説明

発電システム及び発電システムの制御方法

【課題】蒸気利用設備に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことが可能な発電システム及び発電システムの制御方法を提供する。
【解決手段】この発電システム20では、発電装置32が、導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて当該発電装置32の下流側の蒸気圧が主配管14に設けられた減圧弁16の第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御する一方、導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて当該発電装置32の下流側の蒸気圧が減圧弁16の第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システム及び発電システムの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、減圧弁が設けられ、蒸気生成手段で生成された蒸気を蒸気利用設備へ供給する主配管のうち前記減圧弁の上流側から所定圧力の蒸気を発電装置に導入して発電を行い、その発電に利用した後の蒸気を前記主配管のうち減圧弁の下流側に戻して蒸気利用設備へ供給する発電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6には、上記特許文献1に開示された従来の発電システムの全体構成が示されている。この図6に示すように、蒸気生成手段100が主配管102を通じて蒸気利用設備104に繋がっているとともに、その主配管102に減圧弁106が設けられている。そして、主配管102において減圧弁106の上流側の位置に発電システムの導入管108が接続されており、その導入管108が発電装置110の駆動機112の入口側に接続されている。発電装置110の駆動機112の出口側から主配管102のうち減圧弁106の下流側の位置へ排出管114が接続されている。発電装置110には、駆動機112によって駆動される発電機116が設けられている。
【0004】
そして、この発電システムでは、蒸気生成手段100から送られる蒸気が主配管102及び減圧弁106を通って蒸気利用設備104に供給される。一方、主配管102から導入管108を通じて駆動機112に蒸気が導入されて駆動機112が駆動することにより発電機113が発電を行うとともに、その発電に利用された後の蒸気が駆動機112から排出管114を通じて主配管102のうち減圧弁106の下流側へ流されて蒸気利用設備104に供給される。
【特許文献1】特開2007−74894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような発電システムでは、発電装置110の駆動機112に導入される蒸気流量が変動する場合がある。そして、駆動機112に導入される蒸気流量があまりに低下するときには、駆動機112の駆動を停止させて蒸気生成手段100から供給される全ての蒸気を主配管102を通じて蒸気利用設備104へ供給する制御が一般的に行われる。この制御では、駆動機112が停止すると、その下流側に蒸気が流れなくなり、駆動機112の下流側の蒸気圧、すなわち減圧弁106の下流側の蒸気圧が減圧弁106の設定圧力に低下したことに応じて減圧弁106を開け、主配管102を通じて電気利用設備104へ流す蒸気の流量を増加させる。
【0006】
しかしながら、この場合には、蒸気利用設備104に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して大きく低下するという問題点がある。
【0007】
すなわち、上記構成では、駆動機112が停止してその下流側に蒸気が流れなくなってから減圧弁106が完全に開くまでにタイムラグがあり、その期間は蒸気利用設備104へ流れる蒸気流量が大きく低下するため、この期間に蒸気利用設備104に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下する。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蒸気利用設備に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことが可能な発電システム及び発電システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による発電システムは、減圧弁を有し、蒸気生成手段によって生成された蒸気を蒸気利用設備へ供給する主配管に接続され、蒸気のエネルギーを利用して発電を行う発電システムであって、前記主配管のうち前記減圧弁の上流側の位置に接続可能な導入管と、前記主配管のうち前記減圧弁の下流側の位置に接続可能な排出管と、蒸気流量の調整機能を有し、前記主配管から前記導入管を通じて導入される蒸気により発電を行うとともに、その発電に用いた後の蒸気を前記排出管を通じて前記主配管へ排出する発電装置と、前記減圧弁及び前記発電装置の下流側における蒸気圧を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて前記減圧弁の下流側の蒸気圧が第1設定圧となるように前記減圧弁を開閉制御する減圧弁コントローラとを備え、前記発電装置は、導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する。
【0010】
この発電システムでは、発電装置が、導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、発電装置の下流側の蒸気圧が減圧弁の第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置の下流側の蒸気圧が前記第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する。これにより、発電装置に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置を通って蒸気が流れるのと並行して、発電装置の下流側の蒸気圧、すなわち減圧弁の下流側の蒸気圧が第1設定圧よりも低い第3設定圧へ制御されることにより減圧弁が開かれてこの減圧弁を通じても蒸気が流れる。この場合、発電装置及び減圧弁のそれぞれを通って下流側へ流れる蒸気が合流して蒸気利用設備へ供給される。このため、従来のように発電装置に導入される蒸気流量が所定流量まで低下したときに発電装置を停止し、その発電装置の下流側の蒸気圧が低下してから減圧弁を開く構成と異なり、蒸気利用設備に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことができる。
【0011】
上記発電システムにおいて、前記圧力検出手段は、前記主配管において前記減圧弁の下流側に設けられた第1圧力センサと、前記排出管に設けられた第2圧力センサとを含み、前記減圧弁コントローラは、前記第1圧力センサの検出圧力に基づいて前記減圧弁を開閉制御し、前記発電装置は、前記第2圧力センサの検出圧力に基づいて当該発電装置を通過する蒸気流量を制御するのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、減圧弁コントローラが減圧弁の下流側の近傍に位置する第1圧力センサの検出圧力に基づいて減圧弁を開閉制御できるので、減圧弁を精度良く開閉制御することができるとともに、減圧弁の下流側の蒸気圧を精度良く制御することができる。また、発電装置がその下流側の近傍に位置する第2圧力センサの検出圧力に基づいて当該発電装置を通過する蒸気流量を制御することができるので、発電装置の下流側に流れる蒸気流量及び蒸気圧を精度良く制御することができる。
【0013】
本発明による発電システムの制御方法は、減圧弁を有し、蒸気生成手段によって生成された蒸気を蒸気利用設備へ供給する主配管に接続され、蒸気のエネルギーを利用して発電を行う発電システムの制御方法であって、前記主配管のうち前記減圧弁の上流側の位置に接続可能な導入管と、前記前記主配管のうち前記減圧弁の下流側の位置に接続可能な排出管とが設けられているとともに、蒸気流量の調整機能を有し、前記主配管から前記導入管を通じて導入される蒸気により発電を行うとともに、その発電に用いた後の蒸気を前記排出管を通じて前記主配管へ排出する発電装置が設けられており、前記発電装置に導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記減圧弁の第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、前記発電装置に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記減圧弁の第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する。
【0014】
この発電システムの制御方法では、発電装置に導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、発電装置の下流側の蒸気圧が減圧弁の第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、発電装置に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置の下流側の蒸気圧が減圧弁の第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように発電装置を通過する蒸気流量を制御する。これにより、上記発電システムによる作用と同様にして、発電装置に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置を通って蒸気が流れるのと並行して、減圧弁を通じても蒸気が流れ、発電装置及び減圧弁のそれぞれを通って流れる蒸気が合流して蒸気利用設備へ供給される。このため、蒸気利用設備に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、蒸気利用設備に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による発電システムの全体構成を概略的に示す図である。まず、この図1を参照して、本発明の一実施形態による発電システムの構成について説明する。
【0018】
本実施形態による発電システム20は、蒸気生成手段10によって生成されて蒸気利用設備12で利用される蒸気のエネルギーを利用して発電を行うものである。
【0019】
具体的には、この発電システム20は、蒸気生成手段10によって生成された蒸気を蒸気利用設備12へ供給する主配管14に接続されている。この主配管14には、減圧弁16が設けられている。
【0020】
前記蒸気生成手段10は、蒸気流路14に並列に接続された複数のボイラー10aによって構成されている。
【0021】
前記蒸気利用設備12は、例えば給湯器、暖房機、風呂設備、乾燥機、洗浄設備、厨房機器、殺菌器等の所定温度の蒸気を利用する設備である。
【0022】
本実施形態による発電システム20は、減圧弁圧力センサ22と、減圧弁コントローラ24と、導入管26と、排出管28と、排出圧力センサ30と、発電装置32とを備えている。
【0023】
前記減圧弁圧力センサ22は、主配管14において減圧弁16の下流側近傍の位置に設けられており、その位置における蒸気圧を検出する。この減圧弁圧力センサ22は、本発明の第1圧力センサの概念に含まれるものである。
【0024】
前記減圧弁コントローラ24は、前記減圧弁圧力センサ22の検出圧力に基づいて減圧弁16を開閉制御するものである。
【0025】
具体的には、この減圧弁コントローラ24には、前記減圧弁圧力センサ22の検出圧力のデータが常時入力されるようになっている。そして、減圧弁コントローラ24では、減圧弁16の第1設定圧SVが設定されている。減圧弁コントローラ24は、前記減圧弁圧力センサ22によって検出される減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SVよりも低いときには減圧弁16を開く一方、減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SV以上になると減圧弁16を閉じるように制御する。これにより、減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SVとなるように減圧弁コントローラ24によって減圧弁16が開閉制御されるようになっている。
【0026】
前記導入管26は、主配管14のうち減圧弁16の上流側の位置に接続可能に構成されており、前記発電装置32へ蒸気を導入するものである。この導入管26の主配管14との接続部近傍には、開閉弁34が設けられている。
【0027】
前記排出管28は、主配管14のうち減圧弁16の下流側の位置に接続可能に構成されており、前記発電装置32から排出された蒸気を主配管14へ流すものである。この排出管28の主配管14との接続部近傍には、開閉弁36が設けられている。この開閉弁36と前記導入管26に設けられた開閉弁34は、同時に開閉され、主配管14から導入管26へ蒸気を導入し、前記発電装置32を経て排出管28から主配管14へ蒸気を戻す状態と、主配管14から導入管26へ蒸気を導入せず、蒸気生成手段10で生成された蒸気を全て主配管14を通じて蒸気利用設備12へ流す状態とを相互に切り換えられるようになっている。
【0028】
また、この排出管28において前記発電装置32の下流側で、かつ、前記開閉弁36の上流側の位置には、前記排出圧力センサ30が設けられており、この排出圧力センサ30によって発電装置32の下流側の蒸気圧が検出されるようになっている。この排出圧力センサ30は、本発明の第2圧力センサの概念に含まれるものであり、本実施形態では、この排出圧力センサ30と前記減圧弁圧力センサ22とによって本発明の圧力検出手段が構成されている。
【0029】
前記発電装置32は、前記導入管26と前記排出管28に接続されており、前記主配管14から導入管26を通じて導入される蒸気により発電を行うとともに、その発電に用いた後の蒸気を排出管28を通じて主配管14へ排出する。この発電装置32と前記排出圧力センサ30は、筐体33内に設置されており、1つのユニットとして構成されている。
【0030】
そして、発電装置32は、蒸気流量の調整機能を有している。具体的には、この発電装置32は、駆動機38と、発電機40と、周波数変換器42と、ドレンセパレータ44と、流量調整弁46と、緊急遮断弁48と、導入圧力センサ50と、コントローラ52とを有している。
【0031】
前記駆動機38は、前記導入管26を通じて導入された蒸気によって駆動されるものであり、例えば各種タービンやスクリュ膨張機等によって構成される。
【0032】
前記導入管26は、この駆動機38の入口側に接続されているとともに、前記排出管28は、この駆動機38の出口側に接続されている。これにより、前記主配管24から導入管26を通じて導入される蒸気によって駆動機38が駆動し、その駆動機38から排出された蒸気が排出管28を通じて主配管に戻されるようになっている。
【0033】
この駆動機38の駆動軸38aは、前記発電機40の回転軸40aと繋がっている。これにより、駆動機38が駆動し、駆動軸38aが回転すると、その駆動軸38aの回転力が発電機40の回転軸40aに伝達されて発電機40が駆動し、発電を行うようになっている。
【0034】
発電機40で発電された電力は、前記周波数変換器42に導入される。この周波数変換器42は、発電機40で発電された電力の周波数を所望の周波数に変換して出力するものであり、この周波数変換器42から出力された電力は、外部の変圧器54を通じて系統56へ供給される。
【0035】
前記ドレンセパレータ44、前記流量調整弁46、前記緊急遮断弁48及び導入圧力センサ50は、前記導入管26において前記開閉弁34と前記駆動機38との間に上流側からこの順番で設けられている。
【0036】
前記ドレンセパレータ44は、導入管26を流れる蒸気からドレンを分離するためのものである。
【0037】
前記流量調整弁46は、導入管26を通じて駆動機38に導入される蒸気流量を調整するものであり、前記コントローラ52によって開閉制御可能に構成されている。本実施形態では、この流量調整弁46によって発電装置32を通過する蒸気流量が調整されるようになっている。
【0038】
前記緊急遮断弁48は、導入管26を完全に遮断するものであり、前記コントローラ52によって制御可能となっている。
【0039】
前記導入圧力センサ50は、導入管26を通じて駆動機38へ導入される蒸気の圧力を検出するものである。
【0040】
前記コントローラ52は、前記導入圧力センサ50及び前記排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて適正回転数を導出する。そして、このコントローラ52によって導出された適正回転数に基づいて、前記周波数変換器42が発電機40に回転数制御信号を出力し、発電機40が蒸気流量に応じた適正回転数で運転されるようになっている。
【0041】
そして、本実施形態では、発電装置32がこのコントローラ52により排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて流量調整弁46を開閉制御することによって、発電装置32を通過する蒸気流量を制御するようになっている。
【0042】
具体的には、コントローラ52は、蒸気利用設備12で要求される蒸気流量に応じた制御出力値を流量調整弁46に出力し、その制御出力値に応じて流量調整弁46の開度が制御されることにより、発電装置32に導入される蒸気流量、すなわち発電装置32を通過して下流側へ流れ、蒸気利用設備12に供給される蒸気流量を調整する。
【0043】
そして、コントローラ52では、駆動機38を駆動させるために導入すべき蒸気流量の範囲として容量制御範囲が設定されているとともに、発電装置32の下流側の蒸気圧の設定値として第2設定圧SVと第3設定圧SVとが設定されるようになっている。
【0044】
前記第2設定圧SVは、図2に示すように前記減圧弁16の第1設定圧SVに対して所定の圧力差を有し、その第1設定圧SVよりも高い圧力に設定されている。コントローラ52は、流量調整弁46に出力する制御出力値、すなわち発電装置32に導入する蒸気流量が前記容量制御範囲の下限の流量よりも少し上に設定された所定流量よりも多いときには、排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて発電装置32の下流側の蒸気圧を前記第2設定圧SVとなるように流量調整弁46の開度を制御し、発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。
【0045】
そして、発電装置32の下流側と減圧弁16の下流側とが繋がっていることに起因して、発電装置32の流量調整弁46と減圧弁16は、それら発電装置32及び減圧弁16の下流側における同じ蒸気圧に基づいて開閉制御される。この際、流量調整弁46の開閉制御の基準となる前記第2設定圧SVが減圧弁16の開閉制御の基準となる前記第1設定圧SVに対して所定の圧力差で高い圧力に設定されているため、減圧弁16と流量調整弁46との間でのハンチングが防止されるようになっている。
【0046】
また、前記第3設定圧SVは、前記減圧弁16の第1設定圧SVよりも低く、かつ、0kPaG、すなわち大気圧よりも高い圧力に設定されている。コントローラ52は、蒸気利用設備12で要求される蒸気流量が低下し、流量調整弁46へ出力する制御出力値が低下することにより、発電装置32に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置32の下流側の蒸気圧の設定値を前記第2設定圧SVから第3設定圧SVに変更する。これにより、コントローラ52は、排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて発電装置32の下流側の蒸気圧が前記第3設定圧SVとなるように流量調整弁46の開度を制御して発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。
【0047】
また、コントローラ52は、流量調整弁46へ出力する制御出力値がさらに低下し、発電装置32に導入される蒸気流量が前記容量制御範囲の下限の流量まで低下したときには、流量制御弁46を閉じて発電装置32に導入する蒸気流量を0にし、駆動機38を停止させる。
【0048】
図2には、本実施形態による発電システム20の制御方法を説明するための発電装置32を通過する蒸気流量と減圧弁16及び発電装置32の下流側の設定圧との関係が示されている。次に、図1及び図2を参照して、本実施形態による発電システム20の制御方法について説明する。
【0049】
まず、蒸気生成手段10で生成された蒸気が主配管14から導入管26を通じて発電装置32の駆動機38に導入されており、その蒸気によって駆動機38が駆動され、発電機40で発電が行われている。そして、駆動機38から排出された蒸気が排出管28を通じて主配管14のうち減圧弁16の下流側に戻されて蒸気利用設備12へ供給されている。
【0050】
この状態で、発電装置32に導入される蒸気流量、すなわち駆動機38に導入される蒸気流量は、駆動機38の容量制御範囲内で前記所定流量(図2参照)よりも多い流量となっている。このとき、発電装置32のコントローラ52は、排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて流量調整弁46の開度を制御し、発電装置32の下流側の蒸気圧が主配管14の減圧弁16の第1設定圧SVよりも高い第2設定圧SVとなるように発電装置32を通過して下流側へ流れる蒸気流量を制御している。
【0051】
これにより、減圧弁圧力センサ22によって検出される減圧弁16の下流側の蒸気圧も減圧弁16の第1設定圧SVよりも高い前記第2設定圧SVとなっており、減圧弁16が閉じられている。このため、主配管14は遮断されており、蒸気生成手段10で生成された蒸気は、全て発電装置32を通って蒸気利用設備12に供給されている。
【0052】
次に、蒸気利用設備12で要求される蒸気流量が低下した場合には、コントローラ52から流量調整弁46に出力される制御出力値が低下し、それに応じて発電装置32を通過する蒸気流量が低下するとともに、排出圧力センサ30によって検出される発電装置32の下流側の蒸気圧も低下する。
【0053】
そして、コントローラ52から流量調整弁46に出力される制御出力値、すなわち発電装置32に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下すると、コントローラ52が発電装置32の下流側の蒸気圧の設定値を減圧弁16の第1設定圧SVよりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧SVに変更する。これにより、発電装置32は、そのコントローラ52により排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて発電装置32の下流側の蒸気圧が前記第3設定圧SVとなるように流量調整弁46の開度を制御し、発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。
【0054】
発電装置32の下流側の蒸気圧が前記第3設定圧SVとなるように制御されると、減圧弁16の下流側の蒸気圧も前記第2設定圧SVからその第3設定圧SVへ向かって低下する。その過程において、減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SVよりも低下すると、それに応じて減圧弁コントローラ24により減圧弁16が開かれる。これにより、発電装置32を通って蒸気利用設備12へ蒸気が供給されるのと並行して、減圧弁16を通って蒸気が蒸気利用設備12へ供給される。
【0055】
その後、発電装置32に導入される蒸気流量がさらに低下して前記容量制御範囲の下限の流量まで低下すると、コントローラ52によって流量調整弁46が閉じられて発電装置32に導入される蒸気流量が0にされ、駆動機38が停止される。これにより、発電装置32を通過して蒸気利用設備12へ供給される蒸気流量は0になる。一方、この時点で減圧弁16は所定の開度で開いており、蒸気生成手段10で生成された全ての蒸気は、主配管14及び減圧弁16を通って蒸気利用設備12に供給される。そして、この状態では、減圧弁コントローラ24により、減圧弁圧力センサ22の検出圧力に基づいて減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SVとなるように減圧弁16が開閉制御される。
【0056】
ところで、上記した本実施形態の制御方法と異なり、図3に示す比較例のように、発電装置32に導入される蒸気流量が前記容量制御範囲の下限の流量まで低下したときに駆動機38を停止し、発電装置32を通過する蒸気流量が0になった時点で、減圧弁16を開いて蒸気利用設備12へ蒸気を流す場合には、駆動機38が停止してその下流側に蒸気が流れなくなってから減圧弁106が完全に開くまでにタイムラグがあるため、その間に蒸気利用設備12へ供給される蒸気圧が一時的に大きく低下する。これにより、図4に示すように、蒸気利用設備12に供給される蒸気圧がその蒸気利用設備12の許容圧力範囲を一時的に逸脱して低下する場合がある。
【0057】
これに対して、本実施形態では、上記のような制御が行われることによって、図3に示すように発電装置32に導入される蒸気流量が前記所定流量に低下した時点で減圧弁16が開き始めるため、発電装置32に導入される蒸気流量が前記所定流量からさらに前記容量制御範囲の下限の流量に低下するまでの間は、発電装置32を通って流れる蒸気と減圧弁16を通って流れる蒸気とが合流して蒸気利用設備12に供給される。そして、発電装置32に導入される蒸気流量が前記容量制御範囲の下限の流量まで低下したときには、すでに減圧弁16が所定の開度まで開いているため、減圧弁16が開き始めてからタイムラグがあったとしても上記比較例による制御方法ほどは蒸気利用設備12に供給される蒸気圧が低下せず、図5に示すように蒸気利用設備12に供給される蒸気圧が蒸気利用設備12の許容圧力範囲内で維持される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、発電装置32が、導入される蒸気流量が前記所定流量よりも多いときには、発電装置32の下流側の蒸気圧が主配管14の減圧弁16の第1設定圧SVよりも高い第2設定圧SVとなるように当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御する一方、導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置32の下流側の蒸気圧が前記減圧弁16の第1設定圧SVよりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧SVとなるように当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。これにより、発電装置32に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、発電装置32を通って蒸気が流れるのと並行して、発電装置32の下流側の蒸気圧、すなわち減圧弁16の下流側の蒸気圧が第1設定圧SVよりも低い第3設定圧SVへ制御されることにより減圧弁16が開かれてこの減圧弁16を通じても蒸気が流れる。この場合、発電装置32及び減圧弁16のそれぞれを通って下流側へ流れる蒸気が合流して蒸気利用設備12へ供給される。このため、蒸気利用設備12に供給される蒸気の圧力が一時的に許容圧力範囲を逸脱して低下するのを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態では、減圧弁コントローラ24が主配管14において減圧弁16の下流側に設けられた減圧弁圧力センサ22の検出圧力に基づいて減圧弁16を開閉制御し、発電装置32のコントローラ52が排出管28に設けられた排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて流量調整弁46を開閉制御することにより当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御する。このため、減圧弁コントローラ24が減圧弁16の下流側の近傍に位置する減圧弁圧力センサ22の検出圧力に基づいて減圧弁16を開閉制御できるので、減圧弁16を精度良く開閉制御することができるとともに、減圧弁16の下流側の蒸気圧を精度良く制御することができる。また、発電装置32がその下流側の近傍に位置する排出圧力センサ30の検出圧力に基づいて当該発電装置32を通過する蒸気流量を制御することができるので、発電装置32の下流側に流れる蒸気流量及び蒸気圧を精度良く制御することができる。
【0060】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
例えば、前記減圧弁圧力センサ22と前記排出圧力センサ30の代わりに共通の1つの圧力センサを減圧弁16及び発電装置32の下流側に設け、その圧力センサの検出圧力に基づいて前記減圧弁コントローラ24が減圧弁16を開閉制御するとともに前記コントローラ52が前記流量制御弁46を開閉制御してもよい。
【0062】
また、前記流量調整弁46とともに駆動機38を用いてその駆動機38の回転数をコントローラ52が制御することにより発電装置32を通過する蒸気流量を制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態による発電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による発電システムの制御方法を説明するための発電装置を通過する蒸気流量と減圧弁及び発電装置の下流側の設定圧との関係を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態及び比較例における発電装置の通過蒸気流量及び減圧弁の通過蒸気流量の変化を示した図である。
【図4】本発明の比較例の発電システムにおいて蒸気利用設備に供給される蒸気圧の変化を示した図である。
【図5】本発明の一実施形態による発電システムにおいて蒸気利用設備に供給される蒸気圧の変化を示した図である。
【図6】従来の一例による発電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 蒸気生成手段
12 蒸気利用設備
14 主配管
16 減圧弁
20 発電システム
22 減圧弁圧力センサ(第1圧力センサ)
24 減圧弁コントローラ
26 導入管
28 排出管
30 排出圧力センサ(第2圧力センサ)
32 発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧弁を有し、蒸気生成手段によって生成された蒸気を蒸気利用設備へ供給する主配管に接続され、蒸気のエネルギーを利用して発電を行う発電システムであって、
前記主配管のうち前記減圧弁の上流側の位置に接続可能な導入管と、
前記主配管のうち前記減圧弁の下流側の位置に接続可能な排出管と、
蒸気流量の調整機能を有し、前記主配管から前記導入管を通じて導入される蒸気により発電を行うとともに、その発電に用いた後の蒸気を前記排出管を通じて前記主配管へ排出する発電装置と、
前記減圧弁及び前記発電装置の下流側における蒸気圧を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて前記減圧弁の下流側の蒸気圧が第1設定圧となるように前記減圧弁を開閉制御する減圧弁コントローラとを備え、
前記発電装置は、導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、前記圧力検出手段の検出圧力に基づいて当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する、発電システム。
【請求項2】
前記圧力検出手段は、前記主配管において前記減圧弁の下流側に設けられた第1圧力センサと、前記排出管に設けられた第2圧力センサとを含み、
前記減圧弁コントローラは、前記第1圧力センサの検出圧力に基づいて前記減圧弁を開閉制御し、
前記発電装置は、前記第2圧力センサの検出圧力に基づいて当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
減圧弁を有し、蒸気生成手段によって生成された蒸気を蒸気利用設備へ供給する主配管に接続され、蒸気のエネルギーを利用して発電を行う発電システムの制御方法であって、
前記主配管のうち前記減圧弁の上流側の位置に接続可能な導入管と、前記前記主配管のうち前記減圧弁の下流側の位置に接続可能な排出管とが設けられているとともに、蒸気流量の調整機能を有し、前記主配管から前記導入管を通じて導入される蒸気により発電を行うとともに、その発電に用いた後の蒸気を前記排出管を通じて前記主配管へ排出する発電装置が設けられており、
前記発電装置に導入される蒸気流量が所定流量よりも多いときには、当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記減圧弁の第1設定圧よりも高い第2設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する一方、前記発電装置に導入される蒸気流量が前記所定流量まで低下したときには、当該発電装置の下流側の蒸気圧が前記減圧弁の第1設定圧よりも低く、かつ、0kPaGよりも高い第3設定圧となるように当該発電装置を通過する蒸気流量を制御する、発電システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−228604(P2009−228604A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76469(P2008−76469)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】