説明

皮膚のT細胞リンパ腫の治療

本発明は、皮膚のT細胞リンパ腫(CTCL)を有する患者の治療方法を提供する。一般に、この方法は、少なくとも一つのCTCLの症状又は臨床症状を改善するために有効な量のIRM化合物を患者に投与することを含む。幾つかの実施形態では、この方法は、患者にプライミングのための投与量のタイプIインターフェロンを投与することも含む。別の態様では、本発明は、皮膚のT細胞リンパ腫により作用される細胞を含む細胞集団の細胞媒介性免疫反応を増やす方法を提供する。一般に、この方法は、細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすための有効量のIRM化合物を細胞集団と接触させることを含む。幾つかの実施形態では、この方法はプライミングのための投与量のタイプIインターフェロンと細胞集団とを接触させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫系における特定の重要な態様を刺激し、並びに特定の他の態様を抑制することで作用する新規の薬剤化合物の開発に対して、近年、著しい成果と共に大きな努力がなされてきた(例えば米国特許第6,039,969号及び第6,200,592号を参照)。これらの化合物は、本明細書において免疫反応調節剤(immune response modifier:IRM)として表されるが、トール様受容体(Toll-like receptors:TLR)として既知の基本的な免疫系メカニズムにおいて特定のサイトカインの生合成、共刺戟分子の誘導、及び抗原提示能力の向上を誘導するように働くと思われる。
【0002】
それらは多岐にわたる疾病及び病状の治療に有用であり得る。例えば、特定のIRMがウイルス性疾病(例えば、ヒトパピローマ・ウイルス、肝炎、ヘルペス)、腫瘍形成(例えば、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、光線角化症、黒色腫)、及びT2−媒介疾病(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)、自己免疫疾病(例えば、多発性硬化症)の治療に有用であり得、ワクチン補助剤としても有用である。
【0003】
IRM化合物の多くは、小有機分子イミダゾキノリンアミン誘導体(米国特許第4,689,338号参照)であるが、多くの他の化合部類も既知であり(例えば、米国特許第5,446,153号、同第6,194,425号、及び同第6,110,929号、及び国際特許公開WO2005/079195号を参照)より多くの化合物が尚、発見されている。他のIRMは、例えばオリゴヌクレオチドのように高い分子量を有し、CpGs(米国特許第6,194,388号を参照)を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IRMにおける優れた治療可能性を考慮すると、既に重要な功績が果たされているにもかかわらず、その使用と治療的利益を拡大する必要性は実質的に継続している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の小分子IRMが皮膚のT細胞リンパ腫(CTCL)の治療に使用可能であることが判明している。
【0006】
したがって、本発明では皮膚のT細胞リンパ腫に作用される細胞を含む細胞集団の細胞媒介性免疫反応を増やす方法を提供する。幾つかの実施形態では、この方法は、細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすために有効な量の免疫反応調節剤(IRM)化合物に細胞集団を接触させることを含み、前記IRM化合物は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である。この方法は、細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすために有効な量のIRM化合物に細胞集団を接触させることを含み、前記IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである。さらに他の実施形態において、この方法は、細胞集団をプライミングのための投与量のIFN−α又はIFN−γに接触させ、細胞集団を、該細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすのに有効な量のIRM化合物と接触させることを含む。
【0007】
別の態様では、本発明は皮膚のT細胞リンパ腫(cutaneous T cell lymphoma:CTCL)を有する患者を治療する方法も提供する。幾つかの実施形態では、この方法は一般に、前記皮膚のT細胞リンパ腫の少なくとも一つの症状又は臨床徴候を改善するために有効な量のIRM化合物を含む医薬品組成物をCTCL患者に投与することを含み、前記IRM化合物が1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である。別の実施形態では、この方法は、前記皮膚のT細胞リンパ腫の少なくとも一つの症状又は臨床徴候を改善するために有効な量のIRM化合物を含む医薬品組成物をCTCL患者に投与することを含み、前記IRM化合物が、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである。さらに他の実施形態では、この方法は、患者に、プライミングのための投与量のIFN−α又はIFN−γを投与し、その後、少なくとも一つの皮膚のT細胞リンパ腫の症状又は臨床症状を改善するために有効な量のIRM化合物を患者に投与することを含む。
【0008】
本発明の様々な他の特徴及び利点が、以下の詳細な説明、実施例、請求の範囲及び添付の図面と共に容易に明らかになるであろう。明細書を通して数箇所において、実施例を列挙することで指針が提供される。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、皮膚のT細胞リンパ腫(CTCL)の治療方法を提供する。進行したCTCLを有する患者は、細胞性免疫において重要な役割を果たす細胞である樹状細胞(dendritic cell:DC)の数が異常に少ないため、細胞媒介性免疫反応を発生させる能力に少なくとも部分的に、重大な障害を有する。障害性の細胞媒介性免疫反応は、患者の免疫系がCTCL疾病を制御し、それを阻止することを困難にする。本発明は、他のCTCL疾病を制御し、阻止を補助する更なる応答性免疫細胞集団によって免疫反応を刺激する免疫反応調節剤(IRM)化合物を使用する。
【0010】
本明細書で使用されているように、以下の用語は、指示された意味を有する。
【0011】
「アゴニスト」は、細胞の活性を誘発するためにレセプタ(例えばTLR)と組み合わせることが可能な化合物を指す。アゴニストは、レセプタに直接結合するリガンドであってもよい。或いは、アゴニストは、例えば、(a)レセプタに直接結合する他の分子を有する合成物を形成すること、又は、(b)他の化合物がレセプタに直接結合するために、別の化合物の改質をもたらす他のものにより、レセプタと間接的に組み合わされてもよい。アゴニストは、特定のTLR(例えばTLR6アゴニスト)のアゴニスト、又は、TLRの特定の組み合わせ(例えばTLR7及びTLR8双方のアゴニストであるTLR7/8アゴニスト)を指し得る。
【0012】
「改善する」は、特定の病状における症状又は臨床的徴候の特性において、程度、重症度、頻度及び/又は可能性における任意の削減を表す。
【0013】
「細胞媒介性免疫活性」は、細胞媒介性免疫反応の部分と考えられる生物活性度、例えば、少なくとも一つのT1サイトカインの産生の増加に関連する。
【0014】
「免疫細胞」は、免疫系の細胞、すなわち、先天性、後天性、体液性又は細胞媒介性の免疫反応の発生又は維持において直接又は間接的に含まれる細胞に関連する。
【0015】
「徴候」又は「臨床徴候」は、患者以外の者が見つけることができる特定の条件に関する客観的な理学的所見に関連する。
【0016】
「症状」は、疾病又は患者の状態のあらゆる自覚的な証拠を指す。
【0017】
「治療」又はその変形は、病状に関連する症状又は徴候の任意の程度における、削減、進行の制限、改善、又は解消を表す。
【0018】
本明細書で使用する時、「少なくとも一つ」及び「一つ以上」は同義的に使用される。したがって、例えば、「一つの」IRM化合物を含む医薬品組成物は、少なくとも一つのIRM化合物を含むことを意味すると解釈される。
【0019】
また本明細書において、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数(例えば1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、等)が包含される。
【0020】
皮膚のT細胞リンパ腫(CTCL)は、米国において100,000人につき約0.29ケースの年間発生率を有する比較的珍しい疾病である。それは、東ヨーロッパの通常の約半分である。しかし、この相違は、発生の実際の相違よりもむしろ、医師の認識の相違に起因する。米国において、年間500〜600件の新患がおり、約100〜200人が死亡する。CTCLは、通常、高齢者に見られ、診断時の年齢の中央値は55〜60歳である。男性と比べて2倍もの女性がCTCLを患っている。診断後の平均寿命は、治療しなければ7〜10年である。
【0021】
CTCLは、主に肌に作用する白血球の不活性の(軽度の)癌であり、二次的にのみ他の部位に影響を与える。本症は、ヘルパーT(T)細胞として公知のTリンパ球の制御不能の増殖を含む。ヘルパーT細胞の増殖は、これらの異常な細胞の肌の表皮層への浸透又は浸潤をもたらす。最も大きな浸潤の部位が必ずしも損傷の部位に対応しないが、肌は、かゆみ、僅かな鱗屑性病変に反応する。損傷は、多くの場合、胴に位置するが、体のいかなる部分にも存在し得る。この疾病、別名菌状息肉腫(mocosis fungoides: MF)の最も一般的な進行において、斑状の損傷は、より深い赤色であって、より定義された端部を有する触知可能なプラークへ進行する。最終的に、皮膚腫瘍は発現し得る。最終的に、しばしばリンパ節又は内臓で、癌は皮膚以外の介入へ進行し得る。珍しいケースでは、作用された個体は、セザリー症候群(Sezary syndrome:SS)、菌状息肉腫の白血病の変異体を発生する。
【0022】
CTCLの増殖性のTリンパ球は、表現型CD4/CD45RO/CLA/CCR4によって特徴づけられる。菌状息肉腫及びセザリー症候群は、末しょう血液の介入において異なる。つまり、MFは、一般に悪性T細胞を循環させることによって末しょう血液の顕性の介入なしで発現し、一方、セザリー症候群は、一般に血流に散在する悪性T細胞を含む。末しょう血液の介入は、一般にT1−タイプ・サイトカイン、例えば、IFN−γ及びIL−2の産生の減少を含む細胞性免疫の減少、及び、T2−タイプ・サイトカイン、例えばIL−4及びIL−5の増加する産生を伴う。
【0023】
1−タイプ・サイトカインの外因性投与は、治療を受けた患者の測定可能な臨床効果をもたらす。例えば、IFN−α、IFN−γ及び/又はIL−12の投与は、このような治療において使用されてきたが、副作用の発生率が低い効果的な治療薬の識別、及び免疫系の多数の成分を刺激する能力は持続する。
【0024】
免疫反応調節剤(「IRM」)は、抗ウイルス性及び抗腫瘍活性を含むが、これに限らず、強力な免疫調節性の活性を有する化合物を含む。特定のIRMは、サイトカインの生成及び分泌を調節する。例えば、特定のIRM化合物は、例えば、I型インターフェロン、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、及び/又はMCP−1のようなサイトカインの生成及び分泌を誘導する。他の例としては、特定のIRM化合物が、IL−4及びIL−5のような特定のT2サイトカインの生成及び分泌を阻害し得る。加えて、あるIRM化合物はIL−1及びTNF(米国特許第6,518,265号)を抑制すると言われている。
【0025】
特定のIRMは、小有機分子であり(大きい生体分子、例えばタンパク質、ペプチド、核酸等とは反対に、例えば、約1.7E〜15マイクログラム(1000ダルトン)未満、好ましくは約8.3E〜16のマイクログラム(500ダルトン)未満の分子量)、例えば、以下に開示される。米国特許第4,689,338号、同第4,929,624号、同第5,266,575号、同第5,268,376号、同第5,346,905号、同第5,352,784号、同第5,389,640号、同第5,446,153号、同第5,482,936号、同第5,756,747号、同第6,110,929号、同第6,194,425号、同第6,331,539号、同第6,376,669号、同第6,451,810号、同第6,525,064号、同第6,541,485号、同第6,545,016号、同第6,545,017号、同第6,573,273号、同第6,656,938号、同第6,660,735号、同第6,660,747号、同第6,664,260号、同第6,664,264号、同第6,664,265号、同第6,667,312号、同第6,670,372号、同第6,677,347号、同第6,677,348号、同第6,677,349号、同第6,683,088号、同第6,756,382号、同第6,797,718号、同第6,818,650号、及び同第7,7091,214号、米国特許公開第2004/0091491号、同第2004/0176367号、及び、同第2006/0100229号、及び国際特許公開WO2005/18551号、同WO2005/18556号、同WO2005/20999号、同WO2005/032484号、同WO2005/048933号、同WO2005/048945号、同WO2005/051317号、同WO2005/051324号、同WO2005/066169号、同WO2005/066170号、同WO2005/066172号、同WO2005/076783号、同WO2005/079195号、同WO2005/094531号、同WO2005/123079号、同WO2005/123080号、同WO2006/009826号、同WO2006/009832号、同WO2006/026760号、同WO2006/028451号、同WO2006/028545号、同WO2006/028962号、同WO2006/029115号、同WO2006/038923号、同WO2006/065280号、同WO2006/074003号、同WO2006/083440号、同WO2006/086449号、同WO2006/091394号、同WO2006/086633号、同WO2006/086634号、同WO2006/091567号、同WO2006/091568号、同WO2006/091647号、同WO2006/093514号、同WO2006/098852号。
【0026】
小分子IRMのさらなる例は、特定のプリン誘導体(米国特許番号第6,376,501及び6,028,076に記載されているようなもの)、特定のイミダゾキノリンアミド誘導体(例えば米国特許第6,069,149に記載されているようなもの)、特定のイミダゾピリジン誘導体(例えば米国特許第6,518,265に記載されているようなもの)、特定のベンゾイミダゾール誘導体(例えば米国特許第6,387,938号に記載されているようなもの)、5つの部分から成る窒素含有複素環式の環(例えば米国特許第6,376,501号、同第6,028,076号及び同第6,329,381号、及び国際特許公開WO02/08905号に記載されているアデニン誘導体)に融合する4−アミノピリミジンの特定の誘導体、及び、特定の3−β−D−リボフラノシリチアゾル[4,5−d]ピリミジン誘導体(例えば米国特許公開第2003/0199461号に記載されているようなもの)、及び、例えば米国特許公開第2005/0136065号に記載の特定の小分子免疫強化物質化合物を含む。
【0027】
他のIRMは、オリゴヌクレオチド配列のような大きな生体分子を含む。幾つかのIRMオリゴヌクレオチド配列は、シトシン−グアニン・ジヌクレオチド(CpG)を含み、このことは、例えば米国特許第6,194,388号、同第6,207,646号、同第6,239,116号、同第6,339,068号、同第6,406,705号に記載されている。CpGを含有する幾つかのオリゴヌクレオチドは、例えば米国特許第6,426,334号及び同第6,476,000号に記載されているもののような合成免疫調節性構造のモチーフを含むことができる。他のIRMヌクレオチド配列はCpG配列を欠き、例えば、国際特許公報WO00/75304号に記載される。さらに他のIRMヌクレオチド配列は、例えば、ヘイル(Heil)他による「科学(Science)」303巻、1526〜1529頁(2004年3月5日発行)に記載されるもののようなグアノシン及びウリジン富化一本鎖RNA(ssRNA)を包含する。
【0028】
他のIRMは、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート(AGP)のような生体分子を包含し、例えば、米国特許第6,113,918号、同6,303,347号、同6,525,028号、及び同6,649,172号に記載される。
【0029】
指示がない限り、化合物に関する参照には、任意の異性体(例えば、ジアステレオマー又はエナンチオマー)、塩、溶媒和物、多形体などを包含する任意の製薬上許容できる形態中の化合物を包含し得る。特に、化合物が光学活性である場合、化合物に関する参照は各化合物のエナンチオマー並びにエナンチオマーのラセミ混合物を包含する。
【0030】
本発明のある実施形態において、IRM化合物は少なくとも一つのTLRの作用物質であって、好ましくはTLR6、TLR7、又はTLR8の作用物質であり得る。ある場合において、IRMはTLR9の作用物質であってもよい。幾つかの実施形態では、IRM化合物は、少なくとも一つのTLR7及びTLR8のアゴニスト、例えば、TLR7/8アゴニスト、TLR8選択アゴニスト又はTLR7選択アゴニストであってもよい。ここで使用しているように、用語「TLR8選択アゴニスト」は、TLR8のアゴニストとして作用するが、TLR7のアゴニストとして作用しないあらゆる化合物も指す。「TLR7選択アゴニスト」は、TLR7のアゴニストとして作用するが、TLR8のアゴニストとして作用しない化合物を指す。「TLR7/8アゴニスト」は、TLR7及びTLR8のアゴニストとして作用する化合物を指す。
【0031】
TLR8選択のアゴニスト又はTLR7選択のアゴニストは、示されたTLRのためのアゴニスト及びTLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR9又はTLR10の一つ以上として作用することができる。したがって、「TLR8選択アゴニスト」がTLR8のアゴニストために作用し、他のいかなるTLRのために作用しない化合物を指すと共に、或いは、TLR8及び、例えば、TLR6のアゴニストとして作用する化合物を指すことができる。同様に、「TLR7選択のアゴニスト」は、TLR7のアゴニストのために作用し、他のいかなるTLRのためにも作用しない化合物を指すが、或いは、TLR7及び、例えば、TLR6のアゴニストとして作用する化合物を指すことができる。
【0032】
特定の化合物のためのTLRアゴニズムは、あらゆる適切な方法でも評価されることができる。例えば、アッセイ及びテスト化合物のTLRアゴニズムを検出することに適したリコンビナント細胞系は、例えば、米国特許公開第US2004/0014779号、同第2004/0132079号、同第2004/0162309号、同第2004/0171086号、同第2004/0191833号、同第2004/0197865号に記載されている。
【0033】
使用される特定のアッセイに関係なく、化合物は、特定のTLRのアゴニストとして識別されることができ、化合物によるアッセイを行う場合、特定のTLRによって媒介されたいくつかの生物活性の少なくとも閾値の増加をもたらす。逆に言えば、化合物は、特定のTLRのアゴニストとして作用しないものとして確認され得、特定のTLRによって媒介される生物活性を検出するように設計されているアッセイを実行するために使用された場合、化合物は、生物活性度の閾値の増加を誘発することができない。特に明記しない限り、生物活性度の増加は、適切な対照例において観察される同じ生物活性度の増加を指す。アッセイは、適切な対照例と連動して実行され得る、又は実行されることができない。当業者は、経験により、特定のアッセイ(例えば特定のアッセイ条件の下で適切な対照例において観察される値の範囲)の充分な熟知を発達することができる、その対照例を実行することは、特定のアッセイの化合物のTLRアゴニズムを測定するために必ずしも必要ではない。
【0034】
特定の化合物が所定のアッセイにおける特定のTLRのアゴニストであるか否かを測定するためのTLR媒介生物活性の正確な閾値の増加は、アッセイの終了点として観察される生物活性、アッセイの終了点を測定又は検出するために使用される方法、アッセイのSN比、アッセイの精度、及び、同じアッセイが一つ以上のTLRのための化合物のアゴニズムを測定するために使用されているか否か、を非限定的に含む公知技術の要素により変化し得る。したがって、全ての可能なアッセイのための特定のTLRのアゴニスト又は非アゴニストである化合物を識別することが必要とされるTLR媒介生物活性の閾値の増加を全般的に記載するのは実際的ではない。しかし、当業者は、このような要素を考慮した適切な閾値をすぐに測定することができる。
【0035】
発現可能なTLR構造遺伝子によって移入されるHEK293細胞を使用するアッセイは、例えば細胞に移入されたTLRのアゴニストとして化合物を識別するための約1μM〜約10μMの濃度で該化合物が提供される場合、例えば、TLR媒介生物活性(例えばNFκB活性)の少なくとも三倍の増加の閾値を使用する。しかし、異なる閾値及び/又は異なる濃度範囲は、特定の状況では適切であり得る。また、異なる閾値は、異なるアッセイにとって適切であり得る。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態において、IRM化合物は、小分子免疫反応調節剤(例えば約1.7E−15マイクログラム(1000ダルトン)の分子量)であってもよい。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態において、IRM化合物は、5つの部分から成る窒素を含有する複素環式の環に融合する2−アミノピリジン、又は、5つ部分から成る窒素を含有する複素環式の環に融合する4−アミノピリミジンを含むことができる。例えば、本発明の実施に適した、5つに分かれた窒素含有複素環式の環に融合する2−アミノピリジンを有する化合物は例えば、非限定的に、置換イミダゾキノリンアミン、例えば、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、ヒドロキシルアミン置換イミダゾキノリンアミン、オキシム置換イミダゾキノリンアミン、6、7、8又は9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ又はアリルアルキレノキシ置換イミダゾキノリンアミン及びイミダゾキノリンジアミンを含むイミダゾキノリンアミンと、非限定的に、アミド置換テトラヒドロイミダゾキノリン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、ヒドロキシルアミン置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、オキシム置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン及びテトラヒドロイミダゾキノリンジアミンを含むテトラヒドロイミダゾキノリンアミンと、非限定的に、アミド置換イミダゾピリジンアミン、スルホンアミド置換イミダゾピリジンアミン、尿素置換イミダゾピリジンアミン、アリールエーテル置換イミダゾピリジンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾピリジンアミン、アミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン、尿素置換イミダゾピリジンエーテル及び、チオエーテル置換イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、テトラヒドロピラゾロナフチリジンアミン、及びピリジンアミン、キノリンアミン、テトラヒドロキノリンアミン、ナフチリジンアミン又はテトラヒドロナフチリジンアミンに溶融された1H−イミダゾダイマーを含むイミダゾピリジンアミンとを含んでもよい。
【0038】
特定の実施形態において、IRM化合物はイミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンであってよい。
【0039】
特定の実施形態において、IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2架橋イミダゾキノリンアミン、6,7融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンであってよい。
【0040】
本明細書で使用する時、置換イミダゾキノリンアミンは、アミド置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンアミン、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン、尿素置換イミダゾキノリンエーテル、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン、ヒドロキシルアミン置換イミダゾキノリンアミン、オキシム置換イミダゾキノリンアミン、6−、7−、8−、又は9−アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ又はアリールアルキレンオキシ置換イミダゾキノリンアミン、又はイミダゾキノリンジアミンを表す。本明細書で使用する場合、置換イミダゾキノリンアミンは、具体的且つ明示的に、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン及び4−アミノ−α,α−ジメチル−2−エトキシメチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノールを除外する。
【0041】
一実施形態において、IRM化合物は、イミダゾキノリンアミン置換スルホンアミド、例えば、N−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミドであってもよい。
【0042】
別の実施形態では、IRM化合物は、チアゾロキノリンアミン(例えば2−プロピルチアゾロ・[4,5−c]キノリン−4−アミン)であってもよい。
【0043】
好適なIRM化合物には、上述のようなプリン誘導体、イミダゾキノリンアミド誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アデニン誘導体、アミノアルキルグルコサミニドホスフェート、及びオリゴヌクレオチド配列が挙げられる。
【0044】
図1は、IRM化合物、特にTLR8アゴニストが、患者が末しょう血液単核細胞の中の樹状細胞の数が減っているにもかかわらずCTCL患者から集められる末しょう血液単核細胞(peripheral blood mononuclear cell:PBMC)から、サイトカイン産生を誘発することができることを図示する。CTCL患者及びボランティアのPBMCはIRM2によってIFN−αが予想外の結果を生じるよう刺激される。
【0045】
さらに、IRM化合物による刺激は、CTCL患者(図2)のNK細胞上のCD69発現の発達を引き起こす。さらに、NK細胞の細胞融合反応も、試験された全てのIRM化合物によって増加した(図3)。セザリー症候群患者からの試料の細胞融合反応は、MF患者及び健常なボランティアからの試料において観察されるものよりも若干少なかった。しかしながら、細胞融合反応の増加は、セザリー症候群患者において通常観察される末しょう血液NK細胞の減少を特に考慮して完全に標識される。
【0046】
CTCL患者、特にセザリー症候群患者は、少なくとも部分的に、重要なIL−12産生株である骨髄性の樹状細胞の減少した数をもたらすIL−12産生が不足する。IL−12は、NK細胞及びT細胞の増殖を刺激し、NK細胞の細胞融合反応を高め、樹状細胞及びモノサイトによって順番にIL−12の産生を高めるIFN−γ産生を刺激する。
【0047】
タイプIインターフェロン、例えばIFN−α又はIFN−γによるPBMCの前処理は、IRM化合物によって刺激されるPBMCによるIL−12の産生を大幅に増加させる。実際は、IFN−γプライミングは、同じ治療を受ける健常ボランティアの人々と比較するとIL−12産生のレベルとなる(図4)。したがって、ある実施形態では、本発明の方法は、細胞集団にタイプIインターフェロン(例えばIFN−α又はIFN−γ)のプライミングのための投与量を接触させる、又は患者にタイプIインターフェロンのプライミングのための投与量を投与することを含むことができる。タイプIインターフェロンは、組換え又は自然発生により得られる。
【0048】
IRM化合物は、インビトロで細胞に接触する、或いは、被検者に投与するのに適したあらゆる処方で提供され得る。処方の適切なタイプは、例えば米国特許第5,238,944号、同第5,939,090号、同第6,245,776号、欧州特許第0 394 026号、米国特許公開第2003/0199538号、及び国際特許公開WO2006/073940号及び同WO2006/074045号に記載されている。本化合物は、限定はしないが、溶液、懸濁液、エマルション、又は混合物の任意の形態を包含する任意の好適な形態で提供され得る。化合物は製薬上許容できるあらゆる賦形剤、担体、又はビヒクルと処方中で供給され得る。例えば、この処方はクリーム、軟膏、エアゾール医薬品、非エアゾールスプレー、ジェル、ローション等のような従来の局所用処方として供給されてよい。処方はさらに、限定はしないが、補助剤、皮膚浸透助剤、着色剤、香料、香味料、保湿剤、増粘剤等を包含する一つ以上の添加物を包含することが可能である。
【0049】
IRM化合物を含む処方は、例えば経口的又は非経口的にあらゆる適切な方法で投与され得る。本明細書で使用する時、経口であるというのは経口摂取を包含する消化管を通しての投与を表す。非経口は、例えば、静脈内、筋肉内、経皮的、皮下的、経粘膜的(例えば、吸入による)、又は局所的のような、消化管以外を通しての処方を表す。
【0050】
本発明の実施に適した処方の組成物は、非限定的に、IRM化合物の物理化学的性質、担体の性質、意図された投薬療法、被検者の免疫系の状態(例えば、抑制されて、損なわれ、刺激された状態)、IRM化合物の投与方法、及び、投与される処方の種類を含む公知技術の要素によって変化する。したがって、全ての可能な用途のための皮膚のT細胞リンパ腫を治療するために効果的な処方の組成物を全般的に記載することは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因を検討することで適切な処方を容易に決定できる。
【0051】
幾つかの実施形態において、本発明の方法が、例えば、被検者に対して約0.0001%〜約20%(特に明記しない限り、本願明細書において提供される全てのパーセンテージは、処方全体に関する重量/重量である)の処方で被検者にIRM化合物を投与することを含むが、幾つかの実施形態においては、IRM化合物は、この範囲外の濃度でIRM化合物を提供する処方を使用して投与されることができる。特定の実施形態において、この方法は、被検者に約0.01%〜約1%のIRM化合物を含む処方、例えば、約0.1%〜約0.5%のIRM化合物を含む処方を投与することを含む。
【0052】
皮膚のT細胞リンパ腫を治療するために有効なIRM化合物の量は、CTCLの少なくとも一つの症状、臨床徴候の進行、又は重症度を制限するか、減らすか、改善するか又は減速するのに十分な量である。皮膚のT細胞リンパ腫を治療するためのIRM化合物の正確な量は、非限定的に、IRM化合物の物理化学的性質、担体の性質、意図された投薬療法、被検者の免疫系の状態(例えば、抑制されて、損なわれ、刺激された状態)、IRM化合物の投与方法、及び、投与される処方の種類を含む公知技術の要素によって変化する。したがって、全ての可能な用途のための皮膚のT細胞リンパ腫を治療するために効果的なIRM化合物の量を全般的に記載することは実際的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因を検討することで適切な量を容易に決定できる。
【0053】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、例えば、被検者に対して約100mg/kg〜約50mg/kgの投薬量を提供する充分なIRM化合物を投与することを含むが、幾つかの実施形態においては、IRM化合物は、この範囲外の投薬量で投与され得る。幾つかのこれらの実施形態において、この方法は、被検者に約10μg/kg〜約5mg/kgの投薬量を提供するための、例えば約100μg/kg〜約1mg/kgの投薬量の充分なIRM化合物を投与することを含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、投薬量は、治療過程の開始の直前に得られた実際の体重を使用して計算され得る。このように計算された投与量において、体積表面(m)は治療工程の開始直前にデュボイス式:m=(体重kg0.425×身長cm0.725)×0.007184を使用して計算される。
【0055】
このような実施形態において、本発明の方法は、充分な投薬量、例えば患者に対して約0.01mg/m〜約5.0mg/mのIRM化合物を投与することを含むが、幾つかの実施形態では、この方法は、この範囲外の投薬量のIRM化合物を投与することによって実行され得る。幾つかのこれらの実施形態において、この方法は、約0.1mg/m〜約2.0mg/mの投薬量を患者に提供するために充分なTLRアゴニストを投与することを含む。
【0056】
投薬措置及び治療期間は、非限定的にIRM化合物の物理化学的性質、担体の性質、意図された投薬療法、被検者の免疫系の状態(例えば、抑制されて、損なわれ、刺激された状態)、IRM化合物の投与方法、及び、投与される処方の種類を含む公知技術の多くの要素に、少なくとも部分的に依存することができる。したがって、全ての可能な用途のための皮膚のT細胞リンパ腫を治療するために効果的な投薬措置及び治療期間を全般的に記載することは実際的ではない。しかしながら、当業者は、このような要素を十分に考慮して適切な投薬措置及び治療持続時間を容易に測定することができる。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態では、IRM化合物は、例えば、1日に約1回、単独投与から投与され得るが、幾つかの実施形態で、本発明の方法は、この範囲外の回数でIRM化合物を投与することによって実行され得る。ある実施形態において、IRM化合物は毎月1回から毎週約二回、投与され得る。一つの具体例において、IRM化合物は、毎週二回投与される。
【0058】
幾つかの実施形態において、IRM化合物は、「必要に応じて」、すなわち、皮膚のT細胞リンパ腫の症状又は臨床徴候が現れる場合にだけ投与され得る。他の実施形態では、IRM化合物は、予定の継続期間にわたって投与され得る。IRM化合物の投与は、一定期間全体にわたって持続してもよく、或いは、休止期間が治療期間に組み込まれることができる。例えば、治療期間は少なくとも2週間、少なくとも4週間、少なくとも8週間、又は少なくとも12週間であってもよい。一つの特定の実施形態において、IRM化合物は、12週間の間、毎週二回投与され得る。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、単に本発明のさらなる例示的な特徴、利点、及び他の詳細を選択したものである。しかしながら、実施例が本目的を提供する際に、使用される特定の物質及び量並びに他の条件及び詳細は、本発明の範囲を過度に制限する方法で解釈されるべきではないことが明らかに理解される。
【0060】
IRM化合物
実施例で使用されるIRM化合物を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例1)
末梢血液サンプルは、菌状息肉腫(MF)患者及びセザリー症候群(SS)から得た。CD4/CD26/CD7細胞の数の評価による末梢血液サンプルのフローサイトメトリー解析は、通常、悪性T細胞を循環させる数を定量化するために使用された。循環悪性T細胞の欠如は、非定型の多孔性核を有するリンパ球のホルマリン固定末しょう血液バフィーコートの1ミクロンの部分の検査によって証明された。患者は、ウィソツカ他(Wysocka et al)、Blood(2002年)100:3287〜3294に記載のように、それらの循環における腫瘍量に基づく3つのグループに分けられた。5%〜19%の循環セザリー細胞を有する患者は、低腫瘍量患者として定義され、20%〜50%の循環セザリー細胞を有する患者は、中度腫瘍量患者として定義され、50%を超える循環セザリー細胞を有する患者は、高腫瘍量患者として定義された。ルーク他(Rook et al.)、J.Invest.Dermatol.Symp.Proc.(1999年)、4:85〜90に記載のように、全ての患者は、約4週間毎でのスケジュールで体外のフォトフェレシスから成る同一の治療を受けた。同齢の健常ボランティアからの血液サンプルは、対照例として使用された。
【0063】
末しょう血液単核細胞(PBMC)は、ルークら、J.Immunol.(1995年)、154:1491〜1498に記載のように、患者及び対照試料のサンプルから集められた。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシン及びL−グルタミン(ギブコ−BRL(Gibco-BRL)、ニューヨーク州、グランドアイランド)が追加されたRPMI 1640(ライフ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(メリーランド州、ゲティスバーグ))で培養された。インビトロで免疫反応を誘発するために、PBMCは、10のμg/mLの最終濃度のIRM1、IRM2又はIRM3により18〜24時間、2×10/mL/ウェルの密度で、24ウェルプレートにおいて培養された。
【0064】
細胞はフローサイトメトリー解析のために収集され、残留する上清はサイトカイン解析のために集められた。
【0065】
細胞の無い上清が、低/中間の負担のセザリー症候群患者(SS(n=8))、菌状息肉腫患者(MF(n=4))、及び健常ボランティア(対照例(n=8))から集められた。上清は、エンドロゲン(Endogen)(IFN−α、マサチューセッツ州、ウォバーン(Woburn)、感応性10pg/mL)、又は、R&Dシステムズインコーポレイテッド(IFN−γ、IL−12p70、IL−12p40、ミネソタ州、ミネアポリス、IFN−γのための感応性10pg/mL、IL−12p70、IL−12p40のための20pg/mL)の抗体を使用して、標準のELISAによってIFN−α、IL−12p70、IL−12p40及びIFN−γの存在の検査を行った。この結果は、図1に示される。
【0066】
(実施例2)
細胞は、NK細胞によって細胞のマーカーの細胞内発現の測定にフローサイトメトリー解析用に収集された。特に明記しない限り、全ての抗体は、カリフォルニア州、サンノゼのBDバイオサイエンス(BD Biosciences)から入手した。NK細胞又はT細胞によってCD69の発現を測定するために、セザリー症候群患者(SS(n=8))及び健常なボランティア(対照例(n=8)))からのPBMCは、(a)抗CD3−PerCp、抗CD56/CD16−APC及び抗CD69−FITC、又は、(b)抗CD4−APC、抗CD8−PerCp及び抗CD69−FITCにより着色された。
【0067】
細胞は、CELLQuestソフトウェアを使用したFACSCALIBUR(共にカリフォルニア州、サンノゼのベクトンディキンソン(Becton Dickinson))によって、フローサイトメトリー及び細胞分類コア(Cell Sorting Core)、アブラムソン癌センター、ペンシルベニア州、フィラデルフィアのペンシルベニア大学で分析された。150,000のイベントが、樹状細胞及びNK細胞を分析するために集められた。この結果は、図2に示される。
【0068】
(実施例3)
PBMCは、上述のように、IRM1、IRM2又はIRM3のいずれかにより24時間刺激された。IRM化合物によるインキュベーションの後、細胞は収集されて、PBS(ニューヨーク州、グランドアイランドのギブコ−BRL)によって洗浄されて、再び蒔かれた。ヒト・リンパ芽球腫K562細胞(メリーランド州、ロックビルのATCC、CCL#243)が、ターゲットとして使用された。標準の4時間のCr51−放出アッセイは、ルークら他、J.Immunol.(1995年),154:1491〜1498に記述されたように実行された。結果は、図3に示される。
【0069】
(実施例4)
セザリー症候群(SS)患者及び健常ボランティア(対照例)からのPBMCが、実施形態1に記載のように得られた。細胞は、24時間、媒質又はIFN−γ(10ng/mL)によって刺激された。その後、細胞は、PBSによって二回洗浄され、さらに24時間、IRM2(10μg/mL)によって再刺激された。IL−12レベルは、実施例1に記載のように、細胞の無い上清において測定された。結果は、図4に示される。
【0070】
本明細書で引用した特許、特許文書、及び刊行物の全ての開示内容は、それぞれが個々に援用された場合と同様に、その全内容が参照によって援用される。不一致である場合は、定義を含む本明細書は調整される。
【0071】
本発明の範囲及び精神を逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明白であろう。例示的な実施形態及び実施例は例示のみを提供し、本発明の範囲の制限を意図しない。本発明の範囲は以下に記載する請求項にのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】IRM化合物に応答した、CTCL患者からPBMCによるサイトカイン産生を示す棒グラフ。
【図2】IRM化合物に応答した、CTCL患者からのNK細胞の活性化を示す棒グラフ。
【図3】IRM化合物に応答した、CTCL患者からのNK細胞の細胞融合反応を示す線グラフ。
【図4A】IFN−γによりプライミングを受けた際の、IRM化合物に応答した、CTCL患者からPBMCによるIL−12産生の増加を示す棒グラフ。
【図4B】IFN−γによりプライミングを受けた際の、IRM化合物に応答した、第2のCTCL患者からPBMCによるIL−12産生の増加を示す棒グラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚のT細胞リンパ腫に作用される細胞を含む細胞集団の細胞媒介性免疫反応を増やす方法であって、
前記細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすために有効な量の免疫反応調節剤(immune response modifier:IRM)化合物に前記細胞集団を接触させることを含み、前記IRM化合物は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である前記方法。
【請求項2】
皮膚のT細胞リンパ腫に作用される細胞を含む細胞集団の細胞媒介性免疫反応を増やす方法であって、
前記細胞集団の少なくとも一つの細胞媒介性免疫活性を増やすために有効な量のIRM化合物に前記細胞集団を接触させることを含み、前記IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである前記方法。
【請求項3】
皮膚のT細胞リンパ腫を有する患者を治療する方法であって、
前記皮膚のT細胞リンパ腫の少なくとも一つの症状又は臨床徴候を改善するために有効な量のIRM化合物を含む医薬品組成物を患者に投与することを含み、前記IRM化合物は、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である前記方法。
【請求項4】
皮膚のT細胞リンパ腫を有する患者を治療する方法であって、
皮膚のT細胞リンパ腫の少なくとも一つの症状又は臨床徴候を改善するために有効な量のIRM化合物を含む医薬品組成物を患者に投与することを含み、前記IRM化合物は、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾ・ピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである前記方法。
【請求項5】
前記細胞媒介性細胞の活性化が、T1サイトカインの生成を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記T1サイトカインがIFN−αを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記T1サイトカインがIL−12を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記T1サイトカインがIFN−γを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞集団がCD4/CD45RO/CLA/CCR4Tリンパ球を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記IRM化合物が少なくとも一つのTLR7及びTLR8のアゴニストを含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記IRM化合物がTLR8選択化合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記IRM化合物の量がIFN−αの生成を誘発するために有効な量である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記IRM化合物がスルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン又はチアゾロキノリンアミンである、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
皮膚のT細胞リンパ腫の治療用の医薬品の調製におけるIRM化合物の使用であって、前記IRM化合物が1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である前記使用。
【請求項15】
皮膚のT細胞リンパ腫の治療用の医薬品の調製におけるIRM化合物の使用であって、前記IRM化合物が、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである前記使用。
【請求項16】
前記IRM化合物がスルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン又はチアゾロキノリンアミンである、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項17】
前記IRM化合物が少なくとも一つのTLR7及びTLR8のアゴニストである、請求項14又は15に記載の使用。
【請求項18】
前記IRM化合物がTLR8選択化合物である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
皮膚のT細胞リンパ腫に影響を受ける細胞を含む細胞集団の細胞媒介性免疫反応を増やす方法であって、
プライミングのための投与量の非存在下での、細胞集団のIRMが誘発されたIL−12生成と比較して、前記細胞集団のIRMが誘発されたIL−12の生成を増やすのに効果的な量のIFN−α又はIFN−γのプライミングのための投与量を前記細胞集団に接触させること;及び
IL−12の生成を誘発するために有効な量のIRM化合物に前記細胞集団を接触させること
を含む前記方法。
【請求項20】
皮膚のT細胞リンパ腫患者を治療する方法であって、
プライミングのための投与量の非存在下での患者内の、IRMが誘発されたIL−12の生成と比較して、該IRMが誘発されたIL−12の生成を前記患者内で増やすのに有効な量のIFN−α又はIFN−γのプライミングのための投与量を前記患者に投与すること;及び
皮膚のT細胞リンパ腫の少なくとも一つの症状または臨床徴候を改善するのに有効な量のIRM化合物を含む医薬品組成物を投与すること
を含む前記方法。
【請求項21】
前記IRM化合物が、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン以外である、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記IRM化合物が、置換イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2−架橋イミダゾキノリンアミン、6,7−融合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、チアゾロナフチリジンアミン、ピラゾロピリジンアミン、ピラゾロキノリンアミン、テトラヒドロピラゾロキノリンアミン、ピラゾロナフチリジンアミン、又はテトラヒドロピラゾロナフチリジンアミンである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞媒介性細胞の活性化がT1サイトカインの生成を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記T1サイトカインがIFN−αを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記T1サイトカインがIL−12を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記T1サイトカインがIFN−γを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記IRM化合物が、少なくとも一つのTLR7及びTLR8のアゴニストを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項28】
前記IRM化合物が、TLR8選択化合物を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IRM化合物が、IFN−αの生成を誘発するために有効な量で提供される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞集団が、CD4/CD45RO/CLA/CCR4Tリンパ球を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
皮膚のT細胞リンパ腫の治療用の医薬品の製造におけるIRM化合物の使用であって、前記調製は、IFN−α又はIFN−γのプライミングのための投与量と組み合わせて使用される前記使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2009−522296(P2009−522296A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548756(P2008−548756)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/049525
【国際公開番号】WO2007/079203
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【出願人】(506238259)ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF PENNSYLVANIA
【住所又は居所原語表記】3160 Chestnut Street, Suite 200, Philadelphia,PA 19104−6283, U. S. A.
【Fターム(参考)】