説明

白色発光型LEDランプの製造方法およびそれを用いたバックライトの製造方法並びに液晶表示装置の製造方法

【課題】紫外発光LEDを用いた白色LEDランプの製造方法において、青色、緑色、赤色発光の各蛍光体の組合せを改善することによって、高演色性と高輝度とを両立させる。
【解決手段】白色LEDランプ1の製造方法は、発光波長が360nm以上440nm以下の範囲のLEDチップ2と、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを含み、LEDチップ2からの光により励起されて白色光を発光する発光部とを具備する。青色発光蛍光体にはEu付活ハロ燐酸塩蛍光体とEu付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種、緑色発光蛍光体にはAuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体、赤色発光蛍光体にはEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体とCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体から選ばれる少なくとも1種が用いられ、前記青・赤・緑色発光蛍光体を結合させる工程を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源に発光波長が360〜440nmの発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いた白色発光型LEDランプの製造方法およびそれを用いたバックライトの製造方法並びに液晶表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは電気エネルギーを紫外光や可視光等の光に変換して放射する半導体素子であり、このようなLEDチップを例えば透明樹脂で封止したLEDランプが各種分野で使用されている。LEDチップは半導体素子であるため、長寿命でかつ信頼性が高く、光源として用いた場合に交換作業等が軽減されることから、携帯通信機器、PC周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、信号装置、各種スイッチ類、バックライト型表示板等の各種表示装置の構成部品として広く利用されるようになってきている。
【0003】
LEDランプから放射される光の色調はLEDチップの発光波長に限られるものではなく、例えばLEDチップの表面に蛍光体を塗布したり、あるいはLEDチップを封止する透明樹脂中に蛍光体を含有させることによって、青色から赤色まで使用用途に応じた可視光領域の光を得ることができる。特に、白色発光型のLEDランプは携帯通信機器の表示部のバックライトや車載用ランプ等の用途に急速に普及しており、将来的には蛍光ランプの代替品として大きく伸張することが期待されている。
【0004】
現在、普及もしくは試行されている白色発光型のLEDランプとしては、青色発光LEDと黄色発光蛍光体(YAG等)とを組合せたLEDランプと、紫外発光LEDと青色、緑色、赤色発光の各蛍光体の混合物とを組合せたLEDランプとが知られている。現時点では、前者の青色発光LEDを用いた白色LEDランプの方が後者より輝度特性等に優れることから普及している。しかし、前者は見る方向によっては黄色っぽく見えたり、また白色面に投影したときに黄色や青色のムラが現れるというような難点を有している。このため、前者の白色LEDランプは擬似白色と呼ばれることもある。白色光の質を表す平均演色指数においても、前者の白色LEDランプは70〜75の範囲にとどまっている。
【0005】
一方、後者の紫外発光LEDを用いた白色LEDランプは、輝度が前者より劣るものの、発光並びに投影光のムラが少なく、将来的には照明用途の白色ランプの主流になることが期待され、その開発が急速に進められている。このような紫外発光LEDを用いた白色LEDランプでは各色発光の蛍光体の特性に加えて、それら各蛍光体の組合せが演色性や輝度等のランプ特性に影響を及ぼすことから、青色、緑色、赤色発光の各蛍光体の選択並びに組合せに関する検討が進められている。
【0006】
例えば、非特許文献1には紫外発光LEDと、青色発光蛍光体としてEu付活ハロ燐酸塩蛍光体またはEu付活アルミン酸塩蛍光体、緑色発光蛍光体としてCuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体またはEuおよびMn付活アルミン酸塩蛍光体、赤色発光蛍光体としてEu付活酸硫化イットリウム蛍光体とを組合せた白色LEDランプが記載されている。また、特許文献1には青色発光蛍光体としてEu付活ハロ燐酸塩蛍光体またはEu付活アルミン酸塩蛍光体、緑色発光蛍光体としてEuおよびMn付活アルミン酸塩蛍光体、赤色発光蛍光体としてEu付活酸硫化ランタン蛍光体を用いることが記載されている。
【非特許文献1】三菱電線工業時報2002年7月第99号
【特許文献1】特開2000-073052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の白色LEDランプは、紫外発光LEDを用いたランプの特徴である高い演色性と発光の均一性とを備えているものの、輝度特性の点では不十分であり、さらなる改善が求められている。紫外発光LEDを用いた白色LEDランプで高演色性と高輝度とを両立させるためには、白色光のスペクトルにおいて人間の色感度のピークがある450nm近辺、560nm近辺、620nm近辺の光がバランスよく含まれていること、さらに青色、緑色、赤色発光成分の各蛍光体の発光効率がバランスよいことが必要である。
【0008】
しかしながら、従来の白色LEDランプに用いられている各蛍光体のうち、赤色発光蛍光体は波長380nm以上の紫外線または紫色光に対する発光効率が他の蛍光体に比べて劣ることから、白色LEDランプの輝度特性等を十分に高めることができないことが分かってきた。また、発光効率に劣る赤色発光蛍光体に引きずられて、青色および緑色発光蛍光体の特性も十分に発揮させることができず、これも輝度特性の劣化要因となっている。
【0009】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、紫外発光LEDを用いた白色発光型のLEDランプにおいて、青色、緑色、赤色発光の各蛍光体の組合せを改善することによって、高演色性と高輝度とを両立させた白色発光型LEDランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の白色発光型LEDランプの製造方法は、発光波長が360nm以上440nm以下の範囲の発光ダイオードと、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを含み、前記発光ダイオードからの光により励起されて白色光を発光する発光部とを具備する白色発光型LEDランプにおいて、前記青色発光蛍光体はユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体とユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなり、前記緑色発光蛍光体は金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体からなり、かつ前記赤色発光蛍光体はユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体と銅およびマンガン付活硫化亜鉛蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなり、かつ、前記青色発光蛍光体、前記緑色発光蛍光体および前記赤色発光蛍光体は予め結合剤により結合した結合蛍光体を作製する工程と、前記結合蛍光体と樹脂と混合する蛍光体樹脂混合物を作製する工程と、前記蛍光体樹脂混合物を発光ダイオードに塗布する発光部形成工程とを、具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の白色発光型LEDランプの製造方法は、緑色発光蛍光体として長波長成分をより多く含む金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体を用いているため、赤色発光蛍光体による発光成分(赤色成分)を補強することができる。これによって、紫外発光LEDを用いた白色発光型LEDランプ本来の高演色性という特徴を損なうことなく、輝度特性を向上させることができる。従って、高演色性と高輝度とを両立させた白色発光型LEDランプを提供することが可能となる。また、本発明の白色発光型LEDランプは発光色度差のバラツキが小さいことから、LEDランプを複数個用いるバックライトおよびそれを用いた液晶表示装置に適用したとしても面光源としての色度バラツキを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて述べるが、それらの図面は図解のみの目的のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定するものではない。
【0013】
図1は本発明の一実施形態による白色発光型LEDランプ(白色LEDランプ)の構成を模式的に示す断面図である。同図に示す白色LEDランプ1は、光源としてLEDチップ2を有している。このLEDチップ2はリード端子3を有する配線基板4上に接合されており、LEDチップ2とリード端子3とはボンディングワイヤ5により電気的に接続されている。LEDチップ2には波長が360〜440nmの範囲の紫外線または紫色光を放射する紫外発光LEDが用いられる。このような紫外発光タイプのLEDチップ2としては、発光層として窒化物系化合物半導体層を有するLEDチップ等が例示される。
【0014】
配線基板4上には円筒状の樹脂枠6が設けられており、その内壁面には反射層7が形成されている。樹脂枠6内には透明樹脂8が充填されており、この透明樹脂8中にLEDチップ2が埋め込まれている。LEDチップ2が埋め込まれた透明樹脂8は、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを含む蛍光体(三色蛍光体)9を含有している。透明樹脂8中に分散させた三色蛍光体9は、LEDチップ2から放射される紫外線または紫色光により励起されて白色光を発光するものである。
【0015】
すなわち、白色LEDランプ1に印加された電気エネルギーはLEDチップ2で紫外光や紫色光に変換され、それらの光は透明樹脂8中に分散された三色蛍光体9でより長波長の光に変換される。そして、透明樹脂8中に含有させた三色蛍光体9に基づいて白色の光がLEDランプ1から放出される。三色蛍光体9を含有する透明樹脂8は発光部として機能するものであり、LEDチップ2の発光方向前方に配置されている。このような発光部と光源としてのLEDチップ2とによって、白色LEDランプ(白色発光ランプ)1が構成されている。なお、三色蛍光体9が含有される透明樹脂8には、例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0016】
三色蛍光体9を構成する青色、緑色、赤色発光の各蛍光体には、LEDチップ2から放射される波長360〜440nmの範囲の紫外線または紫色光を効率よく吸収する蛍光体を使用することが好ましい。これら各色発光の蛍光体のうち、青色発光蛍光体には紫外線や紫色光の吸収効率に優れるユーロピウム(Eu)付活ハロ燐酸塩蛍光体、およびユーロピウム(Eu)付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種が用いられる。
【0017】
Eu付活ハロ燐酸塩蛍光体としては、
一般式:(M11-c,Euc10(PO46・Cl2 …(1)
(式中、M1はMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、cは0.005≦c≦0.03を満足する数である)
で表される組成を有する蛍光体が例示される。Eu付活アルミン酸塩蛍光体としては、
一般式:m(M21-d,Eud)O・nAl23 …(2)
(式中、M2はMg、Ca、Sr、BaおよびZnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、d、mおよびnは0.05≦d≦0.3、0<m、0<n、0.2≦m/n≦1.5を満足する数である)
で表される組成を有する蛍光体が例示される。
【0018】
また、赤色発光蛍光体にはユーロピウム(Eu)およびサマリウム(Sm)付活酸硫化ランタン蛍光体、および銅(Cu)およびマンガン(Mn)付活硫化亜鉛蛍光体から選ばれる少なくとも1種が用いられる。EuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体としては、
一般式:(La1-a-b,Eua,Smb22S …(3)
(式中、aおよびbは0.01≦a≦0.15、0.0001≦b≦0.03を満足する数である)
で表される組成を有する蛍光体が例示される。また、CuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体としては、
一般式:ZnS:Cuv,Mnw …(4)
(式中、vおよびwは0.0002≦v≦0.001、0.005≦w≦0.014を満足する数である)
で表される組成を有する蛍光体が例示される。
【0019】
(3)式および(4)式で表される赤色発光蛍光体は、いずれも紫外発光タイプのLEDチップ2で発光させる赤色発光成分として利用することが可能であるものの、赤色発光成分の発光特性(発光強度等)を考慮すると、少なくともEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体を赤色発光成分として使用することが好ましい。また、EuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体単独では赤色発光成分が不足することから、CuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体を併用することが有効である。
【0020】
上述した赤色発光蛍光体は波長360〜440nmの範囲の紫外線または紫色光に対する発光効率が必ずしも十分とは言えない。EuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体とCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体を併用することで赤色発光成分が補強されるものの、青色および緑色発光蛍光体に比べると発光効率等が劣る。そこで、この実施形態の白色LEDランプ1においては、従来の緑色発光成分に比べて長波長成分をより多く含む緑色発光蛍光体を用いている。具体的には、緑色発光蛍光体に金(Au)およびアルミニウム(Al)付活硫化亜鉛蛍光体を用いる。
【0021】
AuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体としては、例えば
一般式:ZnS:Aux,Aly …(5)
(式中、xおよびyは0.0002≦x≦0.0015、0.0001≦y≦0.0012を満足する数である)
で表される組成を有する蛍光体が用いられる。(5)式におけるxの値(1モルのZnSに対するAuのモル比)が0.0002未満であると発光色度が青色方向にずれて望ましい色が得られなくなる。一方、xの値が0.0015を超えると蛍光体の体色が悪くなり輝度が低下する。また、(5)式におけるyの値(1モルのZnSに対するAlのモル比)が0.0001未満であるとAuが硫化亜鉛の中に入らなくなり、これにより輝度が低下する。一方、yの値が0.0012を超えると蛍光体の体色が悪くなり輝度が低下する。
【0022】
図2にAuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Au,Al蛍光体)の発光スペクトル(a)を、従来のCuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Cu,Al蛍光体)の発光スペクトル(b)とEuおよびMn付活アルミン酸塩蛍光体(3(Ba,Mg,Eu,Mn)O・8Al23蛍光体)の発光スペクトル(c)と比較して示す。図2から明らかなように、AuとAlで共付活した硫化亜鉛蛍光体は、従来のCuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体やEuおよびMn付活アルミン酸塩蛍光体に比べて長波長成分を多く含んでおり、これによって赤色発光成分を補強することが可能となる。
【0023】
上述した青色、緑色および赤色発光蛍光体を含む三色蛍光体9は、450nm近辺、560nm近辺、620nm近辺の光をバランスよく含んでいることから、白色光の演色性を高めることができる。その上で、従来の緑色発光成分に比べて長波長成分をより多く含むAuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体(ZnS:Au,Al蛍光体)からなる緑色発光蛍光体を用いているため、赤色発光蛍光体による発光不足等を補強することができる。これによって、青色、緑色、赤色の各発光成分の輝度バランスが向上することから、紫外発光LEDチップ2を用いた白色LEDランプ1の輝度特性を高めることができる。従って、高演色性と高輝度とを両立させた白色LEDランプ1を実現することが可能となる。
【0024】
上述した緑色発光蛍光体(ZnS:Au,Al蛍光体)による白色LEDランプ1の輝度特性の向上効果は、赤色発光蛍光体としてEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体、CuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体のいずれを用いた場合においても得ることができる。さらに、赤色発光蛍光体自体による輝度特性の改善効果を得る上で、赤色発光蛍光体は前述したようにEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体とCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体とを併用することが好ましい。これによって、赤色発光成分がさらに補強されることから、白色LEDランプ1の輝度特性をより一層高めることが可能となる。これら赤色発光蛍光体の配合比率は目的とする白色光の色温度等にもよるが、例えばEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体とCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体との質量比を3:7〜7:3の範囲とすることが好ましい。
【0025】
図3は上述した青色、緑色および赤色発光蛍光体を含む三色蛍光体9を用いた白色LEDランプ1の発光スペクトルの一例を示している。図3において、Aの発光スペクトルは青色発光成分としてEu付活ハロ燐酸塩蛍光体、緑色発光成分としてAuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体、赤色発光成分としてEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体を用いた白色LEDランプ1の発光スペクトルであり、Bの発光スペクトルはAの蛍光体の組合せに赤色発光成分としてCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体を加えた白色LEDランプ1の発光スペクトルである。
【0026】
上記した蛍光体の組合せA、Bのいずれにおいても、電流値20mA、ピーク値400nmのLEDチップからの紫外線を(x=0.300〜0.350,y=0.300〜0.350)の色度を有する白色光に変換したとき、青色発光成分のピーク値が450nm、緑色発光成分のピーク値が545nm、赤色発光成分のピーク値が623nmにそれぞれあり、平均演色指数で90以上、輝度で300mcd以上の特性値が得られている。さらに、AとBの発光スペクトルを比較すると、発光スペクトルBの方が580nm付近およびそれ以上の領域における発光成分が増加していることが分かる。これは赤色発光成分としてEuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体とCuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体とを併用したことに基づくものであり、これによって白色LEDランプ1の輝度特性をより一層高めることが可能となる。
【0027】
また、本発明では上述した青色、緑色および赤色発光蛍光体は、透明樹脂8中における各色発光蛍光体の分散状態の均一性を高める上で、予め無機結合剤や有機結合剤等の結合剤で結合させた状態で透明樹脂8中に分散させることが好ましい。無機結合剤としては微粉化したアルカリ土類ホウ酸塩等を用いることができ、また有機結合剤としてはアクリル樹脂やシリコーン樹脂等の透明樹脂を用いることができる。無機結合剤や有機結合剤等を用いて一体化処理を施すことによって、各蛍光体がランダムに結び付いて大粒径化する。これによって、透明樹脂8中での各蛍光体の沈降速度の差等に基づく分散状態の不均一性等を解消することができ、白色光の再現性や発光色度の均一性(色度差のバラツキを小さくする)等を高めることが可能となる。
【0028】
さらに、白色LEDランプ1の輝度特性には各蛍光体の粒径も影響する。このような点から、青色、緑色および赤色発光蛍光体はそれらの混合物としての平均粒径が7μm以上であることが好ましい。なお、ここで言う平均粒径は粒度分布の中位値(50%値)を示すものである。三色蛍光体9の平均粒径を7μm以上とすることによって、白色LEDランプ1の輝度をさらに高めることが可能となる。三色蛍光体(混合蛍光体)9の平均粒径は8μm以上とすることがより好ましい。なお、三色蛍光体9の平均粒径に基づく輝度の向上効果は、上述した一体化処理(結合工程)を施した蛍光体に対しても有効である。
また、前記青色発光蛍光体、前記緑色発光蛍光体および前記赤色発光蛍光体は予め結合剤により結合した結合蛍光体を作製する工程を行った後、前記結合蛍光体と樹脂と混合する蛍光体樹脂混合物を作製する工程と、前記蛍光体樹脂混合物を発光ダイオードに塗布する発光部形成工程とを、具備するものである。
このような本発明の白色LEDランプは個々のLED間で色度バラツキの小さい均一なLEDを得ることができる。そのため、例えば、液晶表示装置のバックライトのように複数個のLEDを用いる分野に特に有効である。バックライトとしては直下型、サイドライト型のいずれのタイプにも有効であり、特に10個以上並べて使用するものに効果的である。従って、本発明の製造方法によれば、色度バラツキの小さい均一な白色LEDランプを製造することができる。また、バックライトを製造する際は、複数個の白色LEDランプを所定の間隔に並べてLEDモジュールを構成することが好ましい。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0030】
実施例1
まず、青色発光蛍光体としてEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr0.59,Ca0.01,Ba0.39,Eu0.0110(PO46・Cl2)蛍光体、緑色発光蛍光体としてAuおよびAl付活硫化亜鉛(ZnS:Au0.0008,Al0.001)蛍光体、赤色発光蛍光体としてEuおよびSm付活酸硫化ランタン((La0.94,Eu0.058,Sm0.00222S)蛍光体を用意した。
【0031】
上述した青色発光蛍光体を1.74g、緑色発光蛍光体を2.17g、赤色発光蛍光体を2.33g計量し、以下に示す結合工程により各色の蛍光体を結合させたものである。なお、各蛍光体の混合比はLEDランプのCIE色度値(x,y)がx=0.30〜0.31、y=0.30〜0.31の範囲に入るように設定したものである。以下の実施例2〜10および比較例1も同様である。また、各蛍光体の混合物としての平均粒径(分布中位径)は9.5μmである。このような混合蛍光体を用いて、図1に示したLEDランプ1を作製した。結合工程は、各色発光の蛍光体を水に投入して懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながらホウ酸バリウム・カルシウム(3(Ba,Ca)O・B)を各蛍光体の合計量に対して0.1質量%の割合で添加した。撹拌を30分間継続した後に停止し、蛍光体を沈降させた。これをろ過してベーキングした後に200メッシュのナイロン篩にかけて、結合させた3色混合蛍光体(結合蛍光体)を得た。
【0032】
LEDランプ1の作製工程は、まず透明樹脂8を構成するシリコーン樹脂に、混合蛍光体を30質量%の割合で添加、混合してスラリーとした。このスラリーを発光ピーク波長が400nm、形状が300μm四方の紫外発光LEDチップ2上に滴下し、140℃でシリコーン樹脂を硬化させることによって、混合蛍光体(青色、緑色および赤色の混合蛍光体)を含有するシリコーン樹脂で紫外発光LEDチップ2を封止した。このようにして作製したLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0033】
実施例2
上記した実施例1と同一および同量の各蛍光体を用意し、これらを以下に示す方法で結合させた。結合工程は、まず各蛍光体にアクリル樹脂エマルジョンを蛍光体に対して固形分で0.1質量%の割合で添加し、これらを混合した。次いで、この混合物を120℃で乾燥させた後、ナイロンメッシュにかけて一体化蛍光体を得た。そして、このような一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0034】
実施例3
上記した実施例1と同一の各蛍光体に加えて、赤色発光蛍光体としてCuおよびMn付活硫化亜鉛(ZnS:Cu0.0005,Mn0.008)蛍光体を用意した。Eu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩を2.10g、AuおよびAl付活硫化亜鉛蛍光体を2.22g、EuおよびSm付活酸硫化ランタン蛍光体を2.10g、CuおよびMn付活硫化亜鉛蛍光体を0.82g計量し、これらを実施例1と同様にして混合、結合させた。そして、このような結合蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0035】
実施例4〜5
表1に示す青色、緑色および赤色発光蛍光体の組合せを適用する以外は、それぞれ実施例1または実施例2と同様にして、結合蛍光体を作製した。これら各結合蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプをそれぞれ作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0036】
比較例1
青色発光蛍光体としてEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr,Ca,Ba,Eu)10(PO46・Cl2)蛍光体、緑色発光蛍光体としてEuおよびMn付活アルカリ土類アルミン酸塩(3(Ba,Mg,Eu,Mn)O・8Al23)蛍光体、赤色発光蛍光体としてEu付活酸硫化ランタン((La,Eu)22S)蛍光体を用意した。上述した青色発光蛍光体を1.44g、緑色発光蛍光体を1.49g、赤色発光蛍光体を3.32g計量し、これらを三本ローラを用いて混合した。このような混合蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。なお、比較例1では結合工程は行わなかった。
【0037】
比較例2
青色発光蛍光体としてEu付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr,Ca,Ba,Eu)10(PO46・Cl2)蛍光体、緑色発光蛍光体としてEu付活アルカリ土類珪酸塩((Ba,Sr,Ca,Eu)2SiO4)蛍光体、赤色発光蛍光体としてEu付活酸硫化ランタン((La,Eu)22S)蛍光体を用意した。上述した青色発光蛍光体を2.71g、緑色発光蛍光体を0.45g、赤色発光蛍光体を1.85g計量し、これらを三本ローラを用いて混合した。このような混合蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。なお、比較例2では結合工程は行わなかった。
【0038】
【表1】

【0039】
上述した実施例1〜5および比較例1〜2の各白色LEDランプに20mAの電流を流して点灯させ、各白色LEDランプの発光輝度、平均演色指数、色度を測定した。これらの測定結果を表2に示す。なお、各白色LEDランプの発光特性は、Instrument System社製CAS 140B COMPACT ARRAY SPECTROMETERおよび大塚電子社製MCPD装置を用いて測定した。
【0040】
【表2】

【0041】
表2から明らかなように、実施例1〜5による各白色LEDランプは演色性に優れることに加えて、比較例1および比較例2に比べて輝度特性に優れることが分かる。従って、紫外発光LEDを用いた白色LEDランプにおいて、高演色性と高輝度とを両立させることが可能となる。
次に、実施例1〜5の白色発光LEDランプの色度バラツキを測定した。色度は各実施例にかかる白色LEDを各20個用意し、各LEDの真上で色度(CIE色度座標)を測定し、x座標、y座標の最大値と最小値の差(Δx、Δy)を測定した。なお、参考例として結合工程を行わない以外は実施例1と同様のものを用意した。その結果を表3に示す。

【0042】
【表3】

【0043】
表3から分かる通り、本実施例にかかる白色LEDは色度バラツキが小さいことが分かる。このような白色LEDランプは、携帯通信機器、PC周辺機器、OA機器、家庭用電気機器、各種スイッチ類、バックライト型表示板等の各種表示装置の構成部品、さらには一般照明装置等として有効に利用することができる。
特に、色度バラツキが小さいことから白色LEDランプを複数個用いるバックライトに用いたとしても均一な白色を有する面光源を得ることができる。従って、それを用いた液晶表示装置の特性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態による白色LEDランプの構成を示す断面図である。
【図2】本発明に適用される緑色発光蛍光体の発光スペクトルの一例を従来の緑色発光蛍光体と比較して示す図である。
【図3】本発明に適用される三色蛍光体の発光スペクトルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1…白色LEDランプ、2…LEDチップ、6…樹脂枠、7…反射層、8…透明樹脂、9…三色蛍光体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光波長が360nm以上440nm以下の範囲の発光ダイオードと、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体とを含み、前記発光ダイオードからの光により励起されて白色光を発光する発光部とを具備する白色発光型LEDランプの製造方法において、
前記青色発光蛍光体はユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体とユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなり、前記緑色発光蛍光体は金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体からなり、かつ前記赤色発光蛍光体はユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体と銅およびマンガン付活硫化亜鉛蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなり、
かつ、前記青色発光蛍光体、前記緑色発光蛍光体および前記赤色発光蛍光体は予め結合剤により結合した結合蛍光体を作製する工程と、
前記結合蛍光体と樹脂と混合する蛍光体樹脂混合物を作製する工程と、
前記蛍光体樹脂混合物を発光ダイオードに塗布する発光部形成工程とを、
具備することを特徴とする白色発光型LEDランプの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の白色発光型LEDランプの製造方法において、
前記緑色発光蛍光体は、
一般式:ZnS:Aux,Aly
(式中、xおよびyは0.0002≦x≦0.0015、0.0001≦y≦0.0012を満足する数である)
で表される組成を有する金およびアルミニウム付活硫化亜鉛蛍光体からなることを特徴とする白色発光型LEDランプの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の白色発光型LEDランプの製造方法において、
前記赤色発光蛍光体は、
一般式:(La1-a-b,Eua,Smb22
(式中、aおよびbは0.01≦a≦0.15、0.0001≦b≦0.03を満足する数である)
で表される組成を有するユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体、および
一般式:ZnS:Cuv,Mnw
(式中、vおよびwは0.0002≦v≦0.001、0.005≦w≦0.014を満足する数である)
で表される組成を有する銅およびマンガン付活硫化亜鉛蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする白色発光型LEDランプの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の白色発光型LEDランプの製造方法において、
前記赤色発光蛍光体は前記ユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン蛍光体と前記銅およびマンガン付活硫化亜鉛蛍光体を共に含むことを特徴とする白色発光型LEDランプの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の白色発光型LEDランプの製造方法において、
前記青色発光蛍光体は、
一般式:(M11-c,Euc10(PO46・Cl2
(式中、M1はMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、cは0.005≦c≦0.03を満足する数である)
で表される組成を有するユーロピウム付活ハロ燐酸塩蛍光体、および
一般式:m(M21-d,Eud)O・nAl23
(式中、M2はMg、Ca、Sr、BaおよびZnから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、d、mおよびnは0.05≦d≦0.3、0<m、0<n、0.2≦m/n≦1.5を満足する数である)
で表される組成を有するユーロピウム付活アルミン酸塩蛍光体から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする白色発光型LEDランプの製造方法。
【請求項6】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の白色発光型LEDランプを複数個用いたことを特徴とするバックライトの製造方法。
【請求項7】
前記請求項6のバックライトを用いたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−91958(P2007−91958A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285622(P2005−285622)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】