説明

皮膚外用剤用組成物および皮膚外用剤

【課題】テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを皮膚外用剤中に安定に微細化し、分離の無い透明〜半透明に配合できる皮膚外用剤用組成物を調製することを課題とした。
【解決手段】 前記目的を達成するために、水相中に油分(テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル)を微細エマルションとして分散させる際、該エマルションの構成に界面活性剤を用い、さらに特定比率の多価アルコール1種または2種以上を配合することにより、優れた透明性、使用性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、
次の(A)、(B)、(C)および(D)を必須成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤用組成物
(A)L−アスコルビン酸脂肪酸エステル
(B)非イオン性界面活性剤
(C)多価アルコール
(D)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンCの誘導体であるテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルの安定性に優れた微細化方法、及びテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを半透明〜透明に微細化した皮膚外用剤用組成物及びそれを配合した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルは、皮膚に適用することにより、優れたメラニン生成抑制効果やメラニンに対する還元性や、抗酸化性を示す成分であり、またコラーゲン生成促進作用を有する美肌効果を有することから、化粧品・医薬部外品の生理活性成分として用いられている。また更に、油溶性を有することから、その使用性が良好であり、化粧品によく利用されている。
【0003】
テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルは、美白作用を有する化粧料や、美肌効果を持つ化粧料等によく利用されるが、近年、化粧料においては、官能特性の差別化に応じて様々な製品が市販されている。特に安全性が高く、外観が綺麗で、微細エマルションのような化粧料がたいへん好まれている。
【0004】
しかし、従来知られている微細化エマルションの開発に於いて、乳化粒子を微細化し、透明な組成物を得る為に、一般に界面活性剤の配合量が多くなり、例えばテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを化粧料に配合した場合には、界面活性剤が多量であることで、官能特性、皮膚安全性の低下などの問題点があった。
【0005】
少量の界面活性剤で多量の油性成分を含有する微細エマルションの調製方法が開示されている。(特許文献1参照)
これらに記載されている乳化分散方法は、公知の高圧乳化法であり、分散機器としては、マイクロフルイダイザーが挙げられる。これにより、例えば、多量の油性成分を含有する感触の良好な皮膚安全性の高い透明化粧水の調製が可能となった。ところが、この方法は高いエネルギーを必要とし、しかもそのエマルションは必ずしも安定性が良いとは言えず、加熱或いは経時で粒子が合一するなど、分離してしまい、微細化されている状態を維持できないという問題点を有している。例えば、油性成分に対し適切な非イオン性界面活性剤一種または二種以上を組み合わせることにより、容易に透明或いは半透明な微細エマルションを調製することができる。また、油性成分量に対し、非イオン性界面活性剤は0.5〜2.0倍量で十分である。しかし、そのエマルションを室温または45℃で放置すると、2日間〜2週間、白濁或いは分離してしまう。すなわち、この微細エマルションは、官能特性、皮膚安全性には優れているが、保存安定性が悪いと言う問題点を有している。
【0006】
テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを化粧料や皮膚外用剤に配合した例は以下に開示した通りである。(特許文献2〜4)
【特許文献1】特開昭56−58530号公報
【特許文献2】特開2003−238380号公報
【特許文献3】特開2003−342159号公報
【特許文献4】特開2003−306419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを化粧料や皮膚外用剤に安定に微細化し、分離の無い透明或いは半透明に配合できる組成物を調製することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討進めた結果、水相中に油分(テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル)を微細エマルションとして分散させる際、該エマルションの構成に特定の界面活性剤を用い、さらに特定比率の多価アルコール1種または2種以上を配合することにより、より優れた透明性、使用性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、その基本的構成は以下の通りである。
(A)L−アスコルビン酸脂肪酸エステル
(B)非イオン性界面活性剤
(C)多価アルコール
(D)水
【0009】
本発明においては、上記皮膚外用剤用組成物の調製の際に、予め上記添加物を調製しておき、その後、これを他の皮膚外用剤配合成分とともに処方に加えて皮膚外用剤を製造するものである。
【発明の効果】
【0010】
特に、テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを微細化し、透明〜半透明で安定にした皮膚外用剤用組成物を提供すること。さらにはそれを配合した皮膚外用剤を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
すなわち、本発明にかかるは、(A)テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルと,(B)非イオン性界面活性剤と、(C)多価アルコール、(D)水を含み、非イオン性界面活性剤、油分(テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル)で形成される微細エマルション20〜50重量%が水中に分散されており、前記水中には多価アルコールが20〜50重量%含有されていることを特徴とする。
以下、本発明の構成を更に詳細に説明する。
【0012】
本発明で用いる油分は、テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルである。
【0013】
本発明で用いる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、メチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。これらの中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸が特に好ましい。
【0014】
本発明で用いる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン、ソルビトール等を用いることができる。これらの中で1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンが好ましい。
【0015】
本発明の微細化方法における皮膚外用剤用組成物中の油分であるテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル、および非イオン性界面活性剤の質量組成比において、非イオン性界面活性剤の最大量は、L−アスコルビン酸脂肪酸エステル/非イオン性界面活性剤=30/70が好ましく、さらに好ましくは、テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル/非イオン性界面活性剤=40/60〜60/40である。また本発明の微細化方法における組成物中のテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル・非イオン性界面活性剤混合物に対する液状の多価アルコールの質量組成比は、(テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル・非イオン性界面活性剤混合物)/(多価アルコール)=40/60〜80/20が好ましく、さらに好ましくは、(テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル・非イオン性界面活性剤混合物)/(多価アルコール)=50/50〜70/30である。得られたエマルションの粒径は100nm以下である。
【0016】
本発明の皮膚外用剤用組成物を利用して皮膚外用剤(エマルション)を製造する場合、皮膚外用剤中に1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜15質量%を使用する。これにより、他の乳化剤を使用しなくても水系に加えるだけで安定なO/Wエマルションを調製することができる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤用組成物を化粧品や皮膚外用剤に添加する場合は、その配合量は特に限定されず、皮膚外用剤として所望される該テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルの量を考慮して適宣定めればよい。
【0018】
本発明の皮膚外用剤用組成物を使用して化粧品や皮膚外用剤を製造する場合は、これら製剤に一般に使用される油性原料、高級アルコール、脂肪酸、界面活性剤、溶剤、多価アルコール・糖類、高分子、生理活性成分、酸化防止剤、香料、キレート剤、防腐剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、染料等を併用することができる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤としては、化粧水、美容液、乳液、パック、クリーム等の基礎化粧品、リキッドファンデーション等のメークアップ化粧品等が挙げられる。特に、化粧水に利用する場合、透明な化粧水が得られるのでより好ましい。
【実施例1】
【0020】
皮膚外用剤用組成物の調製と評価
(1)皮膚外用剤用組成物の調製
温度調節器、撹拌機および真空ポンプを装備した2リッターガラス製乳化器に、テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルおよび表に示す各成分を、合計で1Kgになるように仕込んだ。系内を20〜30mmHgの減圧とし、温度40〜50℃で1時間撹拌・混合を行ない、均一な粘稠性液体とした。
混合後、冷却により本発明品1〜3および比較例1〜3の皮膚外用剤用組成物を得た。これらの組成を表1に示す。
(2)安定性評価
本発明品を45℃、−5℃、−5〜45℃のサイクル恒温槽に1ヶ月間放置し、透明性を観察し,粒子径を測定した( マルチアングル サブミクロン 粒子アナライザー/N4Plus型)。これらの結果を表2に示す。
○ :透明性変化なし
△:透明性若干濁ってきた
×:濁ったまたは分離・クリーミングした
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【実施例2】
【0023】
実施例1で得た本発明品1を用いて調製した皮膚外用剤(化粧水)
1. 実施例1で得た本発明品1 5.0
2. ジプロピレングリコール 1.0
3. ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
4. 防腐剤 適量
5. 精製水 で 100.0%とする。
【0024】
実施例1で得た本発明品1を用いて、上記処方の化粧水を調製した。調製法は、本処方に示す1〜5の成分を量り採り、パドル式攪拌機を用いて室温で均一に混合することで本発明の化粧水を得た。得られた化粧水は、均一透明であった。この本発明の化粧水を45℃、−5℃と−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて3ヶ月間保存し外観を確認したところ、全ての保管条件で分離や濁りは確認されず安定であった。

(比較例1)
【0025】
本発明品を使用せずに調製した皮膚外用剤(化粧水)
1. テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビル 1.0
2. POE(20)硬化ヒマシ油
(NIKKOL HCO−20) 1.5
3. グリセリン 1.5
4. 1,3−ブチレングリコール 0.5
5. ジプロピレングリコール 1.0
6. ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
7. 防腐剤 適量
8. 精製水 で 100.0%とする。
【0026】
上記の処方に示す1〜8の各成分を量り取り、パドル式攪拌機を用いて室温で均一に混合することで比較例の化粧水を得た。粒径は288.4nmであった。結果は均一な濁った化粧水が得られたが、透明にならなかった。

(比較例2)
【0027】
本発明品を使用せずに調製した皮膚外用剤(化粧水)
比較例2の処方の化粧水を調製するにあたり、マイクロフルイダイザーを使用して、高圧乳化法により比較例の化粧水を調製した。調製方法は、比較例1の処方に示す1〜8の各成分を量り採り、パドル式攪拌機により予備混合を行った後、マイクロフルイダイザー(サヤマトレーディング製 M−110TC)を用いて、700Kg/cmで3回連続処理を行い比較例の化粧水を得た。このときの処理温度は60〜80℃の範囲であった。得られた化粧水は均一透明であったが、高エネルギーが必要であった。実施例1で得た本発明品を用いる事で、半透明または透明な化粧水を調製する際に、簡単に水で実施例1で得た本発明品を希釈するだけで出来るのが特徴である。
【実施例3】
【0028】
実施例1で得た本発明品2を使用して調製した皮膚外用剤(化粧水)
1. 実施例1で得た本発明品2 15.0
2. カーボポール980(ノベオン社製) 0.5
3. アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
4. ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
5. 1,3―ブチレングリコール 3.0
6. ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 10.0
7. アルギニン 0.3
8. 防腐剤 適量
9. 精製水 で 100.0%とする。
【0029】
実施例1で得た本発明品2を用いて、上記処方の化粧水を調製した。調製法は、本処方に示す1〜9の成分を量り採り、パドル式攪拌機を用いて室温で均一に混合することで本発明の化粧水を得た。得られた化粧水は、均一透明であった。この本発明の化粧水を45℃、−5℃と−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて3ヶ月間保存し外観を確認したところ、全ての保管条件で分離や濁りは確認されず安定であった。
【実施例4】
【0030】
実施例1で得た本発明品3を配合した皮膚外用剤(化粧水)
1. 実施例1で得た本発明品3 10.0
2. アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05
3. クインシスシード 0.1
4. ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
5. 1,3―ブチレングリコール 1.0
6. アルギニン 0.05
7. 防腐剤 適量
8. 精製水 で 100.0 %とする。
【0031】
実施例1で得た本発明品3を用いて、上記処方の化粧水を調製した。調製法は、本処方に示す1〜8の成分を量り採り、パドル式攪拌機を用いて室温で均一に混合することで本発明の化粧水を得た。得られた化粧水は、均一透明であった。この本発明の化粧水を45℃、−5℃と−5℃〜45℃のサイクル恒温槽にて3ヶ月間保存し外観を確認したところ、全ての保管条件で分離や濁りは確認されず安定であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
テトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルを微細化し、透明〜半透明で安定にした皮膚外用剤用組成物を提供することができる。さらにはそれを配合した皮膚外用剤を提供することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)、(C)および(D)を必須成分として含有することを特徴とする皮膚外用剤用組成物。
(A)L−アスコルビン酸脂肪酸エステル
(B)非イオン性界面活性剤
(C)多価アルコール
(D)水
【請求項2】
L−アスコルビン酸脂肪酸エステルがテトラ2−へキシルデカン酸アスコルビルである、請求項1に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項3】
皮膚外用剤用組成物の全量中に、(A)を10〜40質量%、(B)を5〜30質量%、(C)を20〜40質量%、(D)を1〜40質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項4】
(A):(B)が40:60〜60:40である請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項5】
(B)の非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項6】
((A)+(B)):(C)が40:60〜80:20である請求項1〜5のいずれか1項に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項7】
皮膚外用剤用組成物が半透明〜透明である事を特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤用組成物。
【請求項8】
請求項1〜7に記載の皮膚外用剤用組成物を含有する皮膚外用剤。
【請求項9】
皮膚外用剤用組成物を皮膚外用剤中に1〜30質量%含有することを特徴とする請求項7に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−327969(P2006−327969A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151865(P2005−151865)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(000228729)日本サーファクタント工業株式会社 (44)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】