説明

皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器

【課題】塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】使用者に押圧変形される突起付き容器本体に収納され、前記突起により前記容器本体のシール部材を破断させた部分から吐出して、塗布部材を含浸させる液状成分を有する皮膚外用剤であって、前記液状成分の粘度は300〜3000mPa・s/30℃であることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器に係り、特に塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、皮膚外用剤としての液体やクリーム状等の化粧料等を、サンプルとして樹脂製の小袋等に少しずつ小分けして密閉収容した、いわゆるパウチパック等により提供するための化粧料容器(使い切りタイプの容器)について知られている。
【0003】
ここで、従来の使い切りタイプの容器では、予め不織布等の塗布部材に化粧料が含浸されており、使用時に、その容器から塗布部材を取り出して使用している。したがって、従来では、中味液が塗布部材に長期間含まれることにより、化粧料等の液組成によっては変色、変臭等の問題点が観察されていた。また、不織布の材質によっては液の防腐性を低下させてしまうため、処方上の工夫等が必要であった。
【0004】
そこで、化粧料等を少しずつ収納し、1回の使用で使い切ることを目的とした使い切り容器として、化粧料等の皮膚外用剤の吐き出しを簡易に行い、コットン等のシート(塗布部材)に浸透させて、そのシートを用いて肌に化粧料を塗布して使用することが可能な構成を有する化粧料容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
なお、特許文献1に示されている技術では、例えば皮膚外用剤を収納する収納凹部の底部に、シール部材の押圧破断が可能な破断突起を形成し、皮膚外用剤の不使用時にはシール部材に接触することのない高さでシール部材方向に突設させ、皮膚外用剤の使用時には収納凹部の底部を開口部方向に押圧変形することで、底部に突設した破断突起の先端にてシール部材を破断し、皮膚外用剤を外部に吐出可能としている。
【特許文献1】特開2006−20793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した使い切り用の化粧料でも、例えば使用者の目元用や頬用の場合には、左右両方に塗布する量の化粧料が必要となる。そのため、1回あたりの化粧使用量が多くなる場合があり、例えば今まで1回分の化粧使用量が2mlであったものが5mlになる場合、内容量の増加に伴って容器の容積や容器の一部を破断するための破断突起も必然的に大きくなる。これにより、従来の化粧料容器では、破断突起をシール部材で押下するときに強い力が必要となるため、押下する指が痛くなったり、容器本体が端部又はシール部材との接着面等からパンクしたり、パンク等により皮膚外用剤が外に漏れて汚れてしまう可能性がある。
【0007】
更に、使用者に化粧料を塗布するための塗布部材自身も大きくなるため、皮膚外用剤が塗布部材に含浸しにくくなり、例えば皮膚外用剤が乳液等になった場合にも塗布部材の全体に含浸しにくくなるといった問題がある。
【0008】
また、上述した問題に対応した化粧料容器に対して使用時に液状成分が含まれる突起付きの小型容器を指で押し、皮膚外用剤を不織布等の塗布部材に含浸させ使用するような使用方法の使い切りタイプの容器に対応する皮膚外用剤についての制限は、今まで存在していなかった。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0011】
請求項1に記載された発明は、使用者に押圧変形される突起付き容器本体に収納され、前記突起により前記容器本体のシール部材を破断させた部分から吐出して、塗布部材を含浸させる液状成分を有する皮膚外用剤であって、前記液状成分の粘度は300〜3000mPa・s/30℃であることを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明は、前記液状成分を含浸させる前記塗布部材の材質の構成成分に、親水性成分が少なくとも10%含まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、塗布部材への含浸速度を良好にすることができる。
【0015】
請求項3に記載された発明は、前記液状成分により含浸させる前記塗布部材の目付けは、40〜100g/mであることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、液状成分の含浸をムラなく良好にすることができる。
【0017】
請求項4に記載された発明は、前記突起により破断させることにより開く穴の大きさは、0.20〜80mmであることを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、塗布部材への含浸速度を良好にすることができる。また、塗布部材全体に含浸させることができる。
【0019】
請求項5に記載された発明は、前記液状成分は、透明又は乳液状であることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、塗布部材の変色等を防止することができる。これにより、使用者が含浸後の塗布部材を違和感なく使用することができる。
【0021】
請求項6に記載された発明は、前記請求項1乃至5の何れか1項に記載の皮膚外用剤を前記容器本体に収納した使い切り容器である。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させた使い切り容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明における使い切りタイプの容器に対応させた皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器を好適に実施した形態について、図面を用いて説明する。ここで、本発明における皮膚外用剤とは、例えば化粧品、医薬部外品、医薬品として外皮に適用される外用剤を指し、例えば軟膏、乳液、ローション、エッセンス、ゼリー、ジェル、パック、マスク等としても利用することができる。また、本発明の皮膚外用剤の剤型は、例えばペースト状、乳化状、ローション状等、容器に収納した皮膚外用剤が塗布部材に含浸することが可能な種々の剤型に適用することができる。
【0025】
したがって、本発明の皮膚外用剤とは、例えば軟膏等の皮膚外用剤、ローション、乳液、化粧水、美容液等のスキンケア化粧料、クリームファンデーション、アイライナー、口紅、マスカラ等のメーキャップ化粧料、シャンプー、洗顔料、ボディソープ等の洗浄料、リンス、コンディショナー、ヘアクリーム、ヘアジェル、トニック、ヘアカラー等の頭髪化粧料等を含むものである。
【0026】
なお、以下の説明では、皮膚外用剤の一例として、乳液状の化粧料を用いることとする。また、使い切り容器の一例として、化粧料容器を用いることとし、化粧品容器の一例として、左右両目の周り(例えば、目尻周辺部等)に化粧料を塗布するための専用の形状を有するそれぞれの塗布部材を2枚有し、その容器内で化粧料を含浸させ、使用者の目の周りの所定部位にその塗布部材をそれぞれ密着(貼付等)させることで、化粧料を使用者の所定部位に塗布するための化粧料容器を用いることとするが、本発明における化粧料の用途等については、この限りではない。
【0027】
<化粧料容器(使い切り容器)の概要構成図>
図1は、化粧料容器(使い切り容器)の概要構成の一例を示す図である。図1に示す化粧料容器10は、概略すると、被覆トレイ11と、容器本体(ポーション)12と、塗布部材(アプリケータ)13と、フィルム部材14とを有するように構成されている。
【0028】
また、図1においては、化粧料容器10は、被覆トレイ11とフィルム部材14との接着等により、容器本体12及び2枚の塗布部材13−1,13−2を所定の位置に保持させて密閉するものである。また、化粧料容器10は、外側から使用者等の手指等による押圧により、収容部の凹み部20が押圧変形され、その内部で、容器本体12において破断突起21にてシール部材22等を押圧破断する。この押圧破断により、容器本体12に収容されている皮膚外用剤が破断部分から外部に吐出され、吐出された皮膚外用剤がシール部材22の外面に予め設定された位置に配置されたコットン等の塗布部材13−1,13−2の適切な位置(例えば、中心や重心等の全体が含浸し易い位置)から全体に含浸される。
【0029】
ここで、含浸とは、例えばシート状の塗布部材に皮膚外用剤を含浸又は塗布させた状態、或いは皮膚外用剤を含浸後、塗布部材から水分を乾燥除去した状態、及び水分の不充分な除去(例えば、濃縮等を含む)をした状態を含むものとする。また、塗布部材13−1,13−2としては、上述したコットンに限定されるものではなく、皮膚外用剤を吸着保持又は表面に付着保持することができることが可能であればよい。具体的には、例えばスポンジ部材、フロッキー(電着植毛加工)部材、不織布等、何れかのもの又はその混合した材質等を塗布部材として用いることができる。
【0030】
また、化粧料等の皮膚外用剤は、塗布部材13−1,13−2の両方に含浸させ、含浸させた塗布部材13−1,13−2は、それぞれ左右何れかの目の周辺の所定の位置に貼付けて密着させることにより、化粧料を所定部位に塗布することができる。ここで、塗布部材13−1,13−2は、皮膚外用剤により含浸されているため、その水分により、使用者の皮膚に貼付することができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、被覆トレイ11及び容器本体12は、透明又は半透明で形成することができ、これにより、皮膚外用剤の色彩や皮膚外用剤の塗布部材への含浸の様子を外部から容易に確認することができる。
【0032】
ここで、図2は、図1に示す化粧料容器が一体に密閉されている一例を示す図である。なお、図2(A)は、化粧料容器の上面図の一例を示し、図2(B)は、化粧料容器のA−A’間における断面を矢印方向から見た図の一例を示し、図2(C)は、B−B’間における断面を矢印方向から見た図の一例を示し、図2(D)は、裏面図の一例を示す図である。
【0033】
ここで、図2において、被覆トレイ11には、容器本体12を内部に収容するための収容凸部31が形成されている。また、化粧料容器10は、被覆トレイ11の上から使用者の指等で容器の押すために凹み部20が形成されている。
【0034】
また、被覆トレイ11には、塗布部材13−1,13−2を収容し、更に容器本体12から上述した破断突起21によりシール部材22が破断した際に吐出される皮膚外用剤が塗布部材13−1,13−2の全体に含浸させるためのスペースを有する塗布部材用凸部32を有している。
【0035】
フィルム部材14は、被覆トレイ11と略同一寸法に形成され、被覆トレイ11とシールされることにより、容器本体12と塗布部材13−1,13−2とを密閉するものである。なお、フィルム部材14は、例えばPE(ポリエチレン(Polyethylene))フィルムを使用しているが、他の樹脂フィルムを使用してもよく、また塗布部材13−1,13−2に付着させる皮膚外用剤の種類によっては、紙や金属箔であってもよい。また、フィルム部材の裏面(外側)の材質は、PET(ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate))、NY(ナイロン(登録商標)(Nylon))等や、その他の樹脂フィルム等を使用することができる。
【0036】
更に、被覆トレイ11には、破断突起21による破断ではなく、容器本体12とシール部材22とのシール部分である端部が押圧等により破断してしまい、その場所から皮膚外用剤が吐出されたときに、その皮膚外用剤が所定の位置で留まるように容器の収納部の周囲に溝部33が形成されている。これにより、収納部の周囲から破断してしまい皮膚外用剤が吐出された場合であっても皮膚外用剤の漏れ等を抑止することができる。また、溝部33を形成することで、被覆トレイ11自体の剛性を確保することができる。なお、本実施形態におけるシール部材22は、例えばアルミ等の金属箔や紙、布等の比較的破断させ易い材質を、収納する皮膚外用剤に応じて選択して使用することができる。
【0037】
また、被覆トレイ11には、例えばA−A’間に対して左右に容易に折り曲げることが可能な折り曲げ部34が形成されており、折り曲げ部34−1〜34−3により折り曲げを行うことで、破断突起21がシール部材22を破断させ易くさせることができる。
【0038】
なお、折り曲げ部34−1は、被覆トレイ11上に形成されており、折り曲げ部34−2,34−3は、溝部33上のA−A’間に対して上下に合計2つ形成されている。これにより、使用時に被覆トレイ11を折り曲げることで、所望する位置(例えば、容器本体12の中心位置等)から破断させ易くすることができる。
【0039】
また、被覆トレイ11は、漏れを防止するために容器本体12の全面を覆う設計としたことから、空気が逃げる孔を設ける必要がある。そのため、被覆トレイ11は、容器本体12から吐出された空気孔が少なくとも1つ有する構成にしてもよい。なお、空気孔の位置としては、例えば凹み部20又はその周囲に設けることが好ましい。具体的には、例えば凹み部の外周の所定の位置に空気孔35−1a,35−1bを設ける。この位置に空気孔を設けることにより、容器本体12を押圧変形により潰した場合に最も凹まない部分であるため、皮膚外用剤の空気孔からの漏れを防止することができる。
【0040】
また、空気孔の位置としては、上述の空気孔35−1a,35−1bに限定されず、例えば凹み部20により形成される稜線部に空気孔35−2a,35−2bを設けてもよく、凹み部20の中心に空気孔35−3に設けてもよい。
【0041】
更に、空気孔は少なくとも1つ形成されていればよいが、2つ以上設けることにより、一方を指で塞いでしまうようなことがあっても、他方の孔が空いているため押圧変形時(開封時)に内部の密閉を防止することができる。これにより、皮膚外用剤の塗布部材へのスムーズな浸透を促すことができる。
【0042】
また、本実施形態では、図2(D)に示すように、被覆トレイ11とフィルム部材14とをゴザ目シール領域36−1〜36−4を4つ角に設けている。なお、ゴザ目シール領域36は、微小の凹凸パターンにより部分的に接着(シール)された集合からなる領域である。これにより、被覆トレイ11とフィルム部材14とをスムーズに剥がすことができる。
【0043】
なお、ゴザ目シール領域36−1及びシール部材36−4には、被覆トレイ11から剥がし易くするためにつかみ代(指がかり)37−1,37−2を設けてもよい。
【0044】
ゴザ目シール領域36−2,36−3は、使用者がゴザ目シール領域36−1又は36−4からの開封する場合に、開け易さに配慮して指がかりを設けていない。つまり、ゴザ目シール領域36−2,36−3側からの開封は、シール部分(リングシール38)に対して略平行に力が加わることになるため、開封時にはかなり強い開封強度が必要となってしまうことから、ゴザ目シール領域36−2,36−3側からは開封できないように指がかりをなくしている。なお、その分、シール部全体を例えば数mm程度下げることにより、使用者が容易に開封できるように、つかみ代(指がかり)37−1,37−2の面積を大きく確保することができる。
【0045】
ここで、図2(B)に示すように、凹み部20を設けることにより得られる稜線部の面取り部R1の半径は、約2.0〜3.0mmとすることが好ましい。これは、半径が約2.0mmより小さい場合には、使用者が手指等で外部から凹み部20を押圧して潰したときに先端が尖るため、指が痛くなってしまい、また半径が約3.0mmより大きい場合には、稜線が目立ちにくくなり、指で押す場所として認識しにくくなるからである。
【0046】
また、図2(D)に示すように、リングシール38の面取り部R2の半径は、やや大きくすることが好ましい。これにより、片側から開ける時に、途中で手の持ち直しや剥がす方向を変更することなくスムーズにシール部分を剥がすことができる。
【0047】
なお、このときの半径は、例えば約10mm程度より大きい方がよく、また約15mm程度より小さい方がよい。これは、面取り部R2の半径が約10mmより小さい場合には、手を持ち替えないと1回では剥がしにくくなるからであり、また半径が約15mmより大きい場合には、被覆トレイ11の凹み部分が大きくなってしまうため、塗布部材13が、例えば輸送時等に、本来のセット位置から大きくずれてしまうからである。したがって、具体的には、面取り部R2の半径は、例えば約10〜15mm程度の範囲であればよく、特に約12〜14mm程度の範囲であるのが好ましい。
【0048】
更に、図2(D)に示す容器本体12の収納部とシール部材22とを接着して内部を密閉するリングシール39のシール幅は、万が一斜めに押して使用された場合に、ポーションのパンクを防止するため、ポーションのリングシール幅を皮膚外用剤の容量等に応じて任意に変更することができる。なお、リングシール39のリング幅は、例えば約2〜3mm程度が好ましい。これは、リング幅が約2mmより小さい場合には、シール強度が不足するためパンクの頻度が上がってしまい、またリング幅が約3mmより大きい場合には、残った皮膚外用剤を指で取ろうとするときに剥がしにくくなるからである。
【0049】
なお、例えばシール幅が約1.5mmの場合、シール剥離強度は約10Nとなり、シール幅が約3.0mmの場合、シール剥離強度は約15〜20Nとなる。つまり、容器本体12におけるリングシール39の幅を大きくすることで、シール強度が上がりパンクの頻度を抑制することができる。なお、本実施形態においては、もしパンクした場合でも、容器本体12の背面を被覆トレイ11で覆っているため、跳ね返りによる漏れを防止することができ、周囲への汚着が起こらない。
【0050】
<被覆トレイ11の他の実施形態>
次に、上述した被覆トレイの他の実施形態について、図を用いて説明する。図3は、被覆トレイの他の実施形態の一例について説明するための一例を示す図である。
【0051】
図3(A)〜(C)に示すように、被覆トレイ41には、中央部に「PUSH」マーク42が刻印されており、更に押す位置が明確になるように少なくとも1つの所定形状からなる凸部43が設けられている。このように、図3に示すような被覆トレイ41を用いることにより、使用者は、PUSHする位置を明確に知ることができ、押圧により確実に凹み部を押すことができる。なお、図3に示す例では、丸形状の凸部が3つ平行に配置されているが、本発明においてはこの限りではなく、例えば凸部の数や位置、形状等については、デザイン性を考慮して任意に設定することができる。
【0052】
ここで、図4は、被覆トレイにおける他の凸部形状の一例を示す図である。本実施形態における凸部形状は、例えば図4(A)に示すように、三角形状の凸部44−1であってもよく、また矩形の凸部44−2であってもよく、更に星形の凸部44−3であってもよい。
【0053】
また、図4に示す被覆トレイ41については、「PUSH」マーク42が刻印されているが、他の文字(他の言語も含む)が表記されていてもよく、更にマークが記載されていなくてもよい。更には、マークのみが刻印され、凸部が形成されていないものであってもよく、凸部ではなく凹部が形成されていてもよい。
【0054】
また、図5は、被覆トレイの裏面の他の実施形態の一例を示す図である。例えば、図5に示す被覆トレイ41のように、図2(D)に示したゴザ目シール領域36−1,36−4を直線ではなく、指が掴み易くするために、内側に湾曲させてもよい。
【0055】
更に、図2(D)に示した被覆トレイ11には、ゴザ目シール領域36−2,36−3につかみ代(指がかり)を設けていなかったが、図5に示すようにゴザ目シール領域36−2,36−3につかみ代を設ける構成にしてゴザ目シール領域36−2,36−3から開封できるようにしてもよい。また、ゴザ目シール領域36−2,36−3の接着領域を容器の中心側に湾曲させて、つかみ代を広くなるようにしてもよい。
【0056】
<容器本体(ポーション)の形状について>
次に、容器本体の形状の具体例について図を用いて説明する。図6は、本実施形態における容器本体形状の一例を示す図である。なお、図6(A)〜(C)には、容器本体50を上から見た図と、その断面図を示している。ここで、図6に示す容器本体形状は、パンクの原因が容器本体を斜めに押して使用することにあるため、使用時にまっすぐに押されるような形状であることが好ましい。また、使用時においては、ポーションを使用者の指等で押し込む際に指が痛くなることがないような形状にする。
【0057】
ここで、図6(A)〜(C)に示す各容器本体50−1〜50−3は、収容部51−1〜51−3内に皮膚外用剤52が収納され、シール部材53によりシールされている。ここで、収容部51−1〜51−3の外部から指等により、例えば、図6(A)〜(C)に示す矢印F方向に押圧することにより、収容部51−1〜51−3の外形が変形し、中央にある破断突起54の先端がシール部材53を突き破ることにより皮膚外用剤を吐出させる。
【0058】
ここで、収容部51−1〜51−3の厚みは、約0.1〜0.3mmとすることが好ましい。これにより、収容部51の押圧変形時に指が痛くなるのを防止することができる。また、収容部51は、例えばPP(ポリプロピレン(polypropylene))シート、又はその他の樹脂等により形成される。なお、角部を約50mm/minの速さで押し込んだ時の座屈強度が約30N以下であれば、痛みを感じることがない。
【0059】
例えば、図6(A)に示す容器本体50−1では、中心にある凹み部55を設け、その凹み部55に使用者の両方の親指等を載せることで、簡単に破断突起54が略垂直にシール部材53に到達し、シール部材を破断させて、皮膚外用剤52を吐出させることができる(図6(A)点線部)。
【0060】
更に、図6(A)の凹み部55において、面取り部R3の半径は、約1.5〜2.0mm程度であることが好ましい。これは、面取り部R3の半径が約1.5mmより小さい場合には、使用時に押圧変形させた際に、容器本体及び被覆トレイの稜線部先端が尖ってしまい、指があたると痛いからであり、また面取り部R3の半径が約2.0mmより大きい場合には、稜線が目立ちにくくなり指で押す場所として認識しにくくなってしまうからである。
【0061】
更に、面取り部R4の半径は、約20〜30mm程度であるのが好ましい。これにより、指の形状に対応させた凹み形状を形成することができる。
【0062】
加えて、図6(A)の面取り部R5及び図6(B)の面取り部R6の半径は、約1.5〜2.5mm程度であることが好ましい。これは、面取り部R5,R6の半径が約1.5mmより小さい場合には、使用時に指があたると痛いからであり、2.5mmよりも大きくすると、角部突起の直線部が短くなり、角部の強度が増すことによって潰れにくくなり、やはり指にあたると痛いからである。
【0063】
なお、本発明における収容部の形状は、これに限定されるものではなく、例えば図6(B)に示すように凹み部54を有していない構成にしてもよく、また、図6(C)に示すように、指跡部56を形成し、その場所に指を載せて押圧させるような構成にしてもよい。
【0064】
また、容器本体形状は、その皮膚外用剤の量に応じて適宜対応した凹部を設けることで、使用目的に応じた適量の皮膚外用剤を収容して使用者等に提供することができる。
【0065】
また、収納部やシール部材に樹脂材やアルミ箔等を使用することにより、容器本体に気密性や液密性を持たせることも容易で、液体状、クリーム状等の皮膚外用剤であっても漏れ等を生じることのない提供が可能となる。
【0066】
ここで、上述した図6に示す破断突起54は、2つ以上設けてもよく、その先端形状は例えば円錐状でもよく、多角錐状でもよい。
【0067】
上述したように、本実施形態によれば、使用性を向上させた使い切りタイプの化粧料容器を提供することができる。また、本実施形態によれば、皮膚外用剤の中身容量が増えた場合でも使用性のよい化粧料容器を提供することができる。
【0068】
したがって、本発明により、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器を提供することができる。
【0069】
<皮膚外用剤について>
次に、上述したような使い切りタイプの容器等に対応した化粧料等の皮膚外用剤について実施例を用いてより詳細に説明するが、これらの実施例等により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下に示す皮膚外用剤の実施例等における配合量は、特に断らない限り、その成分が配合される系全体に対する重量%を示す。
【0070】
まず、表1に皮膚外用剤の実施例1として、ジェル状(透明又は半透明)の皮膚外用剤に対する配合成分とその配分量(質量%)を示している。
【0071】
【表1】


ここで、皮膚外用剤の実施例1における皮膚外用剤の製造方法としては、例えば表1に示す配合成分(1)〜(12)のうち、成分(1)〜(7)を成分(12)に溶解後、成分(8)に溶解した成分(9)から成分(11)を均一に混合して目的の皮膚外用剤を製造する。
【0072】
また、表2に皮膚外用剤の実施例2〜5として、乳液状の皮膚外用剤に対する配合成分とその配分量(質量%)を示している。
【0073】
【表2】

ここで、皮膚外用剤の実施例2〜5における皮膚外用剤の製造方法としては、例えば表2に示す配合成分(1)〜(11)のうち、水相である成分(1)〜(8)を均一に混合した水相に対し、(9)〜(11)を均一に混合した油相を加え、例えばホモミキサー等にて乳化粒子を調製して、乳液状(半透明又は不透明)となる目的の皮膚外用剤を製造する。
【0074】
次に、上述の皮膚外用剤の実施例における評価結果を以下に説明する。なお、評価としては、女性派パネラー20名により使用時における満足度等の評価を行った。
【0075】
<皮膚外用剤による不織布(塗布部材)への変色、変臭防止効果>
上述した皮膚外用剤の実施例1記載の皮膚外用剤を塗布部材である不織布に含浸後高温条件下に保存した場合、16名以上が変色に気付かなかった。
【0076】
<粘度による不織布への含浸速度>
次に、皮膚外用剤の実施例2〜5を用いて粘度による不織布への含浸速度の評価結果について説明する。図7は、粘度による不織布への含浸速度の測定結果の一例を示す図である。図7に示すように、使用時に液状成分が含まれる上述した突起付容器を指で押し、液を不織布等の塗布部材に含浸させる。このとき、使用する皮膚外用剤において、液状成分の粘度は約300〜3000mPa・s/30℃の場合は良好に使用することができ、更に好ましくは粘度が約600〜2000mPa・s/30℃である皮膚外用剤であることが好ましい。
【0077】
<粘度による分離安定性>
次に、皮膚外用剤の実施例2〜5を用いて粘度による分離安定性の結果について説明する。図8は、粘度による分離安定性の結果の一例を示す図である。なお、皮膚外用剤の実施例2〜5は、皮膚外用剤が乳液の例を示しており、平均粒子径は約1〜5μmである。
【0078】
なお、図8においては、粘度が約0〜200mPa・s/30℃程度の場合、分離安定性はよくなく、また粘度が約300〜1500mPa・s/30℃程度の場合、ある程度の分離安定性を有し、更に粘度が約1500〜3000mPa・s/30℃程度の場合、良好な分離安定性を有する。
【0079】
<不織布材質の違いによる含浸速度の違いと満足度>
次に、不織布材質の実施例1〜7を用いて、塗布部材である不織布の材質の違いによる含浸速度の違い(親水性成分の配合量による含浸速度の違い)と満足度について説明するが、これらの実施例等により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下に示す不織布材質の実施例等における親水性成分、疎水性成分の配合量は、特に断らない限り、その成分が配合される系全体に対する重量%を示す。
【0080】
図9は、不織布材質の違いによる含浸速度の違いと満足度の一例を示す図である。なお、図9では、比較例として、不織布材質が疎水性成分のみで構成されている場合の含浸速度と満足度も示している。
【0081】
図9に示す不織布材質の実施例1〜7に示すように、液状成分を含浸させる不織布の材質の構成成分に親水性成分が少なくとも10%含むことにより、良好な含浸速度を実現でき、更に使用時の満足度を得ることができる。
【0082】
なお、疎水性成分としては、例えばPP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート(Poly Ethylene Terephthalate))等を用いることができ、親水性成分としては、例えばコットン、パルプ、レーヨン、紙等がある。ここで、不織布材質中の親水性成分配合量が少なすぎると含浸速度は遅くなる。また、親水性成分配合量により若干満足度や異なるが、大きさ差はなく、それぞれが満足する含浸速度を得ることができた。したがって、親水性成分の配合量は、約10%以上が好ましいといえる。
【0083】
<不織布の目付けの違いによる含浸速度の違いと満足度>
次に、不織布の目付けの違いによる含浸速度の違いと満足度について説明する。図10は、不織布の目付けの違いによる含浸速度の違いと満足度の一例を示す図である。
【0084】
なお、目付けとは、単位面積あたりの質量(g/m)である。また、図10において、不織布材質は、コットン100%(不織布材質の実施例7)である。更に、図10における不織布材質の厚さは、測定位置により若干の誤差はあるが、約0.41〜0.47mm程度である。
【0085】
図10によれば、不織布の目付けが約20g/m程度であれば、遅いと感じられるが、約40〜100g/mでは、12〜15名が含浸速度に満足していると共に使用時に満足している。つまり、図10に示すように、目付けが少ないと含浸速度が若干遅くなる傾向があり、目付けは約40g/m以上が好ましい。また、目付けが少ないと含浸量が少なくなり、使用時の満足度が低くなるため、目付けは、約40g/m以上が好ましい。
【0086】
<シール部材の穴の大きさ(面積)による不織布への含浸速度と満足度>
次に、上述した化粧料容器において、破断突起によりシール部材に開ける穴の大きさ(面積)による不織布への含浸速度と満足度について説明する。図11は、シール部材の穴の大きさ(面積)による不織布への含浸速度と満足度の一例を示す図である。
【0087】
ここで、図11に示すように、破断突起により開く穴の大きさが、例えば約0.01〜0.13mm程度の場合には、含浸速度がよくないといえる。但し、この大きさの穴をシール部材に2つ以上開ける場合には、満足度は向上する。
【0088】
また、穴の大きさは、例えば約78mm以上の場合には、不織布(塗布部材)の一部にのみ含浸してしまい、全体には含浸しにくくなる。したがって、図11によれば、穴の大きさは、約0.20〜80mm程度がよく、特に約0.7〜65mm程度が好ましく、より液状成分が不織布に含浸し易い状況となる。
【0089】
なお、上述した満足度は、例えば皮膚外用剤の実施例1〜5の少なくとも1つから得られる結果から平均値を求める等により求めたものである。更に、上述した各皮膚外用剤の実施例1〜5に示すように、本実施形態では、皮膚外用剤としての液状成分を透明若しくは乳液状、又は半透明等、好適に適用することができる。
【0090】
上述したように、本発明によれば、塗布部材への含浸を良好にして使用性を向上させるための皮膚外用剤及び該皮膚外用剤を収納した使い切り容器を提供することができる。具体的には、上述した本実施形態によれば、使用性を向上させた使い切りタイプの化粧料容器を提供することができる。また、本実施形態によれば、皮膚外用剤の中身容量が増えた場合でも使用性のよい化粧料容器を提供することができる。
【0091】
また、上述した化粧料容器は、透明又は半透明の容器本体であるため、特に口紅やファンデーション等、色彩が重要な皮膚外用剤では、皮膚外用剤の色彩を外部から容易に確認することができる。したがって、使用者及び使用者等が好み等に応じた選択を明確に行うことが可能となり、商品又は試供品等としての機能性に優れる製品を得ることができる。
【0092】
また、上述した用事混合化粧料においては、使用時に液状成分が含まれる突起付き容器を指で押し、液を不織布に含浸させて使用する皮膚外用剤において、液状成分の粘度を約300〜3000mPa・s/30℃とし、好ましくは約600〜2000mPa・s/30℃であることが好ましい。更に、本発明における皮膚外用剤は、液状成分を含浸させる不織布の材質の構成成分に親水性成分が少なくとも10%含まれていることが好ましい。
【0093】
また、本発明における皮膚外用剤は、液状成分を含浸させる不織布の目付けが約40〜100g/m以上であることが好ましく、更に突起により開く穴の大きさ(面積)が約0.20〜80mm程度がよく、特に約0.7〜65mm程度が好ましい。更に、本発明における皮膚外用剤は、液状成分が透明若しくは乳液状等の不透明であることが好ましい。
【0094】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】化粧料容器(使い切り容器)の概要構成の一例を示す図である。
【図2】図1に示す化粧料容器が一体に密閉されている一例を示す図である。
【図3】被覆トレイの他の実施形態の一例について説明するための一例を示す図である。
【図4】被覆トレイにおける他の凸部形状の一例を示す図である。
【図5】被覆トレイの裏面の他の実施形態の一例を示す図である。
【図6】本実施形態における容器本体形状の一例を示す図である。
【図7】粘度による不織布への含浸速度の測定結果の一例を示す図である。
【図8】粘度による分離安定性の結果の一例を示す図である。
【図9】不織布材質の違いによる含浸速度の違いと満足度の一例を示す図である。
【図10】不織布の目付けの違いによる含浸速度の違いと満足度の一例を示す図である。
【図11】シール部材の穴の大きさ(面積)による不織布への含浸速度と満足度の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
10 化粧料容器
11 被覆トレイ
12,50 容器本体(ポーション)
13 塗布部材
14 フィルム部材
20 凹み部
21,54 破断突起
22 シール部材
31 収容凸部
32 塗布部材用凸部
33 溝部
34 折り曲げ部
35 空気孔
36 ゴザ目シール領域
37 つかみ代(指がかり)
38,39 リングシール
41 被覆トレイ
42 「PUSH」マーク
43,44 凸部
51 収容部
52 皮膚外用剤
53 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に押圧変形される突起付き容器本体に収納され、前記突起により前記容器本体のシール部材を破断させた部分から吐出して、塗布部材を含浸させる液状成分を有する皮膚外用剤であって、
前記液状成分の粘度は300〜3000mPa・s/30℃であることを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記液状成分を含浸させる前記塗布部材の材質の構成成分に、親水性成分が少なくとも10%含まれていることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤
【請求項3】
前記液状成分により含浸させる前記塗布部材の目付けは、40〜100g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記突起により破断させることにより開く穴の大きさは、0.20〜80mmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記液状成分は、透明又は乳液状であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記請求項1乃至5の何れか1項に記載の皮膚外用剤を前記容器本体に収納した使い切り容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−292786(P2009−292786A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149787(P2008−149787)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】