説明

発光装置及び照明装置

【課題】本実施形態は、半導体発光素子に直接蛍光体層を設ける構成であってもLEDチップ全体の温度上昇又は色ムラを抑制することができる発光装置および照明装置を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、LEDチップの上面の温度分布に応じて、具体的には、中央部が最も薄くなり、周縁部が肉厚となるように蛍光体層6を設けたことにより、LEDチップ4の発光時における上面の温度分布に高低差があったとしてもそれに応じた蛍光体層6の構成としているため、LEDチップ4の温度上昇又は色ムラを生じ難くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体発光素子を用いた発光装置およびこの発光装置を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側に樹脂層を有する金属ベース基板製の装置基板の一面に、四角い枠からなるリフレクタを設け、このリフレクタの内側に、直列回路をなす半導体発光素子であるLEDチップ列をこの列が延びる方向と直交する方向に複数並設するとともに、蛍光体が混ぜられたシリコーン樹脂等の透光性封止樹脂をリフレクタの内側に充填して、この封止樹脂で各チップ列を埋設したCOB(chip on board)型の照明装置が、従来技術として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような照明装置の各LEDチップは、例えば青色の光を発するものが用いられており、この青色の光で励起されて黄色の光を放射する蛍光体が封止樹脂に混ぜられている。このため、照明装置は、黄色の光と青色の光が混じることにより形成される白色の光で照明をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の発光装置では、全てのLEDを封止樹脂で覆うように形成するものであるため、蛍光体を多く用いなければならず、製造性が好適ではないとともにコストも高くなる傾向にある。そこで、個々のLEDチップの外面のみに部分的に蛍光体含有の蛍光体層を配設することも考えられるが、LEDチップが発光する際のLEDチップ自体の温度分布に違いが有るため単にLEDチップ上に蛍光体層を設ける構成ではLEDチップ全体の温度上昇又は色ムラが生じやすくなってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、半導体発光素子に直接蛍光体層を設ける構成であっても、LEDチップ全体の温度上昇又は色ムラを抑制することができる発光装置および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における発光装置は、基板と、基板上に形成された導電部又は反射層と、導電部と電気接続されるとともに導電部又は反射層上に配設された半導体発光素子と、
【0008】
半導体発光素子の点灯時における上面の温度分布に応じて高低差を有するように半導体発光素子の上面に配設される蛍光体を含有した蛍光体層からなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、半導体発光素子の上面において蛍光体層の高低差がもうけられているため、蛍光体層を少ない量で色ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る発光装置を示す側断面図
【図2】本実施形態の蛍光体層の変形例を示す説明図
【図3】本実施形態の蛍光体層の別の変形例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態における発光装置は、基板と、基板上に形成された導電部又は反射層と、導電部と電気接続されるとともに導電部又は反射層上に配設された半導体発光素子と、半導体発光素子の点灯時における上面の温度分布に応じて高低差を有するように半導体発光素子の上面に配設される蛍光体を含有した蛍光体層を備えるものである。
【0012】
また、本実施形態における発光装置は、蛍光体層は、半導体発光素子の上面領域において中央部の高さが周辺部の高さよりも低くなるように配設されているものである。
【0013】
本実施形態における発光装置は、基板と、基板上に形成された導電部又は反射層と、導電部と電気接続されるとともに導電部又は反射層上に配設された半導体発光素子と、半導体発光素子の点灯時における上面の温度分布に応じて高低差を有するように半導体発光素子の上面に配設される蛍光体を含有した蛍光体層とを具備していることを特徴とする。
【0014】
また、本実施形態における蛍光体層は、半導体発光素子の上面領域において中央部の高さが周辺部の高さよりも低くなるように配設されていることを特徴とする。
【0015】
また、本実施形態における蛍光体層は、半導体発光素子の上面領域において中央部の高さが周縁部の高さよりも高くなるように配設されていることを特徴とする。
【0016】
そして、実施形態に係る発光装置において、封止樹脂層の主部材としては、例えば透明シリコーン樹脂、透明ウレタン樹脂、透明アクリル樹脂等の透光性樹脂を用いることができる。また、封止樹脂層には、蛍光体を含有することができるが、蛍光体としては、YAG系、サイアロン系またはシリケート系等所望の特性に合わせてどのようなものも使用可能であるし、複数種の蛍光体を加えたものであってもよい。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施形態に係る発光装置を示す一部切欠き側断面図、図2は同じく一部切欠き平面図、図3は本実施形態の蛍光体層の変形例を示す説明図である。
【0019】
発光装置10は、基板1、絶縁部2、導電部3、複数の半導体発光素子であるLEDチップ4、蛍光体層6等を有するものである。
【0020】
基板1は例えばアルミニウム製であり、その厚さは約1mmである。この基板1の表面には絶縁部2が層状に形成されている。絶縁部2はエポキシ50wt%と無機質フィラー(Al2O3等)50wt%とからなり、その熱伝導率が1.0W/mであり、厚さは80μm程度である。
【0021】
前記絶縁部2の上面には複数の導電部3が層状に形成されている。導電部3は、例えば最下に銅箔3a(厚さが約35)が形成され、中間に無電解めっきされたニッケル層3b(厚さ3.0μm〜5.0μm)および表面側に無電解めっきされた反射層である銀層3c(厚さ0.3μm〜0.7μm)からなる。
【0022】
LEDチップ4は、ベアチップからなる半導体製の発光素子を指しており、フリップチップ型と通称されているLEDチップを好適に使用できる。なお、通称片面電極型又はフェースアップ型等のタイプも使用することができる。そして、フリップチップ型のLEDチップ4は、その底面に正極側と負極側の素子電極を有している。そして、本実施形態におけるLEDチップ4は、青色の光を発するものを用いている。
【0023】
また、LEDチップ4と導電層3を接続する共晶はんだには、代表的にはAu基はんだを用いればよく、例えばAu−Sn系等の共晶はんだを好適に用いることができる。
【0024】
枠部5は、複数のLEDチップ4、LEDチップ4が実装されている導電部3の周囲を覆うように基板1上に設けられている。そして、この枠部5は、光反射率が高くなるように形成されているものであって、本実施形態では、白色のシリコーン樹脂及びフィラーを備えて形成されており、可視光反射率が80%以上となっている。
【0025】
この枠部5の内側には、複数のLEDチップ4を覆うように封止部材7が充填されて設けられている。この封止部材7はガス透過性を有する透光性合成樹脂例えば透明シリコーン樹脂で作られており、LEDチップ4や導電部3を保護するために設けられる透明の樹脂である。
【0026】
そして、枠部5の外側には導電部3等を保護及び絶縁性を確保するための白色レジスト8が形成されており、一端部側には外部からの電力が供給されるコネクタ9が配設されている。
【0027】
蛍光体層6は、ガス透過性を有する透光性合成樹脂例えば透明シリコーン樹脂を基材として作られている。そして、
蛍光体層6には図示しない蛍光体が適量混ぜられている。蛍光体は、LEDチップ4が発する光で励起されて、LEDチップ4が発する光の色とは異なる色の光を放射する。LEDチップ4が青色光を発する本実施形態1では、白色光を出射できるようにするために、蛍光体に青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。
【0028】
また、蛍光体層6は、LEDチップ4の上面を覆うように設けられている。そして、LEDチップ4の上面における中央部分の厚みが最も薄くなり、周縁部に向かって厚みが大きくなるように高低差を有して形成されているものである。これは、LEDチップ4は、発光時において生じる熱の分布が上面側において中央部が最も高く、周縁側に向かって温度が低くなる傾向を有する。このことは、熱が高い中央部分の発光強度は周縁部と比較して相対的に小さくなることを示している。そして、この状態において、蛍光体層6をLEDチップの上面に均一に塗布する形態であると、蛍光体による光変換に伴う熱損出はLEDチップ上の全ての面で略等しい状態になるため、中央部分の温度は抑制されることなくLEDチップ全体の温度が上昇しやすくなる。このような状態になると、光取出し効率が低下してしまう虞があった。
【0029】
また、LEDチップ4における熱の分布が上面側において中央部が最も高いと中央部分の発光色は、短波長側へとシフトして青白い光が強くなるため、周縁部と比較して相対的に色温度がことなることを示している。このことは、仮に蛍光体層6をLEDチップの上面に均一に塗布する形態であると、発光時に上面の発光強度の違いによる色ムラを生じてしまうことを示している。このことは、蛍光体層の使用を少なくすることができても発光装置としての実用性が低くなってしまうものである。
【0030】
そこで、まず本実施形態においては、上記のようにLEDチップの上面の温度分布に応じて、具体的には、中央部が最も薄くなり、周縁部が肉厚となるように蛍光体層6を設けたことが特徴である。このような構成にすることによって、LEDチップ4の発光時における上面の温度分布に高低差があったとしてもそれに応じた蛍光体層6の構成としているため、中央部分の温度上昇が緩和されることによってLEDチップ4の全体の温度上昇を抑制することができる。
【0031】
なお、図2に示したようにLEDチップ4の上面に複数の凸部を有するように蛍光体層61、62、63を形成することもできる。この場合、中央部分の蛍光体層62が両サイドの蛍光体層61,63よりも低くなるように形成されているものである。
【0032】
そして、いずれの形態においても蛍光体層6における中央部分と周縁部との高低差は10μm以上100μm以下に成ることが好適である。10μm以下であると温度上昇を抑制できない範囲となり、100μ以上となっても逆に周縁部が蛍光体による光変換の影響がる強まり熱損出が多くなり好適ではない。
【0033】
また、このような蛍光体層6を形成する方法としては、スプレー方式、ジェット方式、静電塗布方式等の方法を用いて形成することができるが、高低差をつけやすいのは、ジェット方式又は静電塗布方式であるため、これらの方法を適宜用いることができる。
【0034】
そして、本実施形態のようにLEDチップ4の形態としてフリップチップ方式と高低差を設けた蛍光体層6とを組み合わせることがより好適である。これは、フリップチップ型は、LEDチップ4の上面側に上下電極形、フェースアップ型のような電極を有さないものであるため、上面における蛍光体層の高低差が設けられやすい。さらに、フリップチップ型のLEDチップは、チップ自身の発光層が上面側に位置するため、上面における温度分布の差がつきやすい特性を有するものである。したがって、フリップチップ型との組み合わせが本実施形態においては最も好適な形態である。
【0035】
また、本実施形態の変形例として、LEDチップ4に対して、中央部分の蛍光体層64が最も高くなるように設けることができる。このような構成にすることによって、LEDチップ4の発光時における上面の温度分布に高低差があったとしても、青白い光が強い中央部分の蛍光体層を肉厚として、中央部よりも長波長側の青色が放射する周縁側の蛍光体層を肉薄にする蛍光体層6の構成としているため、中央部分と周縁側とでの蛍光体層64を配設した場合における発光色の色ムラを抑制することができる。
【0036】
なお、本実施形態及び発明の発光装置は、照明装置の光源として用いることができる。照明装置としては、屋外用、屋内用の照明器具や、電球形蛍光ランプのようなものであってもよい。すなわち、各種照明装置における器具本体の照射部分に発光装置を取付けることによって照明装置を構成することができる。
【0037】
この場合、発光素子の点灯用電源装置は、器具本体内に設けてもよいし、外部に設けてもよい。また、反射体やルーバー等の制光部材を設けることや、防水構造としたり、発光装置の前面に透光性カバーを設けたりすることは適宜任意になし得ることである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…基板、3…導電部、4半導体発光素子であるLEDチップ、6…蛍光体層、10…発光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
基板上に形成された導電部又は反射層と;
導電部と電気接続されるとともに導電部又は反射層上に配設された半導体発光素子と;
半導体発光素子の点灯時における上面の温度分布に応じて高低差を有するように半導体発光素子の上面に配設される蛍光体を含有した蛍光体層と;
を具備していることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
蛍光体層は、半導体発光素子の上面領域において中央部の高さが周縁部の高さよりも低くなるように配設されていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
蛍光体層は、半導体発光素子の上面領域において中央部の高さが周縁部の高さよりも高くなるように配設されていることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の発光装置と;
発光装置が取り付けられる器具本体と;
を具備していることを特徴する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−73983(P2013−73983A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210017(P2011−210017)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】