説明

皮膚洗浄剤

【課題】低温や高温での保存安定性が高く、手に取った際の伸ばしやすさに優れた皮膚洗浄剤を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜10質量%、
(B)高級脂肪酸又はその塩 2〜20質量%、
(C)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05〜1.5質量%、
(D)(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテル 0.1〜5質量%、
(E)両性界面活性剤 0.5〜10質量%、
(F)水
を含有し、30℃における粘度が100〜1000dPa・sである皮膚洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚洗浄剤は、いろいろな剤型が提案され、商品化されている。その中で、使いやすさ等の面から、粘度を高めてペースト状にした皮膚洗浄剤も用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アニオン性界面活性剤と特定のノニオン性活性剤を組み合わせることにより、高粘度のゲル又は液晶が形成されることが記載されている。しかし、この技術では、低温で保存され、特に凍結するような場合には、その後に室温に戻しても分離したり、大きく減粘してしまい、元に戻らないという問題があった。また、洗浄剤を手に取り、水と混ぜ合わせた場合、硬くて均一に伸ばしにくいという問題もあった。
特許文献2では、石鹸の脂肪酸組成等を工夫し、室温で析出させることにより、粘度を増加させているが、石鹸の融点以上に温度が増加した後に冷却されると、大きく粘度が上昇してしまうという問題があった。
【0004】
一方、特許文献3には、特定のアニオン性界面活性剤とアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を組み合わせた洗浄剤組成物が記載されている。しかし、この洗浄剤組成物では、ポリマーがアニオン性界面活性剤共存下で十分に膨潤することができないため、ペーストになるような高い粘度を得ることができない。仮にポリマーを非常に多量に配合して高粘度が得られたとしても、とても伸ばしにくいペースト状になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−168951号公報
【特許文献2】特開2005-23069号公報
【特許文献3】特開平11−189786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温や高温での保存安定性が高く、手に取った際の伸ばしやすさに優れた皮膚洗浄剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び高級脂肪酸又はその塩とともに、更に、特定の界面活性剤、水溶性ポリマーを組み合わせて用いることにより、上記の課題を解決した皮膚洗浄剤が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜10質量%、
(B)高級脂肪酸又はその塩 2〜20質量%、
(C)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05〜1.5質量%、
(D)(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテル 0.1〜5質量%、
(E)両性界面活性剤 0.5〜10質量%、
(F)水
を含有し、30℃における粘度が100〜1000dPa・sである皮膚洗浄剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚洗浄剤は、低温や高温での保存安定性が高く、手に取った際の伸ばしやすさに優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる成分(A)は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩であり、次の一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1は炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、mは平均で0.5〜10の数を示し、Mは水素原子又はアルカリ金属を示す)
【0013】
一般式(1)中、R1としては、特に炭素数12〜16のアルキル基が好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数mは、0.5〜10であるが、特に1〜6であるのが好ましい。
【0014】
Mで示されるアルカリ金属としては、ナトリウムやカリウムが挙げられ、配合の際には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。アルカリ金属水酸化物としては、水性の洗浄剤として用いる点から、特に水酸化カリウムが好ましい。
【0015】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に酸として、0.5〜10質量%含有され、好ましくは、1〜7質量%、特に好ましくは2〜4質量%含有される。この範囲内であれば、泡のすべりとすすぎ時のぬるつきのなさ、さっぱり感を両立するとともに、手に広げるときに伸ばしやすく、泡立ちの良いペーストが得られる。また、凍結、溶解後の安定性を維持する点で特に優れる。
【0016】
本発明で用いる成分(B)の高級脂肪酸又はその塩としては、次の一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、R2は炭素数11〜23のアルキル基又はアルケニル基を示し、Xは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
【0019】
一般式(2)中、R2としては、特に炭素数11〜16のアルキル基が好ましい。また、Xとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。
【0020】
より具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、及びこれらの塩等が挙げられ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びこれらの塩が好ましい。これらの中で、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸のカリウム塩が好ましい。
【0021】
成分(B)の高級脂肪酸又はその塩は、1種以上を用いることができ、高級脂肪酸として、2〜20質量%含有することが好ましい。更に好ましくは、3〜15質量%、特に好ましくは5〜8質量%含有される。この範囲内であれば、粘度を高めることができ、良好な泡立ちを得ることができる。
【0022】
本発明においては、特に成分(A)と(B)を組み合わせることにより、高粘度で安定なペーストを得ることができ、伸びが良く、高温や冷却固化を繰り返すサイクル試験保存後の粘度も低下することがない。
【0023】
本発明で用いる成分(C)は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体である。具体的には、例えばカーボポールETD−2020、カーボポール1342、カーボポール1382、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2(以上、ノベオン(NOVEON)社製)等が挙げられる。
【0024】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.05〜1.5質量%含有され、好ましくは0.2〜1.2質量%、特に好ましくは0.4〜0.9質量%含有される。この範囲内であれば、得られる皮膚洗浄剤は、手に取り易く、水と混合した際、非常に解けやすく、伸ばしやすくなる。
【0025】
本発明において、成分(C)は、成分(D)及び(E)と組み合わせて用いることにより、粘度を高めることができるとともに、泡立ちを向上する効果にも優れている。
【0026】
本発明で用いる成分(D)は、(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテルである。
(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステルとは、グリセリンモノ脂肪酸エステル及びジグリセリンモノ脂肪酸エステルを示す。脂肪酸としては、炭素数6〜14のものが好ましい。具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸ジグリセリル、モノミリスチン酸ジグリセリル等が挙げられる。
また、(ジ)グリセリンモノアルキルエーテルとは、グリセリンモノアルキルエーテル及びジグリセリンモノアルキルエーテルを示す。アルキル基としては、炭素数6〜14の直鎖又は分岐鎖のものが好ましい。具体的には、グリセリンモノオクチルエーテル、グリセリンモノデシルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル、グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテル、グリセリンモノイソデシルエーテル等が挙げられる。
【0027】
成分(D)としては、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノラウリン酸ジグリセリル、グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテルが好ましく、グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテルが特に好ましい。
【0028】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜5質量%含有される。(D)の含有量が0.1質量%未満では顕著な増粘効果が見られず、5質量%を超えると凍結後の粘度安定性が悪くなる。成分(D)は、好ましくは0.3〜3.5質量%、特に好ましくは0.6〜2.5質量%含有される。この範囲内であれば、成分(C)や(E)の添加による増粘効果を大きく向上させることができるとともに、凍結後の粘度安定性に優れたものとなる。
【0029】
本発明においては、成分(A)、(B)及び(D)の質量割合が、(D)/((A)+(B))=0.05〜0.5、特に0.06〜0.35であるのが、凍結後の透明性や粘度安定性および、剤が均一に伸ばしやすいという点で好ましい。
【0030】
本発明で用いる成分(E)の両性界面活性剤としては、カルボン酸型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられる。
カルボン酸型両性界面活性剤としては、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられ、スルホン酸型両性界面活性剤としては、アルキルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、リン酸エステル型両性界面活性剤としては、アルキルヒドロキシホスホベタイン等が挙げられる。
【0031】
これらのうち、スルホン酸型両性界面活性剤が好ましく、アルキルヒドロキシスルホベタインが好ましい。アルキルヒドロキシスルホベタインとしては、炭素数8〜18、特に炭素数10〜16のアルキル基を有するものが好ましく、更に、INCI名としてラウリルヒドロキシスルタイン(1−ドデカアンモニウム、N−(2−ヒドロキシ-3−スルホプロピル)−N,N−ジメチル分子内塩)が好ましい。
【0032】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜10質量%含有され、好ましくは、1〜7質量%、特に好ましくは3〜5質量%含有される。この範囲内であれば、成分(A)、(B)、(D)で作るゲルの粘度を高めることができる。
【0033】
本発明においては、成分(A)、(B)、(D)及び(E)の質量割合が、((D)+(E))/((A)+(B))=0.3〜3、特に、0.5〜1であるのが、成分(C)と組み合わせた際の増粘効果を十分に発揮させることが可能となり、好ましい。これは、水中において界面活性剤が構造体(界面活性剤分子の配向により得られる集合体)を形成するに伴い、成分(C)の分子の広がりが妨げられなくなり、十分な増粘効果が発揮されるためと考えられる。
【0034】
成分(F)の水は、成分(A)〜(E)の残部を占め、全組成中に40〜90質量%、特に60〜85質量%含有するのが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、成分(C)、(D)及び(E)の質量割合が、((D)+(E))/(C)=3〜15、特に5〜10であるのが、好適な粘度を付与することができ、低温を経た後(凍結後、室温に戻した場合)でも、粘度が維持され、安定性に優れるので好ましい。また、この範囲内であれば、洗浄剤を手に取り、水と混合した際、非常に解けやすく、伸ばしやすい液性となる。
【0036】
本発明の皮膚洗浄剤は、更に、通常の皮膚洗浄剤に用いられる成分、例えば、ソルビトール等保湿剤、油性成分、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、増粘剤、塩類、パール化剤、スクラブ剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキスなどを含有することができる。
【0037】
本発明の皮膚洗浄剤は、液だれせず、手に取りやすく、且つ、水になじませやすいという観点から、30℃においてB型粘度計(東京計器社製)で測定したときの粘度が、100〜1000dPa・s、好ましくは200〜700dPa・s である。
本発明の皮膚洗浄剤は、起泡性のペースト状のものとして、得ることができる。
【0038】
本発明の皮膚洗浄剤は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、70℃以上に加熱した精製水に、成分(A)及び(B)を添加して完全に溶解させ、均一にする。次に、一部の精製水に成分(C)を分散させ、上記界面活性剤溶液に添加する。次に、成分(E)を添加し、均一にした後、成分(D)を添加して、完全に均一になるまで攪拌し、室温まで冷却して、皮膚洗浄剤を得ることができる。
成分(D)を加えると、系の粘度が急激に上昇するため、これを最後に加えることにより、それまでの脱泡が容易で空気かみが少なく、容易に製造することができる。
【0039】
本発明の皮膚洗浄剤は、例えば、洗顔料、ボディーソープ、ハンドソープ等として好適である。
【実施例】
【0040】
実施例1〜4、比較例1〜8
表1及び表2に示す組成の皮膚洗浄剤を製造し、初期粘度、サイクル後粘度を測定するとともに、透明性、剤の伸ばしやすさ及び泡立ちを評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。また、外観に変化をつけるために白色化剤(酸化チタン等の顔料)やパール剤を添加した場合は、それらを含まない系で評価するものとする。
【0041】
(製造方法)
精製水に水酸化カリウムを添加し、75℃に加温する。この水溶液に70℃で予備溶解した脂肪酸を添加し、次にポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸を添加して完全に溶解させ、均一にする。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、ソルビトールと水の混合液に分散させ、上記界面活性剤溶液に添加した。次に、両性界面活性剤を添加した後、グリセリンモノアルキルエーテルを添加して、完全に均一になるまで攪拌する。室温まで冷却して、皮膚洗浄剤を得た。
【0042】
(評価方法)
(1)初期粘度の測定:
皮膚洗浄剤を30℃の恒温槽につけて十分に馴化させた後、ヘリカル型粘度計(ローター:T-B、回転数:5rpm)を用い、1分間測定した。
【0043】
(2)サイクル保存試験後粘度の測定:
皮膚洗浄剤をガラス瓶に入れ、−15〜60℃まで1日で1往復する温度サイクルを設定した保存条件で6日間保存(サイクル保存試験)し、室温に戻した後、(1)と同様にして、粘度を測定した。
【0044】
(3)初期の透明性:
25℃において、濁度計(デジタル比色計 mini photo 5;10mmΦガラスセル;三紳工業社製)を用い、波長530nmで精製水をリファレンスにして、透過率を測定した。透過率が50%以上のものを「透明」とし、50%未満のものを「不透明」とした。
【0045】
(4)サイクル保存試験後の透明性:
皮膚洗浄剤をガラス瓶に入れ、−15〜60℃まで1日で1往復する温度サイクルを設定した保存条件で6日間保存(サイクル保存試験)し、室温に戻した後、分離、析出物の有無を評価した。また、分離及び析出物が確認されないサンプルについて、(3)と同様にして、透明性を評価した。
【0046】
(5)剤の伸ばしやすさ:
専門パネリスト5名に各皮膚洗浄剤を実際に使用してもらい、手に伸ばすときの伸ばしやすさについて、(I)4段階評価基準で官能評価させ、評点の合計より、(II)3段階判定基準に従い、剤の伸ばしやすさを判定した。
(I)4段階評価基準;
3;剤が均一に伸びやすい。
2;剤がやや均一に伸びやすい。
1;剤がやや均一に伸びにくい。
0;剤が均一に伸びにくい。
(II)3段階判定基準;
○;評点合計10以上。
△;評点合計5以上10未満。
×;評点合計5未満。
【0047】
(6)泡立ち:
専門パネリスト5名に各皮膚洗浄剤を実際に使用してもらい、手で泡立てるときの泡立ちについて、(I)4段階評価基準で官能評価させ、評点の合計より、(II)3段階判定基準に従い、泡立ちを判定した。
(I)4段階評価基準;
3;泡立ちが非常に良い。
2;泡立ちがやや良い。
1;泡立ちがやや悪い。
0;泡立ちが悪い。
(II)3段階判定基準;
○;評点合計10以上。
△;評点合計5以上10未満。
×;評点合計5未満。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸又はその塩 0.5〜10質量%、
(B)高級脂肪酸又はその塩 2〜20質量%、
(C)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.05〜1.5質量%、
(D)(ジ)グリセリンモノ脂肪酸エステル又は(ジ)グリセリンモノアルキルエーテル 0.1〜5質量%、
(E)両性界面活性剤 0.5〜10質量%、
(F)水
を含有し、30℃における粘度が100〜1000dPa・sである皮膚洗浄剤。
【請求項2】
成分(A)、(B)及び(D)の質量割合が、(D)/((A)+(B))=0.05〜0.5である請求項1記載の皮膚洗浄剤。
【請求項3】
成分(C)、(D)及び(E)の質量割合が、((D)+(E))/(C)=3〜15である請求項1又は2記載の皮膚洗浄剤。

【公開番号】特開2011−79743(P2011−79743A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230592(P2009−230592)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】