説明

発光装置及び照明器具

【課題】発光装置において、照射面における色ムラを抑制し、光学部材による光の反射を抑制して、光利用効率を向上させる。
【解決手段】発光装置1は、光源2と、光源2の前面に設けられた光学部材3とを備える。光学部材3は、周期1〜50μm、高さ0.5〜5μmの連続する凹凸から成る第1の凹凸部31と、周期100〜300nm、高さ200〜600nmの連続する凹凸から成る第2の凹凸部32とを有する。この構成によれば、第1の凹凸部31によって光学部材3が光を所定の回折角度で回折させるので、照射面における色ムラを抑制することができ、第2の凹凸部32によって光の反射が抑制されるので、光利用効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の前面に光学部材を設けた発光装置及びそれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、LED)は、低電力で高輝度の発光が可能であり、表示等や照明器具等の様々な電気機器の光源として使用されている。近年では、赤色LED及び緑色LEDに加えて、青色LEDが実用化され、これらRGB3色のLEDを組み合わせることにより、様々な光色を発光することができる。
【0003】
また、青色LEDの光を蛍光体に当てて黄色の光を出力し、青色光と黄色光とを混色させて白色光を作り出す、いわゆる白色LEDが知られている。白色LEDは、発光強度及び発光効率において優れ、これを用いた発光装置が、シーリングライト及びベースライトといった光を拡散させる照明器具や、ダウンライト及びスポットライトといった光を集光させる照明器具等に利用されている。
【0004】
上記のような白色LEDを光源とし、LEDの前面に設けられたレンズを用いて平行光を出射する発光装置においては、レンズの結像効果により、照射面に光源像が写ることがある。一般的な白色LEDは、青色LEDチップに黄色蛍光体を含有する透光性樹脂を被覆さた構成となっているので、青色光を出射する領域よりも、黄色光を出射する領域の方が大きい。そのため、図24(a)に示すように、白色LED102から出射された光を、レンズ103を用いて青色光(実線矢印)を平行光とした場合、青色光が照射面の中央部に照射され、黄色光が周辺部に照射されて、照射面において色ムラが生じる。また、図24(b)に示すように、白色LED102から出射された光を、レンズ103によって黄色光(破線矢印)を平行光とした場合も、上述の場合と同様である。更に、図24(c)に示すように、屈折反射レンズ103を用いて、青色光及び黄色光の両方を平行光とした場合も、照射面において色ムラが生じる。
【0005】
そこで、複数の凸レンズが出射面に形成された反射レンズを用いて、光を拡散させることにより、色ムラを抑制することができる発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のレンズ等の光学部材は、光源からの光をレンズ表面で反射してしまい、発光装置の光利用効率を低下させることがある。そこで、光学素子表面に微小凹凸部が形成された光学部材を用いて、光の反射を抑制した発光装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−265964号公報
【特許文献2】特開2006−130841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発光装置は、照射光を拡散させるので、レンズの集光効果が抑制され、特にスポットライト等の照明器具に用いられる発光装置には適していない。また、このものは、レンズによって漏れ光や戻り光が発生し易く、光利用効率が低下する虞がある。また、上記特許文献2に記載の発光装置は、レンズの入射角度の依存性が大きく、入射角度が大きくなると所望の反射抑制効果が得られないことがある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、照射面における色ムラを抑制することができ、且つ光学部材による光の反射を抑制して、光利用効率を向上させることができる発光装置及びそれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る発光装置は、光源と、前記光源の前面に設けられた光学部材とを備え、前記光学部材は、周期1〜50μm、高さ0.5〜5μmの連続する凹凸から成る第1の凹凸部と、周期100〜300nm、高さ200〜600nmの連続する凹凸から成る第2の凹凸部とを有することを特徴とする。
【0010】
上記発光装置において、前記第2の凹凸部は、前記第1の凹凸部の1周期を構成する凹凸に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部は、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状であることが好ましい。
【0012】
上記発光装置において、前記第2の凹凸部は、前記第1の凹凸部の斜辺部に形成されていることが好ましい。
【0013】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部は、前記光学部材の前記光源と対向する面とは反対側の面に設けられていることが好ましい。
【0014】
上記発光装置において、前記光源は、第1の分光分布を有する光を発光する固体発光素子と、前記固体発光素子の光を受けて第2の分光分布を有する光を発光する波長変部材と、を備え、前記第1の分光分布のピーク波長が、430〜460nmの範囲にあり、前記第2の分光分布のピーク波長が、550〜600nmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
上記発光装置において、前記第2の凹凸部が、前記光学部材の前記光源と対向する面に設けられていることが好ましい。
【0016】
上記発光装置において、前記光源が実装される基板と、前記光源からの出射光の配光を制御する透光性部材と、を備え、前記透光性部材は、前記光源の発光領域の略中心部を通る直線と直交する出射面と、前記出射面の外周から前記基板に向かって凸状に延びる反射面と、前記反射面の前記基板側から前記出射面側に折り返す側方入射面と、前記側方入射面の前記反射面と接していない端部をつなぐ上方入射面と、から構成され、前記出射面に前記光学部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
上記発光装置において、第2の凹凸部は、その凸部の中心線が、前記光源からの出射光の光軸と略平行となるように形成されていることが好ましい。
【0018】
上記発光装置において、前記光学部材は、前記第1の凹凸部が形成されていない領域を有し、該領域に前記第2の凹凸部が形成されていることが好ましい。
【0019】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部は、その頂点部に、前記第2の凹凸部の1周期よりも幅が大きく、前記第2の凹凸部の高さよりも高くなるように形成された凸状部を有することが好ましい。
【0020】
上記発光装置において、前記凸状部は、断面形状において基端部から頂点部へ先細りとなる台形形状になるように形成されていることが好ましい。
【0021】
上記発光装置において、前記凸状部は、断面形状において高さ0.5〜1.0μm、基端部の幅が0.25〜0.5μmであることが好ましい。
【0022】
上記発光装置において、前記凸状部は、前記第1の凹凸部において、数周期毎に形成されていることが好ましい。
【0023】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部は、連続する凹凸の一部が平坦に形成された平坦面を有することが好ましい。
【0024】
上記発光装置において、前記平坦面の高さは、前記第1の凹凸部の頂点部の高さよりも低いことが好ましい。
【0025】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部の1周期における前記平坦面が形成されている領域の割合は、30%以下であることが好ましい。
【0026】
上記発光装置において、前記第1の凹凸部の1周期における前記平坦面が形成されている領域の割合は、前記光学部材の中央領域の方が外側の領域よりも小さいことが好ましい。
【0027】
上記発光装置は、照明器具に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1の凹凸部によって光学部材が光を所定の回折角度で回折させるので、照射面における色ムラを抑制することができ、また、第2の凹凸部によって光の反射が抑制されるので、光利用効率向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発光装置の側断面図。
【図2】(a)は同発光装置に用いられる光学部材の斜視図、(b)は同光学部材の第2の凹凸を拡大した側断面図。
【図3】同発光装置に用いられる光源の側断面構成図。
【図4】同光源からの出射光の分光スペクトルを示す図。
【図5】(a)(b)は同発光装置に用いられる光学部材の一例における第1の凹凸部の作用を示す側断面図。
【図6】(a)は同光学部材による波長別の回折効率を示す図、(b)は同回折角度を示す図。
【図7】(a)(b)は同光学部材の一例における第1の凹凸部の作用を示す側断面図。
【図8】(a)(b)は同光学部材の一例における第1の凹凸部の作用を示す側断面図。
【図9】(a)は同光学部材における第1の凹凸部の周期及び高さを変化させたときの出射光の直下照度を示す図、(b)は同色差を示す図。
【図10】(a)は上記実施形態の変形例を示す側断面図、(b)は(a)の一部を拡大した側断面図。
【図11】同光学部材の波長別の積算透過率を示す図。
【図12】(a)(b)は同光学部材において第2の凹凸部の周期が200nmであり、高さを変化させたときの入射角度別の透過率を示す図、(c)(d)は同周期が300nmであるときの入射角度別の透過率を示す図、(e)(f)は同周期が400nmであるときの入射角度別の透過率を示す図。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る発光装置に組み込まれる光学部材の側断面図。
【図14】(a)は同光学部材における波長450nmの光の入射角度別の透過率を示す図、(b)は波長550nmの光の入射角度別の透過率を示す図。
【図15】(a)(b)は本発明の第3の実施形態に係る発光装置の側断面図。
【図16】同発光装置の一部を拡大した側断面図。
【図17】本発明の第4の実施形態に係る発光装置の側断面図。
【図18】本発明の第5の実施形態に係る発光装置の側断面図。
【図19】上記実施形態の変形例を示す側断面図。
【図20】上記実施形態の別の変形例を示す側断面図。
【図21】本発明の第6の実施形態に係る発光装置の側断面図と回折光を示す図。
【図22】(a)は同発光装置の光学部材の側断面図、(b)は上記第3の実施形態における波長別の回折効率を示す図、(c)は上記第6の実施形態による波長別の3次の回折効率を示す図、(d)同波長別の0次の回折効率を示す図。
【図23】(a)は同発光装置の変形例における光学部材の上面図、(b)は(a)のA1領域における側断面図、(c)は(a)のA2領域における側断面図。
【図24】(a)乃至(c)は従来の発光装置において、照射面における色ムラの発生を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る発光装置について、図1〜図12を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、図1に示されるように、光源2と、この光源2の前面に設けられた光学部材3とを備える。光源2は、青色領域の光を出射するLEDチップ21に、黄色蛍光体を含有する透光性樹脂から成る波長変換部材22を被覆させた構成となっている。光学部材3は、アクリル樹脂、ポリカーボネート又はガラス等の透光性材料を用いて、後述する形状に形成加工されたレンズ部材である。また、発光装置1は、光源2及び光学部材3を所定間隔に保持する保持部材(不図示)を備え、この保持部材に収容された状態でスポットライト等の照明器具に組み込まれる。
【0031】
光学部材3は、光源2と対向する面とは反対側の面に、周期的に連続する凹凸から成る第1の凹凸部31が設けられている。この第1の凹凸部31は、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状の凹凸として形成される。また、第1の凹凸部31の1周期を構成する凹凸、本例では、第1の凹凸部31の斜辺部に、第1の凹凸部31を構成する1周期の凹凸よりも小さい周期で連続する凹凸から成る第2の凹凸部32が形成されている。なお、図1においては、第1の凹凸部31及び第2の凹凸部32のサイズを、実際の光学部材3全体のサイズに比べて過大に表記している。第1の凹凸部31は、周期(d1)が1〜50μm、高さ(h1)0.5〜5μmとなるように形成される。第2の凹凸部32は、図2(a)に示すように、三角錐形状に形成された連続する凹凸である(図1も参照)。また、図2(b)に示すように、第2の凹凸部32は、周期(d2)100〜300nm、高さ(h2)200〜600nmとなるように形成される。
【0032】
図3に示すように、光源2は、断面矩形状のマウント基材20と、マウント基材20上に実装された固体発光素子(LEDチップ)21と、LEDチップ21を被覆する波長変換部材22と、を備える。LEDチップ21には、青色光を放射するGaN系青色LEDチップが用いられる。波長変換部材22は、シリコーン樹脂等の透光性樹脂材料から成る充填材23に、LEDチップ21からの出射光の波長を変換する蛍光体24を含有させたものである。また、マウント基材20の一側面にはカソード電極25が、他側面にはアノード電極26が設けられ、マウント基材20の下面両端部に形成された外部接続電極27,28に夫々接続される。また、カソード電極25及びアノード電極26は、ワイヤ29によってLEDチップ21の各電極端子(不図示)に夫々接続される。マウント基材20の実装面は、光反射又は光拡散機能を有するように構成されていてもよい。蛍光体24には、黄色蛍光体として汎用されるYAG系蛍光体が樹脂材料に混練され、所定形状の波長変換部材22が作成される。なお、蛍光体24に加えて、又はそれに換えて所定の波長の光を選択的に透過させることによってLED2の出射光の波長を変換するフィルタ(不図示)が用いられてもよい。
【0033】
図4は、上述のように構成された光源2の出射光の分光スペクトルを示す。光源2は、LEDチップ21から出射される第1の分光分布を有する光と、LEDチップ21の光を受けて、波長変換部材22から出射される第2の分光分布の光とを混色させることにより、白色光を出射する。LEDチップ21に起因する第1の分光分布のピーク波長は430〜460nm(紫〜青)の範囲、波長変換部材22に起因する第2の分光分布のピーク波長は550〜600nm(緑〜黄)の範囲となることが好ましい。これらの光を混色することにより、自然な白色光を得ることができる。しかしながら、LEDチップ21は、マウント基材20の中央領域に設けられ、このLEDチップ21を覆うように波長変換部材22が設けられている。そのため、光源2の中央領域からの出射光は、第1の分光分布の光の強度が強く、周辺領域から出射光は第2の分光分布の光の強度が強くなる。
【0034】
光学部材3は、上述したように、周期1〜50μm、高さ0.5〜5μmの連続する凹凸から成る第1の凹凸部31と、周期100〜300nm、高さ200〜600nmの連続する凹凸から成る第2の凹凸部32とが形成されている。このような第1の凹凸部の周期及び高さは、下記式によって与えられる。
【0035】
【数1】

【0036】
上記式において、光学部材3による回折光の次数をm=−5〜5(m≠0)とし、光源2からの出射光の波長を可視光(λ=380〜780nm)の範囲で変化させ、回折角度を−90?≦θout≦90?とする。この場合、第1の凹凸部31の周期は、1〜50μmの範囲に設定される。また、上記と同様の条件において、光学部材3の屈折率をn=1.3〜2の範囲で変化させる。この場合、第1の凹凸部31の高さが0.5〜5μmの範囲に設定される。第1の凹凸部31の周期及び高さが、上記の範囲に設定されることにより、発光装置1において想定される可視光を十分に制御することができる。
【0037】
第1の凹凸部31に可視光が入射したときの波長別のふるまい、すなわち光学部材3の出射光における回折角度及び回折効率は、スカラー理論より下記式によって与えられる。なお、スカラー理論は誤差を含む簡易的な解析手法であり、第2の凹凸部32が無くても回折効率が100%に達するという矛盾がある。より正確な回折効率の導出方法であるベクトル理論による解析結果については後述する。
【0038】
【数2】

【0039】
図5(a)(b)は、第1の凹凸部31の周期(d1)を10μm、高さ(h1)を2.3μm、光学部材3の屈折率(n)を1.5とし、この光学部材3によって波長450nm,550nmの平行光がどのように回折されるか、夫々の光のふるまいを示す。なお、以下の説明において、第1の凹凸部31が上記周期及び高さになるよう形成されたものを光学部材3Aという。また、第2の凹凸部32の具体的な作用については別途後述する。図5(a)に示すように、波長450nmの光は、光学部材3Aによって回折光を生じ、3次光の回折効率が49.75%と最も高くなり、この3次光の回折角度は7.76°であった。次いで、2次光の回折効率が31.8%と高く、2次光の回折角度は5.16°であった。波長450nmの光において、光学部材3Aによる回折光の多くは、2次光と3次光に集中した。一方、図5(b)に示すように、波長550nmの光は、光学部材3Aによって回折光を生じ、この回折光は、2次光の回折効率が97.3%であり、回折角度は6.32°であった。つまり、光学部材3Aによれば、波長450nmの光が回折角度5.16〜7.76°で照射され、波長550nmの光が回折角度6.32°で照射される。つまり、波長450nmの光と波長550nmの光とは、照射面における近接した座標に照射されることになる。その結果、波長450nmの光と波長550nmの光とが効果的に混色されるので、発光装置1は、照射面において色ムラを生じることなく、自然な白色光を照射することができる。
【0040】
図6(a)は、上述した光学部材3Aにおける波長別の回折効率を示す。光学部材3Aによれば、波長380〜550nmの光は、殆どが2次光(m=2)又は3次光(m=3)に回折され、上記範囲において、低波長側ほど3次光の占める割合が多くなり、高波長側ほど2次光の占める割合が多くなる。また、波長550〜780nmの光は、殆どが2次光(m=2)又は1次光(m=1)に回折され、上記範囲において、低波長側ほど2次光の占める割合が多くなり、高波長側ほど3次光の占める割合が多くなる。なお、同図においては、上記図5(a)で示した波長450nmの光の回折効率を黒丸点(●)で、上記図5(b)で示した波長550nmの光の回折効率を白丸点(○)で示す。
【0041】
図6(b)は、上述した光学部材3Aにおける波長別の回折角度を示す。回折角度は、いずれの次数の回折光においても、高波長側ほど大きくなる。ここでも、上記図5(a)で示した波長450nmの光の回折角度を黒丸点(●)で、上記図5(b)で示した波長550nmの光の回折角度を白丸点(○)で示す。つまり、光学部材3Aによれば、波長550nmの光の回折光が、波長450nmの光の回折角度の範囲に含まれるので、各波長の光が効果的に混色され、照射面において色ムラを生じ難くすることができる。
【0042】
図7(a)(b)は、第1の凹凸部31の周期(d1)を1μm、高さ(h1)を0.5μm、光学部材3の屈折率(n)1.5とした光学部材3Bによって波長450nm,550nmの平行光がどのように回折されるか、夫々の光のふるまいを示す。つまり、光学部材3Bによって、波長450nm及び波長550nmの光は、主に0次光及び1次光として回折され、上記光学部材3Aと同様に、照射面の近接した座標に照射される。また、図8(a)(b)は、第1の凹凸部31の周期(d1)を50μm、高さ(h1)を5.0μm、光学部材3の屈折率(n)1.5とした光学部材3Cによって波長450nm,550nmの平行光がどのように回折されるか、夫々の光のふるまいを示す。つまり、光学部材3Cによって、波長450nm光は主に5次光及び6次光に、波長550nmの光は主に4次光及び5次光として回折され、上記光学部材3A,3Bと同様に、照射面の近接した座標に照射される。
【0043】
図9(a)(b)は、第1の凹凸部31の周期を10〜50μm、高さを0.3〜4.5μmの範囲でパラメータを変化させて、光学部材3から500mm離れた照射面の照度分布を計算した解析結果を示す。なお、この結果は、後述する図15に示すような透光性部材を用いて、光学部材3へ平行光を入射させた構成に基くものである。図9(a)は、中心照度値(=直下照度)示し、最大照度値を100としたときの、上記周期及び高さにおける照度値を100から30の範囲で、(A)〜(H)の8段階に分けて表示している。同図に示すように、第1の凹凸部31の周期が大きく、且つその高さが小さいほど(図中(A)領域)、直下照度は大きくなる。これに対して、第1の凹凸部31の周期が小さく、且つその高さが大きいほど(図中(H)領域)、直下照度は小さくなる。
【0044】
図9(b)は、照射面の最大色差を示し、色差(Δxy)を0から0.056の範囲で(A)〜(I)の9段階に分けて表示している。色差の値が小さいほど、照射面における色ムラは少なくなる。同図に示すように、第1の凹凸部31の周期が小さく、且つその高さが大きいほど(図中(I)領域)、色差は大きくなる。しかし、第1の凹凸部31の周期が大きく、且つその高さが小さい程、色差は小さくなるのではなく、最も色差が小さい(A)領域は、周期10〜30μm、高さ1500nm(1.5μm)〜3800nm(3.8μm)に分布している。すなわち、直下照度を高くするためには、第1の凹凸部31の周期を大きく、且つその高さを小さくすればよいが、色ムラを抑制するためには、ある程度、第1の凹凸部31の周期を小さく、且つその高さを大きくする必要がある。従って、直下照度の低下を抑制し、且つ色ムラを改善するには、図9(a)(b)の一対の平行破線で挟まれる領域に第1の凹凸部31の周期及び高さを設定することが好ましく、周期5〜40μm、高さ1.5〜3.8μmの範囲に設定することが特に好ましい。
【0045】
図10(a)(b)は、本実施形態の変形例を示す。上述の図1においては、第1の凹凸部31が、光学部材3の光源2と対向する面とは反対側の面に設けられている構成を示したが、図10(a)に示す変形例のように、第1の凹凸部31は、光学部材3の光源2と対向する面に設けられていてもよい。この変形例においても、上述した構成と同様に、照射面における色ムラを抑制することができる。しかしながら、この変形例においては、第1の凹凸部31が、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状の凹凸である場合、光源2から出射された光の一部は、図10(b)に示すように、垂辺部に入射する。この垂辺部に入射した光は、第1の凹凸部31によって、所望の方向に光制御できないので、結果として、照射光として利用されず、発光装置1の光利用効率を低下させることになる。従って、上述した図1に示したように、第1の凹凸部31は、光学部材3の光源2と対向する面とは反対側の面に設けられていることが好ましく、こうすれば、発光装置1における光利用効率を高くすることができる。
【0046】
図11は、第1の凹凸部31の1周期を構成する凹凸に、第2の凹凸部32が形成されている光学部材3における波長別の積算透過率(=各回折次数の回折効率の総和)について、結果が正確なベクトル理論による解析結果を示す。なお、比較例として、第1の凹凸部31のみが形成され、第2の凹凸部32が形成されていない光学部材における波長別の積算透過率の解析結果も示す。ここで用いられる光学部材3は、図5に示したように、第1の凹凸部31が周期(d1)16μm、高さ(h1)2.6μm、屈折率1.5となるように設定されている。また、第2の凹凸部32は、周期(d2)100nm、高さ(h2)200nmとなるように設定されている。
【0047】
同図に示すように、第1の凹凸部31に第2の凹凸部32を設けた光学部材3は、第1の凹凸部31のみの場合に比べて、積算透過率が1〜2%程向上した。つまり、第1の凹凸部31に第2の凹凸部32を設けることにより、光学部材3は光を効果的に透過することができ、全反射等による光の損失を抑制することができる。従って、この光学部材3を備えた発光装置1の光利用効率、及びこれを組み込んだ照明器具の器具効率を向上させることができる。
【0048】
図12(a)〜(f)は、周期及び高さの異なる第2の凹凸部32を有する光学部材3に対して、波長450nmの光を、所定の入射角度で照射したときの、0次光及び−1次光の透過率を示す。第2の凹凸部32の周期は200nm、400nm又は300nmの3段階に設定され、夫々高さが20〜1500nmの範囲で8又は9段階に設定された。図12(a)に示すように、周期200nmの第2の凹凸部32においては、高さが大きくなるほど、0次光の透過率が高くなり、入射角度が大きくなるほど、いずれの高さにおいても、透過率は低下した。また、図12(b)に示すように、周期200nmにおいて、回折光は発生しなかった。
【0049】
図12(c)に示すように、周期300nmの第2の凹凸部32においても、高さが大きくなるほど、0次光の透過率が高くなり、入射角度が大きくなるほど、透過率は低下した。特に、入射角度が45°以上の光の透過率は著しく低下した。これは、図12(d)に示すように、回折光が生じたことによる。回折光は、第2の凹凸部32の周期が大きくなるほど、発生し易くなる。図12(e)(f)に示すように、周期400nmの場合、高さ及び入射角度によっては、回折光が直射光よりも多くなるケースがあった。第2の凹凸部32に起因する回折光は、第1の凹凸部31による所望の色ムラ抑制効果を阻害する虞がある。従って、第2の凹凸部32の周期の上限値は、回折光を生じ難い300nm以下とされる。また、第2の凹凸部32の周期は、理論上は小さいほど透過率を向上させることができる。しかし、現実的には、周期100nm以下であると、金型による射出成形を行なうことができず、光学部材3の生産性が悪くなる。従って、透過率の向上と加工形成の実現性を鑑みれば、第2の凹凸部32の周期は、100〜300nmであることが好ましい。
【0050】
また、第2の凹凸部の高さは、高いほど透過率が向上するが、高すぎると加工成形が困難となる。従って、透過率の向上と加工形成の実現性を鑑みれば、第2の凹凸部32の高さは、200〜600nmであることが好ましい。なお、第2の凹凸部32に関して、現実的に加工成形できる形状は、高さ(h2)/周期(d2)のアスペクト比によって決定される(図2(b)参照)。現状の加工技術において成形できるアスペクト比は1〜3、好ましくは2程度であり、第2の凹凸部32は、周期100〜300nm、高さ200〜600nmの範囲において、アスペクト比が上記範囲となるように形成される。
【0051】
上述した構成によれば、第1の凹凸部31によって光学部材3が光を所定の回折角度で回折させるので、照射面における色ムラを抑制することができ、しかも、第2の凹凸部32によって光の反射が抑制されるので、光利用効率向上させることができる。また、上述した解析結果に示されるように、第1の凹凸部31の周期及び高さを上述した範囲に設定することにより、可視光を全般的に回折させると共に、照射面における色ムラを効果的に抑制することができる。また、第2の凹凸部32の周期及び高さを、上述した範囲に設定することにより、透過率に対する入射角度の依存性が少なくなり、光利用効率を向上させることができる。従って、この光学部材3を光源2の前面に設けることにより、発光装置1を組み込んだ照明器具の器具効率を向上させることができると共に、照射面における色ムラを抑制し、自然な光色の光を照射することができる。
【0052】
ところで、レンズ表面に微小な孔部を多数設けることにより、その表面における光の反射を抑制する技術が知られている。しかし、孔部の孔径が100nm以下であると、金型による射出成形を現実的に行なうことができない。そこで、この種のレンズ孔部は、電子ビーム描画装置等を用いてレンズ表面に形成される。しかし、このような形成方法では、生産性が悪く、高コスト化の原因となる。これに対して、本実施形態の光学部材3は、金型による射出成形により製造することができるので、生産性をよくすることができる。また、光学部材3の材料は、所定の屈折率を有する透光性材料であれば、特に限定されないので、原料の調達が容易になり、また、製品のコストダウンをすることができる。
【0053】
また、第1の凹凸部31の形状として、鋸歯形状を用いることにより、波長により光の進行方向を任意に制御することができるので、照射面における色ムラを効果的に抑制することができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について、図13及び図14を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、図13に示すように、第2の凹凸部32が、光学部材3の光源2と対向する面(図1参照)に設けられているものである。図14(a)(b)は、第2の凹凸部32の周期を100nm、高さを10〜600nmの範囲で5段階に変化させた光学部材3に対して、波長450nm及び550nmの平行光を入射させたときの透過率について、ベクトル理論による解析結果を示す。これらの結果は、上述した図11の結果と同様である。すなわち、光学部材3の光源2と対向する面に、第2の凹凸部32を設けることにより、この表面における反射が低減されるので、光学部材3による利用光を多くすることができ、光利用効率を更に向上させることができる。
【0055】
なお、従来から、光学部材の表面における光の反射を抑制するものとして、低屈折率材料を用いた反射防止膜や、屈折率の異なる材料を積層させた多層膜を用いることが知られている。しかし、これらのものは入射角度の依存性が大きく、また、波長依存性が高いものが多く、所望の反射抑制効果を得られないことがあった。これに対して、本実施形態の発光装置1に用いられる光学部材3は、図14(a)(b)に示すように、いずれの波長においても少なくとも入射角度75°以下の光を透過するので、入射角度依存性及び波長依存性を低くすることができ、より多くの光を利用することができる。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態について、図15及び図16を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、図15(a)(b)に示すように、光源2が実装される基板4と、光源2からの出射光の配光を制御する透光性部材5と、を備えるものである。透光性部材5は、出射面51と、反射面52と、側方入射面53と、上方入射面54と、から構成される。出射面51は、光源2の発光領域の略中心部を通る直線と直交する面である。反射面52は、出射面51の外周から基板4に向かって凸状に延びる面であり、基板4方向に凸形状の湾曲面から成る。側方入射面53は、反射面52の基板4側から出射面51側に折り返す面であり、光出射方向に先細りとなる筒状面から成る。上方入射面54は、側方入射面53の反射面52と接していない端部をつなぐ面であり、光源2方向に凸形状の湾曲面から成る。出射面51に光学部材3が設けられる。この光学部材3は、上記第1の実施形態と同様のものであり、図16示すように、第1の凹凸部31及び第2の凹凸部32が形成されている。
【0057】
光源2から出射された光のうち、上方入射面54に入射した光は、この界面で屈折されて光源2の実装面(基板4)の法線に平行な平行光となり、出射面51に対して垂直に入射する。また、側方入射面53に入射した光は、この界面で屈折される、更に反射面52で全反射されて平行光となり、出射面51に対して垂直に入射する。そして、これら出射面51から出射した平行光が、光学部材3に入射し、第1の凹凸部31の作用により回折光として出射される。なお、図15(b)の断面図においては、光の経路を示すため、ハッチングの記載を省略している。
【0058】
この構成によれば、透光性部材5によって光学部材3に平行光が入射するので、第1の凹凸部31及び第2の凹凸部32の入射角度依存性を低減することができ、照射面における色ムラをより抑制することができると共に、光利用効率を向上させることができる。また、透光性部材5の側方入射面53及び上方入射面54によって、光源2からの出射光を効率的に光学部材3へ導出することができるので、光利用効率を更に向上させることができる。
【0059】
また、透光性部材5によって光学部材3に平行光を生成すると共に、第1の凹凸部31の形状として、鋸歯形状を周期的に連続させた形状を用いれば、連続する凹凸の1つを解析するだけでよいので、第1の凹凸部31の設計を簡易にすることができる。
【0060】
本実施形態において、第2の凹凸部32は、図16の拡大図に示すように、その凸部の中心線が、光源2からの出射光の光軸Lと略平行となるように形成されていることが好ましい。第2の凹凸部32のような、ナノサイズの光学構造体は、光線の入射方向に対して対称な形状とすることにより、反射率を最も低減することができる。従って、図例のような第2の凹凸部32を有する光学部材3を用いることにより、各凸部には、光軸方向に最も光度が高い角度強度分布の光線が到達するので、トータルとして反射率をより効果的に低減することができる。
【0061】
次に、本発明の第4の実施形態に係る発光装置1について、図17を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、光学部材3が、第1の凹凸部31が形成されている領域Bと、第1の凹凸部31が形成されていない領域Aを有し、この領域Aに第2の凹凸部32が形成されているものである。また、第2の凹凸部32は、B領域の第1の凹凸部31の1周期を構成する凹凸にも形成されている。図17の断面図においても、光の経路を示すため、一部、ハッチングの記載を省略している。
【0062】
上述したように、光源2は、LEDチップ21と波長変換部材22とを組み合わせて作成されているので、光の出射方向によって、色ムラを発生させる方向依存性が異なる。具体的には、光源2の光軸方向(正面方向)ほど、色ムラを発生させる方向依存性が強く、これに対して、光源2の放射方向(周辺方向)ほど、この方向依存性が弱くなる。上述した透光性部材5によれば、上方入射面54に入射した光は、出射面51の中央領域から出射されるが、側方入射面53の上方に入射した光は、側方入射面53の下方に入射した光よりも、出射面51の外周領域から出射される。すなわち、透光性部材5の出射面51においては、中央領域及び周縁領域から方向依存性の強い光が出射され、中央領域と周縁領域との間の領域からは、比較的、方向依存性の弱い光が出射される。
【0063】
そこで、光学部材3において、色ムラを発生させる方向依存性の強い光が入射される箇所(領域B)に、第1の凹凸部31を設けることにより、色ムラを抑制する。一方、第1の凹凸部31は、僅かながら透過率を低下させる。そこで、方向依存性の弱い光が入射される箇所(領域A)には、第1の凹凸部31を設けなくても、色ムラは発生し難いので、透過率を向上させる第2の凹凸部32のみを設ける。この構成によれば、光学部材3における透過率の低下を抑制して、光利用効率を向上させることができると共に、照射面における色ムラを効果的に抑制することができる。
【0064】
次に、本発明の第5の実施形態に係る発光装置1について、図18を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、光学部材3において、第1の凹凸部31が、その頂点部に、第2の凹凸部32の1周期よりも幅が大きく、第2の凹凸部32の高さよりも高くなるように形成された凸状部33が設けられているものである。本例においては、上記第1の実施形態と同様に、第1の凹凸部31が、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状として形成され、斜辺部に第2の凹凸部32が形成されると共に、垂直辺の延長方向に凸状部33が設けられる。凸状部33は、その両側を構成する2面が、鋸歯状のなった第1の凹凸部31の垂辺部と平行であり、これら2面をつなぐ面が平坦面となるように構成されている。
【0065】
上述した実施形態において、第1の凹凸部31及び第2の凹凸部32は、光学部材3の光源2と対向する面とは反対側の面、すなわち光出射面に設けられている。この構成においては、光学部材3を備えた発光装置1が照明器具に組み込まれた状態で、第1の凹凸部31及び第2の凹凸部32が露出することになる。そのため、光学部材3の光出射面が、物理的な接触や圧力に曝されることがある。しかし、第2の凹凸部32はナノオーダーの凹凸であり、外部からの物理的な力によって容易に破壊される。第2の凹凸部32が破壊されると、反射防止機能が損なわれ、光利用効率が低下する。
【0066】
そこで、本実施形態においては、第1の凹凸部31の頂点部に、上記凸状部33を設けることにより、外部からの物理的な力が、第2の凹凸部32に届かないようにすることにより、第2の凹凸部32を保護し、光利用効率の低下を抑制することができる。
【0067】
次に、本実施形態の変形例について、図19を参照して説明する。この変形例では、光学部材3の凸状部33が、断面形状において基端部から頂点部へ先細りとなる台形形状になるように形成されているものである。本例では、断面形状において、凸上部33の一方の辺が、鋸歯状に形成された第1の凹凸部31の垂辺部とつながる垂辺として構成され、凸上部33の他方の辺が、第2の凹凸部32につながる斜辺として構成されたものを示す。
【0068】
上述した実施形態においては、凸状部33の両側を構成する2面のうち、第2の凹凸部32と隣接する1面が、鋸歯状に形成された第1の凹凸部31の垂辺部と平行である。そのため、第2の凹凸部32から出射した光の一部が、凸状部33の側面で反射して、有効光として利用されないことがある。これに対して、この変形例においては、第2の凹凸部32と隣接する面を傾斜面としているので、この面による反射が低減され、光利用効率を向上させることができる。
【0069】
凸状部33は、断面形状において高さ0.1〜1.0μm、基端部の幅が0.25〜0.5μmであることが好ましい。この形状であれば、第2の凹凸部32を保護するのに十分な強度を確保することができる共に、光利用効率の低下を抑制することができる。
【0070】
次に、上記変形例の更なる変形例について、図20を参照して説明する。この変形例では、光学部材3の凸状部33が、第1の凹凸部32において、数周期毎に形成されているものである。言い換えると、凸状部33は、第1の凹凸部32を構成する凹凸毎には形成されず、数周期の間隔をあけて形成されている。第1の凹凸部31の1周期は1〜50μmであり、光学部材3に接触する可能性がある人の指や爪等のサイズよりも遥かに小さい。従って、凸状部33は、第1の凹凸部32の数周期毎に形成されてれば、第2の凹凸部32を保護することができ、しかも凸状部33を設けたことによる光利用効率の低下を最低限に抑制することができる。
【0071】
次に、本発明の第6の実施形態に係る発光装置1について、図21を参照して説明する。本実施形態の発光装置1は、第1の凹凸部32が、連続する凹凸の一部が平坦に形成された平坦面34を有するものである。本例においては、上記第1の実施形態と同様に、第1の凹凸部31が、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状として形成される一方、上記第1の実施形態よりも、斜辺部が短く、且つ垂辺部が低く形成され、平坦面34が、垂辺部と斜辺部との間に設けられる。斜辺部には第2の凹凸部32が形成されているが、平坦面34には第2の凹凸部32が形成されていない。また、平坦面34は、その高さが、第1の凹凸部31の頂点部の高さよりも低くなるように形成されている。平坦面34の高さは、図21(a)に示すように、第1の凹凸部31の斜辺部の最も低い位置と同じ高さであってもよい。また、平坦面34の高さは、図21(b)に示すように、第1の凹凸部31の斜辺部の最も高い位置と同じ高さで、且つ第2の凹凸部32より低い位置であってもよい。このように構成された光学部材3に光が入射すると、斜辺部及び垂辺部から成る凹凸が形成されている領域からは、高次(2次以上)の回折光が出射され、平坦面34からは低次(0次、±1次)の回折光が出射される。
【0072】
上述した第1の実施形態においては、第1の凹凸部31を設けることにより、回折光を利用して色ムラを解消しているが、光を所定角度で回折させることによって、直下照度が僅かに低下することがある。これに対して、本実施形態においては、上述したように、平坦面34を設けることによって、色ムラの改善に寄与する高次の回折光を抑制し、抑制された光を直下照度に寄与する低次の回折光に充当させて、直下照度を増加させる。これにより、直下照度と色ムラの両方を改善させることができる。また、図21(b)に示したように、平坦面34の高さを低くすれば、光学部材3の容積を小さくすることができ、光学部材3を形成する際に用いられる樹脂材料の使用量を削減することができる。
【0073】
また、本実施形態の発光装置1において、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34が形成されている領域の割合(d3/d1)は、30%以下であることが好ましく、10〜20%程度であることがより好ましい。
【0074】
ここで、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34の割合と回折光の関係について、図22を参照して説明する。図22(a)に示すように、第1の凹凸部31の1周期d1に対する平坦部の形成された領域の長さをd3とし、第1の凹凸部31の1周期d1に対する凹凸(図例では斜辺部)の形成された領域の長さをd4とする。第1の凹凸部31の1周期d1に対する平坦面34の割合(d3/d1)を増やすことにより、直下照度を改善することができる。図22(b)(c)(d)は、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34の割合(d3/d1)と回折効率の関係を示す。なお、図22(b)は、d3/d1が100%であるときの各回折次数の回折効率と波長との関係を示す。また、図22(c)は、d3/d1を0%、15%、30%と変えた時の高次光(3次光:m=3)の回折効率の例を、図22(d)は、d3/d1を同じく0%、15%、30%と変えた時の低次光(0次光:m=0)の回折効率の例を示す。
【0075】
これらの例から示されるように、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34の割合(d3/d1)を増やすと、図22(c)に示すように、高次光の回折効率は減少し、回折光を利用して色ムラ抑制効果は劣化する。しかしながら、図22(d)に示すように、d3/d1を増やすと、低次光の回折効率は増加し、直下照度を増加させることができる。つまり、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34の割合(d3/d1)を30%以下とすることにより、色ムラ抑制と直下照度の両方を改善させることができる。
【0076】
次に、本実施形態の変形例について、図23を参照して説明する。この変形例は、第1の凹凸部31の1周期における平坦面34が形成されている領域の割合は、光学部材3の中央領域A1の方が外側の領域A2よりも小さくなるように構成されているものである。具体的には、図23(a)に示す中央領域A1又は外側の領域A2において、図23(b)(c)に示すように、第1の凹凸部31の1周期d1における平坦面34が形成されている領域の長さを夫々d3a,d3bとする。このとき、第1の凹凸部31の1周期d1における中央領域A1における長さd3aの割合(d3a/d1)が、外側の領域A2における長さd3bの割合(d3b/d1)よりも小さい。一方、第1の凹凸部31の1周期d1における凹凸が形成されている領域は、中央領域A1における長さd4aの方が、外側の領域A2における長さd4bよりも大きい。
【0077】
通常、光源2(図21参照)から入射した光は、光学部材3の中央領域A1において、輝度が高くなり、その外側において輝度が低くなり、これによって、照射面上において輝度ムラ及び色ムラが生じる。これに対して、上記変形例においては、第1の凹凸部31の1周期における平坦面34が形成されている領域の割合を、光学部材3の中央領域A1において小さくしている。つまり、中央領域A1において凹凸が形成されている領域(本例では斜辺部)の長さd4aを大きくする。こうすれば、光学部材3の中央領域A1において、色ムラを強く抑制することができる。一方、外側の領域A2において平坦面34が形成されている領域の長さd3bを大きくする。こうすれば、光学部材3の外側の領域A2において、直下照度の低下を抑制することができる。これにより、照射面上においても、その中央領域及びその外側の領域において輝度を均一化し、且つ色ムラを抑制することができる。
【0078】
本発明は、上述した記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。例えば、上述した第3の実施形態(図15参照)において、光学部材3と透光性部材5とは、金型を用いた射出成形により一体的に作成されてもよい。また、透光性部材5の上方入射面54に第2の凹凸部32が形成されていてもよい。
【0079】
1 発光装置
2 光源
21 LEDチップ(固体発光素子)
22 波長変換部材
3 光学部材
31 第1の凹凸部
32 第2の凹凸部
33 凸状部
34 平坦面
4 基板
5 透光性部材
51 出射面
52 反射面
53 側方入射面
54 上方入射面
d1 第1の凹凸部の周期
d2 第2の凹凸部の周期
h1 第1の凹凸部の高さ
h2 第2の凹凸部の高さ
d3 第1の凹凸部の1周期における平坦部の長さ
A1 光学部材の中央領域
A2 光学部材の外側の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源の前面に設けられた光学部材とを備え、
前記光学部材は、周期1〜50μm、高さ0.5〜5μmの連続する凹凸から成る第1の凹凸部と、周期100〜300nm、高さ200〜600nmの連続する凹凸から成る第2の凹凸部とを有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2の凹凸部は、前記第1の凹凸部の1周期を構成する凹凸に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の凹凸部は、斜辺部及び垂辺部を連続させた鋸歯形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2の凹凸部は、前記第1の凹凸部の斜辺部に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の凹凸部は、前記光学部材の前記光源と対向する面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記光源は、第1の分光分布を有する光を発光する固体発光素子と、前記固体発光素子の光を受けて第2の分光分布を有する光を発光する波長変部材と、を備え、
前記第1の分光分布のピーク波長が、430〜460nmの範囲にあり、
前記第2の分光分布のピーク波長が、550〜600nmの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2の凹凸部が、前記光学部材の前記光源と対向する面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記光源が実装される基板と、前記光源からの出射光の配光を制御する透光性部材と、を備え、
前記透光性部材は、前記光源の発光領域の略中心部を通る直線と直交する出射面と、前記出射面の外周から前記基板に向かって凸状に延びる反射面と、前記反射面の前記基板側から前記出射面側に折り返す側方入射面と、前記側方入射面の前記反射面と接していない端部をつなぐ上方入射面と、から構成され、
前記出射面に前記光学部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
第2の凹凸部は、その凸部の中心線が、前記光源からの出射光の光軸と略平行となるように形成されていることを特徴とする請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記光学部材は、前記第1の凹凸部が形成されていない領域を有し、該領域に前記第2の凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1の凹凸部は、その頂点部に、前記第2の凹凸部の1周期よりも幅が大きく、前記第2の凹凸部の高さよりも高くなるように形成された凸状部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記凸状部は、断面形状において基端部から頂点部へ先細りとなる台形形状になるように形成されていることを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記凸状部は、断面形状において高さ0.5〜1.0μm、基端部の幅が0.25〜0.5μmであることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の発光装置。
【請求項14】
前記凸状部は、前記第1の凹凸部において、数周期毎に形成されていることを特徴とする請求項11乃至請求項13のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第1の凹凸部は、連続する凹凸の一部が平坦に形成された平坦面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記平坦面の高さは、前記第1の凹凸部の頂点部の高さよりも低いことを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記第1の凹凸部の1周期における前記平坦面が形成されている領域の割合は、30%以下であることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第1の凹凸部の1周期における前記平坦面が形成されている領域の割合は、前記光学部材の中央領域の方が外側の領域よりも小さいことを特徴とする請求項15乃至請求項17のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光装置を用いたことを特徴とする照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−204024(P2012−204024A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65065(P2011−65065)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】