説明

発熱基板及びその製造方法

【課題】一定の形状を維持し得るとともに、大きな発熱量を得ることができる発熱基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】亜鉛、錫等の不純物を添加して導電性を具備した半導体からなる発熱素子5をSUSからなる金属箔Fに3〜7μm程度の厚さに塗布し、800〜1200℃で所定時間焼成して再結晶化させ、金属箔F上に発熱素子5の層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は発熱基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化インジウムと酸化錫との混合剤に硫酸を加えてイオン化を強めて安定させたものに、特殊調製した炭素剤と超微粒のホウ酸とを加えた混合基剤を高濃度複合化合物溶液で混合し、所定温度で所定時間養生して成型体にし、その成型体にしたものを電気炉で窒素ガス置換して累進高温焼成し、電熱体を製造する方法が知られている(下記特許文献参照)。
【特許文献1】特開2005-322614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記成型体を酸化炉(酸素、水蒸気雰囲気)で焼成した場合、板状のブロックがでるが、そのブロックは金属結合せず、また、空孔を確認できなかった。出来上がったブロックは炭化して崩れ易いものであった。また、成型体を還元炉(一酸化炭素雰囲気、窒素ガス雰囲気、水素ガス雰囲気)で焼成した場合、板状のブロックになったが、それを炉から取り出し、所定時間以上放置すると、ブロックは崩れた。すなわち、上記製造方法では所定の形状を維持できるブロックを得られないため、電熱体は得られなかった。
【0004】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は一定の形状を維持し得るとともに、大きな発熱量を得ることができる発熱基板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、所定の不純物を含有する半導体からなる発熱素子が金属箔に一体に形成されていることを特徴とする
請求項2記載の発明は、所定の不純物を含有する半導体の水溶液を金属箔に所定の厚さに塗布する塗布工程と、前記金属箔に塗布された前記半導体を所定の温度で所定時間加熱処理して固化させる加熱工程とを含むことを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発熱基板の製造方法において、前記水溶液にホウ酸が含まれ、前記不純物は亜鉛、錫であることを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発熱基板の製造方法において、前記水溶液の厚さは3〜7μmであり、前記加熱温度は800〜1200℃であることを特徴とする。
【0008】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項記載の発熱基板の製造方法において、前記加熱処理は前記半導体にレーザビームを照射することにより前記半導体を加熱して再結晶化させることを特徴とする。
【0009】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項記載の発熱基板の製造方法において、前記加熱処理は、前記半導体を無酸化雰囲気中で加熱することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、一定の形状を維持し得るとともに、大きな発熱量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図2はこの発明の一実施形態に係る発熱基板1の断面の写真である。
【0013】
この写真は、SEM(走査型電子顕微鏡(加速電圧:10kV、倍率:×500))を用いて撮影されたものである。
【0014】
発熱基板1は、例えば床暖房用のヒータ等として使用されるものであり、ホウ酸に亜鉛、錫等を添加して導電性を具備させた半導体からなる発熱素子5をSUS(ステンレス鋼)からなる金属箔Fの表面に一体に形成したものである。
【0015】
なお、SUS以外の金属箔Fとしては、YUS(新日本製鐵株式会社の独自鋼種)(登録商標)がある。例えば、YUS205(SUS304規格に相当)にはクロムが5%とアルミニウムが20%の割合で含まれている。SUS、YUSは耐久性、熱伝導性、半導体の水溶液を塗布したときの相性等の点で優れている。
【0016】
発熱基板1の厚さは34μm程度であり、発熱素子5の厚さは1.7μm程度である。
【0017】
次に、上記発熱基板1の製造方法を説明する。
【0018】
まず、溶解度の高い機能水を100℃に加熱して沸騰させ、溶解度を上げる。機能水はPH7.0〜7.1の中性の水である。
【0019】
次に、前記機能水に草木灰を加える。草木灰に含まれているオルトリン酸、苦土の成分である酸化マグネシウム、珪酸の成分であるメタ珪酸が機能水に溶け込む。
【0020】
その後、この機能水を濾過する。濾過された機能水はイオン化の進んだ陽イオンの速度を速めたPHの高いアルカリ水溶液となる。
【0021】
次に、アルカリ水溶液に褐藻成分を加え、褐藻成分に含まれる硫黄と水とを反応させて希硫酸を発生させる。後に加える金属物質がこの希硫酸に溶け込む。
【0022】
その後、腐植質フミン酸を加えてアルカリ水溶液を加水分解し、アミノ酸と糖とを生成する。アミノ酸のミステインメチオンは硫黄を含んでおり、蛋白質に取り込まれる。
【0023】
次に、ホウ酸を加え、オルトリン酸に含まれる燐酸化酵素の酵素反応によってホウ酸をホウ素に還元して、半導体の半金属(N型半導体の皮膜液)を生成する。このとき、蛋白質のアミノ酸が触媒として機能する。また、ホウ素自体は酸化させることにより中性子が抜け、原子核の持つ正の電荷と電子の持つ負の電荷との釣り合いのバランスがくずれる。ホウ素自体は半金属であるため、自由に動き回れる電子を持つとともに、原子同士の結合部に動き回れない電子を持ち、金属と半導体との中間の電気を通す性質(電気伝導度)を有する。
【0024】
その後、N型半導体の皮膜液に亜鉛、錫を不純物としてを加える。ホウ素に不純物を添加することにより、イオン化が促進され、マイナスの電荷を持ったキャリアである電子が増えて半導体の中を流れる電流が増加する。
【0025】
次に、亜鉛、錫を加えた皮膜液に安定化プラスイオン(いわゆるミネラル)を焼成した鉱物パウダーを加える。バインダ(SUS(YUS)と半金属及び不純物とを結ぶもの)の役目を果たす珪酸の成分が溶け出し、半導体が生成される。先に加えられた褐藻成分の珪酸及び安定化プラスイオンの珪酸によりマイナスイオンを放出させ、焼成によって得られた遠赤外線の放射によってP型半導体の皮膜液が生成される。
【0026】
マイナスイオンにより金属のイオン化が促進される。このとき、安定していない原子も安定な状態になろうとするため、最外殻に不足している電子の引っ張り合いによって発熱が促進される。電子の数が増減したときには、負の電荷を持った原子や正の電子を持った原子が出現する。
【0027】
なお、安定化プラスイオンには腐植質フミン酸の成分が含まれており、加水分解によってアミノ酸が生成される。また、草木灰に含まれる燐酸化酵素によって蛋白質の機能調整が行われる。
【0028】
その結果、導電性を具備する半導体(液状の皮膜液(発熱素子))が形成される。なお、皮膜液を金属箔5に塗布する前、皮膜液は72時間程度、40度の温度で熟成させ、イオン化を促進させる。また、皮膜液には熟成を始める前及び熟成6時間後に銅の粉末を加えるのが好ましい。
【0029】
図1は発熱基板の製造に使用される製造装置を説明する概念図である。
【0030】
製造装置100は金属箔F(SUS箔(SUS205))を図1の右側から左側へ搬送して発熱基板1を作製する。製造装置100は、例えば幅30cmの金属箔Fのロ−ル10と、ロール10から引き出された金属箔Fの一方の面に図示しない水溶液を塗布するための皮膜液塗布部20と、皮膜液塗布部20で金属箔Fに塗布された皮膜液の厚さを一定にするためのスキージ部30と、金属箔Fに塗布された皮膜液をレーザビームで加熱するレーザ加熱部40とを備えている。なお、製造装置1は架台部50の底面四隅に製造装置1を移動させるためのキャスタ51と架台部50を水平にするためのアジャスタ52とを備えている。
【0031】
皮膜液塗布部20の一対のローラR21,22のうちの一方のローラR21は皮膜液の貯液槽(図示せず)に浸かっており、その回転により皮膜液を攪拌する。また、ローラR21はローラR22とともに金属箔Fを送り出しながら皮膜液を金属箔Fに連続的に塗布する。ローラR21はモータ(図示せず)によって駆動される。
【0032】
スキージ部30の一対のローラR31,32のうちの一方のローラR31には例えばメタルスキージが設けられている。ローラR31は金属箔送り用のモータ35によって駆動される。スキージ部30で水溶液の膜の厚さを一定にすることによって、皮膜液の厚さのばらつきに起因する発熱素子1の抵抗が下がり、発熱量が低下する事態を防止できる。
【0033】
レーザ加熱部40はレーザ加熱装置(図示せず)を備えている。レーザ加熱装置はレーザビームの照射位置、照射強度、照射時間等を調整することができる。レーザ加熱装置としては例えばYAGレーザ等を用いることができる。レーザ加熱部40で焼成された発熱基板1はローラ41で搬送され、ロール状に巻き取られる。
【0034】
次に、上記製造装置100を用いた発熱基板1の製造方法を説明する。
【0035】
まず、ロール10から引き出された金属箔Fの一方の面に皮膜液塗布部20で皮膜液を塗布する(塗布工程)。
【0036】
塗布工程の後、スキージ部30で金属箔Fに塗布された水溶液の膜の厚さを3〜7μmに均一化する。
【0037】
その後、レーザ加熱部40でレーザビームを均一に照射して塗布された水溶液を800〜1200度で5〜6秒程度加熱処理(焼成)し、再結晶化させる(加熱工程)。その結果、半導体の水溶液が固化して発熱素子5となる。このとき、皮膜液に含まれる半金属であるホウ素の酸化を防止するため、大気(酸化雰囲気)加熱でなく無酸化雰囲気加熱とするのが好ましい。
【0038】
その結果、金属箔Fに発熱素子5の層が一体に形成された発熱基板1が製造される。発熱基板1の断面形状を図2に示した。
【0039】
なお、発熱基板1は製造後にエッチングによって用途に応じた所定の形状の配線にパターニングされる。エッチング加工であるので、寸法精度の高い発熱基板1を製造することができる。また、発熱基板1には外部から発熱基板1に電力を供給するための電極(ステンレス製)が一体的に形成されている。
【0040】
上記焼成後の発熱基板1(表1の「SUS205焼成品」)に対して所定の電圧(20V)を印加したときの温度特性(所定温度に達するまでの時間)、消費電力を調べるテストを行った。なお、実験時の環境温度は22℃である。そのテスト結果の一例を表1に示した。30度に達するまで5.96秒、40℃に達するまで12.08秒、45℃に達するまで15.27秒であり、消費電力は1.62mm/A(0.0324W)であった。
【0041】
【表1】

焼成後の発熱基板1、未焼成の発熱基板(SUS205)及び公知の面状発熱体(カーボン粉末にバインダを混合したものをフィルムにシルク印刷したもの)にそれぞれ通電した。通電の条件は同じであり、その比較結果は以下の通りであった。
【0042】
未焼成の発熱基板(表1の「SUS205未焼成」)に通電したとき:
30度に達するまで7.43秒、40℃に達するまで22.00秒、45℃に達するまで35.44秒であり、消費電力は5.3mm/A(0.106W)であった。
【0043】
公知の面状発熱体(表1の「カーボン」)に通電したとき(印加電圧:100V):
30度に達するまで23.21秒、40℃に達するまで70.00秒、45℃に達するまで120.09秒であり、消費電力は26mm/A(2.6W)であった。
【0044】
以上のテスト結果から、発熱基板1の方が未焼成品や公知の面状発熱体に比べて少ない電力で迅速に温度が上がり(例えば未焼成のものより30〜40%迅速に温度が上がる)、しかも電気消費量が少ないことがわかる。
【0045】
この実施形態によれば、一定の形状を維持し得るとともに、大きな発熱量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は発熱基板の製造に使用される製造装置を説明する概念図である。
【図2】図2はこの発明の一実施形態に係る発熱基板の断面の写真である。
【符号の説明】
【0047】
1:発熱基板、5:発熱素子、F:金属箔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の不純物を含有する半導体からなる発熱素子が金属箔に一体に形成されていることを特徴とする発熱基板。
【請求項2】
所定の不純物を含有する半導体の水溶液を金属箔に所定の厚さに塗布する塗布工程と、
前記金属箔に塗布された前記半導体を所定の温度で所定時間加熱処理して固化させる加熱工程と
を含むことを特徴とする発熱基板の製造方法。
【請求項3】
前記水溶液にホウ酸が含まれ、前記不純物は亜鉛、錫であることを特徴とする請求項2記載の発熱基板の製造方法。
【請求項4】
前記水溶液の厚さは3〜7μmであり、前記加熱温度は800〜1200℃であることを特徴とする請求項2又は3記載の発熱基板の製造方法。
【請求項5】
前記加熱処理は前記半導体にレーザビームを照射することにより前記半導体を加熱して再結晶化させることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項記載の発熱基板の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理は、前記半導体を無酸化雰囲気中で加熱することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の発熱基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−97906(P2010−97906A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269893(P2008−269893)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(507083364)株式会社ES・エネルギー開発研究所 (7)
【Fターム(参考)】