説明

皮膚化粧料

【課題】本発明は使用感、乳化安定性に優れた安全性の高い皮膚化粧料を提供することにある。
【解決手段】皮膚化粧料において、ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを界面活性剤として使用することにより、使用感、乳化安定性に優れた安全性の高い皮膚化粧料を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関し、詳しくは使用感、乳化安定性に優れ、天然由来原料の界面活性剤を用いた安全性の高い皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人の肌に直接接する皮膚化粧料では低刺激性で安全性の高い界面活性剤が要望されている。このような界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤がしばしば使用されている。例えば、グリセリン脂肪酸ピログルタミン酸エステルや分子中に遊離の水酸基を有する多価アルコール脂肪酸エステルとN−長鎖アシル中性アミノ酸のエステルを化粧品用界面活性剤として使用する提案がなされているが(例えば、特許文献1、2参照)、グリセリン脂肪酸ピログルタミン酸エステルは親水性が低く、また脂肪酸鎖長を変化させてもHLBを大きく変化させることができないため、乳化剤として適用できる範囲が限定される。分子中に遊離の水酸基を有する多価アルコール脂肪酸エステルとN−長鎖アシル中性アミノ酸のエステルでは、界面活性剤の構造中のアミノ酸成分を増やすと、同時に長鎖アシル基が導入されるため極端に親水性が低下し、HLBの詳細な設計が困難であった。このような欠点を補うため、ポリオキシアルキレン多価アルコールとN−長鎖アシル中性アミノ酸のエステルからなる界面活性剤が提案されているが(例えば、特許文献2、3、4、5参照)、ポリオキシアルキレンは石油由来の原料であり、近年の天然由来原料へのニーズの面では好ましくない。天然由来原料のアミノ酸系界面活性剤として、グリセリンの重合度が4以上のポリグリセリンとN−長鎖アシル中性アミノ酸とのエステルが提案されているが(例えば、特許文献6参照)、このようなポリグリセリンと有機酸との反応では、反応生成物中に未反応のポリグリセリン成分が多量に含有され、それに由来するべたつき感や、界面活性剤として有効に作用するエステル成分の含有量が少ないため反応生成物の化粧料への配合量を多くする必要があり満足できるものではない。
【0003】
【特許文献1】特公昭47−44733号公報
【特許文献2】特開昭54−62991号公報
【特許文献3】特公昭61−35970号公報
【特許文献4】特開2004−238354号公報
【特許文献5】特開2004−238355号公報
【特許文献6】特開平11−241093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、乳化安定性、使用感に優れ、天然由来原料の界面活性剤を用いた皮膚化粧料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを界面活性剤として使用する皮膚化粧料により本発明の上記目的を達成するに至ったものである。
【0006】
すなわち本発明は、以下の構成を有する。
1.ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを含有することを特徴とする皮膚化粧料。
2.ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることで得られたものであることを特徴とする上記1に記載の皮膚化粧料。
3.ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、ジグリセリン脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることにより得られ、且つ該ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8〜22であることを特徴とする上記1又は2記載の皮膚化粧料。
4.ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、トリグリセリン脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることにより得られ、且つ該ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8〜22であることを特徴とする上記1又は2記載の皮膚化粧料。
5.ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成するアミノ酸が、ピログルタミン酸であることを特徴とする上記1から4のいずれか記載の皮膚化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用感、乳化安定性に優れ、天然由来原料の界面活性剤を用いた皮膚化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルは、ポリグリセリンのOH基に、脂肪酸又はアミノ酸がエステル結合した化合物であり、1分子中に脂肪酸とのエステル結合とアミノ酸とのエステル結合を有するものをいう。
【0010】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルは、ポリグリセリン、脂肪酸及びアミノ酸を同時に仕込み反応する第一の方法、又は予めポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを調製し、続いてこれにアミノ酸を反応させる第二の方法により得ることができる。
【0011】
第一の方法では、具体的には、反応原料として、ポリグリセリン、脂肪酸及びアミノ酸を同時に仕込み、不活性ガス雰囲気中、常圧又は減圧下、硫酸触媒を用いて160〜200℃で脱水反応を行うことによりポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル化合物を含有する組成物(以下「ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物」という)を得ることができる。
【0012】
また、第二の方法では、具体的には、先ず公知のエステル化反応によりポリグリセリンと脂肪酸の反応を行う。続いて、得られた反応物を精製することにより、ジグリセリンモノ脂肪酸エステル又はトリグリセリンモノ脂肪酸エステルを50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有するポリグリセリンモノ脂肪酸エステル組成物を得る。
【0013】
精製方法としては、分子蒸留、溶剤分別、クロマトグラフ等が挙げられるが、分子蒸留が好ましく行われる。上記精製によりポリグリセリンモノ脂肪酸エステル組成物に含まれるモノエステル体の含量を高めることにより、ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物は、界面活性剤として充分な機能を有するものとなる。
【0014】
その後、このポリグリセリンモノ脂肪酸エステル組成物とアミノ酸とを、不活性ガス雰囲気中、常圧又は減圧下、硫酸を触媒に用い、160〜200℃で反応させることにより、ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物を得ることができる。
【0015】
ここで、上記第一の方法により得られるポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物は、上記第二の方法により得られるものに比べ、未反応のポリグリセリンと界面活性の低いポリグリセリンアミノ酸モノエステルとを多量に含有するものとなる。
【0016】
そのため、上記第一の方法により得られるポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物を界面活性剤として皮膚化粧料に配合する場合には、界面活性の高い有効成分の含有量が相対的に低いため、該皮膚化粧料への配合量を多くしなければならない欠点がある。また、上記第一の方法により得られるポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステル組成物を界面活性剤として配合した皮膚化粧料を使用すると、反応生成物に含有される未反応のポリグリセリンのためにべたつきが強く感じられ、皮膚化粧料の使用感が阻害される。
【0017】
したがって、本発明のポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルは第二の方法で合成されることが好ましい。第二の方法により得られるポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを含有する反応生成物は、べたつきの原因となる未反応のポリグリセリンの含有量が低いため、皮膚化粧料への配合に好適である。
【0018】
上記ポリグリセリンは、通常、グリセリンをアルカリ触媒存在下、不活性ガス雰囲気中、240〜265℃で脱水縮合を行う方法、或いはグリシドール、エピクロルヒドリン、モノクロロヒドリンなどを重縮合反応させる方法から得られる。なお、この方法により得られるポリグリセリンは、未反応のグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンなど、重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。
【0019】
ここで、上記ポリグリセリンの平均重合度を小さくするほど、該ポリグリセリンにより得られるポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを添加した毛髪化粧料の使用時におけるべたつき感を低減させることができる。したがって、上記ポリグリセリンとしては、ジグリセリン又はトリグリセリンを50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有するジグリセリン組成物又はトリグリセリン組成物が好ましく用いられる。
【0020】
上記ポリグリセリンに含まれるジグリセリン又はトリグリセリンを高濃度化し、上記ジグリセリン組成物及びトリグリセリン組成物を得るための精製法としては、例えば、減圧蒸留、分子蒸留、溶剤分別、クロマトグラフ等による方法が挙げられる。上記方法で精製されたポリグリセリンは、さらにイオン交換膜、イオン交換樹脂などを用いて精製することが好ましい。
【0021】
上記脂肪酸としては、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸が用いられる。脂肪酸の炭素数が8より小さいと、界面活性剤に十分な疎水性を持たせることができず、極端に乳化力が弱くなる。また、脂肪酸の炭素数が22より大きいと、界面活性剤の疎水性が強すぎるため乳化力が弱くなる。
【0022】
具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸の群から選ばれる一種又は二種以上の脂肪酸が挙げられるが、好ましくはラウリン酸である。
【0023】
上記アミノ酸としては、特に制限はなく、グリシン、アラニン、サルコシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン等の中性アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸、ピログルタミン酸等が挙げられるが、ピログルタミン酸が好ましく用いられる。
【0024】
本発明の皮膚化粧料は、ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを必須の構成成分とするが、目的、用途等に応じて本発明の効果を損わない範囲で、他の成分、例えば油剤、増粘剤、低級アルコール類、多価アルコール類、各種界面活性剤、無機又は有機粉末、pH調整剤、キレート剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、顔料、色素等の成分を配合することができる。
【0025】
油剤としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、オキシステアリン酸オクチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等のエステル油、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、分岐脂肪酸コレステリル等のコレステロールエステル、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン、固形パラフィン等の炭化水素系油、ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の天然油脂類、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。
【0026】
増粘剤としては、例えばアクリル酸アミド及びその誘導体、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ケラチン及びコラーゲン又はその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グァーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等が挙げられる。
【0027】
低級アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコールなどが、多価アルコール類としては、例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどが挙げられる。
【0028】
各種界面活性剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性剤、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン塩、アシルアミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、アルキ塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0029】
無機又は有機粉末としては、例えばタルク、カオリン、セリサイト、無水ケイ酸、マイカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、窒化ホウ素等の無機粉末、セルロースパウダー、ナイロンパウダー、架橋型シリコーン末、架橋型メチルポリシロキサン、ポリ四フッ化エチレン粉末等の有機粉末などが挙げられる。
【0030】
本発明の皮膚化粧料は、化粧水、乳液、ローション、コールドクリーム、モイスチャークリーム、洗顔クリーム、洗顔フォーム、クレンジング料、サンスクリーン料、プレシェーブローション、アフターシェーブローション、メイクアップ化粧料、ファンデーション等の皮膚化粧料として好適に使用することができる。
【0031】
本発明の皮膚化粧料の剤型は、特に限定されるものではなく、クリーム状、乳液状、ローション状、軟膏状、ジェル状、スプレー、ムース状、W/Oエマルジョン、O/Wエマルジョン、固形状、パウダー状等の剤型として使用することができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を挙げ更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
[ジグリセリン組成物の調整]
80L容量の反応釜にグリセリン80kgを仕込み、触媒として水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)を対仕込み量0.1%加え、窒素ガス気流下で、約260℃で、約2時間脱水縮合反応を行った。その後、得られた反応液にリン酸(85%水溶液:85%燐酸:東ソー(株)社製)を対仕込み量0.1%加えて中和した。
【0034】
次に遠心式分子蒸留機((株)アルバック社製)を用いて、40Paの減圧下、120〜160℃で、中和して得られた反応物から未反応グリセリンを除去し、グリセリン含有量6.5%の脱グリセリン組成物を得た。続いて、上記遠心式分子蒸留機を用いて、20Paの真空下、約190℃で脱グリセリン組成物からジグリセリンを分取し、ジグリセリン含有量が95質量%のジグリセリン組成物13kgを得た。
【0035】
[トリグリセリン組成物の調整]
上記遠心式分子蒸留機を用いて、2Paの真空下、約200℃で、粗製ジグリセリン組成物からジグリセリンを分取した残渣から、残留したジグリセリンを除去し、ジグリセリン含有量3.0%の脱ジグリセリン組成物を得た。続いて、上記遠心式分子蒸留機を用いて、2Paの真空下、約230℃で、脱ジグリセリン組成物からトリグリセリンを分取し、トリグリセリン含有量が84質量%のトリグリセリン組成物5.6kgを得た。
【0036】
なお、上記ジグリセリン組成物及びトリグリセリン組成物の純度(含有量)は、GC(ガスクロマトグラフィー)により以下の通り測定した。
【0037】
[ジグリセリン組成物及びトリグリセリン組成物の純度測定]
無水酢酸25mLに対しパラトルエンスルフォン酸10mgを溶解し、アセチル化試薬を調整した。次にアセチル化試薬1mLを、ジグリセリン組成物又はトリグリセリン組成物の50mgに加え、砂浴中で10分間反応を行いアセチル化した。続いて、アセチル化した試料の組成をGCにより以下の条件で分析した。
【0038】
ガスクロマトグラフ:(製品名:GC−14A、(株)島津株式会社製)
カラム充填剤:OV−11(ジェーエル サイエンス(株)社製)
移動相:窒素ガス
初期温度:120℃、昇温速度:25℃/min
検出器:FID(Flame Ionization Detector)
検出器温度350℃
【0039】
[ジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物の調製]
ジグリセリン組成物4.4kgとラウリン酸(NAA−122、純度99%:日本油脂(株)社製、以下同様)5.6kgを20L容量の反応釜に仕込み、窒素雰囲気下、240℃で3時間反応を行い、ジグリセリンラウリン酸反応組成物9.3kgを得た。次に上記遠心式分子蒸留機を用いて、1Paの真空下、約160℃で、ジグリセリンラウリン酸反応組成物から未反応のジグリセリンを除去し、粗精ジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物7.5kgを得た。
【0040】
更に上記遠心式分子蒸留機を用いて、1Paの真空下、約200℃で、粗精ジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物からジグリセリンモノラウリン酸エステルを分取した。これにより、ジグリセリンモノラウリン酸エステル含有量が71質量%のジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物3.5kgを得た。なお、この組成物に含まれるジグリセリンモノラウリン酸エステルの含量は、後述のGPCによる組成分析により求めた。
【0041】
[トリグリセリンモノラウリン酸エステル組成物の調製]
トリグリセリン組成物5.0kgとラウリン酸5.0kgを20L容量の反応釜に仕込み、窒素雰囲気下、240℃で3時間反応し、トリグリセリンラウリン酸反応組成物9.2kgを得た。次に上記遠心式分子蒸留機を用いて、1Paの真空下、205℃で、トリグリセリンラウリン酸反応組成物から未反応のトリグリセリンを除去し、粗精ジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物7.2kgを得た。
【0042】
更に上記遠心式分子蒸留機を用いて、1Paの真空下、215℃で、粗精トリグリセリンモノラウリン酸エステル組成物からトリグリセリンモノラウリン酸エステルを分取した。これにより、トリグリセリンモノラウリン酸エステル含有量が70質量%のトリグリセリンモノラウリン酸エステル組成物1.6kgを得た。なお、この組成物に含まれるトリグリセリンモノラウリン酸エステルの含量は、後述のGPCによる組成分析により求めた。
【0043】
以下、本発明に用いるジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル及びトリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルの合成例を説明する。
【0044】
[合成例1:ジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル]
ジグリセリンモノラウリン酸エステル組成物29.2gとピログルタミン酸(DL−ピログルタミン酸、純度99%:東京化成工業(株)社製、以下同様)10.8gと硫酸(和光純薬(株)社製、試薬特級)0.04gを4口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、170℃で4時間反応した。その後、得られた反応物を水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.03gで中和し、ジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルを含有する組成物A38.1gを得た。
【0045】
[合成例2:トリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル]
トリグリセリンモノラウリン酸エステル組成物30.6gとピログルタミン酸9.4gと硫酸(和光純薬(株)社製、試薬特級)0.04gを4口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、170℃で4時間反応した。その後、得られた反応物を水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.03gで中和し、トリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルを含有する組成物B37.6gを得た。
【0046】
以下、上記合成例1及び2の対照として、ジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル及びトリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルの比較合成例を説明する。
【0047】
[比較合成例1:ジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル]
ジグリセリン組成物13.4gとラウリン酸16.2gとピログルタミン酸10.4gと硫酸(和光純薬(株)社製、試薬特級)0.04gを4口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、170℃で4時間反応した。その後、水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.03gで中和しジグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルを含有する組成物C38.4gを得た。
【0048】
[比較合成例2:トリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル]
トリグリセリン組成物を16.9gとラウリン酸14.0gとピログルタミン酸9.1gと硫酸(和光純薬(株)社製、試薬特級)0.04gを4口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、170℃で4時間反応した。その後、水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.03gで中和し、トリグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルを含有する組成物D37.2gを得た。
【0049】
[比較合成例3:グリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステル]
グリセリンモノラウリン酸エステル(ポエムM−300、理研ビタミン(株)社製)27.2gとピログルタミン酸12.8gと硫酸(和光純薬(株)社製、試薬特級)0.04gを4口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、170℃で4時間反応した。その後、水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)社製、特級)0.03gで中和しグリセリンラウリン酸ピログルタミン酸エステルを含有する組成物E37.9gを得た。
【0050】
このようにして合成した組成物A〜EについてGPC(Gel Permeation Chromatography)により下記の測定条件で組成分析を行った。この組成分析の結果を表1に示す。
【0051】
カラム:Shim−pack GPC801、802、803((株)島津製作所社製)
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1mL/min
温度:40℃
検出器:RI((株)島津製作所製:RID−6A)
【0052】
【表1】

【0053】
ここで、組成物Aは、ジグリセリンモノラウリン酸エステルとピログルタミン酸とを反応することにより得られたものである(合成例1)。よって、組成物Aは、ジグリセリンモノラウリン酸モノピログルタミン酸、ジグリセリンモノラウリン酸ジピログルタミン酸等を含有し得る。したがって、表1に示す組成物Aのモノピログルタミン酸モノ脂肪酸エステルは、ジグリセリンモノラウリン酸モノピログルタミン酸に対応する。また、表1に示す組成物Aのその他高分子成分は、ジグリセリンモノラウリン酸ジピログルタミン酸等に対応する。
【0054】
また、組成物Bは、トリグリセリンモノラウリン酸エステルとピログルタミン酸とを反応することにより得られたものである(合成例2)。このため、組成物Bは、トリグリセリンモノラウリン酸モノピログルタミン酸、トリグリセリンモノラウリン酸ジピログルタミン酸等を含有し得る。したがって、表1に示す組成物Bのモノピログルタミン酸モノ脂肪酸エステルは、トリグリセリンモノラウリン酸モノピログルタミン酸に対応する。また、表1に示す組成物Bのその他高分子成分は、トリグリセリンモノラウリン酸ジピログルタミン酸等に対応する。
【0055】
次に、皮膚化粧料として乳液およびエモリエントクリームを作成し、その使用感と保存安定性を評価した。乳液及びエモリエントクリームの組成(原料)を、それぞれ、表2及び表3に示す。また、乳液及びエモリエントクリームの使用感と保存安定性の評価結果を表4および表5に示す。
【0056】
[乳液の製法]
表2に示す原料全量200gのうち、カルボキシビニルポリマー(1%水溶液)及び精製水以外の成分を300mL容量のビーカーに量りとり、約80℃に加熱してパドル撹拌により均一に溶解混合した。次にこの混合物に、予め約80℃に加熱したカルボキシビニルポリマー(1%水溶液)及び精製水をホモミキサー(TKホモミキサー:特殊機化工業(株)社製)を用い3000rpmで攪拌しながら加え乳化した。乳化物の温度が35〜40℃になるまで更に攪拌を続け、乳液を得た。
【0057】
なお、組成物A、組成物B、組成物C、組成物D、及び組成物Eのうちいずれかを界面活性剤として用いた乳液を各々作製した。組成物A、組成物B、組成物C、組成物D又は組成物Eを用いて作製した乳液を、それぞれ、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の乳液とした。実施例1及び実施例2の乳液が本発明の皮膚化粧料である。
【0058】
[エモリエントクリームの製法]
表3に示す原料全量200gのうち、精製水以外の成分を300mL容量のビーカーに量りとり、約80℃に加熱して均一に溶解混合した。次にこの混合物に、予め約80℃に加熱した精製水をホモミキサー(TKホモミキサー:特殊機化工業(株)社製)を用い3000rpmで攪拌しながら加え乳化した。乳化物の温度が35〜40℃になるまで更に攪拌を続け、エモリエントクリームを得た。
【0059】
なお、組成物A、組成物B、組成物C、組成物D、及び組成物Eのうちいずれかを界面活性剤として用いたエモリエントクリームを各々作製した。組成物A、組成物B、組成物C、組成物D、又は組成物Eを用いて作製したエモリエントクリームを、それぞれ、実施例3、実施例4、比較例4、比較例5、比較例6のエモリエントクリームとした。実施例3及び実施例4のエモリエントクリームが本発明の皮膚化粧料である。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
〔肌へのなじみとべたつきの評価方法〕
10名のパネラーを用いて、皮膚化粧料を使用した時の肌へのなじみ、べたつきについて5段階評価し、その平均値を算出して判定した。
〔評価〕
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
〔判定〕
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上、4.5点未満
△:平均点2.5点以上、3.5点未満
×:平均点2.5点未満
【0063】
〔保存安定性の評価方法〕
調製した皮膚化粧料を40℃の温度条件下に保存し、目視にて分離の有無の評価を経時で行った。
〔判定〕
◎:40℃で1週間以上分離なし
△:40℃1週間で一部分離
×:40℃1週間以内で完全に分離
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
表4、表5の結果から明らかなように、本発明品では、肌へのなじみ、べたつきといった使用感に優れ、乳化安定性に優れた乳液及びエモリエントクリームを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、乳化安定性、使用感に優れ、天然由来原料の界面活性剤を用いた皮膚化粧料を製造する産業で利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを含有することを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることで得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、ジグリセリン脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることにより得られ、且つ該ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8〜22であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルが、トリグリセリン脂肪酸エステルを50質量%以上含有するポリグリセリン脂肪酸エステルとアミノ酸とを反応させることにより得られ、且つ該ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数が8〜22であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
ポリグリセリン脂肪酸アミノ酸エステルを構成するアミノ酸が、ピログルタミン酸であることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の皮膚化粧料。

【公開番号】特開2008−81402(P2008−81402A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259808(P2006−259808)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】