発光装置及び照明装置
【課題】寿命及び性能が向上した発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置1は、樹脂基板10と、樹脂基板10上に形成された反射層18と、反射層18の周囲に形成された保護層45と、反射層18上に載置された発光素子11と、反射層18、保護層45及び発光素子11を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層12を具備する。該発光装置1において、熱硬化性樹脂の酸素透過性は1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、封止樹脂層12に被覆された基板10上の領域の面積に対する反射層18の面積の割合が、30%以上75%以下の範囲である。
【解決手段】発光装置1は、樹脂基板10と、樹脂基板10上に形成された反射層18と、反射層18の周囲に形成された保護層45と、反射層18上に載置された発光素子11と、反射層18、保護層45及び発光素子11を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層12を具備する。該発光装置1において、熱硬化性樹脂の酸素透過性は1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、封止樹脂層12に被覆された基板10上の領域の面積に対する反射層18の面積の割合が、30%以上75%以下の範囲である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光素子を備えた発光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源として発光ダイオード(LED)等の発光素子を基板に複数配設して一定の光量を得る照明装置が開発されている。この照明装置は、天井に直接取付けられる、いわゆる直付タイプのベース照明として知られている。この照明装置には、樹脂材料で成形された樹脂基板に複数の発光素子が直接実装された発光装置を備えるものがある。そのような発光装置では、それぞれの発光素子が、蛍光体と熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層で覆われ封止される。
【0003】
しかしながら、このようなタイプの発光装置では、樹脂基板から放出される有害ガスや大気中のガスが、封止樹脂層を透過することに基づき、発光装置の性能及び寿命の低下がもたらされるおそれがある。即ち、有害ガスや大気中の酸素並びに水蒸気などのガスが封止樹脂層を透過して反射層に波及すると、この反射層が変色して反射性能が劣化するので、光束維持率が低下されるおそれがある。これとともに、封止樹脂層を透過したガスにより、発光素子と電極と接続するボンディングワイヤが腐食されて、このワイヤが断線する可能性が高められることで、発光装置の寿命が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−299702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態によれば、寿命及び性能が向上した発光装置及び該発光装置を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成された反射層と、前記反射層の周囲に形成された保護層と、前記反射層上に載置された発光素子と、前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層を具備する発光装置が提供される。該発光装置において、前記封止樹脂層は、前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の発光装置を表側から見た平面図。
【図2】図1の発光装置の樹脂基板の配線パターン及び接続パターンの平面図。
【図3】図2の樹脂基板から接続パターンを除去して発光素子を実装した平面図。
【図4】図3に示した樹脂基板に封止樹脂層を設けた平面図。
【図5】絶縁層を除去した図2の樹脂基板の裏面図。
【図6】図4中のF6−F6線に沿う模式的断面。
【図7】図1の発光装置の封止樹脂層の一つを上面から見た模式図。
【図8】図1の発光装置を装備した天井直付タイプの照明装置を、その前面カバーを切欠いて示す斜視図。
【図9】熱硬化性樹脂の酸素透過性と光束維持率の関係を表すグラフ。
【図10】反射層の面積比と発光効率及び剥離サイクル数の関係を表すグラフ。
【図11】熱硬化性樹脂の硬さと外部応力耐性及び断線サイクル数の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一つの実施形態において、樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成された反射層と、前記反射層の周囲に形成された保護層と、前記反射層上に載置された発光素子と、前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層を具備する発光装置が提供される。該発光装置において、前記封止樹脂層は、前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲である。
【0009】
以下、実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。図1から図7は、発光装置1を示し、図8は、この発光装置1を装備する照明装置20を示している。なお、各図において同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0010】
発光装置1は、図1に示すように、樹脂基板10と、複数の発光素子11と、各発光素子11を覆う封止樹脂層12とを備えている。なお、樹脂基板10上には図6に示すように反射層18が形成され、その周囲に保護層であるレジスト層45が形成されている。発光素子11は、反射層18上に載置され、封止樹脂層12は、反射層18とその周囲のレジスト層45の一部の上に形成される。
【0011】
樹脂基板10は、ガラスエポキシ樹脂又は他の合成樹脂材料で作られてよい。例えば、ガラスエポキシ系プリント基板(FR−4、CEM−3など)を用いることができる。
【0012】
樹脂基板10は、細長い長方形に形成されている。例えば、長さ寸法を230mmとし、幅寸法を35mmとすることができる。樹脂基板10の厚さ寸法は、0.5mm以上、1.8mm以下が好ましく、例えば1mmとすることができる。樹脂基板10の形状は、長方形に限らず、正方形や円形のものも適用される。
【0013】
さらに、各発光素子11の放熱性を高めるために、金属製のベース板を含む樹脂基板を使用することもできる。具体的には、図5及び図6に示すように樹脂基板10は、ガラスエポキシ樹脂の表面に銅箔46等を張り、その上に一部を除き絶縁層47を設けて作成される。これは一般的な電気製品にもちいられるプリント基板に相当する構造である。
【0014】
この発光装置1において、複数の発光素子11は、列を形成するように樹脂基板上に並べて実装され、封止樹脂層12で覆われる。封止樹脂層12の端部は、列の端の発光素子11を中心とするほぼ一定の半径の球面に形成される。
【0015】
樹脂基板10には、さらに、反射層の周囲を覆うように、表面のほとんど全面に保護層であるレジスト層45が形成されている。レジスト層45には、反射率の高い白色のレジストが好適に用いられる。説明の便宜上、図2から図4では、配線パターン15等を表記しているが、白色のレジスト層45が実際に形成されている場合、配線パターン15等は視覚的には見えにくくなる。
【0016】
樹脂基板10の長辺は、樹脂基板10を固定するために用意された複数の貫通部40を有している。この貫通部40は、外周につながった円弧状の切欠部であり、発光装置1を図8に示す照明装置20の器具本体21に固定する場合に用いられる。本実施形態において、固定手段としての取付ネジ41の軸部は、切欠部を貫通して照明装置20の器具本体21に捩じ込まれ、頭部は、切欠部に引っ掛かって固定される。これにより発光装置1は、器具本体21に固定される。
【0017】
樹脂基板10は、図3に示すように表側に、溝141を有し、かつ、図1に示す電源コネクタ42、接続コネクタ43、及びコンデンサCが実装されている。溝141は、後述する接続パターン14を除去するために作られた痕である。電源コネクタ42は、電源に接続される。接続コネクタ43は、複数の発光装置1を互いに接続して1つの照明装置20を構成する場合に用いられる。コンデンサCは、点灯回路にノイズが累積されることによって発光素子11が誤点灯することを防止するために用意されている。
【0018】
図2から図4及び図6に示すように、樹脂基板10は、表側のレジスト層45に埋没した配線パターン15を有している。配線パターン15には、実装パッド15a、給電導体15b及び給電端子15cが含まれる。
【0019】
一つの実装パッド15aは、図2に示すように基本的には、樹脂基板10の長手方向に略長方形をなしていて、短辺から樹脂基板10の長手方向に延出した幅の細い2本の給電導体15b1を有している。この給電導体15b1は、その延出方向と直交する方向に突出した複数の、本実施形態では6個の、給電子15b2を有している。
【0020】
給電導体15bは、これら実装パッド15aを電気的に接続する。給電端子15cは、給電導体15bの端部に用意され、電源コネクタ42が接続される。
【0021】
実装パッド15aは、図2に示すように長辺の1つ及び中央部において、樹脂基板10の長手方向に隣接する実装パッド15aの給電導体15b1に絶縁間隔を空けて入り込んでいる。給電子15b2と嵌り合う入り江部15b3も実装パッド15aに形成されている。このような形状の実装パッド15aのうちで、隣り合う実装パッド15aは、樹脂基板10の長手方向に沿う軸を中心に反転された形態で組み合わされ、長手方向に複数並べられることによって配線パターン15を形成する。
【0022】
図6に示すように、配線パターン15は三層構造を有する。樹脂基板10の表面上に下から順に、第一層151として銅(Cu)、第二層152としてニッケル(Ni)、第三層153として反射率の高い銀(Ag)をそれぞれ電解めっきすることによって作られている。
【0023】
実装パッド15a及び給電子15b2の一部の表面が反射層18として用いられ、この反射層18の周囲にレジスト層45が形成されている。レジスト層45から露出している反射層18は、銀メッキであるため反射率が高い。本実施形態の場合、反射層18の全光線反射率は、90%である。第二層152のニッケル(Ni)の膜厚は、5μm以上、反射層18のをなす銀(Ag)の膜厚は、1μm以上に電解めっきによって形成する。膜厚の寸法を以上のようにすることで、膜厚が均一に形成され反射率も均一になる。
【0024】
実装パッド15aが露出した反射層18に発光素子11が載置される。一つ一つの発光素子11は、LED等の固体発光素子である。樹脂基板10に発光素子11を実装する個数は特に制限されない。発光素子がLEDの場合、フェイスアップタイプやフリップチップタイプのものが適用される。
【0025】
発光装置1の発光部から白色系の光を出力させるために、青色の光を発するLEDのベアチップが用いられている。発光素子11は、透光性を有するシリコーン樹脂系の絶縁性接着剤16によって反射層18上に接着されている。
【0026】
本実施形態において発光素子11は、Indium-Gallium-Nitride(InGaN)系のベアチップであり、透光性のサファイア素子樹脂基板に発光層が積層された構造である。発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて形成されている。発光層に電流を流すための電極は、p型窒化物半導体層上にp型電極パッドで形成されたプラス電極と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス電極とで構成されている。これらの電極は、図3及び図6に示すようにボンディングワイヤ17によって配線パターン15上に電気的に接続されている。より詳細には、発光素子11の上面と実装パッド15aが露出した反射層18とが接続されており、発光素子11の上面と給電子15b2が露出した反射層18とが接続されている。ボンディングワイヤ17は、金(Au)の細線であり、実装強度の向上と発光素子11の損傷低減のため金(Au)を主成分とするバンプを介して接続されている。なお、ボンディングワイヤ17は、金(Au)に限定されず、他の金属細線を用いてもよい。
【0027】
図3に代表して示すように、複数の発光素子11は、給電子15b2に対応させて実装パッド15a上に配置されている。第1の実施形態において、一つの実装パッド15aに実装される発光素子11は、中央部の給電子15b2及び長辺沿いの給電子15b2に対応させてそれぞれ6個ずつ、合計12個である。発光素子11は、樹脂基板10の長手方向に並べられた複数の実装パッド15aのそれぞれに同様に設けられており、各実装パッド15aの発光素子11によって複数の列を形成するように並べられる。第1の実施形態の場合、長手方向に発光素子11の列を2列に形成している。
【0028】
実装パッド15aの給電子15b2は、隣の実装パッド15aの入り江部15b3に入り込んでいるので、発光素子11は、実装パッド15aの中央部に配置される。したがって、発光素子11から発生する熱は、実装パッド15aを通じて効果的に放熱される。
【0029】
このように配設された各発光素子11は、電源の陽極から実装パッド15a及びボンディングワイヤ17(一端が実装パッド15aの露出面である反射層18に接続される)を介して発光素子11のプラス電極へ、発光素子11のマイナス電極からボンディングワイヤ17(一端が給電子15b2の露出面である反射層18に接続される)を介して隣接する給電子15b2へと順次接続されることによって、給電される。第1の実施形態では、ボンディングワイヤ17は、発光素子11が列を形成する方向と直交する方向に結線されている。
【0030】
以上のように発光素子11が接続された発光装置1は、1つの実装パッド15aに配置された12個の発光素子11が並列に接続され、9個の実装パッド15aが直列に接続されている。また、誤点灯を防止するために挿入されるコンデンサCは、実装パッド15aによって構成される各並列回路の電極間に並列に接続される第1のコンデンサ、及びすべての実装パッド15aによって構成される直列回路の電極間に並列に接続される第2のコンデンサを含む。
【0031】
図6に示すように、発光素子11及びボンディングワイヤ17は、封止樹脂層12によって包含される。封止樹脂層12は、反射層18とレジスト層45の一部を被覆するように形成される。
【0032】
封止樹脂層12は、透明な熱可塑性樹脂に適量の蛍光体を含有する封止樹脂によって形成される。蛍光体は、発光素子11が発する光によって励起されて、発光素子11が発する光の色とは異なる固有の色の光を放射する。本実施形態では発光素子11が青色光を発するので、発光装置1の出力光として白色光を出射するために、青色の光に対して補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体を使用している。蛍光体として、例えばYttrium Aluminum Garnet(YAG):Cerium(Ce)等を用いることができる。
【0033】
本実施形態のような構造を有する発光装置1は、樹脂基板10から発生した有害ガスが封止樹脂を透過して銀などから構成される反射層に達することが分かった。一般的なアルミ基板またはセラミック基板を用いた場合は、基板から有害ガスが発生しない。また、基板に直接LEDチップを実装しないパッケージLEDでは、有害ガスが封止樹脂を透過して反射層に達することがない。しかしながら、本実施形態のような構造を有する発光装置1は、樹脂基板10から発生した有害ガスによって反射層が変色し、反射性が低下する。その結果、光束維持率が低下することがわかった。
【0034】
そこで本実施形態では、封止樹脂材料として、酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を用いる。酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を用いることにより、有害ガスの透過を抑制し、反射層の劣化を抑制することが可能である。
【0035】
このような酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂の例には、フェニル系シリコーン樹脂が挙げられる。
【0036】
封止樹脂層12は、本実施形態においては図1、図4及び図6に示すように、個々の発光素子11を発光素子11ごとに被覆している。個々の封止樹脂層12は、図6に示すようにドーム状の凸を成し、隣り合う封止樹脂層12どうしの裾は、図1及び図4に示すように互いに連なるように連続部12sが形成されている。その結果、図1及び図4に示すように、1つの発光素子列を構成する発光素子11の封止樹脂層12は、数珠繋ぎに連結されている。第1の実施形態の場合、封止樹脂層12は、樹脂基板10の長手方向に2列に形成されており、各発光素子11及びボンディングワイヤ17を被覆し封止している。
【0037】
封止樹脂層12は、蛍光体を含有し粘度や量が調整された、固まっていない状態の熱可塑性樹脂を、発光素子11上に滴下し、その後、加熱処理または規定時間の放置によって硬化することにより形成される。熱可塑性樹脂の滴下には、例えばディスペンサを用いることができる。
【0038】
滴下された熱可塑性樹脂は、図6に示すようにドーム形状をなす。その裾は、樹脂材料の流動性によって外周方向へ拡がる。隣り合う封止樹脂層12の裾どうしが互いに連なることで、連続部12sが形成される。したがって、隣り合う封止樹脂層12は、連続部12sによって融合し一体となって固まる。
【0039】
なお、上記の実施形態に限らず、個々の封止樹脂層12は独立し、隣り合う封止樹脂層12どうしの裾が連続していなくてもよい。また或いは、発光素子11を複数ずつ被覆するように封止樹脂層12を形成してもよい。また、封止樹脂層12の形成方法は、上記の形成方法に限定されない。
【0040】
図7は、一つの発光素子11に適用された封止樹脂層12を上面から見た模式図である。便宜的に、封止樹脂層12に被覆されている構成部材を点線で示した。封止樹脂層12の被覆部分において、反射層18がレジスト層45から露出している。発光素子11は、反射層18に載置される。発光素子11は、載置されている反射層18と隣接する反射層18のそれぞれと、ボンディングワイヤ17で接続されている。
【0041】
本実施形態において、封止樹脂層に被覆された基板上の領域、即ち、封止樹脂層12に被覆されている反射層18及びレジスト層45の面積を100%としたとき、反射層の面積は、30%以上、75%以下の範囲内である。
【0042】
反射層18は、その周囲のレジスト層45よりも反射率が高いため、反射層の面積が高い方が、発光効率が高い。例えば、反射層とレジスト層45のそれぞれの450nmにおける光反射率の差は3.5%以上である。しかし、レジスト層45は反射層よりも封止樹脂との密着性が高いため、封止樹脂層12に被覆されるレジスト層45の面積が小さすぎると、封止樹脂層の接着性が低下する。
【0043】
しかしながら、封止樹脂層12に被覆された反射層の面積を30〜75%とすることにより、反射率を高めて発光効率を向上させるとともに、封止樹脂層12の接着性を向上させることが可能である。反射層の面積が30%未満であると、発光効率が低下する。一方、反射層の面積が75%を超えると、封止樹脂層12の剥離などが生じる可能性が高くなり、信頼性が低下する。
【0044】
本実施形態に従って、酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を封止樹脂材料として用い、封止樹脂層12に被覆されている反射層18の面積を30〜75%の範囲にすることにより、反射層18の劣化を抑制すると共に、発光装置1の発光効率と光束維持率を向上させることができる。これにより、発光装置1の寿命を向上させることが可能である。例えば、85℃、湿度85%で1000時間を定格点灯させた場合の光束維持率を90%以上にすることができる。
【0045】
またさらに、本実施形態において用いられる封止樹脂層には、デュロメータ(タイプA)で測定した硬さが45以上89以下の範囲である熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬さが45以上であることにより、封止樹脂層12の強度を高くすることができる。これにより、例えば発光装置を取扱う際に封止樹脂層12に物体が接触した場合でも、封止樹脂層12が破壊されることを防止できる。一方、硬さが89以下であることにより、発光装置1の点灯及び消灯による温度変化によって封止樹脂が膨張及び収縮を繰り返しても、樹脂層内部のボンディングワイヤが断線することを防止することができる。
【0046】
熱硬化性樹脂の硬さのさらに好ましい範囲は、発光装置の使用用途により変動するが、例えば62〜78の範囲とすることができる。取り扱い中に封止樹脂層12に接触する可能性が高い発光装置の場合は、硬さが高い熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。一方、取り扱い中に接触する可能性が低い発光装置の場合は、比較的硬さが低い熱可塑性樹脂を用いてボンディングワイヤの断線の可能性をより低下させることができる。
【0047】
またさらに、本実施形態において用いられる熱硬化性樹脂は、樹脂基板の表面に対して水平方向に強制的応力が印加された場合に封止樹脂層12が樹脂基板10から界面剥離するものであることが好ましい。封止樹脂層12が界面剥離する樹脂を用いることにより、応力を印加したときに封止樹脂層12の内部破壊が生じることを防ぐことができる。内部破壊が生じる樹脂を用いた場合、限界応力を超えた後、発光素子が不点灯となるまでに長時間を要することがあり、不良の発見が容易でないという問題がある。これに対して、界面剥離が生じる樹脂を用いた場合は、剥離が生じた発光素子11のみ輝度が低下するため、不良の発見が容易である。
【0048】
このような熱可塑性樹脂は、JIS鉛筆引っかき強度試験(1kg荷重)において800gの応力により、樹脂基板10から界面剥離せず、且つ、樹脂内部破壊が生じないものであることが好ましい。800gの応力により界面剥離及び樹脂内部破壊の何れもが生じない樹脂を用いることにより、封止樹脂層12の強度を確保し、発光装置1の耐久性を向上させることができる。
【0049】
上記のような熱硬化性樹脂の例には、フェニル系シリコーン樹脂及びフェニル系ハイブリッド樹脂が挙げられる。
【0050】
またさらに、本実施形態において用いられる熱硬化性樹脂は、屈折率が1.50以上1.66以下であることが好ましい。発光素子11のサファイア素子樹脂基板の屈折率が1.76程度であるため、屈折率が1.50以上である樹脂を用いた場合、サファイア素子樹脂基板から封止樹脂層12への光の取出し効率が高まる。その結果、蛍光体への到達光量が増大し、これにより、発光装置1の発光効率を向上させることができる。一方、屈折率が1.66以下である樹脂を用いることにより、封止樹脂層12から外部大気への光取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0051】
樹脂基板10は、図5及び図6に示すように、裏側の全面に亘って形成された放熱用の銅箔46のパターンを有している。このパターンは、表面側の実装パッド15aに対応するように樹脂基板10の幅方向に2つ、樹脂基板10の長手方向に9つのマトリックス状に分割された18個のブロックを含む。
【0052】
樹脂基板10は、銅箔46を備えているので、発光素子11が発生する熱は、樹脂基板10全体に均等に拡散される。したがって、樹脂基板10の放熱性能が安定する。また、図5に示すように樹脂基板10の長手方向に直交して銅箔46が形成されていない不連続ゾーン46aがあるので、熱によって樹脂基板10に生じる反りや変形が抑制される。なお、図6に示すように、銅箔46は絶縁層47により被覆されている。
【0053】
次に、上記のように構成された発光装置1の製造工程の概略について、図2から図4を参照して説明する。
【0054】
まず、図2に示すように、配線パターン15及び接続パターン14が樹脂基板10の表側に形成される。配線パターン15は、上述したような三層構造を有している。接続パターン14も配線パターン15と同様の三層構造を有している。配線パターン15は、各発光素子11に電力を供給するための給電路として機能する。接続パターン14は、第一層の銅(Cu)のパターンの上に第二層のニッケル(Ni)および第三層の銀(Ag)を電解めっきする際に、各実装パッド15aを等電位にするための接続路として機能する。
【0055】
配線パターン15及び接続パターン14の形成工程において、樹脂基板10の表面上に第一層として銅(Cu)パターンが形成される。次いで第二層としてニッケル(Ni)、さらに第三層目に反射層18として銀(Ag)が順番に電解めっきされる。
【0056】
配線パターン15及び接続パターン14が形成された樹脂基板10の表側から、図3に示すように、接続パターン14が、ルーターやトリマー等によって削り取られる。この結果、各実装パッド15aどうしの電気的接続が遮断される。接続パターン14を削り取ったことによって、貫通部40を迂回する部分を除いて長手方向に直線で矩形に凹んだ溝部141が痕跡として樹脂基板10の表側に形成される。
【0057】
配線パターン15が形成されると、発光素子列を形成するように複数の発光素子11が実装される。実装された発光素子11は、図4に示すように封止樹脂層12によってそれぞれ覆われ封止される。封止樹脂層12は、樹脂基板10の長手方向に並ぶ発光素子11の列を覆うように連続して配置される。
【0058】
次に、上述の発光装置1を備える照明装置20について、図8を参照して説明する。図8に示す照明装置20は、発光装置1が下方に向けて組み込まれており、天井に設置して使用される直付タイプである。
【0059】
照明装置20は、細長く略直方体の器具本体21を備えている。この器具本体21は、発光装置1を複数個、この実施形態では直線状に接続された2個有している。電源回路を備えた電源ユニットは、器具本体21に内蔵されている。なお、光拡散性を有する前面カバー22が、器具本体21に取付けられていて、下方に向かって開口した器具本体21の開口部を覆っている。
【0060】
上述した構成の発光装置1について、さらに説明する。発光装置1は、電源回路により通電されると、各発光素子11が一斉に点灯される。発光素子11から出射される光は、封止樹脂層12を透過されると、封止樹脂層12中の蛍光体を励起発光させる。発光素子11の出射光と封止樹脂層12の励起光とが合成されると、白色の光になる。発光装置1は、白色の光を出射する面光源として使用される。
【0061】
この場合、封止樹脂層12は、ドーム形状を有し、発光素子11が該ドームの中心に配置されているので、発光素子11から出射された光は、封止樹脂層12の境界面の内側で全反射することが抑制される。その結果、反射損失に起因する発光効率の低下が抑制される。
【0062】
また、隣り合う封止樹脂層12は、その裾において連なっている。封止樹脂層12が固まるまでの間、連続部12sによって相互に混ざるので、各封止樹脂層12の体積のばらつきは、平均化される。各封止樹脂層12の外形が平均化されるので、個々の発光素子11から出射される光出力や発光色等のばらつきが軽減される。したがって、発光装置1が照射する光が均質になる。これにより、発光装置1を備える照明装置20は、照射する光が安定する。
【0063】
第1の実施形態において、発光素子11が発光している間、実装パッド15aは、各発光素子11が発生した熱を拡散するヒートスプレッダとして機能する。発光装置1が光を出射しているとき、発光素子11から放射された光のうち樹脂基板10に向かった光は、実装パッド15aの表層に形成された反射層18において、光が利用される方向にほとんどが反射される。発光素子11が放射した光のうちで樹脂基板10に沿う方向へ向かった光は、反射率の高い白色のレジスト層45の表面で光が利用される方向に反射される。
【0064】
以上の実施形態によれば、封止樹脂で覆われた反射層の劣化が抑制されると共に、発光効率と光束維持率が向上され、寿命が向上した発光装置を提供することができる。また、そのような発光装置を備え、寿命が向上した照明装置を提供することができる。
【0065】
なお、上述の発光装置および該発光装置を備える照明装置は、屋内又は屋外で使用される照明器具やディスプレイ装置などに搭載される光源として適用され得る。
【実施例】
【0066】
試験1
封止樹脂層を構成する熱硬化性樹脂の酸素透過性と、光束維持率の関係を調査した。
【0067】
(実施例1)
幅27mm、長さ200mmのFR−4基板を用い、発光装置を製造した。同じ封止樹脂層内に4個の発光素子を3mm間隔で一列に配置した。ドーム形状の封止樹脂層の直径は29mmとした。発光素子は約3V−30mAのものを用いた。封止樹脂層の材料として、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)のフェニル系シリコーン樹脂を用いた。封止樹脂層により被覆された領域の面積に対する反射層の面積の割合は50%とした。
【0068】
(実施例2及び比較例1〜2)
封止樹脂層の材料として、表1に示した酸素透過性を有する熱硬化性樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0069】
(点灯試験)
実施例1〜2及び比較例1〜2の発光装置を、120℃で100時間点灯させ、光束維持率を測定した。その結果を表1及び図9に示す。
【表1】
【0070】
表1から分かるように、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱硬化性樹脂を用いた実施例1及び2は、比較例1及び2よりも光束維持率が顕著に高かった。
【0071】
試験2
(実施例3〜4及び比較例3〜5)
封止樹脂層に被覆された領域の面積に対する反射層の面積の割合を、表2に記載したとおりにした以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0072】
(発光試験及びサイクル試験)
実施例3〜4及び比較例3〜5の発光装置を、製品製造直後に点灯させ発光効率を測定した。その結果を、反射層の面積が100%である時の発光効率を100%とした相対値で表2に示した。また、温度差160℃の条件でヒートサイクル試験を行い、封止樹脂層の剥離が生じたサイクル数を観察した。その結果を表2及び図10に示した。
【表2】
【0073】
表2から分かるように、反射層の面積の割合が低下するほど、発光効率が低下するものの、剥離が生じるサイクル数は増加した。実施例3及び4に示すように、反射層の面積を30〜75%の範囲にすることにより、発光効率が高く、且つ、寿命の高い発光装置を実現することが可能であることが示された。
【0074】
試験3
(実施例5〜8)
封止樹脂層の材料として、デュロメータ(タイプA)で測定した硬さが表3に示したとおりであり、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)であるフェニル系シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0075】
(断線試験)
実施例5〜8の発光装置を用いて、温度差160℃の条件でヒートサイクル試験を行い、ボンディングワイヤの断線が生じたサイクル数を観察した。また、各発光装置の封止樹脂層に外部応力を印加し、ボンディングワイヤの断線が生じる応力を測定した。その結果を表3及び図11に示した。
【表3】
【0076】
表3から分かるように、硬さが45以上である実施例5〜8は、断線が生じる外部応力が大きく、耐久性が高いことが示された。また、硬さが89以下である実施例6〜8は、ヒートサイクル試験において断線が生じるサイクル数が大きく、耐久性が高いことが示された。これより、実施例6及び7に示すように、硬さが45〜89である熱可塑性樹脂を用いることにより、外部応力並びにヒートサイクルに対する耐久性が高く、寿命が向上された発光装置を実現することが可能であることが示された。
【0077】
試験4
(実施例9〜10)
封止樹脂層の材料として、屈折率が表4に示したとおりであり、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)であるフェニル系シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0078】
(発光効率試験)
実施例9〜10の発光装置を用いて、製品製造直後に点灯させ発光効率を測定した。その結果を表4に示した。
【表4】
【0079】
屈折率が1.59である実施例10は、屈折率が1.41である実施例9よりも発光効率が高いことが示された。よって、屈折率の高い熱可塑性樹脂を封止樹脂材料に用いることにより、発光効率を改善することが可能であることが示された。
【0080】
次に、第2の実施形態に係る発光装置及びこれを備えた照明装置を説明する。この実施形態は、発光装置の発光素子を封止した封止樹脂層が、以下の点で異なる他は、第1の実施形態と同じである。そのため、以下の説明では必要により図1から図8を参照する。
【0081】
第2の実施形態でも、封止樹脂層12は、蛍光体及び透明な熱硬化性樹脂を含んでいるが、この熱硬化性樹脂には酸素透過性と共に水素透過性を有する樹脂が用いられている。
【0082】
この樹脂の水蒸気透過性は1200cm3/(m2・day・alm)以下である。同樹脂の水蒸気透過性は35g/m2以下である。このように酸素透過性と共に水素透過性を有する熱硬化性樹脂として、例えばレジン系シリコーン樹脂を用いることができる。
【0083】
前記酸素透過性を有して発光素子11を封止した封止樹脂層12は、第1の実施形態で既に説明したように酸素や有害ガスの透過性が低いので、これらのガスが、発光素子11が実装された銀製の反射層18に波及することが抑制される。しかも、封止樹脂層12は、ガス透過性が低いだけではなく、水蒸気透過性が35g/m2以下であるので、大気中の水蒸気の透過性も低い。これにより、水蒸気が封止樹脂層12を透過して反射層18に波及することも抑制される。
【0084】
このため、封止樹脂層12を透過するガスや水蒸気によって、反射層18が変色し、その反射性が低下することが、抑制される。その結果、光束維持率を向上することが可能である。
【0085】
これとともに、封止樹脂層12を透過するガスや水蒸気を原因とする、ボンディングワイヤ17の断線がし難くなる。その結果、発光装置1の寿命を向上することも可能である。
【0086】
封止樹脂層12に含まれる熱硬化性樹脂の水蒸気透過率は25g/m2以下であることが好適である。このような透過性の範囲によれば、反射層18の劣化が殆ど生じることがなく、光束維持率を改善できる。なお、熱硬化性樹脂の水蒸気透過率を「0」に近付けると、封止樹脂そう12の硬度が高くなる傾向があるので、熱硬化性樹脂の水蒸気透過率の下限値は「0」にしなくても良い。
【0087】
以上のように封止樹脂層12の熱硬化性樹脂をレジン系シリコーン樹脂とした以外は、第1の実施形態と同じ構成である第2の実施形態においても、発光装置1及びこれを備える照明装置20の寿命及び性能を向上することが可能である。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1…発光装置、10…樹脂基板、11…発光素子、12…封止樹脂層、15…配線パターン、15a…実装パッド、15b…給電導体、15c…給電端子、18…反射層、17…ボンディングワイヤ、20…照明装置、21…器具本体、45…レジスト層(保護層)。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光素子を備えた発光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源として発光ダイオード(LED)等の発光素子を基板に複数配設して一定の光量を得る照明装置が開発されている。この照明装置は、天井に直接取付けられる、いわゆる直付タイプのベース照明として知られている。この照明装置には、樹脂材料で成形された樹脂基板に複数の発光素子が直接実装された発光装置を備えるものがある。そのような発光装置では、それぞれの発光素子が、蛍光体と熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層で覆われ封止される。
【0003】
しかしながら、このようなタイプの発光装置では、樹脂基板から放出される有害ガスや大気中のガスが、封止樹脂層を透過することに基づき、発光装置の性能及び寿命の低下がもたらされるおそれがある。即ち、有害ガスや大気中の酸素並びに水蒸気などのガスが封止樹脂層を透過して反射層に波及すると、この反射層が変色して反射性能が劣化するので、光束維持率が低下されるおそれがある。これとともに、封止樹脂層を透過したガスにより、発光素子と電極と接続するボンディングワイヤが腐食されて、このワイヤが断線する可能性が高められることで、発光装置の寿命が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−299702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態によれば、寿命及び性能が向上した発光装置及び該発光装置を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成された反射層と、前記反射層の周囲に形成された保護層と、前記反射層上に載置された発光素子と、前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層を具備する発光装置が提供される。該発光装置において、前記封止樹脂層は、前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態の発光装置を表側から見た平面図。
【図2】図1の発光装置の樹脂基板の配線パターン及び接続パターンの平面図。
【図3】図2の樹脂基板から接続パターンを除去して発光素子を実装した平面図。
【図4】図3に示した樹脂基板に封止樹脂層を設けた平面図。
【図5】絶縁層を除去した図2の樹脂基板の裏面図。
【図6】図4中のF6−F6線に沿う模式的断面。
【図7】図1の発光装置の封止樹脂層の一つを上面から見た模式図。
【図8】図1の発光装置を装備した天井直付タイプの照明装置を、その前面カバーを切欠いて示す斜視図。
【図9】熱硬化性樹脂の酸素透過性と光束維持率の関係を表すグラフ。
【図10】反射層の面積比と発光効率及び剥離サイクル数の関係を表すグラフ。
【図11】熱硬化性樹脂の硬さと外部応力耐性及び断線サイクル数の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一つの実施形態において、樹脂基板と、前記樹脂基板上に形成された反射層と、前記反射層の周囲に形成された保護層と、前記反射層上に載置された発光素子と、前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う、蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層を具備する発光装置が提供される。該発光装置において、前記封止樹脂層は、前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲である。
【0009】
以下、実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。図1から図7は、発光装置1を示し、図8は、この発光装置1を装備する照明装置20を示している。なお、各図において同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0010】
発光装置1は、図1に示すように、樹脂基板10と、複数の発光素子11と、各発光素子11を覆う封止樹脂層12とを備えている。なお、樹脂基板10上には図6に示すように反射層18が形成され、その周囲に保護層であるレジスト層45が形成されている。発光素子11は、反射層18上に載置され、封止樹脂層12は、反射層18とその周囲のレジスト層45の一部の上に形成される。
【0011】
樹脂基板10は、ガラスエポキシ樹脂又は他の合成樹脂材料で作られてよい。例えば、ガラスエポキシ系プリント基板(FR−4、CEM−3など)を用いることができる。
【0012】
樹脂基板10は、細長い長方形に形成されている。例えば、長さ寸法を230mmとし、幅寸法を35mmとすることができる。樹脂基板10の厚さ寸法は、0.5mm以上、1.8mm以下が好ましく、例えば1mmとすることができる。樹脂基板10の形状は、長方形に限らず、正方形や円形のものも適用される。
【0013】
さらに、各発光素子11の放熱性を高めるために、金属製のベース板を含む樹脂基板を使用することもできる。具体的には、図5及び図6に示すように樹脂基板10は、ガラスエポキシ樹脂の表面に銅箔46等を張り、その上に一部を除き絶縁層47を設けて作成される。これは一般的な電気製品にもちいられるプリント基板に相当する構造である。
【0014】
この発光装置1において、複数の発光素子11は、列を形成するように樹脂基板上に並べて実装され、封止樹脂層12で覆われる。封止樹脂層12の端部は、列の端の発光素子11を中心とするほぼ一定の半径の球面に形成される。
【0015】
樹脂基板10には、さらに、反射層の周囲を覆うように、表面のほとんど全面に保護層であるレジスト層45が形成されている。レジスト層45には、反射率の高い白色のレジストが好適に用いられる。説明の便宜上、図2から図4では、配線パターン15等を表記しているが、白色のレジスト層45が実際に形成されている場合、配線パターン15等は視覚的には見えにくくなる。
【0016】
樹脂基板10の長辺は、樹脂基板10を固定するために用意された複数の貫通部40を有している。この貫通部40は、外周につながった円弧状の切欠部であり、発光装置1を図8に示す照明装置20の器具本体21に固定する場合に用いられる。本実施形態において、固定手段としての取付ネジ41の軸部は、切欠部を貫通して照明装置20の器具本体21に捩じ込まれ、頭部は、切欠部に引っ掛かって固定される。これにより発光装置1は、器具本体21に固定される。
【0017】
樹脂基板10は、図3に示すように表側に、溝141を有し、かつ、図1に示す電源コネクタ42、接続コネクタ43、及びコンデンサCが実装されている。溝141は、後述する接続パターン14を除去するために作られた痕である。電源コネクタ42は、電源に接続される。接続コネクタ43は、複数の発光装置1を互いに接続して1つの照明装置20を構成する場合に用いられる。コンデンサCは、点灯回路にノイズが累積されることによって発光素子11が誤点灯することを防止するために用意されている。
【0018】
図2から図4及び図6に示すように、樹脂基板10は、表側のレジスト層45に埋没した配線パターン15を有している。配線パターン15には、実装パッド15a、給電導体15b及び給電端子15cが含まれる。
【0019】
一つの実装パッド15aは、図2に示すように基本的には、樹脂基板10の長手方向に略長方形をなしていて、短辺から樹脂基板10の長手方向に延出した幅の細い2本の給電導体15b1を有している。この給電導体15b1は、その延出方向と直交する方向に突出した複数の、本実施形態では6個の、給電子15b2を有している。
【0020】
給電導体15bは、これら実装パッド15aを電気的に接続する。給電端子15cは、給電導体15bの端部に用意され、電源コネクタ42が接続される。
【0021】
実装パッド15aは、図2に示すように長辺の1つ及び中央部において、樹脂基板10の長手方向に隣接する実装パッド15aの給電導体15b1に絶縁間隔を空けて入り込んでいる。給電子15b2と嵌り合う入り江部15b3も実装パッド15aに形成されている。このような形状の実装パッド15aのうちで、隣り合う実装パッド15aは、樹脂基板10の長手方向に沿う軸を中心に反転された形態で組み合わされ、長手方向に複数並べられることによって配線パターン15を形成する。
【0022】
図6に示すように、配線パターン15は三層構造を有する。樹脂基板10の表面上に下から順に、第一層151として銅(Cu)、第二層152としてニッケル(Ni)、第三層153として反射率の高い銀(Ag)をそれぞれ電解めっきすることによって作られている。
【0023】
実装パッド15a及び給電子15b2の一部の表面が反射層18として用いられ、この反射層18の周囲にレジスト層45が形成されている。レジスト層45から露出している反射層18は、銀メッキであるため反射率が高い。本実施形態の場合、反射層18の全光線反射率は、90%である。第二層152のニッケル(Ni)の膜厚は、5μm以上、反射層18のをなす銀(Ag)の膜厚は、1μm以上に電解めっきによって形成する。膜厚の寸法を以上のようにすることで、膜厚が均一に形成され反射率も均一になる。
【0024】
実装パッド15aが露出した反射層18に発光素子11が載置される。一つ一つの発光素子11は、LED等の固体発光素子である。樹脂基板10に発光素子11を実装する個数は特に制限されない。発光素子がLEDの場合、フェイスアップタイプやフリップチップタイプのものが適用される。
【0025】
発光装置1の発光部から白色系の光を出力させるために、青色の光を発するLEDのベアチップが用いられている。発光素子11は、透光性を有するシリコーン樹脂系の絶縁性接着剤16によって反射層18上に接着されている。
【0026】
本実施形態において発光素子11は、Indium-Gallium-Nitride(InGaN)系のベアチップであり、透光性のサファイア素子樹脂基板に発光層が積層された構造である。発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて形成されている。発光層に電流を流すための電極は、p型窒化物半導体層上にp型電極パッドで形成されたプラス電極と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス電極とで構成されている。これらの電極は、図3及び図6に示すようにボンディングワイヤ17によって配線パターン15上に電気的に接続されている。より詳細には、発光素子11の上面と実装パッド15aが露出した反射層18とが接続されており、発光素子11の上面と給電子15b2が露出した反射層18とが接続されている。ボンディングワイヤ17は、金(Au)の細線であり、実装強度の向上と発光素子11の損傷低減のため金(Au)を主成分とするバンプを介して接続されている。なお、ボンディングワイヤ17は、金(Au)に限定されず、他の金属細線を用いてもよい。
【0027】
図3に代表して示すように、複数の発光素子11は、給電子15b2に対応させて実装パッド15a上に配置されている。第1の実施形態において、一つの実装パッド15aに実装される発光素子11は、中央部の給電子15b2及び長辺沿いの給電子15b2に対応させてそれぞれ6個ずつ、合計12個である。発光素子11は、樹脂基板10の長手方向に並べられた複数の実装パッド15aのそれぞれに同様に設けられており、各実装パッド15aの発光素子11によって複数の列を形成するように並べられる。第1の実施形態の場合、長手方向に発光素子11の列を2列に形成している。
【0028】
実装パッド15aの給電子15b2は、隣の実装パッド15aの入り江部15b3に入り込んでいるので、発光素子11は、実装パッド15aの中央部に配置される。したがって、発光素子11から発生する熱は、実装パッド15aを通じて効果的に放熱される。
【0029】
このように配設された各発光素子11は、電源の陽極から実装パッド15a及びボンディングワイヤ17(一端が実装パッド15aの露出面である反射層18に接続される)を介して発光素子11のプラス電極へ、発光素子11のマイナス電極からボンディングワイヤ17(一端が給電子15b2の露出面である反射層18に接続される)を介して隣接する給電子15b2へと順次接続されることによって、給電される。第1の実施形態では、ボンディングワイヤ17は、発光素子11が列を形成する方向と直交する方向に結線されている。
【0030】
以上のように発光素子11が接続された発光装置1は、1つの実装パッド15aに配置された12個の発光素子11が並列に接続され、9個の実装パッド15aが直列に接続されている。また、誤点灯を防止するために挿入されるコンデンサCは、実装パッド15aによって構成される各並列回路の電極間に並列に接続される第1のコンデンサ、及びすべての実装パッド15aによって構成される直列回路の電極間に並列に接続される第2のコンデンサを含む。
【0031】
図6に示すように、発光素子11及びボンディングワイヤ17は、封止樹脂層12によって包含される。封止樹脂層12は、反射層18とレジスト層45の一部を被覆するように形成される。
【0032】
封止樹脂層12は、透明な熱可塑性樹脂に適量の蛍光体を含有する封止樹脂によって形成される。蛍光体は、発光素子11が発する光によって励起されて、発光素子11が発する光の色とは異なる固有の色の光を放射する。本実施形態では発光素子11が青色光を発するので、発光装置1の出力光として白色光を出射するために、青色の光に対して補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体を使用している。蛍光体として、例えばYttrium Aluminum Garnet(YAG):Cerium(Ce)等を用いることができる。
【0033】
本実施形態のような構造を有する発光装置1は、樹脂基板10から発生した有害ガスが封止樹脂を透過して銀などから構成される反射層に達することが分かった。一般的なアルミ基板またはセラミック基板を用いた場合は、基板から有害ガスが発生しない。また、基板に直接LEDチップを実装しないパッケージLEDでは、有害ガスが封止樹脂を透過して反射層に達することがない。しかしながら、本実施形態のような構造を有する発光装置1は、樹脂基板10から発生した有害ガスによって反射層が変色し、反射性が低下する。その結果、光束維持率が低下することがわかった。
【0034】
そこで本実施形態では、封止樹脂材料として、酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を用いる。酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を用いることにより、有害ガスの透過を抑制し、反射層の劣化を抑制することが可能である。
【0035】
このような酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂の例には、フェニル系シリコーン樹脂が挙げられる。
【0036】
封止樹脂層12は、本実施形態においては図1、図4及び図6に示すように、個々の発光素子11を発光素子11ごとに被覆している。個々の封止樹脂層12は、図6に示すようにドーム状の凸を成し、隣り合う封止樹脂層12どうしの裾は、図1及び図4に示すように互いに連なるように連続部12sが形成されている。その結果、図1及び図4に示すように、1つの発光素子列を構成する発光素子11の封止樹脂層12は、数珠繋ぎに連結されている。第1の実施形態の場合、封止樹脂層12は、樹脂基板10の長手方向に2列に形成されており、各発光素子11及びボンディングワイヤ17を被覆し封止している。
【0037】
封止樹脂層12は、蛍光体を含有し粘度や量が調整された、固まっていない状態の熱可塑性樹脂を、発光素子11上に滴下し、その後、加熱処理または規定時間の放置によって硬化することにより形成される。熱可塑性樹脂の滴下には、例えばディスペンサを用いることができる。
【0038】
滴下された熱可塑性樹脂は、図6に示すようにドーム形状をなす。その裾は、樹脂材料の流動性によって外周方向へ拡がる。隣り合う封止樹脂層12の裾どうしが互いに連なることで、連続部12sが形成される。したがって、隣り合う封止樹脂層12は、連続部12sによって融合し一体となって固まる。
【0039】
なお、上記の実施形態に限らず、個々の封止樹脂層12は独立し、隣り合う封止樹脂層12どうしの裾が連続していなくてもよい。また或いは、発光素子11を複数ずつ被覆するように封止樹脂層12を形成してもよい。また、封止樹脂層12の形成方法は、上記の形成方法に限定されない。
【0040】
図7は、一つの発光素子11に適用された封止樹脂層12を上面から見た模式図である。便宜的に、封止樹脂層12に被覆されている構成部材を点線で示した。封止樹脂層12の被覆部分において、反射層18がレジスト層45から露出している。発光素子11は、反射層18に載置される。発光素子11は、載置されている反射層18と隣接する反射層18のそれぞれと、ボンディングワイヤ17で接続されている。
【0041】
本実施形態において、封止樹脂層に被覆された基板上の領域、即ち、封止樹脂層12に被覆されている反射層18及びレジスト層45の面積を100%としたとき、反射層の面積は、30%以上、75%以下の範囲内である。
【0042】
反射層18は、その周囲のレジスト層45よりも反射率が高いため、反射層の面積が高い方が、発光効率が高い。例えば、反射層とレジスト層45のそれぞれの450nmにおける光反射率の差は3.5%以上である。しかし、レジスト層45は反射層よりも封止樹脂との密着性が高いため、封止樹脂層12に被覆されるレジスト層45の面積が小さすぎると、封止樹脂層の接着性が低下する。
【0043】
しかしながら、封止樹脂層12に被覆された反射層の面積を30〜75%とすることにより、反射率を高めて発光効率を向上させるとともに、封止樹脂層12の接着性を向上させることが可能である。反射層の面積が30%未満であると、発光効率が低下する。一方、反射層の面積が75%を超えると、封止樹脂層12の剥離などが生じる可能性が高くなり、信頼性が低下する。
【0044】
本実施形態に従って、酸素透過量が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱可塑性樹脂を封止樹脂材料として用い、封止樹脂層12に被覆されている反射層18の面積を30〜75%の範囲にすることにより、反射層18の劣化を抑制すると共に、発光装置1の発光効率と光束維持率を向上させることができる。これにより、発光装置1の寿命を向上させることが可能である。例えば、85℃、湿度85%で1000時間を定格点灯させた場合の光束維持率を90%以上にすることができる。
【0045】
またさらに、本実施形態において用いられる封止樹脂層には、デュロメータ(タイプA)で測定した硬さが45以上89以下の範囲である熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬さが45以上であることにより、封止樹脂層12の強度を高くすることができる。これにより、例えば発光装置を取扱う際に封止樹脂層12に物体が接触した場合でも、封止樹脂層12が破壊されることを防止できる。一方、硬さが89以下であることにより、発光装置1の点灯及び消灯による温度変化によって封止樹脂が膨張及び収縮を繰り返しても、樹脂層内部のボンディングワイヤが断線することを防止することができる。
【0046】
熱硬化性樹脂の硬さのさらに好ましい範囲は、発光装置の使用用途により変動するが、例えば62〜78の範囲とすることができる。取り扱い中に封止樹脂層12に接触する可能性が高い発光装置の場合は、硬さが高い熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。一方、取り扱い中に接触する可能性が低い発光装置の場合は、比較的硬さが低い熱可塑性樹脂を用いてボンディングワイヤの断線の可能性をより低下させることができる。
【0047】
またさらに、本実施形態において用いられる熱硬化性樹脂は、樹脂基板の表面に対して水平方向に強制的応力が印加された場合に封止樹脂層12が樹脂基板10から界面剥離するものであることが好ましい。封止樹脂層12が界面剥離する樹脂を用いることにより、応力を印加したときに封止樹脂層12の内部破壊が生じることを防ぐことができる。内部破壊が生じる樹脂を用いた場合、限界応力を超えた後、発光素子が不点灯となるまでに長時間を要することがあり、不良の発見が容易でないという問題がある。これに対して、界面剥離が生じる樹脂を用いた場合は、剥離が生じた発光素子11のみ輝度が低下するため、不良の発見が容易である。
【0048】
このような熱可塑性樹脂は、JIS鉛筆引っかき強度試験(1kg荷重)において800gの応力により、樹脂基板10から界面剥離せず、且つ、樹脂内部破壊が生じないものであることが好ましい。800gの応力により界面剥離及び樹脂内部破壊の何れもが生じない樹脂を用いることにより、封止樹脂層12の強度を確保し、発光装置1の耐久性を向上させることができる。
【0049】
上記のような熱硬化性樹脂の例には、フェニル系シリコーン樹脂及びフェニル系ハイブリッド樹脂が挙げられる。
【0050】
またさらに、本実施形態において用いられる熱硬化性樹脂は、屈折率が1.50以上1.66以下であることが好ましい。発光素子11のサファイア素子樹脂基板の屈折率が1.76程度であるため、屈折率が1.50以上である樹脂を用いた場合、サファイア素子樹脂基板から封止樹脂層12への光の取出し効率が高まる。その結果、蛍光体への到達光量が増大し、これにより、発光装置1の発光効率を向上させることができる。一方、屈折率が1.66以下である樹脂を用いることにより、封止樹脂層12から外部大気への光取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0051】
樹脂基板10は、図5及び図6に示すように、裏側の全面に亘って形成された放熱用の銅箔46のパターンを有している。このパターンは、表面側の実装パッド15aに対応するように樹脂基板10の幅方向に2つ、樹脂基板10の長手方向に9つのマトリックス状に分割された18個のブロックを含む。
【0052】
樹脂基板10は、銅箔46を備えているので、発光素子11が発生する熱は、樹脂基板10全体に均等に拡散される。したがって、樹脂基板10の放熱性能が安定する。また、図5に示すように樹脂基板10の長手方向に直交して銅箔46が形成されていない不連続ゾーン46aがあるので、熱によって樹脂基板10に生じる反りや変形が抑制される。なお、図6に示すように、銅箔46は絶縁層47により被覆されている。
【0053】
次に、上記のように構成された発光装置1の製造工程の概略について、図2から図4を参照して説明する。
【0054】
まず、図2に示すように、配線パターン15及び接続パターン14が樹脂基板10の表側に形成される。配線パターン15は、上述したような三層構造を有している。接続パターン14も配線パターン15と同様の三層構造を有している。配線パターン15は、各発光素子11に電力を供給するための給電路として機能する。接続パターン14は、第一層の銅(Cu)のパターンの上に第二層のニッケル(Ni)および第三層の銀(Ag)を電解めっきする際に、各実装パッド15aを等電位にするための接続路として機能する。
【0055】
配線パターン15及び接続パターン14の形成工程において、樹脂基板10の表面上に第一層として銅(Cu)パターンが形成される。次いで第二層としてニッケル(Ni)、さらに第三層目に反射層18として銀(Ag)が順番に電解めっきされる。
【0056】
配線パターン15及び接続パターン14が形成された樹脂基板10の表側から、図3に示すように、接続パターン14が、ルーターやトリマー等によって削り取られる。この結果、各実装パッド15aどうしの電気的接続が遮断される。接続パターン14を削り取ったことによって、貫通部40を迂回する部分を除いて長手方向に直線で矩形に凹んだ溝部141が痕跡として樹脂基板10の表側に形成される。
【0057】
配線パターン15が形成されると、発光素子列を形成するように複数の発光素子11が実装される。実装された発光素子11は、図4に示すように封止樹脂層12によってそれぞれ覆われ封止される。封止樹脂層12は、樹脂基板10の長手方向に並ぶ発光素子11の列を覆うように連続して配置される。
【0058】
次に、上述の発光装置1を備える照明装置20について、図8を参照して説明する。図8に示す照明装置20は、発光装置1が下方に向けて組み込まれており、天井に設置して使用される直付タイプである。
【0059】
照明装置20は、細長く略直方体の器具本体21を備えている。この器具本体21は、発光装置1を複数個、この実施形態では直線状に接続された2個有している。電源回路を備えた電源ユニットは、器具本体21に内蔵されている。なお、光拡散性を有する前面カバー22が、器具本体21に取付けられていて、下方に向かって開口した器具本体21の開口部を覆っている。
【0060】
上述した構成の発光装置1について、さらに説明する。発光装置1は、電源回路により通電されると、各発光素子11が一斉に点灯される。発光素子11から出射される光は、封止樹脂層12を透過されると、封止樹脂層12中の蛍光体を励起発光させる。発光素子11の出射光と封止樹脂層12の励起光とが合成されると、白色の光になる。発光装置1は、白色の光を出射する面光源として使用される。
【0061】
この場合、封止樹脂層12は、ドーム形状を有し、発光素子11が該ドームの中心に配置されているので、発光素子11から出射された光は、封止樹脂層12の境界面の内側で全反射することが抑制される。その結果、反射損失に起因する発光効率の低下が抑制される。
【0062】
また、隣り合う封止樹脂層12は、その裾において連なっている。封止樹脂層12が固まるまでの間、連続部12sによって相互に混ざるので、各封止樹脂層12の体積のばらつきは、平均化される。各封止樹脂層12の外形が平均化されるので、個々の発光素子11から出射される光出力や発光色等のばらつきが軽減される。したがって、発光装置1が照射する光が均質になる。これにより、発光装置1を備える照明装置20は、照射する光が安定する。
【0063】
第1の実施形態において、発光素子11が発光している間、実装パッド15aは、各発光素子11が発生した熱を拡散するヒートスプレッダとして機能する。発光装置1が光を出射しているとき、発光素子11から放射された光のうち樹脂基板10に向かった光は、実装パッド15aの表層に形成された反射層18において、光が利用される方向にほとんどが反射される。発光素子11が放射した光のうちで樹脂基板10に沿う方向へ向かった光は、反射率の高い白色のレジスト層45の表面で光が利用される方向に反射される。
【0064】
以上の実施形態によれば、封止樹脂で覆われた反射層の劣化が抑制されると共に、発光効率と光束維持率が向上され、寿命が向上した発光装置を提供することができる。また、そのような発光装置を備え、寿命が向上した照明装置を提供することができる。
【0065】
なお、上述の発光装置および該発光装置を備える照明装置は、屋内又は屋外で使用される照明器具やディスプレイ装置などに搭載される光源として適用され得る。
【実施例】
【0066】
試験1
封止樹脂層を構成する熱硬化性樹脂の酸素透過性と、光束維持率の関係を調査した。
【0067】
(実施例1)
幅27mm、長さ200mmのFR−4基板を用い、発光装置を製造した。同じ封止樹脂層内に4個の発光素子を3mm間隔で一列に配置した。ドーム形状の封止樹脂層の直径は29mmとした。発光素子は約3V−30mAのものを用いた。封止樹脂層の材料として、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)のフェニル系シリコーン樹脂を用いた。封止樹脂層により被覆された領域の面積に対する反射層の面積の割合は50%とした。
【0068】
(実施例2及び比較例1〜2)
封止樹脂層の材料として、表1に示した酸素透過性を有する熱硬化性樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0069】
(点灯試験)
実施例1〜2及び比較例1〜2の発光装置を、120℃で100時間点灯させ、光束維持率を測定した。その結果を表1及び図9に示す。
【表1】
【0070】
表1から分かるように、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下である熱硬化性樹脂を用いた実施例1及び2は、比較例1及び2よりも光束維持率が顕著に高かった。
【0071】
試験2
(実施例3〜4及び比較例3〜5)
封止樹脂層に被覆された領域の面積に対する反射層の面積の割合を、表2に記載したとおりにした以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0072】
(発光試験及びサイクル試験)
実施例3〜4及び比較例3〜5の発光装置を、製品製造直後に点灯させ発光効率を測定した。その結果を、反射層の面積が100%である時の発光効率を100%とした相対値で表2に示した。また、温度差160℃の条件でヒートサイクル試験を行い、封止樹脂層の剥離が生じたサイクル数を観察した。その結果を表2及び図10に示した。
【表2】
【0073】
表2から分かるように、反射層の面積の割合が低下するほど、発光効率が低下するものの、剥離が生じるサイクル数は増加した。実施例3及び4に示すように、反射層の面積を30〜75%の範囲にすることにより、発光効率が高く、且つ、寿命の高い発光装置を実現することが可能であることが示された。
【0074】
試験3
(実施例5〜8)
封止樹脂層の材料として、デュロメータ(タイプA)で測定した硬さが表3に示したとおりであり、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)であるフェニル系シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0075】
(断線試験)
実施例5〜8の発光装置を用いて、温度差160℃の条件でヒートサイクル試験を行い、ボンディングワイヤの断線が生じたサイクル数を観察した。また、各発光装置の封止樹脂層に外部応力を印加し、ボンディングワイヤの断線が生じる応力を測定した。その結果を表3及び図11に示した。
【表3】
【0076】
表3から分かるように、硬さが45以上である実施例5〜8は、断線が生じる外部応力が大きく、耐久性が高いことが示された。また、硬さが89以下である実施例6〜8は、ヒートサイクル試験において断線が生じるサイクル数が大きく、耐久性が高いことが示された。これより、実施例6及び7に示すように、硬さが45〜89である熱可塑性樹脂を用いることにより、外部応力並びにヒートサイクルに対する耐久性が高く、寿命が向上された発光装置を実現することが可能であることが示された。
【0077】
試験4
(実施例9〜10)
封止樹脂層の材料として、屈折率が表4に示したとおりであり、酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)であるフェニル系シリコーン樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に発光装置を製造した。
【0078】
(発光効率試験)
実施例9〜10の発光装置を用いて、製品製造直後に点灯させ発光効率を測定した。その結果を表4に示した。
【表4】
【0079】
屈折率が1.59である実施例10は、屈折率が1.41である実施例9よりも発光効率が高いことが示された。よって、屈折率の高い熱可塑性樹脂を封止樹脂材料に用いることにより、発光効率を改善することが可能であることが示された。
【0080】
次に、第2の実施形態に係る発光装置及びこれを備えた照明装置を説明する。この実施形態は、発光装置の発光素子を封止した封止樹脂層が、以下の点で異なる他は、第1の実施形態と同じである。そのため、以下の説明では必要により図1から図8を参照する。
【0081】
第2の実施形態でも、封止樹脂層12は、蛍光体及び透明な熱硬化性樹脂を含んでいるが、この熱硬化性樹脂には酸素透過性と共に水素透過性を有する樹脂が用いられている。
【0082】
この樹脂の水蒸気透過性は1200cm3/(m2・day・alm)以下である。同樹脂の水蒸気透過性は35g/m2以下である。このように酸素透過性と共に水素透過性を有する熱硬化性樹脂として、例えばレジン系シリコーン樹脂を用いることができる。
【0083】
前記酸素透過性を有して発光素子11を封止した封止樹脂層12は、第1の実施形態で既に説明したように酸素や有害ガスの透過性が低いので、これらのガスが、発光素子11が実装された銀製の反射層18に波及することが抑制される。しかも、封止樹脂層12は、ガス透過性が低いだけではなく、水蒸気透過性が35g/m2以下であるので、大気中の水蒸気の透過性も低い。これにより、水蒸気が封止樹脂層12を透過して反射層18に波及することも抑制される。
【0084】
このため、封止樹脂層12を透過するガスや水蒸気によって、反射層18が変色し、その反射性が低下することが、抑制される。その結果、光束維持率を向上することが可能である。
【0085】
これとともに、封止樹脂層12を透過するガスや水蒸気を原因とする、ボンディングワイヤ17の断線がし難くなる。その結果、発光装置1の寿命を向上することも可能である。
【0086】
封止樹脂層12に含まれる熱硬化性樹脂の水蒸気透過率は25g/m2以下であることが好適である。このような透過性の範囲によれば、反射層18の劣化が殆ど生じることがなく、光束維持率を改善できる。なお、熱硬化性樹脂の水蒸気透過率を「0」に近付けると、封止樹脂そう12の硬度が高くなる傾向があるので、熱硬化性樹脂の水蒸気透過率の下限値は「0」にしなくても良い。
【0087】
以上のように封止樹脂層12の熱硬化性樹脂をレジン系シリコーン樹脂とした以外は、第1の実施形態と同じ構成である第2の実施形態においても、発光装置1及びこれを備える照明装置20の寿命及び性能を向上することが可能である。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1…発光装置、10…樹脂基板、11…発光素子、12…封止樹脂層、15…配線パターン、15a…実装パッド、15b…給電導体、15c…給電端子、18…反射層、17…ボンディングワイヤ、20…照明装置、21…器具本体、45…レジスト層(保護層)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板と;
前記樹脂基板上に形成された反射層と;
前記反射層の周囲に形成された保護層と;
前記反射層上に載置された発光素子と;
前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層と;
を具備し、
前記封止樹脂層に含まれた前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、
前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記封止樹脂層は、デュロメータ(タイプA)で測定された前記熱硬化性樹脂の硬さが45以上89以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記封止樹脂層は、前記樹脂基板の表面に対して水平方向に強制的応力を印加すると前記樹脂基板から界面剥離することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記封止樹脂層に含まれた前記熱硬化性樹脂は、35g/m2以下の水蒸気透過性を更に有していることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、レジン系シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
器具本体と;
前記器具本体に配設された請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の発光装置と;
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項1】
樹脂基板と;
前記樹脂基板上に形成された反射層と;
前記反射層の周囲に形成された保護層と;
前記反射層上に載置された発光素子と;
前記反射層、前記保護層及び前記発光素子を覆う蛍光体及び熱硬化性樹脂を含む封止樹脂層と;
を具備し、
前記封止樹脂層に含まれた前記熱硬化性樹脂の酸素透過性が1200cm3/(m2・day・atm)以下であり、
前記封止樹脂層に被覆された保護層及び反射層を含む基板上の領域の面積に対する前記反射層の面積の割合は、30%以上75%以下の範囲であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記封止樹脂層は、デュロメータ(タイプA)で測定された前記熱硬化性樹脂の硬さが45以上89以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記封止樹脂層は、前記樹脂基板の表面に対して水平方向に強制的応力を印加すると前記樹脂基板から界面剥離することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記封止樹脂層に含まれた前記熱硬化性樹脂は、35g/m2以下の水蒸気透過性を更に有していることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、レジン系シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
器具本体と;
前記器具本体に配設された請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の発光装置と;
を具備することを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−12694(P2013−12694A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167518(P2011−167518)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
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