説明

皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製における、メトロニダゾールの使用

本発明は、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製における、メトロニダゾールの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の血管新生疾患(cutaneous vascularization disorder)の分野に関し、特に、酒さにおける皮膚の血管新生疾患の治療に関する。本発明は、皮膚の血管新生疾患の治療、特に酒さにおける皮膚の血管新生疾患の治療に有用である、活性剤としてメトロニダゾールを含む新規な医薬組成物、特に新規な皮膚用組成物を提供することを対象とする。
【背景技術】
【0002】
酒さは、血管不安定性に関連する、一般的な、慢性かつ進行性の炎症性皮膚疾患である。酒さは、主に、顔の中央部に影響を及ぼし、顔の発赤又は顔面紅潮、顔面紅斑、丘疹、膿庖、及び毛細血管拡張によって特徴づけられる。重篤な場合には、特に男性において、鼻の軟組織が肥大化し、鼻瘤として知られる球根状の腫脹を生じ得る。
【0003】
酒さは、通常、25歳〜70歳の間に発症し、色白の人々に非常に多く見られる。とりわけ女性が罹患するが、男性が罹患した場合には、通常、より重篤なものとなる。酒さは慢性的であり、症状の悪化と寛解の期間が何年間も続く。
【0004】
酒さは、その丘疹(皮膚からわずかに隆起した点状のもの)及び炎症性の膿庖(膿の瘡蓋)が、尋常性座瘡のものに酷似していたことから、「酒さ性座瘡(acne rosacea)」と当初は称されていた。異常角質化、皮脂生成の増加、さらには細菌性の炎症に起因する尋常性座瘡とは対照的に、酒さの炎症は、血管性のものであり、ほとんど理解されていない。この顔の血管異常により、真皮の持続性浮腫がもたらされ、これは、顔の小胞に通常見られるダニであるDemodex folliculorumの定着増加を伴うかもしれない。
【0005】
様々な研究において、Demodex folliculorumは、酒さの病因と考えられている(Erbagi et al. 1998, Int. J. Dermatol., vol. 37, pages 421-425; Purcell et al. 1986, J. Am. Acad. Dermatol., vol. 15, pages 1159-1162; Sibenge et al. 1992, J. Am. Acad. Dermatol., vol. 26, pages 590-593)。Demodex folliculorumは、顔の毛嚢脂腺小胞をブロックすることによって、丘疹及び膿庖によって反映される、炎症性反応を引き起こすか、又は悪化させるようである(Roihu et al. 1998, J. Cutan. Pathol., vol. 25, pages 550-552)。この寄生虫は、さらに、液性免疫応答の引き金になると考えられている(Nunzi et al. 1980, Br. J. Dermatol., vol. 103, pages 543-551; Manna et al. 1982, Br. J. Dermatol., vol. 107, pages 203-208)。
【0006】
酒さの発症原因は、ほとんど理解されていない。必ずしもこの病気を誘起するわけではない、多くの因子が関与しているかもしれない。これらは、例えば、心理的要因、消化器疾患、環境要因(日光、温度、湿度への暴露)、感情的要因(ストレス)、食事要因(アルコール、香辛料)、ホルモン因子、又は血管因子、又はさらにはHelicobacter piloriへの感染などである。
【0007】
酒さは、四つの段階で進行するが、全ての段階を通過することが必須であるわけではない:
− 第一段階:血管弛緩(約20歳でおこる)。患者は、顔及び首に、体熱感を伴う突発性の発赤(paroxystic redness)をおこすが、全身徴候を伴うものではない。この発作の後、顔の皮膚は正常に戻る。これらの「紅潮」は、温度の変化(しばしば、高温恐怖症につながる)、並びに高温の飲み物及びアルコールの摂取によって引き起こされる;
− 第二段階:毛細血管拡張性紅班(erythemato-telangiectasia)(約30歳でおこる)。頬骨の領域が広範囲に赤くなる。標準的な酒さ性座瘡を形成する、拡張毛細血管がその中で観察される。第一段階とは対照的に、発赤は持続的である。頬に加えて、顎及び額の中央も発症し得る;
− 第三段階:膿庖性丘疹(約40歳でおこる)。直径数ミリメートルの丘疹及び膿庖が、面皰を伴わずに、紅斑のバックグラウンドに生じる。この皮膚炎は、非常に広範囲に及ぶ可能性があり、しばしば、男性の頭皮の禿げた部分まで及び得るが、口及び目の周囲の領域には見られない。患者は、多数の局所用製品及び脂肪分の多い化粧品に対する主観的不耐性とともに、敏感肌を訴える;
− 第四段階:鼻瘤(約50歳以上でおこる)。この最終段階は、他の段階とは対照的に、主に男性が罹患する。鼻は、その体積が増加し、広範囲に赤くなり、毛包口が拡張する。皮膚は次第に厚くなる。
【非特許文献1】Erbagi et al. 1998, Int. J. Dermatol., vol. 37, pages 421-425
【非特許文献2】Purcell et al. 1986, J. Am. Acad. Dermatol., vol. 15, pages 1159-1162
【非特許文献3】Sibenge et al. 1992, J. Am. Acad. Dermatol., vol. 26, pages 590-593
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酒さの軽度な形態は、抗脂漏薬及び抗感染薬などの活性剤、例えば、過酸化ベンゾイル及びレチノイン酸などで治療し得る。病気の最も瀰漫した形態に関しては、これらは、サイクリンを用いた一般的な抗生物質治療に対して良好に反応する。しかし、これらの治療は、患者に不快な副作用、例えば、刺激作用又は過敏症などをもたらす。
【0009】
さらに、酒さの多因子性のために、この病気に対して非常に多くの治療が存在するが、患者にとってリスクのない効果的な治療は、依然として研究中である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人の研究により、酒さの治療において、以下を含む群から選択される受容体とメトロニダゾールとの相互作用が実証された;βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体。
【0011】
βアドレナリン作動性受容体は、様々な生理的機能、例えば、代謝活性、心臓活動、呼吸、中枢神経系の活動、血圧、及び血管緊張などの制御に関与する。
【0012】
5−HT2受容体及び5−HT5受容体は、セロトニン(5−HT)受容体のファミリーに属している。5−HT受容体は、イオンチャネルである5−HT3を除いて、全てがGタンパク質と結合する。5−HT2受容体の活性化により、ホスホリパーゼCの活性が刺激される。5−HT5受容体伝達系は、アデニル酸シクラーゼと正の関連を示す。
【0013】
AT1受容体は、アンジオテンシンIIによる血管収縮の制御に関与する。男性では、アンジオテンシンIIが、皮下動脈の緊張を増加させる。
【0014】
ガラニンは、中枢神経系に存在する29個のアミノ酸ペプチドである。ある研究では、ガラニンは、皮膚血管反応の調節及び炎症の役割を担うと考えられている(Pincelli, 1990, Br. J. Dermatol., vol. 122, pages 745-750)。
【0015】
メトロニダゾール、又は(2−メチル−5−ニトロイミダゾリル)−2−エタノールは、その抗菌特性、抗寄生虫特性、及び抗原虫特性が従来技術で公知である。それは、嫌気性細菌及びさらに低酸素細胞への選択毒性に影響を与える。後者の場合、メトロニダゾールは、これらの細胞のDNA構造に損傷を与え得る誘導体へと還元される。
【0016】
本出願人の研究により、皮膚の血管新生疾患における、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体の関与が実証された。
【0017】
本出願人は、今や、皮膚の血管新生疾患、特に酒さにおける皮膚の血管新生疾患に対するメトロニダゾールの有利な特性を実証した。
【0018】
驚くべきことに、メトロニダゾールを使用すると、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体との相互作用が結果としてもたらされることが発見された。特に、メトロニダゾールを使用することにより、これらの受容体に対する天然リガンドが阻害されることが発見された。
【0019】
前述のとおり、本発明は、皮膚の血管新生疾患に罹患している患者に対して有効量のメトロニダゾールを投与することからなる、皮膚の血管新生疾患の新規な治療方法を提供することを対象としており、ここで、メトロニダゾールは、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも1つの受容体と相互作用できるものである。
【0020】
従って、本発明は、とりわけ、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用に関する。
【0021】
特に、本発明は、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも1つの受容体に関連する、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用に関する。
【0022】
本発明はまた、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも2つの受容体に関連する、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0023】
本発明はまた、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも3つの受容体に関連する、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0024】
本発明はまた、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも4つの受容体に関連する、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0025】
本発明はまた、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも5つの受容体に関連する、皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0026】
特に、本発明は、酒さの構成要素の1つである皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも1つの受容体と相互作用できるメトロニダゾールの使用に関する。
【0027】
本発明はまた、先に定義されたとおりの医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも2つの受容体と相互作用できるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0028】
本発明はまた、先に定義されたとおりの医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも3つの受容体と相互作用できるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0029】
本発明はまた、先に定義されたとおりの医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも4つの受容体と相互作用できるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0030】
本発明はまた、先に定義されたとおりの医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも5つの受容体と相互作用できるメトロニダゾールの使用にも関する。
【0031】
特に、本発明は、医薬組成物の調製におけるメトロニダゾールの使用であって、前記メトロニダゾールが、少なくとも1つの天然リガンドのその受容体への結合を阻害し、前記受容体が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される、メトロニダゾールの使用に関する。
【0032】
本発明の主題である組成物は、皮膚への局所投与のための皮膚用組成物である。
【0033】
本発明では、「皮膚の血管新生疾患の治療」という用語は、このような疾患の治療及び/又は予防を意味する。
【0034】
本発明では、「酒さの治療」という用語は、先に定義されたとおりの1つ以上の段階における酒さの治療及び/又は予防を意味する。
【0035】
本発明の第一の実施態様では、本組成物は、酒さの第一段階を治療することを意図している。
【0036】
本発明の第二の実施態様では、本組成物は、酒さの第二段階を治療することを意図している。
【0037】
本発明の第三の実施態様では、本組成物は、酒さの第三段階を治療することを意図している。
【0038】
本発明の第四の実施態様では、本組成物は、酒さの第四段階を治療することを意図している。
【0039】
好ましい実施態様の1つでは、本組成物は、本組成物の総重量に対して、0.0001重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜2重量%、より好ましくは約0.75重量%〜1重量%のメトロニダゾールを含む。
【0040】
言うまでもなく、本発明は、メトロニダゾールの使用に加えて、その誘導体の使用にも関する。「誘導体」という用語は、1つ以上の化学基の置換、付加、又は除去によりメトロニダゾールとは異なる化合物、及び実質的に同一の活性を有する化合物を意味する。
【0041】
有利には、本発明の組成物は、メトロニダゾールに加えて、治療効果を増加させ得る他の治療薬の少なくとも1種を含む。このような薬剤の非限定的な例として以下を挙げることができる:抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス薬、駆虫剤、抗真菌薬、麻酔薬、鎮痛剤、抗アレルギー薬、レチノイド、フリーラジカルスカベンジャー、抗痒疹薬(anti-pruriginous agent)、角質溶解薬、抗脂漏薬、抗ヒスタミン剤、硫化物、免疫抑制物質、及び抗増殖性物質。
【0042】
本発明の組成物はまた、メトロニダゾールと適合する、製剤又は皮膚科学の分野で通常使用される任意の添加剤を含んでいてもよい。特に以下を挙げることができる:金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、サンスクリーン剤、保存料(例えば、DL−a−トコフェロール)、フィラー、電解質、保湿剤、着色料、一般的な無機又は有機の酸又は塩基、香料、芳香油、化粧品活性剤、モイスチャライザー、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング化合物(例えば、DHA)、皮膚鎮静剤及び皮膚保護剤(例えば、アラントイン)、浸透促進剤(pro-penetrating agent)、並びにゲル化剤。言うまでもなく、当業者は、これ又はこれらの任意選択の追加の化合物(1種以上)、及び/又はそれらの量を選択する際に、本発明の組成物の有利な特性が損なわれないように、又は実質的に損なわれないように、注意を払うであろう。
【0043】
これらの添加剤は、本組成物の総重量に対して、0重量%〜20重量%の割合で本組成物中に存在してよい。
【0044】
挙げることのできる金属イオン封鎖剤の例には、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びさらにその誘導体、又はそれらの塩類、ジヒドロキシエチルグリシン、クエン酸及び酒石酸、又はそれらの混合物が含まれる。
【0045】
挙げることのできる保存料の例には、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアゾリジニル尿素及びパラベン、又はこれらの混合物が含まれる。
【0046】
挙げることのできる保湿剤の例には、グリセロール及びソルビトールが含まれる。
【0047】
本発明の組成物は、本組成物の総重量に対して、優先的には0重量%〜20重量%、より優先的には0.6重量%〜3重量%の濃度で、1種以上の浸透促進剤を含んでいてもよい。優先的に使用される浸透促進剤のうちには、これに限定されるものではないが、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジノナン酸プロピレングリコール(propylene glycol dipelargonate)、ラウログリコール(lauroglycol)及びエトキシジグリコールなどの化合物がある。
【0048】
有利には、本発明の組成物はまた、優先的には0重量%〜10重量%、より優先的には0.1重量%〜2重量%の濃度で、1種以上の湿潤液体界面活性剤を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の組成物は、局所適用のために通常使用される任意の剤形(galenical form)であってよく、特に、以下の形態であってよい:水性溶液、水性−アルコール溶液又は油性溶液;ローションタイプのディスパージョン;水性ゲル、無水ゲル又は親油性ゲル;水相中に脂質相を分散させることによって得られるもの(O/W型)又はその逆(W/O型)の、ミルクタイプの液体又は半流動体コンシステンシーのエマルション;クリーム、ゲル、又は軟膏タイプの柔らかい半固体又は固体コンシステンシーの懸濁液又はエマルション;あるいはまた、イオン性及び/又は非イオン性タイプの、マイクロエマルション、マイクロカプセル、微小粒子又は小胞のディスパージョン。
【0050】
好ましくは、本クリームは、即時に乳化する、ミネラルオイルと水との混合物から、又は蜜蝋と水との混合物から製剤化され得、これには、アーモンドオイルなどの少量のオイルに溶解しているメトロニダゾールが添加される。
【0051】
軟膏は、温めたパラフィン中で、メトロニダゾール油溶液(例えば、アーモンドオイル)を混合し、それに続いて混合物を放置して冷却することにより、製剤化され得る。
【0052】
本発明の組成物の例として、以下:
− 0重量%〜90重量%、優先的には5重量%〜25重量%、特に10重量%〜20重量%の水;
− 0重量%〜10重量%、優先的には0重量%〜2重量%、特に0重量%〜0.5重量%の湿潤液体界面活性剤;
− 0重量%〜20重量%、優先的には0重量%〜10重量%、特に2重量%〜5重量%の浸透促進剤;
− 0.0001重量%〜20重量%、優先的には0.1重量%〜2重量%のメトロニダゾール;
を含む活性相、並びにpH非依存性ゲル化剤及び水を含む水相を含むものを挙げることができる。
【0053】
エマルション形態の本発明の組成物の水相には、水、コーンフラワー水などの花の水、又は例えば以下から選択される天然の湧水若しくはミネラルウォーターが含まれていてよい:eau de Vittel、Vichy basinの水、eau d’Uriage、eau de la Roche Posay、eau de la Bourboule、eau d’Enghien-les-Bains、eau de Saint Gervais-les-Bains、eau de Neris-les-Bains、eau d’Allevard-les-Bains、eau de Digne、eau de Maizieres、eau de Neyrac-les-Bains、eau de Lons-le-Saunier、les Eaux Bonnes、eau de Rochefort、eau de Saint Christau、eau des Fumades、eau de Tercis-les-Bains、eau d’Avene及びeau d’Aix-les-Bains。
【0054】
前記の水相は、本組成物の総重量に対して、10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%の含有量で存在していてよい。
【0055】
挙げることのできる非限定的な例には、以下が含まれる:ポリアクリルアミド群のゲル化剤、例えば、アクリロイルジメチルタウリンナトリウムのコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート−80の混合物(SEPPIC社からSimulgel 600の名称で市販されているもの)、ポリアクリルアミド/C13〜C14のイソパラフィン/ラウレス−7の混合物(例えば、SEPPIC社からSepigel 305の名称で市販されている製品);疎水性鎖と結合しているアクリル系ポリマー群のゲル化剤、例えば、Aculyn 44の名称で市販されているPEG−150/デシル/SMDIコポリマー(プロピレングリコール(39%)と水(26%)との混合物中に35重量%で、構成成分として少なくとも以下を含む重縮合物:150mol又は180molのエチレンオキシドを含むポリエチレングリコール、デシルアルコール及びメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)(SMDI));及び加工デンプン群のゲル化剤、例えば、Structure Solanaceの名称で市販されている加工バレイショデンプン;又はこれらの混合物。
【0056】
好ましいゲル化剤は、ポリアクリルアミド群由来のものであり、例えば、Simulgel 600若しくはSepigel 305、又はこれらの混合物である。
【0057】
上述したゲル化剤は、優先的には0.1%〜15%、より優先的には0.5%〜5%の濃度で使用され得る。
【0058】
ゲルは、好ましくは、カルボマー、ポロキサマー、又はセルロース系タイプのゲルに適切な割合でメトロニダゾールを分散又は溶解することにより調製され得る。
【0059】
本発明の他の利点及び特徴は、メトロニダゾール活性に関する以下の実施例により明らかとなるだろう。
【0060】
[実施例]
[実施例1−メトロニダゾール活性]
1)プロトコル
β−1及びβ−2アドレナリン作動性受容体への結合試験を、Smith and Teiler 1999, Cardiovasc. Drug Ther., vol. 13, pages 123-126に記載されている方法に従って実施した。
【0061】
AT1受容体への結合試験を、Bergsma et al., 1992, Biochem. Biophys. Res. Comm., vol. 183, pages 989-995に記載されている方法に従って実施した。
【0062】
5−HT5A受容体への結合試験を、Ress et al., 1994, FEBS Lett., vol. 355, pages 242-246に記載されている方法に従って実施した。
【0063】
5−HT2A受容体への結合試験を、Bonhauss et al., 1995, Brit. J. Pharmacol., vol. 1155, pages 622-628に記載されている方法に従って実施した。
【0064】
ガラニン受容体への結合試験を、Sullivan et al., 1997, Biochem. Biophys. Res. Comm., vol. 233, pages 823-828に記載されている方法に従って実施した。
【0065】
2)実験条件:
メトロニダゾールの各受容体への結合を、競合実験により決定した。受容体である、ヒト組み換えタンパク質を、10μMのメトロニダゾールの存在下で、単一濃度の標識特異的リガンドと共に、下記表1に示されている時間インキュベートした。結合した放射活性を、シンチレーションカウンターにより測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
3)結果の分析及び呈示
リガンドの受容体への特異的結合は、過剰の非標識リガンドの存在下で決定された非特異的結合と総結合との差として定義する。
【0068】
結果は、コントロール特異的結合の割合として表され、かつメトロニダゾールの存在下で得られるコントロール特異的結合の阻害割合として表される(表2)。
【0069】
【表2】

【0070】
メトロニダゾールは、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体と相互作用し、ひいてはそれらへの結合を阻害する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の血管新生疾患を治療するための医薬組成物の調製における、メトロニダゾールの使用。
【請求項2】
前記皮膚の血管疾患が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも1つの受容体に関連することを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記皮膚の血管疾患が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも2つの受容体に関連することを特徴とする、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記皮膚の血管疾患が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも3つの受容体に関連することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
前記皮膚の血管疾患が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも4つの受容体に関連することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項記載の使用。
【請求項6】
前記皮膚の血管疾患が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも5つの受容体に関連することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載のメトロニダゾールの使用。
【請求項7】
前記血管疾患が、酒さの構成要素の1つであり、前記メトロニダゾールが、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択される少なくとも1つの受容体と相互作用できることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項8】
前記メトロニダゾールが、少なくとも1つの天然リガンドのその受容体への結合を阻害し、前記受容体が、βアドレナリン作動性受容体、AT1受容体、5−HT2受容体、5−HT5受容体、及びガラニン受容体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項記載の使用。
【請求項9】
前記医薬組成物が、局所適用のための皮膚用組成物であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、酒さの少なくとも1つの段階を治療するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、酒さの第一段階を治療するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、酒さの第二段階を治療するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項記載の使用。
【請求項13】
前記組成物が、酒さの第三段階を治療するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項記載の使用。
【請求項14】
前記組成物が、酒さの第四段階を治療するためのものであることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項記載の使用。
【請求項15】
前記組成物が、0.0001重量%〜20重量%、好ましくは0.1重量%〜2重量%、より優先的には約0.75重量%〜1重量%のメトロニダゾールを含むことを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項記載の使用。
【請求項16】
前記組成物がまた、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス薬、駆虫剤、抗真菌薬、麻酔薬、鎮痛剤、抗アレルギー薬、レチノイド、フリーラジカルスカベンジャー、抗痒疹薬、角質溶解薬、抗脂漏薬、抗ヒスタミン剤、硫化物、免疫抑制物質、及び抗増殖性物質の群から選択される別の活性剤も含むことを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項記載の使用。
【請求項17】
前記組成物が、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、サンスクリーン剤、保存料、フィラー、電解質、保湿剤、着色料、一般的な無機又は有機の酸又は塩基、香料、芳香油、化粧品活性剤、モイスチャライザー、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング化合物、皮膚鎮静剤及び皮膚保護剤、浸透促進剤、並びにゲル化剤、又はこれらの混合物の群から選択される添加剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか一項記載の使用。

【公表番号】特表2007−523132(P2007−523132A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553617(P2006−553617)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000369
【国際公開番号】WO2005/089749
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント・エス・エヌ・セ (117)
【Fターム(参考)】