説明

発振装置及び電子機器

【課題】D級アンプにより駆動し、かつ圧電素子を利用した発振装置において、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することを抑制する。
【解決手段】この発振装置は、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子、及びインダクタ52を備え、D級アンプ(制御部50)により振動部材10に駆動信号が入力される。そして圧電振動子の静電容量、及びインダクタ52により、ローパスフィルタが構成される。このローパスフィルタは、制御部50からの駆動信号と同一周波数成分を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカの一つに、圧電素子を発振源として利用するものがある。このタイプのスピーカは、ボイスコイル及び磁石を用いた動電型のスピーカと比較して、小型化しやすい、という特徴がある。
【0003】
一方、近年は、アンプとしてD級アンプを用いるケースが増加している。
【0004】
特許文献1には、D級アンプとスピーカの間にローパスフィルタを設けることが記載されている。特許文献2には、圧電型のトランスデューサは共振特性が鋭いから静電型トランスデューサのほうが好ましいことを前提とした技術が記載されている。具体的には、特許文献2,3には、D級アンプと静電型トランスデューサの間にローパスフィルタを設けること、及び、ローパスフィルタの最後段の容量として静電型トランスデューサの負荷容量を用いることが記載されている。
【0005】
特許文献4、5には、圧電素子を用いた超音波振動装置において、駆動電源と超音波振動子の間にインダクタンスを直列に接続し、このインダクタンスと超音波振動子の容量とを用いて直列共振回路を形成することが記載されている。特許文献4では、この直列共振回路の共振周波数を、超音波振動子の共振周波数と、超音波振動子上に設けられたホーンの共振周波数の間にすることを、発明の主要部としている。特許文献5では、直列に接続したインダクタンスと超音波振動子の容量による直列共振回路の共振周波数と、等価直列コンデンサ及び等価並列インダクタからなる直列共振回路の共振周波数と、のいずれかを、超音波振動子を駆動する周波数とすることを、発明の主要部としている。
【0006】
特許文献6には、互いに異なる共振周波数を有する複数の振動子を選択して駆動する際に、選択された振動子の共振周波数に対応した駆動信号を用いることが記載されている。特許文献7には、パラメトリックスピーカの制御部が、超音波源への入力電力が最低となるように搬送波の周波数を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−330035号公報
【特許文献2】特開2007−174619号公報
【特許文献3】特開2007−181176号公報
【特許文献4】特開2004−349956号公報
【特許文献5】特開2010−239346号公報
【特許文献6】特開平8−9488号公報
【特許文献7】特開昭62−289095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧電振動子を利用したスピーカの駆動源としてD級アンプを使用する場合も、D級アンプとスピーカの間にローパスフィルタを設ける必要がある。しかし、ローパスフィルタは複数の素子を用いて形成されているため、ある程度の体積を占めることになる。すなわち、D級アンプを使用すると、圧電素子を利用したスピーカの特徴の一つである、小型化が妨げられてしまう。
【0009】
また圧電振動子を利用したスピーカは、パラメトリックスピーカとして使用されることがある。この場合、搬送波には、圧電振動子の共振周波数が用いられることが多い。しかし、圧電振動子の形状を変化させずにその共振周波数を調整することは難しい。
【0010】
また、発振装置を共振周波数で振動させる場合、発振装置には、共振周波数の設計値が記憶されている。しかし、圧電振動子は機械的品質係数Qが高いため、圧電振動子の共振周波数が設計値から外れると、共振周波数における発振装置の出力は低下してしまう。
【0011】
本発明の目的は、D級アンプにより駆動し、かつ圧電素子を利用した発振装置において、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することを抑制することにある。また本発明の別の目的は、圧電振動子の形状を変化させずに共振周波数を調整することができる発振装置及び電子機器を提供することにある。また本発明の別の目的は、圧電振動子の共振周波数が設計値から外れても、共振周波数における発振装置の出力が低下することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、圧電振動子と、
前記圧電振動子に直列に接続されたインダクタと、
を備え、
D級アンプにより前記圧電振動子に駆動信号が入力され、
前記圧電振動子の静電容量、及び前記インダクタにより、前記駆動信号と同一周波数成分を除去するローパスフィルタが形成される発振装置が提供される。
【0013】
本発明によれば、圧電振動子と、
前記圧電振動子に直列に接続されたインダクタと、
を備え、
前記圧電振動子の静電容量、及び前記インダクタにより、前記圧電振動子の共振周波数を低域側にシフトするフィルタが形成される発振装置が提供される。
【0014】
本発明によれば、圧電振動子と、
前記圧電振動子の共振周波数の実測値を記憶する周波数記憶手段と、
前記共振周波数の駆動信号を前記圧電振動子に入力する制御手段と、
を備える発振装置が提供される。
【0015】
本発明によれば、上記した発振装置を備える電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、D級アンプにより駆動し、かつ圧電素子を利用した発振装置において、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することを抑制できる。また本発明によれば、圧電振動子の形状を変化させずに共振周波数を調整することができる。また本発明によれば、圧電振動子の共振周波数が設計値から外れても、共振周波数における発振装置の出力が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示した発振装置の等価回路図である。
【図3】図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る発振装置の等価回路図である。
【図6】第4の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図7】第5の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。
【図8】圧電振動子の共振周波数の測定装置の構成を示す図である。
【図9】圧電振動子の共振周波数の測定方法を示すフローチャートである。
【図10】図7に示した発振装置の変形例を示す図である。
【図11】図10に示した電子機器において共振周波数を測定装置する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。図2は、図1に示した発振装置の等価回路図である。この発振装置は、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子、及びインダクタ52を備え、D級アンプ(制御部50)により振動部材10に駆動信号が入力される。インダクタ52は圧電振動子に直列に接続されている。そして圧電振動子の静電容量22、及びインダクタ52により、ローパスフィルタが構成される。このローパスフィルタは、制御部50からの駆動信号と同一周波数成分を除去する。以下、詳細に説明する。
【0020】
振動部材10はシート状であり、圧電素子20から発生した振動によって振動する。また振動部材10は、圧電素子20の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプラインスに依存する。コンプラインスは振動子の機械剛性であるため、振動部材10の剛性を制御することで、圧電素子20の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材10の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材10は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1Gpa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材10の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材10を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電素子20に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0021】
圧電素子20は、例えばPZTなどの圧電セラミックスにより形成されている。ただし圧電素子20は、他の圧電材料により形成されていても良い。圧電素子20の平面形状は、振動部材10の平面形状よりも小さい。
【0022】
制御部50は、外部から入力された音声信号に基づいて駆動信号を生成し、生成した駆動信号を圧電素子20に入力する。本実施形態では、制御部50は、D級アンプであり、音声信号をパルス幅変調(PWM)またはパルス密度変調(PDM)することにより、駆動信号を生成する。
【0023】
インダクタ52のインダクタンス値L[H]は、上記したように、圧電振動子の静電容量22とインダクタ52から構成されるローパスフィルタが、制御部50が生成する駆動信号と同一周波数の成分を除去するように、定められる。
【0024】
具体的には、インダクタンス値Lは、以下の式(1)を満たすように定められるのが好ましい。
【数1】


ただし、C:静電容量22[F]、f:駆動信号の周波数[Hz]
【0025】
また本図に示す例では、発振装置は支持枠40を備えている。支持枠40は、振動部材10の縁を支持している。支持枠40は、樹脂により形成されていても良いし、剛性の高い金属により形成されていても良い。
【0026】
図3は、図1に示した発振装置を電子機器に取り付けた状態を示す図である。
【0027】
本図に示す例において、支持枠40は樹脂製であり、筒の底面を塞いだ形状を有している。支持枠40の底面には、開口42が設けられている。また支持枠40の外面には、端子80,82が設けられている。端子80は配線を介して圧電素子20の一面に接続しており、端子82は、別の配線を介して振動部材10に接続している。本実施形態では、振動部材10は金属製であるため、配線は、振動部材10を介して圧電素子20に駆動信号を入力することができる。なお、端子82に接続している配線は、圧電素子20の他面に直接接続していても良い。そして端子80,82には、制御部50から駆動信号が入力される。
【0028】
そして発振装置は、支持枠40の上端面が、筐体60の内壁に取り付けられる。筐体60には、音孔62が設けられている。そして支持枠40は、平面視で音孔62を内側に含んでいる。このため、音孔62は振動部材10及び圧電素子20と対向し、振動部材10及び圧電素子20が発振した音波は、音孔62を介して筐体60の外部に放射される。
【0029】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、ローパスフィルタの容量として、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子の静電容量22を用いている。従って、ローパスフィルタを構成する部品の数を少なくすることができるため、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することを抑制できる。
【0030】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電子機器の構成を示す図であり、第1の実施形態における図3に対応している。本実施形態に係る電子機器は、発振装置のインダクタ52の構成を除いて、第1の実施形態に係る電子機器と同様である。
【0031】
本実施形態において、インダクタ52はコア部材54を有している。コア部材54は、振動部材10のうち圧電素子20が設けられていない側の面に設けられている。コア部材54は、磁性材料、例えばNi−Znフェライトなどのスピネルフェライトにより形成されている。コア部材54は、バルク材を振動部材10に取り付けた構成であっても良いし、振動部材10の裏面に膜として形成されても良い。後者の場合、コア部材54は、例えば蒸着、スパッタリング、またはめっきにより形成される。
【0032】
そしてインダクタ52は、コア部材54に巻かれている。すなわちインダクタ52も、振動部材10のうち圧電素子20が設けられていない側の面に設けられている。
【0033】
本実施形態においてインダクタ52は、上記した(1)式を満たすとともに、下記(2)式を満たしている。
【0034】
【数2】


ただし、n:インダクタ52の巻き数[回]、μ:コア部材54の透磁率[H/m]、l:インダクタ52の長さ[m]、S:インダクタ52の断面積[m]、K:長岡係数である。
【0035】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、振動部材10にインダクタ52が取り付けられているため、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することをさらに抑制できる。
【0036】
また、インダクタ52はコア部材54を有しているため、インダクタ52を小型化することができる。このため、ローパスフィルタを設けることにより発振装置が大型化することをさらに抑制できる。
【0037】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係る発振装置の等価回路図である。本実施形態に係る発振装置は、インダクタ52と静電容量22により、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子の共振周波数を低域側にシフトさせるフィルタが形成されている点、及び制御部50の動作を除いて、第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0038】
振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子は、基本共振周波数、及び高次の基本共振周波数を有している。そして各モードの共振周波数別に、等価回路を描くことができる。具体的には、n次の共振周波数の等価回路は、圧電振動子の機械インダクタンスLma_n、圧電振動子の機械的損失Rma_n、及び圧電振動子の機械コンプライアンスCma_nが、直列に接続した構成を有している。そしてn次の共振周波数fは、以下の式(3)で表される。
【0039】
【数3】

【0040】
振動部材10及び圧電素子20の大きさ及び形状は、発振装置が組み込まれる電子機器の大きさや、発振装置に求められる出力、量産性などによって定められる。そして、振動部材10及び圧電素子20の大きさ及び形状によって、振動部材10及び圧電素子20の共振周波数が定まる。n次の共振周波数が所望の値よりも大きい場合、n次の共振周波数と所望の周波数の差をfshift[Hz]とすると、インダクタ52のインダクタンスL[H]は、以下の(4)式を満たすように定められる。
【0041】
【数4】

【0042】
また、基本共振周波数の下限fmin[Hz]が定められている場合、インダクタ52のインダクタンスL[H]は、以下の(5)式も満たす必要がある。なお、fminは、例えば30kHz以上である。
【0043】
【数5】

【0044】
本実施形態において、発振装置は、例えばバラメトリックスピーカとして使用される。このため、制御部50は、外部から入力された音声データ(原信号)を変調してパラメトリックスピーカ用の変調データを生成し、このデータに基づいて駆動信号を生成する。この駆動信号の周波数は、振動部材10及び圧電素子20のn次の共振周波数である。制御部50がnとしてどの値を選択するかにより、パラメトリックスピーカの指向性を制御できる。そして本実施形態では、fshift[Hz]の大きさを調節することにより、パラメトリックスピーカの搬送波として使用できる周波数帯域に、複数のモードの共振周波数を位置させることができる。
【0045】
以上、本実施形態によれば、圧電振動子の形状を変化させずに共振周波数を調整することができる。
【0046】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。本実施形態に係る発振装置は、直流抵抗56を有する点を除いて、第3の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。本実施形態において、直流抵抗56は、インダクタ52と圧電素子20の間に設けられている。
【0047】
圧電振動子の静電容量及びインダクタ52からなるフィルタを用いた場合、圧電素子20の機械品質係数Qが見かけ上低下し、共振周波数における発振装置の出力が低下する可能性がある。そこで本実施形態では、以下の式(6)を満たすように、直流抵抗56の抵抗値R[Ω]を定める。ここで、Qtarget_nは、n次の共振周波数における圧電素子20の機械品質係数Qの目標値である。
【0048】
【数6】

【0049】
なお、発振装置がパラメトリックスピーカの発振源として使用される場合、圧電振動子の基本共振周波数が搬送波の周波数として用いられる場合が多い。このため、n=1の場合に、(6)式を満たすことは重要である。
【0050】
また、以下の(7)式を満たすことが好ましい。なお、(7)は、(8)式のように変形できる。
【0051】
【数7】


【数8】

【0052】
本実施記形態によれば、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、直流抵抗56を設けているため、圧電素子20の機械品質係数Qが見かけ上低下することを抑制できる。
【0053】
(第5の実施形態)
図7は、第5の実施形態に係る発振装置の構成を示す図である。この発振装置は、以下の点を除いて第1の実施形態に係る発振装置と同様の構成である。
【0054】
まずインダクタ52が設けられていない。また、制御部50はD級アンプではなく、パラメトリックスピーカの発振源として機能する。
【0055】
またこの発振装置は周波数記憶部51を有している。周波数記憶部51は、振動部材10及び圧電素子20からなる圧電振動子の共振周波数の実測値を記憶している。このため、圧電振動子の共振周波数が設計値から外れても、共振周波数における発振装置の出力が低下することを抑制することができる。なお、本図に示す例では、圧電振動子の共振周波数は、発振装置単体で実測されている。
【0056】
図8は、圧電振動子の共振周波数の測定装置の構成を示す図である。この測定装置は、インピーダンス測定部72、設定制御部74、マイクロフォン76、及び音圧測定部78を有している。インピーダンス測定部72は圧電素子20に接続しており、圧電素子20のインピーダンスを測定する。設定制御部74は、インピーダンス測定部72の測定結果に基づいて、振動部材10及び圧電素子20の共振周波数を算出し、算出した共振周波数を周波数記憶部51に書き込む。マイクロフォン76は、発振装置から出力された音波を電気信号に変換する。音圧測定部78は、マイクロフォン76の測定結果に基づいて、発振装置の音圧を測定し、設定制御部74に出力する。
【0057】
図9は、圧電振動子の共振周波数の測定方法を示すフローチャートである。設定制御部74は、制御部50を制御し、周波数を変えながら圧電素子20に信号を入力する。そしてインピーダンス測定部72は、圧電素子20のインピーダンスを測定し、設定制御部74に出力する。このようにして、設定制御部74は、圧電素子20のインピーダンスの周波数依存性を測定する(ステップS10)。
【0058】
次いで設定制御部74は、圧電素子20のコンダクタンスの周波数依存性を算出し、コンダクタンスが最大となる周波数を、圧電素子20の基本共振周波数と判断し(ステップS20)、周波数記憶部51に書き込む(ステップS30)。
【0059】
次いで設定制御部74は、制御部50に、周波数記憶部51に書き込んだ周波数の駆動信号を出力させる。このとき発振装置が出力した音波は、マイクロフォン76によって電気信号に変換される。音圧測定部78は、マイクロフォン76から出力された電気信号に基づいて、音圧を算出する(ステップS40)。設定制御部74は、音圧測定部78が算出した音圧が基準値以上である場合(ステップS50:Yes)、動作を終了する。また設定制御部74は、音圧測定部78が算出した音圧が基準値未満である場合(ステップS50:No)、ステップS10に戻る。
【0060】
なお、ステップS50において所定回数以上Noと判断された場合、その発振装置は不良品である可能性が高いため、警告処理をするとともに処理を終了するのが好ましい。
【0061】
図10は、図7に示した発振装置の変形例を示す図である。本図に示す例において、発振装置は電子機器の筐体60内に収容されている。そして支持枠40や筐体60が振動要素の一部として機能する場合、図8の状態における圧電振動子の共振周波数は、発振装置単体で測定された共振周波数とは異なる可能性がある。このばらつきは例えば±5Hz程度である。
【0062】
そこで本変形例では、図11に示すように、共振周波数は、筐体60に収容された状態で実測されている。このため、制御部50は、さらに高い精度でパラメトリックスピーカの変調波の周波数を設定することができる。
【0063】
本実施形態によって製造された発振装置は、周波数記憶部51に記憶されている共振周波数は、個体間で同一の値になる可能性は低く、個体ごとに異なる可能性が高い。
【0064】
以上、本実施形態によれば、周波数記憶部51は、圧電振動子の共振周波数の実測値を記憶している。このため、圧電振動子の共振周波数が設計値から外れても、共振周波数における発振装置の出力が低下することを抑制することができる。この効果は、発振装置がパラメトリックスピーカの発振源として使用される場合、特に大きくなる。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
10 振動部材
20 圧電素子
22 静電容量
40 支持枠
42 開口
50 制御部
51 周波数記憶部
52 インダクタ
54 コア部材
56 直流抵抗
60 筐体
62 音孔
72 インピーダンス測定部
74 設定制御部
76 マイクロフォン
78 音圧測定部
80 端子
82 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子と、
前記圧電振動子に直列に接続されたインダクタと、
を備え、
D級アンプにより前記圧電振動子に駆動信号が入力され、
前記圧電振動子の静電容量、及び前記インダクタにより、前記駆動信号と同一周波数成分を除去するローパスフィルタが形成される発振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発振装置において、
前記圧電振動子の静電容量をC、前記インダクタをL、前記駆動信号の周波数をfとした場合、以下の(1)式を満たす発振装置。
【数1】

【請求項3】
請求項1に記載の発振装置において、
前記D級アンプを有する発振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発振装置において、
前記圧電振動子は、
振動部材と、
前記振動部材の一面上に設けられた圧電素子と、
を備え、
前記振動部材の他面には、前記インダクタのコアとなるコア部材が設けられている発振装置。
【請求項5】
圧電振動子と、
前記圧電振動子に直列に接続されたインダクタと、
を備え、
前記圧電振動子の静電容量、及び前記インダクタにより、前記圧電振動子の共振周波数を低域側にシフトするフィルタが形成される発振装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発振装置において、
低域側にシフトした後の前記圧電振動子の基本共振周波数は、30kHz以上である発振装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の発振装置において、
前記インダクタと前記圧電振動子の間に設けられた直流抵抗をさらに備え、
前記インダクタのインダクタンスをL、前記圧電振動子の機械インダクタンスをLma_1、前記圧電振動子の機械コンプライアンスをCma_1としたときに、基本共振周波数の下限fminは以下の式(5)を満たす発振装置。
【数5】

【請求項8】
圧電振動子と、
前記圧電振動子の共振周波数の実測値を記憶する周波数記憶手段と、
前記共振周波数の駆動信号を前記圧電振動子に入力する制御手段と、
を備える発振装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発振装置において、
複数の前記発振装置で比較した場合、前記共振周波数は互いに異なる発振装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の発振装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−217010(P2012−217010A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80961(P2011−80961)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】