説明

発泡樹脂成形機

【課題】作業者の負担を軽減でき、かつ安全にして成形効率がよい小型の発泡樹脂成形機を提供する。
【解決手段】垂直方向の合わせ面31を有する固定型3が装着された固定ダイプレート1と、前記固定型3に水平方向から当接される移動型4が装着された移動ダイプレート2とを備える発泡樹脂成形機において、固定ダイプレート1を移動ダイプレート2に対して表裏反転させる反転機構5に支持させたうえに、固定ダイプレート1の表裏両面にインサート部品を装着可能な固定型3を取り付けて、移動型4に当接された表面側固定型3におけるインサート成形と、表面側固定型3とは反対側の裏面側固定型3における成形品の取り出し及びインサート部品を装着するための段取り作業とを並行して行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付金具や樹脂部材等のインサート部品を発泡樹脂からなる成形材料とともに一体に成形するための発泡樹脂成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂成形機として、取付金具や樹脂部材などのインサート部品を予め金型内に装着したうえに、キャビティ内に発泡樹脂原料を充填して一体に成形するものがある。このような発泡樹脂成形機として、水平方向の合わせ面を有する上型と下型とからなる一台の金型を備えたものが知られている。このものにおいては、金型が一台しか搭載されていないため成形品の取り出した後にインサート部品の装着を行ったうえで次の成形を行っているため、生産性が劣る。また、上型が上下動するので、作業者が成形機の下に立つこととなるが、この周辺には成形機の支柱等が存在しているためスペースがなく、このため成形品及びインサート部品の置き場所が作業者から離れざるを得ず作業性が劣ることとなる。また、成形部位が作業者の上方にあるため、ドレン廃水がかかったりして作業環境が良好でないという問題がある。
【0003】
また、発泡樹脂成形機として、図6−8にしめすような、インサート部品を装着する段取り工程と、インサート成形を行う成形工程とを分けて行うようにしたシャトル型発泡樹脂成形機が知られている。このものにおいては、型締装置を有する成形ステーション70の両側に、第1の段取りステーション71と第2の段取りステーション72が設けられている。成形ステーション70と第1の段取りステーション71との間を第1のシャトルユニット73が移動する。成形ステーション70と第2の段取りステーション72との間を第2のシャトルユニット74が移動する。成形作業においては、例えば、第1のシャトルユニット73が成形中に第2のシャトルユニット74から成形品を取り外して次のインサート部品を装着する。そして、第2のシャトルユニット74が成形中に第1のシャトルユニット73から成形品を取り外して次のインサート部品を装着する段取りを行う。
【0004】
しかしながら、以上のようなシャトル型発泡樹脂成形機においては、成形ステーション70の両側に第1の段取りステーション71と第2の段取りステーション72が設けられているため、設備が大型化し設置のために大きなスペースを必要とするという問題がある。また、作業者が成形ステーション70を挟んで約10mも左右に往復移動せねばならず、このため作業者に多大な労働の負担をかけるものであった。また、人の移動に時間を要するため作業の効率化にも限界があった。さらに、成形品及びインサート部品の置き場所が成形ステーション70の左右に2個所必要になるという問題もあった。
【特許文献1】特開2004−188737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、作業者の負担を軽減でき、かつ小型にして成形効率のよい発泡樹脂成形機を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る発泡樹脂成形機は、垂直方向の合わせ面を有する固定型が装着された固定ダイプレートと、前記固定型に水平方向から当接される移動型が装着された移動ダイプレートと、を備える発泡樹脂成形機において、
固定ダイプレートを移動ダイプレートに対して表裏反転させる反転機構に支持させたうえに、固定ダイプレートの表裏両面に、インサート部品の装着が可能な固定型を取り付けて、移動型に当接された表面側固定型におけるインサート成形と、表面側固定型とは反対側の裏面側固定型における成形品の取り出し及びインサート部品を装着するための段取り作業とを並行して行うようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
上記した発明において、反転機構を、駆動源によって回転される回転軸を有するものとすることができ、移動ダイプレートに原料充填機を搭載して、この移動ダイプレートを固定ダイプレートに対して水平移動させる移動機構に支持させることができる。また、固定型にインサート部品の装着機能を設けることができ、発泡樹脂成形機にインサート部材の脱着機構を装備することもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、固定ダイプレートを、水平移動される移動ダイプレートに対して表裏反転可能な反転機構に支持させたうえに、固定ダイプレートの表裏両面に垂直方向の合わせ面を有する固定型を装着したので、移動型が当接された表面側固定型にてインサート成形を行うとともに、反対側の裏面側固定型を作業者に対向させて成形品の取り出しと次のインサート部品を装着する段取り作業とを並行して行うことができる。
【0009】
よって、従来のシャトル型発泡樹脂成形機のように成形ステーションの左右に二つの段取りステーションを設ける必要がないので、成形機の横幅を1/3の小型のものとすることができる。また、表面側固定型におけるインサート成形と、裏面側固定型における成形品の取り出し及び段取り作業とを同時に行うことができるので、成形工程の効率化を図ることができる。また、作業者はダイプレートの裏面側の所定の場所で作業することができて左右に移動する必要がないので、作業者にかかる負担を大幅に軽減することができるうえに、広い作業スペースを確保する必要がない。また、成形品やインサート部品の置き場を作業者の近傍に一個所とすることができるので、シャトル型発泡樹脂成形機のように置き場を2個所設ける必要がない。さらに、作業者はダイプレートの裏面側で作業を行うことができるので、ドレン廃水がかかったりすることがなく、衛生的に作業を行うことができるという多くの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に付いて説明する。
図1〜3は、本発明に係る発泡樹脂成形機を示す図であって、1は固定ダイプレート、2は水平移動する移動ダイプレートである。固定ダイプレート1の表裏両面には垂直方向の合わせ面31を有する固定型3が装着されており、移動ダイプレート2の固定ダイプレート1に向き合う面には垂直方向の合わせ面41を有する移動型4が装着されている。なお、固定ダイプレート1の表面側とは、移動ダイプレート2に対向する面側をいい、固定ダイプレート1の裏面側とは、表面側とは反対の面側をいうものとする。
【0011】
固定ダイプレート1は、垂直回転軸5を有する反転機構に支持されており、図示していない駆動源によって移動ダイプレート2に対して180°表裏反転することができる。即ち、固定ダイプレート1が表裏回転されることによって、固定ダイプレート1の表面側の固定型3と裏面側の固定型3とを交互に置き換えることができる。固定ダイプレート1の裏面側には、作業者が待機している。なお、反転機構は、180°正逆回転するものであっても、同じ方向に180°ずつ正転するものであってもよい。また、反転機構は、上記したものに限定されず、水平軸や斜め軸、あるいはターンテーブルなど固定ダイプレート1を表裏反転させることができる機構のものであればよい。
【0012】
固定ダイプレートが表裏反転するので、作業者は広範囲に移動する必要がなく、よって、成形品やインサート部品の置き場を移動ダイプレートの裏面側、即ち、作業者の近傍に設けることができる。即ち、置き場は一個所で足りる。
【0013】
移動ダイプレート2は、固定ダイプレート1に対して水平移動させる移動機構6に支持されている。即ち、移動ダイプレート2の上部が水平レール61に支持されており、移動型4が装着された反対側の面(以下、背面という)にリンク棒62が取り付けられており、このリンク棒62は駆動源63によって作動される。したがって、移動ダイプレート2は、駆動源63によってリンク棒62を介して水平レール61上を、固定ダイプレート1に対して、接近または離間する方向に水平移動することができる。なお、水平移動機構は、上記したものに限定されず、トグルリンク機構、ボールネジ機構など固定ダイプレート1に対して水平移動させることができる機構のものを用いることができる。
【0014】
固定型3、移動型4の内部は蒸気室32、42となっており、蒸気室32、42の内部には用役ノズル33、43が配設されており、この用役ノズル33、43からスチームまたは冷却水が供給される。
【0015】
移動ダイプレート2の背面には、原料充填機21が差し込まれており、この原料充填機21から、固定型3と移動型4とで形成されるキャビティ内に発泡樹脂原料が充填される。これは、固定ダイプレート1の表裏両面に固定型3が装着されているために、固定ダイプレート1の中央付近に原料充填機21を差し込むことができないので、移動ダイプレート2側に装備することにしたものである。
【0016】
以上のような発泡樹脂成形機において、インサート部材を固定型3に保持するための装着機能を設けることができる。装着機能として、金型にインサート部品装着用の凹部を設けたり、インサート部品を真空吸引するための吸引孔を設けたりすることができる。また、インサート部材を固定型に対して脱着するための脱着機構を装備することができる。脱着機構として、インサート部材が鉄など磁性材料である場合にはソレノイドを用いて電磁的に脱着することができるし、シリンダーなどで挟持、離脱可能に脱着することができる。
【0017】
上記した発泡樹脂成形機を用いて成形体をインサート成形するには、固定ダイプレート1の裏面側固定型3に作業者がインサート部品を所要位置に装着する。その後、固定ダイプレート1は反転機構により表裏反転され、表面側となった固定型3に移動型4が水平移動されて当接される。そして、固定型3と移動型4とで形成されたキャビティ内に原料充填機21から原料が充填される。次いで、蒸気室32、43からキャビティ内にスチームを導入することによって、原料は加熱され発泡溶着されるので、所望の成形体をインサート成形することができる。
【0018】
その後、蒸気室32、42に用役ノズル33、43から冷却水を噴霧して、固定型3、移動型4を冷却することによりキャビティ内の成形体は冷却される。冷却完了後は移動ダイプレート2を固定ダイプレート1から引き離したうえで(図4)、反転機構により固定ダイプレート1を反転させて表面側固定型3を裏面側に回す(図5)。これによって、作業者が成形品7を取り出すとともに、新たなインサート部品8を固定型3に装着することができる。以上のように、固定型3を表裏反転させることによりインサート成形と、成形品7の取り出し及びインサート部品8を装着する段取り作業とを同時に並行して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の発泡樹脂成形機の平面図である。
【図2】本発明の発泡樹脂成形機の側面図である。
【図3】本発明の発泡樹脂成形機の背面図である。
【図4】固定ダイプレートの回転状態を説明する発泡樹脂成形機の平面図である。
【図5】成形品が裏面側に回された状態を示す発泡樹脂成形機の平面図である。
【図6】シャトル型発泡樹脂成形機の正面図である。
【図7】シャトル型発泡樹脂成形機の側面図である。
【図8】シャトル型発泡樹脂成形機の平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 固定ダイプレート、2 移動ダイプレート、3 固定型、4 移動型、5 反転機構、31 合わせ面、41 合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向の合わせ面を有する固定型が装着された固定ダイプレートと、前記固定型に水平方向から当接される移動型が装着された移動ダイプレートと、を備える発泡樹脂成形機において、
固定ダイプレートを移動ダイプレートに対して表裏反転させる反転機構に支持させたうえに、固定ダイプレートの表裏両面に、インサート部品の装着が可能な固定型を取り付けて、
移動型に当接された表面側固定型におけるインサート成形と、表面側固定型とは反対側の裏面側固定型における成形品の取り出し及びインサート部品を装着するための段取り作業とを並行して行うようにしたことを特徴とする発泡樹脂成形機。
【請求項2】
反転機構を、駆動源によって回転される回転軸を有するものとした請求項1に記載の発泡樹脂成形機。
【請求項3】
移動ダイプレートに原料充填機を搭載して、この移動ダイプレートを固定ダイプレートに対して水平移動させる移動機構に支持させた請求項1または2に記載の発泡樹脂成形機。
【請求項4】
固定型にインサート部品の装着機能を設けた請求項1〜3の何れかに記載の発泡樹脂成形機。
【請求項5】
インサート部材の脱着機構を装備した請求項1〜4の何れかに記載の発泡樹脂成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−214464(P2009−214464A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61996(P2008−61996)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(391023057)株式会社ダイセン工業 (14)
【Fターム(参考)】