説明

発電システム

【課題】ごみ焼却施設において太陽光発電を利用しつつ電力を安定して供給する。
【解決手段】ごみ焼却施設に設けられる発電システム1では、ごみを焼却することにより得られるエネルギーを利用して発電を行うごみ発電装置2、および、ごみ焼却施設に設けられる太陽電池パネルを用いて発電を行う太陽光発電装置3が設けられる。また、演算部52では、日射強度の変化の予測に基づいて太陽光発電装置3における所定期間の発電電力の予測曲線が求められ、太陽光発電装置3における発電電力の目標曲線と当該予測曲線との差に基づいて、ごみ発電装置2における発電電力の予定曲線が決定される。そして、制御部51が予定曲線に従ってごみ発電装置2における発電電力を制御することにより、太陽光発電装置3の発電電力が天候により理想的な発電電力に対して不足する場合であっても、発電システム1では、電力を毎日安定して供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却施設に設けられる発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可燃ごみの焼却によりごみ焼却ボイラにて蒸気を発生させ、当該蒸気を用いて蒸気タービンを回転することにより発電を行う発電システムが、ごみ焼却施設に設けられている。また、発電された電力(以下、「発電電力」という。)をごみ焼却施設内にて利用する以外に、電力会社に売却する(すなわち、売電する)ことも行われている。特許文献1では、ごみ焼却にて発電された電気を、太陽光発電装置によって発電された電気と共に他のプラントに送電する技術が開示されている。なお、非特許文献1では、太陽光発電向けの日照量予測を提供するサービスについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−288012号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“JWA Information VOL.41”、[online]、財団法人日本気象協会、[平成21年9月29日検索]、インターネット<URL:http://www.jwa.or.jp/var/plain_site/storage/original/application/e1d0b6cef1cd1c409a970e9e22b436bf.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1ではごみ焼却による発電と、太陽光発電による発電とを組み合わせることにより、ごみ焼却施設において発電電力を増大することが可能となるが、太陽光発電における発電電力は日射強度(すなわち、単位時間当たりに単位面積に照射される太陽からの光の量であり、日射量とも呼ばれる。)に依存するため、ごみ焼却施設における総発電電力を安定させることが困難となる。電力会社に売電する場合には、電力を毎日安定して供給すること(一定の電力を連続して供給することではなく、1日の供給電力の変化が、毎日一定であること)が要求されるが、上記理由により、特許文献1のシステムではこのような要求を満たすことが困難となる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ごみ焼却施設において太陽光発電を利用しつつ電力を安定して供給することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、ごみ焼却施設に設けられる発電システムであって、ごみを焼却することにより得られるエネルギーを利用して発電を行うごみ発電装置と、ごみ焼却施設に設けられる太陽電池パネルを用いて発電を行う太陽光発電装置と、日射強度の変化の予測に基づいて前記太陽光発電装置における所定期間の発電電力の予測曲線を求め、前記太陽光発電装置における発電電力の目標曲線と前記発電電力の前記予測曲線との差に基づいて、前記ごみ発電装置における発電電力の予定曲線を決定する演算部と、前記発電電力の前記予定曲線に従って前記ごみ発電装置における発電電力を制御する制御部とを備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発電システムであって、前記太陽光発電装置が蓄電池を備え、前記制御部が、前記所定期間の各時刻における前記太陽光発電装置の実際の発電電力と、前記予測曲線の発電電力との差に基づいて、前記蓄電池の充放電を制御する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発電システムであって、前記ごみ焼却施設に補助発電機が設けられており、前記太陽光発電装置の実際の発電電力が前記予測曲線の発電電力よりも所定値以上小さくなる場合に、前記制御部が、前記補助発電機を駆動する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発電システムであって、蓄電池をさらに備え、前記所定期間が1日であり、前記目標曲線のピーク時刻からピーク時刻が遅延している出力電力の需要曲線が予め定められており、前記制御部が、前記需要曲線に従って前記蓄電池の充放電を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ごみ焼却施設において太陽光発電を利用しつつ電力を安定して供給することができる。
【0012】
請求項2の発明では、太陽光発電装置からの出力電力の変動を低減することができ、請求項3の発明では、電力をさらに安定して供給することができ、請求項4の発明では、需要曲線に合わせて出力電力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】発電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】太陽光発電装置の構成を示す図である。
【図3】発電システムにおける発電に係る処理の流れを示す図である。
【図4】太陽光発電装置における発電電力の予測曲線を示す図である。
【図5】太陽光発電装置における発電電力の予測曲線を示す図である。
【図6】ごみ発電装置における発電電力の予定曲線を示す図である。
【図7】比較例の発電システムにおける総発電電力の変化を示す図である。
【図8】ごみ発電装置および太陽光発電装置による総発電電力の変化を示す図である。
【図9】需要曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る発電システム1の構成を示すブロック図である。発電システム1は、ごみ焼却施設に設けられるものであり、発電システム1にて発電される電力(すなわち、発電電力)は送電線を介して、電力会社に供給(売電)される。以下の説明では、ごみ焼却施設は、実際にごみの焼却が行われる建造物以外に、当該建造物の周囲に設けられる他の関連建造物、あるいは、これらの建造物の周囲に設けられる駐車場や車路等、ごみの焼却に関連する区域の全体(いわゆる、ごみ焼却場の全体)を含むものとする。
【0015】
図1に示すように、発電システム1は、ごみを焼却することにより得られるエネルギーを利用して発電を行うごみ発電装置2、太陽光発電を行う太陽光発電装置3、および、ごみ焼却施設に設けられる非常用発電機(例えば停電時に用いられる。)である補助発電機4を備える。ごみ発電装置2、太陽光発電装置3および補助発電機4は制御部51に接続されており、制御部51によりごみ発電装置2、太陽光発電装置3および補助発電機4における発電電力が制御(例えば、フィードバック制御)される。また、発電システム1は、制御部51に接続されるとともに記憶部521を有する演算部52をさらに備え、演算部52にて制御部51における制御に利用される情報が求められる。ごみ発電装置2では、例えば、ごみの焼却によりごみ焼却ボイラにて蒸気を発生させ、当該蒸気を用いて蒸気タービンを回転することにより発電が行われる。
【0016】
図2は、太陽光発電装置3の構成を示す図である。太陽光発電装置3は、ごみ焼却施設に設けられる太陽電池パネル31、太陽電池パネル31にて発電した直流の電気を交流の電気に変換するパワーコンディショナ32、および、パワーコンディショナ32に接続されるとともに急速充電が可能な蓄電池33を備える。太陽電池パネル31は、ごみの焼却が行われる建造物の屋上や壁面、あるいは、駐車場や車路等、ごみ焼却施設内の屋外における様々なスペースに設けられている。また、蓄電池33では、太陽電池パネル31にて発電した電力の充電および放電が行われる。
【0017】
蓄電池33では、定期的に充電電流を確認しながら充電が行われる(Interrupt, Check & Charge)ため、蓄電池にて許容される限りの最大電流で電力を充電することが可能となり、一般的な充電方式に比べて急速な充電が可能となる。また、充電状況を監視しながら充電が行われることにより、蓄電池への過負荷の付与、および、蓄電池におけるメモリ効果の発生が防止され、蓄電池の長寿命化が実現される。本実施の形態では、太陽電池パネル31からの発電電力のみが蓄電池33にて充電可能となっている。
【0018】
図3は、発電システム1における発電に係る処理の流れを示す図である。既述のように、図1の補助発電機4は(原則として)ごみ焼却施設における非常時に利用されるものであり、本処理例では、補助発電機4は使用されない。補助発電機4を使用する処理例については、本処理例の後に説明する。
【0019】
発電システム1における発電に係る処理では、まず、ごみ焼却施設における翌日の日射強度の変化の予測が取得され、演算部52に入力される(ステップS11)。日射強度の変化の予測は、例えば、財団法人日本気象協会による太陽光発電向け日照量予測(上記非特許文献1参照)により取得可能である。
【0020】
続いて、演算部52では、当該日射強度の変化に基づいて、太陽光発電装置3における発電電力の変化の予測を示す曲線(以下、「予測曲線」という。)が求められる(ステップS12)。図4および図5は、太陽光発電装置3における発電電力の予測曲線を示す図であり、図4および図5の縦軸は発電電力を示し、横軸は時間を示している(後述の図6ないし図9において同様)。また、図4および図5では、符号A1,A2を付す細い実線にて予測曲線を示している。予測曲線は、日射強度の変化を示す曲線に倣った形状となり、図4では翌日の天候の予測が曇りの場合における予測曲線A1が示されており、図5では雨の場合における予測曲線A2が示されている。
【0021】
また、図4および図5中にて符号A0を付す破線にて示すように、天候が理想的な晴天である場合における発電電力の変化を示す曲線(以下、「目標曲線」という。)も演算部52の記憶部521に予め記憶されており、本実施の形態では、発電電力が0となる位置を目標曲線A0と一致させつつ、予測曲線(図4中の予測曲線A1または図5中の予測曲線A2参照)が、例えば二次曲線や正規分布曲線にて近似されて修正され、修正済みの予測曲線が取得される(ステップS13)。図4では、予測曲線A1に対応する修正済みの予測曲線を符号A3を付す太い実線にて示し、図5では、予測曲線A2に対応する修正済みの予測曲線を符号A4を付す太い実線にて示している。修正済みの予測曲線は記憶部521にて記憶される。以下の説明では、修正済みの予測曲線を単に予測曲線とも呼び、目標曲線A0において発電電力が0よりも大きくなる期間を通常日射期間T1という。
【0022】
翌日の修正済みの予測曲線(図4中の予測曲線A3または図5中の予測曲線A4参照)が取得されると、各時刻における目標曲線A0の発電電力と当該予測曲線の発電電力との差を示す曲線(すなわち、予測曲線に従って発電電力が得られた場合に、目標曲線A0が示す発電電力に対して不足する発電電力を示す曲線であり、以下、「電力不足曲線」という。)が求められる。なお、全ての時刻において予測曲線の発電電力は目標曲線A0の発電電力以下となっている。
【0023】
また、ごみ発電装置2では、例えばごみ発電装置2の最大発電能力の75%が定常発電電力として定められており、各時刻において翌日の電力不足曲線に定常発電電力を加算した曲線が、ごみ発電装置2における発電電力の予定曲線として決定され、記憶部521にて記憶される(ステップS14)。
【0024】
図6は、ごみ発電装置2における発電電力の予定曲線を示す図である。図6では、符号B1を付す太い実線にて予定曲線を示すとともに、予定曲線B1と横軸との間の領域に間隔が広い平行斜線を付している(後述の図7および図8において同様)。図6の予定曲線B1では、通常日射期間T1において発電電力が定常発電電力P1よりも大きくなっている。なお、図6では、各時刻において修正済みの予測曲線(図4中の予測曲線A3または図5中の予測曲線A4参照)が示す発電電力を、予定曲線B1が示す発電電力に加算した曲線(すなわち、図4および図5中の目標曲線A0が示す発電電力に定常発電電力P1を加算した曲線であり、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3における発電電力の和である総発電電力の理想的な変化を示すものであるため、以下、「総目標曲線」という。)B0も破線にて図示している。
【0025】
予定曲線B1に対応する当日には、発電システム1では、制御部51によりごみ発電装置2が予定曲線B1に従って制御されることにより、各時刻において、ごみ発電装置2における実際の発電電力が予定曲線B1が示す発電電力に一致する。一方で、太陽電池パネル31を用いて発電を行う太陽光発電装置3における実際の発電電力は、日射強度の変化に依存するため、通常日射期間T1において大幅に変動する。図6では、発電システム1における総発電電力の変化を符号B2を付す細い実線にて示しており(ただし、通常日射期間T1内の一部の時刻、および、通常日射期間T1以外の時刻では、予定曲線B1に一致している。)、各時刻において曲線B2の発電電力とごみ発電装置2における予定曲線B1の発電電力との差が、太陽光発電装置3における実際の発電電力を示す。図6では、当該差に相当する部分に間隔が狭い平行斜線を付している(後述の図7および図8において同様)。なお、間隔が狭い平行斜線および間隔が広い平行斜線を付す領域の全体が、各時刻における発電システム1の総発電電力を示すものとなっている。
【0026】
太陽光発電装置3では、各時刻において実際の発電電力が修正済みの予測曲線(図4中の予測曲線A3または図5中の予測曲線A4参照)が示す発電電力(以下、「予測発電電力」という。)よりも大きい場合には、実際の発電電力と予測発電電力との差に相当する電力が図2の蓄電池33にて充電され、実際の発電電力が予測発電電力よりも小さい場合には、予測発電電力と実際の発電電力との差に相当する電力が蓄電池33から放電される。このようにして、1日の各時刻における太陽光発電装置3の実際の発電電力と予測発電電力との差に基づいて蓄電池33の充放電が制御され、各時刻において太陽光発電装置3から出力される電力が、修正済みの予測曲線が示す予測発電電力に近似したものとなる(ステップS15)。ステップS15における補助発電機4の制御については後述する。
【0027】
なお、パワーコンディショナ32では、太陽電池パネル31から取り出される電力が最大となるように内部の回路における電圧を制御する最大電力追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御が行われており、実際の発電電力が予測発電電力よりも所定値以上大きくなる場合には、この電圧を電力が最大となる値から変更する(すなわち、動作点を移動する)ことにより発電効率を低下させて、過渡的かつ過大な発電電力のピークカットが行われる。このとき、パワーコンディショナ32における電力と電圧との関係は、日射強度および太陽電池パネル31の温度に依存するため、日射強度と太陽電池パネル31の温度との各組合せに対応する電力と電圧との関係を予め取得しておき、発電効率を低下させる際の日射強度および太陽電池パネル31の温度(太陽電池パネル31には日射強度計および温度計が設けられている。)から特定される当該関係に基づいて、動作点の移動方向および移動量が決定される。
【0028】
実際には、ごみ焼却施設における翌日の日射強度の変化の予測は演算部52にて毎日受け付けられ、太陽光発電装置3における発電電力の変化の予測曲線(修正済みの予測曲線)が取得されて、ごみ発電装置2における発電電力の予定曲線が決定される(ステップS11〜S14)。そして、その翌日に、ごみ発電装置2における発電電力が当該予定曲線に従って制御されるとともに、蓄電池33における充放電が予測曲線に従って制御される(ステップS15)。
【0029】
ここで、ごみ発電装置2において一定の定常発電電力P1にて発電を行いつつ、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3における総発電電力を電力会社に供給する比較例の発電システムについて述べる。図7は、比較例の発電システムにおける総発電電力の変化を示す図である。図7では、ごみ発電装置2における発電電力の変化(実際には、一定の定常発電電力P1となっている。)を符号R1を付す太い実線にて示し、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3の総発電電力の変化を符号R2を付す細い実線にて示している。既述のように、太陽光発電における発電電力は天候により異なる日射強度に依存するため、比較例の発電システムでは、総発電電力の変化を毎日一定にすることが困難となる。
【0030】
これに対し、発電システム1では、日射強度の変化の予測に基づいて太陽光発電装置3における1日の発電電力の(修正済みの)予測曲線が求められ、太陽光発電装置3における発電電力の目標曲線と当該予測曲線との差に基づいて、ごみ発電装置2における発電電力の予定曲線が決定される。そして、当該予定曲線に従ってごみ発電装置2における発電電力が制御される。これにより、ごみ焼却施設における太陽光発電を利用した発電システム1において、毎日異なる日射強度の変化により、太陽光発電装置3の発電電力が理想的な発電電力に対して不足する場合に、ごみ発電装置2の発電電力により不足する発電電力を補充(バックアップ)して、日射強度の変化の日々の相違の影響を低減することができ、その結果、総目標曲線B0に従って電力を毎日安定して供給することができる。なお、ごみ焼却施設において、1日の総ごみ焼却量を一定にする必要がある場合には、発電電力の低下が許容される夜間におけるごみ焼却量を低減する(すなわち、夜間における発電電力を定常発電電力よりも低くする)ことも可能である。
【0031】
また、図7において、通常日射期間T1内の短時間における発電電力の変動に着目した場合、発電電力が日射強度に依存する太陽光発電装置3では、最大発電能力を100%として、発電電力の変動幅が0〜100%となる。例えば、太陽光発電装置3における最大発電能力が1000kW(キロワット)であり、ごみ発電装置2における定常発電電力P1が3000kWである場合、比較例の発電システム全体における総発電電力の変動幅は75〜100%(3000〜4000kW)となり、通常日射期間T1内の短時間にて最大25%の総発電電力の変動が生じてしまう(図7中の線R2参照)。
【0032】
これに対し、発電システム1では、太陽光発電装置3に蓄電池33が設けられ、1日の各時刻における太陽光発電装置3の実際の発電電力と、修正済みの予測曲線の発電電力との差に基づいて蓄電池33の充放電が制御される。これにより、通常日射期間T1内の短時間における過渡的な発電電力のピークカットおよびボトムカットが行われ、太陽光発電装置3からの出力電力の変動、および、発電システム1全体における総出力電力の変動を低減することができる。
【0033】
なお、図5の修正前の予測曲線A2における13時近傍では、発電電力が長時間に亘って修正済みの予測曲線A4よりも大幅に低くなり、蓄電池33における電力が不足して、太陽光発電装置3の実際の発電電力と、予測曲線A4の発電電力との差に基づく蓄電池33の放電ができなくなる虞がある。このように、1日の実際の発電電力量と予測曲線A4が示す1日の発電電力量とに大差はないが、一時的に蓄電池33における電力が不足することが予測される場合には、例えば、各時刻における修正済みの予測曲線の発電電力に1よりも小さい係数を乗じて予測曲線をさらに修正して(すなわち、予測曲線が示す山を低くして)、蓄電池33における電力不足が回避されることが好ましい。
【0034】
ところで、発電システム1では、蓄電池33の容量を大きくすることにより、パワーコンディショナ32における発電効率を低下させる既述の処理が不要となるが、蓄電池33は比較的高価であるため、蓄電池33の容量は必要最小限とすることが好ましい。したがって、過去数年間(例えば、5年間)における毎日の日照量(日射強度の1日の積分値)の予測と実際の日照量との差を太陽光発電装置3における発電電力量に換算し、全ての1日の発電電力量のうち最大となる発電電力量が充電可能な最小の容量の蓄電池33を設けることにより、不必要に大きな容量の蓄電池33を設けて発電システム1の設置コストが増大することを防止しつつ、パワーコンディショナ32における発電効率を低下させる既述の処理を省略することが可能となる。言い換えると、発電システム1では、年間を通じて太陽光発電出力を安定化させるために、蓄電池33だけでなく、ごみ発電での電力を用いるとともに、日射強度の変化の予測に基づいた予測曲線に基づいて蓄電池33の充放電制御を行なうため、蓄電池33の容量を必要最小限に抑えることができる。なお、上記の場合、蓄電池33に充電された電力を夜間にある程度放電しておくことが好ましい。実際には、長期間の使用により蓄電池33は消耗するため、蓄電池33の容量を必要最小限とすることにより、蓄電池33の交換時におけるコストも削減可能となる。
【0035】
次に、発電システム1における他の処理例について説明する。以下の処理例では、図1の補助発電機4が使用される。補助発電機4はディーゼル発電機とされる。補助発電機4では、例えばごみ焼却施設にてごみから精製されるメタン燃料を使用した発電が可能とされる。
【0036】
本処理例では、上記の処理例と同様に、太陽光発電装置3における予測曲線、および、ごみ発電装置2における予定曲線が取得されると(図3:ステップS11〜S14)、その翌日に当該予定曲線に従ってごみ発電装置2における発電電力が制御されるとともに、太陽光発電装置3の実際の発電電力と、予測曲線の発電電力との差に基づいて蓄電池33の充放電が制御される(ステップS15)。
【0037】
図8は、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3による総発電電力の変化を示す図である。図8では、予定曲線を符号C1を付す太い実線にて示し、総目標曲線を符号C0を付す破線にて示し、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3による実際の総発電電力の変化を符号C2を付す細い実線にて示している。
【0038】
ここで、前日に取得される日射強度の変化の予測は、その翌日の実際の日射強度の変化と大幅に相違することがあり、仮に、実際の日射強度が日射強度の予測値よりも大幅に低くなる時間が長い場合には、ごみ発電装置2および太陽光発電装置3による実際の総発電電力(図8中の曲線C2参照)が総目標曲線C0の発電電力よりも低くくなる時間も長くなる。この場合、ある期間での太陽光発電装置3における発電電力の総和(すなわち、発電電力量)が目標曲線A0(図4および図5参照)が示す発電電力量よりも大幅に低くなり、蓄電池33に蓄えられる電力が不足して、発電システム1(ごみ発電装置2および太陽光発電装置3)からの総出力電力が総目標曲線C0が示す電力よりも低くなる。
【0039】
そこで、制御部51では、太陽光発電装置3の実際の発電電力が(修正済みの)予測曲線の発電電力よりも所定値以上小さくなる場合に、補助発電機4が駆動され、図8中にて総目標曲線C0の発電電力と、曲線C2が示すごみ発電装置2および太陽光発電装置3による実際の総発電電力との差に相当する電力(すなわち、総目標曲線C0と曲線C2との間における白い領域に相当する電力量)が、補助発電機4により発電される。これにより、発電システム1では、実際の日射強度が日射強度の予測値と大きく乖離する場合であっても、補助発電機4の駆動により電力を補充することができ、電力をさらに安定して供給することが実現される。換言すると、予測曲線に比べ実際の発電電力が低下した場合、補助発電機4(非常用発電機)の電力を加えることで、安定した電力供給が可能な発電システム1における蓄電池33の容量をさらに抑えることができる。補助発電機4を使用する処理例では、太陽光発電装置3における実際の発電電力の長期的な変動の影響はごみ発電装置2により補われ、短期的な変動の影響は補助発電機4により補われ、より短期的な変動の影響は蓄電池33により補われていると捉えることができる。なお、大容量の蓄電池33を設ける場合には、発電システム1の設置コストは増大するが、蓄電池33にて常時十分な電力を蓄積することにより、補助発電機4を使用することなく、電力を安定して供給することが可能となる。
【0040】
ところで、以上に説明した処理例では、修正済みの予測曲線が、天候が理想的な晴天である場合における発電電力の変化を示す目標曲線A0(図4または図5参照)に近似した形状とされ、当該予測曲線に従って太陽光発電装置3の蓄電池33の充放電が制御されるが、電力会社から要求される出力電力の変化は太陽光発電装置3における理想的な発電電力の変化とは相違する場合がある。
【0041】
具体的には、図9に示すように、電力が最大となるピーク時刻が太陽光発電装置3における目標曲線D0のピーク時刻から遅延している出力電力の変化を示す曲線D1(すなわち、電力需要の変化を示す曲線であり、図9中にて細い実線にて示しており、以下、「需要曲線D1」という。)が予め定められる場合がある。図9の需要曲線D1では、電力が増大する時刻が目標曲線D0よりもおよそ3時間遅延しており、需要曲線D1のピーク時刻における電力は、目標曲線D0のピーク時刻における電力よりも大きくなっている。なお、上記需要曲線D1は太陽光発電装置3に対して求められる発電電力の変化を示すものであり、発電システム1の全体に対する総需要曲線は各時刻において需要曲線D1が示す電力に定常発電電力P1を加算したものとなる。
【0042】
本処理例では、大容量のナトリウム硫黄(NAS)電池が蓄電池33として用いられ、天候が理想的な晴天である場合には、目標曲線D0の発電電力が需要曲線D1の電力よりも大きくなる時刻にて、これらの電力の差に相当する電力が蓄電池33に充電され、目標曲線D0の発電電力が需要曲線D1の電力よりも小さくなる時刻にて、これらの電力の差に相当する電力が蓄電池33から放電される。図9では、間隔が広い平行斜線を付す領域の面積が蓄電池33に充電される電力量を示し、間隔が狭い平行斜線を付す領域の面積が蓄電池33から放電される電力量を示している。
【0043】
実際には、太陽光発電における発電電力は天候による日射強度に依存するため、太陽光発電装置3における発電電力の変化は、図9中にて太い実線にて示す修正済みの予測曲線D2におよそ倣ったものとなるが、各時刻における目標曲線D0の発電電力と予測曲線D2の発電電力との差に相当する電力がごみ発電装置2により追加的に発電され、一旦、太陽光発電装置3に入力される。そして、目標曲線D0の発電電力が需要曲線D1の電力よりも大きくなる時刻では蓄電池33にて(主として)充電が行われ、目標曲線D0の発電電力が需要曲線D1の電力よりも小さくなる時刻では蓄電池33にて(主として)放電が行われる。このようにして、制御部51により、需要曲線D1に従って蓄電池33の充放電が制御される。
【0044】
また、例えば、6時〜18時の間にて太陽光発電装置3にて発電電力が得られる場合に、需要曲線D1が8時〜20時の間における電力の出力を示すものであるときには、6時〜8時の間における日射強度を用いて予測曲線D2を修正し、あるいは、8時における最新の日射強度の変化の予測を用いて予測曲線を再取得し、新たな予測曲線に基づいて予定曲線が取得され、信頼性の高い当該予定曲線に従ってごみ発電装置2における発電電力の制御が行われてもよい。
【0045】
以上のように、本処理例では、太陽光発電装置3に対する需要曲線D1に従って蓄電池33の充放電を制御することにより、需要曲線D1に合わせて太陽光発電装置3からの出力電力を精度よく調整する、換言すれば、発電システム1に対する総需要曲線に合わせて発電システム1からの総出力電力を精度よく調整することができる。また、日射強度の予測精度を高めるために電力需要に合わせた電力シフト(例えば2〜3時間のシフト)とすることで、蓄電池33の容量をさらに抑えることができる。なお、蓄電池が太陽光発電装置3の外部に設けられるとともに、太陽光発電装置3およびごみ発電装置2の双方に接続されてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0047】
発電システム1では、修正済みの予測曲線に基づいてごみ発電装置2における発電電力の予定曲線が決定されるが、修正前の予測曲線が比較的緩やかな変化を示すものである場合には、修正前の予測曲線に基づいて予定曲線が決定されてもよい。また、修正前の予測曲線に基づいて生成される予定曲線が二次曲線等にて近似されて修正され、修正済みの予定曲線に従ってごみ発電装置2の発電電力が制御されてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、1日間の予測曲線および予定曲線が求められるが、これらの曲線が求められる期間は任意に決定されてよく、例えば、6時間置きに予測曲線および予定曲線が求められてもよい。このように、演算部52では、日射強度の変化の予測に基づいて、所定期間における太陽光発電装置3での発電電力の予測曲線、および、ごみ発電装置2での発電電力の予定曲線が当該期間よりも前に求められ、ごみ発電装置2における発電電力が予定曲線に従って制御されることにより、ごみ焼却施設において太陽光発電を利用しつつ電力を安定して供給することが可能となる。
【0049】
図4および図5中の目標曲線A0は、実測値に基づいて求められてもよく、また、太陽電池パネル31の設置場所や設置条件(方角、傾斜角度等)に従った演算により求められてもよい。さらに、季節によって目標曲線A0が変更されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 発電システム
2 ごみ発電装置
3 太陽光発電装置
4 補助発電機
31 太陽電池パネル
33 蓄電池
51 制御部
52 演算部
A0,D0 目標曲線
A1〜A4,D2 予測曲線
B1,C1 予定曲線
D1 需要曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却施設に設けられる発電システムであって、
ごみを焼却することにより得られるエネルギーを利用して発電を行うごみ発電装置と、
ごみ焼却施設に設けられる太陽電池パネルを用いて発電を行う太陽光発電装置と、
日射強度の変化の予測に基づいて前記太陽光発電装置における所定期間の発電電力の予測曲線を求め、前記太陽光発電装置における発電電力の目標曲線と前記発電電力の前記予測曲線との差に基づいて、前記ごみ発電装置における発電電力の予定曲線を決定する演算部と、
前記発電電力の前記予定曲線に従って前記ごみ発電装置における発電電力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電システムであって、
前記太陽光発電装置が蓄電池を備え、
前記制御部が、前記所定期間の各時刻における前記太陽光発電装置の実際の発電電力と、前記予測曲線の発電電力との差に基づいて、前記蓄電池の充放電を制御することを特徴とする発電システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発電システムであって、
前記ごみ焼却施設に補助発電機が設けられており、
前記太陽光発電装置の実際の発電電力が前記予測曲線の発電電力よりも所定値以上小さくなる場合に、前記制御部が、前記補助発電機を駆動することを特徴とする発電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の発電システムであって、
蓄電池をさらに備え、
前記所定期間が1日であり、前記目標曲線のピーク時刻からピーク時刻が遅延している出力電力の需要曲線が予め定められており、
前記制御部が、前記需要曲線に従って前記蓄電池の充放電を制御することを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−101492(P2011−101492A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254117(P2009−254117)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】