説明

皮膚外用剤

【課題】ポリアクリル酸系の増粘剤と保湿剤とを含有する皮膚外用剤において、べたつきを軽減し、使用感に極めて優れた皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】
本発明は(A)ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上のアクリル酸系増粘剤と、(B)エリスリトールアルキルエーテルとを含有することを特徴とする皮膚外用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は増粘剤と保湿剤とを含有する皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、べたつきを軽減し、使用感に極めて優れた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤に使用される水溶性増粘剤は、種々の多糖類、ゼラチン等の天然高分子;ポリオキシエチレン、アクリル酸等の合成高分子;モンモリナイト、シリカ等の無機鉱物など、多岐にわたる。
【0003】
このうち、皮膚外用剤に特に汎用されている増粘剤は、カルボキシビニルポリマーと総称されるアクリル酸の重合体である。カルボキシビニルポリマーは、商品名としてはハイビスワコー(和光純薬株式会社)、シンタレン(3V SIGMA社)、カーボポール(ノベオン社)等として市販されているものである。これらの増粘剤は化学的に架橋している重合体である。
【0004】
このような架橋重合体の水分散液は、非常に増粘効果が高く、主として化粧料に汎用されている。しかしながら、カルボキシビニルポリマーの欠点として、単独で用いた場合、安定性には優れるものの肌なじみが悪く、べたついて、浸透感には劣るものであった。さらには、増粘可能なpH範囲が限られるという問題もある。カルボキシビニルポリマーは該ポリマーに含まれるカルボキシル基が解離状態になることで水中にてポリマーが膨潤し増粘する。したがって、カルボキシル基が充分に解離しない弱酸性以下のpH領域ではカルボキシビニルポリマーは増粘剤として機能しないという重大な欠点がある。
したがって、べたつきがなく、使用感に優れ、かつ広いpH範囲で増粘可能な増粘剤が強く望まれている。
【0005】
これに対して、アクリルアミド系増粘剤は、使用感に優れ、かつ低いpH領域にも対応できることから化粧料への配合が試みられている。しかしながら、これらアクリルアミド系増粘剤を単独で用いた場合、経時で粘度低下を起こすという安定性の観点から問題があった。
【0006】
そこで、安定性が良好なアクリルアミド系増粘剤として、水膨潤性高分子のミクロゲルからなる増粘剤が本出願人により開発され、化粧料に利用されている(特許文献1)。
また、会合性高分子として疎水性ポリエーテルウレタンからなる増粘剤が開発され(特許文献2)、化粧料(特許文献3)、毛髪化粧料及び洗浄料(特許文献4)に利用されている。
しかしながら、これらの増粘剤は、必ずしも崩れやすくみずみずしい使用感を与えるものではない。このように、化粧料の分野においては多くの様々な増粘剤が、化粧料の安定性や使用性の観点から精力的に研究されている。
【0007】
一方、エリスリトールアルキルエーテルは、保湿剤や肌荒れ改善剤として皮膚外用剤に応用されている(特許文献5)。しかしながら、ポリアクリル酸系増粘剤と組み合わせて皮膚外用剤に配合されたことはない。
また、グリセリンは、皮膚外用剤中での保湿能が高いので、保湿剤として広く皮膚外用剤に配合されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−43785
【特許文献2】特開平9−71766
【特許文献3】特開2000−239120
【特許文献4】WO 02/00179
【特許文献5】特開平11−35443
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上述の観点に鑑み、特に保湿剤として汎用されているグリセリンは保湿能が高いものの、アクリル酸系増粘剤との相性が悪く、特にアクリルアミド系増粘剤と組み合わせると、極めてべたつきが強い使用感になってしまう観点に着目し、様々な増粘剤と保湿剤を配合する皮膚外用剤について鋭意研究を重ねた結果、特定のアクリル酸系増粘剤とエリスリトールアルキルエーテルとを組み合わせて皮膚外用剤に配合すると、べたつきを軽減し、使用感に極めて優れた皮膚外用剤を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の目的は、増粘剤と保湿剤とを含有し、べたつきがなく、使用感に極めて優れた皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、(A)ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上のアクリル酸系増粘剤と、(B)エリスリトールアルキルエーテルとを含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記(A)アクリル酸系増粘剤が、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0013】
さらに、本発明は、皮膚外用剤全量に対して、(A)アクリル酸系増粘剤の含有量が0.01〜10質量%であり、(B)エリスリトールアルキルエーテルの含有量が0.01〜50質量%であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、さらに(C)水を含有することを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚外用剤は保湿剤と増粘剤を含有しながら、べたつきがなく、極めて優れた
使用感を有する。また、本発明の皮膚外用剤は保湿効果に優れており、さらに増粘剤により、皮膚に塗布しやすい適度な粘度に調整可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
「(A)アクリル酸系増粘剤」
(A)成分のアクリル酸系増粘剤は、アクリル酸又はアクリル酸からの誘導体からなるモノマーを構成単位として含有する合成高分子からなる増粘剤である。
本発明の皮膚外用剤には、ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上を配合することができる。
【0017】
前記の各アクリル酸系増粘剤は、通常、皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されない。ポリアクリル酸アンモニウムとしては、例えば、SIMULGEL A(SEPPIC社製)として市販されているものを用いることができる。アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体としては、例えば、SIMULGEL EG(SEPPIC社製)として市販されているものを用いることができる。
また、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体としては、例えば、前記特許文献1記載のミクロゲルからなる増粘剤を用いることができる。このミクロゲルからなる増粘剤は、有機溶媒若しくは油分を分散媒とし水を分散相とする組成物において、アクリルアミド系モノマーを、一般に逆相乳化重合法と称される重合法により製造される高分子ミクロゲルである。逆相乳化重合における重合系が一相マイクロエマルションあるいは微細W/Oエマルションを形成する条件下において、ミクロゲルが製造されることが好ましく、その製造方法は特許文献1に詳細に記載されている。具体的には、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンを用い、これらのモノマーから共重合されるミクロゲルを、(a)成分の増粘剤として用いることが好ましい。さらに、メチレンビスアクリルアミド等の架橋モノマーを共重合しても好ましく、さらに好ましくはジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとメチレンビスアクリルアミドからなる共重合体のミクロゲルである。
本発明の皮膚外用剤に用いるアクリル酸系増粘剤としては、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体が特に好ましい。
【0018】
(A)成分の増粘剤の含有量は、皮膚外用剤全量に対して通常0.1〜10質量%である。好ましくは0.5〜5質量%である。
【0019】
「(B)エリスリトールアルキルエーテル」
(B)成分のエリスリトールアルキルエーテルは、前記特許文献5記載の低級アルキルテトリトールエーテルの一つに該当する化合物である。この低級アルキルテトリトールエーテルは、保湿効果に優れ、肌荒れ改善効果を有し、安全性及び酸化安定性に優れ、皮膚にも低刺激であるという特徴を有する。低級アルキルテトリトールエーテルを製造するために用いるテトリトールとは、炭素数4のテトロースの糖アルコールであり、例えば、エリスリトール、D−トレイトール、L−トレイトールが挙げられる。
【0020】
本発明に用いる(B)エリスリトールアルキルエーテルは下記一般式(1)で表され、Aはエリスリトールからn個の水素を除いた残基である。
【化1】

【0021】
一般式(1)において、Aは、エリスリトールからn個の水素を除いた残基であり、Rは、炭素数1〜4の脂肪鎖で、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、不飽和アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシアルキル基いずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル2−プロペニル基、2,4−ビシクロプロピル基、シクロブチル基、2−メチルシクロプロピル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ1−メチルエチル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシ2−メチルプロピル基、2−ヒドロキシ2−メチルプロピル基、2−ヒドロキシ1,1−ジメチルエチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、ビス(ヒドロキシメチル)メチル基、2,3−ジヒドロキシブチル基、2,4−ジヒドロキシブチル基、3,4−ジヒドロキシブチル基、2,3−ジヒドロキシ2−メチルプロピル基、3−ヒドロキシ2−ヒドロキシメチルプロピル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、トリス(ヒドロキシメチル)メチル基等が挙げられる。
【0022】
エリスリトールの4つの水酸基と低級アルキル基のエーテル結合位置は、任意であり、いずれの位置でも構わない。エーテル結合数は、水に対する溶解性の点からモノエーテルが好ましいが、ジエーテル、トリエーテル、テトラエーテルいずれの混合物でも構わない。また、アルキル基がいずれか2種類以上の結合物でも構わない。平均置換度nは、1〜4の範囲であるが、その性状から、0.1〜2.8の範囲が好ましい。
【0023】
(B)成分のエリスリトールアルキルエーテルは一般的なエーテル化反応により製造される。例えば、テトリトールをジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、アセトン、N−メチルピロリドン、N−アセチルモルホリン、N−メチルコハク酸イミド等の非水系溶媒に溶解するかもしくは無溶媒で、これに、一般式(2)
【化2】

(Rは、一般式(1)の定義と同様で、Xは、脱離基もしくは水酸基であり、脱離基としては、例えば、臭素、塩素、ヨウ素、メシル基、トシル基等が挙げられる。)
若しくは、一般式(3)
【化3】

(もしくはR1〜R4の合計炭素数が2であるアルキル基である。)
で表される化合物を添加して、触媒の存在下、0℃〜130℃で攪拌、反応させることにより得られる。〔ロバートらの方法:Tetrahedron,35,2169〜2172(1979)〕。
【0024】
本発明に用いる(B)エリスリトールアルキルエーテルは、エリスリトールメチルエーテル又はエリスリトールエチルエーテルが好ましい。
【0025】
(B)エリスリトールアルキルエーテルの含有量は、皮膚外用剤全量に対して通常0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
【0026】
本発明は、さらに(C)水を含有する。水の含有量は任意であり、上記必須成分及び他の任意配合成分の残余である。通常、皮膚外用剤全量に対して10〜90質量%である。
【0027】
本発明の皮膚外用剤の剤型は任意である。例えば、可溶化系、水分散系、乳化系などを製造できる。本発明においては、特に、上記必須成分と油分と乳化剤とを混合し常法により乳化して水中油型皮膚外用剤とすることが好ましい。
【0028】
本発明の水中油型皮膚外用剤には、通常乳化組成物に配合され得る油分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、炭化水素油、シリコーン油、ロウ類、脂肪酸エステル類、高級アルコール類、紫外線吸収剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス等が挙げられる。
【0030】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、平均分子量20万以上のシリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0031】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリン、液状ラノリン、ジョジョバロウ等が挙げられる。
【0032】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、ミツロウ脂肪酸2−オクチルドデシル等が挙げられる。
【0033】
高級アルコールとしては、例えば、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、ベヘニルアルコール、トリアコンチルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤としては下記化合物が挙げられる。
(1)安息香酸系紫外線吸収剤
例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステルなど。
(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤
例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレートなど。
(3)サリチル酸系紫外線吸収剤
例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレートなど。
(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤
例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメートなど。
(5)トリアジン系紫外線吸収剤
例えば、ビスレゾルシニルトリアジン。
さらに具体的には、ビス{〔4−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス{4−(2−エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5−トリアジンなど。
(6)その他の紫外線吸収剤
例えば、3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン。ジモルホリノピリダジノンなどのピリダジン誘導体。
【0035】
本発明の皮膚外用剤には、上記成分の他に、通常皮膚外用剤に配合され得る成分を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。配合可能成分を具体例に例示する。
【0036】
多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0037】
水溶性高分子としては、例えば、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、アラビアガム、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等が挙げられる。
【0038】
その他、エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、δ−トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、ε−ポリリジン等の防腐剤;クエン酸、乳酸、ヘキサメタリン酸等の有機または無機酸よびその塩;ビタミンA、ビタミンAパルミテート、ビタミンAアセテート等のビタミンA誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類;γ−オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、アルブチン、セファランチン等の各種薬剤、ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、オウゴン、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サクラリーフ等の植物の抽出物、β−カロチン等の色素等も配合することができる。
【0039】
本発明の皮膚外用剤は、スキンケア乳液、低粘度のスキンケアクリーム等の水中油型乳化化粧料の製品として用いることが特に好ましい。これらの製品は、前記した必須成分および化粧料に通常配合される成分を混合して常法により製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
【0041】
<増粘剤にジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体を用いた実施例>
「実施例1」
増粘剤として、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(*1)0.5質量%、保湿剤としてエリスリトールエチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「比較例1」
増粘剤として、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(*1)0.5質量%を水に配合した水溶液を調製した。
「比較例2」
増粘剤として、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(*1)0.5質量%、保湿剤としてグリセリン10質量%を水に配合した水溶液を調製した。
【0042】
【表1】

*1:下記合成例により得られる増粘剤
「合成例:ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gとアクリロイルジメチルタウリン(Sigma製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド70mgを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n-ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。」
【0043】
<べたつきの評価試験>
上記の水溶液を、特開平11-281559に記載されている液体のべたつき評価装置を用いて、べたつきの評価を行なった。この評価装置は可動プレートと、その上を転動するローラー状のプローブから構成され、プローブにかかる抵抗力を、評価対象の液体のべたつき力(又は粘着力)による作用として、客観的に液体のべたつきを評価することができる。
この装置の可動プレートに、実施例1、比較例1、比較例2の水溶液をそれぞれ10・L載せて、べたつき力の時間変化を測定した。その結果を図1に示す。
【0044】
測定開始後、時間の経過と共に可動プレート上の10水溶液は徐々に蒸発し、約100秒後、ほぼ全ての水溶液中の水分が蒸発した。
保湿剤を配合しない比較例1では水分蒸発後にべたつき力が大きく低下した。そして、保湿剤としてグリセリンを配合した比較例2では水分蒸発後も高いべたつき力を示した。
これらの比較例に対し、実施例1では、水分蒸発後のべたつき力が、グリセリンを配合した比較例2より低い。したがって、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテルを配合した実施例1は、水分蒸発後のべたつきが軽減しており、優れた使用感であることが示された。
【0045】
<成分Aの増粘剤として、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体を用いた実施例>
「実施例2」
増粘剤として、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンコポリマー:SIMULGEL EG SEPPIC社製)1.25質量%、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「実施例3」
増粘剤として、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンコポリマー:SIMULGEL EG SEPPIC社製)1.25質量%、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「比較例3」
増粘剤として、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンコポリマー:SIMULGEL EG SEPPIC社製)1.25質量%を水に配合した水溶液を調製した。
「比較例4」
増粘剤として、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンコポリマー:SIMULGEL EG SEPPIC社製)1.25質量%、保湿剤としてグリセリン10質量%を水に配合した水溶液を調製した。
【0046】
【表2】

*1:増粘剤のSIMULGEL EGは、ポリマー分40質量%を含有する原料である。処方中ではポリマー濃度を0.5質量%となるように調製した。
【0047】
実施例2〜3と比較例3〜4を、実施例1と同様に評価した。その結果を図2に示す。測定開始後、時間の経過と共に可動プレート上の水溶液は徐々に蒸発し、約120秒後、ほぼ全ての水分が蒸発した。保湿剤を配合しない比較例3では水分蒸発後にべたつき力が大きく低下したのに対し、保湿剤としてグリセリンを配合した比較例4では水分蒸発後も高いべたつき力を示した。
これらの比較例に対し、実施例2〜3では、水分蒸発後のべたつき力が、グリセリンを配合した比較例4より低い。したがって、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテルを配合した実施例2〜3は、水分蒸発後のべたつきが軽減しており、優れた使用感であることが示された。
【0048】
<成分Aの増粘剤として、ポリアクリル酸アンモニウムを用いた実施例>
「実施例4」
増粘剤として、ポリアクリル酸アンモニウム(SIMULGEL A SEPPIC社製)1.72質量%、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「実施例5」
増粘剤として、ポリアクリル酸アンモニウム(SIMULGEL A SEPPIC社製)1.72質量%、保湿剤としてエリスリトールエチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「比較例5」
増粘剤として、ポリアクリル酸アンモニウム(SIMULGEL A SEPPIC社製)1.72質量%を水に配合した水溶液を調製した。
「比較例6」
増粘剤として、ポリアクリル酸アンモニウム(SIMULGEL A SEPPIC社製)1.72質量%、保湿剤としてグリセリン10質量%を水に配合した水溶液を調製した。
【0049】
【表3】

*1:増粘剤のSIMULGEL Aはポリマー分29質量%を含有する原料である。処方中では、ポリマー濃度を0.5質量%となるように調製した。
【0050】
実施例4〜5と比較例5〜6を、実施例1と同様に評価した。その結果を図3に示す。測定開始後、時間の経過と共に可動プレート上の水溶液は徐々に蒸発し、約250秒後、ほぼ全ての水分が蒸発した。保湿剤を配合しない比較例5では水分蒸発後にべたつき力が大きく低下したのに対し、保湿剤としてグリセリンを配合した比較例6では水分蒸発後も高いべたつき力を示した。
これらの比較例に対し、実施例4〜5では、水分蒸発後のべたつき力が、グリセリンを配合した比較例4より低い。したがって、保湿剤としてエリスリトールメチルエーテルを配合した実施例4〜5は、水分蒸発後のべたつきが軽減しており、優れた使用感であることが示された。
【0051】
<成分Aの増粘剤に対する比較として、増粘剤にポリアクリル酸アミドを用いた比較例>
「比較例7」
増粘剤として、セピゲル502(SEPPIC社製)2.5質量%、保湿剤としてエリスリトールエチルエーテル10質量%を水に配合した水溶液を調製した。この水溶液は化粧水に相当する。
「比較例8」
セピゲル502(SEPPIC社製)2.5質量%を水に配合した水溶液を調製した。
「比較例9」
セピゲル502(SEPPIC社製)2.5質量%、保湿剤としてグリセリン10質量%を水に配合した水溶液を調製した。
【表4】

*1:増粘剤のセピゲル502(SEPPIC社製)は、ポリマー分20質量%を含有する原料である。処方中ではポリマー濃度として0.5質量%となるように調製した。
【0052】
比較例7〜9を、実施例1と同様に評価した。その結果を図4に示す。測定開始後、時間の経過と共に可動プレート上の水溶液は徐々に蒸発し、約150秒後、ほぼ全ての水分が蒸発した。保湿剤を配合しない比較例7、保湿剤としてグリセリンを配合した比較例8、保湿剤としてエリスリトールエチルエーテルを配合した比較例6は、いずれも同程度のべたつき力を示し、ポリアクリル酸アミドのセピゲル502を配合した処方では使用感に差が見られないことが示された。
すなわち、ポリアクリル酸系の増粘剤の中でも、ポリアクリル酸アミドは、エリスリトールアルキルエーテルと組み合わせて配合しても、決して好ましい使用感を得ることが出来ない。これに対し、図1〜3では、本発明に用いる特定のポリアクリル酸系の増粘剤をエリスリトールアルキルエーテルと組み合わせて配合すると、好ましい使用感が得られるという当業者に予想し得ない顕著な効果が得られている。
【0053】
以下に、本発明のその他の実施例を示す。
【0054】
実施例6 スキンケアクリーム
(配合成分) 質量%
(1)イオン交換水 残余
(2)ヘキサメタリン酸ソーダ 0.1
(3)炭酸ナトリウム 十水塩 0.2
(4)乳酸ナトリウム 0.05
(5)トラネキサム酸 1.0
(6)水酸化ナトリウム 0.03
(7)酸化チタン(ルチル型,粒径0.25μ) 1.0
(商品名:タイペークCR−50(石原産業(株)社製))
(8)1,3−ブチレングリコール 5.0
(9)エリスリトールメチルエーテル 3.0
(10)アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン共重合体 2.5
(11)カルボキシビニルポリマー 0.03
(12)N−ステアロイル−アスパラギン酸カリウム 0.1
(13)フェノキシエタノール 0.5
(14)水溶性コラーゲン 適量
(15)自己乳化型グリセリルモノステアレート 0.5
(16)ソルビタントリステアレート 0.1
(17)ベヘニン酸 0.4
(18)ミリスチン酸 0.2
(19)(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸) 0.1
ジペンタエリスリチル
(商品名:コスモール168E、日清オイリオ(株)社製)
(20)α−オレフィンオリゴマー 2.5
(21)グリセリル トリ−2−エチルヘキサノエート 1.5
(22)ジメチルポリシロキサン 0.3
(23)オクトクリレン 0.1
(24)香料 適量
<製法>
(15)〜(24)を70℃にて、均一に混合溶解した(油相)。一方、(1)〜(14)を70℃にて均一に混合溶解した(水相)。70℃に保持した水相に油相を徐添しながら、ホモミキサーで乳化した。乳化が終了したら、40℃以下に急冷し、目的の粘度30000mPa・s/30℃のスキンケアクリームを得る。
【0055】
実施例7 スキンケア乳液
(配合成分) 質量%
(1)イオン交換水 残余
(2)ヘキサメタリン酸ソーダ 0.05
(3)乳酸ナトリウム 0.01
(4)炭酸ナトリウム(無水塩) 0.05
(5)アスコルビン酸グルコシド 0.2
(6)水酸化カリウム 0.05
(7)酸化チタン(ルチル型,粒径0.25μ) 1.0
(商品名:タイペークCR−50(石原産業(株)社製))
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)1,3−ブチレングリコール 9.0
(10)エリスリトールエチルエーテル 3.0
(11)ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの
共重合体(表1の合成例で得られる増粘剤) 0.1
(12)カルボキシビニルポリマー 0.1
(13)ケルトロール 0.05
(14)フェノキシエタノール 0.5
(15)エリスリトール 0.1
(16)ヒドロキシステアリン酸コレステリル 適量
(17)グリセリルステアレート 0.3
(18)ステアリン酸 0.4
(19)ミリスチン酸 0.2
(20)セトステアリルアルコール 0.3
(21)水添ヤシ油 0.6
(22)流動パラフィン 5.0
(23)メチルポリシロキサン20mPa・s 0.1
(24)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005
(25)香料 適量
<製法>
(16)〜(25)を70℃にて、均一に混合溶解した(油相)。一方、(1)〜(15)を70℃にて均一に混合溶解した(水相)。70℃に保持した水相に油相を徐添しながら、ホモミキサーで乳化した。乳化が終了したら、40℃以下に急冷し、目的の粘度10000mPa・s/30℃のスキンケア乳液を得、ディスペンサー容器に入れ、ディスペンサー仕様のスキンケア乳液を得る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、保湿効果を有し、べたつきが少なく、使用感に極めて優れ、希望する粘度に増粘可能な皮膚外用剤を提供できる。本発明の皮膚外用剤は、特に使用感を重視する皮膚化粧料に好ましく利用される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】べたつきの評価を示すグラフである。
【図2】べたつきの評価を示すグラフである。
【図3】べたつきの評価を示すグラフである。
【図4】べたつきの評価を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアクリル酸アンモニウム、アクリル酸Naとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体からなる群から選択される1種又は2種以上のアクリル酸系増粘剤と、(B)エリスリトールアルキルエーテルとを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記(A)アクリル酸系増粘剤が、ジメチルアクリルアミドとアクリロイルジメチルタウリンとの共重合体であることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚外用剤全量に対して、(A)アクリル酸系増粘剤の含有量が0.01〜10質量%であり、(B)エリスリトールアルキルエーテルの含有量が0.01〜50質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
さらに(C)水を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−234960(P2009−234960A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81368(P2008−81368)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】