説明

発泡成形体及びその製造方法

【課題】水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む予備発泡粒子を、成形型内で、任意に成形型加熱工程(I)と一方加熱工程(II)と逆一方加熱工程(III)、及び両面加熱工程(IV)に付すことにより得られ、前記両面加熱工程(IV)が、密閉系で20秒以上行われ、前記工程(I)〜(IV)が、式a+b+c<d(式中、aは前記成形型加熱工程(I)に要する時間、bは前記一方加熱工程(II)に要する時間、cは前記逆一方加熱工程(III)に要する時間、dは前記両面加熱工程(IV)に要する時間を意味する)の条件を満たすことを特徴とする発泡成形体の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、寸法安定性が良好な発泡成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体の製造方法として、型内発泡成形法がよく知られている。型内発泡成形法は、所望形状の成形型内に予備発泡粒子を充填し、次いで成形型の水蒸気による加熱により、予備発泡粒子を互いに融着させることで発泡成形体を得る方法である。この成形法は、種々の特許文献に記載されており、そのような特許文献としては、例えば、特開2010−83971号公報(特許文献1)がある。
この公報では、ゲージ圧0.22〜0.35MPa、加熱温度136〜146℃及び加熱時間30〜150秒の条件下の水蒸気による加熱で、発泡成形体を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報によれば、所望の特性の発泡成形体を得ることができる。
しかしながら、製造コストを低減する観点から、所望の特性を確保しつつ、水蒸気の使用量を減らすことが望まれていた。また、発泡成形体の融着率及び加熱寸法安定性を更に向上させることも望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、発泡成形法における水蒸気の加熱条件を見直した。発泡成形法での水蒸気による加熱には、通常、成形型加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程及び両面加熱工程が含まれる。発明者等は、これら4つの加熱工程の条件を詳細に検討した結果、両面加熱工程に要する時間を、成形型加熱工程、一方加熱工程及び逆一方加熱工程に要する時間の合計値より長く設定することで、水蒸気の使用量の低減と、融着率及び加熱寸法安定性の向上とを実現できることを見い出し本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む予備発泡粒子を、成形型内で、任意に成形型加熱工程(I)と一方加熱工程(II)と逆一方加熱工程(III)、及び両面加熱工程(IV)に付すことにより得られ、
前記両面加熱工程(IV)が、密閉系で20秒以上行われ、
前記工程(I)〜(IV)が、以下の式
a+b+c<d
(式中、aは前記成形型加熱工程(I)に要する時間、bは前記一方加熱工程(II)に要する時間、cは前記逆一方加熱工程(III)に要する時間、dは前記両面加熱工程(IV)に要する時間を意味する)
の条件を満たすことを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記方法により得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、成形型加熱工程(I)、一方加熱工程(II)、逆一方加熱工程(III)及び両面加熱工程(IV)を特定の条件下で行うことで、水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
また、aが0〜5秒間、bが0〜5秒間、cが0〜5秒間、dが20〜45秒間行われる場合、より水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
【0008】
更に、dが、a+b+cの値より、10〜45秒の範囲で長い場合、より水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
また、工程(I)〜(IV)が、10〜24kgの範囲の合計蒸気量で行われる場合、より水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
【0009】
更に、両面加熱工程(IV)が、最高型内面圧が0.30MPa以上となるように行われる場合、水蒸気の使用量を低減でき、より融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
また、予備発泡粒子が、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂80〜400質量部とを含む場合、水蒸気の使用量を低減でき、より融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】発泡成形装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発泡成形体は、通常、予備発泡粒子を、成形型内で、成形型加熱工程(I)、一方加熱工程(II)、逆一方加熱工程(III)及び両面加熱工程(IV)に付すことにより得られる。ところで、発泡成形時において、予備発泡粒子の互いの融着性を高めるために、一方加熱工程(II)及び逆一方加熱工程(III)を比較的長時間行い、両面加熱工程(IV)を比較的短時間行うことが、一般的であった。例えば、特開2007−237468号公報の実施例には、ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体を得るに際して、一方加熱工程(II)及び逆一方加熱工程(III)をそれぞれ8〜15秒程度及び4〜5秒程度行い、両面加熱工程(IV)を4〜6秒程度行うことが記載されている。また、特開昭63−21133号公報の実施例には、ポリプロピレン樹脂からなる発泡成形体を得るに際して、一方加熱工程(II)及び逆一方加熱工程(III)をそれぞれ40秒程度及び10秒程度行い、両面加熱工程(IV)を10秒程度行うことが記載されている。
【0012】
本発明の発明者等は、製造コストを低減する観点から、工程(I)〜(IV)に使用する水蒸気量を見直したところ次の知見を得た。即ち、上記のように、通常、工程(II)及び(III)は、予備発泡粒子の融着性に大きく寄与すると考えられていたため、これら工程を大幅に短縮することは考えられていなかった。しかし、工程(II)及び(III)は、水蒸気の排出弁が開いているため、水蒸気の使用量が多い。また、工程(I)も、水蒸気の排出弁が開いているため、水蒸気の使用量が多い。そこで、発明者等は、工程(IV)が水蒸気の排出弁を閉めた状態で行われていることに着目し、水蒸気の使用量を低減するために工程(I)〜(III)に付される合計時間を短くし、その代わりとして工程(IV)に付される時間を長くすることを試みた。
【0013】
その結果、工程(II)及び(III)に付される時間を短くしても、工程(IV)に付される時間を長くすることで、融着性が確保され、かつ水蒸気の使用量を低減できることを見い出した。このことは、上記工程(II)及び(III)に対する従来の考え方に反して、意外であると発明者等は考えている。
【0014】
以下、本発明を説明する。
本発明では、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む予備発泡粒子を、成形型内で、任意に成形型加熱工程(I)と一方加熱工程(II)と逆一方加熱工程(III)、及び両面加熱工程(IV)に付すことにより得られる。本発明では、両面加熱工程(IV)が必ず行われ、工程(I)〜(III)は行っても行なわなくてもよい。なお、工程(I)〜(IV)の始点は、各工程に適した水蒸気の導入を開始する時点であり、終点は導入を終了する時点である。
【0015】
(加熱時間)
本発明では、両面加熱工程(IV)が、密閉系で20秒以上行われる。密閉系とは、成形型内に導入された水蒸気が、成形型外に排出されない系を意味する。例えば、水蒸気導入弁を開き、水蒸気排出弁を閉じた状態に対応する。更に、工程(IV)を20秒以上行うことで、予備発泡粒子相互の融着性を確保することができる。工程(IV)に付される時間は、20〜45秒間であることが好ましく、20〜40秒間であることがより好ましい。
【0016】
更に、工程(I)〜(IV)が、以下の式
a+b+c<d
(式中、aは成形型加熱工程(I)に要する時間、bは一方加熱工程(II)に要する時間、cは逆一方加熱工程(III)に要する時間、dは両面加熱工程(IV)に要する時間を意味する)
の条件を満たす。この式のように、工程(IV)に付される時間dを、工程(I)〜(III)に付される時間の合計値(a+b+c)より長くすることで、水蒸気量を低減しつつ、十分な融着性及び加熱寸法安定性を有する発泡成形体を意外にも確保できる。
【0017】
時間dと合計値a+b+cとの差は、上記式の関係を有する限り、特に限定されない。時間dは、合計値a+b+cより10秒以上長いことが好ましく、15秒以上長いことがより好ましい。差の上限は、45秒であることが好ましく、35秒であることがより好ましい。
時間a、時間b及び時間cは、それぞれ0〜5秒、0〜5秒及び0〜5秒であることが好ましく、それぞれ1〜3秒、1〜3秒及び1〜3秒であることがより好ましい。
【0018】
(蒸気量)
工程(I)〜(IV)における蒸気量は、所望の性質の発泡成形体が得られるように適宜設定でき、これら工程の合計蒸気量が、10〜24kgの範囲となるように設定することが好ましい。合計蒸気量が10kgより少ない場合、耐熱性が付与できない場合があり、24kgより多い場合、エネルギーロスとなることがある。より好ましい合計蒸気量は、10〜21kgの範囲である。
具体的には、工程(I)の蒸気量は、この工程を行う場合、0〜6kgの範囲に設定でき、0〜4kgの範囲に設定することがより好ましい。
【0019】
工程(II)の蒸気量は、この工程を行う場合、0〜3kgの範囲に設定でき、0〜2kgの範囲に設定することがより好ましい。
工程(III)の蒸気量は、この工程を行う場合、0〜3kgの範囲に設定でき、0〜2kgの範囲に設定することがより好ましい。
工程(IV)の蒸気量は、9〜12kgの範囲に設定でき、9〜10kgの範囲に設定することがより好ましい。
工程(I)〜(IV)における蒸気量は、一定でもよく、段階的又は連続的に増減させてもよい。
【0020】
(加熱圧力)
工程(I)〜(IV)における加熱圧力は、所望の性質の発泡成形体が得られるように適宜設定できる。
具体的には、工程(I)の加熱圧力は、この工程を行う場合、0.22〜0.35MPaの範囲に設定でき、0.24〜0.30MPaの範囲に設定することがより好ましい。なお、本明細書において圧力は、大気圧との差圧、即ちゲージ圧を意味する。
【0021】
工程(II)の加熱圧力は、この工程を行う場合、0.22〜0.35MPaの範囲に設定でき、0.24〜0.30MPaの範囲に設定することがより好ましい。
工程(III)の加熱圧力は、この工程を行う場合、0.22〜0.35MPaの範囲に設定でき、0.24〜0.30MPaの範囲に設定することがより好ましい。
工程(IV)の加熱圧力は、0.22〜0.35MPaの範囲に設定でき、0.24〜0.30MPaの範囲に設定することがより好ましい。
工程(I)〜(IV)における加熱圧力は、一定でもよく、段階的又は連続的に増減させてもよい。
工程(I)〜(III)を行う場合、工程(I)、工程(II)及び(III)の加熱圧力は、工程(IV)の加熱圧力の1〜1.6倍、1〜1.6倍及び1〜1.6倍としてもよい。
【0022】
(最高型内面圧)
最高型内面圧は、所望の性質の発泡成形体が得られるように適宜設定できる。具体的には、0.30MPa以上となるように最高型内面圧を設定することが好ましい。0.30MPaより低い場合、耐熱性が悪化することがある。なお、最高型内面圧は、通常工程(IV)で記録される。より好ましい最高型内面圧は、0.31MPa以上である。
最高型内面圧の上限は、0.37MPaであることが好ましい。0.37MPaより大きい場合、成形品の寸法収縮が大きくなることがある。より好ましい最高型内面圧の上限は、0.35MPaである。
【0023】
(発泡成形装置)
発泡成形装置としては、特に限定されず、公知の装置をいずれも使用できる。例えば、図1に示す発泡成形装置が挙げられる。図中、1は成形装置、2はキャビティ型、3はコア型、4は成形型、5はキャビティ型本体、6はフレーム、7はコア型本体、8はフレーム、9はキャビティ、10及び11は蒸気室、12はキャビティ側蒸気導入弁、13はキャビティ側蒸気排出弁、14及び19は真空弁、15及び20は冷却水弁、16及び21は圧力計、17はコア側蒸気導入弁、18はコア側蒸気排出弁、22は面内圧力測定計、23は流量計を意味する。
【0024】
図1の装置を使用する場合、上記工程(I)〜(IV)を例えば次のように装置を操作して行うことができる。即ち、工程(I)は、キャビティ側及びコア側の蒸気導入弁及び蒸気排出弁を開状態とすることで行うことができ、主として蒸気が蒸気室で流通する。次に、工程(II)は、キャビティ側の蒸気導入弁及びコア側の蒸気排出弁を開状態とし、キャビティ側の蒸気排出弁及びコア側の蒸気導入弁を閉状態とすることで行うことができ、蒸気がキャビティ側からコア側へ流通する。更に、工程(III)は、キャビティ側の蒸気導入弁及びコア側の蒸気排出弁を閉状態とし、キャビティ側の蒸気排出弁及びコア側の蒸気導入弁を開状態とすることで行うことができ、蒸気がコア側からキャビティ側へ流通する。最後に、工程(IV)は、キャビティ側の蒸気導入弁及びコア側の蒸気導入弁を開状態とし、キャビティ側の蒸気排出弁及びコア側の蒸気排出弁を閉状態とすることで行うことができ、蒸気が成形型に圧入される。
【0025】
(予備発泡粒子)
予備発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含みさえすれば特に限定されない。
(1)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、公知の重合方法で得られた樹脂を使用できる。例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと他の単量体との共重合体(二元や三元以上の共重合体を含む)等が挙げられる。共重合体は、ブロック共重合体でも、ランダム共重合体でもよい。他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体等が挙げられる。
【0026】
共重合体は、プロピレン単位を75質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。更に、共重合体は、プロピレン−エチレン共重合体が好ましい。プロピレン−エチレン共重合体は、プロピレンとエチレンとの共重合体単位を90質量%以上含むものであることが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂は、120℃〜145℃の範囲の融点を有するものが好ましい。融点が、120℃より低いと発泡成形体の耐熱性が低くなることがある。また、融点が145℃より高いと、重合温度が高くなり、良好な重合が困難となることがある。なお、融点が複数ある場合、最も低い融点をここでの融点とする。
【0027】
(2)ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、置換スチレン(置換基は、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等)のスチレン系単量体を重合させて得られる樹脂が挙げられる。置換スチレンとしては、例えば、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン等が挙げられる。更に、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールのモノ又はジアクリル酸やメタクリル酸のエステル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位を70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。
【0028】
(3)ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との含有量
ポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、80〜400質量部であることが好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が400質量部より多い場合、発泡成形体の耐薬品性及び耐熱性が低下することがある。一方、ポリスチレン系樹脂の含有量が80質量部より少ない場合、発泡成形体の剛性が低下することがある。より好ましいポリスチレン系樹脂の含有量は、100〜350質量部であり、更に好ましいポリスチレン系樹脂の含有量は、125〜250質量部である。
【0029】
(4)他の成分
予備発泡粒子には、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂以外の他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、難燃助剤、着色剤、滑剤、核剤、充填材、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0030】
(a)難燃剤
難燃剤としては、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルエーテル、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジプロピルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジ(ヒドロキシエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)等の臭素系難燃剤、塩化パラフィン、塩化トリフェニル、塩化ジフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤、1,2−ジブロモ3−クロルプロパン、2−クロル−1,2,3,4−テトラブロモブタン等の塩素臭素含有難燃剤等が挙げられる。難燃剤は、1種のみ使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。複数種組み合わせて使用する場合は、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが主成分(例えば、50質量%以上)であることが好ましい。
【0031】
難燃剤は、予備発泡粒子100質量部に対して、4.0質量部未満0.3質量部以上の範囲で含有されることが好ましい。難燃剤の含有量が0.3質量部より少ないと、発泡成形体の難燃性が低下することがある。一方、難燃剤の含有量が4.0質量部以上であると、難燃性の付与に必要以上の量が含まれることになり発泡成形体の製造コストが増加することがある。更に、発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなることがある。難燃剤の含有量は、3.5質量部以下1.0質量部以上であることが好ましく、3.0質量部以下1.5質量部以上であることがより好ましい。
【0032】
(b)難燃助剤
難燃助剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等が挙げられる。難燃助剤は、1種のみ使用してもよく、複数種組み合わせて使用してもよい。複数種組み合わせて使用する場合は、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが主成分(例えば、50質量%以上)であることが好ましい。
【0033】
難燃助剤の含有量は、予備発泡粒子100質量部に対して、1.5質量部以下であることが好ましい。難燃助剤の含有量が1.5質量部より多いと、難燃性の付与に必要以上の量が含まれることになり発泡成形体の製造コストが増加することがある。さらに、発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなることがある。難燃助剤の含有量は、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが更に好ましい。
【0034】
(c)着色剤
着色剤としては、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。
無機系の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維等のカーボン、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、鉄黒、紅殻等の酸化物、群青のようなケイ酸塩、酸化チタン等が挙げられる。
有機系の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の多環式顔料等が挙げられる。
【0035】
上記着色剤として、カーボンを使用する場合、複合樹脂粒子に含有させる前のカーボン(原料カーボン)は、粒子状であることが好ましい。原料カーボンの粒子径は、通常、5nm〜100nmが好適であり、更に好ましくは、15nm〜35nmである。なお、原料カーボンの粒子径は、平均粒子径を意味し、平均粒子径は、電子顕微鏡による算術平均である。
また、予備発泡粒子中の着色剤の含有量は、2.3質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることが更に好ましい。
【0036】
(d)その他
滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アマイド等が挙げられる。
核剤としては、タルク、珪酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
充填材としては、合成又は天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
可塑剤としては、ジイソブチルアジペート、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、やし油等が挙げられる。
【0037】
(5)予備発泡粒子の性質
予備発泡粒子は、通常、0.0166〜0.2g/cm3の嵩密度を有することが好ましい。嵩密度が0.0166g/cm3より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、嵩密度が0.2g/cm3より大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加することがある。より好ましい嵩密度は0.02〜0.1g/cm3であり、更に好ましい嵩密度は0.022〜0.05g/cm3である。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm3)であることから、好ましい予備発泡粒子の嵩密度は5〜60(倍)の嵩発泡倍数に対応し、より好ましい嵩密度は10〜50(倍)の嵩発泡倍数に対応し、更に好ましい嵩密度は20〜45(倍)の嵩発泡倍数に対応する。
【0038】
予備発泡粒子の形状は、その後の型内発泡成形に影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状等が挙げられる。この内、成形型のキャビティ内への充填が容易である真球状、楕円球状が好ましい。
また、予備発泡粒子の平均粒子径は、2.5〜5.5mmの範囲であることが好ましい。
なお、予備発泡粒子は、発泡成形に付す前に、例えば24時間程度熟成工程に付してもよい。
【0039】
(6)予備発泡粒子の製法
予備発泡粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、発泡性複合樹脂粒子を加熱して予備発泡させることで予備発泡粒子を得ることができる。
加熱は、例えば、予備発泡装置内にゲージ圧力0.05〜0.4MPaの水蒸気を導入することで行うことができる。加熱時間は一般に20〜180秒程度である。
発泡性複合樹脂粒子は、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む複合樹脂粒子に、発泡剤を含浸させることにより得ることができる。
【0040】
(a)複合樹脂粒子
複合樹脂粒子は、例えば、
分散剤を含む水性懸濁中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100〜400質量部と、重合開始剤とを分散させる工程Aと、
得られた分散液をスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱してスチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程Bと、
スチレン系単量体の重合をさせて複合樹脂粒子を得る工程と、
を経ることにより製造できる。なお、上記方法以外に、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物をストランド状に押出し、押出されたストランドを所望の粒径で切断することで複合樹脂粒子を製造することも可能である。
【0041】
ここで、スチレン系単量体を重合させる工程は、1回でも、2回以上行ってもよい。例えば、2回以上行う場合、上記重合させる工程は、
ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、スチレン系単量体の第1の重合を行って第1の粒子を得る工程Cと、
第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、第1の粒子への前記スチレン系単量体の含浸及び第2の重合を行って複合樹脂粒子を得る工程Dと
に分けることができる。
工程A〜Dのそれぞれは、例えば、スチレン系単量体を原料としてビーズ状のポリスチレン系樹脂粒子を製造するポリスチレン系樹脂の懸濁重合法又はシード重合法等の周知の重合方法を実施する際に用いられるオートクレーブ重合装置を用いて実施できるが、使用される製造装置はこれに限定されない。
【0042】
(工程A)
ポリプロピレン系樹脂粒子は、例えば、ポリプロピレン系樹脂を押出機で溶融し、ストランドカット、水中カット、ホットカット等により造粒ペレット化する方法、粉砕機にて直接樹脂粒子を粉砕しペレット化する方法により得ることができる。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状等が挙げられる。このポリプロピレン系樹脂粒子の好ましい平均粒子径は、0.5〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.6〜1.0mmの範囲である。
【0043】
分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
【0044】
分散剤の使用量は、水性懸濁液100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
水性懸濁液を構成する水性媒体は、水、水と水溶性溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合物等が挙げられる。水性媒体の使用量は、懸濁液を形成できさえすれば特に限定されない。
【0045】
重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0046】
架橋剤を使用してもよい。架橋剤としては、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、2 ,5−ジメチル−2, 5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。架橋剤の添加方法としては、例えば、架橋剤をポリプロピレン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤又はスチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法等が挙げられる。この内、スチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
スチレン系単量体は、ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させるために、水性媒体に、連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系単量体は、水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。
【0047】
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られた分散液を、スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱し、スチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる。この加熱温度は、50〜75℃の範囲であることが好ましい。加熱温度が50℃未満であると、スチレン系単量体の含浸が不十分となってポリスチレンの重合粉末が生成されることがある。一方、加熱温度が75℃を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうことがある。より好ましい加熱温度は60〜70℃の範囲である。
【0048】
(工程C及びD)
工程C及び工程Dにおいて、ポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、重合温度は、例えば、工程C(第1の重合)では、(T−10)℃〜(T+20)℃の範囲であり、工程D(第2の重合)では、(T−25)℃〜(T+10)℃の範囲とすることができる。
【0049】
(b)発泡性複合樹脂粒子
(i)発泡剤
発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタン、炭酸ガス、窒素が挙げられる。これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用してもよい。発泡剤の使用量は、複合樹脂粒子100質量部に対して10〜20質量部の範囲とすることが好ましい。
【0050】
(ii)他の添加剤
更に、発泡助剤を発泡剤と共に用いてもよい。発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、D−リモネン等の溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油等の可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の使用量は、複合樹脂粒子100質量部に対して0.3〜1.5質量部が好ましい。
【0051】
また、発泡性複合樹脂粒子には、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を添加してもよい。
結合防止剤は、発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させる際の予備発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。ここで、合着とは、予備発泡粒子の複数個が合一して一体化することをいう。具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0052】
融着促進剤は、予備発泡粒子を二次発泡成形する際の予備発泡粒子同士の融着を促進させる役割を果たす。具体例としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコンオイル等が挙げられる。
なお、表面処理剤の総添加量は、複合樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
【0053】
(iii)発泡剤含浸
複合樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法は、発泡剤の種類に応じて適宜変更可能である。例えば、複合樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を圧入して、発泡剤を含浸させる方法、複合樹脂粒子を回転混合機に供給し、この回転混合機内に発泡剤を圧入して発泡剤を含浸させる方法等が挙げられる。なお、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度は、通常、50〜70℃とすることが好ましい。
【0054】
(発泡成形体)
発泡成形体は、0.0166〜0.2g/cm3の密度を有することが好ましい。密度が0.0166g/cm3より小さいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、発泡成形体の密度が0.2g/cm3より大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加することがある。より好ましい密度は0.02〜0.1g/cm3の範囲であり、更に好ましい密度は0.022〜0.05g/cm3の範囲である。
上記密度を発泡倍数で示すと、好ましい密度は5〜60(倍)の発泡倍数に対応し、より好ましい密度は10〜50(倍)に対応し、更に好ましい密度は20〜45(倍)に対応する。
【0055】
発泡成形体は、融着性、加熱寸法安定性、剛性、発泡成形性及び耐薬品性に優れている。また、難燃剤を含む場合は、難燃性に優れている。また、着色剤を含む場合は、意匠性に優れている。
発泡成形体は、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の車輛用緩衝材、車両室内の構造部材、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等の各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種測定値の測定法を下記する。
<融点>
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定する。すなわち、示差走査熱量計装置DSC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30ml/minのもと、室温から220℃の間で10℃/minの昇・降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とする。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とする。
【0057】
<嵩発泡倍数>
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は下記の要領で測定する。
まず、予備発泡粒子を500cm3、メスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了する。
【0058】
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
嵩密度(g/cm3)=W/500
予備発泡粒子の嵩発泡倍数は、次式により算出する。
嵩発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm3
【0059】
<使用蒸気量測定方法>
山武社製蒸気流量計(MVC31A−8VXX−FXP111−N2−T1)を蒸気減圧弁手前の蒸気配管に設置し、金型加熱前の数値を(S0)kg、両面加熱後の数値を(S1)kgとして、下記式に基づいて、加熱工程中に使用した蒸気使用量を算出する。
V(kg)=S1(kg)−S0(kg)
V:蒸気使用量(流量計数値変化差)
S1:両面加熱後の数値
S0:金型加熱前の数値
【0060】
<発泡成形体の嵩発泡倍数>
発泡成形後に得られる発泡成形体の見かけの体積(cm3)(c)と、その質量(g)(d)を測定し、式(d)/(c)により発泡成形体の嵩密度(g/cm3)を求める。発泡成形体の見かけの体積は成形後の収縮を考慮しなければ、例えば発泡成形体が得られた時点での金型キャビティ内の体積に等しく、金型図面寸法から算出できる。嵩発泡倍数は嵩密度の逆数、すなわち式(c)/(d)とする。
【0061】
<加熱寸法変化率>
加熱寸法変化率はJIS K 6767:1999K「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定した。
試験片は150×150×原厚み(mm)として、その中央部に縦および横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、80℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦および横線の寸法を下記式によって測定した。
S=|(L1−L0)|/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は加熱前の平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
加熱寸法変化率Sは、以下の基準で評価した。
○:加熱寸法変化率0.5%以下
×:加熱寸法変化率0.5%より大きい
【0062】
<融着率>
800mm×横600mmの上面を有し、厚み50mmの形状の発泡成形体の上面に、カッターで横方向に沿って長さ300mm、深さ約5mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って発泡成形体を二分割する。そして、二分割された発泡成形体の破断面の発泡粒子について、発泡粒子内で破断している発泡粒子数(a)と、発泡粒子間の界面で破断している発泡粒子数(b)を測定し、下記式に基づいて融着率を算出する。
融着率(%)=100×(a)/〔(a)+(b)〕
【0063】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、プロピレン単位含有率:96質量%)38kgと、カーボンとしてファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#650B」)2kgとを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
【0064】
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子16kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド14gを溶解させたスチレン単量体6.8kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1重合段階)させた。
【0065】
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ50gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)72gを溶解したスチレン単量体17.2kgを4.25時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)1.2kgと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)0.2kgとを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続け、難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
【0066】
次に、常温(約25℃)まで冷却し、該難燃剤含有複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子40kgと水40Lとを再び攪拌機付100Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン6kgを攪拌機付100Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して100Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0067】
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.05MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約43倍に予備発泡させ、平均粒子径4.4mmの予備発泡粒子を得た。
次に、得られた予備発泡粒子を24時間、常温、常圧下で放置した後、800mm×600mm×50mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、表1の条件で、成形を行い、発泡成形体の最高面圧がゲージ圧力0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡倍数約40倍の発泡成形体を得た。
【0068】
(実施例2〜3及び比較例1〜3)
表1の条件で発泡成形体を製造すること以外は、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。
【0069】
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、プロピレン単位含有率:96質量%)38kgと、カーボンとしてファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#650B」)2kgとを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
【0070】
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子12kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド10gを溶解させたスチレン単量体5.0kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
【0071】
反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1重合段階)させた。
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ50gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)84gを溶解したスチレン単量体23.0kgを5.50時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
【0072】
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)1.2kgと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)0.2kgとを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続け、難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、常温(約25℃)まで冷却し、該難燃剤含有複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子40kgと水40Lとを再び攪拌機付100Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン6kgを攪拌機付100Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
【0073】
その後、常温まで冷却して100Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.05MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約53倍に予備発泡させ、平均粒子径4.8mmの予備発泡粒子を得た。
表1の条件で発泡成形体を製造すること以外は、実施例1と同様にして、発泡倍数約50倍の発泡成形体を作製した。
【0074】
(実施例5)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、プロピレン単位含有率:96質量%)38kgと、カーボンとしてファーネスブラック(三菱化学社製、商品名「#650B」)2kgとを混合し、この混合物を押出機に供給して溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
【0075】
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子20kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド17gを溶解させたスチレン単量体8.4kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
【0076】
反応系の温度をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1重合段階)させた。
第1重合段階の反応液をカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ50gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)60gを溶解したスチレン単量体11.6kgを3.0時間かけて滴下し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
【0077】
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)1.2kgと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)0.2kgとを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続け、難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
次に、常温(約25℃)まで冷却し、該難燃剤含有複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子40kgと水40Lとを再び攪拌機付100Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン6kgを攪拌機付100Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して100Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0078】
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.1MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約33倍に予備発泡させ、平均粒子径4.0mmの予備発泡粒子を得た。
表1の条件で発泡成形体を製造すること以外は、実施例1と同様にして、発泡倍数約30倍の発泡成形体を作製した。
【0079】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、プロピレン単位含有率:96質量%)を押出機に供給して溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。このときのカーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり80mg、平均粒子径約1mmに調整した。
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、ポリプロピレン系樹脂粒子16kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
【0080】
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド14gを溶解させたスチレン単量体6.8kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、カーボン含有ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1重合段階)させた。
【0081】
第1重合段階の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ50gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)72gを溶解したスチレン単量体17.2kgを4.25時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
【0082】
その後、反応系の温度を60℃にして、この懸濁液中に、難燃剤としてトリ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアネート(日本化成社製)0.6kgと、難燃助剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(化薬アクゾ社製)0.2kgとを投入し、投入後、反応系の温度を140℃に昇温し、3時間攪拌を続け、難燃剤含有複合樹脂粒子を得た。
【0083】
次に、常温(約25℃)まで冷却し、該難燃剤含有複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の難燃剤含有複合樹脂粒子40kgと水40Lとを再び攪拌機付100Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン6kgを攪拌機付100Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して100Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性複合樹脂粒子を得た。
【0084】
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を笠原工業社製PSX40予備発泡機に1000g投入し、PSX40予備発泡機内にゲージ圧力0.05MPaの水蒸気を導入して加熱して嵩発泡倍数約53倍に予備発泡させ、平均粒子径4.8mmの予備発泡粒子を得た。
表1の条件で発泡成形体を製造すること以外は、実施例1と同様にして、発泡倍数約50倍の発泡成形体を作製した。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜6及び比較例1〜3の発泡成形体の融着率、蒸気使用量、加熱寸法変化率及び最高型内面圧の値を表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
表1及び2から、両面加熱工程(IV)を密閉系で20秒以上行い、かつ工程(I)〜(IV)を式a+b+c<dの条件で行うことで、水蒸気の使用量を低減でき、融着率及び加熱寸法安定性の向上した発泡成形体を得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0089】
1:成形装置、2:キャビティ型、3:コア型、4:成形型、5:キャビティ型本体、6:フレーム、7:コア型本体、8:フレーム、9:キャビティ、10及び11:蒸気室、12:キャビティ側蒸気導入弁、13:キャビティ側蒸気排出弁、14及び19:真空弁、15及び20:冷却水弁、16及び21:圧力計、17:コア側蒸気導入弁、18:コア側蒸気排出弁、22:面内圧力測定計、23:流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む予備発泡粒子を、成形型内で、任意に成形型加熱工程(I)と一方加熱工程(II)と逆一方加熱工程(III)、及び両面加熱工程(IV)に付すことにより得られ、
前記両面加熱工程(IV)が、密閉系で20秒以上行われ、
前記工程(I)〜(IV)が、以下の式
a+b+c<d
(式中、aは前記成形型加熱工程(I)に要する時間、bは前記一方加熱工程(II)に要する時間、cは前記逆一方加熱工程(III)に要する時間、dは前記両面加熱工程(IV)に要する時間を意味する)
の条件を満たすことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記aが0〜5秒間、前記bが0〜5秒間、前記cが0〜5秒間、前記dが20〜45秒間行われる請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記dが、前記a+b+cの値より、10〜45秒の範囲で長い請求項1又は2に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)〜(IV)が、10〜24kgの範囲の合計蒸気量で行われる請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記両面加熱工程(IV)は、最高型内面圧が0.30MPa以上となるように行われる請求項1〜4のいずれか1つに記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
前記予備発泡粒子が、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部と、ポリスチレン系樹脂80〜400質量部とを含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの方法により得られた発泡成形体。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−131057(P2012−131057A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283160(P2010−283160)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】