説明

発磁機及び磁気処理装置

【課題】
石油や電力等の燃料を要することなく、磁気のみによって熱分解作用を促し、ダイオキシンの発生を抑制しつつ、低ランニングコストで廃棄物の分解処理を行う。
【解決手段】
発磁機10は、空気等の流体が流通可能な流通路1と、流通路1を上下から挟むように配設される一対の磁石部2a及び2bと、これらの流通路1及び磁石部2a,2bを保持する円筒状の枠体3とから構成され、流通路1を構成する側面のうち対向する二面は磁性を有する鋼材で形成された磁性部11a及び11bとなっている。これら磁性部11a及び11bの各々には、流通路1の内外に連通する円形の開口部12a及び12bがそれぞれ設けられており、これらの各開口部12a及び12bを塞ぐように、流通路1の外方から一対の磁石部2a及び2bが配設されている。この磁石部2a及び2bは永久磁石であり、N極とS極というように、引き合うように異なる磁極が対向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の流体に対して磁気処理を行う発磁機、及びこの発磁機を利用した磁気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の焼却炉における環境問題の一つであるダイオキシン発生の要因として、不完全燃焼による酸素の滞留、300℃〜350℃程度の低温処理が挙げられている。これらの要因を解消する手段としては、従来より、焼却施設に対して、800℃以上での高温処理や、二次燃焼機関の設置等を義務付けている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−30633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、近年における事業系や家庭系の廃棄物の排出の増加により、焼却設備などの処理施設の不足が問題となっているが、上述したような条件を満たすような設備を設置するには、膨大な設備投資が必要となるうえ、高度な流通システムを構築しなければならず、さらには、関係省庁への許諾手続をしなければならず、容易に設備を増設することが困難となっている。また、従来の焼却処理設備では、石油や電力等の燃料を必要とすることから、高温を維持しての焼却処理では、ランニングコストが増大し、処理事業の負担となっている。
【0004】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、石油や電力等の燃料を要することなく、磁気のみによって熱分解作用を促し、ダイオキシンの発生を抑制しつつ、低ランニングコストで廃棄物の分解処理を行うことができる発磁機及び磁気処理装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、流体が流通可能な流通路と、磁性を有する鋼材で形成され、流通路を構成する側面のうち対向する二面の一部または全部を構成する磁性部と、磁性部の各々に設けられ、流通路の内外に連通する開口部と、流通路外方において各開口部を塞ぐように設けられる一対の磁石部と、流通路及び磁石部を保持する枠体とを有する発磁機である。
【0006】
なお、上記発明において、磁性を有する鋼材は、フェライト系またはマルテンサイト系のステンレスであることが好ましい。
【0007】
このような本発明の発磁機によれば、流通路を挟むようにして設けられた一対の磁石によって流通路内に磁界を形成し、流通路を通過する空気に対して磁性を作用させ、常磁性体である酸素分子が磁化させる。流通路内では、開口部を介して流通路内に面する磁石部と、磁性を有する鋼材部分とによって磁化の強さに差が生じており、また、磁化された酸素分子は分解炉内にて加熱されると磁化が弱められ、炉外にて強く磁化された酸素分子をさらに炉内に吸引する性質があることから、一旦空気の流れが起きると、磁化された酸素分子が連続的に装置内に吸引されることとなる。このとき、酸素分子の磁化は、空気中の他の分子、例えば窒素分子の磁化よりも強いため、酸素分子がより多く装置内に吸引されることとなり、流通路を通過した後の空気中における酸素濃度を高めることができる。
【0008】
第2の発明は、上記発磁機を利用した磁気処理装置であって、前記流通路が接続され、処理対象物が投入され貯留される貯留室と、前記貯留室の外方に設けられ、該貯留室の上方から排出される流体を下方へ向けて流通させ、該貯留室の下方から該貯留室内へ流入させる循環路とを有することを特徴とする。
【0009】
このような本発明の磁気処理装置によれば、上記発磁機を通過させ、酸素濃度を高めた空気によって、高温により、効率よく対象物の熱分解を促すことができる。また、磁化された酸素分子は、マイナスイオンを発生させるため、ダイオキシン類の基となるベンゼン環の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明の発磁機及び磁気処理装置によれば、石油や電力等の燃料を要することなく、磁気のみによって熱分解作用を促し、ダイオキシンの発生を抑制しつつ、低ランニングコストで廃棄物の分解処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発磁機の構成)
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態に係る発磁機の概略構成を示す説明図である。
【0012】
本実施形態に係る発磁機10は、矩形状の枠体3内に断面矩形状の流通路1を形成した構成となっており、この発磁機10を多数利用することによって後述する磁気処理装置5を実現することができる。
【0013】
発磁機10は、空気等の流体が流通可能な流通路1と、流通路1を上下から挟むように配設される一対の磁石部2a及び2bと、これらの流通路1及び磁石部2a,2bを保持する矩形状の枠体3とから概略構成される。
【0014】
流通路1は、本実施形態では、上下一対の磁性部11a及び11bと、一対の側壁部13及び13とにより断面矩形状をなしている。本実施形態では、磁性部11a,11bは、磁性を有する鋼材であるフェライト系またはマルテンサイト系のステンレスで形成されている。また、側壁部13は、枠体3の側壁部と一体的に形成されており、非磁性体のステンレスで形成されている。なお、本実施形態では、枠体3の側壁部と、一対の側壁部13及び13とを一体的に形成し、流通路1の上下部(磁性部11a及び11b)と側壁部とを異なる材質(磁性を有する鋼材と非磁性の鋼材)で構成したが、流通路1を構成する側面のうち対向する少なくとも二面の一部または全部が磁性を有する鋼材で形成されていればよく、例えば、上下の磁性部11a及び11bと、側壁部13,13とを同一の磁性体で一体形成することもできる。また、本実施形態では、流通路1を断面矩形状としたが、円筒状としてもよい。この場合には、円筒状の側面のうち対向する任意の周面部分を磁性部とすることができる。
【0015】
また、磁性部11a及び11bの各々には、流通路1の内外に連通する円形の開口部12a及び12bがそれぞれ設けられており、これらの各開口部12a及び12bを塞ぐように、流通路1の外方から一対の磁石部2a及び2bが配設されている。この磁石部2a及び2bは永久磁石であり、N極とS極というように、引き合うように異なる磁極が対向されている。
【0016】
枠体3は、本実施形態では、ステンレス製の内部中空の矩形状に構成され、中空内に上記流通路1と、磁石部2a及び2bとを備えている。また、この枠体3は、磁気処理装置5内に連通する帯磁管ノズル4に接続されている。本実施形態において、枠体3の側壁部は、前記流通路1の側壁部13,13と一体形成されているが、本発明はこれに限定されず、枠体3の側壁部と流通路1の側壁部13とを別個の部材(磁性を有する鋼材と非磁性の鋼材)で構成してもよい。
【0017】
(磁気処理装置の構成)
次いで、上述した構成の発磁機10を利用した磁気処理装置5について説明する。図2は、本実施形態に係る磁気処理装置5の外側面図であり、図3は、その断面図である。
【0018】
磁気処理装置5は、廃棄物等の処理対象物が投入され貯留されるインナーケース(貯留室)51と、このインナーケース51の外方を覆うように配設されるアウターケース6とを備えている。このインナーケース51及びアウターケース6の下部を貫通させて、多数の帯磁管ノズル4がアウターケース6の外方からインナーケース51の内方へ挿通されており、アウターケース6の外方において、各帯磁管ノズル4の各々に上述した発磁機10が取付けられている。また、帯磁管ノズル4にはバルブ41が取り付けられており、バルブの開閉によって磁気処理装置5内へ流入される空気量を調整することができる。
【0019】
また、インナーケース51の外周側面と、アウターケース6の内周側面の間には、上下に連通する循環路61が形成されている。この循環路61は、インナーケース51の外方において、インナーケース51の上方から排出される流体(本実施形態では、磁気処理された空気)を下方へ向けて流通させ、インナーケース51の下方からインナーケース51内へ流入させ、磁気処理された空気を装置内において循環させる流通路である。
【0020】
さらに、インナーケース51及びアウターケース6には、処理対象物を投入するための初期投入口71と、追加投入口72とが設けられており、これら投入口71及び72の投入用扉71a及び72aを開けることによって、アウターケース6外からインナーケース51内へ処理対象物を投入することができる。なお、追加投入口72は、インナーケース51に対して追加投入用貯留室7を介して設けられており、追加投入用貯留室7の底部付近には、内部扉7aが設けられている。そして、追加投入用貯留室7には、内部扉7aを閉止した状態で処理対象物を投入し、インナーケース51内における分解処理の進行具合に応じて内部扉7aを開放し、追加投入用貯留室7内の処理対象物をインナーケース51内に落下させる。
【0021】
さらにまた、インナーケース51及びアウターケース6の下部には、処理対象物を処理することにより生じる灰を排出するための灰出口52が設けられている。また、アウターケース6の上部には、内部で発生したガスを排出する煙突8が設けられている。この煙突8は内部中空の筒状体であり、その中途には、内部が耐火部材で構成され、小型バーナーを有し、排気ガスを高温にて燃焼させ脱臭する脱臭装置9が取付けられている。
【0022】
(磁気処理装置の動作)
以上説明した磁気処理装置5の動作について説明する。先ず、初期投入口71から廃棄物等の処理対象物をインナーケース51内へ投入し、貯留する。そして、有る程度の処理対象物が貯まったら、インナーケース51内へ種火を投入して発火させ、熱処理を開始する。
【0023】
この発火によりインナーケース51内の温度が上昇し、インナーケース51の底部から上方に向けての空気の循環が生じ、下部に設けられた帯磁管ノズル4から空気の吸引が開始される。
【0024】
発磁機10では、一旦空気の吸引が開始されると、磁石部2a及び2bの作用によって流通路1を通過する酸素分子の磁化(及びマイナスイオン化)が行われ、酸素濃度が高められるとともに、連続的に装置内へ空気が吸引され続ける。
【0025】
磁気処理装置5の内部では、酸素濃度が高められた空気が供給されることにより、熱分解が促され、処理対象物の炭化・セラミック化が進行する。また、磁気処理されてインナーケース51内に供給された空気は、インナーケース51内を上昇した後、インナーケース51の上方から排出され、循環路61内を下方へ向けて流通し、インナーケース51の下方において、インナーケース51内へ再度供給される。また、処理対象物の処理によって発生したガスは、脱臭装置9によって脱臭された後、煙突8から大気中へ排出される。
【0026】
また、この初期投入された処理対象物を処理している間に追加された処理対象物は、追加投入口72から追加投入用貯留室7に貯留しておき、初期投入された処理対象物の処理があるい程度進行した後に、追加投入用貯留室7からインナーケース51内へ移行させる。
【0027】
(変更例)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。例えば、図4に示すように、帯磁管ノズル4の外周面に、熱処理を向上させる有害物質減少部材42を貼り付けてもよい。この有害物質減少部材42は、可撓性を有する銅製のシール部材にバイオ技術により生成された有害物質低減剤を封入した部材であり、帯磁管ノズル4内における流体の流通形態を変化させ、磁気処理装置5内の完全燃焼をさらに促進させ、有害物質の発生を低減させる。
【0028】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、流通路1を挟むようにして設けられた一対の磁石部2a及び2bによって流通路1内に磁界を形成し、流通路1を通過する空気に対して磁性を作用させ、空気中の常磁性体である酸素分子が磁化させる。流通路1内では、開口部12a及び12bを介して流通路1内に露出される永久磁石と、磁性を有するステンレス鋼とによって磁化の強さに差を生じさせており、また、磁化された酸素分子は分解炉内にて加熱されると磁化が弱められ、炉外にて強く磁化された酸素分子をさらに炉内に吸引する性質があることから、種火等により炉内の温度が上昇され、一旦空気の流れが起きると、磁化された酸素分子が連続的に磁気処理装置5内に吸引されることとなる。このとき、酸素分子の磁化は、空気中の他の分子、例えば窒素分子の磁化よりも強いため、酸素分子がより多く磁気処理装置5内に吸引されることとなり、流通路を通過した後の空気中における酸素濃度を高めることができる。
【0029】
従って、本実施形態によれば、発磁機10を通過させて酸素濃度を高めた空気によって、高温により効率よく対象物の熱分解を促すことができる。燃料は、最初に投入する僅かな種火のみなので、ランニングコストを大幅に低減させることができる。また、磁化された酸素分子は、マイナスイオンを発生させるため、ダイオキシン類の基となるベンゼン環の発生を抑制することができる。これらの結果、本発明によれば、石油や電力等の燃料を要することなく、磁気のみによって熱分解作用を促し、ダイオキシンの発生を抑制しつつ、低ランニングコストで廃棄物の分解処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る発磁機10の概略構成を示す説明図であり、(a)は、側断面図であり、(b)は、(a)におけるA−A断面図であり、(c)は、発磁機10の内部構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態に係る磁気処理装置5の外側面図である。
【図3】実施形態に係る磁気処理装置5の側断面図である。
【図4】変更例に係る発磁機の構成を示す説明図であり、(a)は、側断面図であり、(b)は、外観斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1…流通路
2a,2b…磁石部
3…枠体
4…帯磁管ノズル
5…磁気処理装置
6…アウターケース
7…追加投入用貯留室
7a…内部扉
8…煙突
9…脱臭装置
10…発磁機
11a,11b…磁性部
12a,12b…開口部
13,13…側壁部
41…バルブ
42…有害物質減少部材
51…インナーケース
52…灰出口
61…循環路
71…初期投入口
71a,72a…投入用扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通可能な流通路と、
磁性を有する鋼材で形成され、前記流通路を構成する側面のうち対向する二面の一部または全部を構成する磁性部と、
前記磁性部の各々に設けられ、前記流通路の内外に連通する開口部と、
前記流通路外方において前記各開口部を塞ぐように設けられる一対の磁石部と、
前記流通路及び前記磁石部を保持する枠体と
を有することを特徴とする発磁機。
【請求項2】
前記磁性を有する鋼材は、フェライト系またはマルテンサイト系のステンレスであることを特徴とする請求項1に記載の発磁機。
【請求項3】
流体が流通可能な流通路と、
磁性を有する鋼材で形成され、前記流通路を構成する側面のうち対向する二面の一部または全部を構成する磁性部と、
前記磁性部の各々に設けられ、前記流通路の内外に連通する開口部と、
前記流通路外方において前記各開口部を塞ぐように設けられる一対の磁石部と、
前記流通路及び前記磁石部を保持する枠体と、
前記流通路が接続され、処理対象物が投入され貯留される貯留室と、
前記貯留室の外方に設けられ、該貯留室の上方から排出される流体を下方へ向けて流通させ、該貯留室の下方から該貯留室内へ流入させる循環路と
を有することを特徴とする磁気処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−209843(P2007−209843A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29573(P2006−29573)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(507068534)株式会社Ftec (1)
【Fターム(参考)】