説明

発光装置及びその駆動制御方法

【課題】低温環境下での発光輝度の低下を抑制できる表示装置及びその駆動制御方法を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置1は、発光素子としての有機EL素子と該有機EL素子に発光駆動電流を供給する発光駆動素子とを有する画素を複数二次元配置した表示パネル10と、前記画素の前記有機EL素子を表示データに応じた輝度で発光させるよう前記画素の前記発光駆動素子を駆動する駆動回路21と、前記表示パネル10を加温するための熱線ヒータ50と、温度を測定する温度センサ60と、前記温度センサ60で測定した温度に応じて前記熱線ヒータ50を制御する制御部22と、を備え、低温環境下では熱線ヒータ50により表示パネル10を加温する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素に発光素子を有する発光装置及びその駆動制御方法に関し、特に、発光素子として自発光素子である有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた発光装置及びその駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自発光素子である有機EL素子は、基板上にアノード、EL層、カソードの順に積層した積層構造となっており、アノードとカソードとの間に電圧が印加されるとEL層に正孔及び電子が注入され、EL層で電界発光する。EL層の発光が有機EL素子の設けられている基板を透過して出射するように設計した有機EL素子をボトムエミッション型といい、一方、有機EL素子が設けられている基板と反対側から外部に出射するように設計した有機EL素子をトップエミッション型という。
【0003】
一方、有機EL素子からなる発光素子を画素に備える有機EL表示装置(発光装置)は、大きく分けて、パッシブ駆動方式のものと、アクティブマトリクス駆動方式のものに分類することができる。アクティブマトリクス駆動方式の有機EL表示装置は、非常に高いコントラストや広視野角特性さらには優れた動画特性など、極めて優れた表示特性を有している。アクティブマトリクス駆動方式の有機EL表示装置では、一画素につき一又は複数の薄膜トランジスタ(TFT)、例えばアモルファスシリコン薄膜トランジスタ(a−Si TFT)、を使ったTFT駆動が検討されている。有機EL表示装置の駆動方式としては、電流を印加して階調を制御する電流指定書き込み方式と電圧を印加して階調を制御する電圧指定書き込み方式とがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、電流路の一端が有機EL素子の一端に接続され、電流路の他端が電源ラインに接続された発光制御トランジスタ、制御端子が選択ラインに接続され、電流路の一端が前記発光制御トランジスタの制御端子に接続され、電流路の他端が前記電源ラインに接続された駆動制御トランジスタ、及び、電流路の一端が表示データに応じた駆動信号が印加されるデータラインに接続され、電流路の他端が前記発光制御トランジスタの電流路の他端及び前記有機EL素子の一端に接続され、制御端子が前記選択ラインに接続された選択制御トランジスタ、の3つのa−Si TFTと、前記発光制御トランジスタの前記制御端子と前記電流路の一端との間に設けられた保持容量と、が表示画素ごとに設けられた有機EL表示装置が開示されている。
【0005】
一般に、TFTは、長時間の使用によりチャネル抵抗が変化するために、ゲート閾値電圧Vthが駆動履歴に応じて増大し、有機EL素子に供給される発光駆動電流の電流値が表示データに対応しなくなり、適切な輝度階調で発光することができなくなるという問題があり、この問題に対し、前記特許文献1では、表示画素ごとに閾値電圧の変動量に対応する補正データを検出して記憶しておき、表示データをその補正データに基づいて補正した駆動信号をデータラインに印加する手法を提案している。
【特許文献1】特開2008−46157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄型表示装置として、現在の主流は液晶表示装置(LCD)であるが、低温下での応答速度の問題は依然課題として残っている。
【0007】
この問題に対し、発光素子として有機EL素子を用いた有機EL表示装置は、マイナス30℃の環境下においても応答速度に関して、動画表示にまったく問題がなく、また初期立ち上がりにおいても室温環境下との差異は見られない。これは、LCDと比較して、有機EL表示装置の大きなメリットの一つである。
【0008】
しかしながら、電圧指定書き込み駆動方式の有機EL表示装置では、画素に一定の電圧値の階調電圧を印加した場合、低温環境下での発光特性は、図4(A)に示すように、マイナス10℃以下の低温では室温での発光輝度に対し、半減してしまうといった問題が生じてしまう。これは、図4(B)に示すとおり、画素に一定の電圧を印加したときに有機EL素子に流れる発光駆動電流Ielが低温では低下するためであり、即ち、TFTのチャネル抵抗が周囲の温度に依存するという温度特性により、低温では電流が流れにくくなってしまうからである。
【0009】
ここで、図4(A)及び(B)の測定は、以下の条件で行ったものである。
有効表示エリア:2.7インチ
解像度:180ppi
画素数:420RGB×240
画素駆動回路:前記特許文献1に開示されたようなa−Si TFTを3個用いた回路
有機EL素子の発光材料:ポリフルオレン系
なお、図4(A)及び(B)に示す温度特性は、主にa−Si TFTの温度特性に起因するものではあるが、有機EL素子の発光においても温度の影響はあり、有機EL素子の温度特性も含むことは言うまでもない。
【0010】
このように、電圧指定書き込み駆動方式においては、前記特許文献1に開示されているような閾値電圧Vthの変動を補償した電圧指定書き込み駆動方式では、温度が一定の状態での閾値電圧の変動に対する補償はできるものの、このような低温環境下での問題には対処できない。
【0011】
また、a−Si TFTではなく、ポリシリコンを使ったTFTであっても、程度の差はあるが、同様に低温環境下では発光輝度が低下する。
【0012】
更に、電流指定書き込み駆動方式においても、やはりTFTの温度特性の影響は免れないので、低温環境下での発光輝度の低下は見られる。
【0013】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたもので、低温環境下での発光輝度の低下を抑制することが可能な発光装置及びその駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明による発光装置は、
発光素子を有する画素が複数配列された発光パネルと、
前記各画素の前記発光素子を発光させる駆動信号を前記各画素に印加する駆動回路と、
前記発光パネルの温度を制御するための温度制御部と、
前記発光パネルの温度を測定する温度センサと、
前記温度センサで測定した温度に応じて前記温度制御部を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明による発光装置において、
前記温度制御部は前記発光パネルを加温する加温部を有し、
前記制御回路は、前記温度センサで測定した温度が所定の第1の温度以下となったときに前記加温部を動作させ、前記温度センサで測定した温度が所定の第2の温度以上となったときに前記加温部の動作を停止させることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明による発光装置において、
前記制御部は、前記温度センサで測定した温度と前記第2の温度との差分に応じて、前記加温部へ供給する電力の量を制御することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明による発光装置において、
前記加温部は、前記発光パネルの非発光面側に配され、前記複数の画素の配置領域に対応した領域に設けられた面状発熱体であることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明による発光装置において、
前記温度制御部は、更に、前記発光パネルを冷却する冷却部を有し、
前記制御回路は、前記温度センサで測定した温度が前記第2の温度以上となったときに前記冷却部を動作させて、前記発光パネルの温度を下げることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明による発光装置において、
前記各画素は、前記駆動信号に応じた発光駆動電流を前記発光素子に供給する発光駆動素子を有し、
前記駆動信号は電圧信号であることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明による発光装置において、
前記駆動回路は、前記駆動信号の電圧値を、前記温度センサで測定した温度と前記発光駆素子及び前記発光素子の温度特性に基づいて補正することを特徴とする。
また、前記の目的を達成するために、本発明の請求項8記載の発明による発光装置の駆動制御方法は、
発光素子を有する複数の画素が配列された発光パネルを備える発光装置の駆動制御方法であって、
前記各画素の前記発光素子に該発光素子を発光させる駆動信号を印加するステップと、
前記発光パネルの温度を測定するステップと、
前記温度を測定するステップにより測定された温度に応じて、前記発光パネルの温度を制御するステップと、
を含むことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明による発光装置の駆動制御方法において、
前記発光装置は前記発光パネルを加温する加温部を有し、
前記発光パネルの温度を制御するステップは、
前記温度を測定するステップにより測定された温度が所定の第1の温度以下であるときに前記加温部を動作させて前記発光パネルを加温するステップと、
前記温度を測定するステップにより測定された温度が所定の第2の温度以上であるときに前記加温部の動作を停止させて、前記発光パネルの加温を停止させるステップと、
を含むことを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明による発光装置の駆動制御方法において、
前記発光パネルを加温するステップは、前記温度を測定するステップにより測定された温度と前記第2の温度との差分に応じて、前記加温部へ供給する電力の量を制御するステップを含むことを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項9記載の発明による発光装置の駆動制御方法において、
前記発光装置は、更に、前記発光パネルを冷却する冷却部を有し、
前記発光パネルの温度を制御するステップは、前記温度センサで測定した温度が前記第2の温度以上となったときに前記冷却部を動作させて、前記発光パネルの温度を下げるステップを含むことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項10又は11記載の発明による発光装置の駆動制御方法において、
前記画素は前記発光素子に前記駆動信号に応じた発光駆動電流を供給する発光駆動素子を有し、前記駆動信号は電圧信号であり、
前記駆動信号を印加するステップは、前記駆動信号の電圧値を、前記温度を測定するステップにより測定された温度と前記発光駆動素子及び前記発光素子の温度特性に基づいて補正するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、温度センサで測定した温度に応じて発光パネルの複数の画素を加温することにより、低温環境下での発光輝度の低下を抑制することが可能な発光装置及びその駆動制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる一実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
図1(A)は、本発明の一実施形態に係るアクティブマトリクス駆動方式の有機EL表示装置(発光装置)1の概略構成を示す図であり、図1(B)は、該有機EL表示装置1の表示パネル10の側面図である。なお、図1(A)では、表示パネル(発光パネル)10の裏側から見た状態を示している。
【0018】
該有機EL表示装置1は、表示パネル10と制御回路20とからなる。これら表示パネル10と制御回路20とは同一基板上に実装することもできるし、図1(A)に示すように、両者の間をフレキシブル配線シート(FPC)30と複数本のワイヤ配線40とで接続して構成しても良い。別構成とした場合には、例えば折りたたみ式の携帯電話機に適用する場合、制御回路20をダイヤルキー等が配設された本体側に組み込み、表示パネル10を蓋側に組み込んで、本体と蓋を折り畳み自在に結合するヒンジ部にFPC30及びワイヤ配線40を通すことで、容易に適用できる。あるいは、蓋側にFPC30及びワイヤ配線40で折りたたんで、表示パネル10と制御回路20を背中合せにして、蓋側に組み込むような適用も可能である。
【0019】
表示パネル10には、後述するように、自発光素子である有機EL素子と該有機EL素子に発光駆動電流を供給する発光駆動素子である発光制御トランジスタとを有する画素が複数個、二次元に配列されている。なお、表示パネル10は、特に図示はしないが、機械的に保護すると共に、電気的にシールドするための、アルミニウムやステンレス等の金属かなるシールドケースの内部に収納されている。このシールドケースは、通常、表側ケースと裏面側ケースに分かれており、内部に表示パネル10をセットして、両ケースを嵌め合わせて、嵌合させるようになっている。表示パネル10の裏面側や側面側に、緩衝材や位置決めの為の部材が入れられる場合もある。
【0020】
また、表示パネル10の裏面側には、該表示パネル10の複数の画素を加温するための加温部としての熱線ヒータ50と、該表示パネル10の温度を測定するための温度センサ60とが設置されている。ここで、加温部をなす熱線ヒータ50は表示パネル10の温度を制御するための温度制御部をなす。また、温度センサ60としては、例えば、サーミスタ(チップ型)を使用し、表示パネル10の裏側に直接半田実装もしくは、基板上に実装したサーミスタをシールドケース内に配置する。また、熱線ヒータ50としては、例えば、表示パネル10の複数の画素の領域に対応する大きさを持つ耐熱80℃面状発熱体であるポリエステルヒータを使用し、表示パネル10の裏側に熱伝導性接着テープを用いて固定する。
【0021】
図1(C)及び(D)は、この熱線ヒータ50としてのポリエステルヒータの構成の一例を示す正面図及び断面図である。このポリエステルヒータは、アルミニウムやステンレス等の金属箔51を、絶縁材としてのポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート:PET)のカバーフィルム52で挟み込み、厚さ0.1mm程度に形成したものである。
【0022】
なお、熱線ヒータ50としては、このようなポリエステルヒータに限定するものではなく、絶縁材としてポリイミドフィルムを用いた、耐熱温度が200〜250℃のポリイミドヒータ等、表示パネル10の各画素をほぼ均一に加温できるものであれば、どのようなものであっても構わない。また、上記においては、温度制御部が表示パネル10を加温する加温部を備えてなる構成を示したが、本発明はこれに限るものではなく、更に、例えばペルチェ素子や冷却ファンを備えて、表示パネル10を冷却してその温度を下げるための冷却部を備えるものであってもよい。
【0023】
一方、制御回路20は、表示パネル10の各画素の有機EL素子を表示データに応じた輝度で発光させるよう各発光駆動素子を駆動する駆動回路21と、前記温度センサ60で測定した温度に応じて前記熱線ヒータ50を制御する制御部としての制御部22と、を含む。
【0024】
図2(A)は、前記表示パネル10と駆動回路21の電気的な構成の一例を示す図であり、図2(B)は、画素の回路構成の一例を示す図である。
【0025】
図2(A)及び(B)に示すように、表示パネル10は、例えば、行方向(図面左右方向)に配設された複数の選択ラインLsと列方向(図面上下方向)に配設された複数のデータラインLdとの各交点近傍に、画素PIXがn行×m列(n、mは、任意の正の整数)からなるマトリクス状に配列されている。
【0026】
また、駆動回路21は、各選択ラインLsに所定のタイミングで選択信号Sselを印加する選択ドライバ(ケート駆動回路)211と、選択ラインLsに並行して行方向に配設された複数の電源ラインLvに所定のタイミングで所定の電圧レベルの電源電圧(発光駆動電圧)Vccを印加する電源ドライバ(電源駆動回路)212と、各データラインLdに所定のタイミングで階調信号(駆動信号)を供給するデータドライバ(データ駆動回路)213と、後述する表示信号生成回路215から供給されるタイミング信号に基づいて、少なくとも選択ドライバ211、電源ドライバ212及びデータドライバ213の動作状態を制御する選択制御信号及び電源制御信号、データ制御信号を生成して出力するシステムコントローラ214と、例えば該有機EL表示装置1の外部から供給される映像信号に基づいて、デジタル信号からなる表示データ(輝度階調データ)を生成してデータドライバ213に供給すると共に、該表示データに基づいて表示パネル10に所定の画像情報を表示するためのタイミング信号(システムクロック等)を抽出、又は、生成して前記システムコントローラ214に供給する表示信号生成回路215と、を備えて構成されている。
【0027】
本実施形態に適用される画素PIXは、選択ドライバ211に接続された選択ラインLsとデータドライバ213に接続されたデータラインLdとの交点近傍に配置され、例えば図2(B)に示すように、電流駆動型の発光素子である有機EL素子OLEDと、有機EL素子OLEDを発光駆動するため発光駆動電流を生成する画素駆動回路DCと、を備えている。
【0028】
画素駆動回路DCは、例えば、ゲート端子が選択ラインLsに、ドレイン端子が電源ラインLvに、ソース端子が接点N1に各々接続された駆動制御トランジスタTr1と、ゲート端子が選択ラインLsに、ソース端子がデータラインLdに、ドレイン端子が接点N2に各々接続された選択制御トランジスタTr2と、ゲート端子が接点N1に、ドレイン端子が電源ラインLvに、ソース端子が接点N2に各々接続された発光制御トランジスタTr3(発光駆動素子)と、接点N1及び接点N2間(発光制御トランジスタTr3のゲート−ソース端子間)に接続されたキャパシタ(保持容量)Csと、を備えている。
【0029】
また、有機EL素子OLEDは、アノード端子が前記画素駆動回路DCの接点N2に接続され、カソード端子TMcには一定の低電圧である基準電圧Vssが印加されている。
【0030】
なお、トランジスタTr1〜Tr3については、特に限定するものではないが、例えば全てnチャネル型の電界効果型トランジスタにより構成することにより、nチャネル型のa−Si TFTを適用することができる。この場合、すでに確立されたアモルファスシリコン製造技術を用いて、動作特性(電子移動度等)の安定したa−Si TFTからなる画素駆動回路DCを比較的簡易な製造プロセスで製造することができる。
【0031】
有機EL素子OLEDの発光駆動制御は、例えば、一水平走査期間を1サイクルとして、該一水平走査期間内に、特定の選択ラインLsに接続された各画素PIXを選択して表示データの階調値に応じた電圧成分を駆動信号として書き込み、該電圧成分をキャパシタCsに保持する書込動作期間と、該書込動作期間に書き込み保持された電圧成分に基づいて表示データの階調値に応じた発光駆動電流を有機EL素子OLEDに流して、表示データに応じた輝度階調で有機EL素子OLEDを発光させる発光動作期間と、を設定することにより実行されるなお、一水平走査期間=書込動作期間+発光動作期間であり、各行ごとに設定される書込動作期間は、相互に時間的な重なりが生じないように設定される。
【0032】
この有機EL素子OLEDの発光駆動制御の詳細については、前記特許文献1に開示されているので、ここではその説明を省略する。
【0033】
図3は、前記制御部22の動作フローチャートを示す図である。
即ち、制御部22は、当該有機EL表示装置1の動作が開始されると、まず、前記熱線ヒータ50の電源をオフして表示パネル10の加温をしない状態(ステップS0)とした後、前記温度センサ60を動作させて表示パネル10の温度を検知する(ステップS1)。そして、その検知した温度が低温領域の第1の温度T1(例えば0℃)以下であるか否かを判断し(ステップS2)、第1の温度T1よりも高い温度であれば、前記ステップS1に戻る。なお、当該有機EL表示装置が適用される機器が電池駆動の機器である場合、その電池の消耗を抑えるために、所定時間待ってから前記ステップS1に戻り前記温度センサ60を動作させるようにすることが好ましい。
【0034】
前記ステップS2において、検知した表示パネル10の温度が第1の温度T1以下であると判別した場合には、前記熱線ヒータ50の電源をオンして、表示パネル10画素PIXを加温する(ステップS3)。
【0035】
その後、前記温度センサ60を動作させて表示パネル10の温度を検知する(ステップS4)。そして、その検知した温度が室温領域の第2の温度T2(例えば25℃)以上となっているか否かを判断し(ステップS5)、まだ第2の温度T2に達していない温度であれば、前記ステップS14戻る。なお、この場合も、電池の消耗を抑えるために、所定時間待ってから前記ステップS4に戻り前記温度センサ60を動作させるようにすることが好ましい。
【0036】
而して、前記ステップS5において、検知した表示パネル10の温度が第2の温度以上となったと判別した場合には、前記熱線ヒータ50の電源をオフして、表示パネル10の加温を終了する(ステップS6)。そして、前記ステップS1に戻る。なお、この場合も、電池の消耗を抑えるために、所定時間待ってから前記ステップS1に戻り前記温度センサ60を動作させるようにすることが好ましい。なお、有機EL表示装置1が更に表示パネル10の温度を下げるための冷却部を備えているものである場合には、ステップS6において熱線ヒータ50の電源をオフして表示パネル10の加温を終了するとともに、冷却部を動作させて表示パネル10の温度を下げるようにする。
【0037】
以上のような本一実施形態によれば、温度センサ60にて表示パネル10の温度を検知して、低温領域の第1の温度T1(例えば0℃)以下となった場合は、制御部22にて熱線ヒータ50の電源を入れ、表示パネル10を加温するようにしているため、表示パネル10が加温されることにより、当該有機EL表示装置1が低温環境下に配置されても、画素駆動回路DCを構成するTFTが低温の状態になることがなく、よって有機EL素子を流れる発光駆動電流Ielが低下することを防止できるので、表示パネル10の発光輝度の低下を抑制することが可能となる。即ち、低温環境下での有機EL表示パネルの使用において、発光輝度の低下を抑制できる。
【0038】
特に、電圧指定書き込み駆動方式の有機EL表示装置では、低温環境下での発光特性の低下が著しいため、有効である。
【0039】
また、熱線ヒータ50を表示パネル10の複数の画素PIXの領域に対応する面状発熱体とすることで、表示パネル10の画素をほぼ均一に加温することができるので、輝度ムラの発生を抑制することができる。
【0040】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0041】
例えば、図3に示した動作フローチャートは、最も単純な例を示したに過ぎず、表示パネル10の温度が第1の温度T1(例えば0℃)以下にならないようにするための動作であり、上限温度は実質的には制限されていない。
【0042】
より現実的な対応としては、熱線ヒータ50の電源をオン/オフする閾値(第1の温度T1及び第2の温度T2)を0℃及び25℃でなく、例えば、第1の温度T1を室温25℃−ΔTとし、第2の温度T2を25℃とし、ΔTを例えば10℃としてもよく、更には、ΔTを0℃として、第1の温度T1と第2の温度T2を同じ値としてもよい。また、熱線ヒータ50の制御において、熱線ヒータ50に供給する電力を第1の温度T1と第2の温度T2とで単純にオン/オフするのではなく、目標値(例えば第2の温度T2)からの差分に応じて電力を変えるように制御してもよい。例えば差分が大きいときには電力を増加させ、差分が小さいときには電力を減少させることにより、表示パネル10の温度が目標値に達する時間を早めるとともに、目標値以上の温度になることを抑えるようにすることができる。
【0043】
また、温度センサ60を持ち、且つ、温度と輝度の関係が図4(A)のように既知であるので、温度センサ60によって検出された温度に応じて、データドライバ213からデータラインLdに印加する書き込み電圧の値を制御して、表示輝度を一定に近づけるように制御しても良い。
【0044】
なお、前記一実施形態では、データドライバ213から各画素に駆動信号として印加する電圧を調整することにより有機EL素子OLEDに流す発光駆動電流を制御して、所定の輝度階調で発光駆動させる電圧指定書き込み駆動方式の場合を説明したが、データドライバ213から各画素に表示データに応じた電流を駆動信号として供給する電流指定書き込み駆動方式を採る場合でも、同様に適用可能である。
【0045】
また、画素PIXの画素駆動回路DCにおいて、駆動制御トランジスタTr1と選択制御トランジスタTr2と発光制御トランジスタTr3(発光駆動素子)の3つのTFTを用いた場合を説明したが、少なくとも発光制御トランジスタTr3及びキャパシタCsに対応する素子を備え、発光制御トランジスタTr3の電流路が有機EL素子OLEDに直列に接続された構成を有するものであれば、例えば2つのTFTによって構成される回路構成を有するもの、4つ以上のTFTによって構成される回路構成を有するもの等、他の回路構成を有するものであっても良い。
【0046】
また、上記実施の形態においては、表示パネル10を備える有機EL表示装置1に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、要するに、有機EL素子等からなる発光素子を有する複数の画素が配列された発光パネルを備えてなる発光装置に対して好適に適用することができるものであって、例えば、基板上に複数の発光素子がアレイ状に配列された発光素子アレイを備えてなるプリンタヘッドに対しても好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(A)は、本発明の一実施形態に係るアクティブマトリクス駆動方式の有機EL表示装置の概略構成を示す図であり、図1(B)は、該有機EL表示装置の表示パネルの側面図であり、図1(C)及び(D)はそれぞれ熱線ヒータとしてのポリエステルヒータの構成の一例を示す正面図及び断面図である。
【図2】図2(A)は、表示パネルと駆動回路の電気的な構成の一例を示す図であり、図2(B)は、画素の回路構成の一例を示す図である。
【図3】図3は、制御部の動作フローチャートを示す図である。
【図4】図4(A)は、有機EL表示装置の温度−発光輝度特性を示す図であり、図4(B)は、有機EL表示装置の温度−発光駆動電流特性を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1…EL表示装置
10…表示パネル
20…制御回路
21…駆動回路
22…制御部
30…フレキシブル配線シート(FPC)
40…ワイヤ配線
50…熱線ヒータ
51…金属箔
52…カバーフィルム
60…温度センサ
211…選択ドライバ
212…電源ドライバ
213…データドライバ
214…システムコントローラ
215…表示信号生成回路
Ld…データライン
Ls…選択ライン
Lv…電源ライン
Vss…基準電圧
Vcc…電源電圧
PIX…画素
OLED…有機EL素子
TMc…カソード端子
DC…画素駆動回路
Tr1…駆動制御トランジスタ
Tr2…選択制御トランジスタ
Tr3…発光制御トランジスタ
Cs…キャパシタ
N1,N2…接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する画素が複数配列された発光パネルと、
前記各画素の前記発光素子を発光させる駆動信号を前記各画素に印加する駆動回路と、
前記発光パネルの温度を制御するための温度制御部と、
前記発光パネルの温度を測定する温度センサと、
前記温度センサで測定した温度に応じて前記温度制御部を制御する制御回路と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記温度制御部は前記発光パネルを加温する加温部を有し、
前記制御回路は、前記温度センサで測定した温度が所定の第1の温度以下となったときに前記加温部を動作させ、前記温度センサで測定した温度が所定の第2の温度以上となったときに前記加温部の動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサで測定した温度と前記第2の温度との差分に応じて、前記加温部へ供給する電力の量を制御することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記加温部は、前記発光パネルの非発光面側に配され、前記複数の画素の配置領域に対応した領域に設けられた面状発熱体であることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記温度制御部は、更に、前記発光パネルを冷却する冷却部を有し、
前記制御回路は、前記温度センサで測定した温度が前記第2の温度以上となったときに前記冷却部を動作させて、前記発光パネルの温度を下げることを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項6】
前記各画素は、前記駆動信号に応じた発光駆動電流を前記発光素子に供給する発光駆動素子を有し、
前記駆動信号は電圧信号であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記駆動回路は、前記駆動信号の電圧値を、前記温度センサで測定した温度と前記発光駆素子及び前記発光素子の温度特性に基づいて補正することを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
発光素子を有する複数の画素が配列された発光パネルを備える発光装置の駆動制御方法であって、
前記各画素の前記発光素子に該発光素子を発光させる駆動信号を印加するステップと、
前記発光パネルの温度を測定するステップと、
前記温度を測定するステップにより測定された温度に応じて、前記発光パネルの温度を制御するステップと、
を含むことを特徴とする発光装置の駆動制御方法。
【請求項9】
前記発光装置は前記発光パネルを加温する加温部を有し、
前記発光パネルの温度を制御するステップは、
前記温度を測定するステップにより測定された温度が所定の第1の温度以下であるときに前記加温部を動作させて前記発光パネルを加温するステップと、
前記温度を測定するステップにより測定された温度が所定の第2の温度以上であるときに前記加温部の動作を停止させて、前記発光パネルの加温を停止させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の発光装置の駆動制御方法。
【請求項10】
前記発光パネルを加温するステップは、前記温度を測定するステップにより測定された温度と前記第2の温度との差分に応じて、前記加温部へ供給する電力の量を制御するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の発光装置の駆動制御方法。
【請求項11】
前記発光装置は、更に、前記発光パネルを冷却する冷却部を有し、
前記発光パネルの温度を制御するステップは、前記温度センサで測定した温度が前記第2の温度以上となったときに前記冷却部を動作させて、前記発光パネルの温度を下げるステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の発光装置の駆動制御方法。
【請求項12】
前記画素は前記発光素子に前記駆動信号に応じた発光駆動電流を供給する発光駆動素子を有し、前記駆動信号は電圧信号であり、
前記駆動信号を印加するステップは、前記駆動信号の電圧値を、前記温度を測定するステップにより測定された温度と前記発光駆動素子及び前記発光素子の温度特性に基づいて補正するステップを含むことを特徴とする請求項10又は11に記載の発光装置の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−54606(P2010−54606A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216912(P2008−216912)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】