説明

発熱電子デバイスの放熱構造

【課題】第一放熱部材と、第一放熱部材の搭載面に搭載される発熱電子デバイスと、前記搭載面及び前記発熱電子デバイスの上方に間隔をあけた位置に配される基板とを備える発熱電子デバイスの放熱構造において、基板に対向する発熱電子デバイスの上面側からの放熱を効率よく行えるようにする。
【解決手段】基板5に対向する発熱電子デバイス2の上面21aに第二放熱部材41を固定し、さらに、第二放熱部材41を基板5に対して機械的に接続した発熱電子デバイス2の放熱構造を提供する。また、第二放熱部材41を、発熱電子デバイス2の上面21aに面接触する本体部41と、当該本体部41から前記基板5に向けて突出する接続突起42とによって構成し、接続突起42を基板5の放熱用挿通孔53に挿通させた放熱構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱電子デバイスの放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタのように通電により発熱する発熱電子デバイスから熱を逃がす放熱構造としては、発熱電子デバイスをヒートシンク等の放熱部材(第一放熱部材)上に搭載した構造がある。この放熱構造では、発熱電子デバイスの熱を発熱電子デバイスの下面からこれに当接する放熱部材に逃がすことができる。
また、発熱電子デバイスから熱を逃がす放熱構造には、例えば特許文献1のように、回路基板上に搭載された発熱電子デバイスの上面に、ヒートシンク等の放熱部材(第二放熱部材)を設けた構造もある。この放熱構造では、放熱部材が発熱電子デバイスの上方に延びる多数の放熱ピンを備えており、熱を放熱ピンから空気中に逃がすことが可能である。特に、この放熱構造では、多数の放熱ピンに空気を吹き付けることで、熱を効率よく逃がすことができる。
したがって、これら二つの放熱構造を組み合わせれば、発熱電子デバイスの上面及び下面の両方から熱を発熱電子デバイスから逃がすことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−321468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の第一及び第二放熱部材を発熱電子デバイスに設けたとしても、密閉されたケース内に配置される等して、第二放熱部材の放熱ピンに空気を吹き付けることができないことがある。この場合、発熱電子デバイス上に配した第二放熱部材から空気中に熱が放散されたとしても、発熱電子デバイスの直上に熱がこもり易くなり、その結果として、発熱電子デバイスの上面側からの放熱が不十分となる虞がある。
そして、発熱電子デバイスを第一放熱部材上に搭載する構造では、発熱電子デバイスに電気接続するための回路基板が、発熱電子デバイスの上方を覆うように配されることが多い。この場合には、発熱電子デバイスと回路基板との間の隙間において、特に熱がこもり易くなるため、発熱電子デバイスの上面側からの放熱がさらに不十分となる虞がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、発熱電子デバイスの上面側からの放熱を効率よく行うことが可能な発熱電子デバイスの放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の発熱電子デバイスの放熱構造は、第一放熱部材と、当該第一放熱部材の搭載面に搭載される発熱電子デバイスと、前記搭載面及び前記発熱電子デバイスの上方に間隔をあけた位置に配される基板と、当該基板に対向する前記発熱電子デバイスの上面に固定される第二放熱部材と、を備え、当該第二放熱部材が、前記基板に機械的に接続されていることを特徴とする。
なお、基板の具体例としては、発熱電子デバイスに電気接続される回路基板や、筐体等の壁部等が挙げられる。また、上述した機械的な接続とは、第二放熱部材が基板に接触、当接あるいは固定されることを含んで意味している。
【0007】
上記放熱構造では、発熱電子デバイスにおいて生じた熱を、発熱電子デバイスの下面から第一放熱部材に逃がすことができると共に、発熱電子デバイスの上面から第二放熱部材に逃がすことができる。
さらに、第二放熱部材が基板に機械的に接続されていることで、発熱電子デバイスの熱を第二放熱部材から基板まで逃がすことができるため、例え発熱電子デバイスと基板との隙間に空気が流れなくても、発熱電子デバイスと基板との隙間に熱がこもってしまうことを防ぐことができる。言い換えれば、発熱電子デバイスの上面側からの放熱を効率よく行うことが可能となる。
【0008】
そして、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記第二放熱部材が、前記発熱電子デバイスの上面に面接触する本体部と、当該本体部から前記基板に向けて突出する接続突起とを備え、当該接続突起が、前記基板の厚さ方向に貫通して形成された放熱用挿通孔に挿通されているとよい。
【0009】
この構成では、第二放熱部材を基板に対して容易に機械的に接続することが可能となる。特に、基板が発熱電子デバイスに電気接続される回路基板であり、また、発熱電子デバイスの端子を基板に差し込んだ上で、はんだ付けによって端子と基板とを接合することにより、発熱電子デバイスと基板とが電気接続される場合には、発熱電子デバイスの端子をはんだ付けする工程において、接続突起もはんだ付けによって同時に基板に接続することができる。したがって、基板に対する第二放熱部材の機械的な接続を効率よく行うことができる。
【0010】
また、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記接続突起が、針状に形成されると共に互いに間隔をあけて複数配列されていると、さらによい。
【0011】
この構成では、接続突起が針状に形成されていることで、個々の接続突起の熱容量を小さく抑えることができるため、各接続突起を基板にはんだ付けで接合する際に、はんだの溶融に要する熱を小さくできる。したがって、複数の接続突起を基板に対して短時間で確実にはんだ付けすることが可能となる。
一方、接続突起が複数形成されていることで、複数の接続突起の合計の熱容量を大きく設定することができるため、発熱電子デバイスの熱を第二放熱部材から基板まで効率よく逃がすことができる。
【0012】
さらに、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記本体部が、前記第二放熱部材に対向する前記基板の下面に面接触していることが好ましい。
また、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、記本体部と、前記第二放熱部材に対向する前記基板の下面との隙間が、ゲル状部材によって埋められているとよい。
【0013】
これらの構成によれば、第二放熱部材の熱を基板に効率よく逃がすことが可能となる。
特に、ゲル状部材は第二放熱部材と比較して柔らかく変形可能であることから、本体部と回路基板との隙間の寸法公差が大きく設定されても、本体部と回路基板との隙間を確実に埋めることができる。したがって、汎用性の高い放熱構造を提供することができる。
【0014】
さらに、前記発熱電子デバイスの放熱構造において、前記基板が、前記発熱電子デバイスに電気接続される回路基板である場合、当該回路基板には、前記第二放熱部材に接続される放熱用配線パターンが形成されていてもよい。
【0015】
この構成では、第二放熱部材から回路基板に伝わる熱が、放熱用配線パターンに伝わり易くなるため、回路基板のうち放熱用配線パターンの形成領域を除く他の領域には伝わり難くなる。言い換えれば、回路基板において熱が伝わる領域を制限することが可能となる。したがって、例えば熱に弱い回路(熱に弱い電子部品を含むもの)が回路基板に設けられていても、このような回路が熱の影響を受けることを抑制することができる。
【0016】
また、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記第一放熱部材に、その搭載面から突出する伝熱用突起部が設けられ、当該伝熱用突起部の先端部が前記基板に機械的に接続されていると好ましい。
【0017】
この構成では、第二放熱部材から基板に伝えられた熱を、第一放熱部材に逃がすことが可能となる。なお、第一放熱部材の熱容量は、第二放熱部材や基板の熱容量よりも容易に大きく設定することができるため、基板の熱を第一放熱部材に逃がすことは非常に有効である。
【0018】
さらに、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記第一放熱部材及び前記第二放熱部材が、前記基板及び前記伝熱用突起部を介して互いに電気接続されていてもよい。
この構成では、第一放熱部材及び第二放熱部材を同電位に設定することができる。したがって、例えば第一放熱部材を接地させるだけで、第二放熱部材も接地させることができき、発熱電子デバイスを含む回路の動作安定化を図ることができる。
【0019】
また、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記発熱電子デバイスが、固定手段によって前記第一放熱部材の搭載面に固定されると共に、前記第二放熱部材が、前記固定手段によって前記発熱電子デバイスの上面に固定されるとよい。
【0020】
この構成では、同一の固定手段によって、発熱電子デバイスを第一放熱部材に固定すると同時に、第二放熱部材を発熱電子デバイスの上面に固定することができるため、放熱構造の組み立てを効率よく行うことができる。
また、発熱電子デバイスの上面から第二放熱部材に伝えられた熱を、基板だけではなく、固定手段から第一放熱部材に逃がすことも可能となる。言い換えれば、熱を第二放熱部材から基板に逃がす第一放熱ルートと、第二放熱部材から固定手段を介して第一放熱部材に逃がす第二放熱ルートの二つを確保できるため、発熱電子デバイスの上面側からの放熱をさらに効率よく行うことが可能となる。
【0021】
さらに、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記第一放熱部材及び前記第二放熱部材が、前記固定手段を介して互いに電気接続されていてもよい。
【0022】
この構成では、第一放熱部材及び第二放熱部材を同電位に設定することができる。したがって、例えば第一放熱部材を接地させるだけで、第二放熱部材も接地させることができ、発熱電子デバイスを含む回路の動作安定化を図ることができる。
そして、第一放熱部材及び第二放熱部材が固定手段を介して互いに電気接続されることに加え、前述したように、第一放熱部材及び第二放熱部材が回路基板及び伝熱用突起部を介して互いに電気接続される場合には、第一放熱部材、第二放熱部材及び基板が、第一放熱部材から第二放熱部材、基板を順番に経て再び第一放熱部材に戻るループ状の電気経路を画成することができる。
【0023】
また、前記発熱電子デバイスの放熱構造においては、前記基板の上面に、第三放熱部材が配されていてもよい。
この構成では、発熱電子デバイスの上面から第二放熱部材を介して基板に伝えられた熱を、さらに、第三放熱部材に逃がすことが可能となる。したがって、発熱電子デバイスの上面側からの放熱をさらに効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発熱電子デバイスと基板との隙間に熱がこもることを防いで、発熱電子デバイスの上面側からの放熱を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造を示す側断面図である。
【図2】図1に示す発熱電子デバイス及び第二放熱部材をデバイス本体の上面側から見た状態を示す上面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造を示す側断面図である。
【図4】図3に示す発熱電子デバイスの放熱構造の変形例を示す側断面図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造を示す側断面図である。
【図6】本発明の第四実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造を示す側断面図である。
【図7】本発明の第五実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第一実施形態〕
以下、図1,2を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1,2に示すように、この実施形態に係る発熱電子デバイスの放熱構造は、発熱電子デバイス2と、第一放熱部材3と、第二放熱部材4と、回路基板5とを備えて大略構成されている。
発熱電子デバイス2は、パワートランジスタをはじめとする半導体パッケージ等のように通電により発熱するものであり、デバイス本体21、及び、デバイス本体21から突出する電気接続用の複数(図示例では三つ)の外部端子22を有して構成されている。
【0027】
本実施形態におけるデバイス本体21は、平面視矩形の板状に形成されており、例えば通電により発熱する半導体素子(不図示)を樹脂内に埋設して構成されている。一方、複数の外部端子22は、それぞれ銅材等の導電性材料を針状に形成してなり、それぞれデバイス本体21の同一の側面21cからデバイス本体21の主面(上面21aあるいは下面21b)に沿う方向に突出して形成されている。また、各外部端子22は、その突出方向の先端部24が基端部23に対して折り曲げられることで、略L字状に形成されている。これにより、各外部端子22の先端部24は、デバイス本体21の上面21aよりも上方に突出するように、デバイス本体21の板厚方向に延びている。
【0028】
第一放熱部材3は、アルミニウム等のように熱伝導性に優れた導電性材料を、例えば板状に形成して構成されている。前述した発熱電子デバイス2は、デバイス本体21の下面21bが第一放熱部材3の上面(搭載面)3aに対向するように、第一放熱部材3の上面3aに搭載されている。なお、図示はしていないが、発熱電子デバイス2(特に外部端子22)と第一放熱部材3との電気的な絶縁を確実に図れるように、第一放熱部材3の上面3aと発熱電子デバイス2との間には、例えば電気的な絶縁性を有する絶縁シートが配されていてもよい。
【0029】
そして、発熱電子デバイス2は、搭載用ネジ(固定手段)6によって第一放熱部材3の上面3aに固定されている。具体的に説明すれば、発熱電子デバイス2は、デバイス本体21の板厚方向に貫通して形成された貫通孔(不図示)に搭載用ネジ6の軸部62を挿通させた上で、第一放熱部材3の上面3aに形成された雌ネジ孔31に螺着させることで、第一放熱部材3の上面3aに固定されている。
【0030】
また、第一放熱部材3には、その上面3aから突出する筒状突起部(伝熱用突起部)32(図示例では円筒状)が形成されている。そして、筒状突起部32の先端面32aに、後述する回路基板5が載置されるようになっている。したがって、第一放熱部材3の上面3aに対する回路基板5の高さ位置は、筒状突起部32の突出高さによって設定されている。
本実施形態では、筒状突起部32の先端面32aに載置された回路基板5が第一放熱部材3の上面3a及びデバイス本体21の上方に間隔をあけて位置するように、筒状突起部32の突出高さが設定されている。また、本実施形態では、筒状突起部32の先端面32aが第一放熱部材3の上面3aに平行しており、これによって、回路基板5の主面(上面5aや下面5b)が第一放熱部材3の上面3aに対して平行している。
【0031】
そして、筒状突起部32には、その先端面32aから窪むように形成され、回路基板5を第一放熱部材3に固定するためのねじ(固定用ネジ7)を螺着させる雌ネジ孔33が形成されている。
上述した筒状突起部32は、図示例のように一つだけ形成されるのではなく、回路基板5を安定して支持できるように、互いに間隔をあけて複数形成されているとよい。
【0032】
第二放熱部材4は、第一放熱部材3と同様に、銅、アルミニウム等のように熱伝導性に優れた導電性材料からなり、デバイス本体21の上面21aに固定されている。第二放熱部材4は、板状に形成されてデバイス本体21の上面21aに面接触するように重ねて配される本体部41と、本体部41から回路基板5に向けて突出する複数の接続突起42とを一体に形成して構成されている。
【0033】
本体部41の板厚は、デバイス本体21の上面21aと回路基板5の下面5bとの隙間寸法よりも小さくなるように設定されている。この本体部41には、その板厚方向に貫通して、発熱電子デバイス2を第一放熱部材3に固定するための搭載用ネジ6の軸部62を挿通させるネジ挿通孔(不図示)が形成されている。このネジ挿通孔の孔径は、搭載用ネジ6の軸部62の外径よりも大きく、かつ、搭載用ネジ6の頭部61の外径よりも小さい。これにより、本実施形態の第二放熱部材4は、搭載用ネジ6によってデバイス本体21の上面21aに固定されている。言い換えれば、本実施形態では、同一の搭載用ネジ6によって、発熱電子デバイス2が第一放熱部材3の上面3aに固定されると同時に、第二放熱部材4がデバイス本体21の上面21aに固定されている。
また、本実施形態では、搭載用ネジ6が導電性を有している。このため、搭載用ネジ6によって発熱電子デバイス2及び第二放熱部材4が第一放熱部材3上に固定された状態では、第一放熱部材3と第二放熱部材4とが搭載用ネジ6を介して機械的に接続されると共に電気的にも接続されている。
【0034】
各接続突起42は、例えば発熱電子デバイス2の外部端子22と同様の針状に形成されている。そして、複数の接続突起42は、本体部41の上面41aにおいて、互いに間隔をあけて配列されている。ただし、接続突起42は、本体部41の上面41aのうち搭載用ネジ6の頭部61が当接する領域には形成されていない。
【0035】
回路基板5は、その上面5aや下面5bに、発熱電子デバイス2などと共に電気回路を構成するための電気配線パターン(不図示)を形成して大略構成されている。この電気配線パターンは例えば銅箔などからなる。また、回路基板5の上面5aには、第二放熱部材4の接続突起42に電気接続される放熱用配線パターン51も形成されている。この放熱用配線パターン51は、前述の電気配線パターンと同様に銅箔等によって形成されている。
【0036】
また、回路基板5には、その厚さ方向に貫通するネジ挿通孔(不図示)が形成されている。このネジ挿通孔は、第一放熱部材3の筒状突起部32に螺着させる固定用ネジ7の軸部72を挿通させるものであり、その孔径は、固定用ネジ7の軸部72の外径よりも大きく、かつ、固定用ネジ7の頭部71の外径や筒状突起部32の外径よりも小さくなるように設定されている。
したがって、このネジ挿通孔に固定用ネジ7の軸部72を挿通させた上で、筒状突起部32の雌ネジ孔33に螺着させることにより、回路基板5が、筒状突起部32と固定用ネジ7の頭部71との間に挟みこまれて、第一放熱部材3に固定されることになる。
【0037】
ここで、回路基板5の上面5aのうち固定用ネジ7の頭部71が押し付けられる領域には、放熱用配線パターン51が形成されている。このため、回路基板5を固定用ネジ7でネジ止めした状態では、固定用ネジ7と放熱用配線パターン51とが機械的に接続されることになる。また、本実施形態では、固定用ネジ7が導電性材料によって形成されており、これによって、第一放熱部材3が筒状突起部32及び固定用ネジ7を介して回路基板5の放熱用配線パターン51に電気的に接続されている。
【0038】
さらに、回路基板5には、その厚さ方向に貫通する接続用孔52及び放熱用挿通孔53が形成されている。
接続用孔52は、前述したように回路基板5を第一放熱部材3に固定する際に、第一放熱部材3に固定された発熱電子デバイス2の外部端子22の先端部24を回路基板5の下面5b側から上面5a側に挿通させるものである。そして、外部端子22の先端部24のうち回路基板5の上面5aから突出した部分が、はんだ等の導電性接合剤によって回路基板5の上面5aの電気配線パターン(不図示)に接合されている。これによって、発熱電子デバイス2が回路基板5に電気接続されている。
【0039】
放熱用挿通孔53は、接続用孔52の場合と同様に、回路基板5を第一放熱部材3に固定する際に、第二放熱部材4の接続突起42を挿通させるものである。放熱用挿通孔53は、複数の接続突起42を個別に挿通させるように複数形成されている。そして、回路基板5の上面5aから突出した接続突起42は、はんだ等の導電性接合剤によって回路基板5の上面5aに形成された放熱用配線パターン51に接合されている。これにより、第二放熱部材4が放熱用配線パターン51に対して機械的に接続されると共に電気的にも接続されている。
以上のことから、第一放熱部材3及び第二放熱部材4は、筒状突起部32、固定用ネジ7及び回路基板5の放熱用配線パターン51を介して、互いに機械的に接続されると共に電気的にも接続されている。
【0040】
次に、上述したように構成される放熱構造を組み立てる組立方法の一例について説明する。
本実施形態の放熱構造を組み立てる場合には、はじめに、発熱電子デバイス2を第一放熱部材3の上面3aに載置し、デバイス本体21の上面21aに第二放熱部材4を重ねて載置する。次いで、同一の搭載用ネジ6によって発熱電子デバイス2及び第二放熱部材4を第一放熱部材3にネジ止めする。これにより、発熱電子デバイス2及び第二放熱部材4が同時に第一放熱部材3の上面3aに重ねて固定される。
【0041】
そして、発熱電子デバイス2の外部端子22及び第二放熱部材4の接続突起42を回路基板5に差し込んだ上で(回路基板5の接続用孔52及び放熱用挿通孔53にそれぞれ挿通させた上で)、回路基板5のネジ挿通孔(不図示)が筒状突起部32の雌ネジ孔33に重なるように回路基板5を筒状突起部32の先端面32aに載置する。この状態においては、発熱電子デバイス2の外部端子22及び第二放熱部材4の接続突起42の先端が回路基板5の上面5aから突出している。
【0042】
その後、例えば回路基板5の上面5a側においてはんだ付けを実施して、外部端子22及び接続突起42をそれぞれ回路基板5に接合する。これによって、外部端子22が回路基板5の電気配線パターン(不図示)に電気接続されることになる。また、第二放熱部材4が、回路基板5に固定されると共に、回路基板5の放熱用配線パターン51に電気接続されることになる。
最後に、固定用ネジ7により回路基板5を筒状突起部32の先端面32aに固定することで、本実施形態の放熱構造の組み立てが完了する。なお、固定用ネジ7で回路基板5を固定することで、第二放熱部材4が、回路基板5の放熱用配線パターン51、固定用ネジ7及び筒状突起部32を介して第一放熱部材3に電気的に接続されることになる。
【0043】
そして、本実施形態の放熱構造において、発熱電子デバイス2が通電により発熱した場合には、発熱電子デバイス2の熱を発熱電子デバイス2の下面21bから第一放熱部材3に逃がすことができると共に、発熱電子デバイス2の上面21aから第二放熱部材4にも逃がすことができる。なお、図1に示す第二放熱部材4では、本体部41の板厚が、発熱電子デバイス2と回路基板5との隙間に位置する接続突起42の長さ寸法よりも小さく設定されているが、例えば接続突起42の長さ寸法よりも大きく設定すれば、第二放熱部材4の熱容量拡大を図って、発熱電子デバイス2の熱をより効率よく第二放熱部材4に逃がすことができる。
【0044】
さらに、第二放熱部材4が回路基板5に固定されていることで、発熱電子デバイス2の熱を第二放熱部材4から回路基板5まで逃がすことができる。したがって、例え発熱電子デバイス2と回路基板5との隙間に空気が流れなくても、発熱電子デバイス2と回路基板5との隙間に熱がこもってしまうことを防ぐことができる。言い換えれば、発熱電子デバイス2の上面21a側からの放熱を効率よく行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の放熱構造では、第二放熱部材4が回路基板5の放熱用配線パターン51に接続されているため、第二放熱部材4から回路基板5に伝わる熱が、放熱用配線パターン51に伝わり易くなるため、回路基板5のうち放熱用配線パターン51の形成領域を除く他の領域には伝わり難くなる。言い換えれば、回路基板5において熱が伝わる領域を制限することが可能となる。したがって、例えば熱に弱い回路(熱に弱い電子部品などを含むもの)が回路基板5に設けられていても、このような回路が熱の影響を受けることを抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の放熱構造では、第一放熱部材3が筒状突起部32及び固定用ネジ7を介して回路基板5の放熱用配線パターン51に機械的に接続されているため、第二放熱部材4から放熱用配線パターン51に伝えられた熱を、第一放熱部材3に逃がすことが可能となる。なお、第一放熱部材3の熱容量は、第二放熱部材4や放熱用配線パターン51の熱容量よりも容易に大きく設定することができるため、放熱用配線パターン51の熱を第一放熱部材3に逃がすことは非常に有効である。
【0047】
また、本実施形態の放熱構造では、第二放熱部材4が搭載用ネジ6を介して第一放熱部材3に機械的に接続されているため、発熱電子デバイス2の上面21aから第二放熱部材4に伝えられた熱を、回路基板5だけではなく、搭載用ネジ6から第一放熱部材3に逃がすことも可能となる。言い換えれば、熱を第二放熱部材4から回路基板5に逃がす第一放熱ルートと、第二放熱部材4から搭載用ネジ6を介して第一放熱部材3に逃がす第二放熱ルートの二つを確保できるため、発熱電子デバイス2の上面21a側からの放熱をさらに効率よく行うことが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態の放熱構造では、第一放熱部材3及び第二放熱部材4が、回路基板5、固定用ネジ7及び筒状突起部32を介して互いに電気接続され、また、搭載用ネジ6を介して互いに電気接続されているため、第一放熱部材3及び第二放熱部材4を同電位に設定することができる。したがって、例えば第一放熱部材3を接地させるだけで、第二放熱部材4も接地させることができ、発熱電子デバイス2及び回路基板5を含む回路の動作安定化を図ることができる。
また、本実施形態の放熱構造では、第一放熱部材3及び第二放熱部材4が上述のように電気接続されることで、第一放熱部材3から第二放熱部材4、回路基板5を順番に経て再び第一放熱部材3に戻るループ状の電気経路を画成することもできる。
【0049】
さらに、本実施形態の放熱構造では、同一の搭載用ネジ6によって、発熱電子デバイス2を第一放熱部材3に固定すると同時に、第二放熱部材4が発熱電子デバイス2の上面21aに固定されるため、放熱構造の組み立てを効率よく行うことができる。
また、本実施形態の放熱構造では、第二放熱部材4の接続突起42が回路基板5の放熱用挿通孔53に挿通されるため、第二放熱部材4をはんだ付け等によって容易に回路基板5に対して機械的に接続することができる。特に、本実施形態では、発熱電子デバイス2の外部端子22も接続突起42と同様に回路基板5の接続用孔52に挿通されるため、発熱電子デバイス2の外部端子22をはんだ付けする工程において、接続突起42もはんだ付けによって同時に回路基板5に接続することができる。したがって、回路基板5に対する第二放熱部材4の機械的な接続を効率よく行うことができる。
【0050】
さらに、本実施形態の放熱構造では、複数の接続突起42がそれぞれ針状に形成されていることで、個々の接続突起42の熱容量を小さく抑えることができるため、各接続突起42をはんだ付けによって回路基板5に接合する際には、はんだの溶融に要する熱を小さくできる。したがって、複数の接続突起42を回路基板5に対して短時間で確実にはんだ付けすることが可能となる。
一方、針状の接続突起42が複数形成されていることで、複数の接続突起42の合計の熱容量を大きく設定することができるため、発熱電子デバイス2の熱を第二放熱部材4から回路基板5まで効率よく逃がすことができる。
【0051】
〔第二実施形態〕
次に、図3を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態の放熱構造と比較して、第二放熱部材の構成のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0052】
本実施形態の第二放熱部材8は、第一実施形態のものと同様に、板状に形成されてデバイス本体21の上面21aに面接触するように重ねて配される本体部81と、本体部81から回路基板5に向けて突出する複数の接続突起82とを一体に形成して構成されている。また、本体部81には、第一実施形態と同様に、搭載用ネジ6の軸部62を挿通させるネジ挿通孔(不図示)が形成されている。すなわち、本実施形態においても、同一の搭載用ネジ6によって、発熱電子デバイス2が第一放熱部材3の上面3aに固定されると同時に、第二放熱部材8がデバイス本体21の上面21aに固定されている。
【0053】
ただし、本実施形態の本体部81の板厚は、第一実施形態のものよりも厚く設定され、本体部81の上面81aが回路基板5の下面5bに面接触している。
また、本体部81には、その上面81aから窪む収納凹部83が形成され、前述したネジ挿通孔はこの収納凹部83の底面に開口している。したがって、本実施形態の放熱構造では、搭載用ネジ6を第二放熱部材8のネジ挿通孔及びデバイス本体21の貫通孔(不図示)に挿通させた上で第一放熱部材3の雌ネジ孔31に螺着させることで、搭載用ネジ6の頭部61が収納凹部83に収容され、収納凹部83の底面に当接する。この状態において、搭載用ネジ6の頭部61は本体部81の上面81aから突出していない。すなわち、本体部81の収納凹部83は、搭載用ネジ6の頭部61が回路基板5に干渉(当接)することを防いでいる。
【0054】
本実施形態の放熱構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二放熱部材8の本体部81が回路基板5の下面5bに面接触していることから、第一実施形態の構成と比較して、第二放熱部材8の熱を回路基板5にさらに効率よく逃がすことが可能となる。
さらに、第一実施形態のものと比較して、本体部81の体積が大きくなるため、第二放熱部材8の熱容量拡大を図り、発熱電子デバイス2の熱を効率よく第二放熱部材8に逃がすことも可能となる。
【0055】
なお、上記第二実施形態では、第二放熱部材8の本体部81に収納凹部83が形成されるとしたが、特に形成されていなくてもよい。
この場合には、例えば図4に示すように、回路基板5にも搭載用ネジ6の軸部62を挿通させる孔を形成しておき、同一の搭載用ネジ6を、これら回路基板5の孔、第二放熱部材8のネジ挿通孔及びデバイス本体21の貫通孔に挿通させてもよい。すなわち、同一の搭載用ネジ6によって、発熱電子デバイス2、第二放熱部材8及び回路基板5をまとめて第一放熱部材3上に重ねて固定してもよい。このように搭載用ネジ6を用いて回路基板5を第一放熱部材3に固定する場合、第一実施形態に記載の固定用ネジ7(図1参照)は無くても構わない。
【0056】
〔第三実施形態〕
次に、図5を参照して本発明の第三実施形態について説明する。
この実施形態では、第一、第二実施形態の放熱構造と比較して、第二放熱部材と回路基板との接続構造のみが異なっており、その他の構成については第一、第二実施形態と同様である。本実施形態では、第一、第二実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態の第二放熱部材9は、第一,第二実施形態と同様の本体部91及び複数の接続突起92を備えて構成されている。本実施形態の本体部91の板厚は、第一実施形態のものと同様に、デバイス本体21の上面21aと回路基板5の下面5bとの隙間寸法よりも小さくなるように設定されている。また、本体部91の上面91aと回路基板5の下面5bとの隙間は、本体部91の板厚以下となるように設定されている。さらに、本体部91の上面91aと回路基板5の下面5bとの隙間は、本体部91の上面91aに当接する搭載用ネジ6の頭部61の高さ寸法以上となるように設定されており、搭載用ネジ6の頭部61が回路基板5に干渉(当接)することを防いでいる。
そして、本実施形態の放熱構造では、本体部91の上面91aと回路基板5の下面5bとの隙間が、例えばシリコーンゲル等の材料からなるゲル状シート(ゲル状部材)10によって埋められている。このゲル状シート10は、熱伝導率の高い材料からなることが好ましい。
【0058】
本実施形態の放熱構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本体部91と回路基板5との隙間がゲル状シート10で埋められていることで、ゲル状シート10が本体部91の上面91a及び回路基板5の下面5bの両方に面接触するため、本体部91と回路基板5との間に隙間がある場合と比較して、第二放熱部材9の熱を回路基板5に効率よく逃がすことが可能となる。
さらに、ゲル状シート10は、第二放熱部材9と比較して柔らかく変形可能であることから、本体部91と回路基板5との隙間の寸法公差が大きく設定されても、本体部91と回路基板5との隙間を確実に埋めることができる。したがって、汎用性の高い放熱構造を提供することが可能となる。
【0059】
なお、上記第三実施形態の構成は、前述した第二実施形態にも適用することも可能である。例えば、図3に示す第二実施形態の構成では、搭載用ネジ6の頭部61を収容する収納凹部83が形成され、これによって本体部41の上面41aに凹凸が存在している。すなわち、収納凹部83によって本体部41の一部と回路基板5との間に隙間が生じている。そこで、例えば上記第三実施形態のゲル状シート10を収納凹部83に入れることで、本体部の上面41aの凹凸による上記隙間を埋めてもよい。
また、上記第三実施形態では、ゲル状シート10としているが、少なくとも本体部91と回路基板5との隙間を埋めるように、この隙間の形状や大きさ等に合わせて柔軟に変形可能なゲル状部材であればよい。すなわち、上記隙間を埋めるゲル状部材は、上記実施形態のようなシート状のもののほか、例えば、板状、ブロック状等の任意の形状に形成されてもよいし、ペースト状のものであってもよい。
【0060】
〔第四実施形態〕
次に、図6を参照して本発明の第四実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態の放熱構造と比較して、第三放熱部材を新たに追加した点のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0061】
本実施形態の放熱構造は、第一実施形態と同様の発熱電子デバイス2、第一放熱部材3、第二放熱部材4及び回路基板5に加えて、第三放熱部材11も備えて大略構成されている。
第三放熱部材11は、第一放熱部材3と同様、アルミニウム等のように熱伝導性に優れた導電性材料からなり、例えばブロック状に形成されている。第三放熱部材11は、回路基板5の上面5aに面接触するように配されている。そして、第三放熱部材11には、回路基板5の上面5aに接触する第三放熱部材11の接触面11bから窪む窪み部111が形成されている。
【0062】
この第三放熱部材11を回路基板5の上面5aに配した状態では、第三放熱部材11が放熱用配線パターン51に機械的及び電気的に接続されている。一方、回路基板5の上面5aに形成された電気配線パターン、並びに、回路基板5の上面5a上に位置する発熱電子デバイス2の外部端子22、第二放熱部材4の接続突起42及び固定用ネジ7の頭部71は、第三放熱部材11の窪み部111の開口部分あるいは窪み部111内に位置して、第三放熱部材11には接触せず、また、電気的に絶縁されている。
なお、図示例では、窪み部111が一つだけ形成されているが、例えば複数形成されてもよい。
【0063】
本実施形態の放熱構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二放熱部材4から回路基板5に伝えられた熱を、さらに、第三放熱部材11にも逃がすことが可能となる。特に、本実施形態では、第三放熱部材11が熱伝導率の高い放熱用配線パターン51に接続されているため、回路基板5の熱を第三放熱部材11に効率よく伝えることができ、発熱電子デバイス2の上面21a側からの放熱をさらに効率よく行うことができる。
上述した第四実施形態の構成は、前述した第二、第三実施形態にも適用することが可能である。
【0064】
〔第五実施形態〕
次に、図7を参照して本発明の第五実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態の放熱構造と比較して、第一放熱部材に対する発熱電子デバイス及び第二放熱部材の固定手法のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態の放熱構造では、図7に示すように、同一の付勢部材(固定手段)13によって、発熱電子デバイス2が第一放熱部材3の上面3aに固定されると同時に、第二放熱部材4が発熱電子デバイス2(デバイス本体21)の上面21aに固定されている。
付勢部材13は、ステンレス、銅材等のように導電性を有すると共に弾性変形可能な板材に、打ち抜き加工や屈曲加工を施す等して形成されるものである。この付勢部材13は、第一放熱部材3の上面3aに固定される平板状の一端部131と、第二放熱部材4の本体部41の上面41aに配される平板状の他端部132と、一端部131と他端部132との間に形成される弾性変形部133とを備えている。
【0066】
一端部131は、取付用ネジ14を一端部131の厚さ方向に貫通する挿通孔(不図示)に挿通させた上で、第一放熱部材3の上面3aに形成された雌ネジ孔35に螺着させることで第一放熱部材3の上面3aに固定されている。弾性変形部133は、一端部131及び他端部132に対して第一放熱部材3の上面3a及び第二放熱部材4の本体部41の上面41aよりも上方に膨らむように断面略U字状に形成されている。
このように構成される付勢部材13の一端部131を第一放熱部材3に固定すると共に、他端部132を本体部41の上面41aに配した状態では、弾性変形部133に弾性変形が生じ、これに伴う弾性力によって他端部132が本体部41の上面41aに押し付けられている。すなわち、第一放熱部材3上に重ねて配された発熱電子デバイス2及び第二放熱部材4は、この付勢部材13の弾性力によって第一放熱部材3に固定されている。
【0067】
本実施形態の放熱構造によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
特に、同一の付勢部材13によって、発熱電子デバイス2が第一放熱部材3の上面3aに固定されると同時に、第二放熱部材4が発熱電子デバイス2の上面21aに固定されるため、放熱構造の組み立てを効率よく行うことができる。
また、第二放熱部材4が付勢部材13を介して第一放熱部材3に機械的に接続されているため、発熱電子デバイス2の上面21aから第二放熱部材4に伝えられた熱を、付勢部材13から第一放熱部材3に逃がすことができる。
【0068】
さらに、本実施形態の放熱構造では、付勢部材13が導電性を有していることで、第一放熱部材3及び第二放熱部材4が付勢部材13を介して互いに電気接続されるため、例えば第一放熱部材3を接地させるだけで、第二放熱部材4も接地させることができ、発熱電子デバイス2及び回路基板5を含む回路の動作安定化を図ることができる。
また、付勢部材13は、第一実施形態の搭載用ネジ6のようにデバイス本体21内部に挿通されないため、デバイス本体21内にある発熱電子デバイス2の回路が第一放熱部材3や第二放熱部材4に短絡することを容易に防止できる。
【0069】
なお、付勢部材13の弾性変形部133は、上記第五実施形態のような断面略U字状に形成されることに限らず、少なくとも一端部131が第一放熱部材3に固定され、他端部132が本体部41の上面41aに配された状態で、第二放熱部材4を発熱電子デバイス2の上面21aに押し付ける付勢力が生じるように形成されていれば、任意の形状に形成されていてよい。
また、付勢部材13は、上記第五実施形態のように第一放熱部材3と第二放熱部材4との間に介在するように配されることに限らず、少なくとも第二放熱部材4を発熱電子デバイス2の上面21aに押し付ける付勢力が生じるように配されていればよい。したがって、付勢部材13は、例えば第二放熱部材4の本体部41の上面41aと回路基板5の下面5bとの間に配されてもよい。このように配される付勢部材13の形状は、コイルばねや板ばね等、任意の形状を呈していてよい。
上述した第五実施形態の構成は、前述した第二〜四実施形態にも適用することが可能である。
【0070】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上述した全ての実施形態では、第二放熱部材4,8,9の複数の接続突起42が、回路基板5の複数の放熱用挿通孔53に個別に挿通されるとしたが、例えば複数の接続突起42,82,92を同一の放熱用挿通孔53に挿通させてもよい。また、接続突起42,82,92は、複数形成されることに限らず、例えば一つだけ形成されてもよい。
【0071】
また、回路基板5に形成される放熱用配線パターン51の厚みは、電気配線パターンと同様の厚みに設定されることに限らず、例えば電気配線パターンよりも厚く設定されてもよい。このように放熱配線パターン51の厚みを増やせば、放熱用配線パターン51の熱容量を高めて、第二放熱部材4,8,9の熱を回路基板5側に逃がしやすくなる。
【0072】
さらに、放熱用配線パターン51は、回路基板5の上面5aに形成されるとしたが、例えば回路基板5の下面5bに形成されていてもよい。この場合、放熱用配線パターン51を筒状突起部32の先端面32aに直接接触させることができる。したがって、固定用ネジ7は特に導電性を有していなくてもよい。また、第二、第三実施形態の構成(図3〜5参照)では、放熱用配線パターン51を第二放熱部材8の本体部81やゲル状シート10に直接接触させることができる。したがって、第二、第三実施形態の第二放熱部材8,9は接続突起82,92を有して構成されることに限らず、例えば本体部81,91のみによって構成されてもよい。
【0073】
また、回路基板5は、その上面5aや下面5bに電気配線パターンを形成したものに限らず、例えば内部に電気配線パターンを形成した多層配線基板であってもよい。この場合には、放熱用配線パターン51も、電気配線パターンと同様に回路基板5の上面5aや下面5bあるいは内部の少なくともいずれか一つに形成されていてもよい。回路基板5が多層配線基板であれば、複数の放熱用配線パターン51を回路基板5の厚さ方向に重ねて配置することも可能となるため、放熱用配線パターン51の面積を容易に増やすことができ、放熱用配線パターン51の熱容量の増加を容易に図ることができる。また、回路基板5の上面5aや下面5bのみに放熱用配線パターン51を形成する場合と比較して、回路基板5における放熱用配線パターン51の占有面積を小さく抑えることも可能となる。
【0074】
さらに、上述した全ての実施形態の放熱構造では、第一放熱部材3から第二放熱部材4,8,9、回路基板5を順番に経て再び第一放熱部材3に戻るループ状の電気経路が画成されているが、第一放熱部材3及び第二放熱部材4,8,9を同電位に設定することのみ考慮すれば、例えば、第一放熱部材3及び第二放熱部材4,8,9は、例えば搭載用ネジ6のみによって電気接続されてもよいし、例えば、回路基板5、固定用ネジ7及び筒状突起部32のみによって電気接続されてもよい。
【0075】
また、第一放熱部材3及び第二放熱部材4,8,9は、例えば、互いに電気的に接続されず、第二放熱部材4,8,9から第一放熱部材3に熱を逃がすことができるように、互いに機械的に接続されるだけでもよい。したがって、例えば搭載用ネジ6や付勢部材13、固定用ネジ7は、特に導電性を有していなくてもよい。また、回路基板5には放熱用配線パターン51が形成されていなくても構わない。
【0076】
さらに、上述した全ての実施形態の放熱構造では、発熱電子デバイス2から伝えられた熱を第二放熱部材4,8,9から第一放熱部材3に逃がすように構成されているが、少なくとも第二放熱部材4,8,9から回路基板5に逃がすことができるように、第二放熱部材4,8,9と回路基板5とが機械的に接続されていればよい。
【0077】
また、全ての実施形態では、筒状突起部32の先端部が固定用ネジ7によって回路基板5に固定されているが、第二放熱部材4,8,9から回路基板5に伝えられた熱を第一放熱部材3に逃がすことのみを考慮すれば、少なくとも第一放熱部材3にその上面3aから突出する伝熱用突起部を設け、この伝熱用突起部の先端部が回路基板5に機械的に接続されていればよい。なお、この機械的な接続には、前述した固定用ネジ7による固定の他、接触や当接、あるいは、接着剤による固定なども含まれている。
【0078】
さらに、第二放熱部材4,8,9は、搭載用ネジ6や付勢部材13によって発熱電子デバイス2の上面21aに固定されるとしたが、例えば、接着剤によって固定されてもよい。ただし、この場合には熱伝導性の高い接着剤を用いることがより好ましい。この場合、発熱電子デバイス2は、搭載用ネジ6によって第一放熱部材3に固定されてもよいが、例えば第二放熱部材4,8,9の場合と同様に、接着剤によって第一放熱部材3に固定されてもよい。
【0079】
また、第二放熱部材4,8,9上には、電気配線パターンを有する回路基板5が配されることに限らず、少なくとも第二放熱部材4,8,9に機械的に接続されて第二放熱部材4,8,9の熱を受け取ることが可能な基板が配されていればよい。なお、基板は、導電性材料及び非導電性材料のいずれによって構成されていてもよく、例えば筐体を構成するものであってもよい。この場合、発熱電子デバイス2は例えば別の位置に配された回路基板等に電気接続されればよい。
【0080】
また、発熱電子デバイス2は、第一放熱部材3の平坦な上面3aに搭載されることに限らず、例えば第一放熱部材3の上面3aから窪む凹部の底面(搭載面)に搭載されてもよい。言い換えれば、発熱電子デバイス2は第一放熱部材3の凹部内に収容されてもよい。
この場合には、回路基板5を第一放熱部材3の上面3aに直接配して、第一放熱部材3に対して機械的に接続しても、回路基板5と凹部の底面や発熱電子デバイス2の上面21aとの間に隙間を画成することができる。したがって、第一放熱部材3に上述した実施形態のように伝熱用突起(筒状突起部32)が形成されていなくても、発熱電子デバイス2の上面2aと回路基板5との間に第二放熱部材4,8,9を配することは十分に可能である。
さらに、本発明の放熱構造を構成する発熱電子デバイス2は、半導体素子を樹脂で封止したものに限らず、少なくとも通電によって発熱するものであればよい。
【符号の説明】
【0081】
2 発熱電子デバイス
21 デバイス本体
21a 上面
21b 下面
21c 側面
22 外部端子
3 第一放熱部材
3a 上面(搭載面)
32 筒状突起部(伝熱用突起部)
4,8,9 第二放熱部材
41,81,91 本体部
42,82,92 接続突起
5 回路基板
5a 上面
5b 下面
51 放熱用配線パターン
53 放熱用挿通孔
6 搭載用ネジ(固定手段)
10 ゲル状シート(ゲル状部材)
11 第三放熱部材
13 付勢部材(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一放熱部材と、当該第一放熱部材の搭載面に搭載される発熱電子デバイスと、前記搭載面及び前記発熱電子デバイスの上方に間隔をあけた位置に配される基板と、当該基板に対向する前記発熱電子デバイスの上面に固定される第二放熱部材と、を備え、
当該第二放熱部材が、前記基板に機械的に接続されていることを特徴とする発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項2】
前記第二放熱部材が、前記発熱電子デバイスの上面に面接触する本体部と、当該本体部から前記基板に向けて突出する接続突起とを備え、
当該接続突起が、前記基板の厚さ方向に貫通して形成された放熱用挿通孔に挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項3】
前記接続突起が、針状に形成されると共に互いに間隔をあけて複数配列されていることを特徴とする請求項2に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項4】
前記本体部が、前記第二放熱部材に対向する前記基板の下面に面接触していることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項5】
前記本体部と、前記第二放熱部材に対向する前記基板の下面との隙間が、ゲル状部材によって埋められていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項6】
前記基板が、前記発熱電子デバイスに電気接続される回路基板であり、
当該回路基板に、前記第二放熱部材に接続される放熱用配線パターンが形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項7】
前記第一放熱部材に、その搭載面から突出する伝熱用突起部が設けられ、
当該伝熱用突起部の先端部が前記基板に機械的に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項8】
前記第一放熱部材及び前記第二放熱部材が、前記基板及び前記伝熱用突起部を介して互いに電気接続されていることを特徴とする請求項7に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項9】
前記発熱電子デバイスが、固定手段によって前記第一放熱部材の搭載面に固定されると共に、
前記第二放熱部材が、前記固定手段によって前記発熱電子デバイスの上面に固定されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項10】
前記第一放熱部材及び前記第二放熱部材が、前記固定手段を介して互いに電気接続されていることを特徴とする請求項9に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。
【請求項11】
前記基板の上面に、第三放熱部材が配されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の発熱電子デバイスの放熱構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84674(P2013−84674A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222050(P2011−222050)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】