説明

発振起動用パルス発生回路付き発振回路

【課題】発振回路の起動時間を短縮することができ、起動時の消費電力が小さく、クリスタルインピーダンスが比較的大きい振動子を発振させることができる発振起動用パルス発生回路付き発振回路を提供すること。
【解決手段】発振起動用パルス発生回路付き発振回路1は、直列に接続された複数の発振回路側回路素子(インバーターまたはバッファー)と、振動子Y1とが並列に接続された回路を有する発振回路2と、スリーステートインバーターIC11と、その入力端子および制御端子に接続され、その入力端子に送出される第1の信号および制御端子に送出され、前記第1の信号よりもスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達する時間が遅い第2の信号を発生する信号発生部とを有し、前記スリーステートインバーターIC11から発振起動用パルスを出力する発振起動用パルス発生回路3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振起動用パルス発生回路付き発振回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、携帯電話においては、長時間の連続使用が可能なように、基準発振源として使用している水晶発振器を間欠的に動作させて、低消費電力化を図っている。このように間欠動作させる水晶発振器にあっては、駆動開始から所望の出力信号を発振するまでに要する時間が短時間であることが望まれている。
なお、水晶発振器は、電源が投入されると、発振を開始し、出力信号の振幅が徐々に増大し、安定した発振状態となる。この場合、電源投入時から発振を開始するまでの時間を「起動時間」と言い、発振開始時から出力信号の振幅が所定の値(レベル)に到達するまでの時間を「立ち上がり時間」と言う。
【0003】
ところで、圧電発振器の起動時間を短縮する従来技術として特許文献1には、圧電振動子と、増幅回路と、高速起動用回路とを備える圧電発振器が開示されている。高速起動用回路は、NPN型トランジスタと、容量とを有しており、NPN型トランジスタは、電源電圧Vccラインと圧電振動子の一端との間に順方向に接続され、容量は、電源電圧VccラインとNPN型トランジスタのベースとの間に接続されている。この圧電発振器では、電源電圧Vccが投入された後、容量への電荷の蓄積が完了するまでの所定時間、NPN型トランジスタにベース電流が流れ、NPN型トランジスタがオンし、そのNPN型トランジスタを介して電源電圧Vccラインから圧電振動子に起動促進用電圧が印加される。これにより、圧電発振器の起動時間が短縮される。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された圧電発振器では、圧電振動子に起動促進用電圧を印加する際、NPN型トランジスタにベース電流が流れるので、これにより、消費電力が大幅に増大するという欠点がある。
また、特許文献1に記載されている圧電発振器の発振回路は、クリスタルインピーダンス(CI値)が数10Ω〜数100Ω程度である厚みすべり振動子(ATカット水晶振動子)を用いることを前提とするトランジスタ回路(トランジスタ型の発振回路)で構成されている。トランジスタ型の発振回路は、ゲインが低く、このため、厚みすべり振動子を発振させることはできるが、クリスタルインピーダンスが数kΩ〜数100kΩ程度である音叉型振動子や双音叉型振動子を発振させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第02/7302号パンフレット
【特許文献2】特開2003−229720号公報
【特許文献3】特許第4332859号公報
【特許文献4】特開2009−258085号公報
【特許文献5】特公平1−16049号公報
【特許文献6】特開昭63−316509号公報
【特許文献7】特開平6−188631号公報
【特許文献8】特開2000−286637号公報
【特許文献9】特開2008−136032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発振回路の起動時間を短縮することができ、起動時の消費電力が小さく、クリスタルインピーダンスが比較的大きい振動子を発振させることができる発振起動用パルス発生回路付き発振回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路は、直列に接続された複数の発振回路側回路素子と、振動子とが並列に接続された回路を有し、前記発振回路側回路素子が、インバーターまたはバッファーである発振回路と、
スリーステートインバーターまたはスリーステートバッファーからなるスリーステート回路素子と、該スリーステート回路素子の入力端子および制御端子に接続され、前記スリーステート回路素子の入力端子に送出される第1の信号および前記スリーステート回路素子の制御端子に送出され、前記第1の信号よりも前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達する時間が遅い第2の信号を発生する信号発生部とを有し、前記スリーステート回路素子の出力端子から発振起動用パルスを出力する発振起動用パルス発生回路とを備え、
前記スリーステート回路素子の出力端子は、前記複数の発振回路側回路素子のうちのいずれかの前記発振回路側回路素子の入力端子に接続されており、
電源投入後、前記第1の信号により、前記スリーステート回路素子の出力端子から前記発振起動用パルスが出力され、その後、前記第2の信号により、前記スリーステート回路素子の出力がハイインピーダンスとなり、前記発振起動用パルス発生回路と、前記発振回路とが電気的に遮断されるよう構成されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、発振回路の起動時間(電源投入時から発振を開始するまでの時間)を短縮することができる。
また、発振開始後は、スリーステート回路素子の出力がハイインピーダンスとなり、発振起動用パルス発生回路と、発振回路とが電気的に遮断されるので、発振回路の発振に影響を与えることがない。
また、発振回路がインバーター型であるので、音叉型振動子や双音叉型振動子等のクリスタルインピーダンスが比較的大きい振動子を発振させることができ、また、特許文献1に記載されている圧電発振器に比べ、起動時の消費電力を低減することができる。
また、発振回路は、インバーターやバッファーの多段構成であるので、ゲインが高く、このため、クリスタルインピーダンスがさらに大きい振動子を発振させることができ、また、発振回路の立ち上がり時間(発振開始時から出力信号の振幅が所定の値に到達するまでの時間)を短縮することができる。
【0009】
[適用例2]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記スリーステート回路素子の出力端子は、前記複数の発振回路側回路素子のうち、途中または最後段の前記発振回路側回路素子の入力端子に接続されていることが好ましい。
これにより、発振回路の起動時間をさらに短縮することができる。
【0010】
[適用例3]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記スリーステート回路素子の出力端子が接続された前記発振回路側回路素子の1つ前段の前記発振回路側回路素子は、スリーステートインバーターまたはスリーステートバッファーからなる発振回路側スリーステート回路素子であることが好ましい。
これにより、確実に発振させることができる。
【0011】
[適用例4]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記発振回路側スリーステート回路素子の制御端子に、前記発振起動用パルス発生回路から前記第2の信号を入力する信号供給ラインを有することが好ましい。
これにより、確実に発振させることができる。
【0012】
[適用例5]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号供給ラインにインバーターが設けられており、前記第2の信号は、該インバーターにより反転して前記発振回路側スリーステート回路素子の制御端子に入力されるよう構成されていることが好ましい。
これにより、確実に発振させることができる。
【0013】
[適用例6]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記発振回路側スリーステート回路素子の出力がハイインピーダンスのとき、前記スリーステート回路素子は、作動状態であり、前記発振回路側スリーステート回路素子が作動状態のとき、前記スリーステート回路素子の出力は、ハイインピーダンスであることが好ましい。
これにより、確実に発振させることができる。
【0014】
[適用例7]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、第1の抵抗と、第1のコンデンサーとが直列に接続された第1の積分回路と、
第2の抵抗と、第2のコンデンサーとが直列に接続された第2の積分回路とを備え、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記第1の抵抗と前記第1のコンデンサーとの間に接続され、前記スリーステート回路素子の制御端子は、前記第2の抵抗と前記第2のコンデンサーとの間に接続されていることが好ましい。
これにより、簡易な構成で、確実にスリーステート回路素子を作動させることができる。
【0015】
[適用例8]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記第2のコンデンサーの容量は、前記第1のコンデンサーの容量よりも大きいことが好ましい。
これにより、第2の信号を確実に発生させることができる。
[適用例9]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、抵抗とコンデンサーとが直列に接続された積分回路と、
入力端子が前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続され、出力端子が前記スリーステート回路素子の制御端子に接続されたインバーターまたはバッファーとを有し、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続されていることが好ましい。
これにより、簡易な構成で、確実にスリーステート回路素子を作動させることができる。
【0016】
[適用例10]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、抵抗とコンデンサーとが直列に接続された積分回路と、
直列に接続され、前記複数の発振回路側回路素子と同一でかつ同数の複数の回路素子とを有し、
前記複数の回路素子のうちの初段の前記回路素子の入力端子が前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続され、最後段の前記回路素子の出力端子が前記スリーステート回路素子の制御端子に接続されており、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続されていることが好ましい。
これにより、簡易な構成で、確実にスリーステート回路素子を作動させることができる。
【0017】
[適用例11]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、タイマーを有することが好ましい。
これにより、簡易な構成で、確実にスリーステート回路素子を作動させることができる。
【0018】
[適用例12]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、前記スリーステート回路素子に直列に接続されたインバーターを有することが好ましい。
これにより、簡易な構成で、その信号発生部にインバーターを設けない場合に対し、発振起動用パルスを反転させることができる。
【0019】
[適用例13]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記信号発生部は、電源投入時から前記第1の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達するまでの時間が1〜500n秒になるよう構成されていることが好ましい。
これにより、発振回路の起動時間を短縮しつつ、確実に発振させることができる。
【0020】
[適用例14]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記発振起動用パルスは、前記第1の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達したとき、立ち上がるかまたは立ち下がる変位部を有しており、
前記信号発生部は、電源投入時から前記第2の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達するまでの時間が、電源投入時から前記発振回路に入力された前記発振起動用パルスの前記変位部が最後段の前記発振回路側回路素子から出力されるまでの時間と同一または該時間よりも大きくなるよう構成されていることが好ましい。
これにより、確実に発振させることができる。
[適用例15]
本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路では、前記振動子は、音叉型振動子または双音叉型振動子であることが好ましい。
これにより、発振の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第1実施形態を示す回路図である。
【図2】図1に示す発振起動用パルス発生回路付き発振回路のタイミングチャートである。
【図3】図1に示す発振起動用パルス発生回路付き発振回路のスリーステートインバーターIC11の真理値表である。
【図4】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第2実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図5】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第3実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図6】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第4実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図7】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第5実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図8】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第6実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図9】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第7実施形態を示す回路図である。
【図10】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第8実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
【図11】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第9実施形態を示す回路図である。
【図12】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第10実施形態を示す回路図である。
【図13】本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第11実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第1実施形態を示す回路図、図2は、図1に示す発振起動用パルス発生回路付き発振回路のタイミングチャート、図3は、図1に示す発振起動用パルス発生回路付き発振回路のスリーステートインバーターIC11の真理値表である。
【0023】
図1に示すように、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1は、多段のインバーター型の発振回路2と、発振回路2の入力側に接続され、発振起動用パルスを出力する発振起動用パルス発生回路3とを有している。
なお、パルスは、矩形のもののみならず、信号が立ち下がるかまたは立ち下がる少なくとも1つの変位部を有するものが含まれる。
【0024】
発振回路2は、コルピッツ発振回路であり、直列に接続された3つ(複数)のインバーター(発振回路側回路素子)IC1、IC2およびIC3と、直列に接続された3つ(複数)の抵抗(帰還抵抗)R1、R2およびR3と、振動子(振動片)Y1および抵抗R4の直列接続回路とが並列に接続された回路を有している。また、抵抗R1と抵抗R2との間と、インバーターIC1とインバーターIC2との間とが、接続され、また、抵抗R2と抵抗R3との間と、インバーターIC2とインバーターIC3との間とが、接続されている。
【0025】
また、発振回路2において、インバーターIC1の入力端子と、抵抗R1の一端側と、振動子Y1の一端側には、コンデンサーC1の一端側が接続され、そのコンデンサーC1の他端側は、接地されている。
また、振動子Y1と抵抗R4との間には、コンデンサーC2の一端側が接続され、そのコンデンサーC2の他端側は、接地されている。
【0026】
振動子Y1としては、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択することができるが、例えば、音叉型振動子または双音叉型振動子等を用いることが好ましい。これにより、発振の精度を向上させることができる。
また、インバーターIC1〜IC3としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、MOSFETを用いたMOSインバーター等を用いることが好ましい。
【0027】
なお、本実施形態では、発振回路2の発振回路側回路素子として、インバーターのみを用いているが、これに限らず、インバーターとバッファーとを用いてもよい。但し、発振回路2の発振回路側回路素子として、インバーターのみを用いる場合と、インバーターとバッファーとを用いる場合のいずれにおいても、発振回路2の複数の発振回路側回路素子の直列回路のうちに、奇数個のインバーターが含まれるようにする。
また、発振回路2の発振回路側回路素子の数(段数)は、3つに限らず、2つまたは4つ以上であってもよい。なお、本実施形態のように、発振回路2の発振回路側回路素子として、インバーターのみを用いる場合は、その発振回路側回路素子の数は、複数で、かつ奇数個とする。
【0028】
発振起動用パルス発生回路3は、スリーステート回路素子であるスリーステートインバーターIC11と、スリーステートインバーターIC11の入力端子および制御端子に接続され、その入力端子に送出される第1の信号および出力端子に送出される第2の信号を発生する信号発生部4とを有している。第2の信号は、第1の信号よりもスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達する時間が遅い信号である。なお、この発振起動用パルス発生回路3では、スリーステートインバーターIC11の出力端子から発振起動用パルスが出力される。
【0029】
信号発生部4は、抵抗(第1の抵抗)R11とコンデンサー(第1のコンデンサー)C11とが直列に接続された積分回路(第1積分回路)41と、抵抗R(第2の抵抗)12とコンデンサー(第2のコンデンサー)C12とが直列に接続された積分回路(第2の積分回路)42とを有している。抵抗R11およびR12の一端側は、それぞれ電源側に接続され、また、コンデンサーC11およびC12の一端側は、それぞれ接地されている。
【0030】
スリーステートインバーターIC11の入力端子は、抵抗R11とコンデンサーC11との間に接続され、スリーステートインバーターIC11の制御端子は、抵抗R12とコンデンサーC12との間に接続されている。これにより、積分回路41からスリーステートインバーターIC11の入力端子に第1の信号が送出され、積分回路42からスリーステートインバーターIC11の制御端子に第2の信号が送出される。また、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、発振回路2、すなわち、3つのインバーターIC1〜IC3のうちの初段のインバーターIC1の入力端子に接続されている。
【0031】
なお、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、3つのインバーターIC1〜IC3のうち、初段のインバーターIC1の入力端子に限らず、いずれかのインバーターの入力端子に接続されていればよい。但し、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、3つのインバーターIC1〜IC3のうち、途中のインバーターIC2の入力端子または最後段(終最終)のインバーターIC3の入力端子に接続されていることが好ましい。これについては、本実施形態においてではなく、後述する他の実施形態において説明する。
【0032】
また、本実施形態は、コンデンサーC12の容量は、コンデンサーC11の容量よりも大きく設定されている。これにより、コンデンサーC12の充電速度が、コンデンサーC11の充電速度よりも遅くなり、第2の信号は、第1の信号よりもスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達する時間が遅くなる。
また、スリーステートインバーターIC11は、制御端子が反転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、H(ハイレベル)(1)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、L(ローレベル)(0)のとき、作動状態となり、インバーターとして作動する。
【0033】
この場合、スリーステートインバーターIC11の入力側および制御側には、それぞれ、スレショルドレベルが設定されている。そして、スリーステートインバーターIC11の入力端子に入力される信号のレベルがスレショルドレベル未満の場合は、その入力端子に入力される信号のレベルは、Lとされ、スレショルドレベル以上の場合は、その入力端子に入力される信号のレベルは、Hとされる。同様に、スリーステートインバーターIC11の制御端子に入力される信号のレベルがスレショルドレベル未満の場合は、その制御端子に入力される信号のレベルは、Lとされ、スレショルドレベル以上の場合は、その制御端子に入力される信号のレベルは、Hとされる。
【0034】
なお、スリーステート回路素子としては、前記スリーステートインバーターIC11に代えて、スリーステートバッファーを用いてもよい。また、スリーステートインバーターIC11、スリーステートバッファーのいずれにおいても、制御端子が反転型のものと、非反転型のものとのいずれも用いることができる。
【0035】
次に、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1の作用(動作)について説明するが、その理解を容易にするため、まずは、発振起動用パルス発生回路3が設けられていない場合の作用を説明する。
発振回路2の発振は、電源を投入した直後の初期状態から図1中矢印で示すように、抵抗R1およびコンデンサーC1で構成される積分回路のコンデンサーC1で充電または放電されることにより起動される。その発振の起動の要因としては、積分回路の充電または放電によりインバーターIC1の入力が反転することにより、その出力が反転し、この時に発生する高調波やノイズ等により振動子Y1を経由した発振ループでの発振が誘導されるものと考えられる。
この場合の起動時間は、抵抗R1の値(抵抗)とコンデンサーC1の値(容量)との積となる。
【0036】
次に、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1について説明する。
なお、電源投入時から第1の信号がスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達するまでの時間をT1、第2の信号がスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達するまでの時間をT2とする。
図2に示すように、電源が投入されると、コンデンサーC1およびC2が、それぞれ、充電されてゆき、スリーステートインバーターIC11の入力端子に印加される電圧および制御端子に印加される電圧、すなわち、第1の信号のレベルおよび第2の信号のレベルは、それぞれ、徐々に増大する。第1の信号のレベルおよび第2の信号のレベルがそれぞれスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達していない状態では、そのスリーステートインバーターIC11入力端子に入力される信号のレベルおよび制御端子に入力される信号のレベルは、それぞれL(1)であり、スリーステートインバーターIC11の出力信号のレベルは、H(1)となる(図3参照)。
【0037】
そして、第1の信号のレベルが、スレショルドレベルに到達すると、そのスリーステートインバーターIC11の入力端子に入力される信号のレベルは、Hとなり、スリーステートインバーターIC11の出力信号のレベルは、Lとなる(図3参照)。このようにして、スリーステートインバーターIC11の出力端子から、発振起動用パルスが出力される。この場合、発振起動用パルスの立ち下がり(変位部)が発振の起動に寄与する。なお、発振起動用パルスの立ち上がりが変位部となるように構成してもよい。
【0038】
ここで、電源投入時から第1の信号がスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達するまでの時間T1を小さく設定することにより、発振の起動時間を短くすることができる。具体的には、信号発生部4は、時間T1が、1〜500n秒程度に設定されていることが好ましく、1〜300n秒程度に設定されていることがより好ましい。これにより、起動時間を短縮しつつ、確実に発振させることができる。
【0039】
発振起動用パルスは、発振回路2のインバーターIC1に入力され、インバーターIC1で反転されて出力され、さらにインバーターIC2で反転されて出力され、さらにインバーターIC3で反転されて出力される。そして、この発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されたとき(インバーターIC3の出力信号のレベルがHとLの一方から他方に変化したとき)に、発振を開始する。但し、各インバーターIC1〜IC3のそれぞれでの入力と出力との間には遅延時間が生じる。すなわち、インバーターIC1の入力とインバーターIC3の出力との間には、3つのインバーターIC1〜IC3分の遅延時間が生じる。
【0040】
そこで、信号発生部4は、電源投入時から第2の信号がスリーステートインバーターIC11のスレショルドレベルに到達するまでの時間T2が、電源投入時からインバーターIC1(発振回路2)に入力された発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されるまでの時間と同一またはその時間よりも大きくなるよう構成されていることが好ましく、同一になるよう構成されていることがより好ましい。これにより、確実に発振させることができる。
【0041】
なお、時間T2が、電源投入時からインバーターIC1に入力された発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されるまでの時間よりも大きく設定される場合、その時間T2は、2〜800n秒程度に設定されることが好ましく、2〜500n秒程度に設定されることがより好ましい。これにより、確実に発振させることができる。
【0042】
第2の信号のレベルが、スレショルドレベルに到達すると、スリーステートインバーターIC11の制御端子に入力される信号のレベルは、Hとなり、スリーステートインバーターIC11の出力は、ハイインピーダンスとなる(図3参照)。これにより、発振起動用パルス発生回路3と発振回路2とは、電気的に遮断される。したがって、時間T2を電源投入時からインバーターIC1に入力された発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されるまでの時間と同一に設定することにより、発振を開始するのと同時に、スリーステートインバーターIC11の出力がハイインピーダンスとなり、発振起動用パルス発生回路3と発振回路2とを電気的に遮断することができる。
【0043】
以上説明したように、この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、発振起動用パルス発生回路3により強制的に発振起動用パルスをインバーターIC1に入力するので、発振回路2の起動時間(電源投入時から発振を開始するまでの時間)を短縮することができる。
また、発振開始後は、スリーステートインバーターIC11の出力がハイインピーダンスとなり、発振起動用パルス発生回路3と、発振回路2とが電気的に遮断されるので、発振回路2の発振に影響を与えることがない。
【0044】
また、発振回路2がインバーター型であるので、音叉型振動子や双音叉型振動子等のクリスタルインピーダンスが比較的大きい振動子を発振させることができ、また、特許文献1に記載されている圧電発振器に比べ、起動時の消費電力を低減することができる。
また、発振回路2は、インバーターIC1、IC2、IC3の3段(多段)構成であるので、ゲインが高く、このため、クリスタルインピーダンスがさらに大きい振動子を発振させることができ、また、発振回路2の立ち上がり時間(発振開始時から出力信号の振幅が所定の値に到達するまでの時間)を短縮することができる。
【0045】
<第2実施形態>
図4は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第2実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0046】
図4に示すように、第2実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3の信号発生部4は、スリーステートインバーターIC11に直列に接続されたインバーターIC12を有している。このインバーターIC12の入力端子は、第1の積分回路41の抵抗R11とコンデンサーC11との間に接続され、出力端子は、スリーステートインバーターIC11の入力端子に接続されている。
【0047】
これにより、第1の信号は、インバーターIC12で反転されてスリーステートインバーターIC11の入力端子に入力され、スリーステートインバーターIC11の出力端子からは、第1実施形態における発振起動用パルスとは位相が逆転した発振起動用パルスが出力される。この場合、発振起動用パルスの立ち上がり(変位部)が発振の起動に寄与する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第2実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0048】
<第3実施形態>
図5は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第3実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第3実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0049】
図5に示すように、第3実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3は、スリーステート回路素子としてスリーステートバッファーIC13を有している。
このスリーステートバッファーIC13は、制御端子が反転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、H(1)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、L(0)のとき、作動状態となり、バッファーとして作動する。
【0050】
これにより、スリーステートバッファーIC13の出力端子からは、第1実施形態における発振起動用パルスとは位相が逆転した発振起動用パルスが出力される。この場合、発振起動用パルスの立ち上がり(変位部)が発振の起動に寄与する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第3実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0051】
<第4実施形態>
図6は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第4実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第4実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0052】
図6に示すように、第4実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3は、スリーステート回路素子としてスリーステートバッファーIC14を有している。
このスリーステートバッファーIC14は、制御端子が非転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、L(0)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、H(1)のとき、作動状態となり、バッファーとして作動する。
【0053】
また、信号発生部4は、入力端子が第2の積分回路42の抵抗R12とコンデンサーC12との間に接続され、出力端子がスリーステートバッファーIC14の制御端子に接続されたインバーターIC15を有している。これにより、第2の信号は、インバーターIC15で反転されてスリーステートバッファーIC14の制御端子に入力される。
これにより、スリーステートバッファーIC14の出力端子からは、第1実施形態における発振起動用パルスとは位相が逆転した発振起動用パルスが出力される。この場合、発振起動用パルスの立ち上がり(変位部)が発振の起動に寄与する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第4実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0054】
<第5実施形態>
図7は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第5実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第5実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0055】
図7に示すように、第5実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3は、スリーステート回路素子としてスリーステートインバーターIC16を有している。
このスリーステートインバーターIC16は、制御端子が非転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、L(0)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、H(1)のとき、作動状態となり、インバーターとして作動する。
【0056】
また、信号発生部4は、抵抗R11とコンデンサーC11とが直列に接続された積分回路41と、直列に接続された3つ(複数)のインバーター(回路素子)IC17、IC18およびIC19とを有している。3つのインバーターIC17〜IC19のうちの初段のインバーターIC17の入力端子は、抵抗R11とコンデンサーC11との間に接続され、最後段のインバーターIC19の出力端子は、スリーステートインバーターIC11の制御端子に接続されている。
【0057】
これにより、積分回路41からスリーステートインバーターIC16の入力端子に第1の信号が送出される。
また、積分回路41から出力された第1の信号は、インバーターIC17、IC18、IC19で、それぞれ、反転され、かつ、遅延されて、第2の信号となり、その第2の信号は、スリーステートインバーターIC16の制御端子に送出される。
【0058】
ここで、本実施形態の特徴は、抵抗R11とコンデンサーC11との間と、スリーステートインバーターIC16の制御端子との間に接続された直列回路の回路素子として、発振回路2における振動子Y1および抵抗R4の直列接続回路と並列に接続された複数の発振回路側回路素子と同一でかつ同数の回路素子を用いていることである。すなわち、発振回路2における前記複数の発振回路側回路素子は、3つのインバーターIC1〜IC3であるので、発振起動用パルス発生回路3では、前記複数の回路素子として、3つのインバーターIC17〜IC19を用いている。なお、発振回路2の前記発振回路側回路素子として、インバーターとバッファーとを用いる場合は、同様に、発振起動用パルス発生回路3の前記回路素子として、インバーターとバッファーとを用いる。
【0059】
これにより、発振回路2のインバーターIC1〜IC3での信号の遅延時間と、発振起動用パルス発生回路3のインバーターIC17〜IC19での信号の遅延時間とを一致させることができる。
すなわち、発振回路2のインバーターIC1の入力とインバーターIC3の出力との間の遅延時間と、インバーターIC17の入力とインバーターIC19の出力との間の遅延時間とが等しくなり、電源投入時から第2の信号がスリーステートインバーターIC16のスレショルドレベルに到達するまでの時間T2と、電源投入時からインバーターIC1に入力された発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されるまでの時間とが等しくなる。これによって、発振を開始するのと同時に、スリーステートインバーターIC16の出力がハイインピーダンスとなり、発振起動用パルス発生回路3と発振回路2とを電気的に遮断することができる。
【0060】
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、抵抗R11とコンデンサーC11との間と、スリーステートインバーターIC11の制御端子との間に接続された直列回路の回路素子として、発振回路2における振動子Y1および抵抗R4の直列接続回路と並列に接続された複数の発振回路側回路素子と異なる回路素子を用いてもよく、また、前記複数の発振回路側回路素子と異なる数であってもよい。
また、この第5実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0061】
<第6実施形態>
図8は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第6実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第6実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第6実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0062】
図8に示すように、第6実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3の信号発生部4は、タイマー(時計手段)を有するタイマー回路用ICで構成されている。そして、信号発生部4は、そのタイマーで時間を計測して、第1の信号および第2の信号をそれぞれ送出する。これにより、確実に第1の信号および第2の信号をそれぞれ送出することができる。
【0063】
なお、第1の信号および第2の信号としては、それぞれ、パルス信号、特に、矩形のパルス信号を用いることが好ましい。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
なお、この第6実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0064】
<第7実施形態>
図9は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第7実施形態を示す回路図である。なお、図9中には、各抵抗の抵抗値および各コンデンサーの容量の一例が記載されている。
以下、第7実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、第7実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、最後段のインバーターIC3の入力端子に接続されている。
したがって、スリーステートインバーターIC11から出力された発振起動用パルスは、発振回路2の最終段のインバーターIC3に入力され、インバーターIC3で反転されて出力される。そして、この発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されたとき(インバーターIC3の出力信号のレベルがHとLの一方から他方に変化したとき)に、発振を開始する。
【0066】
このように、本実施形態では、スリーステートインバーターIC11の出力端子が初段のインバーターIC1の入力端子に接続されている場合に比べ、発振回路2を起動する際、初段のインバーターIC1および途中のインバーターIC2での発振起動用パルス(信号)の遅延がないので、発振回路2の起動時間を短縮することができる。
なお、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、途中のインバーターIC2の入力端子に接続されていてもよいが、最後段のインバーターIC3の入力端子に接続されている方が、発振回路2の起動時間をより短縮でき、好ましい。
【0067】
また、スリーステートインバーターIC11の出力端子が接続されたインバーターIC3の1つ前段の発振回路側回路素子には、スリーステートインバーター(発振回路側スリーステート回路素子)IC4を用いている。このスリーステートインバーターIC4は、制御端子が反転型のものであり、そのスレショルドレベルは、スリーステートインバーターIC11と同様に設定されている。
なお、インバーターIC3の1つ前段の発振回路側回路素子として、スリーステートバッファーを用いることもできるが、これについては、本実施形態においてではなく、後述する他の実施形態において説明する。
【0068】
また、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1は、スリーステートインバーターIC4の制御端子に、発振起動用パルス発生回路3から第2の信号を入力する信号供給ライン5が設けられている。また、信号供給ライン5には、インバーターIC20が設けられている。すなわち、インバーターIC20の入力端子は、抵抗R12とコンデンサーC12との間に接続され、インバーターIC20の出力端子は、スリーステートインバーターIC4の制御端子に接続されている。これにより、第2の信号は、インバーターIC20により反転してスリーステートインバーターIC4の制御端子に入力される。これによって、スリーステートインバーターIC11の出力がハイインピーダンスのときは、スリーステートインバーターIC4は、インバーターとして作動する作動状態であり、スリーステートインバーターIC11がインバーターとして作動する作動状態のときは、スリーステートインバーターIC4の出力は、ハイインピーダンスとなっている。
【0069】
これにより、電源を投入すると、まず、前述したように、スリーステートインバーターIC11は、インバーターとして作動する作動状態となる。一方、スリーステートインバーターIC4の出力は、ハイインピーダンスとなり、インバーターIC3は、その前段側の回路と電気的に遮断され、これにより、確実に発振を開始させることができる。
また、第2の信号のレベルが、スリーステートインバーターIC11およびIC14のスレショルドレベルに到達すると、スリーステートインバーターIC11の制御端子に入力される信号のレベルは、Hとなり、スリーステートインバーターIC11の出力は、ハイインピーダンスとなり、これより、発振起動用パルス発生回路3と発振回路2とは、電気的に遮断される。一方、スリーステートインバーターIC4の制御端子に入力される信号のレベルは、Lとなり、スリーステートインバーターIC4は、インバーターとして作動する作動状態となり、発振回路2のインバーターとして機能する。
【0070】
ここで、この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1と、発振起動用パルス発生回路3が設けられていない場合とのそれぞれの起動時間を計算で求めると下記の通りである。
まず、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1の発振回路2の抵抗R1、コンデンサーC1、発振起動用パルス発生回路3の抵抗R11、コンデンサーC11の各値は、1例を挙げると、抵抗R1の抵抗値は10MΩ、コンデンサーC1の容量は100pF、抵抗R11の抵抗値は10kΩ、コンデンサーC11の容量は100pFである。
発振起動用パルス発生回路3が設けられていない場合は、起動時間は、おおよそ、抵抗R1の抵抗値×コンデンサーC1の容量であるので、1m秒となる。
【0071】
これに対し、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、起動時間は、おおよそ、抵抗R11の抵抗値×コンデンサーC11の容量であるので、1μ秒となり、起動時間が大幅に短縮されることが判る。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
そして、この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、第1実施形態に比べ、発振回路2の起動時間をさらに短縮することができる。
【0072】
<第8実施形態>
図10は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第8実施形態における発振起動用パルス発生回路を示す回路図である。
以下、第8実施形態について、前述した第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第8実施形態は、発振起動用パルス発生回路の構成が異なること以外は前記第7実施形態と同様である。
【0073】
図10に示すように、第8実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振起動用パルス発生回路3は、スリーステート回路素子としてスリーステートインバーターIC16を有している。このスリーステートインバーターIC16は、制御端子が非転型のものである。
また、信号発生部4は、抵抗R11とコンデンサーC11とが直列に接続された積分回路41と、入力端子が抵抗R11とコンデンサーC11との間に接続され、出力端子がスリーステートインバーターIC11の制御端子に接続されたインバーターIC17とを有している。
【0074】
これにより、積分回路41からスリーステートインバーターIC11の入力端子に第1の信号が送出される。
また、積分回路41から出力された第1の信号は、インバーターIC17で反転され、かつ、遅延されて、第2の信号となり、その第2の信号は、スリーステートインバーターIC16の制御端子に送出される。
【0075】
ここで、本実施形態の特徴は、抵抗R11とコンデンサーC11との間と、スリーステートインバーターIC16の制御端子との間に接続された回路素子として、発振回路2における振動子Y1および抵抗R4の直列接続回路と並列に接続された複数の発振回路側回路素子のうちの最後段の発振回路側回路素子と同一の回路素子を用いていることである。すなわち、発振回路2における前記複数の発振回路側回路素子のうちの最後段の発振回路側回路素子は、インバーターIC3であるので、発振起動用パルス発生回路3では、前記回路素子として、インバーターIC17を用いている。なお、発振回路2の前記複数の発振回路側回路素子のうちの最後段の発振回路側回路素子として、バッファーを用いる場合は、同様に、発振起動用パルス発生回路3の前記回路素子として、バッファーを用いる。
【0076】
これにより、発振回路2のインバーターIC3での信号の遅延時間と、発振起動用パルス発生回路3のインバーターIC17での信号の遅延時間とを一致させることができる。
すなわち、発振回路2のインバーターIC3の入力とインバーターIC3の出力との間の遅延時間と、インバーターIC17の入力とインバーターIC17の出力との間の遅延時間とが等しくなり、電源投入時から第2の信号がスリーステートインバーターIC16のスレショルドレベルに到達するまでの時間T2と、電源投入時からインバーターIC3に入力された発振起動用パルスの変位部がインバーターIC3で反転されて出力されるまでの時間とが等しくなる。これによって、発振を開始するのと同時に、スリーステートインバーターIC16の出力がハイインピーダンスとなり、発振起動用パルス発生回路3と発振回路2とを電気的に遮断することができる。
【0077】
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第8実施形態と同様の効果が得られる。
なお、抵抗R11とコンデンサーC11との間と、スリーステートインバーターIC11の制御端子との間に接続された回路素子として、発振回路2における振動子Y1および抵抗R4の直列接続回路と並列に接続された複数の発振回路側回路素子のうちの最後段の発振回路側回路素子と異なる回路素子を用いてもよい。例えば、一方をインバーターとし、他方をバッファーとしてもよい。
なお、この第8実施形態は、後述する各実施形態にも適用することができる。
【0078】
<第9実施形態>
図11は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第9実施形態を示す回路図である。なお、図9中には、各抵抗の抵抗値および各コンデンサーの容量の一例が記載されている。
以下、第9実施形態について、前述した第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0079】
図11に示すように、第9実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振回路2として、ターマン発振回路を用いている。
この発振回路2においては、振動子Y1と抵抗R4との間には、コンデンサーC2の一端側が接続され、そのコンデンサーC2の他端側は、接地されている。
また、スリーステートインバーターIC4の出力端子とインバーターIC3の入力端子との間には、コンデンサーC3の一端側が接続され、振動子Y1と抵抗R4との間には、コンデンサーC3の他端側が接続されている。
【0080】
なお、図11中、破線で記載されている「Cst」は、実際の素子ではなく、等価回路におけるインバーターIC1中の容量成分である。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、第7実施形態と同様に、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、最後段のインバーターIC3の入力端子に接続されている。以下、説明は省略する。
【0081】
なお、この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1と、発振起動用パルス発生回路3が設けられていない場合とのそれぞれの起動時間を計算で求めると下記の通りである。
まず、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1の発振回路2の抵抗R1、等価コンデンサーCst、発振起動用パルス発生回路3の抵抗R11、コンデンサーC11の各値は、1例を挙げると、抵抗R1の抵抗値は10MΩ、等価コンデンサーCstの容量は10pF、抵抗R11の抵抗値は10kΩ、コンデンサーC11の容量は100pFである。
発振起動用パルス発生回路3が設けられていない場合は、起動時間は、おおよそ、抵抗R1の抵抗値×等価コンデンサーCstの容量であるので、0.1m秒となる。
【0082】
これに対し、発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、起動時間は、おおよそ、抵抗R11の抵抗値×コンデンサーC11の容量であるので、1μ秒となり、起動時間が大幅に短縮されることが判る。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第7実施形態と同様の効果が得られる。
【0083】
<第10実施形態>
図12は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第10実施形態を示す回路図である。
以下、第10実施形態について、前述した第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0084】
図12に示すように、第10実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振回路2において、直列に接続された3つの発振回路側回路素子として、インバーターIC1、スリーステートバッファーIC5およびバッファーIC6を用いている。また、前段側から後段側に向って、インバーターIC1、スリーステートバッファーIC5、バッファーIC6の順番に接続されている。
【0085】
また、スリーステートバッファーIC5は、制御端子が反転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、H(1)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、L(0)のとき、作動状態となり、バッファーとして作動する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、第7実施形態と同様に、スリーステートインバーターIC11の出力端子は、最後段のバッファーIC6の入力端子に接続されている。以下、説明は省略する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第7実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
<第11実施形態>
図13は、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路の第11実施形態を示す回路図である。
以下、第11実施形態について、前述した第7実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0087】
図13に示すように、第11実施形態の発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、発振回路2において、直列に接続された3つの発振回路側回路素子として、インバーターIC1、スリーステートバッファーIC7およびバッファーIC6を用いている。また、前段側から後段側に向って、インバーターIC1、スリーステートバッファーIC7、バッファーIC6の順番に接続されている。
【0088】
また、スリーステートバッファーIC7は、制御端子が非反転型のものであり、制御端子に入力される信号のレベルが、L(0)のとき、その出力がハイインピーダンスとなり、H(1)のとき、作動状態となり、バッファーとして作動する。
また、発振起動用パルス発生回路3では、スリーステート回路素子として、制御端子が非反転型のスリーステートバッファーIC22を用いている。
【0089】
また、信号発生部4は、入力端子が第2の積分回路42の抵抗R12とコンデンサーC12との間に接続され、出力端子がスリーステートバッファーIC22の制御端子に接続されたインバーターIC21を有している。これにより、第2の信号は、インバーターIC21で反転されてスリーステートバッファーIC22の制御端子およびインバーターIC20に入力される。
【0090】
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1では、第7実施形態と同様に、スリーステートバッファーIC22の出力端子は、最後段のバッファーIC6の入力端子に接続されている。以下、説明は省略する。
この発振起動用パルス発生回路付き発振回路1によれば、前述した第7実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
以上、本発明の発振起動用パルス発生回路付き発振回路を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…発振起動用パルス発生回路付き発振回路 2…発振回路 3…発振起動用パルス発生回路 4…信号発生部 41、42…積分回路 5…信号供給ライン R1、R2、R3、R4、R11、R12…抵抗 C1、C2、C3、C11、C12…コンデンサー IC1、IC2、IC3、IC12、IC15、IC17、IC18、IC19、IC20、IC21…インバーター IC6…バッファー IC4、IC11、IC16…スリーステートインバーター IC5、IC7、IC13、IC14、IC22…スリーステートバッファー Y1…振動子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の発振回路側回路素子と、振動子とが並列に接続された回路を有し、前記発振回路側回路素子が、インバーターまたはバッファーである発振回路と、
スリーステートインバーターまたはスリーステートバッファーからなるスリーステート回路素子と、該スリーステート回路素子の入力端子および制御端子に接続され、前記スリーステート回路素子の入力端子に送出される第1の信号および前記スリーステート回路素子の制御端子に送出され、前記第1の信号よりも前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達する時間が遅い第2の信号を発生する信号発生部とを有し、前記スリーステート回路素子の出力端子から発振起動用パルスを出力する発振起動用パルス発生回路とを備え、
前記スリーステート回路素子の出力端子は、前記複数の発振回路側回路素子のうちのいずれかの前記発振回路側回路素子の入力端子に接続されており、
電源投入後、前記第1の信号により、前記スリーステート回路素子の出力端子から前記発振起動用パルスが出力され、その後、前記第2の信号により、前記スリーステート回路素子の出力がハイインピーダンスとなり、前記発振起動用パルス発生回路と、前記発振回路とが電気的に遮断されるよう構成されていることを特徴とする発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項2】
前記スリーステート回路素子の出力端子は、前記複数の発振回路側回路素子のうち、途中または最後段の前記発振回路側回路素子の入力端子に接続されている請求項1に記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項3】
前記スリーステート回路素子の出力端子が接続された前記発振回路側回路素子の1つ前段の前記発振回路側回路素子は、スリーステートインバーターまたはスリーステートバッファーからなる発振回路側スリーステート回路素子である請求項2に記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項4】
前記発振回路側スリーステート回路素子の制御端子に、前記発振起動用パルス発生回路から前記第2の信号を入力する信号供給ラインを有する請求項3に記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項5】
前記信号供給ラインにインバーターが設けられており、前記第2の信号は、該インバーターにより反転して前記発振回路側スリーステート回路素子の制御端子に入力されるよう構成されている請求項4に記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項6】
前記発振回路側スリーステート回路素子の出力がハイインピーダンスのとき、前記スリーステート回路素子は、作動状態であり、前記発振回路側スリーステート回路素子が作動状態のとき、前記スリーステート回路素子の出力は、ハイインピーダンスである請求項3ないし5のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項7】
前記信号発生部は、第1の抵抗と、第1のコンデンサーとが直列に接続された第1の積分回路と、
第2の抵抗と、第2のコンデンサーとが直列に接続された第2の積分回路とを備え、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記第1の抵抗と前記第1のコンデンサーとの間に接続され、前記スリーステート回路素子の制御端子は、前記第2の抵抗と前記第2のコンデンサーとの間に接続されている請求項1ないし6のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項8】
前記第2のコンデンサーの容量は、前記第1のコンデンサーの容量よりも大きい請求項7に記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項9】
前記信号発生部は、抵抗とコンデンサーとが直列に接続された積分回路と、
入力端子が前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続され、出力端子が前記スリーステート回路素子の制御端子に接続されたインバーターまたはバッファーとを有し、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続されている請求項1ないし6のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項10】
前記信号発生部は、抵抗とコンデンサーとが直列に接続された積分回路と、
直列に接続され、前記複数の発振回路側回路素子と同一でかつ同数の複数の回路素子とを有し、
前記複数の回路素子のうちの初段の前記回路素子の入力端子が前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続され、最後段の前記回路素子の出力端子が前記スリーステート回路素子の制御端子に接続されており、
前記スリーステート回路素子の入力端子は、前記抵抗と前記コンデンサーとの間に接続されている請求項1ないし6のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項11】
前記信号発生部は、タイマーを有する請求項1ないし6のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項12】
前記信号発生部は、前記スリーステート回路素子に直列に接続されたインバーターを有する請求項1ないし11のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項13】
前記信号発生部は、電源投入時から前記第1の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達するまでの時間が1〜500n秒になるよう構成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項14】
前記発振起動用パルスは、前記第1の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達したとき、立ち上がるかまたは立ち下がる変位部を有しており、
前記信号発生部は、電源投入時から前記第2の信号が前記スリーステート回路素子のスレショルドレベルに到達するまでの時間が、電源投入時から前記発振回路に入力された前記発振起動用パルスの前記変位部が最後段の前記発振回路側回路素子から出力されるまでの時間と同一または該時間よりも大きくなるよう構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。
【請求項15】
前記振動子は、音叉型振動子または双音叉型振動子である請求項1ないし14のいずれかに記載の発振起動用パルス発生回路付き発振回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−188314(P2011−188314A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52405(P2010−52405)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】