説明

発光装置

【課題】電気光学素子の共通電極に十分な電力を供給できる電源配線構造を備えた電気光学装置を提案する。
【解決手段】本発明の電気光学装置は、基板15の有効領域11の上方に形成された第1電極層と前記第1電極層の上方に設けられた第2電極層14とを含む積層構造によって電気光学素子を構成する電気光学装置であって、前記第1電極層に電圧供給を行う第1電源線と、前記第2電極層と電気的に接続された第2電源線16と、を含み、前記第1電源線及び前記第2電源線は、ともに、前記有効領域の上方、かつ、前記第1電極層と同層又は前記第1電極層より下層に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気光学素子を備えた電気光学装置に好適な電源配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、高視野角、高コントラスト比が得られるメリットがあり、フラットパネルディスプレイの開発において期待されている。有機EL素子は蛍光性物質を含有する発光層を陽極と陰極との間に挟んで構成される電気光学素子であり、両電極間に順バイアス電流を供給することで、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子とが再結合する際の再結合エネルギーにより自発光する。このため、有機EL素子を発光させるためには、外部回路からの電源供給が必要となる。従来のアクティブマトリクス駆動型有機ELディスプレイパネルでは、画素領域に設けられた個々の画素に陽極となる画素電極を配置する一方、共通電極としての陰極を画素領域全体に被覆する構成を採用するのが一般的であった。例えば、特開平11−24606号公報(特許文献1)には、配線レイアウトの最適化により低消費電力及び発光効率を向上させることを特徴とした表示装置について開示されている。
【特許文献1】特開平11−24606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電気光学素子を用いてディスプレイパネルを実現するには、共通電極の配線抵抗が問題となる。つまり、共通電極の配線抵抗が大きいと、画面中央付の画素の電圧降下が大きくなるため、画面中央付近に十分な電流を供給することができず、正確な階調表示が困難となり、ディスプレイパネルの表示性能が低下する。このような問題はディスプレイパネルが大型になるほど、共通電極の配線抵抗が大きくなるため、深刻な問題となる。特に、透明陰極側から光を射出するトップエミッション構造においては、メタル層なみの低抵抗値を有する光透過性電極となる好適な材料は未だ開発されておらず、共通電極の低抵抗化が課題となっている。
【0004】
そこで、本発明は電気光学素子の共通電極に十分な電力を供給できる電源配線構造を備えた電気光学装置及びマトリクス基板を提案することを課題とする。また、本発明はディスプレイパネルの狭額縁化を実現できる電気光学装置及びマトリクス基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発光装置は、基板上に、行方向に配列される複数の走査線と、列方向に配列される複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差部に対応して配置されたスイッチング素子及び発光層と、前記発光層の下方側に配置された第1電極層と、前記発光層の上方側に配置された第2電極層とを備えた発光素子と、前記第2電極層に電気的に接続された電源線を含む発光装置であって、前記電源線は、行方向に隣り合う第1発光素子と第2発光素子の間に延設されて配置されてなり、行方向に隣り合う前記第2発光素子と第3発光素子の間には2本の走査線が配置されてなることを特徴とする発光装置である。
【0006】
本発明の発光装置において、前記電源線は、前記第1電極層、前記データ線及び前記走査線のいずかの層と同層からなることが好ましい。
【0007】
本発明の発光装置において、前記電源線と前記第2電極層との間に絶縁膜を有し、前記絶縁膜に形成されたコンタクトホールによって前記電源線と前記第2電極とは接続されてなることが好ましい。
【0008】
本発明の発光装置において、前記コンタクトホールは点在して配置されてなることが好ましい。
【0009】
本発明の電気光学装置は、基板の有効領域の上方に形成された第1電極層と前記第1電極層の上方に設けられた第2電極層とを含む積層構造によって電気光学素子を構成する電気光学装置であって、前記第1電極層に電圧供給を行う第1電源線と、前記第2電極層と電気的に接続された第2電源線と、を含み、前記第1電源線及び前記第2電源線は、ともに、前記有効領域の上方、かつ、前記第1電極層と同層又は前記第1電極層より下層に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このように、基板の有効領域上に積層された多層積層構造の何れかの層に第2電極層と電気的に接続する第2電源線を形成することで、第2電極層が高抵抗化しても十分な電力を供給することができる。また、第2電極層と第2電源線の電気的な接続点を多層積層構造内部に設けることができるため、ディスプレイパネルの狭額縁化を実現できる。
【0011】
ここで、「電気光学素子」とは、電気的作用により光の光学的状態を変化させる電子素子一般をいい、エレクトロルミネセンス素子などの自発光素子の他に、液晶素子のように光の偏向状態を変化させることで階調表示する電子素子を含む。また、「有効領域」とは、基板上において電気光学表示に寄与する領域、つまり、電気光学素子が形成されるべき領域をいい、本実施形態の「表示領域」と同義である。「多層積層構造」とは、基板上に積層される各種の薄膜から成る積層構造をいい、電気光学素子を構成するデバイス層だけでなく、層間絶縁膜や、電極層、電源線などを含むものとする。また、本発明において、第1電極層と第1電源線の間には、トランジスタなどの電子素子が介在していてもよい。また、第1電源線と第2電源線は製造プロセスの都合から、同一層(同一レイヤ)に形成されていてもよく、それぞれ異なる層に形成されていてもよい。
【0012】
本発明の電気光学装置において、前記第1電源線と前記第2電源線の少なくとも一部は同一層に配置されていることが好ましい。このように構成することで、製造プロセスを簡易化できる。
【0013】
本発明の電気光学装置において、前記第2電極層は前記電気光学素子に対して陰極として機能することが好ましい。第2電極層を陰極とすることで、電気光学素子の陰極の抵抗値を下げることができる。
【0014】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線は陰極補助配線として機能することが好ましい。これにより、電気光学素子の陰極に十分な電力を供給することができる。
【0015】
本発明の電気光学装置において、前記第2電極層は透光性を有することが好ましい。これにより、第2電極層側から光を射出するトップエミッション構造を実現でき、開口率を高めることができる。
【0016】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線は、前記多層積層構造を構成する何れかの層において、所定の分散密度でライン状に形成されていることが好ましい。第2電源線が所定の分散密度で分散することで、第2電極層の抵抗値を下げることができる。
【0017】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線と前記第2電極層は、前記多層積層構造の異なる層に形成されており、両者は前記多層積層構造内において電気的に接続していることが好ましい。第2電源線と第2電極層の電気的な接続位置を多層積層構造体内部に設けることで、ディスプレイパネルの狭額縁化を実現できる。
【0018】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線と前記第2電極層とが電気的に接続する位置は前記第2電源線の延設方向に沿って複数箇所に点在していることが好ましい。第2電源線と第2電極層の電気的な接続点を複数箇所設けることで、第2電極層の低抵抗化を実現できる。
【0019】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線と前記第2電極層は層間絶縁膜を介して異なる層に形成されており、両者は前記層間絶縁膜に開口されたコンタクトホールを通じて電気的に接続していることが好ましい。第2電極層と第2電源線を多層積層構造体の異なるレイヤに形成することで、両者の形成工程を分離できる。
【0020】
本発明の電気光学装置において、前記電気光学素子は略直角二方向に配列されており、前記第2電源線の配列方向は略直角二方向に配列する電気光学素子の配列方向のうち何れかの配列方向と略平行であることが好ましい。第2電源線の配列方向を電気光学素子の配列方向と平行にすることで、直角二方向に配列する電気光学素子の第2電極層に十分な電力を供給できる。
【0021】
本発明の電気光学装置において、前記第2電源線の配列ピッチは等間隔であることが好ましい。第2電源線を等間隔に配列することで、直角二方向に配列する電気光学素子に対して均等に電力を供給できる。
【0022】
本発明の電気光学装置において、前記電気光学素子はエレクトロルミネセンス素子であることが好ましい。エレクトロルミネセンス素子を用いることで、電流駆動により発光階調を調整することができる。
【0023】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備える。電子機器としては、表示装置を備えるものであれば特に限定はなく、例えば、携帯電話、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、プロジェクター、ファックス装置、デジタルカメラ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳などに適用できる。
【0024】
本発明のマトリクス基板は、第1電極層と第2電極層とを含む多層積層構造から成る電気光学素子を形成するためのマトリクス基板であって、基板の上方に形成された第1電極層と、前記第1電極層に電圧供給を行う第1電源線と、前記第1電極層の上方に形成されるべき第2電極層と電気的に接続するための第2電源線と、を含み、前記第1電源線及び前記第2電源線は、ともに、前記有効領域の上方、かつ、前記第1電極層と同層又は前記第1電極層より下層に設けられていることを特徴とする。
【0025】
このように、基板の有効領域上に積層されるべき電気光学素子の多層積層構造の何れかの層に第2電極層と電気的に接続するための第2電源線を形成することで、第2電極層が高抵抗化しても電気光学素子に十分な電流を供給することができる。また、第2電極層と第2電源線の電気的な接続点を電気光学素子の多層積層構造内部に設けることができるため、ディスプレイパネルの狭額縁化を実現できる。ここで、「マトリクス基板」とは、電気光学素子が未だ形成されていない配線基板をいうものとする。
【0026】
本発明のマトリクス基板において、前記第1電源線と前記第2電源線の少なくとも一部は同一層に配置されていることが好ましい。このように構成することで、製造プロセスを簡易化できる。
【0027】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電極層は前記電気光学素子に対して陰極として機能することが好ましい。第2電極層を陰極とすることで、電気光学素子の陰極の抵抗値を下げることができる。
【0028】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線は陰極補助配線として機能することが好ましい。これにより、電気光学素子の陰極に十分な電力を供給することができる。
【0029】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電極層は透光性を有することが好ましい。これにより、第2電極層側から光を射出するトップエミッション構造を実現でき、開口率を高めることができる。
【0030】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線は、前記多層積層構造を構成する何れかの層において、所定の分散密度でライン状に形成されていることが好ましい。第2電源線が所定の分散密度で分散することで、第2電極層の抵抗値を下げることができる。
【0031】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線と前記第2電極層は、前記多層積層構造の異なる層に形成されており、両者は前記多層積層構造内において電気的に接続していることが好ましい。第2電源線と第2電極層の電気的な接続位置を多層積層構造体内部に設けることで、ディスプレイパネルの狭額縁化を実現できる。
【0032】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線と前記第2電極層とが電気的に接続する位置は前記第2電源線の延設方向に沿って複数箇所に点在していることが好ましい。第2電源線と第2電極層の電気的な接続点を複数箇所設けることで、第2電極層の低抵抗化を実現できる。
【0033】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線と前記第2電極層は層間絶縁膜を介して異なる層に形成されており、両者は前記層間絶縁膜に開口されたコンタクトホールを通じて電気的に接続していることが好ましい。第2電極層と第2電源線を多層積層構造体の異なるレイヤに形成することで、両者の形成工程を分離できる。
【0034】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線の配列方向は略直角二方向に配列されるべき電気光学素子の配列方向のうち何れかの配列方向と略平行であることが好ましい。第2電源線の配列方向を電気光学素子の配列方向と平行にすることで、直角二方向に配列する電気光学素子の第2電極層に十分な電力を供給できる。
【0035】
本発明のマトリクス基板において、前記第2電源線の配列ピッチは等間隔であることが好ましい。第2電源線を等間隔に配列することで、直角二方向に配列する電気光学素子に対して均等に電力を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[発明の実施の形態1]
以下、各図を参照して本実施形態について説明する。
【0037】
図1は本実施形態のアクティブマトリクス型有機ELディスプレイパネル100の全体構成図である。同図に示すように、基板15には表示領域11上に形成された多層積層構造によって構成される複数の画素10と、行方向に並ぶ一群の画素10に接続する走査線に走査信号を出力する走査線ドライバ12と、列方向に並ぶ一群の画素10に接続するデータ線及び電源供給線にデータ信号及び電源電圧を供給するデータ線ドライバ13とが配置されている。画素10はN行M列の直角二方向に配列しており、画素マトリクスを形成している。各々の画素10には、RGB三原色で発光する有機EL素子が形成されている。表示領域11上に形成された多層積層構造の全面には共通電極としての陰極14が被覆成膜されている。陰極14に用いられる材料としては、電子をできるだけ多く注入できる材料、つまり、仕事関数が小さい材料が望ましい。このような導電材料としては、カルシウム、リチウム、アルミニウムなどの金属薄膜が好適である。
【0038】
尚、同図に示す有機ELディスプレイパネル100は、基板15側から光を射出するいわゆるボトムエミッション構造のタイプであるが、本発明はこれに限らず、陰極14として光透過性の導電膜を用いることで、陰極14から光を射出するいわゆるトップエミッション構造のタイプでもよい。トップエミッション構造を採用する場合には、陰極14として、ITOなどの光透過性導電材料の他に、カルシウム、リチウム、アルミニウムなどの金属薄膜を光透過可能な程度に薄膜処理した導電性半透明金属層を用いることができる。導電性半透明金属層を用いることで、陰極14の低抵抗化を実現できる。
【0039】
図2は画素10の主要回路構成図である。画素10は、スイッチングトランジスタTr1と、駆動トランジスタTr2と、保持容量Cと、発光部OLEDとを備えて構成されており、2トランジスタ方式により駆動制御される。スイッチングトランジスタTr1はnチャネル型FETであり、そのゲート端子には走査線Vselが接続されており、ドレイン端子にはデータ線Idatが接続している。駆動トランジスタTr2はpチャネル型FETであり、そのゲート端子はスイッチングトランジスタTr1のソース端子に接続されている。また、同トランジスタのソース端子は電源供給線Vddに接続されており、そのドレイン端子は発光部OLEDに接続している。さらに、同トランジスタのゲート/ソース間には保持容量Cが形成されている。上記の構成において、走査線Vselに選択信号を出力し、スイッチングトランジスタTr1を開状態にすると、データ線Idatを介して供給されたデータ信号は電圧値として保持容量Cに書き込まれる。すると、保持容量Cに書き込まれた保持電圧は1フレーム期間を通じて保持され、当該保持電圧によって、駆動トランジスタTr2のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した順バイアス電流を発光部OLEDに供給する。
【0040】
図3は画素領域内における配線レイアウトを説明するための図である。本発明においては、陰極14の低抵抗化を実現するため、表示領域11上に積層された多層積層構造の上面を被覆する面状の陰極14とは異なるレイヤに細線状の陰極補助配線16を形成し、層間絶縁膜を介して両者を電気的にコンタクトする。陰極補助配線16を形成するレイヤは特に限定されるものではないが、ディスプレイの製造プロセスを考慮すると、走査線Vselなどのメタル配線と同一の製造工程で同一のレイヤ上に形成することで、プロセス数を増大させることなく、低コストで製造できる。走査線Vselと同一工程で形成される陰極補助配線16はゲートメタル層と称することもできる。また、陰極補助配線16を形成する位置はできるだけ画素10のデッドスペースを利用することが好ましい。当該デッドスペースはデータ線Idat、走査線Vsel、電源供給線Vdd、スイッチングトランジスタTr1などの各々のレイアウト位置によって異なるため、各種のレイアウトに最適な位置を選択して陰極補助配線16を形成する。但し、データ線Idatに対して平面的に重なる位置に陰極補助配線16を形成すると、データ線Idatと陰極補助配線16との間に寄生容量が生じ、保持容量Cへのデータの書き込み不足が生じる場合があるため、データ線Idatとの位置関係を考慮して陰極補助配線16を形成する。
【0041】
同図に示す例では、2本の走査線Vselからなる一組の走査線と陰極補助配線16とが交互に行方向にレイアウトされている。つまり、N/2本の陰極補助配線16が1行おきに形成されている。走査線Vselと陰極補助配線16は各々同一レイヤにおいて、メタル配線を一括してパターニングすることにより得られ、陰極補助配線16の線幅は、2本の走査線Vselの合計線幅とほぼ等しくなるように調整されている。一方、列方向にはデータ線Idatと電源供給線Vddとが各々の列方向に1列につき1本ずつ配線されている。同図に示す配線パターンは周期的に繰り返す一単位を示すものであり、多層積層構造内のどの画素10についても同図に示す配線レイアウトになっている。つまり、本実施形態の配線レイアウトは任意の行に対して線対称となり、画素ピッチは行方向及び列方向に対して等間隔に設定されている。また、データ線Idatと走査線Vselとが交差する位置にはスイッチングトランジスタTr1が形成されている。同トランジスタのソース端子の延在方向には駆動トランジスタTr2のゲート端子が位置しており、駆動トランジスタTr2のドレイン端子はコンタクトホールh1を介して画素電極17と導通している。電圧供給線Vdd上には画素電極17の長手方向に平行して保持容量Cが形成されている。
【0042】
図4は図3のA−A'線断面図である。同図に示すように、基板15上には陰極補助配線16、層間絶縁膜21、ソースメタル層22、平坦化膜20、ITO層18、及びバンク層19が順次積層されてなる多層積層構造30が形成されている。この多層積層構造30は表示領域11上に形成されているものである。多層積層構造30の上層には陰極14が成膜されている。層間絶縁膜21はデータ線Idat及び走査線Vselを陰極補助配線16から電気的に分離するための絶縁膜であり、層間絶縁膜21上にはデータ線Idat及び走査線Vselと同一工程でパターニングされたソースメタル層22が島状に形成されている。ソースメタル層22は層間絶縁膜21内に開口するコンタクトホールh5を通じて陰極補助配線16と導通している。層間絶縁膜21上には平坦化処理された絶縁性の平坦化膜20が積層されており、その上層には島状にパターニングされたITO層18が形成されている。ITO層18とソースメタル層22は平坦化膜20に開口するコンタクトホールh3を通じて導通している。コンタクトホールh3は陰極補助配線26の延設方向に沿って複数開口しており、ITO層18とソースメタル層22との接続点を多数設けることで電気抵抗値を低減している。
【0043】
一方、平坦化膜20の上層には感光性有機材料などから成るバンク層19が成膜されている。バンク層19は個々の画素10を区切る区画部材であり、長円形状の開口部h2が画素電極17上に位置するように精密なアライメント調整の下で開口してある(図3参照)。開口部h2内において表面に露出する画素電極17上には基板下層側から正孔輸送層及び発光層が順次成膜され、さらに共通電極としての陰極14が表示領域11上に積層された多層積層構造30の上面を被覆するように成膜される。これにより、陰極/発光層/正孔輸送層/画素電極から成る発光部OLEDが形成される。
【0044】
発光部OLEDを構成するデバイス層の積層構造としては、上記の構成に限らず、陰極/発光層/画素電極、陰極/電子輸送層/発光層/画素電極、陰極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/画素電極などの構成であってもよい。つまり、正孔輸送層と電子輸送層は必ずしも必須ではなく、これらの層は任意に追加できる。正孔輸送層としては、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ヒドラジン誘導体、アリールアミン誘導体などを用いることができる。電子輸送層としては、アルミキレート錯体(Alq3)、ジスチリルビフェニル誘導体(DPVBi)、オキサジアゾール誘導体、ビスチリルアントラセン誘導体、ベンゾオキサゾールチオフェン誘導体、ペリレン類、チアゾール類などを用いることができる。また、発光層は有機材料に限らず、無機材料であってもよい。
【0045】
バンク層19の表面にはITO層18に通じる位置に精密なアライメント調整の下で開口された開口部h4が陰極補助配線16の延設方向において複数箇所に点在している。バンク層19の上層に成膜された陰極14はコンタクトホールh4を介してITO層18と導通し、さらに、ソースメタル層22を介して陰極補助配線16と導通している。このように、多層積層構造30内に形成された陰極補助配線16と陰極14とを導通することで、陰極14の電気抵抗値を下げることができ、画素10に十分な電流を供給できるように構成されている。
【0046】
本実施形態によれば、陰極14の抵抗値を低減することが可能となり、各画素に供給される電流量の不均一に起因する輝度ムラの発生を低減することが可能となる。さらに、従来ではディスプレイパネルの額縁に陰極14と陰極用電源配線とのコンタクト領域を設けていたが、本実施形態によれば、多層積層構造30内で陰極14とのコンタクトを確保できるため、狭額縁化が可能となり、デッドスペースの少ないディスプレイパネルを実現することができる。また、有機材料などから構成されるバンク層は耐熱性、耐薬品性に劣るため、バンク層上に陰極補助配線16を形成することは困難であるが、FETなどが形成されている基板15上であれば、陰極補助配線16などのメタル配線を容易に形成することができる。
【0047】
尚、本実施形態では2行に1本の割合で陰極補助配線16を形成したが、これに限らず、n(nは3以上の整数)行に1本の割合にするなど、適当な分散密度で陰極補助配線16を形成してもよい。また、陰極補助配線16を形成する位置は、多層積層構造30内の何れかの層に形成することができ、基板15の表面上に限られるものではない。
[発明の実施の形態2]
図5は本発明の第2の実施形態を示す有機ELディスプレイパネル100の配線レイアウト図である。本実施形態においては、陰極補助配線16を列方向に形成している点において、実施形態1と異なる。同図に示す例では、RGB3画素で一つのピクセルを構成するものとすると、2ピクセルにつき3本の割合で陰極補助配線16が列方向に等間隔に形成されている。また、陰極補助配線16の両側には2本のデータ線Idatが形成されている。隣接する陰極補助配線16同士の間の列には2本の電源供給線Vddが一組として形成されており、1本の陰極補助配線16と2本のデータ線Idatの合計線幅と、2本の電源供給線Vddの合計線幅とがほぼ等しくなるようにレイアウトされている。これにより、同図に示す配線レイアウトは、任意の列に対して線対称となるように構成されている。一方、行方向には各行につき1本の走査線Vselが形成されており、走査線Vselとデータ線Idatの交差点にスイッチングトランジスタTr1が形成されている。同トランジスタのソース端子の延在方向には駆動トランジスタTr2のゲート端子が位置しており、駆動トランジスタTr2のドレイン端子はコンタクトホールh1を介して画素電極17と導通している。電圧供給線Vdd上には画素電極17の長手方向に平行して保持容量Cが形成されている。
【0048】
図6は図5のB−B'線断面図である。同図に示すように、基板15上には走査線Vsel、層間絶縁膜21、陰極補助配線16、平坦化膜20、ITO層18、及びバンク層19が順次積層されてなる多層積層構造30が形成されている。この多層積層構造30は表示領域11上に形成されているものである。多層積層構造30の上層には陰極14が成膜されている。層間絶縁膜21は走査線Vselを陰極補助配線16から電気的に分離するための絶縁膜であり、層間絶縁膜21上には陰極補助配線16がライン状に形成されている。陰極補助配線16上に成膜された平坦化膜20上には島状にパターニングされたITO層18が陰極補助配線16の延設方向に沿って複数箇所に点在している。平坦化膜20にはコンタクトホールh3が開口しており、ITO層18と陰極補助配線16がコンタクトホールh3を通じて導通するよう構成されている。平坦膜20の上層には感光性有機材料などからなるバンク層19が形成され、画素電極17の位置に合わせて長円形の開口部h2が形成されている(図5参照)。開口部h2には実施形態1と同様に発光部OLEDが形成される。
【0049】
一方、バンク層19の表面にはITO層18に通じる位置に精密なアライメント調整の下で開口された開口部h4が陰極補助配線16の延設方向に沿って複数箇所に点在している。バンク層19の上層に成膜された陰極14はコンタクトホールh4を介してITO層18と導通し、さらに、陰極補助配線16と導通している。このように、画素10の列方向に沿ってライン状に複数形成された陰極補助配線16と陰極14を電気的に導通することで、画素10に十分な電流を供給できるように構成されている。
【0050】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、陰極14の抵抗値を低減することが可能となり、各画素10に供給される電流量の不均一に起因する輝度ムラの発生を低減することが可能となる。さらに、多層積層構造30の内部で陰極補助配線16と陰極14とのコンタクトを確保できるため、狭額縁化が可能となり、デッドスペースの少ないディスプレイパネルを実現することができる。尚、本実施形態では2列に1本の割合で陰極補助配線16を形成したが、これに限らず、n(nは3以上の整数)列に1本の割合にするなど、適当な分散密度で陰極補助配線16を形成してもよい。
[発明の実施の形態3]
図7は本発明の第3の実施形態を示す有機ELディスプレイパネル100の配線レイアウト図である。本実施形態においては、陰極補助配線16を行方向及び列方向に形成している点において、実施形態1及び2と異なる。ここでは、行方向及び列方向に形成される陰極補助配線16を便宜上区別するため、行方向に沿って形成される陰極補助配線16を第1陰極補助配線16−1とし、列方向に沿って形成される陰極補助配線16を第2陰極補助配線16−2とする。また、単に陰極補助配線16というときは特に断りがない限り両者を含むものとする。同図に示す例では、RGB3画素で一つのピクセルを構成するものとすると、2ピクセルにつき3本の割合で第2陰極補助配線16−2が列方向に等間隔に形成されている。また、第2陰極補助配線16−2の両側には2本のデータ線Idatが形成されている。隣接する第2陰極補助配線16−2同士の間の列には2本の電源供給線Vddが一組として形成されており、1本の第2陰極補助配線16−2と2本のデータ線Idatの合計線幅と、2本の電源供給線Vddの合計線幅とがほぼ等しくなるようにレイアウトされている。これにより、同図に示す配線レイアウトは、任意の列に対して線対称となるように構成されている。
【0051】
一方、行方向には、2本の走査線Vselからなる一組の走査線と第1陰極補助配線16−1とが交互にレイアウトされている。走査線Vselと第1陰極補助配線16−1は各々同一レイヤにおいて、メタル配線を一括してパターニングすることにより得られ、第1陰極補助配線16−1の線幅は、2本の走査線Vselの合計線幅とほぼ等しくなるように調整されている。かかる構成により、同図に示す配線レイアウトは、任意の行及び列に対して線対称となっている。
【0052】
走査線Vselとデータ線Idatの交差点にはスイッチングトランジスタTr1が形成されており、同トランジスタのソース端子の延在方向には駆動トランジスタTr2のゲート端子が位置している。駆動トランジスタTr2のドレイン端子はコンタクトホールh1を介して画素電極17と導通している。電圧供給線Vdd上には画素電極17の長手方向に平行して保持容量Cが形成されている。
【0053】
図8は図7のC−C'線断面図である。同図に示すように、基板15上には第1陰極補助配線16−1、層間絶縁膜21、平坦化膜20、ソースメタル層22、ITO層18、及びバンク層19が順次積層されてなる多層積層構造30が形成されている。この多層積層構造30は表示領域11上に形成されているものである。多層積層構造30の上層には陰極14が成膜されている。層間絶縁膜21はデータ線Idat及び電源供給線Vddを第1陰極補助配線16−1から電気的に分離するための絶縁膜である。データ線Idat及び電源供給線Vddと同一レイヤには第1陰極補助配線16−1と直交する向きに第2陰極補助配線16−2が形成されており、層間絶縁膜21に開口されたコンタクトホールh6を介して両者は電気的に接続している。
【0054】
また、層間絶縁膜21上には第2陰極補助配線16−2と同一レイヤにソースメタル層22が第1陰極補助配線16−1の延設方向に沿って複数箇所に島状に形成されている。ソースメタル層22は層間絶縁膜21に開口するコンタクトホールh5を介して第1陰極補助配線16−1と導通している。また、平坦化膜20上にはITO層18が第1陰極補助配線16−1の延設方向に沿って島状に複数所点在するように形成されており、コンタクトホールh3を介してソースメタル層22と導通している。平坦膜20の上層には感光性有機材料などからなるバンク層19が形成され、画素電極17の位置に合わせて長円形の開口部h2が形成されている(図7参照)。開口部h2には実施形態1と同様に発光部OLEDが形成される。バンク層19の表面にはITO層18に通じる位置に精密なアライメント調整の下で開口されたコンタクトホールh4が第2陰極補助配線16−2の延設方向に点在している。バンク層19の上層に成膜された陰極14は多層積層構造30内部において、陰極補助配線16と導通しており、陰極14の抵抗値を低減することにより、画素10に十分な電流を供給できるように構成されている。
【0055】
図9は図7のD−D'線断面図である。同図に示すように、基板15上には第1陰極補助配線16−1、走査線Vsel、層間絶縁膜21、第2陰極補助配線16−2、平坦化膜20、ITO層18、及びバンク層19から成る多層積層構造30が形成されている。第1陰極補助配線16−1及び第2陰極補助配線16−2は層間絶縁膜21を間に挟んで互いに直交する向きに形成されており、層間絶縁膜21に開口されたコンタクトホールh6を介して相互に導通している。第2陰極補助配線16−2の上層に積層されている平坦化膜20にはITO層18が第2陰極補助配線16−2の延設方向に沿って島状に複数箇所点在して形成されている。平坦化膜20にはコンタクトホールh3が開口しており、ITO層18と第2陰極補助配線16−2が導通している。また、バンク層19には第2陰極補助配線16−2の延設方向に沿ってコンタクトホールh4が複数箇所点在して開口しており、陰極14とITO層18とが導通している。このように、陰極14は多層積層構造30内部において、互いに直交する二方向に形成された陰極補助配線16と導通することにより、陰極14の抵抗値を大幅に下げ、画素10に十分な電力を供給できるように構成されている。このため、画素10に供給される電流量の不均一による輝度ムラの発生を低減し、優れた表示性能を実現できる。さらに、さらに、多層積層構造30の内部で陰極補助配線16と陰極14とのコンタクトを確保できるため、狭額縁化が可能となり、デッドスペースの少ないディスプレイパネルを実現することができる。
[発明の実施の形態4]
図10は本発明の電気光学装置を適用可能な電子機器の例を示す図である。同図(a)は携帯電話への適用例であり、携帯電話230は、アンテナ部231、音声出力部232、音声入力部233、操作部234、及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備えている。このように本発明の有機ELディスプレイパネル100を携帯電話230の表示部として利用可能である。同図(b)はビデオカメラへの適用例であり、ビデオカメラ240は、受像部241、操作部242、音声入力部243、及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備えている。このように本発明の有機ELディスプレイパネル100は、ファインダーや表示部として利用可能である。同図(c)は携帯型パーソナルコンピュータへの適用例であり、コンピュータ250は、カメラ部251、操作部252、及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備えている。このように本発明の有機ELディスプレイパネル100は、表示装置として利用可能である。
【0056】
同図(d)はヘッドマウントディスプレイへの適用例であり、ヘッドマウントディスプレイ260は、バンド261、光学系収納部262及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備えている。このように本発明の有機ELディスプレイパネル100は画像表示源として利用可能である。同図(e)はリア型プロジェクターへの適用例であり、プロジェクター270は、筐体271に、光源272、合成光学系273、ミラー274、ミラー275、スクリーン276、及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備えている。同図(f)はフロント型プロジェクターへの適用例であり、プロジェクター280は、筐体282に光学系281及び本発明の有機ELディスプレイパネル100を備え、画像をスクリーン283に表示可能になっている。このように本発明の有機ELディスプレイパネル100は画像表示源として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の有機ELディスプレイパネルの全体構成図である。
【図2】画素の主要回路構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係わる配線レイアウトの説明図である。
【図4】図3のA−A'線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係わる配線レイアウトの説明図である。
【図6】図5のB−B'線断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係わる配線レイアウトの説明図である。
【図8】図7のC−C'線断面図である。
【図9】図7のD−D'線断面図である。
【図10】本発明の有機ELディスプレイパネルの適用例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10…画素 11…画素領域 12…走査線ドライバ 13…データ線ドライバ 14…陰極 15…基板 16…陰極補助配線 16−1…第1陰極補助配線 16−2…第2陰極補助配線 17…画素電極 18…ITO層 19…バンク層 20…平坦化膜 21…層間絶縁膜 30…多層積層構造 100…有機ELディスプレイパネル Tr1…スイッチングトランジスタ Tr2…駆動トランジスタ C…保持容量 OLED…発光部 Vsel…走査線 Idat…データ線 Vdd…電源供給線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、行方向に配列される複数の走査線と、列方向に配列される複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線との交差部に対応して配置されたスイッチング素子及び発光層と、前記発光層の下方側に配置された第1電極層と、前記発光層の上方側に配置された第2電極層とを備えた発光素子と、前記第2電極層に電気的に接続された電源線を含む発光装置であって、
前記電源線は、行方向に隣り合う第1発光素子と第2発光素子の間に延設されて配置されてなり、
行方向に隣り合う前記第2発光素子と第3発光素子の間には2本の走査線が配置されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、前記電源線は、前記第1電極層、前記データ線及び前記走査線のいずかの層と同層からなることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2の発光装置において、前記電源線と前記第2電極層との間に絶縁膜を有し、前記絶縁膜に形成されたコンタクトホールによって前記電源線と前記第2電極とは接続されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項3記載の発光装置において、前記コンタクトホールは点在して配置されてなることを特徴とする発光装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−72390(P2006−72390A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326412(P2005−326412)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【分割の表示】特願2003−286292(P2003−286292)の分割
【原出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】