されることが好ましい。
【0050】
導電性ワイヤ8は、電極3とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性が良いものが好ましい。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm)(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm)(℃/cm)以上である。また、作業性などを考慮して導電性ワイヤ8の直径は、好ましくは、Φ10μm以上、Φ45μm以下である。このような導電性ワイヤ8としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤ8が挙げられる。このような導電性ワイヤ8の接続には、ワイヤボンディング機器が用いられる。
【0051】
ダイボンド部材は、載置する発光素子7によって、導電性ダイボンド部材または絶縁性ダイボンド部材のいずれかを選択し、例えば、絶縁性発光素子の場合、絶縁性ダイボンド部材でも導電性ダイボンド部材でも用いることができ、導電性発光素子の場合は、導電性ダイボンド部材を用いる。絶縁性ダイボンド部材としては、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等を用い、導電性ダイボンド部材としては、銀、金、パラジウムなどの導電性ペーストや、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材を用いる。
【0052】
(透明部材被覆部)
図1及び図3に示すように、透明部材被覆部9は、第1発光素子7aを透明部材により被覆するものである。この透明部材被覆部9は、ここでは、2つある発光素子7の一方となる第1発光素子7aを被覆し、かつ、第1発光素子7aに接続している導電性ワイヤ8の一部を被覆している。透明部材被覆部9は、頂部9aから電極3側に向かって傾斜面9bを形成するように設けることが好ましい。透明部材被覆部9は、頂部9aから傾斜面9bを有することで、封止部材を封止するときに沈降する蛍光体11の堆積を抑制することができる。
【0053】
透明部材被覆部9の傾斜面9bは、ここでは、曲線で形成されているが、透明部材の粘度を所定の値より高くすることで、傾斜面9bを直線的に形成することが可能となる。また、透明部材被覆部9は、頂部9a側からの見た電極3との接触した部分の形状は、図3(b)に示すように、円形として示しているが、楕円形あるいは角部を曲線とした矩形等となる等、特に限定されるものではない。なお、図4(a)に示すように、傾斜面9bを直線的に形成する場合には、透明樹脂を型(金型等)を用いて被覆したり、あるいは、被覆した後に治具を使用して形成したりしても構わない。透明部材被覆部9は、使用する透明部材が第1発光素子7aからの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。透明部材の具体的な材料としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂やユリア樹脂を挙げることができる。また、図4(b)に示すように、傾斜面9bを内側に凸となるように曲線で形成する構成としても構わない。
【0054】
(封止部)
封止部10は、ここでは封止部材である封止樹脂が、パッケージ2の凹部4に形成された凹開口部5に充填され、凹開口部5の内部に収容された第2発光素子7b、透明部材被覆部9、導電性ワイヤ8等を、塵芥、水分や外力などから保護するもので、第1発光素子7a、第2発光素子7bからの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂やユリア樹脂を挙げることができる。このような材料に加え、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー、蛍光部質(蛍光体11)などを含有させることもできる。なお、封止部10は、凹開口部5全体を充填するように設けるのが好ましいが、目的に応じて凹開口部5の途中までを充填することもできる。
【0055】
(蛍光体)
蛍光体11としては、第2発光素子7bからの光を吸収し異なる波長の光に波長変換させるもので、例えば、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体や、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体等が挙げられる。また、蛍光体11として、イットリウム、アルミニウム及びガーネットを混合したYAG系蛍光体(黄色蛍光物質)を使用することもできる。
【0056】
なお、蛍光体11を別々の2種類として使用してもよい。例えば、蛍光体11は、封止部材中に含有させる波長変換部材であり、第2発光素子7bからの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する。蛍光体11としては、第2発光素子7bからの光をより長波長に変換させるものが好ましい。また、蛍光体11は、2種以上の蛍光体(蛍光物質)が混合されたものを用いてもよい。
【0057】
ここでは、一方の蛍光体11の発光波長が他方の蛍光体11の発光波長よりも長いものである場合、一方の蛍光体11の材料としては、例えば、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体を用いることができる。このうち、ユーロピウムドープの赤色蛍光物質として、例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu(以下、SCASNと表記する)を用いることができる。また、他方の蛍光体11の材料としては、例えば、イットリウム、アルミニウム及びガーネットを混合したYAG系蛍光体(黄色蛍光物質)を用いることができる。なお、他の蛍光体として、Eu,Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、酸窒化物系蛍光体を用いることもできる。
【0058】
以上の構成を備える発光装置1は、第1発光素子7aが透明部材により被覆されて透明部材被覆部9が設けられていることで、例えば、第1発光素子7aから緑色あるいは青緑色の発光波長の光を発光する場合、蛍光体11の影響を受けることなく封止部10から照射することができるので、発光効率がよく、また、互いに発光波長の異なる第1発光素子7a及び第2発光素子7bを使用することができるので、演色性の制御が行いやすい。
【0059】
次に、発光装置1の製造方法について説明する。
図5に示すように、発光装置1の製造方法では、はじめに基材である電極3に凹部4が設けられてパッケージ2が製造される。このとき、電極3は、それぞれの電極3a、3bの一端側となる部分が、凹部4の側面4b、4bから突出して突出領域13a,13bを形成する状態で凹部4により支持される。
【0060】
<実装工程(ダイボンディング工程)>
そして、図5(a)に示すように、パッケージ2の凹部4に形成されている凹開口部5の底面となる実装領域6に露出している電極3aの所定の位置に第1発光素子7a及び第2発光素子7bが実装工程により実装される。ここでは、第1発光素子7aを緑色あるいは青緑色の発光波長の光を発光するものを実装し、また、第2発光素子7bを青色の発光波長の光を発光するものを実装している。なお、第1発光素子7a及び第2発光素子7bを実装する場合には、発光素子載置工程と、加熱工程とによる実装工程であるダイボンディング工程が行われる。
【0061】
[発光素子載置工程]
発光素子載置工程は、電極3上(ここでは実装領域6の金属膜上)に、接合部材(図示省略)を介して、発光素子7を載置する工程である。発光素子7は、接合部材により、電極3上の実装領域6の金属膜と接合する。なお、発光素子7の裏面には、予め、フラックスを塗布しておいてもよい。ここで、接合部材は、金属膜と発光素子7との間に介在するように設ければよいため、金属膜のうち、発光素子7を載置する領域に設けてもよく、発光素子7側に設けてもよい。あるいは、その両方に設けてもよい。
【0062】
液状またはペースト状の接合部材を金属膜上に設ける場合、粘度等に応じてポッティング法、印刷法、転写法等の方法から適宜選択して用いることができる。そして、接合部材を設けた箇所に発光素子7を載置する。なお、固体状の接合部材を用いる場合も、固体状の接合部材を載置した後、液状またはペースト状の接合部材を用いる場合と同じ要領で、金属膜上に発光素子7を載置することができる。また、固体状やペースト状の接合部材は、加熱等により一度溶融させることで、発光素子7を金属膜上の所望の位置に固定させてもよい。
【0063】
[加熱工程]
加熱工程は、発光素子7を載置した後に、接合部材を加熱し、発光素子7を電極3上(実装領域6の金属膜上)に接合する工程である。接合部材は絶縁性部材であってもよく、加熱工程における加熱は、接合部材の少なくとも一部が揮発する温度よりも高い温度で行う。また、接合部材が熱硬化性樹脂を含有する場合は、熱硬化性樹脂の硬化が起こる温度以上に加熱することが好ましい。このようにすることで、発光素子7を熱硬化性樹脂で接着固定することができる。さらに、接合部材として、例えばロジンを含有する樹脂組成物と、低融点の金属とを用いた場合において、金属膜上に、この低融点の金属が載置されている場合、この低融点の金属が溶融する温度以上に加熱することが好ましい。
【0064】
また、加熱工程において、前記加熱に続けて、さらに洗浄工程を行うことができる。
例えば、接合部材に樹脂組成物を用いた場合、加熱により樹脂組成物の一部を揮発によって消失させた後に、残留した樹脂組成物を、さらに洗浄等によって除去してもよい(残留接合部材洗浄工程)。特に、樹脂組成物がロジン含有の場合には、加熱後に洗浄するのが好ましい。洗浄液としては、グリコールエーテル系有機溶剤等を用いるのが好ましい。
【0065】
<保護素子接合工程>
保護素子接合工程は、電極3の配線部分上に、図1では図示を省略した保護素子を載置して接合する工程である。保護素子の接合は、発光素子7の接合と同時に行ってもよいが、発光素子7の接合よりも先、あるいは後に行ってもよい。保護素子を載置、接合する方法は、前記ダイボンディング工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
<ワイヤボンディング工程>
ワイヤボンディング工程は、図5(b)に示すように、ダイボンディング工程の後に、発光素子7と、この発光素子7に電圧を印加するように電極3a、3bに導電性ワイヤ8によって電気的に接続する工程である。すなわち、第1発光素子7aのn電極及びp電極に電極3a及び電極3bをそれぞれ導電性ワイヤ8で接続すると共に、第2発光素子のn電極及びp電極に電極3a及び電極3bをそれぞれ導電性ワイヤ8により接続する。導電性ワイヤ8の接続方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法で行えばよい。
【0067】
<透明部材被覆工程>
透明部材被覆工程は、図5(c)に示すように、第1発光素子7aに透明部材を被覆する工程である。この透明部材被覆工程では、透明部材が、頂部9aを形成すると共に、その頂部9aから電極(基材)側に向かって裾広がりになるように、直線的または曲線的な傾斜面9bを形成するように第1発光素子7aを被覆している。なお、透明部材被覆工程において、傾斜面9bを直線的に形成する場合には、透明部材の粘度を高くすることで可能となる。また、ここでいう曲線的とは、曲面が凸曲面及び凹曲面のいずれでもよい。また、透明部材被覆工程を行うときには、すでに発光素子7には導電性ワイヤ8が設けられているが、透明部材の粘度及び質量等において、導電性ワイヤ8が曲がる等の影響を与えることはない。
【0068】
<封止部材被覆工程>
封止部材被覆工程は、図5(d),(e)に示すように、蛍光体11を含有した封止部材を凹開口部5の内側において電極3a上に載置された第2発光素子7bの上、及び、第1発光素子7aを被覆する透明部材被覆部9の上に被覆するように設けて封止する工程である。
すなわち、発光素子7、透明部材被覆部9、実装領域6上の金属膜及び導電性ワイヤ8等を被覆する蛍光体11を含有する透光性の封止樹脂を、凹部4の凹開口部5内に注入し、かつ、含有する蛍光体11を沈降するまで所定時間経過させ、その後加熱や光照射等によって硬化することで形成する工程である。
なお、蛍光体11は、封止樹脂内にほぼ均等に含有されて時間経過と共に自然に自重で沈降して行き、透明部材被覆部9の位置では、その蛍光体11のほとんどが頂部9aから傾斜面9bがあることで留まらずまた堆積することができずに電極3側に沈降する。また、蛍光体11は、透明部材被覆部9以外の電極3上あるいは第2発光素子7bでは、それぞれ上面となる形状が平坦であるために堆積するように沈降する。
【0069】
ここで、蛍光体11が堆積するとは、蛍光体11が発光素子7からの発光波長の光により本来の役割を果たすことができる状態となることをいう。したがって、透明部材被覆部9に蛍光体11が少量付着している場合には、ここでいう堆積とは言わない。また、透明部材被覆部9において、第1発光素子7aからの発光において、その側面に向かう光があるときに、電極3上に堆積した蛍光体11により波長が変換される場合もあるが、第1発光素子7aから上方に向かって発光される光に対して蛍光体11の影響を受けないような形状となっていれば、その透明部材で被覆されて形成される頂部9a及び傾斜面9bの形状、角度等は特に限定されるものではない。
【0070】
封止部材被覆工程が終了すると、発光装置1は完成され、所定の基板30(図2参照)等にさらに実装されることで用いられる。発光装置1は、光を照射するときに、発光部H(図2参照)から複数(ここでは透明部材を透過したものと蛍光体11の影響を受けたものの2種類)の発光波長の光を照射することができ、かつ、第1発光素子7aが蛍光体11の影響を受けないで光を照射できるので、発光効率がよく、かつ、演色性の制御が容易となる。
【0071】
なお、発光装置1では、凹部4の内壁から内側に向けて突出する内側突出部(図示せず)を設けてもよい。具体的には、凹開口部5の傾斜反射面5aに、内側に向けて突出する内側突出部を形成する。このように、凹開口部5の傾斜反射面5aの全体を内側に突出させるのではなく、一部を内側に突出させることで、発光面積を小さくすることなく、パッケージ2の強度を向上させることができ、さらに、パッケージ2に支持される電極3の保持力の低下を抑制することができる。図示しない内側突出部は、1つだけ設けてもよく、あるいはパッケージ2の大きさや形状に応じて2つ以上の複数個設けることもできる。また、このように内壁の一部に内側突出部を設ける場合、傾斜反射面5aの傾斜角は、それぞれ略等しくなるように調整するのが好ましい。
【0072】
つぎに、本発明の第2実施形態に係る発光装置について図6(a)、(b)を参照して説明する。なお、図6(a)において、蛍光体11を省略して示している。すでに説明した各構成及び各工程については、同じ符号を付して説明を省略する。また、説明の便宜上、図6における枠15は、外形のみを線で示し、透過させた状態で図示している。
図6(a)に示すように、発光装置1Aは、チップオンボード(COB)型の装置である。発光装置1Aは、例えば、発光素子7が縦列横列に複数整列して設けられ、LED電球、スポットライト等の照明器具等に利用される装置である。発光装置1Aは、図6に示すように、基材2Aと、基材2A上に配置された複数の発光素子7と、一部の発光素子7である第1発光素子7aを透明部材で被覆する透明部材被覆部9と、残りの発光素子7である第2発光素子7b及び透明部材被覆部9を被覆する封止部10と、光反射性の部材からなる光反射壁枠である枠15と、例えば配線パターン等の導電部材20とを主に備えている。なお、ここでは、基材2A上に形成された導電部材20は、正極23及び負極24を構成し、発光素子7や保護素子hg等である電子部品と、正極23や負極24等を接続する導電性ワイヤ8と、実装領域6aに形成された金属膜21と、中継配線部28と、を備えた構成としている。
<基材>
基材2Aは、発光素子7や保護素子hg等の電子部品を配置するためのものである。基材2Aは、図6(a)に示すように、矩形平板状に形成されている。また、基材2A上には、複数の発光素子7を配置するための実装領域6aが区画されている。なお、基材2Aのサイズは特に限定されず、発光素子7の数や配列間隔等、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0073】
基材2Aの材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子7から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、セラミックス(Al、AlN等)、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂が挙げられる。
【0074】
<実装領域>
実装領域6aは、複数の発光素子7を配置するための領域である。実装領域6aは、図6(a)に示すように、基材2Aの中央の領域に区画されている。実装領域6aは、互いに対向する辺を有する所定形状で形成されており、より具体的には、図6(a)に示すように、角部を丸めた略矩形状に形成されている。なお、実装領域6aのサイズは特に限定されず、発光素子7の数や配列間隔等、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0075】
実装領域6aの周囲には、図6を正面視した場合において、実装領域6aの左側の辺に沿って配線部23bの一部及び配線部24bの一部が形成され、実装領域6aの下側の辺に沿って配線部24bの一部が形成され、実装領域6aの右側の辺に沿って中継配線部28が形成されている。なお、ここでの実装領域6aの周囲とは、図6(a)に示すように、実装領域6aの周縁と所定の間隔を置いた周囲のことを示している。
【0076】
<金属膜>
金属膜21は、実装領域6a上に形成される膜である。実装領域6aは、複数の発光素子7を配置するために基材2A上に区画した領域、すなわち基材2Aと同じ材料で構成された領域としてもよいが、例えば、実装領域6a上に光を反射する金属膜21を形成し、当該金属膜21を介して複数の発光素子7を配置することが好ましい。このように実装領域6a上に金属膜21を形成してその上に複数の発光素子7を配置することで、基材2Aの実装領域6a側に向う光も金属膜21によって反射することができる。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1Aの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0077】
実装領域6a上に形成する金属膜21は、電解めっきまたは無電解めっきで形成することが好ましい。金属膜21の材料としては、特に限定されないが、例えば、Ag(銀)またはAu(金)を用いることが好ましく、特にAgを用いることが好ましい。Auは光を吸収しやすい特性を備えているが、例えばAuめっきの表面にTiO膜をさらに形成することで、光反射率を高めることができる。また、AgはAuよりも可視光に対する光反射率が高いため、Au単独でめっきを行うよりも、発光装置1Aの光の取り出し効率を向上させることができる。なお、実装領域6a上に形成する金属膜21の厚さは特に限定されず、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0078】
<導電部材(正極及び負極)>
導電部材(金属部材)20は正極23及び負極24を構成するものであり、基材2A上の複数の発光素子7や保護素子hg等の電子部品と、外部電源とを電気的に接続し、これらの電子部品に対して外部電源からの電圧を印加するためのものである。すなわち、導電部材20(正極23及び負極24)は、外部から通電させるための電極、またはその一部としての役割を担うものである。
【0079】
正極23及び負極24は、図6(a)に示すように略矩形状のパッド部(給電部)23a,24aと、線状の配線部23b,24bと、を有しており、パッド部23a,24aに印加された電圧が配線部23b,24bを介して複数の発光素子7からなる発光部Hへと印加されるように構成されている。なお、負極24の配線部24bには、図6に示すように、カソードであることを示すカソードマークCMが形成されている。
【0080】
パッド部23a,24aは、外部電源からの電圧が印加されるためのものである。パッド部23a,24aは、図6(a)に示すように、基材2A上の角部における対角線の位置に、一対で形成されている。そして、パッド部23a,24aは、導電性のワイヤによって、図示しない外部電源と電気的に接続されている。
【0081】
配線部23b,24bは、外部電源からパッド部23a,24aに印加された電圧を、実装領域6a上の発光素子7へと伝達するためのものである。配線部23b,24bは、図6(a)に示すように、パッド部23a,24aから延出するように形成されるとともに、実装領域6aの周囲に略L字状で形成されている。
【0082】
正極23及び負極24を構成する導電部材20の素材は、Auを用いることが好ましい。これは、後記するように、導電性ワイヤ8の材料として熱伝導性が向上したAuを用いた場合に、同素材である導電性ワイヤ8を強固に接合することができるためである。
【0083】
正極23及び負極24を構成する導電部材20の形成方法としては、前記した実装領域6a上の金属膜21の形成方法と同様に、電解めっきまたは無電解めっきで形成することが好ましい。なお、正極23及び負極24を構成する導電部材20の厚さは特に限定されず、導電性ワイヤ8の数等、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0084】
ここで、配線部23b,24bの一部、すなわち導電部材20の一部は、図6(a)に示すように、後記する枠15の光反射樹脂によって被覆されている。そのため、配線部23b,24bを、前記したように光を吸収しやすいAuで形成した場合であっても、発光素子7から出射された光が配線部23b,24bには到達せずに光反射樹脂の枠15によって反射される。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1Aの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0085】
さらに、配線部23b,24bの一部を光反射樹脂によって覆うことにより、当該導電性ワイヤ8を塵芥、水分、外力等から保護することができる。なお、ここでの配線部23b,24bの一部とは、図2に示すように、配線部23b,24bのうちで、実装領域6aの周囲であって、実装領域6aの辺に沿って形成された部分であり、導電性ワイヤ8が接続された部分のことを意味している。また、これによって、光反射樹脂の枠15と発光素子7の間におけるワイヤのボンディング領域が不要となり、光反射樹脂の枠15を発光素子7の近くに配置することができる。そのため、枠15と発光素子7の間における蛍光体11の量をより低減することができる。
【0086】
<中継配線部>
中継配線部28は、正極23と負極24の間における配線を中継するためのものである。中継配線部28は、図6(a)に示すように、基材2A上の導電部材(金属部材)で構成されている。中継配線部28は、図6(a)に示すように、実装領域6aの周囲において、当該実装領域6aの一辺、すなわち右側の辺に沿って直線状に形成されている。
【0087】
中継配線部28は、図6(a)に示すように、光反射樹脂の枠15によって覆われている。そのため、後記するように、中継配線部28を構成する導電部材として光を吸収しやすいAuを用いた場合であっても、発光素子7から出射された光は中継配線部28には到達せずに光反射樹脂の枠15によって反射される。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1Aの光の取り出し効率を向上させることができる。さらに、中継配線部28を枠15によって覆うことにより、当該中継配線部28を塵芥、水分、外力等から保護することができる。
【0088】
中継配線部28を構成する導電部材の素材は、正極23及び負極24と同様に、Auを用いることが好ましい。これは、後記するように、導電性ワイヤ8の材料として熱伝導性が向上したAuを用いた場合に、同素材である導電性ワイヤ8を強固に接合することができるためである。
【0089】
中継配線部28を構成する導電部材の形成方法としては、正極23及び負極24と同様に、電解めっきまたは無電解めっきで形成することが好ましい。なお、中継配線部28を構成する導電部材の厚さは特に限定されず、導電性ワイヤ8の数等、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0090】
<保護素子>
保護素子hgは、複数の発光素子7からなる発光部Hを、過大な電圧印加による素子破壊や性能劣化から保護するための素子である。保護素子hgは、具体的には、規定電圧以上の電圧が印加されると通電状態になるツェナーダイオード(Zener Diode)である。保護素子hgは、前記した発光素子7と同様にp型電極とn型電極(図示せず)とを有する半導体素子であり、発光素子7のp型電極とn型電極に対して逆並列となるように、ワイヤによって負極24の配線部24bと電気的に接続される。
【0091】
<枠(光反射樹脂)>
光反射性部材である光反射樹脂で形成される枠15は、発光素子7から出射された光を反射させるためのものである。光反射樹脂の枠15は、図6(a)に示すように、配線部23b,24bの一部、中継配線部28、保護素子hg及びこれらに接続される導電性ワイヤ8を覆うように形成される。そのため、配線部23b,24b、中継配線部28及び導電性ワイヤ8を、前記あるいは後記するように光を吸収しやすいAuで形成した場合であっても、発光素子7から出射された光が配線部23b,24b、中継配線部28及び導電性ワイヤ8には到達せずに枠15によって反射される。
【0092】
光反射樹脂の枠15は、図6(b)に示すように、基材2A上において発光部Hが形成された実装領域6aを囲うように四角枠状に形成されている。このように実装領域6aの周囲を囲うように枠15を形成することで、基材2Aの実装領域6aの周囲に向う光も枠15によって反射することができる。従って、出射光のロスを軽減することができ、発光装置1Aの光の取り出し効率を向上させることができる。
【0093】
また、枠15は、図6(a)に示すように、実装領域6aの周縁の一部を覆うように形成することが好ましい。このように、実装領域6aの周縁の一部を覆うように枠15を形成することで、配線部23b,24bと実装領域6a上の金属膜21との間に基材2Aが露出した領域が形成されることがなくなる。従って、発光素子7から出射された光を、枠15が形成された内部の領域において全て反射させることができるため、出射光のロスを最大限軽減することができ、発光装置1Aの光の取り出し効率をより向上させることができる。また、光反射樹脂の枠15は、図6(b)に示すように、第1発光素子7aを被覆する透明部材被覆部9よりも高く形成されている。枠15の形状は、断面が上方に突出するように形成されていればよく、頂部から曲線あるいは直線により傾斜面が形成されるように凸状に形成されていれば、その形状は限定されるものではない。
【0094】
光反射樹脂の枠15は、その材料として、絶縁材料を用いることが好ましい。また、ある程度の強度を確保するために、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンや、PPAやシリコン樹脂等が挙げられる。また、これらの母体となる樹脂に、発光素子7からの光を吸収しにくく、かつ母体となる樹脂に対する屈折率差の大きい反射部材(例えばTiO,Al,ZrO,MgO)等の粉末を分散することで、効率よく光を反射させることができる。なお、光反射樹脂の枠15のサイズは特に限定されず、目的及び用途に応じて適宜選択することができる。
【0095】
<透明部材被覆部>
透明部材被覆部9は、発光素子7の縦列横列において、中央に対して線対称となる位置に設けられている。透明部材被覆部9は、ここでは、中央付近の4箇所に設けられている。この透明部材被覆部9は、頂部9aから曲線または直線により傾斜面9bが形成され基材2Aと接触する部分では楕円形状となる裾野部分を備える形状に形成されている。なお、透明部材被覆部9は、中央に対して線対称となるように設置されていれば、その数及び設置位置が限定されるものではない。透明部材被覆部9は、中央に対して線対称となることで発光部Hから照射される光のバランスがよい状態で演色性の制御が容易となる。
【0096】
<封止部>
封止部(封止部材、封止樹脂)10は、図6(a)、(b)に示すように、蛍光体11を含有するものであり、基材2Aに配置された第2発光素子7b、透明部材被覆部9および導電性ワイヤ8等を、塵芥、水分、外力等から保護するための部材である。封止部10は、図6(b)に示すように、基材2A上において、光反射樹脂の枠15で囲った実装領域6a内に樹脂を充填することで形成される。
【0097】
なお、封止部10は、単一の部材で形成することもできるし、あるいは、2層以上の複数の層として形成することもできる。また、封止部10の充填量は、枠15で囲った実装領域6a内に配置される第2発光素子7b、透明部材被覆部9、導電性ワイヤ8等が被覆される量であればよい。さらに、封止部10にレンズ機能をもたせる場合は、封止部10の表面を盛り上がらせて砲弾型形状や凸レンズ形状としてもよい。封止部10の材料としては、発光素子7からの光を透過可能な透光性を有するものが好ましい。具体的な材料としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂等を挙げることができる。また、このような材料に加えて、所望に応じて着色剤、光拡散剤、フィラー等を含有させることもできる。
【0098】
そして、封止部10は、図6(b)の二点鎖線で示すように、透明部材被覆部9の頂部9aを露出するように設ける構成としてもよい。透明部材被覆部9の頂部を露出するように封止部10を設けることで、発光装置1Aの直接照射光(反射光を除く)には封止部10に含まれている蛍光体11の影響をほとんど受けなくなるので、発光効率が向上し、演色性がより制御し易くなる。
【0099】
≪発光装置の製造方法≫
次に、本発明の第2実施形態に係る発光装置の製造方法について、ここでは図6の形態のものを例にとり、適宜、図面を参照しながら説明する。なお、すでに説明した工程については説明を省略する。
【0100】
本発明に係る発光装置1Aの製造方法は、ダイボンディング工程と、光反射枠形成工程と、封止樹脂被覆工程と、を含む。また、本製造方法の前提として、ダイボンディング工程の前に、基材作製工程を含む。さらにここでは、めっき工程、ワイヤボンディング工程、保護素子接合工程を含む。
【0101】
<基材作製工程>
基材作製工程は、めっき用配線が形成された基材2Aを作製する工程である。基材作製工程では、基材2A上の実装領域6aや、正極23および負極24となる部位を所定の形状にパターニングすることで形成する。また、基材作製工程では、電解めっきによって基材2A上の実装領域6aに金属膜21を形成するためのめっき用配線を形成する。
【0102】
<めっき工程>
めっき工程は、前記めっき配線が形成された基材2A上に、少なくとも正極23および負極24を構成する導電部材20を形成する工程であり、好ましくは無電解めっきにより正極23および負極24を構成する導電部材20を形成するとともに、基材2A上の実装領域6a上に、電解めっきにより金属膜21を形成する工程である。また、正極23および負極24を形成するときと同様の工程で中継配線部28を構成する導電部材が形成される。
【0103】
めっきの具体的な方法としては、例えば、正極23、負極24および中継配線部28と実装領域6a上の金属膜21との両方にAuめっきを行う方法、正極23、負極24および中継配線部28にAuめっきを行い、実装領域6a上にAgめっきを行う方法、等が挙げられる。なお、金属膜21を形成しない場合は、正極23、負極24および中継配線部28のみにAuめっきを行い、実装領域6a上の金属膜21を形成しない方法が挙げられる。また、実装領域6a上には、AuめっきやAgめっきを行う場合は、AuまたはAgの表面に、まためっきを行わない場合は、直接、基材2A表面に、さらにTiO膜を形成することが好ましい。
【0104】
<ダイボンディング工程>
ダイボンディング工程は(図5(a)参照)、基材2A上に発光素子7を載置(実装)する工程である。ダイボンディング工程は、発光素子載置工程と、加熱工程と、からなる。ダイボンディング工程は載置する数が異なるのみですでに説明した工程と同じであるため説明を省略する。
【0105】
<保護素子接合工程>
保護素子接合工程は、正極23の配線部23b上に保護素子hgを載置して接合する工程である。保護素子hgの接合は、発光素子7の接合と同時に行ってもよいが、発光素子7の接合よりも先、あるいは後に行ってもよい。保護素子hgを載置、接合する方法は、前記ダイボンディング工程と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0106】
<ワイヤボンディング工程>
ワイヤボンディング工程は(図5(b)参照)、ダイボンディング工程の後に、発光素子7と、この発光素子7に電圧を印加する導電部材20とを導電性ワイヤ8によって電気的に接続する工程である。すなわち、導電部材20の正極23と、発光素子7上部にある電極端子(パッド電極)とを、導電性ワイヤ8で電気的に接続する工程である。同じく、発光素子7上部にある電極端子(パッド電極)と導電部材20の負極24とを、導電性ワイヤ8で電気的に接続する工程である。さらにこの工程では、複数の発光素子7を、それぞれ電極端子(パッド電極)を介して接続する。また、保護素子hgと負極24との電気的な接続もこの工程で行えばよい。すなわち、保護素子hg上部にある電極端子と負極24とを導電性ワイヤ8で接続する。導電性ワイヤ8の接続方法は、特に限定されるものではなく、通常用いられる方法で行えばよい。
【0107】
<枠形成工程>
枠形成工程は、発光素子7の周囲に光反射性の枠(光反射樹脂)15を設ける工程である。ここでは、ワイヤボンディング工程の後に、実装領域6aの周縁に沿って、導電部材20の一部、すなわち、少なくとも正極23および負極24の配線部23b,24bの一部である、導電部材20の導電性ワイヤ8との接続部分を光反射樹脂により被覆するようにして枠15を形成する工程である。
そしてこの工程では、光反射性の枠(光反射樹脂)15を、少なくともその内側の上部において凸状に湾曲し、その内側の下部において当該凸状の湾曲部分に連続して凹状に湾曲して基材2Aに形成する。すなわち、枠15が、少なくとも高さ方向の中央より上側において凸状に湾曲し、当該中央より下側において凹状に湾曲するように形成している。
【0108】
このような形状にするには、樹脂の粘度や、基材2A表面(ここでは金属膜21表面)の粗さにより毛細管現象を利用すること等で制御することができる。樹脂の粘度が大きい、あるいは、金属膜21表面の粗さが小さい場合には、枠15の下部が基材2A方向に向かうにつれて広がりにくいため、頂部から傾斜が急となる。一方、樹脂の粘度が小さい、あるいは、金属膜21表面の粗さが大きい場合には、枠15が、少なくとも上側において傾斜が緩くなり、凸状に大きく湾曲し、当該凸状の湾曲部分に連続して、下部が凹状に湾曲する。なお、樹脂の粘度や基材2A(金属膜21)の粗さ等の本発明の形状とする条件は、樹脂の材料や、製造条件(温度、湿度等)により変化するものであるため、厳密に規定されるものではなく、製造時において適宜調整すればよい。
【0109】
枠15の形成は、例えば、固定された基材2Aの上側において、基材2Aに対して上下方向あるいは水平方向等に移動(可動)させることができる樹脂吐出装置(図示省略)を用いて行うことができる(特開2009−182307号公報参照)。
すなわち、樹脂が充填された樹脂吐出装置をその先端のノズルから液体樹脂を吐出しながら移動させることで、実装領域6aの周縁の一部を覆うように枠15を形成していく。樹脂吐出装置の移動速度は、用いる樹脂の粘度や温度等に応じて適宜調整することができる。形成された複数の光反射樹脂の枠15がそれぞれ略同じ幅となるようにするには、少なくとも樹脂を吐出中は一定の速度で移動させるのが好ましい。移動中に樹脂の吐出を一時中断する場合等は、その間の移動速度は変更することもできる。樹脂の吐出量についても、一定とするのが好ましい。さらに、樹脂吐出装置の移動速度と樹脂の吐出量ともに、一定とするのが好ましい。吐出量の調整は、吐出時にかかる圧力等を一定にする等により調整することができる。
【0110】
<透明部材被覆工程>
透明部材被覆工程は(図5(c)参照)、第1発光素子7a(図6(a)では4箇所)に透明部材を被覆する工程である。この透明部材被覆工程では、透明部材が、頂部9aを形成すると共に、その頂部9aから電極(基材)側に向かって裾広がりになるように、直線的または曲線的な傾斜面9bを形成するように第1発光素子7aを被覆している。
【0111】
<封止部材被覆工程>
封止部材被覆工程は(図5(d)、(e)参照)、枠(光反射樹脂)15の内側に、蛍光体11を含有する封止樹脂を被覆するように充填する工程である。すなわち、発光素子7、透明部材被覆部9、金属膜21および導電性ワイヤ8等を被覆する蛍光体11を含む透光性の封止樹脂を、基材2A上に形成された枠(壁部)15の内側に注入充填し、その後加熱や光照射等によって硬化することで形成する工程である。
【0112】
この工程では蛍光体11を沈降させ、蛍光体11が基材2A(ここでは金属膜21)上に堆積させると共に、第2発光素子7b上にも堆積させる。蛍光体11が沈降するときに、第1発光素子7aには透明部材被覆部9が設けられているので、その透明部材被覆部9の頂部9aから傾斜面9bに蛍光体11が付着しづらく下方に沈降することになる。つまり、第1発光素子7aは、透明部材被覆部9により正面方向における発光方向において、蛍光体11が堆積していない状態で光を照射することができるようになる。
【0113】
樹脂内の蛍光体11は、重力によって下方に沈降し、基材2A(金属膜21)表面および第2発光素子の上面に堆積し蛍光体堆積領域を形成する。そして、蛍光体11を沈降させた後、加熱や光照射等によって封止樹脂を硬化させることで封止部10が形成される。
なお、封止部材被覆工程では、図6(b)に示すように、実線の位置まで封止部材を充填してもよいし、2点鎖線で示すように、透明部材被覆部9の頂部9aを露出させて封止部材を被覆するように枠15内に充填して封止しても構わない。
【0114】
また、COBタイプの発光装置として、図7から図9に示すものであってもよい。なお、図7(a)、図8(a)、図9(a)において、蛍光体11を省略して示している。すなわち、図7(a)に示すように、発光装置1Bは、実装領域6bを円形状あるいは楕円形状として形成され、その実装領域6bの中央位置における複数の第1発光素子7aに透明部材被覆部9Bを設けるようにして構成されている。実装領域6bに整列される発光素子7は、縦列横列に整列して配置されている。なお、左端および右端のそれぞれ3つの第2発光素子7bは、横列には他の列と整列していない状態で配置されている。透明部材被覆部9Bは、複数の第1発光素子7aに跨って設けられ、一つの頂部9aから傾斜面9bを形成することで、複数の第1発光素子7aを被覆している。
【0115】
また、図8(a)に示すように、発光装置1Cは、実装領域6cを円形状あるいは楕円形状として形成され、その実装領域6cの周縁における複数の第1発光素子7aに透明部材被覆部9Cを設けるようにして構成されている。なお、透明部材被覆部9Cに完全に被覆される位置の第1発光素子7aは、緑色あるいは青緑色の発光波長の光を発光するものとし、透明部材被覆部9Cに完全に被覆されない位置では第2発光素子7bである青色の発光波長の光を発光するものを設置するようにすることや、第1発光素子7a及び第2発光素子7bのいずれも同じ発光波長の光を照射するものを設置するようにしても構わない。
【0116】
図7(b)及び図8(b)に示すように、発光装置1B、1Cのそれぞれにおいて、封止部10は、枠15内に充填したときの封止部上端の位置を、実線で示すように、透明部材被覆部9B、9Cが被覆されるように設けることや、2点鎖線で示すように、透明部材被覆部9B、9Cの頂部9aが露出するように被覆するように設けるようにしても構わない。封止部10の上端位置を下げて透明部材被覆部9B,9Cを露出するようにすることで、封止部材の使用量を減らし、かつ、発光効率を向上させる。
【0117】
さらに、図9(a)に示すように、発光装置1Dは、封止部材を列状に設ける封止部10dとして構成しても構わない。封止部10dを列状に設けることにより、封止部材の使用量を削減することができる。封止部10dを列状に設ける場合には、枠15を設けない状態で装置を構成することができる。また、図9(b)に示すように、封止部10dは、列状に設ける場合、透明部材被覆部9の頂部9aを露出した状態としても構わない。さらに、封止部10dは、列状に設ける場合、隣の列とは独立するように設けることとしている。封止部10dを列ごとに隣の列と接触しないように設けるためには、透明部材の粘度を高めることで達成することができる。例えば、封止部10dは、枠15の光反射樹脂と同等あるいは当該光反射樹脂よりも粘度を高めることで達成することが可能となる。
【0118】
なお、図9(c)に示すように、封止部10dは、隣り合う列と接触するように粘度を調整して設ける構成としても構わない。また、図示していないが、封止部10dにおいて、封止部材により透明部材被覆部9の頂部9aを被覆した状態としてもよい。
また、列状に封止部10dを形成する場合には、整列する一端側から他端側に向かって順に縦列あるいは横列を往復移動するように、樹脂吐出装置をその先端のノズルから液体樹脂を吐出しながら移動させることで、封止樹脂を被覆することができる。
【0119】
以上、説明したように、COBタイプの発光装置1A〜1Dでは、透明部材被覆部9,9B,9Cが設置されることで、蛍光体11の影響を受けずにそのまま光を取り出せるので、発光効率がよく、異なる発光波長の第1発光素子7a,第2発光素子7bを使用することができるので、さらに演色性の制御が容易となる。
【符号の説明】
【0120】
1,1A,1B,1C,1D 発光装置
2 パッケージ
2A,2B,2C,2D, 基材
3 電極
3a 電極
3b 電極
4 凹部
4a 段差部
4b 側面
4k 介在部
5 凹開口部
5a 傾斜反射面
6,6a,6b,6c 実装領域
7 発光素子
7a 第1発光素子
7b 第2発光素子
8 導電性ワイヤ
9,9B,9C 透明部材被覆部
9a 頂部
9b 傾斜面
10 封止部
10d 封止部
11 蛍光体
13 突出領域
13a,13b 突出領域
15 枠
16 電極用溝部
17 屈曲部
19 貫通孔
20 導電部材
21 金属膜
23 正極
23a パッド部
23b 配線部
24 負極
24b 配線部
28 中継配線部
30 基板
CM カソードマーク
H 発光部
hg 保護素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を基材上に複数備える発光装置の製造方法において、
基材上に複数の発光素子を実装する実装工程と、
複数の前記発光素子のなかで予め設定した第1発光素子に透明部材を被覆して透明部材被覆部を形成する透明部材被覆工程と、
前記第1発光素子に被覆した透明部材被覆部、及び、その他の前記発光素子となる第2発光素子を、前記蛍光体を含む封止部材により被覆して封止部を形成する封止部材被覆工程と、を含み、
前記封止部材被覆工程は、前記蛍光体が沈降して、前記透明部材の頂部より下となる前記基材上に堆積すると共に、前記第2発光素子の上面に堆積することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記透明部材被覆工程において、前記透明部材により、前記基材から頂部に亘って直線又は曲線による傾斜面を有するように被覆して前記透明部材被覆部を形成することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記実装工程において、前記第1発光素子は、前記第2発光素子の発光波長と前記蛍光体の発光波長との間における波長の光を発光するものを前記基材上に実装することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、前記発光素子を実装する実装領域を囲む位置に光反射部材が光反射壁枠として設けられており、前記封止部材被覆工程において前記封止部材を前記光反射壁枠の内側に封止することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記封止部材被覆工程は、前記透明部材被覆部および第2発光素子が整列する縦列横列の一端から他端に向かう往復方向の往方向に一列に対して前記封止部材を被覆すると共に、被覆した前記一列の隣の一列の他端から一端に向かう往復方向の復方向に一列に対して前記封止部材を被覆する動作を繰り返して全ての当該縦列横列を被覆することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記封止部材被覆工程において、前記封止部材は、前記透明部材被覆部の頂部を露出するように設けることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記透明部材は、前記封止部材よりも粘度が高いことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
基材上に実装した複数の発光素子を備える発光装置において、
前記発光素子の予め設定された少なくとも一つが、蛍光体を含まない透明部材で被覆された透明部材被覆部と、
前記透明部材被覆部及び当該透明部材被覆部で被覆されない他の前記発光素子を、前記蛍光体を含む封止部材で被覆された封止部と、を備え、
前記透明部材被覆部は、前記基材側から頂部に向かって曲線または直線の傾斜面を有する形状に形成され、
前記蛍光体は、沈降して前記基材上に堆積されると共に、前記第2発光素子の上面に堆積されることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
前記透明部材で被覆されている発光素子は、前記透明部材で被覆されていない発光素子の発光波長と前記蛍光体の発光波長の間の波長の光を発光するものであることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記透明部材被覆部は、隣り合う二つ以上の発光素子に跨って設けられたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記透明部材被覆部は、前記基材の発光素子の実装領域の中央に対して線対称となる位置に設けられたことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記封止部材は、基材上に縦列横列に整列する前記発光素子及び透明部材被覆部に、縦列あるいは横列の一端から他端に向かって列状に設けられたことを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記封止部材は、前記透明部材被覆部の頂部を露出するように設けられたことを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記発光素子の実装領域が円形状又は楕円形状の発光素子において、前記実装領域の周縁となる周縁位置の複数の発光素子を被覆した前記透明部材被覆部を設けるか、あるいは、前記実装領域の中央となる中央位置の複数の発光素子を被覆した前記透明部材被覆部を設けるかのいずれかとしたことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記発光素子の実装領域の周囲に光反射性の部材である光反射部材が光反射壁枠として設けられていることを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか一項に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142430(P2012−142430A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293985(P2010−293985)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】