説明

皮膚を加湿するための経口組成物

活性成分としてのタンパク質および/またはタンパク質加水分解物を含む経口組成物であって、全タンパク質および加水分解物が少なくとも2wt.%のシステイン残基を含む組成物を投与することにより、皮膚の水分、皮膚脂質バランスおよび皮膚の滑らかさを改善することができる。好ましくは、加水分解物は、200から4000ダルトンの間の平均分子量を有する。組成物は、1日当り25から500mgのシステインが補充されるような量で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚水分および脂質条件および皮膚の滑らかさを維持しおよび改善するための方法ならびに生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最も明らかな皮膚の機能は、体内に水を保持するための障壁を形成すること、並びに外側からの水の浸透および周囲の毒素および微生物の侵入を予防することである。皮膚は、3つの異なる層から構成される。
【0003】
表層は、表皮と呼ばれている。表皮は血管を全く含まず、栄養および酸素の供給は皮膚のより深い層から維持される。表皮の底の基底膜は、確実ではあるが厳密ではない状態で、表皮を下層に付着させている。第2の層はより深くに位置し、真皮と呼ばれている。それは、血管、神経、毛根および汗腺を含む。真皮の下に脂肪の層(皮下脂肪)が位置する。
【0004】
表皮の全ての細胞は、究極的に基底細胞の単一の層から生じる。この層は、基底層と呼ばれており、基底膜に位置する。この基底層から生じる「娘細胞」は、段階的に上方へ移動し、その中心核を失い、並びにケラチンと呼ばれる皮膚タンパク質および脂質と呼ばれる脂肪の生産を開始する。それは現在ケラチノサイトとして知られ、皮膚細胞の形質転換の過程はケラチン化と呼ばれている。それらが皮膚厚中を上方へ移動するうちに、それらの形態はゆっくり変化する。変化した細胞は別個の層を形成し、それは自然に互いに混和する。表皮の最も外部の層(皮膚の角質「樹皮」)は、角質層と呼ばれている。角質層の構造は、皮膚の障壁機能を維持するために必須である。この層の細胞は、連続的に磨り減り、下からの新たな細胞で置き換えられる。磨り減る過程は、剥離と呼ばれている。
【0005】
正常なケラチン化および剥離は、タイミングおよびバランスに依存する。健康な角質層の生産は、細胞が正常な速度で作られるとき、細胞が正常な速度で脱離するとき、およびこれらの2つの過程が互いに同期しているときに生じる。
【0006】
乾癬の場合のように、ケラチノサイトが、なんとか脱離できる速度よりも速く生産される場合、鱗状プラーク(scaly plaques)が形成される。剥離があまりに早く起こる場合、皮膚は効果的な保護障壁とならない。
【0007】
健康できれいな皮膚は、表皮(特に角質層の)の最適な障壁機能に直接関係する。障壁機能の減少または異常な障壁機能は、乾燥した脆性の皮膚並びに感染および刺激への敏感性の増大をもたらす。不完全な皮膚の主要な徴候は、過度の水分喪失に起因する乾燥である。
【0008】
表皮における、水および表皮性脂質、特にスフィンゴ脂質(またはセラミド)、脂肪酸およびコレステロールの適切な量の存在は、その障壁機能を果たすために健康な皮膚にとって重要であるだけではなく、柔らかく滑らかな皮膚の一般的外観のためにも重要である。
【0009】
表皮(特に角質層)の厚みは、皮膚の外観に影響を及ぼす別の因子である。表皮の肥厚は、平滑性の減少および皮膚の鈍感(dullness)として認識される可能性があり、およびより水分含量の低い皮膜の感覚を併発する可能性がある。「外因性老化(extrinsic aging)」という用語は、表皮のこの肥厚を記述するために用いられ、それは外因的な因子、主に光損傷に起因する。
【0010】
外因的ならびに内因的な因子は、皮膚の特性に影響を及ぼすことが知られている。皮膚の特徴を改善するために現時点で提唱される大多数の生成物は、外因的因子に重点を置く局所生成物である。そのような生成物は以下を含む:(a)閉塞剤(occlusives)、物理的に水分喪失を遮断する(例:ワセリンおよびその他の油およびミネラル);(b)湿潤剤(humectants)、角質層に水を引きつける(例:グリセリン、ソルビトール、尿素);(c)緩和剤(emollients)、皮膚剥片間で空間を塞ぐ(例:コレステロール、スクアレン、脂肪酸);および(d)回春剤(rejuvenators)必須タンパク質を補充すると主張されている(例:コラーゲン、ケラチン、エラスチン)。これらの局在組成物の有効性は、ほんの少数の事例だけでしか証明されていない。
【0011】
皮膚の障壁機能および皮膚の外観に対する内因性因子の役割における関心は増加している。内因性因子は栄養に影響を受けるため、皮膚の外観に対する栄養の役割が長年研究の対象となってきたが、系統的なデータはわずかである。オランダでの研究において、皮膚条件に対する血清および食事中の栄養濃度の影響について、ビタミンおよびカロテノイドに重点が置かれて研究された(Boelsma et al., Am .J .Clin. Nutr. 77 (2): 348−355, 2003)。
【0012】
健康な皮膚を維持するための経口補助食品は、最近になって導入された。それらのほとんどは、酸化防止剤およびしばしばグルコサミン、ヒアルロン酸、セラミドまたは不飽和脂肪酸の混合物を含む。効果は、主に、UV照射におけるストレス応答および傷害後の障壁機能の回復に関する(Thiele et al., Curr. Probl. Dermatol. 29: 26−42, 2001)。それらの成分は、表皮の抗酸化防御を強化することによる脂質過酸化の防止、または表面細胞を囲む細胞外水性脂質(hydrolipid)マトリックスの完全性の支持、または皮膚における免疫活性の刺激の何れかを行うことが既知である。
【0013】
カロテノイドおよび高用量ビタミンといった抗酸化剤はまた、酸化促進物電位(pro−oxidant potential)を及ぼす可能性があることに留意すべきであり、このことは、同時に鉄が補充される場合または細胞障害によって鉄が放出される場合に特に著しい。
【0014】
JP−A2004−107238は、角質層の障壁機能を改善しおよび皮膚の水分を保持するためのキットを開示している。キットは、オリーブ油、スクアレン、海洋ミネラル、セリン、異性化糖またはトリメチルグリシンを含む局所組成物、およびセラミド、ヒアルロン酸、シルクペプチド、グルコサミン、グリシン、ナイアシンまたはコラーゲンを含む経口組成物を含む。
【0015】
経口補助食品イヴェル(Evelle)(登録商標)は、抗酸化剤(ピクノジェノール(pycnogenol)、ビタミンC、ビタミンE、ブルーベリー抽出物およびカロテン供給源トマト抽出物、セレン)、ビオチン、グルコン酸亜鉛、加水分解コラーゲンおよびサケ由来グルコサミノグリカン、ならびに天然ケイ酸塩供給源の混合物を含む。生成物は、皮膚の老化の症候を改善することが示された(D. Segger and F. Schonlau. J. Dermatolog. Treat. 15 (4): 222−226, 2004)。
【0016】
塩水魚に由来する軟骨多糖類を含む補助食品であるイミディーン(Imedeen)(登録商標)は、皮膚状態の自己評価、超音波による濃度測定によって、1年の補充の後に、光線加齢および色素沈着過剰、表皮を介した水分喪失および皮膚平滑性に対して修復効果を示すことが推定された(M. E. Kieffer and J. Efsen. J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol. 11 (2): 129−136, 1998.)。イミディーンによる重篤な有害事象は2005年に報告された(J. F. van Leeuwen, C. S. van der Hooft, L. E. Vos, M. W. Bekkenk, E. J. van Zuuren, and B. H. Stricker, Ned.Tijdschr.Geneeskd. 149 (24): 1353−1356, 2005)。
【発明の詳細な説明】
【0017】
高い割合でシステイン残基を含むペプチドおよびタンパク質は、経口投与された場合、皮膚、特に角質層に潤いを与えることが可能であり、スフィンゴ脂質およびセラミドに関する表皮の脂質バランスを回復できることがわかった。その際、ペプチドは、表皮の障壁機能の悪化を予防しおよび障壁機能を回復させ、それによって、より滑らかで、快適で、柔軟な皮膚の感覚を提供する。水および脂質のバランスへの効果並びに表皮の障壁機能の効果は、真皮に由来する特異的な皮膚の問題に対する効果とは異なる。例えば、皮膚の変色は、真皮における色素形成の障害に関連し、および、にきびのような病理学的皮膚症状は、しばしば真皮に位置する皮脂腺の炎症に起因する。現在までに、水分含有が不十分な表皮の問題を解決する、満足いく解決策は利用可能となっていない。本発明による治療は、主として、例えば皮膚の健康問題を予防または治すことでありえ、従って医学的なものと成り得る。また、美容問題が健康問題を伴う場合に使用することも意図され、または美容上の性質のみに関する症状を治療することも意図される。
【0018】
本発明による皮膚を加湿するために使用されるペプチドおよび/またはタンパク質は、少なくとも2wt.%、好ましくは少なくとも3wt.%のシステイン残基を含み、より好ましくは少なくとも5wt.%、さらにより好ましくは少なくとも6wt.%および最も好ましくは少なくとも6.5wt.%のシステイン残基を含む。ペプチドのシステイン含有量は、例えば20wt.%と同程度に高くてよいが、実際的な目的のためには、最高で10wt.%のシステイン含有量で十分である。さらに、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%のペプチドが、少なくとも1つの末端システイン残基を有することが好ましい。システイン含有量を決定する際、システインの酸化状態は無視され、すなわち、シスチン残基は2つのシステイン残基とみなされる。システイン残基はまた、別の等価の形態、例えば、遊離システイン残基に加工される可能性があるチオエステルの状態であってもよい。
【0019】
本発明によれば、要求されるシステイン含有量を有する単一のペプチドまたはタンパク質を使用してよい。しばしば、ペプチドおよびタンパク質の混合物を使用することが好ましい。総タンパク質物質が、最小で2wt.%、好ましくは少なくとも3wt.%、最も好ましくは少なくとも5wt.%のシステイン含有量を有する限り、比較的高いシステイン含有量のペプチドを、システイン含有量のより低いペプチドまたはタンパク質と組み合わせて使用してもよい。ペプチドは、例えば40,000Daまでの、好ましくは25,000Da未満の分子量を有し、システイン含有量が最小で2wt.%であるタンパク質であってよく、または総タンパク質物質が少なくとも2wt.%のシステインを含む限り、そのようなタンパク質とその他のタンパク質および/またはペプチドとの混合物であってよい。本発明の状況において、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、特別に規定されない限り、互換的に使用される。
【0020】
ペプチドおよびタンパク質の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%(重量)の分子量が10kDa未満であることが好ましく、このことは、それらが100未満のアミノ酸を含むことを意味する。
【0021】
遊離アミノ酸の含有量は5wt.%未満であることが好ましいが、食品の適用のために、例えば10wt.%までのより高いレベルをしばしば使用してもよい。安全上の理由のために、システインが酸化した(架橋したジスルフィド)形態であることが好ましい。特に、システインの少なくとも80%が、酸化した(シスチン)形態である。
【0022】
好ましい実施態様において、システインを含有するペプチドおよびタンパク質は、システイン含有タンパク質を特異的に加水分解しおよび任意に分画を行って得られるペプチドの混合物を含む。システインを含有するペプチドは、好ましくは200および4000Daの間の重量平均分子量を有し、より好ましくは300および2000Daの、最も好ましくは500および1500Daの重量平均分子量を有する。特定の実施態様において、ペプチドは、グルタチオンであってもよく、またはグルタチオンを含んでもよい。
【0023】
それ自体で使用されるまたはシステイン含有ペプチドに加水分解するために使用される適切なシステインを含有するタンパク質は、ミルクタンパク質、特にホエータンパク質を含み、蛋白質濃縮物(WPC60またはWPC80)またはホエー蛋白質単離物が好まれる。経済的スケールにおいて利用可能であるならば、アルファ−ラクトアルブミン、ベータ−ラクトグロブリンまたは血清アルブミンもまた使用してよい。その他の適切なタンパク質供給源は、卵蛋白、小麦、トウモロコシまたはアブラナアルブミンタンパク質、酵母もしくは酵母抽出物を含む。
【0024】
加水分解は、例えば、最初に酵素的または化学的に開始ペプチドをペプチド混合物へと切断し、その後(末端システイン残基の切断では相対的に不活化である)エキソペプチダーゼでペプチド混合物を処理することで行うことができる。先の切断は酸性加水分解によって行うことができるが、より好ましくはエンドペプチダーゼ処理によって行うことができる。適切なエンドペプチダーゼはペプシン、アルカラーゼ(Alcalase)(Novo)などを含む。適切なエキソペプチダーゼは例えばカルボキシペプチダーゼYを含む。切断の工程はまた、エンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼの適切な混合物を使用して同時に行うことができる。その代わりにおよび好ましくは、加水分解はまた、適切なエキソペプチダーゼ活性をも有するエンドペプチダーゼを使用して、単一酵素の工程によって行うことができる。エンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼの両活性を有するそのような酵素の例は、フレーバーザイム(Flavourzyme)、酸性プロテアーゼA(Acid Protease A)、プロテアーゼM(Protease M)、プロテアーゼ2A(Protease 2A)、プロテアーゼB(Protease B)、酸性プロテアーゼ(Acid Protease)(EDC)およびコロラーゼ(Corolase)を含む。酵素の組合せもまた、効果的に使用できる。
【0025】
酵素反応は、特定の酵素または酵素の組合せに適した条件を用いて行われる。反応条件は、従って、酵素の最適温度に依存した20から60℃の間の温度、酵素の最適pHに依存した例えば3から10といったpH値、および約30分から24時間で変化してもよい反応時間を含んでよい。反応時間は、反応温度に依存して、ならびに酵素の濃度、活性および特異性に依存して選択される。
【0026】
取得される加水分解産物は、濾過(限外濾過、ナノ濾過)、クロマトグラフィー(親和性、イオン交換等)、電気泳動法、抽出、沈殿、および当該分野において既知のその他の技術、ならびにそのような技術の組み合わせを用いた更なる分離に供することができる。最終加水分解生成物は、濾過助剤(例えば珪藻土)を通したろ過によって「洗練」し、何れかの不溶物を除去してよい。システイン含有ペプチドを生産するためにまさに適したタンパク質を加水分解する方法は、EP−A1.201.137に記述される。
【0027】
ペプチドまたはペプチド(peptide or peptides)は、化学的ペプチド合成または組換えDNA技術によって得てもよい。
【0028】
システイン含有ペプチドは、表皮(特に角質層)における妨害された水および/または脂質バランスならびに障壁機能の治療または予防のために、ならびにより柔らかく、より柔軟でおよびより良好な皮膚感覚を提供するために投与される。1日当り成人1人につき25から500mgまたは1日当り体重1kg当り0.3から8mgのシステインの摂取に相当するレベルで、それらを投与することができる。好ましいレベルは、1日当り成人1人につき50から250mgまたは1日当り1kg当り0.7から4mgである。
【0029】
システイン含有ペプチドは、それ自体で、または、好ましくは、医薬組成物または栄養組成物として投与することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、コーティング錠、ロゼンジ、シロップ、散剤、サッシェ(sachets)、液剤(solutions)、懸濁剤(suspensions)、ゼリーサッシェを含む。医薬組成物は、更に、従来の添加剤、例えば、ラクトース、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、二酸化ケイ素、ペクチン、キトサン、寒天またはアルギン酸、安定剤、香料、着色剤などを含むことができる。医薬組成物は、1の用量単位または複数(例えば2から6)の1日の用量単位で、1日の用量レベルを含むことができる。医薬組成物の全重量は、乾燥形態で100から1000mg、例えば、錠剤で400から800mgであってよい。本発明の目的のために、医薬組成物は美容的組成物を含む。
【0030】
栄養組成物は、固形、半固形または溶液食品を含む。固体生成物は、例えば栄養バー(タンパク質、チョコレート、ムースリ、ナッツ、その他による)、クッキー、菓子、チューインガム(10−40wt.%のガム基礎剤に加えて、ペプチドの形での0.1−2.5wt.%のシステイン、および更なる成分を含む)、パンを含む;半固体食品は、できあいの食事(ready made meals)、チーズ製品、肉製品、豆腐、パスタを含む。液体食品生成物は、飲料(例えばソフトドリンク)、牛乳または発酵性の乳製品、例えばヨーグルトもしくは飲料用ヨーグルト等を含む。任意に、安定剤(ペクチン、カラギーナン、イナゴマメガム、キサンタンガムまたはその他のガム)、乳化剤(モノおよびジグリセリド、TWEEN、SPAN、脂肪酸の蔗糖エステル類)、増粘剤(澱粉、化工デンプン、麦芽デキストリン、アルギン酸、キトサンまたはそれらの塩、その他の親水コロイド)を、香料および着色剤と同様に、栄養性生物に含めることができる。例えば全重量が0.05−5wt.%のレベルの増粘剤は、特にゼリー様生成物(例えばゼリーサッシェ)に有用である。本発明のペプチド、ならびにその混合物またはその他のペプチドまたはその他の活性成分による混合物を含む食品は、100gの乾燥食物当りまたは1リットルの溶液食品当り、5から500mgのシステインを含んでよい。補助食品は、高いレベルでシステイン含有ペプチドを含んでよく、例えば、補助食品に基づいて0.1から2.5wt.%のシステインを含んでよい。適切な補助食品は、例えばインスタント飲料のための錠剤および散剤である。
【0031】
システインペプチドには、皮膚を加湿するためのその他の活性成分またはアジュバント、例えばセラミド、ヒアルロン酸、グルコサミン、ナイアシン、ビタミン(C、E)、カロテノイドまたはその他抗酸化剤などを、特にシステイン含有ペプチドとそのようなその他の構成成分との間の重量比が、9:1から1:4の間で、特に4:1から1:2の間で組み合わせることができる。本発明はまた、そのような付加的な構成成分、特に、グルコサミン、N−アセチル−グルコサミン、それらのヘテロ−およびホモ−、オリゴ−およびポリマー(ヒアルロン酸(ポリ[D−グルクロン酸−β−1,3−N−アセチルグルコースアミン−β−1,4−])またはセラミド((N−C12−C20−アシル)−2−アミノ−C12−C20−アルカン(またはアルケン)−1,3−ジオールまたは−1,3,4−ジオール)を含む)と共に、ここに記載されるシステイン含有ペプチドを好ましくは上述の比率で含む、医薬生成物に関する。システインの量に関して、システインとその他のものまたは成分との間の重量比は、好ましくは1:1から1:100の間であり、特に1:3から1:30の間である。
【実施例】
【0032】
例I:システイン含有ペプチドが濃縮されたタンパク質加水分解物の製造および特徴
10%(w/w)WPI(Bipro)を作製し、室温で6時間、pH2.0で、0.5%(w/w、基質に基づく)ペプシン(Merck)で加水分解した。次に、水酸化ナトリウムを用いてpHをpH7.0に増大させ、0.5%(w/w、基質に基づく)の酸性プロテアーゼ(EDC)を添加し、20時間(50℃)インキュベーションを続けた。溶液を15分間85℃まで加熱し、反応を終了させた。その後、大多数の遊離アミノ酸を、限外濾過を使用して除去した。公称の分子遮断(molecular cut−off)が1000ダルトンである膜を用いた。溶液を、500%のダイアフィルトレーション(diafiltration)に膜分離した(diafiltered)。得られた残留物(retentate)を、その後噴霧乾燥した。最終生成物のタンパク質含有量を、ケルダール法を用いて決定した;生成物のシステイン含有量は、エルマンズ試薬(Elmann’s reagent)を用いて決定した(Beveridge et al., J. Food Sc. (1974) vol. 39, p 49 51)。分子量プロファイルは、HPLCサイズ排除クロマトグラフィー(Shodex column)を用いて決定した。
【0033】
加水分解物の組成は以下の表1の通りである(w/w%)。
【表1】

【0034】
分子量の分布(HPLC)は以下の表2の通りである。
【表2】

【0035】
生成物は、幅広いpH範囲にわたって良好な可溶性を示す。1%(w/w)水溶液は、低いpH(3−5)で少なくとも70%の、pH6−9では少なくとも80%のタンパク質(窒素)可溶性を示す。
【0036】
熱安定性:中程度に低いpH、例えば3.5−4.0では、殺菌条件(65−85℃で10−30秒)において、安定である(沈殿しない、または凝集しない)。中性のpHにおいても、生成物は殺菌またはUHT処理後に安定である。
【0037】
例II:システイン濃縮ペプチドを含むカプセルの製造
【表3】

【0038】
成分を十分に混合し、自動的にゼラチンカプセルに充填した。全カプセル重量は280mgとした。3つのカプセルにより、50mgのシステインが供給される。
【0039】
例III:システインペプチドの摂取後の皮膚科学的測定
研究設計:プラセボ対照二重盲検(4群の並行した群における、摂取開始前と摂取開始から6週後との間の有効性の比較)。22人の女性日本人被験者(28−45歳)を4つの群に分けた。3、6または12の試験生成物/日またはプラセボ(100%微結晶性セルロース(MCC)による280mgカプセル剤、システインペプチド含有カプセル剤と同様に作成)のカプセル剤を摂取させた。1日の補充は、50mg(群A)、100mg(群B)もしくは200mg(群C)のシステインにそれぞれ相当し、またはシステインが補充されない(プラセボ群)。試験生成物は、例IIに記述されるように、システイン濃縮ペプチドを含むカプセル剤で構成した。用量および投与計画は、以下の表4の通りとした。
【表4】

【0040】
多くのパラメータは、客観的に皮膚特性を評価する尺度であった。これらの方法は、皮膚科学的研究において最新のものである。測定は、システイン濃縮ペプチドを含むカプセルまたはプラセボの摂取の開始時およびそれから6週後において行った。
【0041】
皮膚油含有量の分析:皮膚脂質(油)測定は、セブメーター(Sebumeter)(Integral Corporation)を用いて、眉より2cm上の額において行った。
【0042】
皮膚表面の含水量および角質層の膜厚:測定は、ASA−MI(AsahiBiomed Co., Ltd)を用いて、右耳たぶの下から唇の右端への直線上の耳たぶから4cmの位置で行った。
【0043】
以下の表5および6は、6週後に観察された相対的変化を示す。
【表5】

【表6】

【0044】
例IV:システイン濃縮ペプチドの摂取後の皮膚知覚研究
研究は、上述の皮膚科学的研究と並行して行ったが、異なる被験者の群で行った。128人の女性の日本語被験者(年齢22−35歳)を、32人ずつの被験者の4つの群に分けた。群には、例IIに従って製造した、プラセボまたは特定量のシステイン濃縮ペプチドのカプセルの何れかを与えた。3つの投与群には、例IIIのように、それぞれ、50、100mgまたは200mgのシステインの1日の補充を達成するため、3、6または12のカプセル剤/日を摂取させた。研究期間の後、被験者に質問表への記入を依頼した。その質問表において、皮膚の知覚の特性は数量化した様式(等級1−5)で評価した。
【0045】
有意なおよび用量依存的な改善が以下の質問に関して報告された:
「以前よりも、より滑りやすい皮膚感覚がある」;
「以前よりも、より水分の豊富な皮膚感覚がある」;および
「以前よりも、より滑らかな皮膚感覚がある」。
【0046】
加えて、皮膚の柔軟性も評価した。
【0047】
改善の傾向は、一般的な皮膚および表面の外観(にきび、鈍感さ、脂性の光沢、粘着性)を評価する一定の質問においても報告された。
【0048】
結果は以下の表7に示す。
【表7】

【0049】
例V:錠剤の製造
【表8】

【0050】
散剤は、前もって混合したが、ステアリン酸マグネシウムは、混合の最後の数分まで混合を控えた。錠剤は、直接の圧縮によって製造した(圧縮圧20kN、硬度:160N)。錠剤重量は850mgであった。
【0051】
例VI:皮膚加湿飲料
【表9】

【0052】
全ての乾燥成分を水に溶解し、pHは、最初にpH3.5までクエン酸(合計+/−0.14%)で調整し、その後pH3.8までリンゴ酸(合計+/−0.66%)で調整した。溶液は、70℃まで予め加熱し、続いてペクチン混合物(4%水溶液)を添加した。均質化(150バール)の後、生成物を充填および殺菌し、または殺菌し無菌的に充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚障壁機能、皮膚水分、皮膚脂質バランスおよび/または皮膚の滑らかさを支持または回復するための経口医薬または栄養組成物を製造するための、少なくとも2wt.%の全システイン含有量を有する1以上のペプチドおよび/またはタンパク質の使用。
【請求項2】
前記1以上のペプチドおよび/またはタンパク質の全システイン含有量が少なくとも3wt.%である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記1以上のペプチドおよび/またはタンパク質の全システイン含有量が5から20wt.%の間である請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記1以上のペプチドおよびタンパク質が、200から4000ダルトンの間の平均分子量を有する請求項1から3の何れか1項に記載の使用。
【請求項5】
混合物のペプチドの少なくとも70%が10kDa未満の分子量を有する請求項1から4の何れか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物が、1日当り5から250mgの間のシステインに相当する用量で投与される請求項1から5の何れか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物が更に、特にグルコサミン、ヒアルロン酸、セラミド、ナイアシン、ビタミン、カロテノイドおよびその他の抗酸化剤から選択される、皮膚条件を改善するためのその他の薬剤を含む、請求項1から6の何れか1項に記載の使用。
【請求項8】
グルコサミンおよびその誘導体、セラミド、ナイアシン、ビタミン、カロテノイドならびにその他の抗酸化剤から選択される少なくとも1つの活性成分と共に、特にグルコサミン、ヒアルロン酸およびセラミドと共に、少なくとも2wt.%の全システイン含有量を有する1以上のペプチドおよび/またはタンパク質を含む栄養または医薬組成物。
【請求項9】
栄養補助食品、典型的にはピルもしくはカプセルである、または機能性食品生成物、典型的にはゼリーサッシェ、清涼飲料、ヨーグルトもしくはヨーグルト飲料、ミルク主成分飲料(milk based drink)、インスタント飲料もしくは何れかの機能性飲料、チューインガム、キャンディ、キャンディバー等である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ゼリーサッシェ、清涼飲料、ヨーグルト、ヨーグルト飲料またはその他のミルク主成分飲料、チューインガム、キャンディまたはキャンディバーである、少なくとも2wt.%の全システイン含有量を有する1以上のペプチドおよび/またはタンパク質を含む栄養または医薬組成物。
【請求項11】
皮膚水分、皮膚脂質バランスおよび/または皮膚の滑らかさを向上させることに関与する、皮膚障壁機能を回復または支持するための方法であって、それを必要とする被験体に、少なくとも2wt.%で全システイン含有量を有する1以上のペプチドまたはタンパク質の有効量を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2009−511425(P2009−511425A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528973(P2008−528973)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/NL2006/050211
【国際公開番号】WO2007/027092
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(506276262)キャンピナ・ネダーランド・ホールディング・ビー.ブイ. (8)
【Fターム(参考)】