説明

発熱線と端子棒との接続構造

【課題】 発熱線の抵抗値のバラツキを抑えることができ、発熱線の変形を少なく、製作が容易な端子棒と発熱線との接続構造を提供すること。
【解決手段】 発熱線13はコイル状部13aと、該コイル状部13aの間の螺旋状部13bとを有し、前記端子棒15は前記コイル状部13aに挿通して前記コイル状部13aを接続する接続部15aと、螺旋状部13bに間隔をもって挿通するよう前記接続部15aから先細り形状に延びている挿通部15bとを有し、前記接続部15aの外周面15cと前記挿通部15bの前記接続部15a側の外周面15eとが段差面15fを介して連接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置の加熱源としての電気ヒーターに用いる発熱線と端子棒との接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術1における電気ヒーターとしては、第1および第2のリードピン(端子棒)の間を延びるとともに外管内にて充填材(絶縁粉末)に囲まれた発熱線を有しているものがある。
【0003】
発熱線は、第1の端部から延びる第1のコイル状部分と、第2の端部から延びる第2のコイル状部分と、第1及び第2のコイル状部分の間を延びる螺旋状部分とを有する。
【0004】
発熱線および第1および第2のリードピンは、外管内に配置され、発熱線の螺旋状部分が所定長まで引き伸ばされている。外管には、振動充填機にて充填材が満たされ、外管が外側から加圧されて発熱線のまわりの充填材が緊密化される(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
先行技術2における電気ヒーターとしては、端子棒の先端部がコイル状の発熱線の内側に挿入されていると共に、発熱線と端子棒の先端部とが相互に固着してなるものがある。
【0006】
端子棒の先端部における発熱線の内側に位置する部分の先端は、先細り状でしかもその最大径がコイル状の発熱線の内径よりも大きく、また先端の外径がコイル状の発熱線の内径よりも小さい形状となっている。
【0007】
端子棒の先端は、コイル状の発熱線の内側に挿入し、発熱線の端部を端子棒の先端部の外周面に当接させた状態にて、両者を溶接している(例えば、特許文献2を参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平10−92558号公報
【特許文献2】特開昭54−57243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術1,2の電気ヒーターでは、充填材を緊密化するために外管を縮管する時に充填材によって発熱線が押されると、発熱線は端子棒の先端部の外周面と接触するようになり、接触点不安定となるため発熱線の抵抗値にバラツキが生じるという問題がある。
【0010】
また、端子棒に先細り部分が無い場合には、縮管時に充填材が大きく移動することにより発熱線に急激なストレスがかかり、発熱線に大きな変形が発生してしまうという問題がある。
【0011】
それ故に本発明の課題は、発熱線の抵抗値のバラツキを抑えることができ、発熱線の変形を少なくでき、製作が容易な発熱線と端子棒との接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電気ヒーターに用いる発熱線と端子棒との接続構造において、
前記発熱線は、前記発熱線の両端部分のコイル状部と、該コイル状部の間の螺旋状部とを有し、前記端子棒の端部は、前記発熱線の前記コイル状部を接続する接続部と、前記接続部から先細り形状に延びている挿通部とを有し、前記コイル状部は、前記端子棒の前記接続部の外周面に接続されており、前記挿通部が前記螺旋状部に挿通しており、前記接続部側の前記挿通部の外周面が前記接続部の前記外周面よりも小さく形成されており、前記接続部の前記外周面と前記接続部側の前記挿通部の前記外周面とが段差面を介して連接されていることを特徴とする発熱線と端子棒との接続構造であることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発熱線と端子棒との接続構造によれば、接続部側の挿通部の外周面が接続部の前記外周面よりも小さく形成されており、接続部の外周面と接続部側の挿通部の外周面とが段差面を介して連接されていることにより、発熱線の抵抗値が安定し、さらに外管を縮管する時に充填材の移動による発熱線の変形等の悪影響を緩和することができる。
【0014】
また、本発明の発熱線と端子棒との接続構造を備えた電気ヒーターでは、抵抗値のバラツキが押さえられ、製作も容易となり、発熱線の変形もかなり改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る電気ヒーターに用いる発熱線と端子棒との接続構造は、前記発熱線は、前記発熱線の両端部分のコイル状部と、該コイル状部の間の螺旋状部とを有し、前記端子棒の端部は、前記発熱線の前記コイル状部を接続する接続部と、前記接続部から先細り形状に延びている挿通部とを有し、前記コイル状部は、前記端子棒の前記接続部の外周面に接続されており、前記挿通部が前記螺旋状部に挿通しており、前記接続部側の前記挿通部の外周面が前記接続部の前記外周面よりも小さく形成されており、前記接続部の前記外周面と前記接続部側の前記挿通部の前記外周面とが段差面を介して連接されていることにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る電気ヒーターの実施例1を説明する。図1は、実施例1を示しており、発熱線と端子棒との接続構造を有する電気ヒーターを示している。なお、図1では、電気ヒーターの一方側の端子棒と発熱線との接続構造を示している。このような電気ヒーターは、一般にシーズヒーターとも呼ばれている。
【0017】
図1を参照して、電気ヒーターは、金属製の外管11と、外管11内に設けられている発熱線13と、円筒形状の外管11内で発熱線13の一方の端部に接続されている端子棒15とを備えている。
【0018】
なお、図1に示されていないが、電気ヒーターでは、外管11内で発熱線13のもう一方の端部にも接続されているもう一方の端子棒を備えている。以下、もう一方の端子棒と発熱線との接続構造は、図1に示した発熱線13と一方の端子棒15との接続構造と同じであるため説明を省略する。
【0019】
発熱線13及び端子棒15は、外管11内で絶縁性の充填材17を介して固着されている。絶縁性の充填材17としては、マグネシア(MgO)粉末もしくはアルミナ(Al)粉末などを採用する。
【0020】
丸棒形状の端子棒15の一端部は、外管11の長手方向における両端の開口部11aのそれぞれから外へ延びている。開口部11aの内側には、外管11の内面と端子棒15との間に絶縁性の封止部材19が設けられている。また、開口部11aの外側には、開口部11aから外へ延びている端子棒15の外周面上を覆うように絶縁性のチューブ21が設けられている。
【0021】
発熱線13は、両端部分のコイル状部13aと、コイル状部13aの間の螺旋状部13bとを有している。コイル状部13aは、発熱線13が互いに密に巻かれた形態となっている部分である。螺旋状部13bは、発熱線13が互いに粗に巻かれた形態となっている部分である。
【0022】
端子棒15の一端部は、図2及び図3にも示すように、発熱線13のコイル状部13aに挿通されており、端子棒15の一端部の外周面とコイル状部13aとを相互に接続する接続部15aと、発熱線13のコイル状部13aから延びている螺旋状部13bに間隔をもって挿通するように接続部15aから先細り形状に延びている挿通部15bとを有している。
【0023】
挿通部15bの外周面15dは、接続部15aの外周面15cよりも径寸法が小さく形成されている。即ち、挿通部15bの外周面15dは、接続部15側の外周面15eから先端へ先細り形状(テーパー形状)に延びている。接続部15aの外周面15cと挿通部15bの外周面15eとは、段差面15fを介して連接されている。
【0024】
先細り形状に延びている挿通部15bの傾斜角度Dは、端子棒15の中心軸線X方向に平行な線を基準線X1とすると、この基準線X1から7度の角度で傾斜している。また、実施例1においては、段差面15fが中心軸線Xを直交する径方向に沿って形成されている。段差面15fの径方向における寸法Tは、発熱線13の直径寸法と略同程度の寸法となるようにする。
【0025】
以下、電気ヒーターの製造方法を説明する。端子棒15の接続部15aは、発熱線13のコイル状部13aに挿通される。端子棒15の挿通部15bは、発熱線13の両端部のコイル状部13aから延びている螺旋状部13bに挿通される。この際、発熱線13の全体が密に巻かれているコイル状部分となっている。その後、端子棒15の接続部15aの外周面15cと発熱線13の両端部におけるコイル状部13aとは、溶接することによって接続される。
【0026】
一対の端子棒15を発熱線13の両端部におけるコイル状部13aのそれぞれに一対一に接続させた後、振動充填機(図示せず)に垂直にセットした外管11内へ発熱線13及び端子棒15を挿入し、一対の端子棒15を垂直方向の両方へ延ばすと、発熱線13の両端部におけるコイル状部13aを除くコイル状部分が延びて螺旋状部13bとなる。
【0027】
さらに、垂直方向における外管11の下側に位置している側の開口部11aは、仮封止材(図示せず)によって封止された後、外管11に振動を加えながら、粉末状の充填材17を外管11の上側の開口部11aから充填していく。
【0028】
外管11内に充填材17が満たされた後、外管11の上側の開口部11aを仮封止材によって封止し、その後、外管11を振動充填機から取り外す。そして、さらに充填材17の充填密度を高めるために、外管11の外側から縮管ロール機によって外管11を縮管することによって外管11内に発熱線13及び端子棒15が保持される。例えば、外管11は断面が略円形状になるように縮管ロール機によって外管11を縮管される。
【0029】
そして、外管11の開口部11aのそれぞれに取り付けられている仮封止材を取り外して、開口部11a内を封止部材19により封止し、さらに開口部11aの外側に位置している端子棒15に絶縁性のチューブ21を被せる。
【0030】
上述した製造方向においては、外管11の外側から縮管ロール機によって外管11を縮管する工程において、接続部15aの外周面15cと接続部15a側の挿通部15bの外周面15eとは、段差面15fを介して連接されていることが重要となる。
【0031】
即ち、図4に示すように、段差面15f及び挿通部15bの先細り面に対向する発熱線13との間に大きな空間があり、この空間に充填材17が充填されている。この状態において外管11の外側から縮管ロール機によって外管11を縮管するときには、縮管時に充填材17が矢印Pに示すように螺旋状部13bの発熱線13の間になだらかに移動する。
【0032】
したがって、螺旋状部13bと端子棒15とは、これらが互いに接触することがないので、発熱線13の抵抗値を設計時の抵抗値に保つことが可能となる。
【0033】
ちなみに、段差面15fがない場合には、螺旋状部13bにおいて縮管時に充填材17が中心軸線Xに向かって押されると、挿通部15bの外周面15dと接触するようになり、接触点が不安定になるため発熱線13の抵抗値にバラツキが生じる。
【0034】
さらに、挿通部15bが無い場合には、縮管時に充填材17が大きく移動するにより発熱線13に急激なストレスがかかり、大きな変形が発生する。
【0035】
なお、実施例1では、挿通部15の角度Dを7度としたが、挿通部15の傾斜角度Dは、3度〜30度の角度の範囲であればよく、実施例1に限定されるものではない。また、段差面15fは中心軸線Xを直交する径方向に沿って形成されているが、接続部15aの外周面15cの一端から挿通部15b側へ若干傾斜していてもよい。
【0036】
さらに、外管11を縮管する時には、発熱線13が挿通部15bの外周面15dに接触しないので、挿通部15bの外周面15dの粗度は接続部15aの外周面15cよりも粗く加工した状態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の発熱線と端子棒との接続構造は、一方端に外管の開口部をもち、発熱線をU字状にして端子棒を発熱線の両端に接続するカートリッジヒータのような用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る発熱線と端子棒との接続構造を備えている電気ヒーターの一方側を示す断面図である(実施例1)。
【図2】図1に示した端子棒を示す正面図である。
【図3】図2の端子棒の左側面図である。
【図4】図1に示した発熱線と端子棒との接続構造を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
【0039】
11 外管
11a 開口部
13 発熱線
13a コイル状部
13b 螺旋状部
15 端子棒
15a 接続部
15b 挿通部
15c、15d 外周面
15f 段差面
17 充填材
19 封止部材
21 絶縁性チューブ
X 中心軸線
X1 基準線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ヒーターに用いる発熱線と端子棒との接続構造において、
前記発熱線は、前記発熱線の両端部分のコイル状部と、該コイル状部の間の螺旋状部とを有し、
前記端子棒の端部は、前記発熱線の前記コイル状部を接続する接続部と、前記接続部から先細り形状に延びている挿通部とを有し、
前記コイル状部は、前記端子棒の前記接続部の外周面に接続されており、前記挿通部が前記螺旋状部に挿通しており、
前記接続部側の前記挿通部の外周面が前記接続部の前記外周面よりも小さく形成されており、前記接続部の前記外周面と前記接続部側の前記挿通部の前記外周面とが段差面を介して連接されていることを特徴とする発熱線と端子棒との接続構造。
【請求項2】
請求項1記載の発熱線と端子棒との接続構造において、前記発熱線が金属製の外管内に設けられており、前記端子棒が前記外管内で前記発熱線の両端部のそれぞれに一対一に接続しており、前記端子棒及び前記発熱線が前記外管内で絶縁性を有する充填材を介して固着されており、前記端子棒の一端部が前記外管の開口部から外へ延びていることを特徴とする発熱線と端子棒との接続構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発熱線と端子棒との接続構造において、前記挿通部の前記外周面の粗度が前記接続部の前記外周面よりも粗く加工されていることを特徴とする発熱線と端子棒との接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−344448(P2006−344448A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167920(P2005−167920)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(390008497)日本電熱株式会社 (32)
【Fターム(参考)】