説明

発光装置

【課題】 発光装置の輝度を低下させることなく、低コストでの製造が可能な発光装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、セラミック焼結体からなる絶縁基板11、発光素子2が電気的に接続される第1の接続パッド12、外部回路に電気的に接続される第2の接続パッド13、および配線導体14を備えた発光素子実装基板1と、発光素子実装基板1の一方主面上に実装され、第1の接続パッド12と電気的に接続された発光素子2と、底板部31および底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32を備え、底板部31の上に発光素子実装基板1を搭載しており、底板部31に貫通孔311が形成されるとともに貫通孔311に一端が第2の接続パッド13と電気的に接続されて他端が外部回路と電気的に接続される接続導体4が設けられた、セラミック焼結体と同種のセラミック多孔質体からなる枠体3と、を含むことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ等のバックライトとして好適な発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具、あるいはフラットパネルディスプレイのバックライトなどの発光装置として、発光素子(発光ダイオード)を用いたものが開発されている。この発光装置は、発光素子によって発生された光を蛍光材料などによって波長の異なる光に変換して、白色光などの出力光をつくり出すものである。
【0003】
このような発光装置を用いた照明器具は、従来よりも低消費電力化および長寿命化が期待できるが、今後さらなる発光効率の向上が要求され、特にフラットパネルディスプレイのバックライトに用いられる発光装置にあっては、低コスト化の要求が強くなると予想される。
【0004】
発光装置としては、発光素子を搭載する搭載部(発光素子実装基板)上に、発光素子とこの発光素子の出射光を反射する反射部(枠体)とを備え、発光素子の周囲を取り囲むように反射部が配置された構造のものが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
そして、特許文献1に記載の発光装置においては、搭載部(発光素子実装基板)には発光素子を実装するための強度が求められるとともに配線を形成する必要があることから、この搭載部は緻密なセラミック焼結体で形成され、反射部(枠体)には高い反射率が求められることから、この反射部は緻密なセラミック焼結体よりも反射率の高い(光が透過しにくい)多孔質体で形成されている。なお、多孔質体は多数の孔の内部で光の反射が生じることから、反射率が高くなっているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−270607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1に記載された発光装置においては、反射体を基体上に載置するための載置場所の確保が必要となる。なぜなら、発光素子から発生する熱により基体と反射体とが膨張するが、このときの基体と反射体との熱膨張差によって反射体が基体から剥がれたりクラックが発生したりして光が漏れ、発光装置の輝度が低下してしまうおそれがあり、基体と反射体とを十分に接合させておく面積を確保する必要があるからである。
【0008】
また、基体にはある程度の厚みが必要となる。なぜなら、緻密なセラミック焼結体は多孔質体よりも光の反射率が低い(光が透過しやすい)ことから、基体の反射率を上げるためにある程度の厚みが必要となるからである。
【0009】
このように、特許文献1に記載された発光装置では基体の大きさを小さくすることができなかった。今後の低コスト化の要求に応えるためには、できる限り緻密なセラミック焼結体からなる基体の大きさを小さくするのが望ましい。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて案出されたものであり、発光装置の輝度を低下させること
なく、低コストでの製造が可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発光装置は、セラミック焼結体からなる絶縁基板、該絶縁基板の一方主面に形成された、発光素子が電気的に接続される第1の接続パッド、前記絶縁基板の他方主面に形成された、外部回路に電気的に接続される第2の接続パッド、および前記第1の接続パッドと前記第2の接続パッドとを電気的に接続した配線導体を備えた発光素子実装基板と、該発光素子実装基板の前記一方主面上に実装され、前記第1の接続パッドと電気的に接続された前記発光素子と、底板部および該底板部の周縁に沿って立設された側壁部を備え、前記底板部の上に前記発光素子実装基板を搭載しており、前記底板部に貫通孔が形成されるとともに該貫通孔に一端が前記第2の接続パッドと電気的に接続されて他端が前記外部回路と電気的に接続される接続導体が設けられた、前記セラミック焼結体と同種のセラミック多孔質体からなる枠体とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光装置によれば、底板部およびこの底板部の周縁に沿って立設された側壁部を備えたセラミック多孔質体からなる枠体を含み、底板部の上に発光素子実装基板を搭載していることから、発光素子実装基板の上に枠体を配置するスペースを確保する必要がなく、発光素子実装基板の大きさを小さくすることができる。また、発光素子実装基板を透過した光を底板部および側壁部で反射させることができるため、発光素子実装基板の薄型化も可能となる。したがって、発光装置の輝度を低下させることなく低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の発光装置の実施の形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の発光装置の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明の発光装置は、セラミック焼結体からなる絶縁基板11、絶縁基板11の一方主面に形成された、発光素子2が電気的に接続される第1の接続パッド12、絶縁基板11の他方主面に形成された、外部回路に電気的に接続される第2の接続パッド13、および第1の接続パッド12と第2の接続パッド13とを電気的に接続した配線導体14を備えた発光素子実装基板1と、発光素子実装基板1の一方主面上に実装され、第1の接続パッド12と電気的に接続された発光素子2と、底板部31および底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32を備え、底板部31の上に発光素子実装基板1を搭載しており、底板部31に貫通孔311が形成さ
れるとともに貫通孔311に一端が第2の接続パッド13と電気的に接続されて他端が外部回
路と電気的に接続される接続導体4が設けられた、セラミック焼結体と同種のセラミック多孔質体からなる枠体3と、を含むことを特徴とするものである。
【0016】
発光素子実装基板1を構成する絶縁基板11は、アルミナ質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体、ガラスセラミック焼結体、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等のセラミック材料で形成される。そして、絶縁基板11の反射率を大きくするためには、白色のアルミナを使用し、シリカ等のガラス成分の比率を低減するとよい。例えば、アルミナとシリカを混合したアルミナ質焼結体であれば、反射率が大きくする点で、アルミナの比率を90%以上とするのが好ましい。また、発光素子2からの発熱量が大きく、この熱の外部への放散性を良好とするような場合には、窒化アルミニウム質焼結体等のような熱伝導率の大きな材料で形成することが好ましい。
【0017】
絶縁基板11の大きさは、後述する底板部31および底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32で構成される枠体3に発光素子実装基板1を搭載できる程度の大きさであればよいが、発光素子実装基板1から枠体3へ熱が伝わりにくくなる点で、発光素子実装基板1と側壁部32との間に間隙があるのが好ましく、このようにすることでより信頼性に優れたものとなる。なお、絶縁基板11の外形形状は、底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32の内面形状と同じであれば、枠体3へ均等に発光素子実装基板1から熱が伝わることになり、好ましい。同様に、後述する接続導体4を枠体3の底板部311から突出させるように
形成することで、発光素子実装基板1と枠体3の底板部31との間に間隙を設けるのが好ましい。
【0018】
絶縁基板11は、複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することにより作製することができる。セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、ガラス粉末、フィラー粉末、有機バインダー、溶剤等から作製したセラミックスラリーを支持体上に塗布し、作製することが可能である。
【0019】
セラミックグリーンシートに用いられるセラミック粉末としては、アルミナ(Al)粉末,窒化アルミニウム(AlN)粉末,ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物)等が挙げられる。
【0020】
ガラス粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−MO系(ただし、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−MO系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。 有機バインダーとしては、従来よりセラミックグリーンシートに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系の有機バインダーがより好ましい。
【0021】
溶剤としては、上記のセラミック粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,アルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,イソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤は、セラミックスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるので好ましい。
【0022】
セラミックスラリーを塗布してセラミックグリーンシートを形成する方法としては、ドクターブレード法,リップコーター法,ダイコーター法等が挙げられる。
【0023】
セラミックグリーンシートを積層する工程は、複数のセラミックグリーンシート同士を位置合わせして積み重ね、加熱および加圧(5〜50MPa)して圧着することで作製する。
【0024】
積層したセラミックグリーンシートを焼成する工程は、有機成分の除去工程(脱脂工程)とセラミック粉末の焼結工程とから成る。有機成分の除去工程は、100〜800℃の温度範
囲で積層体を加熱することによって行ない、有機成分を分解、揮発させるものである。また、焼結工程における焼結温度は、セラミックスの組成により異なり、約800〜1600℃の
範囲内で行なう。焼成雰囲気は、セラミック粉末および導体材料により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
【0025】
絶縁基板11の一方主面には発光素子2が電気的に接続される第1の接続パッド12が形成され、絶縁基板11の他方主面には外部回路(図示せず)に電気的に接続される第2の接続パッド13が形成され、第1の接続パッド12と第2の接続パッド13とを電気的に接続した配線導体14が形成されている。
【0026】
第1の接続パッド12、第2の接続パッド13および配線導体14は、銅(Cu),銀(Ag),金(Au),パラジウム(Pd),白金(Pt)タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)等の金属材料により形成される。この形成方法としては、導体材料、有機バインダー、溶剤等を混合し作製した導電性ペーストを、セラミックグリーンシートまたは、絶縁基板11に塗布して焼成する方法が挙げられる。
【0027】
導電性ペーストに含まれる導体材料としては、例えば銅(Cu),銀(Ag),金(Au),パラジウム(Pd),白金(Pt)タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)等のうちの1種または2種以上が挙げられ、2種以上の場合はそれらを混合した導電性ペーストとする形態、2種以上のものの合金を含む導電性ペーストとする形態、個々の導電性ペーストから成るコーティングを積層させる形態等のいずれの形態であってもよい。その導体粉末はアトマイズ法、還元法等により製造されたものであり、必要により酸化防止、凝集防止等の処理を行なってもよい。また、分級等により微粉末または粗粉末を除去し粒度分布を調整したものであってもよい。導体粉末の粒度はマイクロトラック装置等の粒度測定器により測定することができる。
【0028】
有機バインダーとしては、従来導電性ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラール系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,セルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、アルキド系の有機バインダーがより好ましい。また、有機バインダーの添加量としては、導体粉末により異なるが、有機バインダーの分解性に問題なく、かつ導体粉末を分散できる量であればよい。
【0029】
有機溶剤としては、上記の導体粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオール,ブチルカルビトールアセテートおよびフタル酸等の可塑剤などが使用可能であるが、溶剤の乾燥性を考慮し、テルピネオール等の低沸点溶剤などが好ましい。
【0030】
また、導電性ペーストをセラミックグリーンシートや、絶縁基板11に塗布する方法としては、印刷用のマスクの開口部からペーストを塗布するスクリーン印刷法、インクジェットやディスペンサーなどのペーストを直接描画する方法等、いずれの方法も適用することができる。
【0031】
配線導体14は、セラミックグリーンシートや、絶縁基板11に貫通孔を形成し、導電性ペーストを充填し、焼成することにより形成することができる。セラミックグリーンシートや、絶縁基板11に貫通孔を形成する方法としては、レーザ光を照射する方法が適用できる
。レーザ光の波長としては、形成する貫通孔の径、セラミックグリーンシートの材質等により、適宜選択することができる。例えば、貫通孔の径が50μm以上の場合、波長10000
nm程度のCOレーザ装置等を用い、50μm以下の場合、波長355nm程度のUV−Y
AGレーザ装置等を使用することができる。また、セラミックグリーンシートや絶縁基板11の少なくとも一方主面に、有機フィルム等の支持体(以下、キャリアともいう)を貼り合せて使用してもよい。このようにすることで、貫通孔を形成する際に発生する熱影響による、セラミックグリーンシートや絶縁基板11の変形を抑制することができ、また、レーザ光を照射する面に支持体を貼りあわせておいて、加工した後に支持体を取り除くようにすると、レーザ光照射中に発生した、セラミックグリーンシートや絶縁基板11の加工屑がセラミックグリーンシート上に堆積するのを防止することができる。貫通孔の位置精度は、絶縁基板11に形成する方が、焼成時のセラミックグリーンシートの収縮による寸法精度の低下を除外することができるため、好ましい。
【0032】
なお、第1の接続パッド12、第2の接続パッド13および配線導体14の表面には、腐食防止、または半田および金属ワイヤ等の外部回路基板や電子部品との接続手段との良好な接続のために、Ni,Auのめっき層を施すとよい(図示せず)。
【0033】
発光素子実装基板1の一方主面上には、発光素子2が第1の接続パッド12と電気的に接続されて実装されている。発光素子2を発光素子実装基板1に接合する方法としては、例えばAg−エポキシ樹脂(Ag含有エポキシ樹脂)等の接合材が用いられる。また、発光素子2と第1の導体パッド12とを電気的に接合する方法としては、ボンディングワイヤや、金等の金属、錫−銀系及び錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう等の低融点ろう材、銀−ゲルマニウム系等の高融点ろう材、導電性有機樹脂による接合を可能とするような金属材料等を用いることができる。
【0034】
発光素子2は、発光する光のエネルギーのピーク波長が紫外線域から赤外線域までのいずれのものでもよいが、白色光や種々の色の光を視感性よく放出させるという観点から300乃至500nmの近紫外系から青色系で発光する素子であるのがよい。例えば、サファイア基板上にバッファ層,n型層,発光層およびp型層を順次積層した、GaN,GaAlN,InGaNまたはInGaAlN等の窒化ガリウム系化合物半導体、あるいはシリコンカーバイド系化合物半導体やZnSe(セレン化亜鉛)等で発光層が形成されたものが挙げられる。
【0035】
枠体3は、底板部31および底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32を備えている。また、枠体3の底板部31の上に発光素子実装基板1を搭載している。また、底板部31に貫通孔311が形成されるとともに貫通孔311に一端が第2の接続パッド13と電気的に接続されて他端が外部回路と電気的に接続される接続導体4が設けられている。
【0036】
そして、枠体3は、発光素子実装基板1の絶縁基板11を形成するセラミック焼結体と同種のセラミック多孔質体からなることが重要である。絶縁基板11を形成するセラミック焼結体は緻密体であるのに対し、枠体3は同種のセラミックスで形成された多孔質体である。
【0037】
具体的には、アルミナ質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体、ガラスセラミック焼結体、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等のセラミック材料で形成される。そして、枠体3の反射率を大きくするためには、白色のアルミナを使用し、シリカ等のガラス成分の比率を低減するとよい。例えば、アルミナとシリカを混合したアルミナ質焼結体であれば、反射率が大きくする点で、アルミナの比率を90%以上とするのが好ましい。
【0038】
そして、多孔質体であることが重要である。具体的には、絶縁基板11を形成するセラミック焼結体のかさ密度が3.6〜3.8g/cm程度であるのに対し、枠体3を形成するセラミック多孔質体のかさ密度は2.4〜2.8g/cm程度である。また、絶縁基板11を形成するセラミック焼結体の見かけ気孔率が10%以下であるのに対し、枠体3を形成するセラミック多孔質体の見かけ気孔率は20〜50%程度である。また、絶縁基板11を形成するセラミック焼結体の磁器強度が300〜600MPa程度であるのに対し、枠体3を形成するセラミック多孔質体の磁器強度は50〜150MPa程度である。
【0039】
また、底板部31および底板部31の周縁に沿って立設された側壁部32の内面の算術平均粗さRaは、0.004〜4μmであるのが良く、これにより、底板部31および底板部31の周縁
に沿って立設された側壁部32の内面が発光素子2の光を良好に反射し得る。Raが4μmを超えると、発光素子2の光を均一に反射させ得ず、発光装置の内部で乱反射する傾向にある。一方、0.004μm未満では、そのような面を安定かつ効率良く形成することが困難
となる傾向にある。
【0040】
枠体3の上記内面は、発光素子実装基板1の上面に対して40〜55度の角度で上方に向かって外側に広がるように形成されているのがよい。これにより、発光素子2が発光する光を枠体3の内面で良好に反射させて、発光装置の外部へ効率よく出射させることができ、発光装置の発光効率を極めて高いものとすることができる。上記角度が40度未満の場合、出射光が分散し、高出力、高輝度の光が得られ難い。55度を超える場合、発光装置1外部に反射される光束が平行光よりも収束して遠方にいくにつれて逆に拡散してしまい、発光装置の外部に放射されずに発光装置内で再度反射される光の成分が多くなる。
【0041】
なお、底板部31および側壁部32の反射率を改善するため、銀やアルミニウムなどの金属等を蒸着することも可能である。
【0042】
枠体3を形成する方法としては、セラミックグリーンシートを積層したものを、金型等で打ち抜く、またはアルミナ粉末、樹脂等を混合した粉末をプレス成型したものを、焼成することにより形成することができる。プレス成型では、プレス成型に使用する金型の種類を変更することにより、枠体3の底板部31、側面部32および貫通孔311を一括で形成す
ることができ、好ましい。ここで、底板部31の貫通孔311の大きさは、発光素子実装基板
1の第2の導体パッド13の位置がばらついても接続導体4が第2の導体パッド13と電気的に接続できる程度の大きさであればよい。
【0043】
枠体3となる成型体を焼成する工程は、有機成分の除去工程(脱脂工程)とセラミック粉末の焼結工程とから成る。有機成分の除去工程は、100〜800℃の温度範囲で加熱することによって行ない、有機成分を分解、揮発させるものである。また、焼結工程における焼結温度は、セラミックスの組成により異なり、約800〜1600℃の範囲内で行なう。なお、
成型体の焼成温度は絶縁基板11の焼成温度と比較して100〜300℃下回る範囲で焼成を行うと、多孔質化でき、かつハンドリングや信頼性等上必要な強度を保つことができる。焼成雰囲気は、セラミック粉末により異なり、大気中、還元雰囲気中、非酸化性雰囲気中等で行なわれ、有機成分の除去を効果的に行なうために水蒸気等を含ませてもよい。
【0044】
また、接続導体4の材料としては、金等の金属、錫−銀系及び錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう等の低融点ろう材、銀−ゲルマニウム系等の高融点ろう材、導電性有機樹脂による接合を可能とするような金属材料等を用いることができる。
【0045】
この接続導体4は、例えば、錫−銀系、錫−銀−銅系等の半田等の原料粉末を、有機樹脂・バインダーとともに混練してペーストにしたものを、スクリーン印刷法等により、塗布することにより製作することが可能である。
【0046】
第2の導体パッド13と外部回路との接続導体4を介しての接合は、リフロー法等により行なうことができる。例えば、接続導体4が錫−銀系半田からなる場合であれば、接続導体4を形成した第2の導体パッド13、貫通孔311、外部回路を順に載置し、約250℃〜300
℃程度の温度のリフロー炉中で熱処理すること等により行なわれる。ここで、接続導体4が溶融することにより、発光素子実装基板1が自重により高さが低くなり、貫通孔311の
内部を充填することができる。
【0047】
なお、枠体3には、底板部31に貫通孔311が形成されるとともに貫通孔311に第2の接続パッド13と外部回路とを電気的に接続するための接続導体4を備えていることから、発光素子2から発生した熱を外部回路へ効率よく伝達することができ、枠体3に熱が伝わりにくくなるため、枠体3の熱による特性劣化を防止することができることから、信頼性に優れたものとなる。
【0048】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば、種々の変形は可能である。
【0049】
例えば、上述の実施の形態の例では一つの発光装置内に一つの発光素子2を載置したが、一つの発光装置内に複数の発光素子2を載置してもよい。
【0050】
また、発光素子実装基板1の一方主面に、発光素子2を内側に収めるような凹部を形成して内部に載置することを妨げるものではない。凹部内に発光素子2を収めるようにしておくと、発光素子2を取り囲むための枠体3の高さを低く抑えることができ、発光素子2の低背化に有利なものとなる。また、発光素子実装基板1の凹部の壁面や底面で光が反射されるため、より発光装置の輝度が向上する。
【0051】
また、発光素子2上に光を波長変換することのできる蛍光体を含む透光性部材や、枠体3の上面に光学レンズや平板状の透光性の蓋体を形成することもできる。発光素子2より出射される光を任意に集光したり拡散させる光学レンズや平板状の透光性の蓋体を半田や接着剤等で接合することにより、所望とする放射角度で光を取り出すことができるとともに発光装置の内部への耐浸水性が改善され長期信頼性が向上する。
【0052】
透光性部材は、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、ゾルゲルガラス等のガラス部材等の発光素子2や蛍光体から発生される光を透過するものが挙げられる。透光性部材は、ディスペンサー等の注入機で発光素子2を覆うように充填され、オーブン等で熱硬化されることで、発光素子2からの光を蛍光体により波長変換し所望の波長スペクトルを有する光を取り出すことができる。ここで、本発明の発光装置では、貫通孔311の内部が接続
導体4で充填されていることから、上記透光性部材を充填する際に貫通孔311から透光性
部材が漏れ出すことがないため、好ましい。
【0053】
透光性の蓋体としては、ガラス、サファイア、石英、またはエポキシ樹脂,シリコーン樹脂,アクリル樹脂等の樹脂(プラスチック)などの透光性材料から成り、枠体3の内側に設置された、発光素子2、ボンディングワイヤ、発光素子2を覆う透明樹脂等を保護するとともに、発光装置の内部を気密に封止することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1:発光素子実装基板
11:絶縁基板
12:第1の接続パッド
13:第2の接続パッド
2:発光素子
3:枠体
31:底板部
32:側壁部
311:貫通孔
4:接続導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体からなる絶縁基板、該絶縁基板の一方主面に形成された、発光素子が電気的に接続される第1の接続パッド、前記絶縁基板の他方主面に形成された、外部回路に電気的に接続される第2の接続パッド、および前記第1の接続パッドと前記第2の接続パッドとを電気的に接続した配線導体を備えた発光素子実装基板と、
該発光素子実装基板の前記一方主面上に実装され、前記第1の接続パッドと電気的に接続された前記発光素子と、
底板部および該底板部の周縁に沿って立設された側壁部を備え、前記底板部の上に前記発光素子実装基板を搭載しており、前記底板部に貫通孔が形成されるとともに該貫通孔に一端が前記第2の接続パッドと電気的に接続されて他端が前記外部回路と電気的に接続される接続導体が設けられた、前記セラミック焼結体と同種のセラミック多孔質体からなる枠体と
を含むことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−155127(P2011−155127A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15437(P2010−15437)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】