説明

監視用センサ

【課題】監視用センサの向きを変える妨害行為を検出可能な監視用センサを提供する。
【解決手段】監視用センサ2は、監視領域全体にわたる複数の走査方位と複数の走査方位のそれぞれに対応する物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部21と、測距データにおいて特徴点を抽出する特徴点抽出部242と、第1の時刻において得られた測距データから抽出された第1の特徴点のそれぞれについて、第1の時刻と異なる第2の時刻において得られた測距データから抽出された第2の特徴点のうち、その第1の特徴点と一致する第2の特徴点を検出し、かつ一致する特徴点の組ごとに、第1の特徴点と第2の特徴点との位置関係に基づき第1の時刻と第2の時刻との間の回転移動方向を求める特徴点比較部243と、一致する特徴点の組ごとに求められた回転移動方向に従って監視用センサの向きが変化したか否かを判定する向き変化判定部244とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探査信号を監視領域内に照射して、その反射信号を受信することで、監視領域内へ侵入した物体を検出する監視用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外などの広域な監視領域に侵入した物体を検出するために、赤外光線、可視光線、超音波などの探査信号を監視領域内に照射して、監視領域内の物体からの反射信号を受信することにより、監視領域内の物体を検出する監視用センサが開発されている。
そのような監視用センサの一例は、光距離計の光を2次元スキャンさせるスキャン角度によって監視領域を設定し、監視領域内の侵入者を検知したとき、侵入者までの距離データ及び角度データを求め、その距離データ及び角度データにより侵入者の位置を算出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−241062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
監視用センサは、セキュリティ性を担保するために、監視機能が無効化されることを防止しなければならない。特にこのような監視用センサが、監視領域内に侵入した不審人物、不審車両といった不審物体を検出して異常通報する警備システムに利用される場合には、監視機能が無効化されてしまうと、警備システムが不審物体の検知に失敗してしまうので、そのような事態を防止することは非常に重要である。
例えば、不審人物が監視用センサを物理的に回転させて向きを変えるといった妨害行為を行うと、監視領域の少なくとも一部へ探査信号が照射されなくなるので、その探査信号が照射されなくなった範囲は警備上の死角となってしまう。
また、例え監視用センサが監視領域内へ侵入した不審物体を検出していなくても、監視用センサに対する妨害行為が行われたという事象そのものが、検出すべき異常事態である。しかし、特許文献1に開示されたような従来の監視用センサは、上記のような妨害行為を検知する手立てを持たないので、その監視用センサの用途は、そのような妨害行為の検出を要しない限定的な監視機能が求められるものに限定されていた。
【0005】
そこで、本発明は、監視用センサの向きを変える妨害行為を検出可能な監視用センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態として、監視領域を監視する監視用センサが提供される。この監視用センサは、監視領域の一端から他端まで探査信号で走査して、監視領域内に存在する物体により反射された探査信号を受信することにより、複数の走査方位と複数の走査方位のそれぞれに対応する物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部と、測距データにおいて特徴点を抽出する特徴点抽出部と、第1の時刻において得られた測距データから抽出された特徴点である第1の特徴点のそれぞれについて、第1の時刻と異なる第2の時刻において得られた測距データから抽出された特徴点である第2の特徴点のうち、その第1の特徴点と一致する第2の特徴点を検出し、かつ一致する特徴点の組ごとに、第1の特徴点と第2の特徴点との位置関係に基づき、第1の時刻と第2の時刻との間の回転移動方向を求める特徴点比較部と、一致する特徴点の組ごとに求められた回転移動方向に従って監視用センサの向きが変化したか否かを判定する向き変化判定部とを有する。
【0007】
また向き変化判定部は、何れか一方向へ回転移動した特徴点の組の数が所定閾値に達している場合、監視用センサの向きが変化したと判定することが好ましい。
【0008】
さらに、特徴点比較部は、所定期間に含まれる複数回の走査について求められた測距データのそれぞれについて、一致する特徴点の組及び各特徴点の組の回転移動方向を求め、向き変化判定部は、その所定期間にわたって連続して、第1の特徴点の総数または第2の特徴点の総数に対する何れか一方向へ回転移動した特徴点の組の数の割合が少なくとも第1の特徴点の総数または第2の特徴点の総数の過半数に達している場合、監視用センサの向きが変化したと判定することが好ましい。
【0009】
特徴点抽出部は、特徴点として、測距データに含まれる距離を走査方位に沿って微分したエッジ強度が所定値以上となる走査方位を抽出することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る監視用センサは、監視用センサの向きを変える妨害行為を検出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施形態に係る監視用センサを備えた警備システムの全体構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態に係る監視用センサの概略構成図である。
【図3】侵入判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、監視用センサの向きに変化が無い場合における、最新の走査における特徴点と過去の走査時における特徴点との対応関係の一例を示す図であり、(b)は、監視用センサの向きが変化している最中における、最新の走査における特徴点と過去の走査時における特徴点との対応関係の一例を示す図である。
【図5】向き変化判定処理の動作を示すフローチャートである。
【図6】物体検出処理の動作を示すフローチャートである。
【図7】警備装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一つの実施形態である監視用センサを、図を参照しつつ説明する。この監視用センサは、所定周期で監視領域の一端から他端まで探査信号を走査して、物体により反射された探査信号である反射信号を受信することにより、監視用センサから見た方位を表す走査方位ごとに物体までの距離を測定した測距データを、1回の走査ごとに作成する。そしてこの監視用センサは、各走査で作成された測距データごとに特徴点を抽出し、複数回の走査で得られた複数個の測距データの特徴点同士を順次比較して、何れかの回転方向に特徴点の位置が継続してシフトしていることを検出すると、監視用センサが物理的に回転している最中である状況であると判定することで、監視用センサの向きを変える妨害行為を検出する。
【0013】
図1は、一つの実施形態に係る監視用センサを備えた警備システムの全体システム構成を示す図である。図1に示すように、警備システム1は、建物101の敷地の一部に設定された監視領域102a〜102cをそれぞれ監視するように、建物101の周囲の3面において、それぞれ、建物101の屋外壁面またはポールなどに固定設置された3台の監視用センサ2と、各監視用センサ2と通信回線4を通じて接続され、建物101内に設置される警備装置3とを有する。
【0014】
各監視用センサ2は、監視領域102a〜102c内に侵入した不審人物、不審車両といった不審物体を検知すると、その旨を表す侵入異常信号を警備装置3へ送信する。また各監視用センサ2は、監視用センサ2の向きが、設定時と異なる向きに変えられたことを検知すると、その旨を表す向き変化異常信号を警備装置3へ送信する。さらに各監視用センサ2は、侵入異常信号または向き変化異常信号とともに、監視用センサ2の識別番号を警備装置3へ送信してもよい。
警備装置3は、公衆通信回線5を介して監視センタ内に配置された監視センタ装置6と通信可能となっている。そして警備装置3は、何れかの監視用センサ2から侵入異常信号または向き変化異常信号を受信すると、その侵入異常信号または向き変化異常信号を、警備装置3の識別番号または警備装置3が設置された建物の識別番号とともに、監視センタ装置6へ送信する。
【0015】
なお、警備システム1が有する監視用センサ2の数は3台に限られない。監視用センサ2の数は、監視しようとする領域の形状、大きさ及びその領域内に予め存在する遮蔽物などに応じて適宜決定される。また監視用センサ2の設置位置も、監視しようとする領域の形状または建物の位置及び形状などに応じて適宜設定される。
【0016】
監視用センサ2は、監視領域内に侵入した不審物体を検出する。また監視用センサ2は、例えば、不審人物により、あるいは強風などで飛来した物体などと監視用センサ2が衝突することにより、監視用センサ2が設置時の向きと異なる方向を向けられたことを検知する。
【0017】
図2は、監視用センサ2の概略構成図である。監視用センサ2は、検知部21と、通信部22と、記憶部23と、制御部24とを有する。これらの各部は、金属または樹脂などによって形成された筺体25に収容される。筺体25の前面、すなわち、監視領域に向けられる側の面には、ガラスまたは透明プラスチックといった透光性を有する部材よりなる監視窓26が設けられている。本実施形態では、監視窓26は、検知部21を略中心とする円弧状に形成されており、検知部21を通る水平面における監視窓26の表面上の各点と検知部21間の距離は略同一となっている。しかし、他の実施形態では、監視窓26は、平面状に形成されてもよい。
【0018】
検知部21は、探査信号を監視領域内へ照射し、反射信号を受光する。そして検知部21は、反射信号を解析することにより、走査方位ごとに、監視用センサ2から探査信号を反射した物体までの距離の測定値を含む測距データを作成する。そのために、検知部21は、例えば、レーザ発振部211と、走査鏡212と、駆動部213と、受光部214と、測距データ生成部215とを有する。
【0019】
レーザ発振部211は、探査信号として、例えば、約890nmの波長を持つ近赤外線のパルスレーザを発振する。そしてこのパルスレーザは走査鏡212へ向けて出力される。またレーザ発振部211は、測距データ生成部215へ、パルスレーザの位相情報を出力する。
走査鏡212は、例えば、ガルバノミラーまたはポリゴンミラーであり、駆動部213により駆動されてその反射面の向きを変えることにより、一定周期(例えば、30msec)ごとにパルスレーザで監視領域全体を走査する。
【0020】
本実施形態では、レーザ発振部211及び走査鏡212は、監視用センサ2を中心とする所定の中心角度を持つ扇状の監視領域を、パルスレーザで水平に走査するように配置される。なお、所定の中心角度は、例えば、180°に設定される。走査鏡212で反射されたパルスレーザは、監視用センサ2の筺体25の前面に設けられた監視窓26を通って、監視用センサ2の外部へ向けて照射される。
なお、レーザ発振部211及び走査鏡212は、探査信号であるパルスレーザが、水平面に対して所定の俯角を持ち、監視用センサ2から離れるほどパルスレーザが地面に近づくように配置されてもよい。
また、監視領域の走査は、監視領域の一方の端部から他方の端部まで同一方向に繰り返しパルスレーザを走査することによって行ってもよく、あるいは、1回の走査ごとにパルスレーザを走査する向きを反転させて行ってもよい。
【0021】
駆動部213は、例えば、モータと、そのモータにより生じた回転駆動力を走査鏡212の回転軸に伝達する機構と、モータを制御するための回路とを有し、走査鏡212を走査周期に応じた等回転速度で回転駆動する。
また駆動部213は、現時点でパルスレーザが照射されている方向を表す角度情報を測距データ生成部215へ通知する。
【0022】
受光部214は、例えば、CCD、CMOSまたはフォトダイオードといった受光素子を有し、レーザ発振部211の近傍に配置される。そして受光部214は、監視窓26及び走査鏡212を介して、探査信号が照射された走査方位に沿って到来する反射信号を受光する。そして受光部214は、反射信号の強度に応じた値を持つ受光信号を測距データ生成部215へ出力する。
【0023】
測距データ生成部215は、走査方位ごとに、監視用センサ2から反射信号を反射した物体までの距離を測定し、走査方位とその距離との関係を表す測距データを生成する。そのために、測距データ生成部215は、プロセッサ及びその周辺回路を有する。そして測距データ生成部215は、例えば、Time Of Flight法に従って、受光信号から求めた反射信号の位相とレーザ発振部211から出力されたパルスレーザの位相との差を求め、その差に基づいて距離を測定する。なお、ある走査方位において受光部214が所定時間以内に反射回帰光を受光しない場合には、測距データ生成部215は、その走査方位にはパルスレーザの到達可能範囲内に物体が存在しないと判断し、その走査方位についての距離を、その旨を表す予め設定された擬似値とする。この擬似値は、例えば、監視用センサ2から監視領域の外縁までの距離、またはパルスレーザ光による有効測定距離以上の適当な値に設定される。
【0024】
測距データ生成部215は、1回の走査ごとに1個の測距データを生成する。そして1個の測距データには、例えば、監視領域全体に相当する角度範囲を所定の角度間隔で割った数に1を加えた数の走査角度と、その走査角度における距離が含まれる。例えば、監視領域全体に相当する角度範囲が180°であり、隣接する走査角度間の間隔が0.25°であれば、一つの測距データには、721個の走査角度と距離の組が含まれる。走査角度は、監視用センサ2の設置位置を原点とし、所定の基準方位と走査方位とがなす角を表す。例えば、監視用センサ2から監視領域を向いたときの正面方向が基準方位に設定され、基準方位に対して左右均等に90°ずつの角度範囲となるように監視領域が設定されると、走査角度は-90°〜90°の範囲内の値となる。
【0025】
なお、検知部21は、探査信号を水平及び垂直方向に2次元に走査し、走査方向と測定距離からなる3次元データを得るように構成してもよい。また、測距方法に関しては、公知の様々な方法を採用すればよく、例えば、位相差方式、三角測量方式などが利用できる。
検知部21は、1回の走査が終了する度に、その走査について生成した測距データを制御部24へ出力する。
【0026】
通信部22は、監視用センサ2を通信回線4を介して警備装置3と通信可能に接続する。そのために、通信部22は、監視用センサ2と警備装置3とを接続する通信回線4に応じたインターフェース回路を有する。そして通信部22は、制御部24により生成された侵入異常信号または向き変化異常信号を警備装置3へ送信する。その際、通信部22は、それらの信号とともに、監視用センサ2の識別番号を警備装置3へ送信してもよい。
【0027】
記憶部23は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、監視用センサ2で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。記憶部23に記憶される情報には、例えば、監視領域情報と、基準データと、現状態情報とがある。さらに記憶部23は、過去一定期間内に生成された測距データを記憶してもよい。
【0028】
監視領域情報は、各監視用センサ2が監視対象とする監視領域の範囲を示す情報である。監視領域は、警備システム1で監視する敷地内において、監視が必要な領域として設定された場所であり、各監視用センサ2は、各々の監視領域を監視可能な位置に設置されている。そして、各監視用センサ2は、自己が監視する監視領域の範囲を表す相対的な位置情報として監視領域情報を記憶している。監視領域情報は、例えば、監視用センサ2を中心として探査信号を走査する角度範囲と、所定の角度間隔(例えば、0.25°)で隔てられた走査角度ごとの監視用センサ2から監視領域の外縁までの距離が含まれる。あるいは、監視領域情報は、監視用センサ2の設置位置を原点とする2次元座標における、監視領域外縁上の所定距離で隔てられたサンプリング点ごとの位置、または監視領域外縁の座標を表す式の係数を含んでもよい。
監視領域情報は、例えば、監視用センサ2の設置時、監視領域の画定時あるいは変更時などに、例えば通信部22を介して接続される設定用端末(図示せず)または操作部(図示せず)を介して入力される。
【0029】
基準データは、監視領域内に侵入した不審物体を検出するために用いられる、監視領域内に予め存在する物体以外の他の物体が存在しないときに生成された測距データである。基準データは、例えば、監視用センサ2の起動時、あるいは操作部または設定用端末を介して指示されたタイミングにおいて生成された測距データとすることができる。また制御部24が、検知部21により随時生成される測距データに基づいて、走査角度ごとに、過去一定期間内の出現頻度の最も高い距離値を選択し、その選択された距離値に書き換えることにより、基準データを更新してもよい。なお、基準データは、上記の監視領域情報として用いられてもよい。
【0030】
現状態情報は、現時点における監視領域の状態を表す情報である。現時点において、監視領域が侵入異常が検知された侵入異常状態、または向き変化異常が検知された向き変化異常状態になっていれば、現状態情報は、各異常状態を表す値を持つ。一方、現時点において監視領域が何の異常も検知されていない正常状態であれば、現状態情報は、正常状態であることを表す値を持つ。例えば、侵入異常状態であれば、現状態情報の値は'1'に設定され、向き変化異常状態であれば、現状態情報の値は'2'に設定され、正常状態であれば、現状態情報の値は'0'に設定される。また、侵入異常状態と向き変化異常が重複して検知されている場合は、現状態情報の値は'3'に設定される。なお、現状態情報は、制御部24が何れかの異常を検知したとき、あるいは、それ以前に検知されていた何れかの異常状態が解消したことを検知したとき、もしくは警備員などが設定端末あるいは操作部を介して異常状態が解消したことを示す操作を行ったときに、制御部24により書き換えられる。
【0031】
さらに記憶部23は、向き変化異常を検出するために使用される特徴点情報、移動カウンタ及び方向フラグを記憶する。特徴点情報、移動カウンタ及び方向フラグの詳細については、制御部24の関連する機能とともに説明する。
【0032】
制御部24は、少なくとも一つのプロセッサ、タイマ及びその周辺回路を有する。そして制御部24は、監視用センサ2の各部を制御する。また制御部24は、測距データに基づいて、監視領域内に侵入した不審物体を検出したり、監視用センサ2が設定時と異なる方向へ向けられたか否かを判定する。そのために、制御部24は、侵入判定部241と、特徴点抽出部242と、特徴点比較部243と、向き変化判定部244を有する。これらの各部は、例えば、制御部24が有するプロセッサ上で実行されるソフトウェアにより実現される機能モジュールとして、監視用センサ2に実装される。
【0033】
侵入判定部241は、最新の測距データを受け取る度に、その最新の測距データと基準データを比較して、物体までの距離が相違しているところを抽出することで、監視領域内に侵入した不審物体を検知する。
図3は、侵入判定部241により実行される侵入判定処理の動作フローチャートである。侵入判定部241は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に以下の侵入判定処理を実行する。
侵入判定部241は、走査角度ごとに、測距データに含まれる距離値と、基準データに含まれる距離値との差を算出する(ステップS101)。そして侵入判定部241は、基準データに示された距離値よりも最新の測距データに示された距離値が所定距離以上監視用センサ2に近い走査角度を侵入物体候補点として抽出する(ステップS102)。なお、所定距離は、例えば、検知対象となる物体の厚さの最小値、例えば、15cmに設定される。
【0034】
侵入判定部241は、侵入物体候補点が存在するか否か判定する(ステップS103)。侵入物体候補点が存在しなければ、侵入判定部241は、監視領域内に侵入物体は存在しないと判定する。そして侵入判定部241は、侵入異常が無いことを制御部24へ通知し、侵入物体判定処理を終了する。
一方、侵入物体候補点が存在する場合、侵入判定部241は、隣接する侵入物体候補点についての距離値の差が所定値以内であれば、その隣接する侵入物体候補点を一つのグループにまとめるよう、ラベリング処理を行う(ステップS104)。なお、この所定値は、例えば10cmに設定される。
そして侵入判定部241は、グループごとの幅を求める(ステップS105)。例えば、グループの幅Wgは、余弦定理に従って、次式で算出される。
【数1】

ただし、d1は、グループの一方の端の侵入物体候補点における距離値であり、d2は、他方の端の侵入物体候補点における距離値である。またθは、測距データに含まれる、隣接する走査角度間の間隔である。そしてnは、そのグループに含まれる侵入物体候補点の数である。
【0035】
侵入判定部241は、ラベリング処理によって作成されたグループのうち、グループの幅Wgが所定幅以上となるグループを、不審物体の可能性がある侵入物体候補グループとして選択する(ステップS106)。この所定幅も、例えば、検知対象となる物体の厚さの最小値、例えば、15cmに設定される。
侵入判定部241は、侵入物体候補グループの中心の侵入物体候補点に相当する走査角度及びその侵入物体候補点における距離値を、監視用センサ2を原点とするその侵入物体候補グループの位置とし、その侵入物体候補グループの位置及び対応する測距データの取得時間を記憶部23に記憶する。
【0036】
侵入判定部241は、最新の測距データから求めた侵入物体候補グループのうち、未だ着目する侵入物体候補グループに設定されていないグループの中から着目する侵入物体候補グループを決定する(ステップS107)。そして侵入判定部241は、着目する侵入物体候補グループと、1回〜数回前の測距データについて求められた侵入物体候補グループである過去候補グループとの間でトラッキング処理を行って、着目する侵入物体候補グループに相当する物体と同一の物体に相当する過去候補グループが存在するか否か判定する(ステップS108)。なお、トラッキング処理として、公知の様々なトラッキング処理の何れかを採用できる。例えば、侵入判定部241は、着目する侵入物体候補グループの位置に最も近い過去候補グループの位置を求め、それらの位置の差が、検出しようとする不審物体の想定される移動速度とそれら二つの候補グループの取得時刻の差との積として定められる移動可能距離以下であれば、着目する侵入物体候補グループとその過去候補グループは同一の物体に対応すると判定する。
【0037】
着目する侵入物体候補グループに相当する物体と同一の物体に相当する過去候補グループが存在する場合、侵入判定部241は、着目する侵入物体候補グループに対して、その過去候補グループに割り当てられた物体識別番号と同一の物体識別番号を割り当て、その物体識別番号を着目する侵入物体候補グループの位置と関連付けて記憶部23に記憶する(ステップS109)。そして侵入判定部241は、同一の物体識別番号が割り当てられた、着目する侵入物体候補グループの位置と最も古い侵入物体候補グループの位置間の距離を、着目する侵入物体候補グループに相当する物体の移動距離として算出する(ステップS110)。
侵入判定部241は、その移動距離が所定値以上か否か判定する(ステップS111)。移動距離が所定値以上であれば、侵入判定部241は、着目する侵入物体候補グループは、監視領域に侵入した不審物体によるものであり、侵入異常が生じたと判定する(ステップS112)。そして侵入判定部241は、侵入異常信号を生成し、その侵入異常信号を制御部24へ通知する。そして侵入判定部241は、侵入判定処理を終了する。
【0038】
一方、ステップS108において、着目する侵入物体候補グループに対応する物体と同一の物体に対応する過去候補グループが存在しない場合、侵入判定部241は、着目する侵入物体候補グループに対して、何れの過去候補グループに割り当てられた物体識別番号とも異なる新規な物体識別番号を関連付け、記憶部23に記憶する(ステップS113)。
ステップS113の後、あるいはステップS111において移動距離が所定値未満である場合、侵入判定部241は、未着目の侵入物体候補グループが存在するか否か判定する(ステップS114)。未着目の侵入物体候補グループが存在する場合(ステップS114−Yes)、侵入判定部241は、ステップS107以降の処理を繰り返す。
一方、全ての侵入物体候補グループが既に着目する侵入物体候補グループに設定されている場合(ステップS114−No)、侵入判定部241は、侵入異常は発生していないと判定する。そして侵入判定部241は、侵入異常が無いことを制御部24へ通知し、侵入判定処理を終了する。
【0039】
特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244は、監視用センサ2が設定時と異なる方向へ向けられたか否かを判定する。そのために、特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244は、探査信号で走査される探査面に略平行な面において、監視用センサ2の向きが変化している途中か否かを検出する。
そのために、特徴点抽出部242は、制御部24が測距データを受け取る度に、その測距データから特徴点を抽出する。ここで特徴点は、測距データに含まれる特徴的な距離値に対応する走査角度を表す。本実施形態では、特徴点抽出部242は、走査角度の変化方向に対する距離値のエッジ強度、例えば、隣接する走査角度間での距離値の差分値の絶対値が所定強度以上となる走査角度を特徴点として抽出する。なお、所定強度は、例えば、測距データにおける、エッジ強度の累積ヒストグラムにおけるエッジ強度の上位10%〜20%程度に相当する値とすることができる。そして特徴点抽出部242は、各特徴点の走査角度及びその特徴点に対応するエッジ強度を含む特徴点情報を作成し、その特徴点情報を記憶部23に書き込む。なお、特徴点情報は、各特徴点についてのエッジの向き(すなわち、隣接する走査角度間での距離値の差分値の正負)を含んでもよい。
【0040】
また、エッジ強度として、1次微分値の代わりに2次微分値が用いられてもよい。あるいは、特徴点は、測距データに含まれる距離値の極大値または極小値に対応する走査方位であってもよい。さらに、特徴点抽出部242は、走査角度の全範囲を複数個のブロック(例えば、10個または20個のブロック)に分割し、各ブロックにおいてエッジ強度が最も高い走査角度、あるいはエッジ強度が上位数%に含まれる走査角度を特徴点としてもよい。このようにブロックごとに特徴点を設定することで、監視領域全体にわたって特徴点が設定されるので、後述する特徴点比較部243により求められる特徴点の回転移動方向に関して、監視領域全体にわたる傾向をより正確に求めることができる。
記憶部23は、例えば、直近の一定期間に得られた各測距データに対する特徴点情報を記憶する。
【0041】
特徴点比較部243は、最新の測距データについて得られた各特徴点(以下、現特徴点という)に着目し、探査面に略平行な面において、その特徴点の走査角度を基準とする所定の角度範囲内に存在する、所定回数前の走査の測距データについて得られた各特徴点(以下、過去特徴点という)から一致する特徴点を検出する。なお、所定の角度範囲は、例えば、着目する特徴点の走査角度を中心として、左右それぞれ10角度単位(例えば、測距データに含まれる距離値が0.25°ずつ求められている場合、左右それぞれ2.5°)の範囲に設定される。また、所定回数は、監視用センサ2が回転中であることを検出できる十分に短い期間に相当する回数、例えば、1回〜数回に設定される。
特徴点比較部243は、例えば、現特徴点と、その現特徴点から所定角度範囲内にある過去特徴点とのエッジ強度の差が所定値以内であれば、その二つの特徴点は一致すると判定する。所定値は、例えば、特徴点のエッジ強度の平均値の1/5〜1/10に設定される。なお、特徴点情報に各特徴点のエッジの向きが含まれる場合、二つの特徴点のエッジの向きが一致することをその二つの特徴点が一致すると判定するための条件に加えてもよい。
【0042】
ここで、監視用センサ2の向きが変化している場合、現特徴点の走査角度は、対応する過去特徴点の走査角度に対して右廻りか左廻りかの何れかへ回転している。
【0043】
図4(a)は、監視用センサ2の向きに変化が無い場合における、最新の走査における特徴点と過去の走査時における特徴点との対応関係の一例を示す図である。図4(a)において横軸は走査角度を表し、縦軸はエッジ強度を表す。また点401〜406は、現特徴点を表し、一方、点411〜416は、それぞれ、点401〜406に対応する過去特徴点を表す。また矢印は、過去特徴点から現特徴点への回転移動方向を表す。図4(a)に示されるように、監視用センサ2の向きが回転していなければ、植栽の揺れなどによって一部の特徴点の位置は変化するものの、過去の走査時から最新の走査時までの間の特徴点の回転移動方向には統一性が無い。
【0044】
図4(b)は、監視用センサ2の向きが変化している最中における、現特徴点と過去特徴点との対応関係の一例を示す図である。図4(b)において横軸は走査角度を表し、縦軸はエッジ強度を表す。また点421〜426は、現特徴点を表し、一方、点431〜436は、それぞれ、点421〜426に対応する過去特徴点を表す。また矢印は、過去特徴点から現特徴点への回転移動方向を表す。図4(b)に示されるように、監視用センサ2が回転している最中であれば、その回転に応じて、監視用センサ2から見た各特徴点に対応する物体の方位は同一方向に変化する。そのため、各特徴点は、過去の走査時から最新の走査時までの間に同一方向へ回転移動する可能性が高い。
【0045】
そこで特徴点比較部243は、一致すると判定された現特徴点と過去特徴点の組ごとに、特徴点がどの回転方向に回転移動したかを表す方向フラグを設定する。具体的には、最新の走査における着目特徴点の走査角度が、過去の走査時における特徴点の走査角度に対して時計廻りにシフトしていれば、特徴点比較部243は、その着目特徴点を含む特徴点の組に対して右廻り方向フラグを設定する。一方、過去の走査時における特徴点の走査角度に対して反時計廻りにシフトしていれば、特徴点比較部243はその着目特徴点を含む特徴点の組に対して左廻り方向フラグを設定する。
特徴点比較部243は、一致すると判定された全ての特徴点の組について方向フラグを設定すると、各特徴点の組及び設定された方向フラグを向き変化判定部244へ通知する。
【0046】
向き変化判定部244は、各特徴点の組の回転移動方向に基づいて、監視用センサ2の向きが設置時から変化したか否かを判定する。監視用センサ2の向きが変化した場合、理論的には、全ての特徴点は同一方向へ回転移動することになる。また、監視用センサ2の向きが不審人物により故意に変えられるような場合、監視センサ2の向きは、瞬間的に変わるのではなく、ある程度の期間にわたって継続的に、かつ同一方向へ回転移動する。
一方、強風などによって、監視領域内にある植栽が同一方向へ靡いたり、あるいは監視用センサ2自体が揺らされることがある。このような場合も、特徴点は、瞬間的には同一方向へ回転移動する。しかしながら、風が止んだり、弱くなると、植栽または監視用センサ2は逆向きに動くことになるので、特徴点が同一方向へ回転移動する期間が長期間継続することはない。
【0047】
そこで、向き変化判定部244は、現特徴点の総数に占める、一方の方向フラグの数が所定割合以上となった状態が所定期間にわたって継続している場合、監視用センサ2の向きが変化したと判定する。これにより、向き変化判定部244は、強風などによって一時的に監視領域内の物体が同一方向に移動したり、監視用センサ2が一時的に揺れた場合と、監視用センサ2の向きが変わったことを正確に区別しつつ、監視用センサ2の向きが変わったことを検出できる。
なお、所定割合は、50%よりも大きい値、すなわち、何れか一方の方向フラグの数が少なくとも過半数に達したことに対応する値に設定される。本実施形態では、所定割合は80%に設定される。また所定期間は、例えば、0.5秒間〜1秒間程度に設定される。
向き変化判定部244は監視用センサ2の向きが変わったと判定すると、向き変化異常信号を生成し、制御部24へ渡す。
【0048】
図5は、特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244により実行される向き変化判定処理の動作を示すフローチャートである。なお、特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244は、最新の測距データを受け取る度に、すなわち、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に向き変化判定処理を実行する。
特徴点抽出部242は、最新の測距データから特徴点を抽出する(ステップS201)。そして特徴点抽出部242は、抽出した特徴点の走査角度及びエッジ強度と現時刻とを含む特徴点情報を作成し、その特徴点情報を記憶部23に書き込むとともに、特徴点比較部243に渡す。
特徴点比較部243は、所定周期前の走査で作成された測距データに対応する特徴点情報を、過去特徴点情報として記憶部23から読み出す(ステップS202)。
【0049】
特徴点比較部243は、最新の特徴点情報に含まれる特徴点(現特徴点)のうち、未着目の特徴点を着目特徴点に設定する(ステップS203)。
特徴点比較部243は、着目特徴点の走査角度を中心とする所定の角度範囲内に、その着目特徴点と一致する過去特徴点情報に含まれる特徴点である過去特徴点が存在するか否か判定する(ステップS204)。着目特徴点と一致する過去特徴点が存在する場合、特徴点比較部243は、過去特徴点の走査角度に対する着目特徴点の走査角度の回転移動方向に応じた方向フラグを着目特徴点と対応する過去特徴点の組に対して設定する(ステップS205)。なお回転移動方向が時計回りであれば、方向フラグとして右廻り方向フラグがその特徴点の組に設定され、回転移動方向が反時計回りであれば、方向フラグとして左廻り方向フラグがその特徴点の組に設定される。
ステップS205の後、あるいはステップS204にて所定の角度範囲内に着目特徴点と一致する過去特徴点が存在しない場合、特徴点比較部243は、全ての現特徴点を着目特徴点に設定したか否か判定する(ステップS206)。何れかの現特徴点が着目特徴点に設定されていなければ、特徴点比較部243は、ステップS203〜S206の処理を繰り返す。
一方、全ての現特徴点が既に着目特徴点に設定されている場合、特徴点比較部243は、各特徴点の組及び設定された方向フラグを向き変化判定部244へ通知する。
【0050】
向き変化判定部244は、現特徴点と対応する過去特徴点との組について設定された右廻り方向フラグの数と左廻り方向フラグの数をそれぞれ計数する(ステップS207)。そして向き変化判定部244は、何れか一方向の方向フラグの数が所定閾値に達しているか否か判定する(ステップS208)。本実施形態では、所定閾値は、現特徴点の総数に対する少なくとも過半数、例えば、80%に設定される。この場合、現特徴点の総数に対する設定された右廻り方向フラグの数の割合が80%以上となっている場合、向き変化判定部244は、監視用センサ2が右回り方向へ回転移動している可能性があると判定する。逆に、現特徴点の総数に対する設定された左廻り方向フラグの数の割合が80%以上となっている場合、向き変化判定部244は、監視用センサ2が左回り方向へ回転移動している可能性があると判定する。
【0051】
何れの方向の方向フラグの数も現特徴点の総数の過半数に達していない場合(ステップS208−No)、向き変化判定部244は、右廻り方向の移動カウンタCr及び左廻り方向の移動カウンタClから、それぞれ1を減算する(ステップS209)。
一方、何れかの方向フラグの数が現特徴点の総数の過半数に達している場合(ステップS208−Yes)、向き変化判定部244は、その方向フラグが表す向きの移動カウンタの値に1を加算し、一方、その方向フラグが表す向きと逆向きの移動カウンタの値から1を減算する(ステップS210)。例えば、左廻り方向フラグの数が現特徴点数の過半数に達している場合、左廻り方向に対応する左廻り移動カウンタClに1が加算され、一方、右廻り方向に対応する右廻り移動カウンタCrから1が減算される。ただし、減算の結果、何れかの方向の移動カウンタの値が負の値となる場合には、向き変化判定部244はその移動カウンタの値を0に設定してもよい。
向き変化判定部244は、何れかの方向の移動カウンタが所定の閾値以上となったか否か判定する(ステップS211)。そして何れかの方向の移動カウンタが所定の閾値以上となっていれば、監視用センサ2の向きが、その移動カウンタに対応する方向へ変えられている途中であると推定される。そこで向き変化判定部244は、向き変化異常が発生したと判定し、その旨を制御部24へ通知する(ステップS212)。
ステップS209またはS212の後、あるいはステップS211にて何れの方向の移動カウンタも所定の閾値未満である場合、向き変化判定部244は、向き変化判定処理を終了する。
【0052】
図6は、制御部24により実行される物体検出処理の動作を示すフローチャートである。制御部24は、検知部21による監視領域の1回の走査が終わる度に物体検出処理を実行する。
制御部24は、検知部21から測距データを受け取る(ステップS301)。そして制御部24は、測距データを記憶部23に記憶する。また制御部24は、測距データを侵入判定部241及び特徴点抽出部242へ渡す。
侵入判定部241は、侵入判定処理を実行する(ステップS302)。そして侵入判定部241は、監視領域内に侵入した不審物体を検出すると、侵入異常信号を生成し、制御部24へ渡す。制御部24は、侵入異常信号を受け取ったことを示すフラグを記憶部23に記憶する。また侵入判定部241は、侵入異常が生じていないと判定すると、侵入異常が無いことを制御部24へ通知する。そして制御部24は、その通知を受けた時刻を、侵入異常に関する正常復帰時刻として記憶部23に記憶する。なお、侵入判定処理の詳細は、図3とともに上述したとおりである。
【0053】
特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244は、向き変化判定処理を実行する(ステップS303)。そして特徴点抽出部242、特徴点比較部243及び向き変化判定部244は、測距データから特徴点情報を求め、その特徴点情報を過去の走査に関して得られた特徴点情報と比較することにより、監視用センサ2の向きが変わったか否か判定する。そして向き変化判定部244が監視用センサ2の向きが変わったと判定すると、向き変化異常信号を生成し、制御部24へ渡す。制御部24は、向き変化異常信号を受け取ったことを示すフラグを記憶部23に記憶する。なお、向き変化判定処理の詳細は、図5とともに上述したとおりである。
【0054】
制御部24は、各部から受け取った侵入異常信号及び向き変化異常信号などの異常信号のうち、未出力の異常信号があるか否か判定する(ステップS304)。例えば、制御部24は、受け取った異常信号ごとに、記憶部23に記憶されている、異常信号の前回送信時刻及び正常復帰時刻を参照する。そして制御部24は、前回送信時刻後(初期状態においては初期時刻後)に正常復帰時刻が記録されていない異常信号を、未出力の異常信号とする。
未出力の異常信号がある場合、制御部24は、その未出力の異常信号を通信部22を介して警備装置3へ出力する(ステップS305)。そして制御部24は、その出力時刻を、出力した異常信号に対応する前回送信時刻として記憶部23に記憶する。
ステップS305の後、あるいはステップS304にて未出力の異常信号がない場合、制御部24は、物体検知処理を終了する。
なお、ステップS302とS303の処理の実行順序は上記に限定されず、ステップS302とS303の何れが先に実行されてもよい。
【0055】
さらに、制御部24は、監視用センサ2が正常動作中か故障中かを表すセンサ状態情報を含むセンサ状態信号を、定期的あるいは不定期的に、通信部22を介して警備装置3へ送信してもよい。
【0056】
図7は、警備装置3の概略構成図である。警備装置3は、操作部31と、センサインターフェース部32と、記憶部33と、制御部34と、センタ通信部35とを有する。
【0057】
操作部31は、例えば、複数の操作ボタンを有する。そしてその操作ボタンの何れかを利用者が押下することにより、操作部31はその操作ボタンに割り当てられた所定の操作信号、または利用者の識別番号及び暗証番号といった各種の入力情報を制御部34へ出力する。そして利用者は、操作部31を操作することで、監視対象建物の警備状態を表す警備モードを変更できる。なお、警備モードの詳細については後述する。
【0058】
センサインターフェース部32は、警備装置3と監視用センサ2とを通信可能に接続する。そのために、センサインターフェース部32は、例えば、警備装置3と監視用センサ2とを接続する通信回線4に応じたインターフェース回路を有する。そしてセンサインターフェース部32は、各種の異常信号及び監視用センサ2の識別コードなどを監視用センサ2から通信回線4を介して受信し、制御部34へ渡す。
また警備装置3は、センサインターフェース部32を介して、監視対象建物またはその周囲に設置された他のセンサ、例えば、建物の出入口に設置される開閉センサ、建物内に設置される人感センサと接続されていてもよい。この場合、センサインターフェース部32は、他のセンサからの異常信号を受信して、制御部34へ渡してもよい。
さらにセンサインターフェース部32は、監視用センサ2または他のセンサから、そのセンサが正常動作中か故障中かを表すセンサ状態情報を含むセンサ状態信号を、定期的あるいは不定期的に受信し、そのセンサ状態情報を記憶部33に記憶させてもよい。
【0059】
記憶部33は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、警備装置3で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。
例えば、記憶部33は、現在設定されている警備モードを表す警備モード情報、警備装置3の識別番号または警備装置3が設置された監視対象建物の識別番号、利用者の識別番号及び暗証番号を記憶する。また記憶部33は、何れかの監視用センサ2から受信した各種異常信号及びその異常信号の受信時刻と、異常信号を発した監視用センサ2の識別番号とを関連付けた異常検知ログを記憶してもよい。さらに記憶部33は、警備装置3に接続された各監視用センサ2の現状態を表す現状態情報を記憶してもよい。この現状態情報は、例えば、監視用センサ2が侵入異常または向き変化異常が検出された状態となっているか、または何の異常も検知されていない正常状態となっているかを表す。さらに記憶部33は、センサ状態情報を記憶してもよい。
【0060】
制御部34は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして制御部34は、警備装置3の各部を制御する。また制御部34は、異常処理部341と、操作部31からの操作信号に従って警備モードを設定するモード設定部342とを有する。
【0061】
異常処理部341は、現在設定されている警備モードにしたがって異常処理を行う。
本実施形態では、警備モードには、警備セットモードと警備解除モードが含まれる。
警備セットモードは、例えば、夜間、休日など、警備システム1が設置された建物及びその周囲に設定された監視領域を含む監視区域が無人となるときに設定される。
異常処理部341は、記憶部33に記憶されている警備モード情報が警備セットモードであることを示している場合、何れかの監視用センサ2または他のセンサから何らかの異常信号を受信したとき、受信した異常信号と、警備装置3または警備装置3が設置された建物の識別コードとを含む異常通報信号を生成する。そして異常処理部341は、センタ通信部35を介して監視センタ装置6へ異常通報信号を送信する。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている異常検知ログに、受信した異常信号に関する情報を書き込む。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている現状態情報を、受信した異常信号に応じて修正する。あるいは、異常処理部341は、操作部31を介して何れかの監視用センサ2の異常が解消されたことを示す操作信号を受信した場合、その監視用センサ2に対応する現状態情報を、正常状態であることを示すように修正してもよい。
【0062】
一方、警備解除モードは、例えば、平日の昼間など、監視区域内に正当な権限を有する利用者が居る場合に設定される。異常処理部341は、記憶部33に記憶されている警備モード情報が警備解除モードであることを示している場合、何れかの監視用センサ2または他のセンサから何らかの異常信号を受信すると、記憶部33に記憶されている異常検知ログに、受信した異常信号に関する情報を書き込む。しかし異常処理部341は、監視センタ装置6への異常通報信号を送信しない。また異常処理部341は、記憶部33に記憶されている現状態情報を修正しない。ただし、異常処理部341は、現在の警備モードが警備解除モードである場合でも、何れかの監視用センサ2から向き変化異常信号を受け取った場合は、その向き変化異常信号を含む異常通報信号を生成し、その異常通報信号を監視センタ装置6へ送信してもよい。これにより、警備装置3は、警備解除モード設定中に監視用センサ2の向きを変える妨害行為が行われることにより監視用センサ2が監視不能となった場合でも、その旨を監視センタ装置6へ通報できるので、警戒解除モード設定中に監視用センサ2に生じた向き変化異常の原因を警備員などに確認させることが可能となる。
【0063】
モード設定部342は、操作部31からの操作信号に従って警備モードを設定する。具体的には、モード設定部342は、操作部31から受け取った利用者の識別番号及び暗証番号が、記憶部33に記憶されている何れかの利用者の識別番号及び暗証番号と一致すると、警備モードの変更を許可する。そしてモード設定部342は、警備モードの変更が許可された状態で、操作部31から警備モードを警備セットモードにする操作信号を受け取ると、記憶部33に記憶されている警備モード情報を警備セットモードを表す値に書き換える。一方、モード設定部342は、警備モードの変更が許可された状態で、操作部31から警備モードを警備解除モードにする操作信号を受け取ると、記憶部33に記憶されている警備モード情報を警備解除モードを表す値に書き換える。
【0064】
なお、記憶部33が、センサ状態情報を記憶している場合、モード設定部342は、そのセンサ状態情報を参照して、各センサが正常動作している場合に限り警備モードを警備セットモードに設定してもよい。さらに、モード設定部342は、何れかの監視用センサ2について向き変化異常が発生している場合、警備解除モードから警備セットモードに変更することを禁止してもよい。そしてセンサ状態情報が、何れかのセンサが故障中であることを表している場合、あるいは、向き変化異常が発生している場合、モード設定部342は、図示しないモニタまたはスピーカを通じて、警備セットモードに設定できないこと、及び故障中であるセンサまたは向き変化異常が発生している監視用センサ2を通知してもよい。
【0065】
センタ通信部35は、警備装置3を公衆通信回線5に接続するためのインターフェース回路を有する。そしてセンタ通信部35は、例えば、監視センタ装置6へ異常通報する場合、制御部34の制御に従って、警備装置3と監視センタ装置6間の接続処理を行う。そしてセンタ通信部35は、警備装置3と監視センタ装置6間で接続が確立された後、制御部34から受け取った異常通報信号を公衆通信回線5を介して監視センタ装置6へ送信する。センタ通信部35は、異常通報信号の送信が終わると、警備装置3と監視センタ装置6間の接続を開放する処理を行う。
【0066】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る監視用センサは、各走査時に得られた測距データから得られた特徴点情報を比較して、一定期間にわたって複数の特徴点が同一方向へ回転移動していることを検出することにより、監視用センサの向きが変わったか否かを判定する。そのため、この監視用センサは、強風などによる監視領域内の物体の一時的な移動または監視用センサの揺れと、監視用センサの向きが変わったこととを正確に区別して、監視用センサの向きが変えられた妨害行為を検出できる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
例えば、特徴点抽出部は、過去の測距データから得られる特徴点情報として、基準データからも特徴点を抽出し、基準データに対応する特徴点情報である基準特徴点情報を作成して、記憶部に記憶させてもよい。この場合、特徴点比較部は、一定期間にわたって行われた複数回の走査のそれぞれについて作成された特徴点情報と基準特徴点情報とを比較して、現特徴点の総数に対する何れか一方向に回転している方向フラグの割合を求め、その割合が上記の所定割合を越えている場合に、対応する移動カウンタの値を加算するようにしてもよい。
この場合、基準データ取得時の監視用センサの向きに対して最新の監視用センサの向きが大きく変化するほど、着目する特徴点の走査角度のシフト量も大きくなる。そこで、最新の測距データに対応する特徴点情報に含まれる着目特徴点と基準特徴点情報に含まれる特徴点との一致を調べる所定範囲は、例えば、何れか一方の移動カウンタの値が大きくなるにつれて広くなるように設定されてもよい。
【0068】
また、上記の実施形態では、向き変化判定部は、右廻り用の移動カウンタと左廻り用の移動カウンタをそれぞれ別個に計数したが、一つの移動カウンタのみを用いてもよい。例えば、上記の実施形態における右廻り方向の移動カウンタCrのみが用いられてもよい。この場合、移動カウンタCrの値が負となっても0に修正しない。そして向き変化判定部は、移動カウンタCrの値が負となり、かつその絶対値が上記の移動カウンタに対する閾値以上となれば、監視用センサの向きは反時計廻りに変わったと判定する。
【0069】
さらに、上記の実施形態では、特徴点比較部は、現特徴点の走査角度を基準として過去特徴点のうちの一致する特徴点を検出していたが、過去特徴点の走査角度を基準として現特徴点の走査角度のうちの一致する特徴点を検出してもよい。この場合、特徴点比較部は、過去特徴点と、その過去特徴点から所定角度範囲内にある現特徴点間のエッジ強度の差が所定値以内であれば、その二つの特徴点は一致すると判定すればよい。
また、上記の実施形態では、向き異常判定部は、ステップS208において、現特徴点の総数に対する何れか一方向の方向フラグの数が少なくとも過半数に達しているか否かを判定するようにしたが、過去特徴点の総数に対する何れか一方向の方向フラグの数が少なくとも過半数に達しているか否かを判定するようにしてもよい。
また検知部は、近赤外光線以外の探査信号、例えば、可視光線、超音波、またはミリ波などを探査信号として照射するものでもよい。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 警備システム
2 監視用センサ
3 警備装置
4 通信回線
5 公衆通信回線
6 監視センタ装置
21 検知部
22 通信部
23 記憶部
24 制御部
25 筺体
26 監視窓
211 レーザ発振部
212 走査鏡
213 駆動部
214 受光部
215 測距データ生成部
241 侵入判定部
242 特徴点抽出部
243 特徴点比較部
244 向き変化判定部
31 操作部
32 センサインターフェース部
33 記憶部
34 制御部
35 センタ通信部
341 異常処理部
342 モード設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域を監視する監視用センサであって、
前記監視領域の一端から他端まで探査信号で走査して、前記監視領域内に存在する物体により反射された探査信号を受信することにより、複数の走査方位と該複数の走査方位のそれぞれに対応する前記物体までの距離とを対応付けた測距データを生成する検知部と、
前記測距データにおいて特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
第1の時刻において得られた測距データから抽出された前記特徴点である第1の特徴点のそれぞれについて、前記第1の時刻と異なる第2の時刻において得られた測距データから抽出された前記特徴点である第2の特徴点のうち、当該第1の特徴点と一致する第2の特徴点を検出し、かつ当該一致する特徴点の組ごとに、当該第1の特徴点と前記第2の特徴点との位置関係に基づき、前記第1の時刻と前記第2の時刻との間の回転移動方向を求める特徴点比較部と、
前記一致する特徴点の組ごとに求められた回転移動方向に従って前記監視用センサの向きが変化したか否かを判定する向き変化判定部と、
を有することを特徴とする監視用センサ。
【請求項2】
前記向き変化判定部は、何れか一方向へ回転移動した特徴点の組の数が所定閾値に達している場合、前記監視用センサの向きが変化したと判定する、請求項1に記載の監視用センサ。
【請求項3】
前記特徴点比較部は、所定期間に含まれる複数回の走査について求められた測距データのそれぞれについて、前記一致する特徴点の組及び各特徴点の組の回転移動方向を求め、
前記向き変化判定部は、当該所定期間にわたって連続して、前記第1の特徴点の総数または前記第2の特徴点の総数に対する何れか一方向へ回転移動した特徴点の組の数の割合が少なくとも前記第1の特徴点の総数または前記第2の特徴点の総数の過半数に達している場合、前記監視用センサの向きが変化したと判定する、請求項2に記載の監視用センサ。
【請求項4】
前記特徴点抽出部は、前記特徴点として、前記測距データに含まれる距離を走査方位に沿って微分したエッジ強度が所定値以上となる走査方位を抽出する、請求項1〜3の何れか一項に記載の監視用センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−37960(P2012−37960A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175276(P2010−175276)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】