説明

発泡表面二層押出成形品とその製造方法並びに発泡表面二層押出成形品を用いた雨樋

【課題】低コストで、複雑な凹凸形状を付与した発泡表面二層押出成形品とその製造方法並びに発泡表面二層押出成形品を用いた雨樋を提供する。
【解決手段】非発泡性樹脂1の表面にランダムに凹凸形状を有する発泡層21が形成されている二層押出成形品であって、非発泡性樹脂1に熱接着する発泡樹脂2をもって非発泡性樹脂1の表面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡表面二層押出成形品とその製造方法並びに発泡表面二層押出成形品を用いた雨樋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の軒先部に配設される軒樋は、様々な目的で改良が加えられているが、その目的の一つに軒の外観の向上がある。たとえば軒樋が取り付け固定される鼻板または鼻隠板と軒樋との間に生じる隙間が大きいと、下から軒を見上げた際にはこの隙間が見えてしまい見苦しい。これを解決するために、特許文献1,2では上記隙間が目立たないような構造の軒樋を提案している。
【0003】
一方で、意匠性に富んだ建物が求められている。この場合、軒を含めた建物全体の外観が重視される。このような見地から石材、金属等の無機質系部材よりなる外壁材や屋根材といった周辺部材と軒樋の外観を調和させる必要がある。しかしながら、塩化ビニル樹脂等の樹脂製の軒樋を用いた場合には外観がプラスチック感となることは否めず、周辺部材と調和を図ることは困難である。
【0004】
ところで、従来より、樹脂に凹凸模様を付与する方法として、たとえば特許文献3のように、基材上に共押出法により成膜された熱可塑性エラストマー層と発泡剤により粗面化された剥離層の2層よりなる積層体を熱可塑性エラストマー層が基材側となるように重ね合わせて接着後剥離層のみを剥離することで、エラストマー表面にマット感、エンボス感、レザー感を付与することが知られている。しかしながら、この方法は成膜後において剥離層を剥離する工程が必要であること、剥離した剥離層は廃棄されるがそのための廃棄コストがかかるだけでなく環境を考慮したものでないこと、剥離層の材料コストがかかる等の問題があった。
【特許文献1】特開2006−328770号公報
【特許文献2】特開平11−241469号公報
【特許文献3】特公平4−43784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の通りの背景から、低コストで、複雑な凹凸形状を付与した発泡表面二層押出成形品とその製造方法並びに発泡表面二層押出成形品を用いた雨樋を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴とする。
【0007】
第1には、本発明の発泡表面二層押出成形品は、非発泡性樹脂の表面にランダムに凹凸形状を有する発泡層が形成されている二層押出成形品であって、発泡層は、非発泡性樹脂に密着する発泡樹脂をもって非発泡性樹脂の表面に形成されている。
【0008】
第2には、上記発泡表面二層押出成形品の製造方法であって、非発泡性樹脂とこれと密着する発泡樹脂とを二層押出成形して発泡樹脂を発泡させ、非発泡性樹脂の表面に発泡樹脂の発泡層を形成する。
【0009】
第3には、本発明の雨樋は、上記発泡表面二層押出成形品が少なくともその構成の一部とされている。
【発明の効果】
【0010】
上記第1の発明によれば、表面に複雑な凹凸形状がランダムに付与されることで、外観のプラスチック感を抑えることができる。またこれにより周辺部材との調和を乱すことがなくなり、周辺部材を含めた全体の外観を向上させることができる。
【0011】
上記第2の発明によれば、複雑な凹凸形状をランダムに付与した発泡表面層二層押出成形品を低コストで製造することができる。
【0012】
上記第3の発明によれば、上記第1の発明の効果は建築全体の外観を考慮した雨樋として実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に図面に沿ってその実施の形態について説明する。
【0014】
図1は本発明の発泡表面二層押出成形品の一実施形態を示した断面図である。
【0015】
本発明の発泡表面二層押出成形品は、非発泡性樹脂1の硬化層11の表面にランダムに凹凸形状を有する発泡樹脂2の発泡層21が密着(熱接着ともいう)されて形成されている。ここで、発泡樹脂2とは、発泡層21を形成させるために用いられる樹脂を指すものであって、たとえば炭酸塩、重炭酸塩、アルミニウム粉末等の無機系発泡剤や、アゾ化合物、イソシアネート化合物等の有機系発泡剤等の発泡剤が配合されている樹脂である。この発泡表面二層押出成形品は、市販されている押出機で非発泡性樹脂1と発泡樹脂2とを二層押出成形し各々の樹脂を密着させて形成するものであり、従来より知られている二層被覆押出成形方法で製造することができる。たとえば、特許第3577341号公報に記載されているように、二台の押出機から非発泡性樹脂1および発泡樹脂2を押出金型に供給して積層し、続いて押出口より押出し、押出金型に連動したサイザーによって寸法決定と冷却を行い、さらに冷却装置を用いて冷却して所望の成形品を得ることができる。
【0016】
非発泡性樹脂1の硬化層11表面の発泡層21は、押出成形時に発泡樹脂2が発泡して形成される。さらに詳しく説明すると、この発泡層21は、押出機内で発泡樹脂2が加熱、加圧されて樹脂が溶融している状態のところに前記樹脂に配合されている発泡剤が分解してガスが発生し、樹脂中に均一に分散して押出金型から出たところで大気圧に開放されることによってガスが膨張し、そのガスの周囲に樹脂壁が形成されて上記発泡層21が形成される。したがって、形成された発泡層21は、図1に示すように発泡層21中に大小の気泡22が分散しており、その外面は複雑な凹凸形状がランダムに付与された凹凸面23となっている。このような凹凸面23は外光を乱反射させるため、成形品のプラスチック感を抑えることができる。
【0017】
上記効果はこの発泡表面二層押出成形品を軒樋や竪樋等の雨樋の構成部材とすることで、実際上、大きく実現される。たとえば、断面略コ字状で外面側が発泡層21、内面側が非発泡性樹脂1の硬化層11の軒樋本体を形成し、これを建物の軒先部に軒樋として配設した場合、外から観察される軒樋の外観は、軒樋本体の発泡層21における複雑な凹凸形状がランダムに付与された凹凸面23によってプラスチック感が抑えられたものとなり、軒樋の周辺部材との調和を図り、さらには建物全体の外観を向上させることができる。発泡層21の発泡状態によっては、石材感、金属調の凹凸面23とすることもでき、周辺部材との調和をより一層図ることも可能となる。なお、軒樋として用いる以外にも、たとえば断面略円筒状、断面略角筒状等で外面側が発泡層21、内面側が非発泡性樹脂1の硬化層11の竪樋本体を形成し、これを建物に竪樋として配設した場合にも同様の効果を奏することができる。
【0018】
形成される発泡層21の凹凸形状は、たとえば、用いる発泡剤の種類、発泡剤の分解温度、発生するガス量等の発泡条件、発泡剤の配合量等によって決定され、これらを適宜に選択して様々な凹凸形状を有する発泡層21を形成することが可能である。
【0019】
発泡剤としては、たとえば、上述したように炭酸塩、重炭酸塩、アルミニウム粉末等の無機系発泡剤や、アゾ化合物、イソシアネート化合物等の有機系発泡剤等を例示することができる。発泡剤の分解温度は発泡剤の種類によって異なり、樹脂の成形温度に応じて適宜な発泡剤を選択する。発泡剤の配合量は分解ガス量を考慮して設定される。発泡剤の配合量を多くすると、一般的には大きな凹凸形状を有する発泡層21となる傾向にあり、配合量を少なくすると小さな凹凸形状を有する発泡層21となる傾向にある。このため、目的に応じた所望の凹凸形状を得るために適宜に配合量を調整することが考慮される。
【0020】
発泡樹脂2として用いる樹脂は、非発泡性樹脂1と密着するものを用いる。たとえば、発泡樹脂2として用いる樹脂としては、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体)、アクリル樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)等を例示することができ、非発泡性樹脂1としては、PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル共重合体)等を例示することができる。発泡樹脂2として用いる樹脂と非発泡性樹脂1との好適な組み合わせとしては、たとえば発泡樹脂2として用いる樹脂がASA樹脂またはアクリル樹脂の場合、非発泡性樹脂1としてPVCまたはABS樹脂を用いることが好ましい。表1は発泡樹脂2として用いる樹脂と非発泡性樹脂1との組み合わせをまとめたものである。表1中の「○」は両者の樹脂が密着(熱接着)可能であることを示し、「◎」は両者の樹脂の密着性が良好であることを示している。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の発泡表面二層押出成形品は、表面の凹凸形状を特別な設備を用いて後加工で付与するものでなく、従来の二層押出成形品を成形する方法で複雑な凹凸形状をランダムに付与することができるため低コストで製造することができる。
【0023】
本発明の発泡表面二層押出成形品は上記のように軒樋本体や竪樋本体として用いる以外にも、たとえば雨樋のコーナー部や合流部等、樹脂製の建築外装部品にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発泡表面二層押出成形品の一実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 非発泡性樹脂
11 硬化層
2 発泡樹脂
21 発泡層
22 気泡
23 凹凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非発泡性樹脂の表面にランダムに凹凸形状を有する発泡層が形成されている二層押出成形品であって、発泡層は、非発泡性樹脂に密着する発泡樹脂をもって非発泡性樹脂の表面に形成されていることを特徴とする発泡表面二層押出成形品。
【請求項2】
非発泡性樹脂とこれと密着する発泡樹脂とを二層押出成形して発泡樹脂を発泡させ、非発泡性樹脂の表面に発泡樹脂の発泡層を形成することを特徴とする発泡表面二層押出成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1の発泡表面二層押出成形品が少なくともその構成の一部とされている雨樋。

【図1】
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【公開番号】特開2008−290396(P2008−290396A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139656(P2007−139656)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】