説明

監視機能付き車両

【課題】照明灯と、カメラを有するモニター装置とを備えた監視機能付き車両のカメラの故障を防止し、モニター装置の設置コストを安く抑え、設置の手間を軽減することを課題とする。
【解決手段】照明灯19,21,22と、カメラ23,24,26を有するモニター装置36とを備えた監視機能付き車両において、照射方向の開口部29aを覆うカバー体33が透視可能な部材で形成されたマルチリフレクタ式ランプにより照明灯19,21,22を構成し、カメラ23,24,26を、カバー体33を介して撮影可能な状態で前記照明灯19,21,22に内装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視機能付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
照明灯と、カメラを有するモニター装置とを備えた特許文献1に示す監視機能付き車両が公知になっている。
【特許文献1】特開平11−46562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記文献に示す監視機能付き車両は、カメラが保護カバー等で覆われておらず露出しているため、カメラ内部への粉塵等の入り込み、車両メンテナンス中における作業者の肘等とカメラとの接触等により、カメラが故障してしまうことがあるという問題がある。くわえて、カメラと照明灯を支持する部材が別々に必要になり設置コストが高くなるという欠点がある他、カメラの撮影方向及び照明灯の照射方向を調整する場合、カメラと照明灯をそれぞれ別々に調整する必要があり手間がかかるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の監視機能付き車両は、第1に照明灯19,21,22と、カメラ23,24,26を有するモニター装置36とを備えた監視機能付き車両において、照射方向の開口部29aを覆うカバー体33が透視可能な部材で形成されたマルチリフレクタ式ランプにより照明灯19,21,22を構成し、カメラ23,24,26がカバー体33を介して撮影可能な状態で前記照明灯19,21,22に内装されたことを特徴としている。
【0005】
第2に、照明灯19,21を照射方向変更可能に支持し、照明灯19,21の照射方向を変更駆動させるアクチュエータ27,28を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明の監視機能付き車両によれば、カメラがカバー体によって保護されるため、カメラの故障を防止できる。くわえて、照明灯にカメラが内装されているため、照明灯とカメラを支持する部材をそれぞれ別々に用意する必要がなく設置コストを安く抑えることができる他、照明灯の照射方向を変更することにより該照明灯に内装されたカメラの撮影方向も併せて変更されるため、カメラ及び照明灯の撮影方向及び照射方向の調整を容易に行うことが可能になる。
【0007】
また、カメラが内装された照明灯をアクチュエータによって照射方向変更可能に構成することにより、1つアクチュエータによって照明灯の照射方向とカメラの撮影方向の両方を変更できるという効果がある。くわえて、照明灯の照射方向に対してカメラの撮影方向を最適な方向に設定しておくことにより、照明灯の照射方向が変更されても常に最適なカメラの撮影方向が維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1,2は、本発明の監視機能付き車両を適用したコンバインの全体側面図及び全体背面図である。クローラ式の走行部1を備える走行機体2は、前方に穀稈の刈り取りを行う前処理部3が昇降自在に連結されている。走行機体2の左部には前処理部3で刈り取られた穀稈を脱穀等する脱穀部4が、右部前側にはオペレータが入り込むキャビン6が、右部後側には籾を収容するグレンタンク5がそれぞれ設けられている。そして、グレンタンク5に収容された籾はオーガ7によって機外に排出される。
【0009】
オーガ7は、基端部が走行機体2の後端部右側に水平回動及び上下揺動可能に支持され、基端部から先端部に向かって直線的に延びる略円筒形の部材であり、先端部に籾を排出する排出口7aが形成されている。上記オーガ7の水平回動及び上下揺動等により、排出口7aは、機外の所望の籾排出場所に下方を向いた状態で位置決めされる。
【0010】
図3は、脱穀部内の側面図である。脱穀部4は、上部の扱室8と、下部の選別室9と、扱室8と選別室9を区切る略水平な選別網11と、脱穀部4を覆うカバー体10(図1参照)とから構成されている。
【0011】
穀稈は、フィードチェーン(図示しない)によって前処理部3から扱室8を通過して排藁チェーン15まで搬送される。扱室8を通過する穀稈は、扱室8内の扱胴12によって脱穀され、籾や藁屑等を含む扱降物として選別網11を漏下して選別室9に送り込まれ、残りは排藁として排藁チェーン15に渡され、機体後方から機外に排出される。なお、選別室9の後側の上端部にはフィードチェーン後端部の排藁の穂先を排藁チェーンに案内する棒状の穂先ガイド体16が設けられており、該穂先ガイド体16によって、排藁がスムーズに排藁チェーンに渡される。
【0012】
選別室9は、室内の前部下側に設けられた唐箕ファン13と、室内の後部上側に設けられた排塵ファン14とを備えている。唐箕ファン13及び排塵ファン14を回動駆動させることにより、選別室9内に後方斜め上方向の選別風を発生させる。扱降物のうち藁屑等は、上記選別風により室内の後部上側に吹き上げられ、排塵ファン14に達し、機体後方から機外に排出される。一方、扱降物のうち籾は、室内下部に設けられた1番ラセン17により、グレンタンク5内に搬送される。
【0013】
カバー体10は、扱室8の外側方(左側方)及び上方と、選別室9の後部上方を覆う正面視略L字形状に成形され、上面の内側端部(右端部)を回動支点として扱胴12とともに開閉するように構成されている。カバー体10を開くことにより、扱室8及び選別室9に作業者がアクセスできるようになっている。
【0014】
上記構成のコンバインには照明灯19,21,22が3つ取付けられており、各照明灯19,21,22には監視用のカメラ23,24,26が内装されている。1つ目の照明灯19は、オーガ7の先端部に取付けられ、籾排出作業箇所を照らす作業灯であり(図1参照)、籾排出作業状態を撮影するオーガカメラ23が内装され(図4参照)、アクチュエータであるモータ27(図5参照)によりオーガ7の軸方向に回動駆動される。
【0015】
2つ目の照明灯21は、走行機体2の後端上部に後方斜め下方を向いた状態で取付けられ、機体後方を照らす作業灯であり(図2参照)、機体後方を撮影するバックカメラ24が内装され、アクチュエータであるモータ28(図5参照)によって左右に回動駆動される。
【0016】
3つ目の照明灯22は、脱穀部4の前述した穂先ガイド体16に下方を向いた状態で固定され、選別室9内の扱降物の選別作業箇所を照らす作業灯であり(図3参照)、選別作業状態を撮影する選別部カメラ26が内装されている。
【0017】
図4(A)〜(C)は、カメラを内装した照明灯の正面図、平面図及び斜視図である。上記3つの照明灯19,21,22は、略同一構成であるため、以下、オーガ7の作業灯19を例に説明する。オーガ7の作業灯19は、正面全体に開口部29aが形成されたハウジング29と、ハウジング29内部に設けられるランプバルブ31(発光部)と、ランプバルブ31の光を上記開口部29aに配光する凹面状のリフレクタ32と、上記開口部29aを覆うカバー体33とにより構成されており、前述したようにオーガカメラ23を内装している。
【0018】
ハウジング29は、照射方向に対して横方向に延びる正面視略楕円形の中空状部材であり、内部に上記リフレクタ32が嵌め込み固定されている。カバー体33は、透光性を備えた透視可能な部材である透明樹脂材等で形成されており、上記開口部29aを塞ぐようにハウジング29に嵌め込み固定されている。ランプバルブ31は、基端部がリフレクタ32の背面側に位置し、先端部がリフレクタ32の正面中央から照射方向に向かって突設されており、上記カバー体33によって照射方向前側が覆われている。
【0019】
オーガカメラ23は、リフレクタ32とカバー体33の間に配置され、作業灯19の照射方向と略同一方向に向けられた状態で、位置決め固定されている。また、オーガカメラ23は、ランプバルブ31よりも照射方向前側に配置されているが、正面視においてランプバルブ31と重ならない位置に配置されている。このため、オーガカメラ23によって作業灯19の照射範囲が狭まることが防止される。なお、オーガカメラ23の両側方から横方向にそれぞれ2つづつ突設された計4つの固定部材34によって、オーガカメラ23は作業灯19の内部に位置決めされている。
【0020】
図5はモニター装置のブロック図である。本コンバインは、モニター装置36を搭載することにより、監視機能を備える。モニター装置36は、上記3つのカメラ23,24,26と、撮影画像を表示する表示部37(液晶ディスプレイ)と、カメラ23,24,26からの画像信号を変換処理等して表示部37に出力するコントローラ38と、上記3つのカメラ23,24,26の何れの画像信号をコントローラ38に出力するかを選択切替えする切替部39と、上記キャビン6内に設けられた操作パネル41とを備えている。
【0021】
表示部37の入力側にはコントローラ38の出力側が接続され、コントローラ38の入力側には切替部39の出力側が接続され、切替部39の入力側には上記3つのカメラ23,24,26及び操作パネル41の出力側が接続されている。操作パネル41の入力側には、オーガ7の作業灯19及び走行機体2の後端上部の作業灯21を同時に入切操作する作業灯入切操作具42(作業灯スイッチ)と、上記切替部39を介して3つのカメラ23,24,26の切替操作をするカメラ切替操作具43(カメラ切替スイッチ)と、オーガ7の作業灯19及び走行機体2の後端上部の作業灯21の照射方向を各モータ27,28によって調整する作業灯回動操作具44(モータ正逆ダイヤル)とが接続されている。
【0022】
また、モニター装置36は、選別部カメラ26の撮影画像が表示部37に表示されている間又は脱穀部4を覆うカバー体を開けている間、脱穀部4の選別室9に設置された作業灯22が自動的に点灯するように構成されている。このことにより、常に作業灯22によって明るく照らされた選別室8内の様子が表示部37に表示される他、カバー体10を開けて選別室9の清掃や整備等を行う場合も常に作業灯22によって良好な視界が確保される。
【0023】
また、モニター装置36は、後述する主変速レバー45により走行機体2の後進走行切換操作がされると、走行機体の後端上部に設けられた作業灯21が自動的に点灯し、該作業灯19に内装されたバックカメラ24からの撮影画像が自動的に表示部37に表示されるように構成されている。
【0024】
さらに、モニター装置36は、オーガ7が略水平且つ基端部から先端部に向かって左斜め前方を向いた収納状態から駆動されて作業状態になると、オーガ7先端部の作業灯19が自動的に点灯し、該作業灯19に内装されたオーガカメラ23からの撮影画像が自動的に表示部37に表示されるように構成されている。
【0025】
次に、操作パネル41の構成等について説明する。図6は、キャビン内の平面図である。キャビン6には、オペレータが着座する座席46と、座席46後方に設けられオーガ7を水平回動及び上下揺動操作するオーガ操作具47(オーガ操作レバー)と、座席46の前方及び左側方を囲む平面視略L字形の上記操作パネル41とを備えている。
【0026】
上記操作パネル41の座席46前方部分の中央には上記表示部37が、左部には上記作業灯スイッチ42がそれぞれ設けられ、操作パネル41の座席46左側方部分には上記モータ正逆ダイヤル44及び機体の前後進操作を行う主変速レバー45が設けられている。モータ正逆ダイヤル44は回動操作の他に押し操作も可能に構成されており、モータ正逆ダイヤル44の押し操作によって操作パネル41に内装された前述のカメラ切替スイッチ43が押し操作される。
【0027】
カメラ切替スイッチ43を1回、押し操作する毎に、表示部37の表示される映像が、オーガカメラ23の撮影画像と、バックカメラ24の撮影画像と、選別部カメラ26の撮影画像と、走行速度や燃料残量等の機体情報表示画像との何れかに順番に切替えられる。
【0028】
本発明の監視機能付き車両を適用した本コンバインによれば、各カメラ23,24,26の撮影箇所を対応する照明灯19,21,22で照らすことによってカメラ23,24,26の良好な視界が確保されるとともに、照明灯19,21の照射方向及びカメラの撮影方向23,24を変更することによって、カメラ23,24の撮影範囲がより広くなる。このため、車両の監視機能が向上する。
【0029】
また、オーガ7を水平回動又は上下揺動させることにより、オーガ7の先端部に設けられたオーガカメラ23を用いて機体周辺を広範囲で監視できる他、選別室9内の選別作業が選別部カメラ26によって監視可能であるため、適切な選別処理を行うことができる。
【0030】
さらに、照明灯19,21,22の内部又は周辺に、対応するカメラ23,24,26及びモータ27,28が設置されているため、照明灯19,21,22、カメラ23,24,26及びモータ27,28の電源線や信号線等は、照明灯19,21,22の付近で容易に1つに束ねることができる。そして、電源線や信号線等を1つに束ねることにより、モニター装置36の配線が簡略化される。
【0031】
以上、照明灯19,21自体をモータ27,28によって駆動させる例につき説明したが、照明灯19,21に内装されるカメラ23,24をリフレクタ32に固定し、リフレクタ32のみをモータ等のアクチュエータで駆動するようにしてもよい。このことにより、照明灯19,21全体を駆動させるように小さい駆動力のアクチュエータで照明灯19,21の照射方向やカメラの撮影方向を変更することができる他、照明灯19,21自体が動かなくなるため、照明灯19,21全体が動くことによる衝突等のトラブルが防止される。
【0032】
また、カメラ23,24,26からの2以上撮影画像を同時に表示部37に表示させるように、モニター装置36を構成してもよい。この場合は、カメラ切替スイッチを6回押し操作することにより、表示部37の映像切替を行えばよい。すなわち、先の3回の押し操作によって、3つのカメラ23,24,26のうちの1の撮影画像を表示部37に順番で表示させ、後の3回の押し操作によって3つのカメラ23,24,26のうちの2の撮影画像を表示部37に順番で表示させるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の監視機能付き車両を適用したコンバインの全体側面図である。
【図2】本発明の監視機能付き車両を適用したコンバインの全体背面図である。
【図3】脱穀部内の側面図である。
【図4】(A)〜(C)は、カメラを内装した照明灯の正面図、平面図及び斜視図である。
【図5】モニター装置のブロック図である。
【図6】キャビン内の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
19,21,22 作業灯(照明灯)
23 オーガカメラ(カメラ)
24 バックカメラ(カメラ)
26 選別部カメラ(カメラ)
27,28 モータ(アクチュエータ)
29a 開口部
33 カバー体
36 モニター装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明灯(19),(21),(22)と、カメラ(23),(24),(26)を有するモニター装置(36)とを備えた監視機能付き車両において、照射方向の開口部(29a)を覆うカバー体(33)が透視可能な部材で形成されたマルチリフレクタ式ランプにより照明灯(19),(21),(22)を構成し、カメラ(23),(24),(26)がカバー体(33)を介して撮影可能な状態で前記照明灯(19),(21),(22)に内装された監視機能付き車両。
【請求項2】
照明灯(19),(21)を照射方向変更可能に支持し、照明灯(19),(21)の照射方向を変更駆動させるアクチュエータ(27),(28)を設けた請求項1の監視機能付き車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−220286(P2008−220286A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64368(P2007−64368)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】