説明

発振器用IC及びこれを用いた電圧制御水晶発振器

【課題】部品点数を減らして、部品管理も含めて簡素化できる発振器用IC及びこれを用いた電圧制御発振器を提供する。
【解決手段】水晶振動子2とともに発振回路を形成する回路素子を集積化した発振用ICチップ1aが導電板5上に固着され、前記発振用ICチップ1aと電気的に接続したリード端子7を外表面に露出して樹脂モールド9された発振器用IC1において、前記導電板5上には前記発振回路を電圧制御型とするバリキャップダイオードの半導体チップが固着され、前記ICチップとともに樹脂モールド9された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振器用ICチップ及びこれを用いた電圧制御水晶発振器(以下、電圧制御発振器とする)を技術分野とし、特に部品点数を少なくして簡素化した電圧制御発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
水晶発振器は周波数安定度が高いことから、これによる電圧制御発振器は例えばPLL制御回路の基準信号源として採用される。近年では、電圧制御発振器を構成する回路素子の多くが集積化され、部品点数も少なく小型化が促進されて、電子機器のコンパクト化に寄与している。
【0003】
(従来技術の一例)
第4図及び第5図は一従来例を説明する図で、第4図は電圧制御発振器の回路図、第5図(a)は発振器用ICの製造工程中における平面図、同図(b)は同断面図はである。
【0004】
電圧制御発振器は、概ね、発振器用IC1と、水晶振動子2と、バリキャップダイオード3と、伸張コイル4とを備える。発振器用IC1は例えばベアチップとした発振用ICチップ1aを導電板5上に固着し、回路機能面(一主面)の図示しない各IC端子とフレーム6に接続したリード端子7とをワイヤーボンディングによる金線8によって接続して、樹脂モールド9によって一体化される。そして、フレーム6から個々に分割される。
【0005】
発振用ICチップ1aは水晶振動子2とともに少なくとも発振回路を形成する分割コンデンサ10(ab)及びインバータからなる発振用増幅器11を集積化してなる。回路機能面(一主面)の各IC端子は、電源端子(Vcc)、出力端子(Vout)、バリキャップダイオード3のカソ−ド接続端子(VDc)、アース端子(E)、水晶端子(X1)、ダミー端子(NC)からなる。なお、アース用のリード端子7(E)とダミー端子(NC)は導電板5が延出し、それらを除く各リード端子7は導電板5とは独立する。そして、これらの各リード端子7はICチップの両側に配置される。
【0006】
水晶振動子2は第6図(実線)に示したようにリアクタンス特性(共振特性)を有し、直列共振点fsから並列共振点fp間の誘導性領域が利用される。これにより、インダクタ成分として機能する。そして、発振用ICチップ1a内の分割コンデンサ10(ab)と共振回路12を形成する。発振用ICチップ内の発振用増幅器11は例えばC−MOS型のインバータからなり、共振回路12に接続して帰還増幅する。要するに、共振回路12と発振用増幅器11とで発振閉ループを形成する。
【0007】
発振周波数は共振回路12の共振周波数に概ね依存し、正確には水晶振動子2の両端からみた回路側の直列等価容量いわゆる負荷容量によって決定される。すなわち、水晶振動子2のインダクタ成分と直列等価容量との共振周波数が発振周波数になる。
【0008】
バリキャップダイオード3は一方の分割コンデンサ10aと並列接続し、接続点に制御電圧Vcが印加される。なお、符号13は直流阻止コンデンサ、同14は高調波阻止抵抗である。伸張コイル4は、共振回路12内で水晶振動子2に直列に接続する。要するに、いずれも発振閉ループ内ここでは共振回路12内に挿入される。
【0009】
なお、バリキャップダイオード3はICチップと同様にベアチップとした半導体チップ(以下、VDチップとする)3aを樹脂モールド9によって一体化してなる(第7図)。この場合は、VDチップ3aの下面となるアノ−ドを一方のリード端子7′(VDa)に固着し、上面となるカソ−ドを他方のリード端子7′(VDc)にワイヤーボンディングの金線8によって接続して、樹脂モールドする。VDチップ3aのカソ−ドは発振器用IC1のVD端子7(VDc)に、アノ−ドはアース端子7(E)に接続する。
【0010】
そして、制御電圧Vcが高調波阻止抵抗14を経て、バリキャップダイオード3のカソードに逆電圧として印加される。これにより、負荷容量が変化して発振周波数を可変する。なお、バリキャップダイオード3は例えば一方の分割コンデンサ10aに置換(兼用)できる。また、両方ともにバリキャップダイオード3とすることもできる。また、高調波素子抵抗14はバリキャップダイオード3がディスクリートとして外付けであるため、同様に外付けとなる。
【0011】
また、伸張コイル4は水晶振動子2に直列に接続するので、第6図の曲線(点線)に示したようにインダクタ成分を増加させるので直列共振点fsを低域側に移動させてfs′とする。これにより、水晶振動子2の誘導性領域が広がり、発振周波数の可変範囲を広げられる。なお、伸張コイル4は個々の水晶振動子2の特性に応じてリアクタンス値を変える必要があるので、ディスクリート型となる。
【特許文献1】特開2001−44757
【特許文献2】特開2001−217651
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の電圧制御発振器では、発振用ICチップ1aとVDチップ3aとは同じ半導体チップでありながら、VDチップ3aは超階段構造として、発振回路を集積化する発振用ICチップ1aとは製造工程が異なる。したがって、バリキャップダイオード3はICチップには集積化できず、これとは独立したVDチップ3aとなる。
【0013】
これにより、電圧制御発振器の部品点数を多くして部品管理を煩雑にし、発振基板への搭載工程も多くなって生産性を低下させる。また、発振基板に対する実装面積を大きくして小型化を阻害する問題があった。
【0014】
(発明の目的)
本発明は部品点数を減らして、部品管理も含めて簡素化できる発振器用IC1及びこれを用いた電圧制御発振器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、水晶振動子とともに発振回路を形成する回路素子を集積化した発振用ICチップが導電板上に固着され、前記発振用ICチップと電気的に接続したリード端子を外表面に露出して樹脂モールドされた発振器用ICにおいて、前記導電板上には前記発振回路を電圧制御型とするバリキャップダイオードの半導体チップが固着され、前記ICチップとともに樹脂モールドされた構成とする。
【0016】
また、同請求項2では、水晶振動子とともに発振回路を形成する回路素子を集積化した発振用ICチップが導電板上に固着されて前記発振用ICチップと電気的に接続したリード端子を外表面に露出して樹脂モールドされた発振用ICと、前記発振回路を電圧制御型とするバリキャップダイオードと、前記水晶振動子の直列共振周波数を下げて周波数可変範囲を広げる伸張コイルとを備えた電圧制御水晶発振器において、前記バリキャップダイオードの半導体チップは前記導電板上に固着されて前記ICチップとともに樹脂モールドされた構成とする。
【0017】
本発明の請求項1及び2の構成であれば、発振用ICチップの固着される導電板にVDチップを固着して樹脂モールドするので、発振回路を集積化した発振用IC及び電圧制御型とするVDチップがいわばモジュール化される。これにより、電圧制御発振器を構成する部品を減少し、部品管理、生産性及び小型化を促進して、全体的に簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1図は本発明の一実施形態を説明する電圧制御型とする発振器用ICの製造工程中における平面図である。なお、前従来例と同一部分の説明は簡略又は省略する。
【0019】
電圧制御型とする発振器用IC1は、少なくとも発振回路を集積化した発振用ICチップ1aと、VDチップ3a(バリキャップダイオード3用の半導体チップ)とを一体的にして樹脂モールド9してなる。すなわち、前述した発振器用IC1の導電板5に発振用ICチップ1aとVDチップ3aとを固着する。ここでは、アース電位となる導電板5に突出部5aを設けて、突出部上にVDチップ3aの下面となるアノ−ドを固着する。突出部5aはカソ−ド接続端子7(VDc)とこれに隣接したリード端子7(Vout)との間に突出する。
【0020】
VDチップ3aの上面となるカソ−ドは、発振器用IC1のVD端子が接続するリード端子7(VDc)にワイヤーボンディングの金線8によって接続する。そして、発振用ICチップ1a、導電板5、ワイヤーボンディングの金線8及びこれと接続する各リード端子7の一端部を樹脂モールド9によって一体化し、リード端子7の他端部を外表面に露出する。なお、樹脂モールド後に、フレーム6から切断されて個々の発振器用ICチップ1に個々に分割される。
【0021】
第2図はこのような発振器用IC1を用いた電圧制御発振器の回路図であり、点線枠部が電圧制御型とするモジュール化された発振器用IC1である。これによれば、バリキャップダイオード3が発振器用IC1内に一体化される。したがって、第3図(平面図)に従来例と比較してセット基板に対する配置図を示したように、実装面積を小さくできる。但し、第3(a)は本発明による、同図(b)は従来例による配置例であり、符号16は回路パターンである。
【0022】
この場合、従来のVDチップ3aを覆う樹脂モールドや一対のリード端子7′が不要となって、発振用IC1の樹脂モールド9及びリード端子7(VDc)が兼用する。したがって、実装面積を小さくした電圧制御型のモジュールとしての発振用IC1を得ることができる。また、バリキャップダイオード3を製造する際のフレーム6も発振用IC1のフレーム6兼用されるので、製造工程を簡素化できる。
【0023】
(他の事項)
上記実施形態では高周波阻止抵抗は発振用ICの外に配置したが、発振器用IC1内に取り込んで一体化することもできる。そして、発振回路の発振用増幅器はインバータ増幅素子を用いたが、例えばトランジスタであっても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を説明する発振器用ICの製造工程中における平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による発振用ICチップを用いた電圧制御発振器の回路図である。
【図3】本発明の一実施形態の作用効果を説明する従来例との比較図で、同図(a)は本発明による、同図(b)は従来例の配置図である。
【図4】従来例を説明する電圧制御発振器の回路図である。
【図5】従来例を説明する図で、同図(a)は発振器用ICの製造工程中における平面図、同図(a)は断面図である。
【図6】従来例を説明する水晶振動子のリアクタンス特性図である。
【図7】従来例を説明するバリキャップダイオードの製造工程中における平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 発振器用IC、2 水晶振動子、3 バリキャップダイオード、4 伸張コイル、5 導電板、6 フレーム、7、7′ リード端子、8金線、9 樹脂モールド、10 分割コンデンサ、11 発振用増幅器、12 共振回路、13 直流阻止コンデンサ、14 高調波阻止抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子とともに発振回路を形成する回路素子を集積化した発振用ICチップが導電板上に固着され、前記発振用ICチップと電気的に接続したリード端子を外表面に露出して樹脂モールドされた発振器用ICにおいて、前記導電板上には前記発振回路を電圧制御型とするバリキャップダイオードの半導体チップが固着され、前記ICチップとともに樹脂モールドされたことを特徴とする発振器用IC。
【請求項2】
水晶振動子とともに発振回路を形成する回路素子を集積化した発振用ICチップが導電板上に固着されて前記発振用ICチップと電気的に接続したリード端子を外表面に露出して樹脂モールドされた発振用ICと、前記発振回路を電圧制御型とするバリキャップダイオードと、前記水晶振動子の直列共振周波数を下げて周波数可変範囲を広げる伸張コイルとを備えた電圧制御水晶発振器において、前記バリキャップダイオードの半導体チップは前記導電板上に固着されて前記ICチップとともに樹脂モールドされたことを特徴とする電圧制御水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−181037(P2007−181037A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378770(P2005−378770)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】