説明

皮膚外用剤

【課題】
肌上の電解質に応答することで、粘度値が上昇して使用する感触が変化し、肌への密着感が得られることから肌上から垂れ落ちることがない優れた品質を有する皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)、(B)、(C);
(A)電解質応答性水溶性高分子
(B)水
(C)塩基性中和剤
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質応答性水溶性高分子、水、塩基性中和剤を含有する皮膚外用剤に関し、さらに詳細には肌上の電解質に応答することで、粘度値が上昇して使用する感触が変化し、肌への密着感が得られることを特徴とする皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品や医薬品に代表される皮膚外用剤には、配合する成分によってさまざまな機能を付与することができる。従来より、水溶性高分子は粘度付与による経時安定性の向上の目的や新たな官能品質の開発等の目的から皮膚外用剤への応用が数多く検討されている。
近年では、光や温度、pH、電解質といった外的因子に応答することを特徴とした応答性水溶性高分子が開発され、さらなる機能向上が期待されている。例えば、側鎖にフッ素原子を有する温度応答性水溶性高分子(特許文献1)や、ゾル−ゲル転移温度を有し、温度によってゾル状態とゲル状態をとる温度応答性水溶性高分子(特許文献2)がある。
【0003】
一方、化粧料に広く利用される水溶性高分子の一例としてアクリル酸を主鎖として、カルボキシル基をもつカーボポールや、これに一部アルキル鎖が付加した(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体がある。これらを中和して水系を増粘させる作用があるが、電解質存在下において水系の粘度値が低下することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
近年ではこの(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の架橋度や合成する際のポリアクリル酸とポリアクリル酸アルキルの構成比率を変えることで、電解質に応答して粘度値が上昇するものが開発されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2005−8863号公報
【特許文献2】特許第3585309号公報
【非特許文献1】化粧品ハンドブック(日光ケミカルズ株式会社、1996年)
【特許文献3】特願2007−340497号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜2の技術では、温度やpHなどの外的因子による感触を得ることは可能であったが、使用時の感触の変化を得ることができなかった。
また非特許文献1にあるカーボポールを用いた場合においては、使用時の感触として、みずみずしい感触を得ることが可能であったが、肌上に存在する汗等からの電解質の影響により使用時の粘度値が減少し、化粧料が肌上より垂れ落ちるという場合があった。このカーボポールような水溶性高分子に替えて非イオン性水溶性高分子を含有して汗等の電解質に対して応答しにくい化粧料の技術もある。しかし、塗布時に最初から塗りのばしにくさを感じる場合があった。
【0006】
そこで本発明においてはみずみずしい使用感でありながら、使用中に肌への密着感を感じることのできる皮膚外用剤が要望されていた。すなわち肌上の電解質に応答する電解質応答性水溶性高分子を含有する皮膚外用剤を開発し、使用時の粘度値を増加させることで、使用時に肌に密着することで肌上から垂れ落ちることなく、さらに使用感の変化も感じられる皮膚外用剤を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究した結果、電解質応答性水溶性高分子と水と塩基性中和剤を含有する皮膚外用剤が、通常の水溶性高分子では粘度の低下が起こるのに対し、逆に電解質存在下においては増粘することで、肌上に密着し、さらに使用感の変化にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、電解質応答性水溶性高分子を含有することを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【0009】
また、電解質応答性水溶性高分子が、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であり、肌上の電解質に応答して粘度値が増加することを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【0010】
さらに、皮膚外用剤として、25℃における電気伝導度が400mS/m未満であることを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【0011】
また、電解質応答性水溶性高分子である(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の構造が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%を構成成分とする以下の特性を有する(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることを特徴とする皮膚外用剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、電解質応答性水溶性高分子を含有するものであり、肌に塗布した時に、肌上の電解質に応答することで、粘度値が上昇して使用する感触が変化し、肌への密着感が得られることから肌上から垂れ落ちることがない優れた品質を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の成分(A)の電解質応答性高分子とは、特に限定されるものではないが、電解質を含有することにより高分子の溶存状態が変化し、物性の変化を生じる高分子のことをいう。本発明においては特に、皮膚外用剤として電解質に応答して粘度値が増加する高分子のことである。このような電解質応答性高分子としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体があげられる。
【0015】
本発明の成分(A)は、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%を構成成分とする。
【0016】
本発明に用いられる、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステルおよび(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。さらに好ましくは、少なくともメタクリル酸ベヘニルを50質量%以上含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0017】
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの組み合わせは、それぞれ単独のものを組み合わせてもよいし、どちらか一方、または両者について2種以上のものを併用して組み合わせてもよい。
【0018】
本発明に用いられるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン性不飽和基がアリル基である化合物が好ましく、これらの中でも、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテルおよびペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースがさらに好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明において、(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を得る方法は、特に限定されず、これらの原料を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0020】
不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0021】
前記溶媒は、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を溶解しないものであって、当該反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。溶媒の具体例としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサン等の炭化水素溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でもノルマルヘキサンおよびノルマルへプタンが好適に用いられる。また、これら炭化水素溶媒は、ケトン、エステル、エーテルおよび飽和アルコール等の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。好ましい有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、プロピオン酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0022】
溶媒の使用量は、攪拌操作性を向上させる観点および経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300〜5000質量部であることが好ましい。
【0023】
前記重合開始剤は、例えば、ラジカル重合開始剤が好ましく、具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも、高分子量の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が得られる観点から、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートが好適に用いられる。
【0024】
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが望ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。また、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがある。
【0025】
反応温度は、50〜90℃であるのが好ましく、55℃〜75℃であるのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。また、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがある。反応時間は、反応温度によって異なるので一概にはいえないが、通常、0.5〜5時間である。
【0026】
反応終了後、反応溶液を例えば80〜130℃に加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、本発明の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の水への溶解性を損なうおそれがある。
【0027】
かくして得られた(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、例えば、脱イオン水等の純水に分散し、60〜80度の加温下で、ホモミキサー3000〜5000回転で1時間膨潤した、膨潤物を皮膚外用剤に配合することができる。
【0028】
以下に成分(A)の合成例を挙げ、具体的に説明するが、本発明の成分(A)は何らこれらの合成例に制約されるものではない。
【0029】
[合成例1]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)1.35g、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.05g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
【0030】
[合成例2]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.58gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
【0031】
[合成例3]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体45gを得た。
【0032】
[合成例4]
合成例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.07gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
【0033】
[合成例5]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.58g、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.07gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
【0034】
[合成例6]
合成例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.09gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体42gを得た。
【0035】
[合成例7]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.80g、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.09gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
【0036】
[合成例8]
合成例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.14gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
【0037】
本発明の成分(A)の含有量は特に制限されないが、例えば、固形分換算で0.05〜5質量%(以下単に「%」という)、好ましくは0.1〜3%である。この範囲の含有量とすることで、肌上の電解質に応答して、粘度値が上昇し使用する感触が変化し、肌への密着感が得られることから肌上から垂れ落ちることがない皮膚外用剤として好ましいものとなる。
【0038】
本発明の成分(A)の応答性を有する電解質とは、特に限定されるものではないが、水中でイオンに電離する化合物を指し、具体的には乳酸、グルコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クエン酸、フタル酸、酢酸、安息香酸、サリチル酸、没食子酸、ジエチルバルビツル酸等のカルボン酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、エタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸等の有機スルホン酸、タウリンなどのアミノスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、珪酸、アルミン酸等の無機酸、などの酸剤、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、リン酸二カリウム、硫酸モノエタノールアミン、1号珪酸ソーダ、2号珪酸ソーダ、3号珪酸ソーダ、尿素、アスコルビン酸およびその誘導体、アルブチン、グリチルリチン酸ジカリウム等の有効成分等、が挙げられる。
【0039】
本発明の皮膚外用剤が応答する電解質としては、粘度値が上昇して使用する感触が変化し、肌への密着感が得られるという点から肌上の電解質が特に好適に使用することができる。肌上の電解質とは、主に汗に含まれる塩化ナトリウム、尿素、乳酸等が挙げられる。また、本発明を塗布する前に、あらかじめ肌に使用された皮膚外用剤中に含まれている電解質であってもよく、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明において電解質は肌上に存在することが重要である。このような電解質は種類等により違いはあるが、効果的に増粘するための成分(A)と電解質との含有質量比は、概ね(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体:電解質として、1:0.1〜1:4であることが好ましく、1:0.25〜1:2の範囲であることがより好ましい。この範囲のものとすることで良好な増粘効果を得ることができる。
【0041】
本発明の成分(B)の水は、成分(A)の分散媒体として用いられるものであり、化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。本発明の皮膚外用剤としては、電解質を含有していないものであることから、好ましい成分(B)としては例えば精製水、蒸留水、イオン交換水等があげられる。
【0042】
成分(B)の好ましい含有量は、特に制限されないが、30〜99.9%であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましい。
【0043】
本発明の成分(C)の塩基性中和剤は、本発明において成分(A)の中和を目的に含有されるものであり、このような成分(C)は通常皮膚外用剤に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤は、成分(B)中において、成分(A)が成分(C)により中和された状態にて含有されるものであり、中和された状態にある成分(A)は電解質応答性高分子として肌上の電解質等に応答した増粘効果等を得ることが可能となる。この中和された状態における皮膚外用剤としての25℃における電気伝導度は、400mS/m未満であることが本発明の電解質応答による増粘効果をさらに効果的なものとするため好ましい。なお、本発明において電気伝導度は、電気伝導率計CM−60G(東亜電波工業(株)製)を用いて25℃恒温下にて測定した。なお、成分(A)が成分(C)により中和されていない状態における電気伝導度は、成分(A)の種類や含有量により異なるが、概ね20〜60mS/mの範囲にある値を示す。
【0045】
本発明に用いられる成分(C)の含有量は、成分(A)の配合量により異なり、特に限定されないが、皮膚外用剤としての25℃でpHが6.0〜8.0の範囲になるように、より好ましくは、25℃でpHが6.5〜7.5の範囲になるように配合することが好ましい。本発明において皮膚外用剤のpHの測定は、25℃でガラス電極のpHメーター(HORIBA社製)を用いて測定した。
【0046】
本発明の皮膚外用剤には、本発明の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び上述した電解質以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、皮膚外用剤や、化粧料や医薬部外品等の製剤に使用される成分、例えば、低級アルコール類、多価アルコール類、上記電解質応答性水溶性高分子以外の高分子、粉体、界面活性剤、油性成分、清涼剤、抗菌剤、香料、保湿剤、抗炎症剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、美白剤、植物抽出物、ビタミン類等の成分を配合することができる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤としては、例えば、ジェル状美容液、乳液、化粧水、乳液、クリーム、パック、マッサージ料、クレンジングジェル、洗顔フォーム、化粧下地、日焼け止め料等が挙げられ、特に好ましくは、ジェル状美容液、乳液、クリーム、マッサージ料、パックが挙げられ、中でもマッサージ料は、皮膚外用剤が増粘することによるマッサージ効果ともなりうるために好ましいものとして例示できる。また、あらかじめ、電解質を含む皮膚外用剤を肌上に塗布しておき、その上に本発明品を塗布することで本発明品の増粘効果を得る使用方法も併せて例示できる。
【実施例1】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらの実施例に制約されるものではない。
【0049】
本発明品1〜5及び比較品1〜3:ジェル状美容液
下記表1に示す組成のジェル状美容液を下記製造法に従って調製した。得られたジェル状美容液を、肌上にて、下記評価法により、使用中の増粘、感触の変化、肌への密着感についての評価を行った。その結果を併せて表1に示す。
【0050】
【表1】

※1:CARBOPOL940(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
※2:メトローズ65SH4000(信越化学工業社製)
【0051】
<製造方法>
A:14に1〜8を入れ充分に膨潤させる。
B:Aに9を加え中和する。
C:Bに、10〜13を加え均一に攪拌してジェル状美容液を得た。
【0052】
<評価方法>
上記で調製したジェル状美容液50gを規格ビンに入れ、電気伝導率計CM−60G(東亜電波工業(株)製)を用いて25℃における電気伝導度を測定した。またこのジェル状美容液3gを専門パネル10名に、顔面に塗布して、一分間、手で馴染ませてもらった。その後、使用中の増粘度合い、感触の変化、肌への密着感について、下記評価基準従って評価してもらった。また、サンプル毎の全パネルの評点の合計点数を下記5段階判定基準に従い判定した。
【0053】
<使用中の増粘度合い>
5点 肌上での増粘をとても感じた
4点 肌上での増粘をやや感じた
3点 どちらともいえない
2点 肌上での増粘をあまり感じない
1点 肌上での増粘を全く感じない
【0054】
<感触の変化>
5点 感触の変化をとても感じた
4点 感触の変化をやや感じた
3点 どちらともいえない
2点 感触の変化をあまり感じない
1点 感触の変化を全く感じない
【0055】
<肌への密着感>
5点 肌への密着感を感じる
4点 肌への密着感を比較的感じる
3点 どちらともいえない
2点 肌への密着感をあまり感じない
1点 肌への密着感を感じない
【0056】
<5段階判定基準>
◎ 45点〜50点
○ 35点〜44点
△ 25点〜34点
× 15点〜24点
×× 5点〜14点
【0057】
本発明品1〜5は、肌上の電解質に応答するため、使用中の増粘度合い、感触の変化と、肌への密着感の全ての項目において満足できるものであった。また成分(A)の中和には水酸化ナトリウムを用いたがいずれも25℃におけるpHは6.8〜7.2の範囲に含まれるものであった。また25℃における電気伝導度はいずれにおいても400mS/m未満であった。一方、本発明の成分(A)のかわりにカルボキシビニルポリマーを用いた比較品1は、使用中に肌上の電解質によって粘度値が低下するため、肌への密着感を感じないものであった。また、同様に成分(A)のかわりにキサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをそれぞれ用いた比較品2、比較品3は使用時の肌上の電解質に応答することがないことから、感触の変化はなく、また肌への密着感にも劣るものであった。
【実施例2】
【0058】
乳液:
下記に示す組成の乳液を下記製造方法に従って調製した。
【0059】
(成分) (%)
1. 合成例3の化合物 0.1
2. 水酸化ナトリウム 0.04
3. 1,3−ブチレングリコール 10.0
4. モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 1.0
5. テトラオレイン酸ポリオキシプロピレンソルビトール(40PO) 1.0
6. 親油型モノステアリン酸グリセリル 1.0
7. ステアリン酸 0.25
8. ベヘニルアルコール 0.5
9. スクワラン 5.0
10.2−エチルヘキサン酸セチル 5.0
11.メチルポリシロキサン 0.25
12.エタノール 5.0
13.メチルパラベン 適量
14.精製水 残量
【0060】
<製造方法>
A:14に1を入れ充分に膨潤させる。
B:Aに2を加え中和する。
C:Bに3を加えた後、70度に加熱する。
D:70度に加熱溶解した4〜11をCに加え乳化する。
E:Dを室温まで冷却した後、12、13を加え均一に攪拌混合して乳液を得た。
【0061】
実施例2の25℃における電気伝導度は250mS/mであり、実施例2を顔面に塗布したところ、肌上の電解質と応答して増粘し、感触の変化と肌への肌への密着感を感じることができる乳液であった。
【実施例3】
【0062】
クリーム:
下記に示す組成のクリームを下記製造方法に従って調製した。
【0063】
(成分) (%)
1. 水素添加大豆リン脂質 2.0
2. モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 3.0
3. セトステアリルアルコール 3.0
4. スクワラン 10.0
5. メドゥフォーム油 5.0
6. ヒドロキシステアリン酸コレステリル 3.0
7. パラフィンワックス 5.0
8. グリセリン 10.0
9. プロピレングリコール 10.0
10.合成例1の化合物 0.1
11.精製水 10.0
12.水酸化ナトリウム 0.04
13.エタノール 5.0
14.防腐剤 適量
15.香料 適量
16.精製水 残量
【0064】
<製造方法>
A:11に10を加え膨潤する。
B:1〜9を70℃にて加熱混合する。
C:Bに70度に加熱した16を加え乳化する。
D:Cを室温まで冷却し、Aと12〜15を加え攪拌混合しクリームを得た。
【0065】
実施例3の25℃における電気伝導度は、200mS/mであり、実施例3を顔面に塗布したところ、肌上の電解質と応答して増粘し、感触の変化と優れた肌への密着感を感じることができるクリームであった。
【実施例4】
【0066】
クレンジングジェル:
下記に示す組成のクレンジングジェルを下記製造方法に従って調製した。
【0067】
(成分) (%)
1.合成例5の化合物 0.2
2.水酸化ナトリウム 0.08
3.ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30EO) 16.0
5.ポリオキシエチレンラウリルエーテル(5EO) 12.0
6.1,3−ブチレングリコール 10.0
7.1,2−ペンタンジオール 0.5
8.メチルパラベン 適量
9.精製水 残量
【0068】
<製造方法>
A:9に1を加え膨潤する。
B:Aに2〜8を加え均一に攪拌混合しクレンジングジェルを得た。
【0069】
実施例4の25℃における電気伝導度は、210mS/mであり、実施例4を顔面に塗布したところ、肌上の電解質と応答して増粘し、優れた感触の変化を感じることができるクレンジングジェルであった。
【実施例5】
【0070】
化粧下地:
下記に示す組成の化粧下地を下記製造方法に従って調製した。
【0071】
(成分) (%)
1. 酸化亜鉛 2.0
2. ジメチルポリシロキサン 20.0
3. ポリオキシエチレン(30)コレステリルエーテル 1.0
4. パルミチン酸オクチル 1.5
5. アクリル−シリコーン系グラフト共重合体混合物(※3) 2.0
6. 精製水 残量
7. エタノール 5.0
8. ジプロピレングリコール 5.0
9. 合成例2の化合物 0.1
10.水酸化ナトリウム 0.04
11.シリカ末 2.0
12.エタノール 5.0
13.防腐剤 適量
14.香料 適量
※3 KP−543(アクリル−シリコーン系グラフト共重合体50%:酢酸ブチル50%混合物、信越化学工業社製)
【0072】
<製造方法>
A:1〜5を混合し、3本ロールミルで分散処理する。
B:6〜14を混合し、ホモミキサーにて均一に攪拌混合する。
C:BにAを攪拌しながら加え均一に混合して化粧下地を得た。
【0073】
実施例5の25℃における電気伝導度は、230mS/mであり、実施例5を顔面に塗布し伸び広げたところ、肌上の電解質と応答して増粘し、肌への密着感を感じることができる化粧下地であった。
【実施例6】
【0074】
日焼け止め料:
下記に示す組成の日焼け止め料を下記製造方法に従って調製した。
【0075】
(成分) (%)
1. 微粒子酸化チタン 10.0
2. ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン(※4) 2.0
3. ポリエーテル変性シリコーン(※5) 2.0
4. 揮発性オルガノポリシロキサン 20.0
5. ジメチルポリシロキサン 5.0
6. トリ2−エチルヘキシルグリセリル 5.0
7. パラメトキシケイヒ酸2−エチルヘキシル 5.0
8. 1,3−ブチレングリコール 5.0
9. 合成例4の化合物 0.05
10.カルボキシビニルポリマー 0.05
11.水酸化ナトリウム 0.04
12.防腐剤 適量
13.エタノール 5.0
14.精製水 残量
※4 KF−6038(信越化学工業社製)
※5 KF−6028P(信越化学工業社製)
【0076】
<製造方法>
A:14に9,10を加え膨潤する。
B:1〜5を混合し、ペイントシェイカーにて均一に分散する。
C:Bに6,7を加え均一に攪拌混合する。
D:CにAと8,11〜13を加え乳化し日焼け止め料を得た。
【0077】
実施例6の25℃における電気伝導度は、220mS/mであり、実施例6を顔面と体に塗布し伸び広げたところ、肌上の電解質と応答して増粘し、優れた肌への密着感を感じることができる日焼け止め料であった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、水溶性高分子としての機能に加え、電解質に応答して増粘する特有の性質を有する増粘剤として利用できるため、塗布中の感触が変化する使用感や肌への密着感を感じる美容液、乳液、クリーム、パック、マッサージクリーム、クレンジングジェル、化粧下地、日焼け止め料等の各種の皮膚外用剤を提供することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C);
(A)電解質応答性水溶性高分子
(B)水
(C)塩基性中和剤
を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記成分(A)が(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であり、肌上の電解質に応答して粘度値が増加することを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚外用剤として、25℃における電気伝導度が400mS/m未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記成分(A)の構成が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%であることを特徴とする請求項2又は3記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−235008(P2009−235008A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84964(P2008−84964)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】