説明

皮膚バリア機能改善組成物

【課題】 皮膚バリア機能改善作用と止痒効果とを有し、さらに、良好な持続滞留性と使用感とを示す組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 ムコ多糖類又はその誘導体を0.2〜20重量%含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた皮膚バリア機能改善作用と止痒効果とを有し、良好な持続滞留性と使用感とを示す組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は物理的、化学的および生物学的な種々の外的刺激を受ける。皮膚バリア機能は、これらの外的刺激から生体を防御するものである。この機能が低下すると外界からの刺激で、肌荒れ、皮膚の汚染および接触皮膚炎のような様々な皮膚炎等を起こす。さらに皮膚バリア機能の低下は、皮膚からの水分蒸散量を増加させ、皮膚の乾燥(ドライスキン)や痒みを引き起こす。通常、皮膚バリア機能は、皮膚からの水分蒸散量(経表皮水分蒸散量;TEWL)で測定される。
【0003】
従来から、皮膚の乾燥を防ぐために、尿素、ヘパリン類似物質の様な保湿剤、ワセリンの様な皮膚からの水分蒸散を防ぐバリア機能改善剤又は高分子被覆フィルム等が用いられている。しかし、これらは効果が十分ではなかったり、また、べたつき感、違和感又は刺激感といった不快な使用感がある。また、乾燥による痒みを改善することができない。
【0004】
これに対して、特開平10−182332号公報や特開2000−212203号公報等には化粧品用原料として、キトサン及びその誘導体が記載されているが、皮膚バリア機能改善作用や止痒効果については記載されていない。
【0005】
また、使用感をよくするための試みとしては、乳液、クリーム等の乳化系製剤の開発が行われている。しかしながら、これらの乳化系製剤には、細胞膜の破壊やタンパク質変性等による細胞毒性を示すものが多いことが知られている界面活性剤や乳化剤が使われていることから、皮膚バリア機能を低下させ、かえって皮膚の乾燥を悪化させてしまうことがあるという問題があった。
【特許文献1】特開平10−182332号公報
【特許文献2】特開2000−212203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、皮膚バリア機能改善作用と止痒効果とを有し、さらに、良好な持続滞留性と使用感とを示す組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ムコ多糖類又はその誘導体を0.2〜20重量%の濃度で用いることにより皮膚バリア機能改善効果に優れ、効果が長時間持続し、しかも止痒効果をも有することを見いだした。
【0008】
本発明は、ムコ多糖類又はその誘導体を0.2〜20重量%含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、ムコ多糖類又はその誘導体を含有する。
【0010】
上記ムコ多糖類とは、ヘキソサミンを構成成分とする多糖類を意味する。上記ムコ多糖類としては特に限定されないが、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種が好適である。また、上記ムコ多糖類の誘導体とは、上記ムコ多糖類における分子内の小部分の変化によって生成される化合物を意味し、例えば、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩等が挙げられる。
【0011】
上記ムコ多糖類としては、なかでも、キトサン又はその誘導体がより好適に用いられる。
【0012】
上記キトサンとは、キチンを濃アルカリ溶液等と加熱する等して、40mol/mol%以上の脱アセチル化をすることにより得られるポリ−N−アセチル−D−グルコサミンのことをいう。使用する原料キチンの種類、キトサンの製造方法については特に限定されない。
【0013】
上記キトサンの誘導体としては、例えば、キトサンのグルコサミン残基のアミノ基、−OH基又は−CH2OH基がアルキル化、サクシニル化、ヒドロキシアルキル化、アルキルカルボニル化、ヒドロキシアルキルカルボニル化されたもの等が挙げられる。更に、キチンの脱アセチル化されたアミノ基が有機酸や無機酸と塩を形成しているもの等も挙げられる。
【0014】
上記ムコ多糖類又はその誘導体は、平均重合度が5以上、1000未満であるのが好ましい。5未満であると、充分に皮膚バリア機能改善効果が得られないことがあり、1000以上になると、物性が変わり、やはり十分に皮膚バリア機能改善効果が得られなくなることがある。平均重合度のより好ましい範囲は、50以上800未満である。
【0015】
また、上記ムコ多糖類又はその誘導体としてキトサンを用いる場合には、平均重合度が5以上、1000未満のキトサンと平均重合度が1000以上、5000未満のキトサンとの混合物であることが好ましい。
【0016】
高い皮膚バリア機能改善効果を有する平均重合度が5以上、1000未満のキトサンと、のびがよく軽い使用感(さっぱり感)と浸透性(なじみ易さ)を得ることができる平均重合度が1000以上、5000未満のキトサンとを混合して用いることにより両者の特徴を併せ持つ皮膚バリア機能改善組成物が得られる。
【0017】
上記平均重合度が5以上、1000未満のキトサンと平均重合度が1000以上、5000未満のキトサンとの混合比としては、平均重合度が5以上、1000未満のキトサン100重量部に対して、平均重合度が1000以上、5000未満のキトサン30〜300重量部が好ましく、より好ましくは50〜150重量部である。この範囲外であると、両者が分離し易くなり製剤化が困難となることがある。
【0018】
なお、上記キトサンの平均重合度は、キトサンのC611NO4を1単位として(n=1)、極限粘度からから求められた数値のことである。
【0019】
上記ムコ多糖類又はその誘導体の含有量の好ましい下限は0.2重量%、好ましい上限は20重量%である。0.2重量%未満であると、充分な皮膚バリア記の改善効果が得られないことがあり、20重量%を超えると、それ以上の効果は期待できないことに加え、溶解しにくく、粘度が高くなり皮膚への追従性が悪くなることがある。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は10重量%である。さらに好ましい下限は1重量%、さらに好ましい上限は5重量%である。
【0020】
上記ムコ多糖類又はその誘導体としてキトサン又はその誘導体を用いる場合には、本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、上記キトサン又はその誘導体を水溶化するために酸を含有することが好ましい。
【0021】
上記酸としては無機酸、有機酸のいずれも用いることができる。上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、酪酸、フマル酸、マロン酸、イタコン酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。特に、カルボン酸にヒドロキシ基を有する化学構造を持つ脂肪酸であるヒドロキシ酸が好ましい。これらの酸は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記酸の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。0.1重量%未満であると、充分にキトサン又はその誘導体を水溶化できないことがあり、10重量%を越えると、適用部位によっては皮膚刺激性を示す可能性がある。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は5重量%である。
【0023】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、更に液体油類を含有することが好ましい。上記液体油類としては特に限定されず、例えば、スクワラン等の炭化水素類、酢酸トコフェロ−ル等のエステル油類、トリグリセライド等のグリセライド油類等が挙げられる。なかでも、スクワランが特に好適である。
【0024】
上記液体油類の含有量の好ましい下限は2重量%、好ましい上限は20重量%であり、より好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は15重量%である。
【0025】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、更に尿素を含有することが好ましい。
【0026】
ムコ多糖類、特にキトサンは、水溶液中において、熱によりメイラード反応が起こりやすく褐変化することがあるが、本発明者らは、尿素を添加することによりキトサン等が安定化して褐変化を防止できることを見出した。
【0027】
上記尿素の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3重量%である。0.1重量%未満であると充分な効果が得られないことがあり、3重量%を超えると、効果がそれ以上高まらないだけでなく、ムコ多糖類が析出し、製剤化が困難となることがある。より好ましい上限は1.5重量%である。
【0028】
なお、本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、メイラード反応防止成分として硫黄原子を有する化合物、例えば亜硫酸塩等は、本発明の効果を消失させる恐れがあり含有しないことが好ましい。
【0029】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、粉末、油分、界面活性剤、増粘剤、有機溶剤、可塑剤、色素、顔料、香料、防腐剤、抗酸化剤等を含有していても良い。
【0030】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、皮膚からの水分蒸散を抑制する効果に優れ、使用感がよいことで、乾燥した皮膚を健やかに保つ効果を有する。即ち、種々原因による皮膚の乾燥、例えば、環境の湿度低下、栄養障害、高齢化、皮膚疾患等による乾燥皮膚を改善することができる。
【0031】
また、本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、アトピックスキン(ドライスキン)、老人性乾皮症、腎透析後の皮膚乾燥、ひび、あかぎれ、進行性指掌角皮症等の乾燥肌にも有効であり、皮膚の乾燥等による皮膚の痒みを抑制することもできる。さらに、物理的、化学的及び生物学的な外的刺激による肌荒れ、皮膚の汚染及び様々な皮膚炎を軽減することができる。
【0032】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物は、従来のキトサンによる特開平5−345711や特開平10−211270等に記載される皮膚保護剤や被覆剤のような、金属塩やアルカリ水溶液を必須成分として、キトサンによる可視的な不溶性のフィルムを形成させるものとは異なり、皮膚角質層の修復を目的としているため、これらのフィルムのような違和感が全くなく、皮膚への追随性や持続性にも優れている。
【0033】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物の剤形としては特に限定されず、例えば、軟膏剤、クリーム剤、液剤(ゲル剤、ゾル剤、水溶液剤、アルコール剤、グリセリン・グリコール剤、油剤、懸濁型ローション剤、乳剤型ローション剤、ニス剤、湿布剤、噴霧剤)等が挙げられる。
【0034】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
【0035】
本発明の皮膚バリア機能改善組成物の適用量は、有効成分の種類、濃度や塗布する部位の状態により特に限定されないが、通常は1日に1〜数回、0.01〜10g/1回程度で適用することが好ましい。また本発明の皮膚バリア機能改善組成物の適用方法としても特に限定されず、手指や器具(へら等)を用いた通常の皮膚バリア機能改善剤塗布方法の他、ポンプ式、スプレー式、チューブ式容器から直接塗布する、湿布する等が挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、優れた皮膚バリア機能改善効果と良好な使用感とを両立することができ、更に止痒効果も有する組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜14)
平均重合度が30及び300のキトサン(和光純薬社製)と乳酸、酒石酸又は酢酸とを表1に示す濃度(重量%)となるように蒸留水中でマグネチックスターラーを用いて攪拌して溶解し、実施例1〜14の組成物を得た。
(比較例1)
乳酸を2重量%となるように蒸留水中でマグネチックスターラーを用いて攪拌して溶解し、比較例1の組成物を得た。
(比較例2、3)
比較例2として白色ワセリン(日本薬局方品、丸石製薬社製)を、また、比較例3として保湿剤としてよく用いられている尿素(和光純薬社製)をマクロゴール軟膏基剤(日本薬局方品、丸石製薬社製)に20重量%となるように混合してなる尿素軟膏を作製した。
(評価)
実施例1〜14及び比較例1〜3で得られた組成物について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
(1)モルモット皮膚上における持続滞留性
5週齢ハートレー系雄性モルモットの背部を剃毛し、次に2.5cm幅粘着テープ(積水化学工業社製、セロハンテープ)を用い、モルモット背部上の予め定めた2.5cm角部分に対して貼付・剥離を4回繰り返し、一定量の角質層を剥離した。ここの一定量の角質層が剥離された皮膚に、各組成物に濃度が0.5重量%となるように色素(エバンスブルー・メルク社製)を混入したものを塗布した。塗布後24時間経過した後に塗布部位を観察し、以下の基準で評価した。
【0038】
〇:塗布部位から、色素が拡散または剥離している範囲が20%未満
△:塗布部位から、色素が一部はみ出し拡散または剥離している範囲が20%以上、50%未満
×:塗布部位から、色素が大きくはみ出し、拡散、剥離あるいは脱落している範囲が50%以上
(2)モルモット角質剥離皮膚による乾燥肌モデルに対するバリア機能改善作用
5週齢ハートレー系雄性モルモットの背部を剃毛し、次に2.5cm幅粘着テープ(積水化学工業社製、セロハンテープ)を用い、モルモット背部上の2.5cm角部分に対して貼付・剥離を4回繰り返し、一定量の角質層を剥離し、乾燥肌モデルとした。角質層剥離部位に、各組成物0.1mLを塗布した。塗布してから1時間後及び24時間後に経表皮水分蒸散量(以下、TEWL)を、エバポリメーターEP−1(SERVOMED社製)を用いて測定した。試験は、各組成物について3匹のモルモットを用い、TEWLは3匹についての結果の平均値を示した。なお、TEWLの数値が低いほどバリア機能改善効果が高いことを示す。
【0039】
【表1】

(実施例15〜25)
平均重合度が300及び3000の各キトサン(和光純薬社製)、乳酸(エビス製薬社製)、スクワラン(マルハ社製)並びに尿素(小堺製薬社製)を表2に示した濃度(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)中で攪拌、懸濁して、実施例15〜25の組成物を得た。
(比較例4、5)
比較例4としてワセリン(丸石製薬社製)を、比較例5としてヘパリノイド軟膏(マルホ製薬社製)を用いた。
【0040】
(評価)
実施例15〜25及び比較例4、5の組成物について、以下の方法により評価した。結果を表2に示した。
(1)健常人による官能性評価
健常人10名(男性5名、女性5名)により、のび、さっぱり感、なじみ易さについて、官能性評価を行った。上記項目について、5:非常に良好、4:良好、3:どちらともいえない、2:やや悪い、1:悪いの5段階評価をしてもらい、各数値の10名の平均値を求めた。この数値が高いほど、使用感がよいことを表す。
(2)24時間後の安定性(分離の有無)
各実施例の組成物をスクリューキャップつき50mLガラス製サンプル瓶に分注して40℃で保存し、24時間後に分離の有無を目視で確認し、分離しなかったものを「○」、分離したものを「×」として評価した。
(3)2週間後の安定性(褐変化の有無)
各実施例の組成物をスクリューキャップつき50mLガラス製サンプル瓶に分注して40℃で保存し、2週間後に色調の変化を目視で確認し、変化のなかったものを「○」、褐変化したものを「×」として評価した。
(4)モルモット角質層剥離皮膚による乾燥肌モデルに対するバリア機能改善作用
5週齢ハートレー系雄性モルモットの背部を剃毛し、次いで2.5cm幅のセロハンテープ用いて、モルモット背部上の2.5cm角の部分を4回貼付・剥離を繰り返し、一定の量の角質層を剥離し、乾燥肌モデルとした。角質層剥離部位に、各組成物0.1mLを全体に行き渡るよう塗布した。塗布1時間及び24時間後に、経表皮水分蒸散量(TEWL)を、エバポリメーターEP−1(SERVOMED社製)を用いて測定した。試験は各例について3匹で行い、TEWLはその平均値で示した。TEWLは数値が低いほど、バリア機能改善効果が高いことを示す。
【0041】
【表2】

(実施例26〜31)
ムコ多糖類を表3に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し攪拌、溶解して実施例26〜31の組成物を得た。
(実施例32〜36)
平均重合度30及び300のキトサン(和光純薬社製)並びに乳酸を表3に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し攪拌、溶解して、実施例32〜36の組成物を得た。
(比較例6〜8)
ムコ多糖類を表3に示す含有量(重量%)となるように注射用水(大塚製薬社製)に添加し攪拌、溶解して比較例6〜8の組成物を得た。
(比較例9〜11)
比較例9として止痒外用剤として用いられている抗ヒスタミン軟膏(興和社製、「レスタミンコーワ」)を、比較例10としてワセリン(丸石製薬社製)を、比較例11として尿素軟膏(興和社製)を用いた。
【0042】
(評価)
実施例15、16、26〜36及び比較例6〜11の各組成物について、以下の方法により評価を行った。結果を表3示した。
(1)止痒性評価1
肘窩及び膝窩に痒みを有するアトピー患者の9歳女児を被験者とし、各組成物を患部に塗布し、塗布直後から6時間後までの患部の痒みを評価した。「著効」の場合を◎、「有効」の場合を〇、「やや有効」の場合を△、「無効」の場合を×として評価した。
(2)止痒性評価2
背部全域に痒みを有するアトピー患者の40歳男性を被験者とし、各組成物を患部に塗布し、塗布直後から6時間後までの患部の痒みを評価した。「著効」の場合を◎、「有効」の場合を〇、「やや有効」の場合を△、「無効」の場合を×として評価した。
(3)止痒性評価3
四肢に痒みを有するアトピー患者の37歳女性を被験者とし、各組成物を患部に塗布し、塗布直後から6時間後までの患部の痒みを評価した。「著効」の場合を◎、「有効」の場合を〇、「やや有効」の場合を△、「無効」の場合を×として評価した。
(4)止痒性評価4
腎透析後、背部一面に痒みを有する腎透析患者の68歳男性を被験者とし、各組成物を患部に塗布し、塗布直後から6時間後までの患部の痒みを評価した。「著効」の場合を◎、「有効」の場合を〇、「やや有効」の場合を△、「無効」の場合を×として評価した。
【0043】
(5)モルモット角質層剥離皮膚による乾燥肌モデルに対するバリア機能改善作用
5週齢ハートレー系雄性モルモットの背部を剃毛し、次いで2.5cm幅のセロハンテープ用いて、モルモット背部上の2.5cm角の部分を4回貼付・剥離を繰り返し、一定の量の角質層を剥離し、乾燥肌モデルとした。角質層剥離部位に、各組成物0.1mLを全体に行き渡るよう塗布した。塗布1時間及び24時間後に、経表皮水分蒸散量(TEWL)を、エバポリメーターEP−1(SERVOMED社製)を用いて測定した。試験は各例について3匹で行い、TEWL値が10g/m2h未満を〇、10g/m2h以上20g/m2h未満を△、20g/m2h以上を×と評価して示した。TEWLは数値が低いほど、バリア機能改善効果が高いことを示す。
【0044】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムコ多糖類又はその誘導体を0.2〜20重量%含有することを特徴とする皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項2】
ムコ多糖類は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、キチン及びキトサンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項3】
ムコ多糖類又はその誘導体は、平均重合度が5以上、1000未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項4】
ムコ多糖類は、平均重合度が5以上、1000未満のキトサン100重量部と、平均重合度が1000以上、5000未満のキトサン30〜300重量部との混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項5】
更に液体油類を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項6】
液体油類は、スクワランであることを特徴とする請求項5記載の皮膚バリア機能改善組成物。
【請求項7】
更に尿素を含有し、かつ、メイラード反応防止成分として硫黄原子を有する化合物を含有しないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の皮膚バリア機能改善組成物。

【公開番号】特開2006−160758(P2006−160758A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25752(P2006−25752)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【分割の表示】特願2002−279788(P2002−279788)の分割
【原出願日】平成14年9月25日(2002.9.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】