説明

発泡ゴム成形体及びその製造方法

【課題】発泡ゴムの多機能性を維持しながらその強度を高くするようにした発泡ゴム成形体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】化学発泡剤を含む未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、この未加硫ゴム成形体の厚さ方向の一方の表面を前記化学発泡剤の分解温度より低い温度で加熱し、反対側の表面を前記化学発泡剤の分解温度以上の温度で加熱することにより、前記未加硫ゴム成形体を加硫成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ゴム成形体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、発泡ゴムの多機能性を維持しながらその強度を高くするようにした発泡ゴム成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ゴムで構成された成形体は、比重が小さく軽量であり、断熱性、吸音性、制振性、耐衝撃性が優れ、しかも省資源であるという特長がある。しかし発泡ゴム成形体は極めて多機能であるが、強度、弾性率、耐摩耗性などの力学特性が低いという課題がある。
【0003】
このため特許文献1は、薄膜状で相互に発泡率の異なる複数種類のゴム層を交互に多重的に積層することにより、耐摩耗性を高くすることを提案している。しかし、複数の発泡ゴム層を交互に多重的に積層するには手間がかかり生産性が低く、また複数の発泡ゴム層を積層すると界面の強度が劣るため発泡ゴム全体の強度が不足するという問題があった。
【0004】
一方特許文献2は、スキン層の割合の大きなポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法を提案している。しかしながら、発泡ゴム成形体を製造するときは、未加硫ゴムの発泡と同時に加硫又は架橋を競争的に行わせなければならないため、特許文献2に記載されたような製造方法を適用することはできない。
【0005】
したがって、発泡ゴムの多機能性を維持しながら、同時にその強度を従来レベルよりも高くするようにした発泡ゴム成形体及びその製造方法は未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−36816号公報
【特許文献2】特開2003−266522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発泡ゴムの多機能性を維持しながらその強度を高くするようにした発泡ゴム成形体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の発泡ゴム成形体の製造方法は、化学発泡剤を含む未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、この未加硫ゴム成形体の厚さ方向の一方の表面を前記化学発泡剤の分解温度より低い温度で加熱し、反対側の表面を前記化学発泡剤の分解温度以上の温度で加熱することにより、前記未加硫ゴム成形体を加硫成形することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成する本発明の発泡ゴム成形体は、成形体の厚さ方向に空隙率が異なる発泡ゴム成形体であって、前記発泡ゴム成形体の厚さ方向断面における中心線の両側の平均空隙率が互いに異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、化学発泡剤を含む未加硫ゴム組成物からなる未加硫ゴム成形体を加硫成形するときに、その一方の表面を化学発泡剤の分解温度より低い温度で加熱し、その反対側の表面を化学発泡剤の分解温度以上の温度で加熱するようにしたので、一方の表面では化学発泡剤が分解せず未発泡の加硫ゴムからなる領域が形成され、反対側の表面では発泡と加硫が同時に進行し、発泡ゴムからなる領域が形成される。得られた発泡ゴム成形体は、発泡ゴム領域が発泡ゴムの多機能性を有し、未発泡の加硫ゴム領域が優れた力学特性を有し、しかもこれらの領域は一つの未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体をグリーン成形し、その発泡と加硫を同時に行うので、発泡率が異なる複数のゴム層を積層したときのような界面が存在せず、発泡ゴム成形体の強度の低下を抑制することができる。
【0011】
上述した加熱温度は、未加硫ゴム成形体の厚さ方向の一方の表面を120℃以上化学発泡剤の分解温度より低い温度、反対側の表面を化学発泡剤の分解温度以上200℃以下の温度にするとよく、また加熱するとき両表面の温度差が20℃以上80℃以下であるとよい。このような範囲で加熱することにより、未発泡の加硫ゴム領域及び発泡ゴム領域を有する発泡ゴム成形体を安定して製造することができる。
【0012】
前記未加硫ゴム組成物は、カルボンジアミド系発泡剤若しくはニトロソ系発泡剤を含み、かつ尿素系発泡助剤を含むとよく、ゴム成分100重量部に対し化学発泡剤を0.1〜20重量部含むとよい。このような未加硫ゴム組成物を使用することにより、未発泡の加硫ゴム領域及び発泡ゴム領域を有する発泡ゴム成形体を安定して製造することができる。
【0013】
本発明の製造方法により得られた発泡ゴム成形体は、その厚さ方向に異なる空隙率を有し、かつ前記発泡ゴム成形体の厚さ方向断面における中心線の両側の平均空隙率が互いに異なるようにしたので、発泡ゴムの多機能性と未発泡加硫ゴムの優れた力学特性とを兼備する。しかも一つの未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、その発泡と加硫を同時に行ったので発泡ゴム成形体の強度の低下を抑制可能にする。
【0014】
この発泡ゴム成形体は、厚さ方向中央領域の平均空隙率が、表面側の平均空隙率より高くなる。これは、厚さ方向の中央領域では加硫よりも発泡が優先する傾向があるからであり、これにより発泡ゴム成形体の低比重、高断熱、吸音性、制振性、耐衝撃性などの機能をより優れたものにすることができる。
【0015】
本発明の発泡ゴム成形体は、その比強度が未発泡部分の比強度より大きくすることができる。これは、一つの未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、その発泡と加硫を同時に行うことにより、厚さ方向に界面を存在させないようにしたからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法の一例により得られた発泡ゴム成形体の切断面を光学顕微鏡で観察した写真を複写した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の一例である発泡ゴム成形体を、厚さ方向に切断した断面を光学顕微鏡で観察した写真を図1に示す。なお図1の断面写真には、発泡ゴム成形体の厚さ方向の中心線を一点鎖線で書き加えてある。
【0018】
図1において、発泡ゴム成形体の上側の表面近くの領域には、発泡により形成された気泡がほとんど存在しない部分がある。また下側の表面近くの領域には、発泡により形成された小さな気泡が多数存在する。更に成形体の厚さ方向の中央領域、すなわち一点鎖線の近くの領域に存在する気泡の大きさは、表面近くの気泡よりも大きくなっている。発泡ゴム成形体の断面を厚さ方向に上層、中層、下層の三つの領域に分けて気泡を比べると、気泡の数、大きさはそれぞれの領域で互いに異なり、上層の領域では気泡の数が少なくその大きさが小さい。また下層の領域では小さな気泡が多数存在し、中層の領域では大きな気泡が多数存在する。
【0019】
本発明の発泡ゴム成形体は、その厚さ方向に空隙率の分布が異なる。すなわち上述したように発泡ゴム成形体の空隙率は上側表面領域から中央領域を経て下側表面領域に致るまでに変化し、厚さ方向の中心線に対して空隙率の分布が非対称になっている。また厚さ方向に上側表面近くの領域、中心線近くの領域、下側表面近くの領域の三つに分けてみてもそれぞれの領域の平均空隙率は互いに異なる。
【0020】
この発泡ゴム成形体は、厚さ方向断面における中心線の両側の平均空隙率が互いに異なる。成形体の厚さ方向の中心線に対して一方の側の領域(例えば図1の上半分、中心線から上側表面までの領域)における平均空隙率をΦ1、他方の側の領域(例えば図1の下半分、中心線から下側表面までの領域)における平均空隙率をΦ2とするとき、平均空隙率Φ1とΦ2とは互いに異なる。このように空隙率が小さい領域により発泡ゴム成形体の力学特性が確保され、空隙率が大きい領域により発泡ゴムの多機能性が発現される。またこの発泡ゴム成形体は厚さ方向の境界面がないので界面による強度低下が生じず発泡ゴム成形体の全体の強度を高くすることができる。
【0021】
本発明の発泡ゴム成形体は、厚さ方向中央領域の平均空隙率を、表面側の平均空隙率より高くすることができる。すなわち図1のように発泡ゴム成形体を上側表面近くの領域(上側表面領域)、中心線近くの領域(中央領域)、下側表面近くの領域(下側表面領域)の三つの領域に等分にして観察し、上側表面領域の平均空隙率をΦa、下側表面領域の平均空隙率をΦb、厚さ方向中央領域の平均空隙率をΦcとするとき、厚さ方向中央領域の平均空隙率をΦcが、表面領域の平均空隙率Φa,Φbより高くなっている。これにより発泡ゴム成形体の低比重、高断熱、吸音性、制振性、耐衝撃性などの機能をより優れたものにすることができる。
【0022】
なお、本明細書において発泡ゴム成形体の平均空隙率は、発泡ゴム成形体を厚さ方向に切断し、その断面を光学顕微鏡(倍率350倍)で観察し写真撮影し、その写真を画像解析し測定対象領域における気泡が占める面積の割合を測定し、この面積割合をその領域の平均空隙率とする。
【0023】
本発明の発泡ゴム成形体は、全体の比強度を未発泡の加硫ゴム部分の比強度より大きくすることができる。これは、一つのゴム組成物から未加硫ゴム成形体をグリーン成形し、かつ発泡成形と加硫成形を同時に行い、界面を存在させないようにしたからである。なお、未発泡部分の比強度は、発泡ゴム成形体から未発泡部分を切り出し比重及び強度を測定して求めるものとする。但し未発泡部分を切り出し比重及び強度を測定することができないときは、同一のゴム組成からなる未加硫ゴム成形体を化学発泡剤の分解温度より低い温度で加硫成形したものの比強度とする。
【0024】
なお、本明細書においてゴム成形体の比重は、JIS K−6268に準拠し測定し、強度は、JIS K−6251に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片を切り出し、23℃、引張り速度500mm/分で測定した引張り破断強度とする。
【0025】
本発明の発泡ゴム成形体の製造方法は、先ず化学発泡剤を含む未加硫ゴム組成物を調製する。未加硫ゴム組成物の調製方法は、通常のゴム発泡体用未加硫ゴム組成物の調製と同じ方法を適用することができる。得られた未加硫ゴム組成物を使用して未加硫ゴム成形体をグリーン成形する。未加硫ゴム成形体の形状、大きさ、厚さは、発泡ゴム成形体の最終的な形状、大きさ、厚さに応じて適宜、調節することができる。この未加硫ゴム成形体の発泡成形と加硫成形を所定の条件で同時に行うようにする。発泡成形及び加硫成形は金型を使用して行うとよい。
【0026】
本発明では、未加硫ゴム成形体を加硫成形するとき、その一方の表面を化学発泡剤の分解温度より低い温度で加熱し、反対側の表面を化学発泡剤の分解温度以上の温度で加熱するようにしたので、一方の表面では化学発泡剤が分解せず未発泡の加硫ゴムからなる領域が形成され、反対側の表面では発泡と加硫が同時に進行し発泡ゴムからなる領域が形成される。このため発泡ゴム領域と未発泡の加硫ゴム領域とを一体に形成した発泡ゴム成形体を製造することができる。この発泡ゴム成形体は、発泡ゴム領域が発泡ゴムの多機能性を有し、未発泡の加硫ゴム領域が優れた力学特性を有し、しかもこれら二つの領域は一つの未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、その発泡成形と加硫成形とを同時に行うので、発泡率が異なる複数のゴム層を積層したときのような界面が存在せず、発泡ゴム成形体の強度の低下を抑制することができる。
【0027】
未加硫ゴム成形体を発泡・加硫成形するときの加熱温度は、低温側にする表面を好ましくは120℃以上化学発泡剤の分解温度より低い温度、より好ましくは120℃以上150℃以下、高温側にする表面を好ましくは化学発泡剤の分解温度以上200℃以下の温度、より好ましくは170℃以上200℃以下にするとよい。このような範囲で両側表面をそれぞれ加熱することにより、化学発泡及び加硫成形の制御が容易になり未発泡の加硫ゴム領域及び発泡ゴム領域を一体に形成した発泡ゴム成形体を安定して製造することができる。また加熱温度の下減を120℃にすることにより、加硫成形を確実にすることができる。加熱温度の上減を200℃にすることにより、発泡ゴム成形体が熱劣化したり分解したりすることがない。
【0028】
化学発泡剤の分解温度は、好ましくは130℃〜190℃、より好ましくは150℃〜170℃にするとよい。化学発泡剤の分解温度をこのような範囲内にすることにより、化学発泡及び加硫成形の制御が容易になり未発泡の加硫ゴム領域及び発泡ゴム領域を一体に形成した発泡ゴム成形体を安定して製造することができる。本明細書において、化学発泡剤の分解温度は、示差走査熱量測定(DSC)や熱重量測定(TGA)などの熱分析を使用して分解熱や重量減少を測定することにより求められる温度である。
【0029】
また発泡・加硫成形に際し低温側にする表面と高温側にする表面との温度差は好ましくは20℃以上80℃以下、より好ましくは30℃以上70℃以下であるとよい。両表面間の温度差が20℃未満であると、発泡したゴム領域と未発泡のゴム領域とを一体に形成するのが難しくなる。また両表面間の温度差が80℃を超えると、加硫が不充分であったり或いは発泡ゴム成形体が熱劣化したり分解したりする。
【0030】
本発明の製造方法では、化学発泡剤の分解温度、低温側にする表面の加熱温度、高温側にする表面の加熱温度及び両表面間の温度差をそれぞれ調節することにより、発泡ゴム成形体の空隙率及びその厚さ方向の分布を変化させることができる。例えば高温側にする表面の加熱温度と化学発泡剤の分解温度との温度差を小さくすることにより、空隙率を低くし気泡サイズを小さくすることができる。このとき気泡は高温側にした表面に近くの領域に形成され、未発泡の領域の割合が増えて発泡ゴム成形体全体の強度が高くなる。また高温側にする表面の加熱温度と化学発泡剤の分解温度との温度差を大きくすることにより、空隙率を高くし気泡サイズを大きくすることができる。このとき低温側にした表面の近くの領域にも小さな気泡が形成されることがあり、発泡ゴム領域の割合が増えて低比重、低熱伝導率などの特性が高くなる。このような条件では、高温側の表面近くの領域では、発泡成形と加硫成形とが拮抗し小さな気泡が多数形成される。また厚さ方向の中央領域では、未加硫ゴムの加硫よりも発泡が優先されるので大きな気泡が形成されるようなる。
【0031】
本発明において未加硫ゴム組成物のゴム成分としては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴム等を例示することができる。これらのゴム成分は単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0032】
未加硫ゴム組成物は、化学発泡剤を含むものとする。化学発泡剤としては、例えばカルボンジアミド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、アジド系発泡剤、及びカルボンジアミド系以外のアゾ系発泡剤等を例示することができる。これらの化学発泡剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なかでもカルボンジアミド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤が好ましい。
【0033】
カルボンジアミド系発泡剤としてはアゾジカルボンアミド(ADCA)等、ニトロソ系発泡剤としてはN,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソテレフタルアミド等が例示される。スルホニルヒドラジド系発泡剤としては、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホニルヒドラジド等、アジド系発泡剤としてはカルシウムアジド、4,4′−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等、カルボンジアミド系以外のアゾ系発泡剤としてはアゾビスイソブチロニトリル(AZBN)、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等が例示される。
【0034】
化学発泡剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部にするとよい。化学発泡剤の配合量が0.1重量部未満であると、発泡成形が不十分になり、低比重、吸音性、制振性、耐衝撃性などの発泡ゴムの機能が十分に得られない。また化学発泡剤の配合量が20重量部を超えると、発泡ゴム成形体の空隙率が過大になり強度や耐摩耗性などの力学特性が不足する。
【0035】
未加硫ゴム組成物は、カルボンジアミド系発泡剤、ニトロソ系発泡剤と共に、尿素系発泡助剤を含むとよい。尿素系発泡助剤を配合することにより、化学発泡剤が熱分解する温度を低く調節することが可能になる。尿素系発泡助剤の配合量は、配合した化学発泡剤に対し、好ましくは0.1〜2当量、より好ましくは0.3〜1.5当量にするとよい。
【0036】
未加硫ゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、ゴム補強剤、充填剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、加工助剤、発泡助剤、脱泡剤、活性剤、金型離型剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤等のゴム成形体やゴム発泡体に通常用いられる配合剤を添加することができる。これらの配合剤は本発明の目的に反しない限り、通常用いられる配合量を適用することができ、また通常の調製方法で添加、混練又は混合することができる。
【0037】
発泡ゴム成形体は、発泡ゴムの低比重、断熱性、吸音性、制振性、耐衝撃性などの多機能性と未発泡加硫ゴムの強度、弾性率、耐摩耗性などに優れた力学特性とを兼備すると共に、一つの未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体をグリーン成形し、その発泡と加硫を同時に行うようにしたので発泡ゴム成形体の強度の低下が抑制される。この発泡ゴム成形体は、空気入りタイヤの構成部材(例えばトレッド部、吸音材、等)、ゴムホース、建物用断熱および緩衝材 、その他工業用断熱材、梱包または運搬用緩衝材、靴底等に使用することができる。
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
未加硫ゴム組成物の調製
表1に示す配合からなるゴム組成物1,2を、それぞれ硫黄、加硫促進剤、化学発泡剤及び尿素系発泡助剤を除く配合成分を秤量し、1.7L密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後このマスターバッチを1.7L密閉式バンバリーミキサーに供し、硫黄、加硫促進剤、化学発泡剤及び尿素系発泡助剤を加え2分間混合し、未加硫ゴム組成物(ゴム組成物1,2)を調製した。なお使用した化学発泡剤の分解開始温度は165℃であった。
【0040】
【表1】

【0041】
なお、表1で使用した原材料の種類を下記に示す。
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
カーボンブラック:東海カーボン社製シースト300
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
硫黄:鶴見化学社製金華印微粉硫黄150mesh
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーM
化学発泡剤:カルボンアミド系発泡剤、永和化成工業社製ビニホールAC#911、分解開始温度=165℃
尿素系発泡助剤:永和化成工業社製セルペースト
【0042】
未加硫ゴム成形体の作成
得られた2種類の未加硫ゴム組成物(ゴム組成物1,2)を、それぞれ加熱ロールを使用して厚さ1mm及び3mmの未加硫ゴムシートを作成した。
【0043】
ゴム成形体の加硫成形及び発泡成形
未加硫ゴムシートを所定形状の金型にいれ、表2に示すように未加硫ゴムシートの種類、未加硫ゴムシートの両表面を加熱する条件を異ならせた6種類の製造方法(実施例1,2、比較例1〜4)で加硫成形を行ってゴムシートを得た。ここで、実施例1,2、比較例3,4の製造方法では、ゴム組成物1から形成した厚さ3mmの未加硫ゴムシート、比較例2の製造方法ではゴム組成物2から形成した厚さ3mmの未加硫ゴムシートを使用した。また比較例1の製造方法では、ゴム組成物2から形成した厚さ1mm未加硫ゴムシートの片側に、ゴム組成物1から形成した厚さ1mm未加硫ゴムシートを2枚重ねた積層シートを未加硫ゴム成形体を使用した。
【0044】
ゴム発泡成形体の評価
実施例1の製造方法で得られた発泡ゴムシートを厚さ方向に切断し、その断面を光学顕微鏡(倍率350倍)で観察した。その観察写真を図1に示した。
【0045】
また得られた6種類のゴムシートの比重、平均発泡倍率、平均空隙率、引張り破断強度を以下の方法で測定した。また比重と引張り破断強度の測定値から比強度を求めた。
【0046】
比重
ゴムシートの比重を、JIS K−6268に準拠して測定し、その結果を表2に示す。
【0047】
平均発泡倍率
予め加硫成形前の未加硫ゴムシートの比重を、JIS K−6268と同じ条件で測定した。上記の加硫成形したゴムシートの比重と未加硫ゴムシートの比重との比から平均発泡倍率を算出し、その結果を表2に示す。
【0048】
平均空隙率
得られたゴムシートを厚さ方向に切断し、その断面を光学顕微鏡(倍率350倍)で観察し写真撮影した。得られた写真を画像解析し対象領域における気泡が占める面積の割合を測定し平均空隙率とした。対象領域としては、ゴムシートの厚さ方向断面の中心線に対して低温加熱表面側の半分領域(上側表面領域、平均空隙率Φ1)、高温加熱表面側の半分領域(平均空隙率Φ2)、ゴムシートの観察断面を厚さ方向に3等分し低温加熱表面側の1/3領域(平均空隙率Φa)、高温加熱表面側の1/3領域(下側表面領域、平均空隙率Φb)、厚さ方向中心の1/3領域(中央領域、平均空隙率Φc)の5種類にした。各領域の平均空隙率を表2に示す。なお比較例1〜4では、ゴム成形体の両側の表面を同じ温度で加熱したため便宜的に実施例1,2で低温にした金型表面と同じ側を低温加熱表面側とした。
【0049】
引張り破断強度
ゴムシートの引張り破断強度を、JIS K−6251に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片を切り出し、23℃、引張り速度500mm/分の条件で測定した。得られた結果を表2に示す。
【0050】
比強度
上記により得られた引張り破断強度を比重で割り比強度を算出した。得られた結果は、比較例2(未発泡のゴムシート)の値を1.00とする指数で表し表2に示す。この指数が大きいほど比強度が高いことを意味する。
【0051】
【表2】

【0052】
表2の結果から、実施例1,2の製造方法で得られた発泡ゴムシートは、低比重かつ比強度が高いことが確認された。また発泡ゴムシートの厚さ方向断面において空隙率の分布が厚さ方向に異なり、平均空隙率Φ2が平均空隙率Φ1より大きく、更に厚さ方向中央領域の平均空隙率Φcが最も大きいことが確認された。
【0053】
比較例1の製造方法で得られた発泡ゴムシートは、化学発泡剤を有無にした未加硫ゴムシートを積層して加硫成形したため、発泡ゴム層と未発泡のゴム層を有する。しかし、発泡ゴム層と未発泡のゴム層との界面が存在し、この界面の強度が低いため発泡ゴムシート全体の破断強度及び比強度が低い。
【0054】
比較例2,3の製造方法で得られたゴムシートは、未発泡であるため比重が高く、発泡ゴムの多機能の特性が得られない。比較例4の製造方法で得られた発泡ゴムシートは、全体にほぼ同じ大きさの気泡が均一に分布しており低比重ではあるが、未発泡の領域が存在しないため引張り破断強度及び比強度が低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発泡剤を含む未加硫ゴム組成物から未加硫ゴム成形体を成形し、この未加硫ゴム成形体の厚さ方向の一方の表面を前記化学発泡剤の分解温度より低い温度で加熱し、反対側の表面を前記化学発泡剤の分解温度以上の温度で加熱することにより、前記未加硫ゴム成形体を加硫成形することを特徴とする発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項2】
前記未加硫ゴム成形体の厚さ方向の一方の表面を120℃以上前記化学発泡剤の分解温度より低い温度で、反対側の表面を前記化学発泡剤の分解温度以上200℃以下の温度で加熱することを特徴とする請求項1に記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項3】
前記未加硫ゴム成形体を加熱するとき両表面の温度差が20℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項4】
前記未加硫ゴム組成物が、カルボンジアミド系発泡剤若しくはニトロソ系発泡剤を含み、かつ尿素系発泡助剤を含むことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項5】
前記未加硫ゴム組成物が、ゴム成分100重量部に対し前記化学発泡剤を0.1〜20重量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の発泡ゴム成形体の製造方法。
【請求項6】
成形体の厚さ方向に空隙率が異なる発泡ゴム成形体であって、前記発泡ゴム成形体の厚さ方向断面における中心線の両側の平均空隙率が互いに異なることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの製造方法で得られた発泡ゴム成形体であって、その厚さ方向に異なる空隙率を有し、かつ前記発泡ゴム成形体の厚さ方向断面における中心線の両側の平均空隙率が互いに異なることを特徴とする発泡ゴム成形体。
【請求項8】
前記成形体の厚さ方向中央領域の平均空隙率が、表面側の平均空隙率より高いことを特徴とする請求項6又は7に記載の発泡ゴム成形体。
【請求項9】
前記成形体の比強度が、前記成形体の未発泡部分の比強度より大きいことを特徴とする請求項6,7又は8に記載の発泡ゴム成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−231229(P2011−231229A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103263(P2010−103263)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】