説明

監視システム

【課題】見やすいフロア図面との合成映像を表示する監視システムを提供することを目的とする。
【解決手段】フロアの監視領域に設けられた一又は複数の監視カメラと、監視カメラにより撮影された画像をフロアの画像に合成して合成画像を生成する画像処理装置と、画像処理装置で生成された合成画像を表示する画像表示装置とを備えた監視システムであって、画像処理装置は、監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、フロアの画像及び監視カメラの撮影領域を遮るフロアの構造物に関する位置情報を含むフロアに関する情報とが記憶された位置情報記憶部と、監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、監視カメラのフロアに関する情報とに基づいて監視カメラによる撮影画像をフロア画像に合成する合成領域を定める合成領域生成部と、監視カメラによる撮影画像を合成領域に合成して合成画像を生成する画像合成部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラで撮影した画像にて監視を行うようにした監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の監視システムでは、コンビニエンスストアや書店等において、複数の監視カメラからの画像を複数の画像表示装置に表示し、または1つの画像表示装置に分割表示を行って監視を行っていた。しかし、工場やビル等大規模で複数の部屋を有する建物内部の監視においては、カメラ設置台数が多数になりフロア構成も複雑になることから、ユーザにとって、カメラ画像がどこのフロアのどの部屋のものであるかを把握し難く、フロア全体の状況を一目で把握することが困難であった。特に監視対象が部屋間を移動する時に、監視対象がフロアのどこの部屋にいるのかを把握して、その部屋に設置されている監視カメラに選択して素早く切り替えることが困難であった。
【0003】
これらの問題に対して、特許文献1では、フロアの各部屋に設置された複数の監視カメラからの画像を俯瞰画像に変換するとともに、その俯瞰画像をフロア画像の各部屋ごとに合成して表示することにより、1枚の合成画像を確認するだけでフロア全体の状況を容易に確認できる監視システムが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−118466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フロアの各部屋ごとに合成される画像の領域は、監視カメラの画角によって定まるので、監視カメラの設置位置によっては、画像が部屋を仕切る壁等の遮蔽物をはみ出して合成されてしまい、監視用画像としては非常に見づらいものとなってしまうという問題があった。例えば、図13(a)の監視カメラC6ではその画角に基づいて求められた撮影領域ABCDがフロア画像に合成される領域となるが、線分ABと線分DCの間に部屋の仕切りである壁等の遮蔽構造物が存在する場合は、監視カメラで撮影した画像をそのままフロア画像に合成すると図13(b)のように撮影領域が壁からはみ出た形で画像が合成されることになり、大変見づらいものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、監視カメラで撮影された画像をフロア構成に合わせて合成し表示することのできる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る監視システムは、フロアの監視領域に設けられた一又は複数の監視カメラと、前記監視カメラにより撮影された画像を前記フロアの画像に合成して合成画像を生成する画像処理装置と、前記画像処理装置で生成された合成画像を表示する画像表示装置とを備えた監視システムであって、前記画像処理装置は、前記監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、前記フロアの画像及び前記監視カメラの撮影領域を遮る前記フロアの構造物に関する位置情報を含む前記フロアに関する情報とが記憶された位置情報記憶部と、前記監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、前記監視カメラのフロアに関する情報とに基づいて前記監視カメラによる撮影画像を前記フロア画像に合成する合成領域を定める合成領域生成部と、前記監視カメラによる撮影画像を前記合成領域に合成して合成画像を生成する画像合成部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の監視システムによれば、監視カメラで撮影された画像をフロアにおける各部屋の形状に合わせた合成画像として生成することができ、監視用画像が見やすくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る監視システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る監視システムの動作を示すフロー図である。
【図3】監視カメラの光軸、水平画角、垂直画角、撮影領域の関係を示す図である。
【図4】監視カメラによる撮影画像の入力時、歪み補正時、および視点変換時の各画像モデルを示す図である。
【図5】監視カメラによる撮影画像の視点変換処理を示す図である。
【図6】合成画像の合成領域生成処理動作の過程を説明する図である。
【図7】撮影画像の合成前および合成後の画像を示した図である。
【図8】監視対象が移動したときの監視カメラ切り替え動作を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る監視システムの概略構成図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る監視システムの動作を示すフロー図である。
【図11】監視カメラによる撮影画像の合成領域補正・重畳処理の過程を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る監視システムの概略構成図である。
【図13】従来の監視システムにおける監視カメラの撮影領域とフロアにおける合成画像との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る監視システムの概略構成図を示す。監視システムは、監視対象を撮影するため、フロアの各部屋ごとに設置された固定式の監視カメラ1a〜1cや、旋回式の監視カメラ1dと、これら監視カメラで撮影された画像をフロア画像に合成して合成画像を生成する画像処理装置2と、画像処理装置2で生成された合成画像を表示する例えばLCDモニタのような画像表示装置3とから構成されている。
【0011】
画像処理装置2は、監視カメラからの画像の歪みを補正する歪み補正部4a〜4dと、歪み補正部で補正された画像を俯瞰画像に変換する視点変換部5a〜5dと、旋回式の監視カメラを遠隔操作する制御部6と、監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、フロアの画像及び監視カメラの撮影領域を遮るフロアの構造物に関する位置情報を含むフロアに関する情報、及び各監視カメラの設置された位置、光軸の向き、水平画角、垂直画角等の仕様情報とを記憶する位置情報記憶部7と、位置情報記憶部7に記憶された監視カメラの仕様情報に基づいて撮影領域に関する位置情報を定める座標抽出部8と、この位置情報とフロアに関する情報から監視カメラが撮影した画像を合成する領域を生成する合成領域生成部9と、監視カメラで撮影した画像をフロア画像に合成して合成画像を生成する画像合成部10とから構成されている。また、画像信号処理部2aは、歪み補正部4a〜4dと、視点変換部5a〜5dと、合成領域生成部9と、画像合成部10とから構成されている。
【0012】
なお、監視カメラと、画像処理装置と、画像表示装置とからなる監視システムを同じ建物内に設置して監視を行うことも、また、監視カメラと画像処理装置とをネットワークを介して接続し、遠隔地に設けた監視センターから建物内の監視を行うことも可能である。また、監視対象とするフロアには、各部屋ごとに所定領域を監視できるように、少なくとも1台の監視カメラが設置されるが、例えば、部屋が広く、1台の監視カメラでは部屋全体をカバーできないような場合は、複数台の監視カメラを設置することもできる。
【0013】
次に、本発明の動作について図1および図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る監視システムの動作を示すフロー図である。
【0014】
全ての監視カメラ1a〜1dは、各部屋の監視領域をそれぞれ撮影してその画像を取り込む(ステップS1)。旋回式監視カメラ1dは制御部6により、パン・チルト・ズーム等の動作が遠隔操作され(ステップS2)、制御部6は旋回式監視カメラ1dの動作に伴う仕様情報の変更を位置情報記憶部7に通知し、記憶された仕様情報を更新する(ステップS3)。なお、本実施の形態では、制御部6は画像処理装置2内に設けているが、例えば別個に設けたPC等を用いて遠隔操作するようにしてもよい。
【0015】
次に、座標抽出部8は、位置情報記憶部7を参照し、各監視カメラの仕様情報を取得し、各監視カメラの撮影領域に関する位置情報を定める(ステップS4)。仕様情報は、例えば監視カメラの設置位置に関する情報、図3に示す監視カメラC0の光軸AX10、水平画各AGX、垂直画角AGYがあり、これら情報を用いて撮影画像の座標ag01、ag02、ag03、ag04を求める。
【0016】
固定式の監視カメラにおいて、その設置位置が変更された場合や新たに監視カメラが設置された場合においても、監視カメラの仕様情報を位置情報記憶部7に通知して随時更新することにより、面倒な作業を必要とせずに更新情報に基づいた監視カメラの撮影領域の生成が可能となる。また、旋回式の監視カメラ1dにおいて、制御部6による制御結果に基づいて位置情報記憶部7内の仕様情報が更新されるので、随時その情報を取り出すことができ、監視カメラ1dの動きに追随して撮影領域に対応する座標情報を取得することが可能となる。
【0017】
画像信号処理部2aは、位置情報記憶部7を参照し、監視カメラの撮影領域を遮るフロアの構造物に関する位置情報を含むフロアに関する情報と、各監視カメラの仕様情報を取得し、合わせて座標抽出部8から撮影領域に関する位置情報を取得する(ステップS5)。フロアの構造物とは、例えば後記するような壁や、他にはついたてやカーテン等監視カメラの撮影領域を遮る物が該当する。
【0018】
歪み補正部4は、監視カメラ1で撮影された画像の歪みを、位置情報記憶部7から取得した監視カメラ1の仕様情報に基づいて補正する(ステップS6)。図4(a)に入力時の画像モデルを、図4(b)に歪み補正後の画像モデルを示す。
【0019】
視点変換部5は、歪み補正部4で歪みが補正された画像を、監視対象であるフロアを鉛直下向きに見下ろす俯瞰画像に変換する(ステップS7)。図4(c)は、視点変換後の画像モデルを示している。また、実写画像を用いた視点変換の例を図5に示す。図5(a)は監視カメラで撮影された画像で、図5(b)は視点変換後の俯瞰画像である。なお、本実施の形態では歪み補正処理を行ってから俯瞰画像への変換処理を行っているが、この順序に限定されるものではなく、例えば歪み補正処理を行わず視点変換部5で俯瞰画像への変換処理をおこなってもよい。
【0020】
合成領域生成部9は、座標抽出部8から取得した各監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、位置情報記憶部7から取得したフロアに関する情報に基づいて、監視カメラが撮影した画像を合成する領域の生成を行う(ステップS8)。この詳細な動作については後記する。なお、本実施の形態の例では合成領域生成処理をおこなってから画像合成を行うこととしているが、合成領域の処理は行わず、画像を部屋の形状に合わせて生成して合成を行うようにしてもよい。
【0021】
画像合成部10は、合成領域生成部9により定められた合成領域に、視点変換部5で俯瞰変換された監視カメラ1の撮影画像を合成する(ステップS9)。
【0022】
画像表示装置3は、画像合成部10で合成された画像を映し出す(ステップS10)。
【0023】
次に、合成領域生成部9の動作の詳細について、図6を用いて説明する。
【0024】
図6(a)は、合成領域生成処理前の画像を表した図である。ここでは説明を簡単にするため、部屋Aに設置した監視カメラC1の撮影画像について処理動作を説明する。もちろん、他の部屋についても同様の処理が行われるものである。フロア構成についての位置情報としては、少なくとも壁で囲まれた部屋の四隅の座標が与えられている。座標d01、d02、d03、d04で囲まれる領域は監視カメラC1による撮影領域を表す。また、監視カメラC1のフロアの設置位置を表す画素をC1とし、部屋Aの四隅を表す画素をそれぞれK、L、M、Nとする。これら画素にはそれぞれ座標が与えられている。
【0025】
図6(a)の画像上の画素P01を例にとって生成処理の動作を説明する。まず、画素P01が監視カメラC1の撮影した画像のものであるかを調べる。これは、監視カメラC1の合成領域の座標を座標抽出部8で求めることにより、容易に計算することができる。計算から、画素P01は、監視カメラC1の撮影領域の座標d01、d02、d03、d04で囲まれた領域内に入るため、画素P01に対応する画像を撮影しているのは監視カメラC1であるとわかる。
【0026】
次に線分C1〜P01が監視カメラC1の撮影領域を遮る構造物である部屋Aの壁と交わるかどうかを判定する。判定方法は、例えば外積を用いた交差判定がある。この方法では、例えば部屋Aの壁MNと交わるかどうかを判定する場合は、以下の式(1)と式(2)の両方を満たすかどうかを計算する。式(1)および式(2)の両式を満たす場合、線分C1〜P01は壁MNと交わる。
【0027】
【数1】

【0028】
各画素は座標が与えられているので、成分計算により式(1)、式(2)を数値計算により求めることが可能である。同様に他の壁(線分NK、KL、LM等)と交わるかどうかを求めていく。図6(a)の場合では、画素P01は部屋Aのひとつの壁MNと交わるので、画素P01に対応する監視対象は監視カメラC1では撮影できないことが判別できる。よって、画素P01に対応する画像は無いということになるので、画素P01の画像合成は行われない。
【0029】
また、連立方程式を用いて線分C1〜P01が壁と交わるかどうかを判定してもよい。例えば、監視カメラC1の座標(x11,y12)、P01の座標(x12,y12)、壁の一端Mの座標(x21,y21)、壁の他端Nの座標(22,y22)とすると、線分C1〜P01、線分MNはそれぞれ、以下の式(3)、式(4)で表される。そして、以下の式(3)、式(4)の連立方程式を計算し、解が存在すれば線分C1〜P01と壁を構成する線分MNは交わると判定する。
【0030】
【数2】

【0031】
このようにして合成領域生成処理を行った結果を図6(b)に示す。従って、監視カメラC1で撮影された画像は合成領域生成処理されて生成されたフロアの合成領域R1の範囲に切り取られた形で合成される。このように撮影領域を遮る構造物に基づいて撮影された画像を合成する領域を生成することにより、監視カメラC1による画像が部屋Aの境界を越えてはみ出ることはなくなるので、ユーザにとって見やすい合成画像となり、その画像を見ることにより領域R1に対応する監視カメラはC1であると即座に判別することが可能となる。また、ユーザは監視カメラC1で撮影可能な領域R1と、監視カメラC1で撮影不可能な死角領域R2を平面的に把握することが可能となる。
【0032】
なお、上記の合成領域生成処理においては、各画素の座標情報として2次元座標表示でも極座標表示でもかまわない。また、1画素分ずつ計算を行い生成処理を行ったが、処理対象としての画素は1画素である必要はなく、複数の画素をまとめて処理対象として計算を行ってもよい。たとえば複数の画素を1つのまとまった領域として上記処理を行うと、計算量が減り、より小さいハードウエア能力で処理を実行することができる。また、計算量が減ることから、監視カメラが撮影するリアルタイムの画像をスムーズに画像表示装置に映し出すことが可能となる。
【0033】
次に、フロア画像に俯瞰変換後の撮影画像を合成する動作について図7を用いて説明する。
【0034】
図7(a)は画像合成部10が位置情報記憶部7から取得するフロア画像の図である。ここでは、フロア画像における構成は、少なくとも共用部分である廊下と、壁で仕切られた部屋と、部屋の扉と、監視カメラの位置等が、x、yの二次元平面として比較的単純化された画像で表される。図面中、黒色の三角形は監視カメラの位置を示し、斜線を付した矩形領域は監視カメラが撮影した画像が合成される領域を示している。ここでは、一例として廊下に設置された監視カメラC2の撮影した画像をフロア画像に合成する処理について説明する。すなわち、合成領域生成部9により予め定められたフロア画像における撮影画像を合成する領域は、座標e01、e02、e03、e04で囲まれた領域であり、特に、監視カメラC2の撮影領域はその左右方向が廊下の左右の壁によって遮られるため、全体的に矩形状を呈している。
【0035】
従って、図7(b)に示すように、監視カメラC2で撮影された画像Xは、座標e01〜e04で囲まれた領域に合成され、このような合成画像が画像表示装置3に写しだされる。同様にして、同一フロアの他の部屋についても、それぞれ合成領域が定められており、各監視カメラが撮影した画像が各フロア画像における合成領域に合成されて画像表示装置3に表示されている。
【0036】
なお、本実施の形態では、画像処理装置2に歪み補正部4、視点変換部5、制御部6、位置情報記憶部7、座標抽出部8、合成領域生成部9が、画像合成部10が含まれる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、監視カメラ1が歪み補正部4、視点変換部5、位置情報記憶部7、座標抽出部8を有し、監視カメラ内で歪み補正処理や視点変換処理を行うようにしてもよい。また、本実施の形態では座標抽出部8が位置情報記憶部7に格納されている監視カメラ1の仕様情報に基づいて撮影領域に関する座標等の位置情報を抽出する方式をとったが、座標抽出部8を設けず、位置情報記憶部7にそれらの位置情報を初期値として予め格納するようにしてもよい。また、画像合成部10で位置情報の抽出処理を行ってもよい。
【0037】
以上の構成によれば、監視カメラの画像合成領域が他の部屋等にはみ出すことがなくなるので、撮影画像が合成されたフロア画像は見た目上整理された見やすい画像となり、ユーザは監視カメラ設置台数が多い複雑な建物内の監視においても一見してフロア全体の状況を把握することが容易になる。また、ユーザは、監視カメラの撮影可能領域と撮影不可能な死角領域を平面的に把握することが可能となる。さらに、こういったことから、ユーザの作業負荷は著しく軽減され、より監視業務に集中することができるようになる。
【0038】
そして、例えば図8において、侵入者TGTを廊下に設置した監視カメラC3の撮影領域に関する座標f01、f02、f03、f04で囲まれる画像合成領域内で発見したとする。そして、TGTが部屋Bに入っていった場合においても、即座に部屋Bに設置される監視カメラC4を選択し、TGTを画像表示装置に映し出すことができる。したがって、本構成によれば、侵入者が他の部屋に入った時にどの部屋にいるのかということを容易に把握し、その部屋に設置されている監視カメラを素早く選択することが可能となり、緊急時において迅速な対応をとることができるようになる。
【0039】
なお、監視カメラの画像を俯瞰変換するかわりに鉛直下向きの天井カメラを用いても同様の効果を奏する。天井カメラを用いる場合は、歪み補正や視点変換等の俯瞰変換処理が不要となるため、計算量が減り、より小さいハードウエア能力で本発明の目的を達成することができる。また、計算量が減ることから、監視カメラが撮影するリアルタイムの画像をスムーズに画像表示装置に映し出すことが可能となる。
【0040】
実施の形態2.
図9に、実施の形態2に係る監視システムの概略図を示す。実施の形態1に相当する部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。なお、本実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって本発明をその範囲内に限定するためのものではない。実施の形態2は、実施の形態1と比べて、合成領域生成部に加え重畳領域処理を行う合成領域補正・重畳処理部11が設けられている構成となっており、例えば合成領域補正・重畳処理部11は、視点変換部5と画像合成部9との間に設けられ、座標抽出部8、位置情報記憶部7と接続されている構成とすることができる。合成領域生成・重畳処理部11は合成領域生成処理に加えて、同じ部屋内で複数の監視カメラが同一の領域を重畳して撮影している場合の合成処理を行う。以下、合成領域生成・重畳処理の詳細について図10を用いて説明する。
【0041】
図10(a)は、合成領域補正・重畳処理前の画像を示した図である。部屋C内には、監視カメラC5および監視カメラC6による撮影画像が合成される各合成領域の一部が重なるように設置されている。ここでは、監視カメラC5および監視カメラC6に対応する合成領域が重なった領域にある画素P11を例にとって合成領域生成・重畳処理について説明する。なお、3台以上の監視カメラによる画像領域が重なっていた場合も同様の処理が可能である。まず、画素P11がいずれの監視カメラに対応するのかを調べる。監視カメラC5および監視カメラC6それぞれの撮影領域に関する位置情報を座標抽出部8で求め、計算を行う。図11(a)の例では、画素P11は、監視カメラC5に対応する座標g01、g02、g03、g04で囲まれる合成領域と監視カメラC6に対応する座標h01、h02、h03、h04で囲まれる合成領域との両方の領域内に入るため、画素P11に対応する画像を撮影しているのは監視カメラC5および監視カメラC6の両方であるとわかる。
【0042】
次に、監視カメラC6と画素P11との距離と、監視カメラC7と画素P11との距離をそれぞれ計算し、値を位置情報記憶部7にあるリストに記憶する。リストは、例えばテーブル形式等で表してもよい。これらの距離については、監視カメラC5、C6、およびP11の座標情報がわかっているので、容易に計算することは可能である。そして、リストを参照し、画素P11に対応する画像を写す監視カメラを選択する。これはC5、C6いずれの監視カメラを選択してもよいが、画素P11との距離が短いほうの監視カメラを選択するのが好ましい。監視カメラからの距離が近ければ近いほど、視点変換による歪みを抑え、情報量の減少を抑制することができるためである。そうすることにより、各画素において、最も画質の良い監視カメラを選択することができ、ユーザは鮮明な画像を見ることができる。図10(a)に示した例では、P11により近い監視カメラはC6であることから、監視カメラC6で撮影された画像を合成する。
【0043】
このようにして合成領域補正・重畳処理を行った結果の一例が図10(b)である。重畳領域のうち、監視カメラC5と監視カメラC6との距離が等しい箇所を境にして、監視カメラC5からの距離が近い領域については領域R3に、監視カメラC6からの距離が近い領域については領域R4になっている。そして、監視カメラC5で撮影された画像が領域R3に、監視カメラC6で撮影された画像が領域4にそれぞれ合成される。このように合成領域生成・重畳処理を行うことにより、監視カメラC5と監視カメラC6に対応する合成領域が重なった部分において、各監視カメラの撮影画像の合成領域の境目が明確になる。そのためユーザは、どの監視カメラでどの地点が監視されているのかが判断しやすくなり、監視カメラの選択を容易に行うことができる。
【0044】
また合成領域生成・重畳処理を行うことにより、ユーザは、監視カメラの撮影可能領域と撮影不可能な死角領域を把握することが可能となる。さらに、各監視カメラの重畳領域をフロア画像に図示しなくなるので、合成フロア画像は見た目上整理され、ユーザは各部屋に多数の監視カメラが設置されているような場合においても一見してフロア全体の状況を把握することが容易になる。こういったことから、ユーザの作業負荷は著しく軽減され、ユーザはより監視業務に集中することができるようになる。
【0045】
なお、上記の合成領域生成・重畳処理においては、各画素の座標情報として2次元座標表示でも極座標表示でもかまわない。また、各画素について重畳領域処理を行ったが、処理対象としての画素は1画素である必要はなく、複数の画素をまとめて処理対象として計算を行ってもよい。たとえば複数の画素を1つのまとまった領域として上記処理を行うと、計算量が減り、より小さいハードウエア能力で処理を実行することができる。また、計算量が減ることから、監視カメラが撮影するリアルタイムの画像をスムーズに画像表示装置に映し出すことが可能となる。
【0046】
次に、図11を用いて合成領域生成・重畳処理の動作について説明する。図11は、合成領域補正・重畳処理のフロー図を示す。まず、ある監視カメラにおけるある画素について、対応する監視カメラ画像があるか調べる(ステップS3)。対応する監視カメラ画像がない場合、次の監視カメラに処理が移り、同様のステップS3の処理を行う。対応する監視カメラ画像がある場合、ある画素と対応する監視カメラの線分を求め(ステップS4)、壁等の構造物に遮られていないかを調べる(ステップS4)。構造物に遮られている場合、次の監視カメラに処理が移り、ステップS3の処理を行う。構造物に遮られていない場合、ある画素と対応する監視カメラとの距離をリストに登録する(ステップS5)。ある監視カメラにおいてここまでの処理が終わると、次の監視カメラに処理が移り、S3〜S5までの同様の処理を行う(ステップS2〜ステップS7)。
【0047】
すべての監視カメラについてS3〜S5までの処理が終わると、リスト内の登録内容をチェックし、1つでも登録があると、登録内容のうちある画素と対応する監視カメラとの距離の中で最も距離が短い監視カメラ画像を採用する(ステップS9a)。リスト内に登録が1つもなければ、その画素に対応する画像は無しとなる(ステップS9b)。つづいてリスト内の登録内容をクリアし(ステップS10)、すべての監視カメラについて1画素分の処理を終了する。以上S2〜S10までの処理を全画素について行う(ステップS1〜ステップS11)。
【0048】
なお、図10ではフロア図面上の各画素について合成すべき画像を逐次評価する方式を示しているが、これに限定されず、同様の結果が得られるならば他の方式を用いてもよい。例えば、1つの監視カメラ毎に全画素のリストを作成して、各監視カメラ同士評価していく方式でもよい。
【0049】
このように、合成領域補正・重畳処理を行うことにより合成フロア図面は見た目上整理された見やすい画像となるので、ユーザは監視カメラ設置台数が多い複雑な建物内の監視においても、一見してフロア全体の状況を把握することがさらに容易になる。またユーザは、部屋内に複数の監視カメラが設置され、合成領域が重なった領域についても、いずれの監視カメラによる画像であるかを即座に判別して選択することが可能となる。そして、各画素から最も距離が近い監視カメラを選択するように画像合成領域の境界を定めることによって、視点変換による歪みを抑え情報量の減少を抑制した鮮明な画像を見ることが可能となり、追跡者の発見を容易に行うことができるようになる。
【0050】
さらに、ユーザは監視カメラの撮影可能領域と撮影不可能な死角領域を把握することが可能となる。こういったことから、ユーザの作業負荷は著しく軽減され、より監視業務に集中することができるようになる。
【0051】
実施の形態3.
図12に、実施の形態3に係る監視システムの概略図を示す。実施の形態1に相当する部分には図1と同一符号を付してその説明を省略する。なお、本実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって本発明をその範囲内に限定するためのものではない。実施の形態3は、監視カメラ1からの画像が歪み補正部4とは別に画像表示装置12に送られる構成となっている。
【0052】
本実施の形態についての動作を説明する。まず、各監視カメラ1で画像を撮影する。そして、撮影画像を歪み補正部4と画像表示装置12に送る。歪み補正部4に送られた撮影画像は、実施の形態1と同様の俯瞰変換処理や合成領域生成処理等が施されるので、撮影画像とフロア図面とが合成された画像が画像表示装置3に映し出される。画像表示装置12に送られた撮影画像は俯瞰変換されず、各監視カメラ1で撮影された画像がそのまま表示される。なお本実施の形態の構成においては、監視カメラの画像を俯瞰変換等してフロア図面に合成した画像と、監視カメラのそのままの画像とを別々の画像表示装置に映し出す構成としたが、これらを1つの画像表示装置に分割して映し出す構成としてもよい。
【0053】
本実施の形態の構成によれば、監視カメラによる撮影映像が合成されたフロア画像は見た目上整理された見やすい画像となるので、ユーザは監視カメラ設置台数が多い複雑な建物内の監視においても、一見してフロア全体の状況を把握することがさらに容易になる。
【0054】
また、ユーザは、俯瞰変換してフロア図面と合成された画像を見て不審人物を発見した場合に、不審人物がいるエリアを撮影する監視カメラを選択し、その監視カメラの画像を俯瞰変換処理等しないそのままの画像を見ることにより、不審人物の顔や服装、背格好等の情報を判別し、また記録することもできる。
【0055】
さらに、天井カメラとは異なりカメラの設置場所が鉛直下向きに制限されることもなく、1台の監視カメラで俯瞰画像と、対象者の顔等が判別しやすいそのままの画像とを表示させることができるので、設置コストの低下を図ることができ、経済的である。
【符号の説明】
【0056】
1a〜1c 固定式の監視カメラ
1d 旋回式の監視カメラ
2 画像処理装置
3 画像表示装置
4a〜4d 歪み補正部
5a〜5d 視点変換部
6 制御部
7 位置情報記憶部
8 座標抽出部
9 合成領域生成部
10 画像合成部
11 合成領域生成・重畳処理部
12 画像表示装置
AX10 光軸
AGX 水平画角
AGY 垂直画角
ag01〜ag02 監視カメラC0の撮影画像の座標
d01〜d04 監視カメラC1の撮影画像の座標
e01〜e04 監視カメラC2の撮影画像の座標
f01〜f04 監視カメラC3の撮影画像の座標
g01〜g04 監視カメラC5の撮影画像の座標
h01〜h04 監視カメラC6の撮影画像の座標
R1 監視カメラC1の画像合成領域
R2 監視カメラC1の死角領域
R3 監視カメラC5の画像合成領域
R4 監視カメラC6の画像合成領域
C0〜C7 監視カメラ
TGT 侵入者(ターゲット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアの監視領域に設けられた一又は複数の監視カメラと、
前記監視カメラにより撮影された画像を前記フロアの画像に合成して合成画像を生成する画像処理装置と、
前記画像処理装置で生成された合成画像を表示する画像表示装置とを備えた監視システムであって、
前記画像処理装置は、
前記監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、前記フロアの画像及び前記監視カメラの撮影領域を遮る前記フロアの構造物に関する位置情報を含む前記フロアに関する情報とが記憶された位置情報記憶部と、
前記監視カメラの撮影領域に関する位置情報と、前記監視カメラのフロアに関する情報とに基づいて前記監視カメラによる撮影画像を前記フロア画像に合成する合成領域を定める合成領域生成部と、
前記監視カメラによる撮影画像を前記合成領域に合成して合成画像を生成する画像合成部を有することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記位置情報記憶部には前記監視カメラの仕様情報が記憶され、
前記画像処理装置は、
前記仕様情報を用いて前記監視カメラで撮影された画像の歪みを補正する歪み補正部と、
前記歪み補正部で歪み補正された画像を俯瞰画像に変換する視点変換部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は、
前記複数の監視カメラによる撮影画像の合成される各合成領域が重なる場合に、前記複数の監視カメラのうちいずれか1つの監視カメラに対応する合成領域にその重畳領域を含める重畳処理部を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記画像処理装置は、
前記複数の監視カメラによる撮影画像の合成される各合成領域が重なる場合に、その重畳領域を複数の領域に分割し、前記複数の監視カメラのうち前記分割領域から最も距離の近い監視カメラに対応する合成領域に前記分割領域を含める重畳処理部を前記画像処理装置に備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項5】
前記画像処理装置は、
前記仕様情報に基づいて前記合成領域を求める座標抽出部を備えることを特徴とする請求項2に記載の監視システム。
【請求項6】
前記画像処理装置は、
前記監視カメラの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は前記監視カメラの前記仕様情報を更新し、前記合成領域生成部は前記更新情報に基づいて前記合成領域を定めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−4630(P2012−4630A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134966(P2010−134966)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】