説明

白金不含有電極触媒材料

酸素還元用の耐アルコール性カソードおよび各種燃料分子の酸化用のアノードの両方を作成する好ましい利用のための、白金を含有しない、新しい金属ベースの触媒材料、および前記触媒を作成する方法を提供する。燃料電池のアノードおよびカソードを作成する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、白金以外の遷移金属をベースとする担持触媒に、および燃料電池でのその使用に関し、それらは、燃料電池内のアノードおよびカソード、改質触媒、酸化触媒、水性ガスシフト触媒、空気電池、酸素センサおよび酸素再結合触媒などの様々な用途に好適である。特に本発明は、触媒酸素還元用の耐アルコール性カソード材料もしくは燃料分子の触媒酸化用のアノード材料として利用するために、特に設計された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、反応の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する電気化学デバイスである。そのような電池において、燃料(一般に水素、アルコールまたは飽和炭化水素)および酸化剤(一般に空気からの酸素)が電極に連続供給にて供給される。理論的に、燃料電池は、燃料および酸化剤が電極に供給される限り、電気エネルギーを生成する。実際に、成分の分解または異常は、燃料電池の実際の作動寿命を制限する。
【0003】
各種の燃料電池が異なる開発段階にある;特に本発明で説明および請求された種類の電極触媒が使用できる燃料電池を考えると、例として以下を挙げることができる:Hによって燃料供給されるポリマー電極燃料電池(PEFC)、アルコールによって(直接アルコール燃料電池、DAFC)、あるいは他の水素含有液体または気体性燃料(アルコール、グリコール、アルデヒド、飽和炭化水素、カルボン酸など)によって燃料供給される、直接酸化燃料電池(DOFC)、リン酸燃料電池(PAFC)および溶融カーボネート燃料電池(MCFC)。
【0004】
上述した種類の燃料電池の必須構成要素は、適切な導体に結合された多孔性炭素材料に担持された一般に金属または金属粒子を含有する電極である。酸素還元のために通常利用される触媒は、数例を挙げると、白金、ニッケル、コバルト、銀などの遷移金属を含む。燃料(たとえばPEFCのHおよび直接メタノール燃料電池(DMFC)のメタノール)を酸化するために通常利用される触媒は、白金、白金−ルテニウム、白金−ルテニウム−モリブデンおよび白金−スズ混合物である。許容される電池電位(>0.5V)を生じる燃料電池はすべて、アノードに白金を単独でまたは他の金属、好ましくはルテニウムと組合せて含有するのに対して、カソードは一般に白金によって形成されるが、他の金属も同様に利用できる。一般的に、好ましく白金を存在させると、高い装填量となり一般に輸送、携帯電話および電子デバイス用の燃料電池の大量生産にとって主な経済上の制限となる。確かに、高価格な白金は(現在、約25〜30米ドル/g)は、燃料電池によって産生された電力の価格を、他の発電代替手段の価格よりもはるかに高くすることに寄与している。その上、DMFC内の白金ベースカソードは、メタノールクロスオーバーに対して感受性が高い。従来の発電方法と比較した燃料電池の高い効率と共に、その環境的に良好な特性を考慮すると、白金を必要としない燃料電池を開発することが非常に望ましい。
【0005】
出願人の知る限りでは、白金は、現在利用可能なDOFCまたはPEFC用のアノードでの必須成分である。
【0006】
カソードが触媒成分として、Co(salen)化合物またはこの化合物を含有するポリマーを含有するメタノール/空気燃料電池について述べられている(例えば特許文献1参照)。請求された電気化学電池でのメタノールの酸化のための触媒として、白金なしで済ますことは不可能である。
【0007】
少なくとも2つの異なる遷移金属含有窒素キレートを共に混合し、熱処理することによって得られた、酸素還元用の耐メタノール性カソードの合成が説明されている(例えば特許文献2参照)。窒素キレートは金属ポルフィリンを含み、好ましい遷移金属は、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、ルテニウム、バナジウムおよび亜鉛である。
【0008】
酢酸コバルトおよびポリアクリロニトリルの混合物を含む燃料電池用触媒カソードが述べられている(例えば特許文献3参照)。
【0009】
熱分解金属−ヘテロ炭素−窒素材料によって形成された電極、特にカソードを作成する方法について述べられており、ここで金属は、コバルト、ニッケル、鉄、銅、バナジウム、クロム、およびマンガンおよびその混合物である(例えば特許文献4参照)。ポリマーは、アルカリ触媒の存在下でアミン化合物とホルムアルデヒドまたは重合ホルムアルデヒドを反応させることによって得られる。インサイチューで単離または生成されたポリマーを炭素粒子および金属塩と反応させると、ゲルの形の重合生成物が与えられ、これを800℃にて1時間焼成する。得られた粉末にバインダーを混合し、電極の作成に使用する。金属ドーパントとは無関係に、これらのカソードに供給された比出力は、低い電流密度において数十mW/cmより成る。
【0010】
鉄フタロシアニンをベースとする、燃料電池用の白金不含有カソードの作成を報告されている(例えば特許文献5参照)。
【0011】
ポリマー、一般にポリアクリレートまたはポリメタクリレート、および一方が鉄、コバルト、ニッケルおよびクロムであり、もう一方の金属が鉄、銀、亜鉛、白金、ジルコニウム、またはその混合物である、少なくとも2つの金属を含むマトリクスによって構成されたFischer−Tropsch触媒について述べられている(例えば特許文献6参照)。
【特許文献1】米国特許第4828941号公報
【特許文献2】米国特許第6245707号公報
【特許文献3】米国特許第5358803号公報
【特許文献4】米国特許第5240893号公報
【特許文献5】ドイツ特許第2549083号公報
【特許文献6】国際公開公報第0196264号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、酸素還元用の耐アルコール性カソードおよび各種燃料分子の酸化用のアノードの両方を作成する好ましい利用のための、白金を含有しない、新しい金属ベースの触媒材料、および前記触媒を作成する方法を提供することにある。燃料電池のアノードおよびカソードを作成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人は、4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドの縮合によって形成された新たなテンプレートポリマーが、遷移金属塩を配位結合させ、適切な還元剤による処置および担持材料(多孔性炭素、グらファイト、金属粉末など)への固定化の後に、電気化学電池用の非常に高い効率の、たとえば周囲温度および圧力にて、メタノールを直接燃料供給するときは160mW/cmもの、Hを燃料供給するときには300mW/cmもの電力を産生することができる触媒を生じること現在までにを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第一の実施形態において、本発明はしたがって、白金塩以外の金属塩の配位に適した窒素−酸素−炭素ポリマー(以下、Pで示す)に関する。
【0015】
窒素−酸素−炭素ポリマーについての本発明により、溶媒としての水/アルコール混合物中で、塩基(たとえばNaOH)もしくは酸(たとえばHCl)触媒の存在下での、(スキームIによる)メチロール中間化合物を生成するのに十分な温度における、4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって得られるポリマーが対象とされている。
【0016】
4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールでは、本発明により、式(A)の化合物が対象とされている:
【化4】

式中、Rは:水素および好ましくは脂肪族で、1から10個までの炭素原子を有し、おそらくハロゲン化された炭化水素ラジカル、さらに好ましくはメチルまたはエチルから成る群より選択される。
【0017】
およびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アシル、エステル、カルボン酸、ホルミル、ニトリル、スルホン酸、1から15個までの炭素原子を有し、場合によりハロゲンによって官能基された、または相互に結合して、フェニル環を有する1個以上の縮合環を形成する直鎖または分岐アルキルあるいはアリール基、およびニトロ基から成る群より選択される、優先的な電子求引基を示す。
【0018】
本発明による3,5−ジ置換フェノールでは、式(B)の化合物が対象とされる:
【化5】

式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、エーテル、アミン、1から15個までの炭素原子を有するアリールならびに直鎖および分岐アルキル基から成る群より選択される、電子供与基を示す。
【0019】
本発明によるアシルは、基COR’(式中、R’は好ましくはC1−10アルキルまたはアリールである)を意味し、エステルは、基COOR’(式中、R’は上で定義した通りである)を意味し、エーテルは、基OR’(式中、R’は上で定義した通りである)を意味し、アミンは、基NR”R”’(式中、R”およびR”’は同じであるか、または相互に異なっており、H、C1−10アルキル、アリールである);上で報告したすべての定義において、アリールは好ましくはフェニル、ナフチルおよびより高次の相同物を意味する。
【0020】
ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドの間では、第二のほうが好ましい。
【0021】
窒素−酸素−炭素ポリマーPは、以下で見られるが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフランなどの極性有機溶媒に一般に溶解性である、赤レンガ色の固体として得られる。
【0022】
Pの最もよくある構造は、フェノール単位が、ポリマー自体の化学物理特性の調節に寄与する4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオール単位によって置換された、フェノール性樹脂(Bakelite)の構造に似ている。2つのフェノール誘導体(A)および(B)はどちらも、ホルムアルデヒドと反応して巨大分子構造を生成することが可能であるため、Pのさらなる調節は、その初期モル比(A/B)を変更することによって実現できる;好ましくは、本発明によるそのような初期モル比a/bは、0.5〜2より成り、さらに好ましくは0.7である。
【0023】
本発明によるポリマーは、以下の式(C)によっても表すことができる:
【化6】

式中、yは2から120まで変化可能であり、xは1〜2で変化可能であり、nは1〜3で変化可能であり、R、R、R、RおよびRは上で定義した通りである。
【0024】
当業者が上で報告した式を見て理解できるように、本発明によるポリマーPは、金属中心をキレート化方式で優先的に結合するために利用可能な窒素および酸素原子の両方を有する。PのIRおよびNMRスペクトルは、NHおよびOH基両方の存在を明白に示している。P材料は、空気中で150℃にて数時間、分解なしで乾燥させることができる。数平均分子量は、実験条件を適正に変化させることによって、約1000〜約50000の広い範囲で調節することができる。
【0025】
生成の好ましい方法により、発明のポリマーPは、溶媒としての水/アルコール混合物中で、塩基(たとえばNaOH)もしくは酸(たとえばHCl)触媒の存在下での、(以下のスキームIによる)メチロール中間化合物を生成するのに十分な温度における、4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって得られる:
【化7】

式中、R、R、R、RおよびRは上で定義した通りである。
【0026】
4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオール試薬は、適切な4−アシル/ホルミル−ベンゼン−1,3−ジオールと、2,4−ジ置換フェニルヒドラジンとの縮合によって合成される。
【0027】
ポリマーPは、上述の置換基を有する4−アシル/ホルミル−ベンゼン−1,3−ジオール、2,4−ジ置換フェニルヒドラジン、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを独立した成分として使用する、ワンポットまたはカスケード手順によっても得られる。
【0028】
反応温度は好ましくは、約20〜約150℃より、pH範囲は、約1〜約14より成る。
【0029】
第二の実施形態により、本発明は、上述したようなポリマーおよび金属塩より成る錯体に関する。
【0030】
実際に、Pの優れた連結特性は、多様な金属塩、好ましくは遷移金属塩、そしてさらに好ましくは鉄−、コバルト−およびニッケル−カルボキシラート、−ハライド、−アルコラート、−アセチルアセトナート、−ホルメート、−オキサラート、−マロナート、および類似有機塩およびその混合物の安定な錯化を可能にする。
【0031】
カーボネート、オキシドおよびバイカーボネートなどの無機塩、およびそれらの混合物も、無機化学で既知であることに従って、配位錯体を形成するために、反応環境においてそれらがポリマーPと相互作用することができるという条件で、目的に適している。
【0032】
Fe−、Co−およびNi−アセテート(およびその混合物)は、特に好ましい。
【0033】
本発明による錯体は、Pと、水または水/アルコールに優先的に溶解させた金属塩または金属塩の混合物、さらに好ましくはニッケル(II)、鉄(II)およびコバルト(II)塩との懸濁物を攪拌することによって得られる。反応は、金属塩がPに強力に結合し、分子前駆体の酸化状態を維持する物質を生成する。以下P−M(M=主基または遷移金属)として示す、得られた金属ドープ物質は、非常に安定である:それらは、結合した金属塩を失うことなく、沸騰水で数回洗浄できる。
【0034】
上述した好ましい手順に従って、前記金属ドープ材料P−Mにおける全体の濃度は、0.5〜10重量%の範囲で適切に変化させることができる。
【0035】
とりわけ、望ましい比でのPと2つの金属塩との反応または望ましい比でのPとn金属塩との反応は、添加した金属の元の比が完全に維持されているP−M材料を与える。したがって、化学量論比1:1:1での、Pとたとえば、Fe(OAc)、Ni(OAc)およびCo(OAc)(OAc=アセテート)との反応は、鉄(II)、ニッケル(II)およびコバルト(II)を1:1:1のモル比で含有するP−M材料を与えるであろう。
【0036】
さらなる実施形態により、本出願は、上述のP−M材料から得られた触媒、およびそのような触媒を適切な導電性担体と併せて含む燃料電池用の電極に関する。本発明はさらに、本発明による電極を含む燃料電池にも関する。
【0037】
本発明の触媒は、白金以外の金属、さらに好ましくはニッケル、コバルト、鉄およびその混合物を含有し、酸素の還元はもちろんのこと、各種の気体および液体基質(H、メタノール、エチレングリコールおよびより高次のグリコール、ガソリン、ホルムアルデヒド、ヒドラジン数例を挙げると)の酸化も、予想以上に触媒できる。出願人は、これらの触媒が各種の燃料電池用の効率的な電極を形成することも見出している。特に出願人は驚くべきことに、アノードが、単独での、またはコバルトおよび鉄との二元および三元組合せでの、ニッケルの存在を要求するのに対して、好ましい方法においては、カソードがニッケルまたはコバルトを単独で含有することを見出した。その上、本発明のカソードは、アルコールクロスオーバーに対して完全に耐性があり、このことは白金ベースのDAFCよりも高いアルコール濃度(体積で最大50%)の使用を可能にする。
【0038】
本発明の触媒を生成するために、P−M材料を還元剤によって、Hを含む固体状態で、もしくは流体溶液系で処理する。したがってP−M材料の固体サンプルを、溶媒、優先的に水/アルコール混合物に分散させ、次に、還元剤の水溶液、優先的にヒドラジンの水溶液、さらに好ましくは−10℃〜30℃の温度にて、テトラヒドロホウ酸塩[Y]BH(式中、ごく数例を挙げると、Yは、Li、Na、Kなどのアルキル金属カチオン、またはテトラアルキルアンモニウム(NR、およびビス(トリフェニルホスホルアニリデン)アンモニウム(PPN)などの有機カチオンである)の溶液によって処理する。
【0039】
本発明の触媒を生成するための別のプロセスにより、P−M材料の固体サンプルを500〜1000℃の適切な温度、優先的に800℃にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下にて約2時間焼成する。
【0040】
特に、図1に図式的に例示した燃料電池用のアノードを形成するための、本発明の触媒を作成する好ましい方法において、P−M材料を多孔性炭素担持材料(Vulkan XC−72、活性炭RBDA、スタンダードR−5000、NSM−III、Ketjen blackおよびRaven−1020、グラファイトなど)または他の導電性担持材料、たとえば微粉末銀、ニッケルもしくはその他などに、固体状態で、もしくは流体溶液系で、還元剤による処理前に予備的に担持させる。金属中心の還元は、ヘテロ炭素担持金属粒子(HC−P−M)の形成と共に起こり、ここでMは、白金以外の単一金属または金属混合物によって構成される。
【0041】
燃料電池用のアノードを作成する好ましい方法において、固体P−M材料は、H流を用いて、約350〜400℃にて約1〜2時間処理する。
【0042】
金属塩に対するPの優れた親和性により、前記ヘテロ炭素担持触媒HC−P−Mは、P、金属塩または別の金属の1を超える塩、および炭素担体を適切な溶媒内で混合することによって、ワンポットまたはカスケード手順でも調製でき、得られた混合物はごく数例を挙げると、ヒドラジンまたはテトラヒドロホウ酸塩などの還元剤によって処理する。特に燃料電池用のカソードを形成するための、本発明の触媒HC−P−Mを作成する好ましい方法において、P−M材料を多孔性炭素担持材料(Vulkan XC−72、活性炭RBDA、スタンダードR−5000、NSM−III、Ketjen blackおよびRaven−1020、グラファイトなど)もしくは他の導電性担持材料、たとえば微粉末銀、ニッケルおよびその他などに、還元剤による処理前に、500℃〜1000℃の適切な温度、優先的に800℃にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下にて約2時間、予備的に担持させる。
【0043】
本発明の触媒からアノードおよびカソードの両方を作成するための一般手順は、以下の通りである:
HC−P−Mの一部を水/アルコールの1:1混合物中で、室温にて激しく攪拌しながら懸濁させる。この懸濁物に攪拌しながらノンウェット剤、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(60重量%水分散物、Aldrich)(HC−P−Mに対して、約20重量%)を添加する。激しい攪拌を約10分間維持して、凝集物質を与える。反応容器を、ゴム状物質が形成されるまで超音波処理して、ゴム状物質をデカンテーションによって分離する。この物質をカーボン紙、焼成グラファイト、または金属ネット(鋼鉄、ニッケルなど)のいずれかの上に延伸し、約100Kg/cmで加圧する。そのように作成された電極を不活性雰囲気下で(N、Ar)350〜400℃にて焼成する。
【0044】
本発明はさらに以下の実施例によって説明するが、実施例は純粋に例示目的で提供されており、本発明の全体の範囲自体を制限するものではない。
【0045】
ポリマーPを作成する3つの好ましい手順を、実施例1、2および3で説明する。
【実施例1】
【0046】
水200mL中に細かく分散された4−{1−[(2,4−ジニトロフェニル)−ヒドラゾノ]−エチル)−ベンゼン−1,3−ジオールの懸濁物32gに、フェノール10gおよびホルムアルデヒド水溶液(40重量%)10mLを室温にて添加する。この混合物に、固体NaOH(0.5g)を攪拌しながら添加する。得られた暗褐色懸濁物を110℃にて8時間還流すると、暗褐色固体が与えられる。固体を濾過して、冷水で数回洗浄し、次に蒸留水500mLに添加する。得られた懸濁物は、濃HCl(37%)を用いてpH7まで徐々に中和する。ポリマーPを暗赤色固体として分離し、これを収集して冷水/アセトン混合物(1:1 v:v)によって数回洗浄して、未反応モノマーおよび低分子量画分を除去する。精製後、Pを60℃にて3〜4時間乾燥させる。収量38g。
【実施例2】
【0047】
水200mL中に細かく分散された4−{1−[(2,4−ジニトロフェニル)−ヒドラゾノ]−エチル}−ベンゼン−1,3−ジオールの懸濁物32gに、フェノール10gおよびホルムアルデヒド水溶液(40重量%)10mLを室温にて添加する。この混合物に、濃(37%)HCl(10mL)を攪拌しながら添加する。得られた暗褐色懸濁物を110℃にて8時間還流すると、暗褐色固体が与えられる。固体を濾過して、冷水で数回洗浄し、次に蒸留水500mLに添加する。得られた懸濁物は、1N NaOH水溶液を用いて、pH7まで徐々に中和する。ポリマーPを暗赤色固体として分離し、これを収集して冷水/アセトン混合物(1:1 v:v)によって数回洗浄して、未反応モノマーおよび低分子量画分を除去する。精製後、Pを60℃にて3〜4時間乾燥させる。収量36g。
【実施例3】
【0048】
(2,4−ジクロロフェニル)ヒドラジン5gの、メタノール1000mLによる溶液に、濃硫酸10mLをゆっくり添加する。溶解後、(2,4−ジヒドロキシ)−ベンゾフェノンのモル当量を室温にて添加する。5分後、溶液は橙色に変化して、暗褐色固体が沈殿し始める。固体を濾過して、冷水で数回洗浄し次に水に懸濁させる。懸濁物、1N NaOH水溶液を用いて、pH7まで徐々に中和する。収集された暗褐色固体を冷水で数回洗浄して、次に蒸留水500mLに添加する。3,5−ジメチルフェノールの当量を添加して、溶液をHCL(37%)10mLで酸性化する。完全な溶解の後、ホルムアルデヒド(40重量%溶液)のモル当量を攪拌しながらゆっくり添加する。得られた溶液を110℃にて攪拌しながら還流する。約8時間後、Pを暗赤色固体として分離し、これを収集して冷水/アセトン混合物(1:1 v:v)によって数回洗浄して、未反応モノマーおよび低分子量画分を除去する。精製後、Pを60℃にて3〜4時間乾燥させる。収量3.9g。
【0049】
4−{1−[(2,4−ジニトロフェニル)−ヒドラゾノ]−エチル}−ベンゼン−1,3−ジオール、フェノールおよびパラホルムアルデヒドから得られた、ポリマーPの代表的なサンプルの、元素分析、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、紫外可視分光法(UV−Vis)ならびにHおよび13C{H}NMR分光法を用いたキャラクタリゼーション。
【0050】
元素。C、58.60%;H、4.24%;N:12.15%。(この分析は、式C(式中、x=1およびn=1)のポリマーにうまく適合する。計算値:C,58.67%;H,4.00%;N:12.44%.)
【0051】
FT−IR:3600−3200(vO−H);3290(vN−H);3100(varomaticC−H);1620(vC=N);1615(varomaticC=C);1590(δN−H);1530(vsNO);1514(vasNO);1330(δO−H);830(v aromaric C−NO);710(δaromatic C−H)cm−1
【0052】
UV可視:λmax= 390nm;420nmにおけるショルダー。
【0053】
H NMR(400.13MHz,298K):(CDCOCD):δ=2.4−2.6(N=C−CH);3.7−4.1(Ar−CH−Ar);6.4−6.3(C−H,aromatic);7.0−6.8(C−H,フェノール環);7.6−7.4(C−H,aromatic);8.5−8.3(H,フェノール環);9.0−8.9(H,aromatic),9.1−9.0(Ar−NH−N),11.4−11.2(Ar−OH),12.0−11.8(Ar−OH).
【0054】
13C NMR:(CDCOCD):δ=40(Ar−CH−Ar);102−130(aromatic);137(ON−C aromatic);143(HN−C aromatic);159(Ar−C=N−);160−161(HO−C aromatic)ppm.
【0055】
ポリマーPは、300℃より高い温度にて、溶融する前に分解する。本発明の触媒を作成するための2つの好ましい手順を、実施例4および5で述べる。
【実施例4】
【0056】
アセトン100mLに、P 0.50gおよびニッケル(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.30gを室温にて溶解させる。溶液を室温にて攪拌してすべてのアセトンを蒸発させると、赤みがかった残留物が残る。この固体、前記P−Mを石英反応器に導入して、窒素の保護流下で800℃まで2時間加熱する。ニッケルを7.1重量%含有する、黒色物質0.30gが得られる(ICP−AES分析)。
【実施例5】
【0057】
アセトン100mLに、P 0.50g、ニッケル(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.13g、鉄(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.08g、およびコバルト(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.08gを室温にて溶解させる。溶液を室温にて攪拌してすべてのアセトンを蒸発させると、紫色残留物が残る。この粗生成物、前記P−Mを石英反応器に導入して、次にH流下で360℃まで2時間加熱する。生成物中の全金属のパーセンテージが9.2重量%の、鉄、コバルトおよびニッケルを約1:1:1の比で含有する、黒色物質0.6gが得られる(ICP−AES分析)。
【0058】
本発明のHC−P−M材料からカソードを作成するための好ましい手順を、実施例6で述べる。
【実施例6】
【0059】
アセトン100mLにP 0.50gおよびニッケル(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.30gを室温にて溶解させる。前記P−Mを含有するこの混合物に、Vulkan XC−72R(N2下で800℃まで2時間加熱し、続いてHNO水溶液(50%)中で還流することにより、事前に活性化した)5.0gを添加する。得られた混合物を室温にて攪拌してすべてのアセトンを蒸発させると、黒色残留物が残る。すべてのアセトンは減圧下で除去する。固体残留物を石英反応器に導入して、窒素流下で800℃まで2時間加熱する。
【0060】
固体生成物を、水/エタノールの1:1(vv)混合物中に攪拌しながら分散させる。得られた懸濁物に、PTFE(60重量%分散物、Aldrich)2.5gを添加する。激しい攪拌を約10分間維持して、凝集物質を与える。反応容器を、ゴム状物質が形成されるまで超音波処理して、ゴム状物質をデカンテーションによって分離する。この物質をTeflon処理カーボン紙(東レ)の上に延伸し、約100Kg/cmで加圧する。そのように作成された電極を二窒素雰囲気下で350℃にて焼成する。
【0061】
本発明のアノードを作成する2つの好ましい手順を実施例7および8で述べる。
【実施例7】
【0062】
アセトン100mLに、P 0.50g、ニッケル(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.10g、鉄(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.065g、およびコバルト(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.065gを室温にて溶解させる。前記P−Mを含有するこの混合物に、VulkanXC−72R(N下で800℃まで2時間加熱し、続いてHNO水溶液(50%)中で還流することにより、事前に活性化した)5gを添加する。アセトンを減圧下で除去する。固体残留物を石英反応器に導入して、H流下で360℃まで2時間加熱する。
【0063】
固体生成物を、水/エタノールの1:1(vv)混合物中に攪拌しながら分散させる。得られた懸濁物に、PTFE(60重量%分散物、Aldrich)2.5gを添加する。激しい攪拌を約10分間維持して、凝集物質を与える。反応容器を、ゴム状物質が形成されるまで超音波処理して、ゴム状物質をデカンテーションによって分離する。この物質を、ワイヤ太さ0.2mm、メッシュサイズ0.2mmおよび半径1.75cmを有する円形鋼鉄ワイヤネットに400Kg/cmで加圧する。
【実施例8】
【0064】
アセトン100mLに、P 0.50g、ニッケル(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.10g、鉄(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.065g、およびコバルト(II)アセテート四水和物(Aldrich)0.065gを室温にて溶解させる。前記P−Mを含有するこの混合物に、VulkanXC−72R(N下で800℃まで2時間加熱し、続いてHNO水溶液(50%)中で還流することにより、事前に活性化した)5gを添加する。0℃にて10分間攪拌した後、NaBH水溶液10mL(10重量%)を滴下して添加する(注意:放出されたHガスが、反応器壁に被着した固体触媒と反応することがある)。攪拌を室温にて30分間維持する。固体生成物を濾過によって分離し、水/エタノール(1:1、vv)によって数回洗浄する。次に固体生成物を、水/エタノールの1:1(w)混合物に攪拌しながら添加する。得られた懸濁物、PTFE(60重量%分散物、Aldrich)2.5gを添加する。激しい攪拌を約10分間維持して、凝集物質を与える。反応容器、ゴム状物質が形成されるまで超音波処理して、ゴム状物質をデカンテーションによって分離する。この物質を、ワイヤ太さ0.2mm、メッシュサイズ0.2mmおよび半径1.75cmを有する円形鋼鉄ワイヤネットに400Kg/cmで加圧する。
【0065】
電気化学測定
本発明による電極のサンプルを、平面四角形の0.5cm小板として作成した。サイクリック・ボルタンメトリーを用いて、アノードをフェロセン(FcH)酸化に対して試験するのに対して、カソードをテトラシアノエチレン(TCNE)還元に対して試験した。どちらの場合でも、[NBu][PF](0.2M)を補助電解質として含有するCHCl溶液を利用した。
【0066】
表1は、1:1:1のモル比でFe−Co−Niを含有する本発明のアノード、およびNiを含有する本発明のカソードによって得た電気化学結果を要約し、燃料電池で一般に使用される既知の電極材料との比較も報告する。電気化学データは純粋に例示目的で提供し、本発明の触媒の電気化学を制限するものではない。
表1 各種の電極材料(CHCl溶液;[NBu][PF](0.2M))での、FcHの一電子酸化およびTCNEの一電子還元での正式な電極電位(V対SCE)およびピーク間分離(mV)。
【表1】

【0067】
一電子プロセスの電気化学可逆性が、周囲温度における59mVのピーク間分離によって示されたという事実を考慮すると、本発明の電極が、効率的な電子交換機として作用し、この意味では、調査した市販のPtベース電極よりも良好であることが明らかである。
【0068】
本発明の電極は、代表的な燃料電池動作条件で、たとえば2N HSOおよび1N KOH、25℃、CHOH 1Mおよび空気で飽和させて試験した。図1〜4に示すように、酸性もしくは塩基性溶液において、本発明の電極材料は、調査した市販材料に匹敵するか、またはそれよりも優れた、高い電流密度を示す。
【0069】
図2および3は、2N HSO溶液中で各種のアノードおよびカソード材料についてそれぞれ、単掃引ボルタンメトリーによって記録された、アノード性およびカソード性分極曲線を示す。
【0070】
脱気水性条件における対応する挙動を用いた比較を与える。電流の記号は、IUPAC規定に従う。
【0071】
図3および4は、KOH中で記録した、関連分極曲線を示す。本発明の触媒を用いて作成した電極、優先的に、導電性担持材料上でのFe、CoおよびNiの三元または二元組合せによって形成されたアノード、および導電性担持材料上にNiまたはCoを単独で含有するカソードを、単一の、自己通気性直接酸化燃料電池(DOFC)、優先的に直接アルコール燃料電池(DAFC)、およびさらに好ましくは直接メタノール燃料電池(DMFC)、あるいは当業界で既知のポリマー電極燃料電池(PEFC)で使用することが可能であり、周囲温度にて1.18Vの高さの開回路電圧(OCV)を示す(Hにより燃料供給)。本発明の触媒での金属の適切な組合せは、周囲温度および圧力にて300mW/cmもの比出力を与えることができる。本発明のカソードは、完全に耐アルコール性であり、したがってDAFCでのアルコールクロスオーバーに耐性がある。市販のカチオン性およびアニオン性膜も同様に使用できる。
【0072】
実施例として、図6は、本発明の電極によって作成されたDMFCの性能を示す(Niベースのカソード;Fe−Co−Niベースのアノード)。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の触媒によって動作する簡易燃料電池の断面概略図を示す。
【図2】空気飽和させた2N HSO−1N CHOH溶液での各種の材料のアノード性分極曲線を報告する。
【図3】空気飽和させた2N HSO−1N CHOH溶液での各種の材料のカソード性分極曲線を示す。
【図4】空気飽和させた1N KOH−1N CHOH溶液での各種の材料のアノード性分極曲線を示す。
【図5】空気飽和させた1N KOH−1N CHOH溶液での各種の材料のカソード性分極曲線を示す。
【図6】本発明の触媒によって作成した電極を使用したDMFCの性能の、経時変化を示す。
【図7】ポリマーを調製するための開始試薬から、電極の作成に使用した金属ドープ触媒材料までの、各種プロセスステップを流れ図に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性(たとえばNaOH)もしくは酸性(たとえばHCl)触媒の存在下で、溶媒としての水/アルコール混合物中で、20〜150℃の温度において、1000〜50000の数平均分子量を有する、4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって得られる窒素−酸素−炭素ポリマー。
【請求項2】
4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールが式(A):
【化1】

(式中、Rは:水素および1から10個までの炭素原子を有し、場合によってハロゲン化された炭化水素ラジカルから成る群から選択され;
およびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アシル、エステル、カルボン酸、ホルミル、ニトリル、スルホン酸、1から15個までの炭素原子を有し、場合によりハロゲンによって官能基された、または相互に結合して、フェニル環を有する1個以上の縮合環を形成する直鎖または分岐アルキルあるいはアリール基、およびニトロ基から成る群より選択される電子求引基を示す)
の化合物である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
3,5−ジ置換フェノールが式(B):
【化2】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、エーテル、アミン、1から15個までの炭素原子を有するアリールならびに直鎖および分岐アルキル基から成る群より選択される、電子供与基を示す)
の化合物である、請求項1および2に記載のポリマー。
【請求項4】
一般式(C):
【化3】

(式中、yは2から120まで変化可能であり、xは1〜2で変化可能であり、nは1〜3で変化可能であり、R、R、R、RおよびRは上で定義した通りである)
を有する、請求項1から3に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1から4に記載のポリマーおよび金属塩より成る金属錯体。
【請求項6】
前記金属塩が、鉄−、コバルト−およびニッケル−カルボキシラート、−ハライド、−アルコラート、−アセチルアセトナート、−ホルメート、−オキサラート、−マロナート、および類似有機塩およびその混合物または−カーボネート、−オキシドおよび−バイカーボネート、およびその混合物から選択される、請求項5に記載の金属錯体。
【請求項7】
Fe−、Co−およびNi−アセテート(およびそれらの混合物)から成る群より選択される、請求項6に記載の錯体。
【請求項8】
前記金属がHを用いた固体状態、もしくは適切な還元剤を用いた流体溶液系で還元される、請求項5から7に記載の錯体より成る触媒。
【請求項9】
前記金属錯体が、500〜1000℃の温度、優先的に800℃にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下にて約2時間熱分解される、請求項5から7に記載の錯体より成る触媒。
【請求項10】
請求項8から9に記載の触媒および適切な導電性担体より成る、電極(アノードおよびカソード)。
【請求項11】
請求項8から9に記載の触媒より成り、Fe、CoおよびNiの二元または三元組合せおよび適切な導電性担体を含む、アノード。
【請求項12】
請求項8から9に記載の触媒より成り、NiまたはCoおよび適切な導電性担体を含む、カソード。
【請求項13】
前記反応が、塩基性触媒の存在下での4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって実施される、請求項1から4に記載の窒素−酸素−炭素ポリマーを調製するプロセス。
【請求項14】
前記反応が、酸性触媒の存在下での実施される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応が約20から約150℃までの温度範囲にて、約1から約14までのpH範囲にて実施される、請求項13および14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記反応が、4−アシル/ホルミル−ベンゼン−1,3−ジオール、2,4−ジ置換フェニルヒドラジン、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを独立した成分として使用する、ワンポットもしくはカスケード手順で実施される、請求項13から15に記載のプロセス。
【請求項17】
請求項1から3に記載のポリマーおよび1つ以上の塩を適切な溶媒または溶媒の混合物、優先的にアセトンに、約20℃から約60℃までの温度範囲で溶解させることと、得られた生成物に還元を受けさせることと、による、請求項5から7に記載の錯体を調製するプロセス。
【請求項18】
ニッケル(II)、鉄(II)およびコバルト(II)塩から成る群より選択される金属塩の混合物が、単独で、あるいは好ましい化学量論比での二元または三元組合せで使用される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記金属装填量が、元素および金属の全重量の約0.5〜約10%の範囲である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記還元ステップが、H流を用いて、350℃〜400℃の温度にて1〜2時間実施される、請求項17から19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記還元ステップが溶媒中に分散された錯体に対して、ヒドラジンの水溶液、またはテトラヒドロホウ酸塩[Y]BH(式中、Yは、Li、Na、K、NR、PPNであり、Rは請求項で定義した通りであり、PPNはビス(トリフェニルホスホルアニリデン)アンモニウムである)の溶液を用いて、0℃〜20℃の温度にて、30分から1時間実施される、請求項17から19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記金属ドープポリマーP−Mが500℃〜1000℃の温度にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)の保護下にて、1〜2時間熱分解される、請求項8から9に記載の触媒を調製するプロセス。
【請求項23】
前記金属ドープポリマー材料および多孔性炭素担持材料もしくは他の導電性担持材料を、請求項20から21に記載の還元処理の前に共に混合することを包含する、燃料電池用アノードの形の、請求項10から11に記載の電極を作成するプロセス。
【請求項24】
単一の金属あるいは好ましくは化学量論比でのニッケル、鉄およびコバルトの二元または三元組合せが、元素および金属の総重量の約0.5%〜約10%の範囲の金属装填量で使用される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
金属ドープポリマー材料および多孔性炭素担持材料もしくは他の導電性担持材料を、約500℃から約1000℃までの範囲の温度における、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下での1〜2時間の熱処理前に、共に混合することを含む、燃料電池用耐アルコール性カソードの形の、請求項10および12に記載の電極を作成するプロセス。
【請求項26】
金属ドープポリマーが金属または金属の混合物を、元素および金属の総重量の約0.5%〜約10%の範囲の金属装填量で含有する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
鉄、コバルトおよびニッケルから成る群より選択された金属を含有する、請求項23から24に記載の触媒処理炭素基質によって形成された、直接酸化燃料電池(DOFC)または直接アルコール燃料電池(DAFC)用のアノード。
【請求項28】
ニッケルを含有する、請求項25から26に記載の触媒処理炭素基質によって形成された、直接酸化燃料電池(DOFC)、または直接アルコール燃料電池(DAFC)用の耐アルコール性カソード。
【請求項29】
周囲温度および圧力にて、1.13Vの高さの開回路(OCV)および160mW/cmの高さの電力を産生することができる、直接酸化燃料電池(DOFC)または直接アルコール燃料電池(DAFC)用のアノード。
【請求項30】
周囲温度および圧力にて、1.13Vの高さの開回路(OCV)および160mW/cmの高さの電力を産生することができる、直接酸化燃料電池(DOFC)または直接アルコール燃料電池(DAFC)用のカソード。
【請求項31】
鉄、コバルトおよびニッケルを、好ましい化学量論比および0.5〜8重量%の全金属装填量で含有し、1.13Vの高さの開回路(OCV)および300mW/cmの高さの電力を産生することができる、Hによって燃料供給されるポリマー電極燃料電池(PEFC)用アノード。
【請求項32】
ニッケルを0.5〜7重量%で含有し、1.18Vの高さの開回路(OCV)および300mW/cmの高さの電力を産生することができる、Hによって燃料供給されるポリマー電極燃料電池(PEFC)用カソード。
【請求項33】
請求項10から12および27から32に記載の電極を含む、燃料電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性(たとえばNaOH)もしくは酸性(たとえばHCl)触媒の存在下で、溶媒としての水/アルコール混合物中で、20〜150℃の温度において、1000〜50000の数平均分子量を有する、4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、フェノール、3−置換フェノール、3,5−ジ置換フェノール(ただし、3−置換フェノールがレゾルシノールであることはない。)およびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって得られる、窒素−酸素−炭素ポリマー。
【請求項2】
4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールが式(A):
【化1】

(式中、Rは:水素および1から10個までの炭素原子を有し、場合によってハロゲン化された炭化水素ラジカルから成る群から選択され;
およびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アシル、エステル、カルボン酸、ホルミル、ニトリル、スルホン酸、1から15個までの炭素原子を有し、場合によりハロゲンによって官能基された、または相互に結合して、フェニル環を有する1個以上の縮合環を形成する直鎖または分岐アルキルあるいはアリール基、およびニトロ基から成る群より選択される電子求引基を示す)
の化合物である、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
3,5−ジ置換フェノールが式(B):
【化2】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、エーテル、アミン、1から15個までの炭素原子を有するアリールならびに直鎖および分岐アルキル基から成る群より選択される、電子供与基を示す)
の化合物(ただし、3−置換フェノールがレゾルシノールであることはない。)である、請求項1および2に記載のポリマー。
【請求項4】
一般式(C):
【化3】

(式中、yは2から120まで変化可能であり、xは1〜2で変化可能であり、nは1〜3で変化可能であり、R、R、R、RおよびRは上で定義した通りである)
を有する、請求項1から3に記載のポリマー。
【請求項5】
請求項1から4に記載のポリマーおよび金属塩より成る金属錯体。
【請求項6】
前記金属塩が、鉄−、コバルト−およびニッケル−カルボキシラート、−ハライド、−アルコラート、−アセチルアセトナート、−ホルメート、−オキサラート、−マロナート、および類似有機塩およびその混合物または−カーボネート、−オキシドおよび−バイカーボネート、およびその混合物から選択される、請求項5に記載の金属錯体。
【請求項7】
Fe−、Co−およびNi−アセテート(およびそれらの混合物)から成る群より選択される、請求項6に記載の錯体。
【請求項8】
前記金属がHを用いた固体状態、もしくは適切な還元剤を用いた流体溶液系で還元される、請求項5から7に記載の錯体より成る触媒。
【請求項9】
前記金属錯体が、500〜1000℃の温度、優先的に800℃にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下にて約2時間熱分解される、請求項5から7に記載の錯体より成る触媒。
【請求項10】
請求項8から9に記載の触媒および適切な導電性担体より成る、電極(アノードおよびカソード)。
【請求項11】
請求項8から9に記載の触媒より成り、Fe、CoおよびNiの二元または三元組合せおよび適切な導電性担体を含む、アノード。
【請求項12】
請求項8から9に記載の触媒より成り、NiまたはCoおよび適切な導電性担体を含む、カソード。
【請求項13】
前記反応が、塩基性触媒の存在下での4−{1−[(2,4−ジ(置換)−フェニル)−ヒドラゾノ]−アルキル}−ベンゼン−1,3−ジオールと、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとの縮合によって実施される、請求項1から4に記載の窒素−酸素−炭素ポリマーを調製するプロセス。
【請求項14】
前記反応が、酸性触媒の存在下での実施される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応が約20から約150℃までの温度範囲にて、約1から約14までのpH範囲にて実施される、請求項13および14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記反応が、4−アシル/ホルミル−ベンゼン−1,3−ジオール、2,4−ジ置換フェニルヒドラジン、3,5−ジ置換フェノールおよびホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドを独立した成分として使用する、ワンポットもしくはカスケード手順で実施される、請求項13から15に記載のプロセス。
【請求項17】
請求項1から3に記載のポリマーおよび1つ以上の塩を適切な溶媒または溶媒の混合物、優先的にアセトンに、約20℃から約60℃までの温度範囲で溶解させることと、得られた生成物に還元を受けさせることと、による、請求項5から7に記載の錯体を調製するプロセス。
【請求項18】
ニッケル(II)、鉄(II)およびコバルト(II)塩から成る群より選択される金属塩の混合物が、単独で、あるいは好ましい化学量論比での二元または三元組合せで使用される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記金属装填量が、元素および金属の全重量の約0.5〜約10%の範囲である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記還元ステップが、H流を用いて、350℃〜400℃の温度にて1〜2時間実施される、請求項17から19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記還元ステップが溶媒中に分散された錯体に対して、ヒドラジンの水溶液、またはテトラヒドロホウ酸塩[Y]BH(式中、Yは、Li、Na、K、NR、PPNであり、Rは請求項で定義した通りであり、PPNはビス(トリフェニルホスホルアニリデン)アンモニウムである)の溶液を用いて、0℃〜20℃の温度にて、30分から1時間実施される、請求項17から19に記載のプロセス。
【請求項22】
前記金属ドープポリマーP−Mが500℃〜1000℃の温度にて、不活性ガス(たとえばN、Ar)の保護下にて、1〜2時間熱分解される、請求項8から9に記載の触媒を調製するプロセス。
【請求項23】
前記金属ドープポリマー材料および多孔性炭素担持材料もしくは他の導電性担持材料を、請求項20から21に記載の還元処理の前に共に混合することを包含する、燃料電池用アノードの形の、請求項10から11に記載の電極を作成するプロセス。
【請求項24】
単一の金属あるいは好ましくは化学量論比でのニッケル、鉄およびコバルトの二元または三元組合せが、元素および金属の総重量の約0.5%〜約10%の範囲の金属装填量で使用される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
金属ドープポリマー材料および多孔性炭素担持材料もしくは他の導電性担持材料を、約500℃から約1000℃までの範囲の温度における、不活性ガス(たとえばN、Ar)保護下での1〜2時間の熱処理前に、共に混合することを含む、燃料電池用耐アルコール性カソードの形の、請求項10および12に記載の電極を作成するプロセス。
【請求項26】
金属ドープポリマーが金属または金属の混合物を、元素および金属の総重量の約0.5%〜約10%の範囲の金属装填量で含有する、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
鉄、コバルトおよびニッケルから成る群より選択された金属を含有する、請求項23から24に記載の触媒処理炭素基質によって形成された、直接酸化燃料電池(DOFC)または直接アルコール燃料電池(DAFC)用のアノード。
【請求項28】
ニッケルを含有する、請求項25から26に記載の触媒処理炭素基質によって形成された、直接酸化燃料電池(DOFC)、または直接アルコール燃料電池(DAFC)用の耐アルコール性カソード。
【請求項29】
請求項11および12に記載のアノードおよびカソード、およびアニオン性またはカチオン性の固体電解質膜を含み、周囲温度および圧力にて、1.13Vの高さの開回路(OCV)および160mW/cmの高さの電力を産生することができる、直接酸化燃料電池(DOFC)または直接アルコール燃料電池(DAFC)。
【請求項30】
0.5〜8重量%の全金属装填量で化学量論比の鉄、コバルトおよびニッケルで触媒された請求項11に記載のアノードを含み、本発明のカソードまたは背景技術のカソードおよび背景技術の固体電解質膜と共に、1.18Vの高さの開回路(OCV)および300mW/cmの高さの電力を産生することができる、Hによって燃料供給されるポリマー電極燃料電池(PEFC)。
【請求項31】
0.5〜7重量%の含有量のニッケルで触媒された請求項12に記載のカソードを含み、本発明のアノードまたは背景技術のアノードおよび背景技術の固体電解質膜と共に、1.18Vの高さの開回路(OCV)および300mW/cmの高さの電力を産生することができる、Hによって燃料供給されるポリマー電極燃料電池(PEFC)。
【請求項32】
請求項10から12に記載の電極を含む、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−504232(P2006−504232A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544004(P2004−544004)
【出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006592
【国際公開番号】WO2004/036674
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(505149985)イディア ラボ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】