説明

監視システム及び居住者の監視方法

【課題】
システム施工が容易で、居住者の在室判定と動作検出を精度良く実行可能な監視システム及び居住者の監視方法を提供すること。
【解決手段】
本発明にかかる監視システム100は、住居内に設置され、送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた出力信号を出力する電波センサ1を用いている。電波センサ1より出力された信号は、信号処理部2において居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とが抽出される。抽出された呼吸信号と動き信号は制御部3に入力される。制御部3は、当該呼吸信号を検出しつつ、かつ当該動き信号に基づいて居住者に一定時間以上動きがないと判定した場合には、当該居住者は異常状態にあると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを用いて居住者の動作を監視する監視システム及び居住者の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より室内における居住者の異常を監視するための監視システムが提案され、開発されている。室内における居住者の異常を監視するためには、居住者の動作を監視し、検出する必要がある。例えば、居住者の動作が通常と異なることや動作の停止を検出した場合に異常が発生していると判定する。しかしながら、居住者が不在の場合に動作が停止したものと誤って判定する恐れがある。そこで、居住者が在室しているか否かについても判定する必要がある。
【0003】
居住者の在室判定と動作検出を実行する手法としては、居住者を常時監視する動作監視センサのオンオフを住居入り口付近に設けられたスイッチにより操作する手法や、動作監視センサとは別個に在室センサを設け、この在室センサが居住者の在室を検出した場合にのみ当該動作監視センサをオン制御する手法、即ち複数のセンサを用いて在室判定と動作検出を実行する手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、1つの焦電センサや電波センサを用いて、時系列に得られる信号の特徴的な変化から在室と居住者の動作の双方を監視する手法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−312815号公報
【特許文献2】特開2005−4256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した在室判定と動作検出を複数のセンサにより実行する手法を実現するためには、在室センサを入り口付近に、動作検出センサを居住者の監視しやすい位置に施工しなければならない。従って、在室センサと動作検出センサのそれぞれと制御装置とを配線で接続する必要があるため、配線の引き回しの対策を検討しなければならないというシステム施工上の問題があった。
【0006】
また、在室判定と動作検出を1つのセンサにより実行する手法では、信号の時系列上の、入退室の際の居室扉の開閉に伴う特徴的な信号変化を検出して在室を判定し、そして監視を行なう。このような手法においては、居室扉の構造に依存して信号変化の特徴が大きく異なるため、入退室の判定を正確に実行することが難しいという検出精度上の問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、システム施工が容易で、居住者の在室判定と動作検出を精度良く実行可能な監視システム及び居住者の監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる監視システムは、住居内に設置され、送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた出力信号を出力するセンサと、前記センサより出力された出力信号より居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、居住者の動きに対応し、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出する信号処理部と、前記信号処理部によって抽出された呼吸信号と動き信号とを入力し、当該呼吸信号を検出し、かつ当該動き信号に基づいて居住者に一定時間以上動きがないと判定した場合には、当該居住者は異常状態にあると判定する判定部とを備えたものである。
【0009】
ここで、前記判定部は、前記呼吸信号又は前記動き信号により在室していると判定することができる。
好適な実施の形態において、前記センサは、ドップラーセンサである。
【0010】
また、前記呼吸信号は、1Hz以下の周波数帯の信号である。そして、前記動き信号は、1Hzよりも高い周波数帯の信号である。
【0011】
本発明にかかる居住者の監視方法は、住居内において送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた信号を取得するステップと、取得した信号より居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、前記居住者の動きに対応し、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出するステップと、抽出された呼吸信号と動き信号とを入力し、当該呼吸信号を検出し、かつ当該動き信号に基づいて居住者に一定時間以上動きがないと判定した場合には、当該居住者は異常状態にあると判定するステップとを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、システム施工が容易で、居住者の在室判定と動作検出を精度良く実行可能な監視システム及び居住者の監視方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を適用可能な実施の形態について図を用いて説明する。以下の説明は、本発明の実施形態を説明するものであり、本発明が以下の実施形態に限定されるものではない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされている。又、当業者であれば、以下の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。
【0014】
居住者の在室判定と動作検出を実行する上では、次のような制約がある。まず、在室判定では、住居の扉等の居住空間の特徴に依存することを避けなければならない。そして、動作検出は、居住者毎に個人差が生じることは避けられないが、被験者毎に信号処理レベルを調整するような煩雑な作業の発生は回避しなければならない。信号処理レベルの調整は信号の特徴的な挙動の現われ方も変化させ、検出精度も劣化することから、この点からも回避すべきである。
【0015】
このような制約に着目し、本願の発明者は、次のような点に見出し、本発明にかかる監視システムを着想するに至った。在室時の居住者については、呼吸に伴う胸腹部運動を1Hz以下の低周波領域で観察することができ、この低周波領域の信号を検出することにより、居住者が在室していることを判定できる。そして、居住者の動作については、1Hzよりも高い高周波領域で観察することができ、この高周波領域の信号を検出することにより、居住者の動作状態を判定できる。特に1Hzよりも高い高周波領域の信号を一定時間以上検出できない場合には、居住者に何らかの異常が発生しているものと判定することが可能である。
【0016】
図1を参照して、本発明の実施の形態にかかる監視システムの構成について説明する。当該監視システム100は、電波センサ1、信号処理部2、制御部3、音声出力部4、通信処理部5を備え、通信網200を介して監視センター処理装置300に接続されている。この監視システム100は、例えば個室式の老人介護マンションに適用される。
【0017】
電波センサ1は、居住者の住居内に設置され、送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた出力信号を出力する。当該電波センサ1は居住者が在室しているか否かを検出し、さらに居住者の動作を検出するために用いられる。電波センサ1は、例えば、住居の天井に設置される。電波センサ1は、例えば、ドップラー効果を利用して動作するドップラーセンサである。本発明に用いられるセンサは、周波数情報を取得できるセンサであればよく、例えば、音波センサを用いることもできる。
【0018】
信号処理部2は、電波センサ1から出力された出力信号を入力し、信号処理及び周波数解析を行う。具体的には、信号処理部2は、入力された信号より居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出し、呼吸信号及び動き信号を制御部3に対して出力する。信号処理部2は、例えば入力信号に対してバンドパスフィルタにより1Hz以下の低周波信号と、1Hzよりも高い高周波信号に分離して、それぞれの信号を制御部3に対して出力する。信号処理部2は、呼吸信号が取得できない場合に、信号感度を所定レベルに高めることによって呼吸信号を取得するように制御してもよい。尚、バンドパスフィルタの代わりにフーリエ解析やウェブレット解析によって周波数分離してもよい。
【0019】
制御部3は、例えば、マイクロプロセッサにより構成され、信号処理部2により分離処理された低周波信号及び高周波信号を入力し、予め定められたソフトウェアプログラムに従って、居住者が在室しているか否かを判定し、居住者の動作状態、特に居住者に異常が発生していないかを判定する判定部として機能する。制御部3は、判定の結果を音声出力部4に出力したり、通信処理部5によって通信網200を介して監視センター処理装置300に対して送信したりする。
【0020】
音声出力部4は、制御部3における判定結果を居住者に対して音声により報知する。特に、音声出力部4は、制御部3が居住者に異常が発生していると判定した場合に、その制御信号によって、居住者に対して警告を出力する。尚、警告の出力は、音声以外に光の点滅等によって行なうことも可能である。
【0021】
通信処理部5は、制御部3から出力された判定結果情報を通信網200を介して監視センター処理装置300に対して送信するための通信処理を実行する。
【0022】
尚、図1のシステム構成図では示されていないが、監視システム100は、さらに、判定結果を格納する記憶手段を備えている。
【0023】
通信網200は、公衆電話網、インターネット網などの通信網である。
【0024】
監視センター処理装置300は、監視センターに設けられた処理装置であり、例えば、判定結果を表示するディスプレイを備えたパーソナルコンピュータ(PC)等により構成される。図1では、監視センター処理装置300に、1つの監視システム100のみが通信可能に接続されている構成が示されているが、通常は、複数の監視システム100が通信可能に接続される。
【0025】
次に、図2に示すフローチャートを用いて、監視システム100における処理の流れについて説明する。まず、電波センサ1は、送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた出力信号を出力する。信号処理部2はこの出力信号を入力する(S101)。信号処理部2は、電波センサ1から出力された出力信号を入力し、信号処理を行い(S102)、周波数解析を実行する(S103)。ここで、信号処理とはバンドパスフィルタの処理であり、周波数解析とは低周波数帯の信号抽出及び高周波数帯の信号抽出である。信号処理部2は、このようにして、入力した信号から、居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出し、抽出された呼吸信号及び動き信号を制御部3に対して出力する。
【0026】
制御部3は、入力された信号に呼吸信号に相当する1Hz以下の低周波信号が含まれている否かを判定する(S104)。図3(a)に呼吸信号の波形例を示す。図に示されるように、ほぼ一定周期の信号である。尚、呼吸信号に相当する低周波信号の周波数の下限は、例えば、0.1Hzである。このとき、呼吸信号が検出されない場合に、制御部3は、居住者が住居内にいない、即ち不在判定とする(S110)。
【0027】
一方、呼吸信号ありと判定した場合には、さらに、居住者の動きを示す信号、即ち動き信号の有無を判定する(S105)。動き信号は、1Hzよりも高い高周波信号であり、この動き信号がある場合には、居住者が正常に動いていることを示す。図3(b)に動き信号の波形例を示す。動き信号がある場合には、居住者は正常であると判定する(S106)。
【0028】
動き信号がないと判定した場合に、その状態が一定時間以上継続しているかどうかを判定する(S107)。この例では、一定時間は10分である。動き信号が10分以上継続してない場合には、居住者が倒れている等の異常状態にあると判定する(S108)。居住者が異常状態にあると判定した場合に、制御部3は、通信処理部5によって、通信網200を介して、監視センター処理装置300に対して異常状態にあると判定した結果情報を送信する。即ち、監視システム100は監視センター処理装置300に対して通報を行なう(S109)。
【0029】
図4は、午前6時から午後8時(20時)まで監視システム100によって検出された呼吸信号の有無及び動き信号の有無を示す。午前6時の測定開始時より正午まで呼吸信号ありと判定されている。一方で、午前6時から午前7時20分前後までは動き信号なしと判定されている。これは、居住者が睡眠状態にあるものと判断される。その後、午前7時20分から正午まで動き信号ありと判定されている。この時間帯は居住者が起き、何かしらの動きをしているものと判断される。
【0030】
正午から14時までの間は呼吸信号及び動き信号の双方ともに検出されていない。この時間帯は、食事等により居住者が外出し、在室していないものと判断される。そして、14時から20時まで呼吸信号ありと判定されており、この時間帯は居住者が在室しているものと判断される。一方で、16時から20時までの間は、呼吸信号があるものの、動き信号が検出されていない。この場合には、居住者が動けない状態にあり、異常状態にあると判断される。上述の例では、このような状態が10分間継続して検出された場合に、通報を行なう。従って、図4に示す例では、16時10分に通報を行なう。
【0031】
尚、図4の午前6時から7時20分までの時間帯のように、居住者が睡眠状態にある場合には、例えば、呼吸信号あり・動き信号なしと判定されている場合であっても異常であると判断しないようにしなければならない。例えば、住居の照明の消灯を検出した場合に、制御部3が異常状態の判定を停止するようにするとよい。消灯は光センサによって検出してもよいし、照明のオンオフを電気的に検出してもよい。
【0032】
以上、説明したように、本発明の実施の形態にかかる監視システム100では、居住者の在室の有無を検出し、動きを検出するセンサとして、1つの電波センサ1のみを用いているので、住居へのセンサの設置が一箇所で済むため、システム施工が容易である。
【0033】
また、電波センサ1の出力信号の周波数解析を行うことによって、呼吸信号と動き信号を検出し、居住者の在室の有無と居住者の動きを判定するようにしたので、精度良く、判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態にかかる監視システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる監視システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態にかかる監視システムにより検出される呼吸信号及び動き信号の信号波形図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる監視システムによる呼吸信号の有無及び動き信号の有無の判定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 電波センサ
2 信号処理部
3 制御部
4 音声出力部
5 通信処理部
100 監視システム
200 通信網
300 監視センター処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住居内に設置され、送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた出力信号を出力するセンサと、
前記センサより出力された出力信号より居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、前記居住者の動きに対応し、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出する信号処理部と、
前記信号処理部によって抽出された呼吸信号と動き信号とを入力し、当該呼吸信号を検出し、かつ当該動き信号に基づいて居住者に一定時間以上動きがないと判定した場合には、当該居住者は異常状態にあると判定する判定部とを備えた監視システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記呼吸信号又は前記動き信号により在室していると判定することを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
前記センサは、ドップラーセンサであることを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項4】
前記呼吸信号は、1Hz以下の周波数帯の信号であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の監視システム。
【請求項5】
前記動き信号は、1Hzよりも高い周波数帯の信号であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の監視システム。
【請求項6】
住居内において送信波を送信すると共に当該送信波の反射波を受信し、当該受信した反射波に応じた信号を取得するステップと、
取得した信号より居住者の呼吸に対応する周波数帯の呼吸信号と、前記居住者の動きに対応し、当該呼吸信号よりも高い周波数帯の動き信号とを抽出するステップと、
抽出された呼吸信号と動き信号とを入力し、当該呼吸信号を検出し、かつ当該動き信号に基づいて居住者に一定時間以上動きがないと判定した場合には、当該居住者は異常状態にあると判定するステップとを備えた居住者の監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−285795(P2006−285795A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106812(P2005−106812)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】