説明

発振回路

【課題】外付けされた振動子に応じた最適の利得を自動選択することができ、発振不良を抑制することができる発振回路の提供。
【解決手段】一対の外部端子間14,15に振動子16を外付けされて発振を行う半導体集積化された発振回路部12であって、前記一対の外部端子間14,15に接続されたノア回路21〜25及び帰還抵抗20を有しノア回路21〜25の利得を可変して発振信号を出力する発振回路部12に対し、発振回路部12の出力する発振信号の振幅を検出してノア回路21〜25の利得を制御する制御信号を生成する振幅モニタ部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の外部端子間に振動子を外付けされて発振を行う発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の発振回路の一例の構成図を示す。同図中、発振回路1は半導体集積回路化されており、外部端子2,3間に入出力端子を接続されたインバータ4及び帰還抵抗5を有している。外部端子2,3間には振動子6が外付けされると共に、振動子6の両端はコンデンサ7,8を介して接地されている。発振回路1で発生した発振信号は端子9から出力される。
【0003】
なお、特許文献1には、制御信号によって利得調整可能に構成された反転増幅器と、制御信号によって波形整形の際の利得調整可能に構成された波形整形回路を備えた発振回路が記載されている。
【特許文献1】特開2006−319628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、水晶等の振動子6を外付けする発振回路1は、異常発振や不要輻射ノイズを防ぐために、振動子6に応じて最適な利得に設定されている。一方で、振動子6として水晶を用いた場合に利得を最適化した発振回路1を設計したものであっても、顧客によってはコスト削減のため又は所望の発振周波数を得るために、セラミック振動子等の水晶とは固有振動数の異なる振動子を振動子6として接続して使用する場合がある。
【0005】
このような場合、発振回路1の利得がセラミック振動子に最適化されていないために、発振信号の振幅レベルが小さくなる等の発振不良が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、外付けされた振動子に応じた最適の利得を自動選択することができ、発振不良を抑制することができる発振回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様による発振回路は、一対の外部端子間に振動子(16)を外付けされて発振を行う半導体集積化された発振回路であって、
前記一対の外部端子間に接続された反転増幅器(21〜25)及び帰還抵抗(20)を有し前記反転増幅器の利得を可変して発振信号を出力する発振回路部(12)と、
前記発振回路部の出力する発振信号の振幅を検出して前記反転増幅器の利得を制御する制御信号を生成する振幅モニタ部(13)と、を有する。
【0008】
好ましくは、前記発振回路部(12)は、利得の異なる複数の反転増幅器(21〜25)を有しており、前記制御信号に応じた反転増幅器を選択して動作させる。
【0009】
好ましくは、前記振幅モニタ部(13)は、ヒステリシスの異なる複数のシュミット回路(26〜29)を有しており、前記複数のシュミット回路(26〜29)の出力する矩形波信号から前記発振信号の振幅を検出する。
【0010】
好ましくは、前記振幅モニタ部(13)は、生成した制御信号を保持したのち、前記複数のシュミット回路(26〜29)の動作を停止させる。
【0011】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外付けされた振動子に応じた最適の利得を自動選択することができ、発振不良を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<発振回路の構成>
図1は本発明の発振回路の一実施形態のブロック構成図、図2は本発明の発振回路の一実施形態の回路構成図を示す。両図中、半導体集積回路11内には発振回路部12と振幅モニタ部13が設けられている。半導体集積回路11の外部端子14,15間には振動子16が外付けされると共に、振動子16の両端はコンデンサ17,18を介して接地されている。
【0014】
図2において、発振回路部12は、帰還抵抗20とノア回路21,22,23,24,25を有している。帰還抵抗20は外部端子14,15間に接続されている。ノア回路21,22,23,24,25それぞれは出力端子を外部端子14に接続され、一方の入力端子を外部端子15に接続されている。
【0015】
ノア回路21,22,23,24,25それぞれの利得A1,A2,A3,A4,A5は異なっており、利得A1<利得A2<利得A3<利得A4<利得A5とされている。つまり、ノア回路21の出力するハイレベルの電圧<ノア回路22の出力するハイレベルの電圧<ノア回路23の出力するハイレベルの電圧<ノア回路24の出力するハイレベルの電圧<ノア回路25の出力するハイレベルの電圧の関係にある。
【0016】
また、ノア回路21,22,23,24,25それぞれの他方の入力端子には後述する判定回路31からセレクト信号が供給され、ノア回路21,22,23,24,25それぞれはセレクト信号が0(ローレベル)のときノア演算動作を行い、セレクト信号が1(ハイレベル)のときノア演算動作を停止する。
【0017】
ノア回路21,22,23,24,25の出力端子は、出力端子19及び振幅モニタ部13に共通に接続されている。出力端子19は発振回路12で発生した発振信号を出力する端子である。
【0018】
振幅モニタ部13は、シュミット回路26,27,28,29と判定回路31を有している。シュミット回路26,27,28,29それぞれの一方の入力端子は出力端子19に接続されており、発振回路部12の出力する発振信号が供給される。シュミット回路26,27,28,29それぞれの他方の入力端子には後述する判定回路31からストップ信号が供給されており、シュミット回路26,27,28,29それぞれはストップ信号がローレベルのとき動作を行い、ストップ信号がハイレベルのとき動作を停止してローレベルの信号を出力する。
【0019】
シュミット回路26は第1の閾値Va1と第2の閾値Va2(Va1>Va2)を有し、ヒステリシスHa=Va1−Va2とされている。シュミット回路27は第1の閾値Vb1と第2の閾値Vb2(Vb1>Vb2)を有し、ヒステリシスHb=Vb1−Vb2とされている。
【0020】
シュミット回路28は第1の閾値Vc1と第2の閾値Vc2(Vc1>Vc2)を有し、ヒステリシスHc=Vc1−Vc2とされている。シュミット回路29は第1の閾値Vd1と第2の閾値Vd2(Vd1>Vd2)を有し、ヒステリシスHd=Vd1−Vd2とされている。
【0021】
なお、各シュミット回路のヒステリシスは、Ha<Hb<Hc<Hdとされており、半導体集積回路11の電源電圧Vccが2.2Vとすると、例えばHa=0.5v、Hb=1.0v、Hc=1.5v、Hd=2.0vとされている。
【0022】
このため、シュミット回路26はストップ信号がローレベルのとき、発振回路部12から供給される発振信号の最大値と最小値との差がヒステリシスHaを超えたときに矩形波の発振信号を出力し、差がヒステリシスHa以下のとき例えばローレベルで一定の信号を出力する。
【0023】
また、シュミット回路27はストップ信号がローレベルのとき、発振回路部12からの発振信号の最大値と最小値との差がヒステリシスHbを超えたときに矩形波の発振信号を出力し、差がヒステリシスHb以下のとき例えばローレベルで一定の信号を出力する。
【0024】
また、シュミット回路28はストップ信号がローレベルのとき、発振回路部12からの発振信号の最大値と最小値との差がヒステリシスHcを超えたときに矩形波の発振信号を出力し、差がヒステリシスHc以下のとき例えばローレベルで一定の信号を出力する。
【0025】
また、シュミット回路29はストップ信号がローレベルのとき、発振回路部12からの発振信号の最大値と最小値との差がヒステリシスHdを超えたときに矩形波の発振信号を出力し、差がヒステリシスHd以下のとき例えばローレベルで一定の信号を出力する。
【0026】
判定回路31は、シュミット回路26〜29それぞれの出力信号を積分して閾値と比較することにより矩形波検出を行い、矩形波の検出時に1(ハイレベル),矩形波の非検出時に0(ローレベル)となる4系統の矩形波検出結果を得る。そして、上記4系統の矩形波検出結果に応じて5系統のセレクト信号を生成する。
【0027】
図3は、4系統の矩形波検出結果に対する5系統のセレクト信号の関係を示すテーブルの内容を示す。すなわち、シュミット回路26〜29からの端子a〜d入力の矩形波検出結果が"0000"のとき、端子e〜i出力を"11110"とする。つまり、矩形波検出結果からノア回路21では利得がかなり小さすぎノア回路25の利得A5が最適として、ノア回路25のみがノア演算動作を行うようにしている。
【0028】
また、シュミット回路26〜29からの端子a〜d入力の矩形波検出結果が"1000"のとき、端子e〜i出力を"11101"とする。つまり、矩形波検出結果からノア回路21では利得が小さすぎノア回路24の利得A4が最適として、ノア回路24のみがノア演算動作を行うようにしている。
【0029】
また、シュミット回路26〜29からの端子a〜d入力の矩形波検出結果が"1100"のとき、端子e〜i出力を"11011"とする。つまり、矩形波検出結果からノア回路21では利得が少し小さくノア回路23の利得A3が最適として、ノア回路23のみがノア演算動作を行うようにしている。
【0030】
また、シュミット回路26〜29からの端子a〜d入力の矩形波検出結果が"1110"のとき、端子e〜i出力を"10111"とする。つまり、矩形波検出結果からノア回路21では利得が僅かに小さくノア回路22の利得A2が最適として、ノア回路22のみがノア演算動作を行うようにしている。
【0031】
また、シュミット回路26〜29からの端子a〜d入力の矩形波検出結果が"1111"のとき、端子e〜i出力を"01111"とする。つまり、矩形波検出結果からノア回路21の利得A1が最適として、ノア回路21のみがノア演算動作を行うようにしている。
【0032】
図4は、判定回路31が実行する動作の一実施形態の動作シーケンスを示す。この動作は半導体集積回路11の電源投入により開始される。
【0033】
同図中、判定回路31はステップS1で、端子e〜i出力を"01111"とし、ノア回路21にのみ0(ローレベル)のセレクト信号を供給し、他のノア回路22,23,24に1(ハイレベル)のセレクト信号を供給する。また、シュミット回路26〜29それぞれに0(ローレベル)のストップ信号を供給して動作させる。これにより、ノア回路21を反転増幅器とする発振回路部12は帰還抵抗20及び振動子16を用いて発振を開始する。
【0034】
次に、判定回路31はステップS2で、図3に示すテーブルを用いて5系統のセレクト信号を生成し端子e〜iからノア回路21〜25に供給する。これによって、外付けされた振動子16に最適な利得を持つノア回路21〜25のいずれか1つがノア演算動作を行うことになる。そして、選択された最適な利得を持つ1つのノア回路を反転増幅器とする発振回路部12は帰還抵抗20及び振動子16を用いて発振を開始する。
【0035】
こののち、判定回路31はステップS3で、シュミット回路26〜29それぞれに1(ハイレベル)のストップ信号を供給する。これにより、シュミット回路26〜29は動作を停止し、消費電力を低減することができる。なお、判定回路31はステップS2で生成した5系統のセレクト信号を電源が遮断するまで保持し、端子e〜iからノア回路21〜25に供給し続ける。
【0036】
このようにして、外付けされた振動子16に応じた最適の利得を自動選択でき、発振不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の発振回路の一実施形態のブロック構成図である。
【図2】本発明の発振回路の一実施形態の回路構成図である。
【図3】4系統の矩形波検出結果に対する5系統のセレクト信号の関係を示すテーブルの内容を示す図である。
【図4】判定回路が実行する動作の一実施形態の動作シーケンスを示す図である。
【図5】従来の発振回路の一例の構成図である。
【符号の説明】
【0038】
11 半導体集積回路
12 発振回路部
13 振幅モニタ部
14,15 外部端子
16 振動子
17,18 コンデンサ
19 出力端子
20 帰還抵抗
21,22,23,24,25 ノア回路
26,27,28,29 シュミット回路
31 判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の外部端子間に振動子を外付けされて発振を行う半導体集積化された発振回路であって、
前記一対の外部端子間に接続された反転増幅器及び帰還抵抗を有し前記反転増幅器の利得を可変して発振信号を出力する発振回路部と、
前記発振回路部の出力する発振信号の振幅を検出して前記反転増幅器の利得を制御する制御信号を生成する振幅モニタ部と、
を有することを特徴とする発振回路。
【請求項2】
請求項1記載の発振回路において、
前記発振回路部は、利得の異なる複数の反転増幅器を有しており、前記制御信号に応じた反転増幅器を選択して動作させることを特徴とする発振回路。
【請求項3】
請求項2記載の発振回路において、
前記振幅モニタ部は、ヒステリシスの異なる複数のシュミット回路を有しており、前記複数のシュミット回路の出力する矩形波信号から前記発振信号の振幅を検出することを特徴とする発振回路。
【請求項4】
請求項3記載の発振回路において、
前記振幅モニタ部は、生成した制御信号を保持したのち、前記複数のシュミット回路の動作を停止させることを特徴とする発振回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−109715(P2010−109715A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279975(P2008−279975)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】