目標追尾装置
【課題】高分解能のレーダセンサによる観測情報の時系列データに基づいて、目標の位置、速度と同時に目標の長さを推定する際に、目標の長さを安定的に推定する目標追尾装置を提供する。
【解決手段】目標の位置、速度を推定する追尾フィルタである位置・速度推定部210と共に、目標の長さを推定する追尾フィルタである目標長さ推定部220を備える。位置・速度推定部210と目標長さ推定部220の間では、目標の位置、速度の各成分の平滑値と目標長さの平滑値を互いに相関させながら、目標の位置、速度と同時に目標の長さを推定する。
【解決手段】目標の位置、速度を推定する追尾フィルタである位置・速度推定部210と共に、目標の長さを推定する追尾フィルタである目標長さ推定部220を備える。位置・速度推定部210と目標長さ推定部220の間では、目標の位置、速度の各成分の平滑値と目標長さの平滑値を互いに相関させながら、目標の位置、速度と同時に目標の長さを推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観測装置が観測した目標を追尾する目標追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分解能のレーダセンサによる観測情報に基づき、目標の位置、速度、および目標の長さを推定する従来技術による目標追尾装置の構成の一例を図16に、また、目標の長さを推定する状況をxy平面内で表した例を図17に示す。
例えば、レーダセンサとしてレンジ方向に高い分解能を持つレーダを用いる場合、目標が複数のレンジビンで観測される可能性がある。この特徴を利用し、次の手順で目標の位置、速度、および目標の長さを推定する。
【0003】
アンテナ/送受信系101は、目標の観測情報のうち、位置情報を位置・速度推定部102に入力し、目標観測レンジビン数を長さ補正手段103に入力する。
位置・速度推定部102は、アンテナ/送受信系より入力されたた目標の位置情報に基づき、目標の位置と速度を推定する。また、目標の位置・速度の推定値を長さ補正手段103に入力する。
【0004】
長さ補正手段103は、アンテナ送受信系101より入力された目標観測レンジビン数に基づき、目標レンジビン長L'を算出する。また、位置・速度推定部102より入力された目標の位置・速度の推定値に基づき、レーダ位置に対する目標の方位角θと、目標の進行方向Ψ(図17のxy平面ではy軸と目標の速度ベクトルのなす角)、および方位角θに対するアスペクト角β(図17のxy平面では目標の速度ベクトルとレーダセンサのレンジ方向のなす角)を算出する。そして、(1)式により、目標の長さを推定する。
【0005】
【数1】
【0006】
【特許文献1】特開2000−98028号公報(請求項7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の目標追尾装置では、高分解能のレーダが観測する目標のレンジビン数は、サンプリング毎に絶えず変化する可能性があり、不安定である。また、一般的に、位置・速度推定部によって推定される目標速度の推定値は不安定である。従って、従来技術の構成では、不安定な目標レンジビン長と目標速度の推定値を用い、(1)式により直接目標の長さを推定している。このため、目標の長さの推定値が安定しないという課題があった。
【0008】
この発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高分解能のレーダセンサを用いて目標の位置、速度、および目標の長さを推定する場合において、目標の長さを安定的に推定する目標追尾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、高分解能のレーダセンサにより、1目標につき複数得られる観測値の時系列データに基づいて、前記目標の位置、速度と同時に目標長さを推定する目標追尾装置であって、前記目標の位置、速度の運動諸元を推定する位置・速度推定用追尾フィルタである位置・速度推定部と、前記目標の目標長さを推定する目標長さ推定用追尾フィルタである目標長さ推定部と、を備え、前記位置・速度推定用部と前記目標長さ推定部の間で前記目標の位置、速度と目標長さを推定する過程で前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させることを特徴とする目標追尾装置にある。
【0010】
この発明にかかる目標追尾装置は、高分解能のレーダセンサによる観測値に基づき、目標の位置・速度および目標の長さの時系列データから、目標の位置・速度とともに目標の長さを推定する。このため、目標の位置・速度および目標の長さの時系列データから目標の位置・速度を推定する追尾フィルタを有する位置・速度推定部を備えるのに加え、目標の長さを推定する追尾フィルタを有する目標長さ推定部を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる目標追尾装置によれば、高分解能のレーダセンサによって目標を観測する場合に、目標の位置・速度とともに目標の長さを安定的に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下この発明を各実施の形態に従って説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において目標追尾装置は、アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、位置・速度推定部210、目標長さ推定部220、表示部230を備える。位置・速度推定部210は、内部に目標重心予測処理部211と、目標重心平滑処理部212と、減算部21aを備える。目標長さ推定部220は、内部に目標長さ予測処理部221と、目標長さ平滑処理部222と減算部22aを備える。
【0013】
次に、各構成要素の機能について説明する。アンテナ/送受信系201は、観測結果であるビデオ信号を信号処理部202に入力する。
【0014】
信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値を生成し、目標を観測しているレンジビンの数を算出する。そして、信号処理部202は、目標を観測している各レンジビンの観測値(以降、「目標レンジビン観測値」と称する)を観測値重心算出部203に入力し、目標を観測しているレンジビンの数(以降、目標レンジビン数と称する)を目標長さ推定部220に入力する。
【0015】
観測値重心算出部203は、信号処理部202より入力された全ての目標レンジビン観測値(位置)に基づき、観測値重心を算出する。そして、観測値重心算出部203は算出された観測値重心を位置・速度推定部210に入力する。
【0016】
位置・速度推定部210における目標重心予測処理部211は、目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。減算部21aは、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との差(残差)を求める。
【0017】
目標重心平滑処理部212は減算部21aからの差と、目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を表示部230、目標重心予測処理部211、および目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0018】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。減算部22aは、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との差(残差)を求める。
【0019】
目標長さ平滑処理部222は、減算部22aからの差と、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212から目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0020】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0021】
図2はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャート、図3はレーダセンサと目標が2次元のxy平面内にある場合のこの実施の形態の目標追尾装置により目標の状態を推定する状況を説明するための図であり、以下、図および数式を用いて動作を説明する。
【0022】
(ステップS201)アンテナ/送受信系201は、観測結果であるビデオ信号を信号処理部202に入力する。
【0023】
(ステップS202)信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、時刻kにおいて目標を観測しているno,k個のレンジビンそれぞれについて目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を生成する。なお、ベクトル[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]Tにおける上付きの添え字Tは、ベクトルおよび行列の転置を表す。また、この表記は以下でも同様である。そして、信号処理部202は、目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を観測値重心算出部203に入力し、目標レンジビンの数no,kを目標長さ推定部220に入力する。
【0024】
(ステップS203)観測値重心算出部203は、信号処理部202より入力された目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)に基づき、観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tを算出する。そして、観測値重心算出部203は算出された観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tを位置・速度推定部210に入力する。
【0025】
位置・速度推定部210と目標長さ推定部220においては、時刻tkにおける目標の状態を、(2)式のように3次元の目標重心位置とそれらの速度成分、および目標長さLkで構成される7次元の状態ベクトルを用いて表す。また、目標の運動モデルを(3)式のように定義する。
【0026】
【数2】
【0027】
なお、(3)式の第1式において、Φkは状態遷移行列、Δtはサンプリング間隔を表す。また、wkは平均0、共分散Qkの駆動雑音ベクトルである。また(3)式の第2式において、I3×3は3次の単位行列、O3×3は3行3列の零行列を表す。
【0028】
位置・速度推定部210と目標長さ推定部220においては、時刻tkにおける目標の観測ベクトルを(4)式のように、3次元の観測値重心および目標レンジビン数no,kの4次元ベクトルで構成する。また、観測モデルを(5)式のように定義する。
【0029】
【数3】
【0030】
(5)式の第1式において、vkは平均0、共分散のRkの観測雑音ベクトルである。(5)式の第2式において、βは図3に示すアスペクト角、ΔRはレーダセンサにおける1レンジビンの長さを表す。
【0031】
(ステップS211)目標重心予測処理部211は、目標重心平滑処理部212より1サンプリング前(時刻tk-1)の目標重心平滑値((ハット)xk-1|k-1の位置・速度成分)
【0032】
【数4】
【0033】
を入力し、現サンプリング(時刻tk)における目標重心予測値
【0034】
【数5】
【0035】
を算出する。
【0036】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値((ハット)xk-1|k-1の目標長さ成分)(ハット)Lk-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0037】
【数6】
【0038】
を入力する。
そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0039】
ステップS211、S221の過程は、(6)〜(9)式で表される。
【0040】
【数7】
【0041】
(7)式において、(ハット)βk-1|k-1は1サンプリング前における方位角に対するアスペクト角の平滑値、(ハット)θk-1|k-1は1サンプリング前における方位角の平滑値、(ハット)Ψk-1|k-1は1サンプリング前における進行方向の平滑値である。
(ハット)βk-1|k-1、(ハット)θk-1|k-1、(ハット)Ψk-1|k-1は、1サンプリング前の目標重心平滑値の位置および速度成分から、それぞれ(8)式のように算出される。(9)式において、Pk|k-1は予測誤差共分散行列である。
【0042】
(ステップS212)目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tと、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値
【0043】
【数8】
【0044】
との残差を入力し、目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値((ハット)xk|kの位置・速度成分)
【0045】
【数9】
【0046】
および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。
【0047】
(ステップS222)目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値no,kと、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値nk|k-1との残差を入力し、目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、カルマンフィルタアルゴリズムに従い、現サンプリングにおける目標長さ平滑値((ハット)xk|kの目標長さ成分)(ハット)Lk|k、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。
【0048】
ステップS212およびステップS222の過程は、(10)〜(13)で表される。
【0049】
【数10】
【0050】
(10)式において、Kkはカルマンフィルタのゲイン行列である。
(11)式において、Pk|kは予測誤差共分散行列である。
(13)式で定義される行列Hkは、観測行列である。
また、Hkの4行目は、目標重心位置・速度と目標レンジビン数との相関情報、および目標長さと目標レンジビン数との相関情報を表す。
【0051】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0052】
【数11】
【0053】
と、目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0054】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、高分解能のレーダセンサによる観測値重心と目標レンジビン数の時系列データに基づき、目標重心位置・速度と目標レンジビン数との相関、および目標長さと目標レンジビン数との相関を考慮しながら、目標状態である目標の位置、速度、および目標長さを推定している。このような構成により、目標の位置、速度と同時に目標長さを安定的に推定することができる。
【0055】
この発明の実施の形態1では、レーダセンサと目標が図3のように2次元のxy平面内にある場合を例として、高分解能のレーダセンサによる観測値に基づいて目標の位置、速度、目標長さを推定しているが、レーダセンサと目標の位置関係は3次元空間であっても良い。その場合、上記(7)(8)式、において、レーダセンサにより得られる仰角に対するアスペクト角、およびz軸方向の位置・速度成分を考慮すれば良い。また、この発明の実施の形態1では、観測値重心算出部203からの出力、位置・速度推定部210および目標長さ推定部220で用いる座標系として直交座標を用いたが、これは極座標であっても良い。これらは、以下の実施の形態においても同様である。
【0056】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図5はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0057】
図4に示すこの実施の形態では、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ安定化部223が加わった場合であり、かつ、目標長さ平滑処理部222から目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、目標長さ安定化部223を介して行われる場合に相当する。
【0058】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および目標重心平滑処理部212の機能は、上記実施の形態1と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、表示部230、および新たに加えられた目標長さ安定化部223の動作について説明する。
【0059】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ安定化部223より1サンプリング前の安定化された目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0060】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、さらに位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0061】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ安定化部223に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0062】
目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。そして、安定化された目標長さ平滑値(以降、安定化済み目標長さ平滑値と称する)を目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0063】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ安定化部223より入力された安定化済み目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0064】
次に、この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の動作を、図5のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0065】
ステップS201〜S203、S211〜S212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、S230、および新たに加わったステップS223について説明する。
【0066】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ安定化部223より1サンプリング前の安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L*k-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0067】
【数12】
【0068】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)式の(ハット)Lk-1|k-1が(ハット)L*k-1|k-1に置き換えられた場合に相当する。
【0069】
(ステップS223)目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。目標長さ安定化部223における、目標長さ平滑値に対する安定化処理の方法としては、例えば(14)式で表される一次フィルタを適用する。
【0070】
【数13】
【0071】
(14)式において、(ハット)L*k|kは現サンプリングにおける安定化済み目標長さ平滑値、λkは(15)式によって算出される重み付け係数である。また、(15)式におけるτは時定数であり、事前に設定するパラメータである。
【0072】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0073】
【数14】
【0074】
と、目標長さ安定化部223より入力された安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L*k|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0075】
この発明の実施の形態2によれば、目標重心平滑処理部212より出力される目標重心平滑値の速度ベクトルが不安定になり、その結果、(8)式におけるアスペクト角(ハット)βk-1|k-1の算出結果が不安定となる場合において、目標長さ平滑値を安定化させることができる。
【0076】
この実施の形態においては、目標長さ平滑値に対する安定化処理の方法の例として一次フィルタを適用したが、かかる安定化処理の方法は他のものであっても良い。
【0077】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図7はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0078】
図6に示すこの実施の形態では、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、位置・速度推定部210内に速度安定化部213が加わった場合であり、かつ、目標重心平滑処理部212から目標重心予測処理部211、目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、速度安定化部213を介して行われる場合に相当する。
【0079】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、および目標長さ平滑処理部222の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる目標重心予測処理部211、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、表示部230、および新たに加えられた速度安定化部213の動作について説明する。
【0080】
位置・速度推定部210における目標重心予測処理部211は、速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分、および速度安定化部213によって安定化された目標重心平滑値の速度成分を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。
【0081】
目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との残差である減算部21aの出力を入力し、さらに目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0082】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を速度安定化部213に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0083】
速度安定化部213は、目標重心平滑処理部212より現サンプリングにおける目標重心平滑値を入力し、かかる目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理を行う。そして、目標重心平滑値の位置成分と、安定化された目標重心平滑値の速度成分(以降、安定化済み速度平滑値と称する)を目標重心予測処理部211、目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221、および表示部230に入力する。
【0084】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分および安定化済み速度平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0085】
表示部230は、速度安定化部213より入力された目標重心平滑値の位置成分および安定化済み速度平滑値、および目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0086】
次に、この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の動作を、図7のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0087】
ステップS201〜ステップS203、ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS211、ステップS221、ステップS230、および新たに加わったステップS213について説明する。
【0088】
(ステップS211)目標重心予測処理部211は、速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値(ハット)xk-1|k-1の位置成分
【0089】
【数15】
【0090】
、および安定化済み速度平滑値
【0091】
【数16】
【0092】
を入力し、現サンプリングにおける目標重心予測値
【0093】
【数17】
【0094】
を算出する。この過程は、(6)式において、右辺の(ハット)xk-1|k-1の第4、5、6成分が1サンプリング前の安定化済み速度平滑値
【0095】
【数18】
【0096】
に置き換えられた場合に相当する。
【0097】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値((ハット)xk-1|k-1の目標長さ成分)(ハット)Lk-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分
【0098】
【数19】
【0099】
および安定化済み速度平滑値
【0100】
【数20】
【0101】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)(8)式において、1サンプリング前の目標重心平滑値の速度成分
【0102】
【数21】
【0103】
(x、y成分のみを表示)が安定化済み速度平滑値
【0104】
【数22】
【0105】
(x、y成分のみを表示)に置き換えられた場合に相当する。
【0106】
(ステップS213)速度安定化部213は、目標重心平滑処理部212より現サンプリングにおける目標重心平滑値
【0107】
【数23】
【0108】
を入力し、かかる目標重心平滑値の速度成分
【0109】
【数24】
【0110】
に対する安定化処理を行う。速度安定化部213における、目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理の方法としては、例えば(16)式で表される一次フィルタを適用する。
【0111】
【数25】
【0112】
(16)式において、(ハット・ドット)x*k|kは現サンプリングにおける安定化済み速度平滑値、λkは(17)式によって算出される重み付け係数である。また、(15)式におけるτは時定数であり、事前に設定するパラメータである。
【0113】
(ステップS230)表示部230は、速度安定化部213より入力された目標重心平滑値の位置成分
【0114】
【数26】
【0115】
安定化済み速度平滑値
【0116】
【数27】
【0117】
および目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0118】
この発明の実施の形態3によれば、目標重心平滑処理部212より出力される目標重心平滑値の速度ベクトルが不安定になり、その結果、(8)式におけるアスペクト角(ハット)βk-1|k-1の算出結果が不安定となる場合において、目標長さ平滑値を安定化させることができる。
【0119】
この発明の実施の形態3においては、目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理の方法の例として一次フィルタを適用したが、かかる安定化処理の方法は他のものであっても良い。
【0120】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図9はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0121】
図8は、先の実施の形態2における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ最終値選択部224が加わった場合であり、かつ、目標長さ安定化部223から目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、目標長さ最終値選択部224を介して行われる場合に相当する。
【0122】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および目標重心平滑処理部212の機能は、先の実施の形態2における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、目標長さ安定化部223、表示部230、および新たに加えられた目標長さ最終値選択部224の動作について説明する。
【0123】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ最終値選択部224より目標長さ最終値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0124】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0125】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ安定化部223および目標長さ最終値選択部224に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0126】
目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。そして、安定化済み目標長さ平滑値を目標長さ最終値選択部224に入力する。
【0127】
目標長さ最終値選択部224は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、目標長さ安定化部223より安定化済み目標長さ平滑値を入力する。そして、かかる目標長さ平滑値と安定化済み目標長さ平滑値とを比較し、適合度の高い方の値を目標長さ最終値として目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0128】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ最終値選択部224より入力された目標長さ最終値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0129】
次に、この発明の実施の形態4に係る目標追尾装置の動作を、図9のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0130】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、ステップS230、および新たに加わったステップS224について説明する。
【0131】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ最終値選択部224より1サンプリング前の目標長さ最終値(ハット)L**k-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0132】
【数28】
【0133】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)式の(ハット)Lk-1|k-1が(ハット)L**k-1|k-1に置き換えられた場合に相当する。
【0134】
(ステップS224)目標長さ最終値選択部224は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを入力し、目標長さ安定化部223より現サンプリングにおける安定化済み目標長さ(ハット)L*k|kを入力する。そして、かかる(ハット)Lk|kと(ハット)L*k|kとを適切な方法で比較し、適切な方を現サンプリングにおける目標長さ最終値(ハット)L**k|kとして選択し、目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0135】
ステップS224において(ハット)Lk|kと(ハット)L*k|kとを比較し、適切な方を選択する手段として、例えば、1サンプリング前の目標長さ最終値(ハット)L**k-1|k-1との差が小さい方を、現サンプリングにおける目標長さ最終値(ハット)L**k|kとして採用する方法を適用する。
【0136】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0137】
【数29】
【0138】
と、目標長さ最終値選択部224より入力された安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L**k|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0139】
この発明の実施の形態4によれば、先の実施の形態2の構成に対して、最終的に出力される目標長さ平滑値を適正化することができる。
【0140】
この実施の形態4においては、目標長さ最終値選択部224において適切な値を選択する手段の例として、目標長さ平滑値と安定化済み目標長さ平滑値のうち1サンプリング前の目標長さ最終値との差が小さい方を採用する方法を適用したが、かかる選択手段は他のものであっても良い。
【0141】
実施の形態5.
図10はこの発明の実施の形態5による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図11はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0142】
図10は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ補間部225が加わった場合であり、かつ、信号処理部202から目標長さ補間部225を介して目標長さ平滑処理部222へ入力され、目標長さ平滑処理部222からの出力先として目標長さ補間部225が加わっている場合に相当する。
【0143】
アンテナ/送受信系201、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、および表示部230の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、信号処理部202、目標長さ平滑処理部222、および新たに加えられた目標長さ補間部225の動作について説明する。
【0144】
信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値を生成し、目標レンジビン数を算出する。そして、信号処理部202は、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部203に入力し、目標レンジビン数を目標長さ補間部225に入力する。
【0145】
目標長さ補間部225は、目標長さ平滑処理部222よりサンプリング毎に目標長さ平滑値を入力し、かかるサンプリング毎の目標長さ平滑値に基づく目標長さ補間値を算出する。目標長さ補間部225は、信号処理部202より入力された目標レンジビン数に応じて、下記の機能を担う。
【0146】
目標長さ補間部225は、目標レンジビン数が1となった場合、信号処理部202より入力された目標レンジビン数を、上記で算出された目標長さ補間値に基づく値に置き換えて出力する。目標レンジビン数が2以上の場合は、信号処理部202より入力された目標レンジビン数をそのまま出力する。
【0147】
目標長さ平滑処理部222は、目標長さ補間部225からの現サンプリングにおける目標レンジビン数(信号処理部202より入力された目標レンジビン数が1の場合は、目標長さ補間値に基づく値)と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0148】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221、目標長さ補間部225、および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0149】
次に、この発明の実施の形態5に係る目標追尾装置の動作を、図11のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0150】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS222、および新たに加わったステップS225a、ステップS225b、ステップS225cについて説明する。
【0151】
(ステップS225a)目標長さ補間部225は、信号処理部202より入力されたレンジビン数no,kが1の場合、ステップS225bの処理(no,k=1の側のフロー)に進む。信号処理部202より入力されたレンジビン数no,kが2以上の場合は、かかるレンジビン数をそのまま目標長さ予測処理部221側に入力し、ステップS221の処理(no,k≧2の側のフロー)に進む。すなわちそのままの目標レンジビン数が出力されて、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222が動作する。
【0152】
(ステップS225b)目標長さ補間部225は、no,k=1の時、1サンプリング前までのサンプリング毎の目標長さ平滑値(ハット)Li|i(i=1, …,k-1)に基づく目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1からレンジビン数補間値(オーバーバー)no,kを算出し、ステップS221の処理に進む。上記のレンジビン数補間値(オーバーバー)no,kは、例えば(18)式のように算出する。
【0153】
【数30】
【0154】
上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1の算出方法については、(ステップS225c)の説明において述べる。
【0155】
(ステップS222)目標長さ平滑処理部222は、目標長さ補間部225からの現サンプリングにおける目標レンジビン数補間値(オーバーバー)no,k(目標レンジビン数が1の場合)または目標レンジビン数観測値no,k(目標レンジビン数が2以上の場合)と目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値nk|k-1との残差(減算部22aの出力)を入力し、目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。そしてこれらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、カルマンフィルタアルゴリズムに従い、現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|k、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。
【0156】
上記のステップS222の過程は、(10)〜(13)式のうち、(10)式に入力される観測ベクトルzkの第4成分が、信号処理部202で算出される目標レンジビン数no,kに応じて、(19)式のように変化する場合に相当する。
【0157】
【数31】
【0158】
(ステップS225c)目標長さ補間部225は、目標長さ平滑処理部222より入力されたサンプリング毎の目標長さ平滑値(ハット)Lk|kに基づき、目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1を算出する。上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1としては、例えば(20)式のように、第1サンプリングから最新サンプリングまでの目標長さ平滑値の平均値を採用する。
【0159】
【数32】
【0160】
また、上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1としては、(21)式のように、最新サンプリングまでのMサンプリング分の目標長さ平滑値の平均値を採用しても良い。
【0161】
【数33】
【0162】
この発明の実施の形態5によれば、先の実施の形態1の構成において、アンテナ/送受信系201で得られる受信電力の変化が大きくなること等が原因で、目標レンジビン数が1となった場合に対して、目標長さ推定の安定性を確保することができる。
【0163】
この発明の実施の形態5では、目標長さ補間部225における目標長さ補間値の算出方法の例として、過去の目標長さ平滑値の平均値を採用する方法を2通り挙げたが、かかる目標長さ補間値の算出方法は、他のものであっても良い。
【0164】
実施の形態6.
図12はこの発明の実施の形態6による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図13はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0165】
図12は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ予測値補正部226が加わった場合であり、かつ、目標重心平滑処理部212から目標長さ予測処理部221への入力、および目標長さ平滑処理部222から目標長さ予測処理部221への入力が目標長さ予測値補正部226を介して行われる場合に相当する。
【0166】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および表示部230の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、および新たに加えられた目標長さ予測値補正部226の動作について説明する。
【0167】
目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との残差である減算部21aの出力を入力し、目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0168】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を目標重心予測処理部211、表示部230、および目標長さ予測値補正部226に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0169】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0170】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測値補正部226および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0171】
目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値から計算される1サンプリング前のアスペクト角平滑値、および目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値を記憶する。そして、目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より目標長さ予測値補正部226に入力された1サンプリング前の目標重心平滑値に応じて、下記のように機能する。
【0172】
1サンプリング前のアスペクト平滑値が直角から一定値以内の場合、目標長さ予測値補正部226は、1サンプリング前のアスペクト角平滑値を自身が記憶している2サンプリング前のアスペクト角平滑値で置き換え、1サンプリング前の目標長さ平滑値を2サンプリング前の目標長さ平滑値で置き換える。そして、上記の2サンプリング前のアスペクト角平滑値と2サンプリング前の目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221に入力する。
【0173】
1サンプリング前のアスペクト平滑値が直角から一定値の範囲を超えている場合、目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212から入力された1サンプリング前のアスペクト角平滑値と、目標長さ平滑処理部222から入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値をそのまま目標長さ予測処理部221に入力する。
【0174】
目標長さ予測処理部221は、目標長さ予測値補正部226より2サンプリング前のアスペクト平滑値と目標長さ平滑値(1サンプリング前のアスペクト角平滑値が上述の直角から一定値以内の場合)、または1サンプリング前のアスペクト平滑値と目標長さ平滑値(1サンプリング前のアスペクト角平滑値が上述の直角から一定値の範囲を超えた値である場合)を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0175】
次に、この発明の実施の形態6に係る目標追尾装置の動作を、図13のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0176】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、および新たに加わったステップS226a、ステップS226b、ステップS226cについて説明する。
【0177】
(ステップS226a)目標長さ予測値補正部226における処理は、目標重心平滑処理部212より入力される1サンプリング前のアスペクト角が
π/2−Δβ≦(ハット)βk−1|k−1≦π/2+Δβ
または
−π/2−Δβ≦(ハット)βk−1|k−1≦−π/2+Δβ
である場合、ステップS226b(「直角から一定値以内」のフロー)へ進む。目標重心平滑処理部212より入力される1サンプリング前のアスペクト角が上記の範囲外の場合、ステップS221(「直角から一定値の範囲外」のフロー)へ進む。なお、上記において、Δβは事前に定めるパラメータである。
【0178】
(ステップS226b)目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1を2サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−2|k−2で置き換える。また、目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を2サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−2|k−2でおきかえる。そして、上記、(ハット)βk−2|k−2、(ハット)Lk−2|k−2の値を目標長さ予測処理部221に入力する。
【0179】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、ステップS226aから当処理へ直接進んできた場合、目標長さ予測値補正部226より1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1と1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を入力し、これらの入力に基づき、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0180】
ステップS226aからステップS226bを経て当処理へ進んできた場合は、目標長さ予測値補正部226より2サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−2|k−2と2サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−2|k−2を入力し、これらの入力に基づき、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0181】
上記ステップS221の過程は、ステップS226aからステップS221へ直接進んできた場合には(7)式で表され、ステップS226aからステップS226bを経てステップS221へ進んできた場合には(7)式を(22)式で置き換えた場合に相当する。
【0182】
【数34】
【0183】
(ステップS226c)目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値から計算される1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1、および目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を記憶する。
【0184】
この発明の実施の形態6によれば、先の実施の形態1の構成に対し、アスペクト角平滑値が直角となって(7)式右辺の計算結果が0となること、また、アスペクト平滑値が直角に非常に近い値となって(7)式右辺の計算結果が不当に小さい値となることを回避し、目標長さ推定の安定性を確保することができる。
【0185】
この発明の実施の形態6においては、アスペクト角平滑値が直角に近い値となった場合の、目標長さ予測値補正方法として、2サンプリング前のアスペクト角平滑値と目標長さ平滑値を用いて目標レンジビン数予測値を算出する方法を示したが、この補正方法は他のものであっても良い。
【0186】
実施の形態7.
図14はこの発明の実施の形態7による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図15はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0187】
この発明の実施の形態7における目標追尾装置は、アンテナ/送受信系201、信号処理部302、同一目標判定部303、観測値重心算出部304、位置・速度推定部310、目標長さ推定部320、表示部230を備える。位置・速度推定部310は、内部に目標重心予測処理部311と目標重心平滑処理部312と減算部31aを備える。目標長さ推定部320は、内部に目標長さ予測処理部321と目標長さ平滑処理部322と減算部32aを備える。アンテナ/送受信系201、および表示部230の機能は、実施の形態1における構成と同一である。
【0188】
信号処理部302は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値(目標レンジビン観測値)を生成する。そして、生成した観測値を同一目標判定部303に入力する。
【0189】
同一目標判定部303は信号処理部302より目標レンジビン観測値を入力し、入力された各目標レンジビンに対して同一目標のものであるかを判定する処理を行う。同一目標判定部303は、入力された目標レンジビン観測値が同一目標のものであるか、同一目標のものでないかによって、下記のように機能する。
【0190】
入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定された場合には、同一目標判定部303は、かかる複数の目標レンジビンに同一目標フラグを付与し、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力する。また、上記の同一目標フラグを付与された目標レンジビン数を目標長さ推定部320に入力する。
【0191】
入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものでないと判定された場合には、同一目標判定部303は、かかる複数の目標レンジビンを個別の目標と見なし、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力する。また、この場合、同一目標判定部303から目標長さ推定部320への入力は行われない。
【0192】
観測値重心算出部304は、同一目標判定部303より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されているか、同一目標フラグが付与されていないかで、下記のように機能する。
【0193】
同一目標判定部より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されている場合、観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されている目標レンジビンの重心を算出する。そして、算出された観測値重心を位置・速度推定部310に入力する。
【0194】
同一目標判定部より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されていない場合、観測値重心算出部304は、入力された目標レンジビン観測値それぞれを目標重心として、位置・速度推定部310に入力する。
【0195】
目標重心予測処理部311は、目標重心平滑処理部312より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。
【0196】
目標重心平滑処理部312は、観測値重心算出部304からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部311からの目標重心予測値との残差である減算部31aの出力を入力し、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には、目標長さ推定部320の目標長さ平滑処理部322より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0197】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部312は現サンプリングにおける目標重心平滑値、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。
【0198】
さらに、目標重心平滑処理部312は算出された目標重心平滑値を表示部230、目標重心予測処理部311に入力し、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には目標重心平滑値を目標長さ推定部320の目標長さ予測処理部321に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部322に入力する。
【0199】
目標長さ予測処理部321、目標長さ平滑処理部322は、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には、それぞれ実施の形態1における目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222と同一の機能を有する。上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものでないと判断されている場合は、目標長さ予測処理部321および目標長さ平滑処理部322は動作しない。
【0200】
次に、この発明の実施の形態7に係る目標追尾装置の動作を、図15のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0201】
ステップS201およびステップS230の動作は、実施の形態1における構成と同一である。
【0202】
(ステップS302)信号処理部302は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、時刻kにおいて目標を観測しているno,k個のレンジビンそれぞれについて目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を生成する。そして、信号処理部302は、目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を同一目標判定部303に入力する。
【0203】
(ステップS303a)同一目標判定部303は信号処理部302より目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を入力し、かかる各目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]Tに対して同一目標のものであるかを判定する処理を行う。同一目標であると判定した目標レンジビン観測値については、ステップS303bの処理(「Yes」の側のフロー)に進む。同一目標ではないと判定した目標レンジビン観測値については、各目標レンジビン観測値を個別の目標として扱い、ステップS304aの処理(「No」の側のフロー)に進む。
【0204】
(ステップS303b)同一目標判定部303は、信号処理部302より入力された目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)のうち、ステップS303aで同一目標と判定された目標レンジビンに同一目標フラグを付与する。例えば、上記目標レンジビン観測値のうち、m1番目からm2番目までの観測値が同一目標であると判定されている場合には、[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)のように同一目標フラグを付与する。そして、上記の同一目標フラグが付与された目標レンジビン観測値[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)を観測値重心算出部304に入力し、ステップS304に進む。また、上記の同一目標フラグを付与された目標レンジビン数(上記の目標の場合は、m2−m1−1)を目標長さ推定部320に入力し、ステップS321に進む。
【0205】
なお、上記では観測値のうちm1番目からm2番目までの一組が同一目標と判定された状況を例として数式を示しているが、同一目標と判定される観測値が複数組存在する場合には、かかる観測値の組毎に同一目標フラグが付与された目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力し、対応する目標レンジビン数を目標長さ推定部320に入力すれば良い。
【0206】
(ステップS304a)観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されていない目標レンジビン観測値(上記ステップS303bにおいてm1番目からm2番目までの観測値が同一目標と判定されている場合は、それ以外の観測値である[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k))のそれぞれを観測値重心[xo,i,G yo,i,G zo,i,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)とする。
【0207】
(ステップS304b)観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されている目標レンジビン観測値[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)の重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tを算出する。そして、観測値重心算出部304は算出された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tを位置・速度推定部310に入力する。
【0208】
(ステップS311)実施の形態1におけるステップS211と同様の処理により、ステップS304aを経た、同一目標フラグが付与されていない観測値重心[xo,i,G yo,i,G zo,i,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)に対応する目標重心予測値、およびステップS304bを経た、同一目標フラグが付与された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する目標重心予測値を算出する。
【0209】
(ステップS321)実施の形態1におけるステップS221と同様の処理により、ステップS303bを経た観測値に対応した、目標長さ予測値を算出する。
【0210】
ステップS311およびステップS321の過程は、下記(23)(24)式または下記(25)〜(28)式で表される。
【0211】
ステップS304aを経た、個別の目標と判定されている観測値に対応する予測値算出の処理は、それぞれの目標について目標長さを1レンジビン分(ΔR)と固定して上記(6)(9)式を適用する場合に相当し、下記(23)(24)式で表される。この場合、ステップS321にフローが進まないため、上記(7)(8)式に相当する処理は行わない。
【0212】
【数35】
【0213】
ステップS304bを経た、同一目標フラグ付きの観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する予測値の算出には上記(6)〜(9)を適用し、同一目標フラグの表示を考慮して下記(25)〜(28)式で表される。
【0214】
【数36】
【0215】
なお、ステップS303bで同一目標フラグを付与された観測値が複数組存在する場合は、かかる組の観測値重心に対応する予測値ベクトル毎に上記(25)〜(28)式を適用すれば良い。
【0216】
(ステップS312)実施の形態1におけるステップS212と同様の処理により、ステップS304aを経た、同一目標フラグが付与されていない観測値重心[x(i)o,G y(i)o,G z(i)o,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)に対応する目標重心平滑値、およびステップS304bを経た、同一目標フラグが付与された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する目標重心平滑値を算出する。
【0217】
(ステップS322)実施の形態1におけるステップS322と同様の処理により、ステップS303bを経た観測値に対応した、目標長さ平滑値を算出する。ステップS312およびステップS322の過程は、下記(29)〜(32)式および下記(33)〜(36)式で表される。
【0218】
ステップS304aを経た、個別の目標と判定されている観測値に対しては、位置・速度についてのみ平滑値を算出する。これは、それぞれの目標について目標長さ平滑値を1レンジビン分(ΔR)と固定して上記(10)〜(13)式を適用する場合に相当し、下記(29)〜(32)式で表される。
【0219】
【数37】
【0220】
この場合、ステップS321、ステップS322にフローが進まないため、目標長さ推定部320が動作しない。従って、位置・速度平滑値と目標長さ平滑値が相関しないため、(32)式における観測行列Hkの第4行の構成が上記(13)式と異なっている。
【0221】
ステップS304bを経た、同一目標フラグ付きの観測値重心[x(m)o,G y(m)o,G z(m)o,G] Tに対応する位置・速度平滑値算出には上記(10)〜(13)式を適用し、同一目標フラグの表示を考慮して下記(33)〜(36)式で表される。
【0222】
【数38】
【0223】
なお、ステップS303bで同一目標フラグを付与された観測値が複数組存在する場合は、かかる組の観測値重心に対応する平滑値ベクトル毎に上記(33)〜(36)式を適用すれば良い。
【0224】
この発明の実施の形態7によれば、信号処理部より得られた複数の観測値が同一目標のものであるかを判定し、かかる観測値が同一目標のものであると判定された場合には実施の形態1と同様の処理を行っている。
また、同一目標のものでないと判定された場合には、かかる観測値を個別の目標のものとして扱い、各目標の位置・速度のみを推定している。
上記のような処理により、実施の形態1における目標追尾装置に対し、複数の観測値を用いて目標の位置、速度および目標長さを推定する過程に異なる目標から得られた観測値を誤って用いることを防止するという効果を奏する。
また、これにより、実施の形態1における目標追尾装置を複数の目標に対する位置、速度および目標長さの推定に対応させ、かつ目標の位置、速度および目標長さの推定をより安定的に行うことができるという効果を奏する。
【0225】
この発明の実施の形態7の同一目標判定部303における同一目標判定処理の方法としては、いかなる方法を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】この発明の実施の形態1による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による目標追尾装置のレーダセンサと目標が2次元のxy平面内にある場合の目標の状態を推定する状況を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態2による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態4による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態5による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態5による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態6による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態6による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態7による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】この発明の実施の形態7による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図16】従来の目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図17】従来の目標追尾装置での目標長さを推定する状況を説明するための図である。
【符号の説明】
【0227】
21a,22a,31a,32a 減算部、201 アンテナ/送受信系、202,302 信号処理部、203,304 観測値重心算出部、210,310 位置・速度推定部、211,311 目標重心予測処理部、212,312 目標重心平滑処理部、213 速度安定化部、220,320 目標長さ推定部、221,321 目標長さ予測処理部、222,322 目標長さ平滑処理部、223 目標長さ安定化部、224 目標長さ最終値選択部、225 目標長さ補間部、226 目標長さ予測値補正部、230 表示部、303 同一目標判定部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、観測装置が観測した目標を追尾する目標追尾装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分解能のレーダセンサによる観測情報に基づき、目標の位置、速度、および目標の長さを推定する従来技術による目標追尾装置の構成の一例を図16に、また、目標の長さを推定する状況をxy平面内で表した例を図17に示す。
例えば、レーダセンサとしてレンジ方向に高い分解能を持つレーダを用いる場合、目標が複数のレンジビンで観測される可能性がある。この特徴を利用し、次の手順で目標の位置、速度、および目標の長さを推定する。
【0003】
アンテナ/送受信系101は、目標の観測情報のうち、位置情報を位置・速度推定部102に入力し、目標観測レンジビン数を長さ補正手段103に入力する。
位置・速度推定部102は、アンテナ/送受信系より入力されたた目標の位置情報に基づき、目標の位置と速度を推定する。また、目標の位置・速度の推定値を長さ補正手段103に入力する。
【0004】
長さ補正手段103は、アンテナ送受信系101より入力された目標観測レンジビン数に基づき、目標レンジビン長L'を算出する。また、位置・速度推定部102より入力された目標の位置・速度の推定値に基づき、レーダ位置に対する目標の方位角θと、目標の進行方向Ψ(図17のxy平面ではy軸と目標の速度ベクトルのなす角)、および方位角θに対するアスペクト角β(図17のxy平面では目標の速度ベクトルとレーダセンサのレンジ方向のなす角)を算出する。そして、(1)式により、目標の長さを推定する。
【0005】
【数1】
【0006】
【特許文献1】特開2000−98028号公報(請求項7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来の目標追尾装置では、高分解能のレーダが観測する目標のレンジビン数は、サンプリング毎に絶えず変化する可能性があり、不安定である。また、一般的に、位置・速度推定部によって推定される目標速度の推定値は不安定である。従って、従来技術の構成では、不安定な目標レンジビン長と目標速度の推定値を用い、(1)式により直接目標の長さを推定している。このため、目標の長さの推定値が安定しないという課題があった。
【0008】
この発明は、例えば、上記のような課題を解決するためになされたものであり、高分解能のレーダセンサを用いて目標の位置、速度、および目標の長さを推定する場合において、目標の長さを安定的に推定する目標追尾装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、高分解能のレーダセンサにより、1目標につき複数得られる観測値の時系列データに基づいて、前記目標の位置、速度と同時に目標長さを推定する目標追尾装置であって、前記目標の位置、速度の運動諸元を推定する位置・速度推定用追尾フィルタである位置・速度推定部と、前記目標の目標長さを推定する目標長さ推定用追尾フィルタである目標長さ推定部と、を備え、前記位置・速度推定用部と前記目標長さ推定部の間で前記目標の位置、速度と目標長さを推定する過程で前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させることを特徴とする目標追尾装置にある。
【0010】
この発明にかかる目標追尾装置は、高分解能のレーダセンサによる観測値に基づき、目標の位置・速度および目標の長さの時系列データから、目標の位置・速度とともに目標の長さを推定する。このため、目標の位置・速度および目標の長さの時系列データから目標の位置・速度を推定する追尾フィルタを有する位置・速度推定部を備えるのに加え、目標の長さを推定する追尾フィルタを有する目標長さ推定部を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明にかかる目標追尾装置によれば、高分解能のレーダセンサによって目標を観測する場合に、目標の位置・速度とともに目標の長さを安定的に推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下この発明を各実施の形態に従って説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。図1において目標追尾装置は、アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、位置・速度推定部210、目標長さ推定部220、表示部230を備える。位置・速度推定部210は、内部に目標重心予測処理部211と、目標重心平滑処理部212と、減算部21aを備える。目標長さ推定部220は、内部に目標長さ予測処理部221と、目標長さ平滑処理部222と減算部22aを備える。
【0013】
次に、各構成要素の機能について説明する。アンテナ/送受信系201は、観測結果であるビデオ信号を信号処理部202に入力する。
【0014】
信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値を生成し、目標を観測しているレンジビンの数を算出する。そして、信号処理部202は、目標を観測している各レンジビンの観測値(以降、「目標レンジビン観測値」と称する)を観測値重心算出部203に入力し、目標を観測しているレンジビンの数(以降、目標レンジビン数と称する)を目標長さ推定部220に入力する。
【0015】
観測値重心算出部203は、信号処理部202より入力された全ての目標レンジビン観測値(位置)に基づき、観測値重心を算出する。そして、観測値重心算出部203は算出された観測値重心を位置・速度推定部210に入力する。
【0016】
位置・速度推定部210における目標重心予測処理部211は、目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。減算部21aは、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との差(残差)を求める。
【0017】
目標重心平滑処理部212は減算部21aからの差と、目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を表示部230、目標重心予測処理部211、および目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0018】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。減算部22aは、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との差(残差)を求める。
【0019】
目標長さ平滑処理部222は、減算部22aからの差と、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212から目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0020】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0021】
図2はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャート、図3はレーダセンサと目標が2次元のxy平面内にある場合のこの実施の形態の目標追尾装置により目標の状態を推定する状況を説明するための図であり、以下、図および数式を用いて動作を説明する。
【0022】
(ステップS201)アンテナ/送受信系201は、観測結果であるビデオ信号を信号処理部202に入力する。
【0023】
(ステップS202)信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、時刻kにおいて目標を観測しているno,k個のレンジビンそれぞれについて目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を生成する。なお、ベクトル[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]Tにおける上付きの添え字Tは、ベクトルおよび行列の転置を表す。また、この表記は以下でも同様である。そして、信号処理部202は、目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を観測値重心算出部203に入力し、目標レンジビンの数no,kを目標長さ推定部220に入力する。
【0024】
(ステップS203)観測値重心算出部203は、信号処理部202より入力された目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)に基づき、観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tを算出する。そして、観測値重心算出部203は算出された観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tを位置・速度推定部210に入力する。
【0025】
位置・速度推定部210と目標長さ推定部220においては、時刻tkにおける目標の状態を、(2)式のように3次元の目標重心位置とそれらの速度成分、および目標長さLkで構成される7次元の状態ベクトルを用いて表す。また、目標の運動モデルを(3)式のように定義する。
【0026】
【数2】
【0027】
なお、(3)式の第1式において、Φkは状態遷移行列、Δtはサンプリング間隔を表す。また、wkは平均0、共分散Qkの駆動雑音ベクトルである。また(3)式の第2式において、I3×3は3次の単位行列、O3×3は3行3列の零行列を表す。
【0028】
位置・速度推定部210と目標長さ推定部220においては、時刻tkにおける目標の観測ベクトルを(4)式のように、3次元の観測値重心および目標レンジビン数no,kの4次元ベクトルで構成する。また、観測モデルを(5)式のように定義する。
【0029】
【数3】
【0030】
(5)式の第1式において、vkは平均0、共分散のRkの観測雑音ベクトルである。(5)式の第2式において、βは図3に示すアスペクト角、ΔRはレーダセンサにおける1レンジビンの長さを表す。
【0031】
(ステップS211)目標重心予測処理部211は、目標重心平滑処理部212より1サンプリング前(時刻tk-1)の目標重心平滑値((ハット)xk-1|k-1の位置・速度成分)
【0032】
【数4】
【0033】
を入力し、現サンプリング(時刻tk)における目標重心予測値
【0034】
【数5】
【0035】
を算出する。
【0036】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値((ハット)xk-1|k-1の目標長さ成分)(ハット)Lk-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0037】
【数6】
【0038】
を入力する。
そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0039】
ステップS211、S221の過程は、(6)〜(9)式で表される。
【0040】
【数7】
【0041】
(7)式において、(ハット)βk-1|k-1は1サンプリング前における方位角に対するアスペクト角の平滑値、(ハット)θk-1|k-1は1サンプリング前における方位角の平滑値、(ハット)Ψk-1|k-1は1サンプリング前における進行方向の平滑値である。
(ハット)βk-1|k-1、(ハット)θk-1|k-1、(ハット)Ψk-1|k-1は、1サンプリング前の目標重心平滑値の位置および速度成分から、それぞれ(8)式のように算出される。(9)式において、Pk|k-1は予測誤差共分散行列である。
【0042】
(ステップS212)目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心[xo,G yo,G zo,G] Tと、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値
【0043】
【数8】
【0044】
との残差を入力し、目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値((ハット)xk|kの位置・速度成分)
【0045】
【数9】
【0046】
および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。
【0047】
(ステップS222)目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値no,kと、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値nk|k-1との残差を入力し、目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、カルマンフィルタアルゴリズムに従い、現サンプリングにおける目標長さ平滑値((ハット)xk|kの目標長さ成分)(ハット)Lk|k、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。
【0048】
ステップS212およびステップS222の過程は、(10)〜(13)で表される。
【0049】
【数10】
【0050】
(10)式において、Kkはカルマンフィルタのゲイン行列である。
(11)式において、Pk|kは予測誤差共分散行列である。
(13)式で定義される行列Hkは、観測行列である。
また、Hkの4行目は、目標重心位置・速度と目標レンジビン数との相関情報、および目標長さと目標レンジビン数との相関情報を表す。
【0051】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0052】
【数11】
【0053】
と、目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0054】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、高分解能のレーダセンサによる観測値重心と目標レンジビン数の時系列データに基づき、目標重心位置・速度と目標レンジビン数との相関、および目標長さと目標レンジビン数との相関を考慮しながら、目標状態である目標の位置、速度、および目標長さを推定している。このような構成により、目標の位置、速度と同時に目標長さを安定的に推定することができる。
【0055】
この発明の実施の形態1では、レーダセンサと目標が図3のように2次元のxy平面内にある場合を例として、高分解能のレーダセンサによる観測値に基づいて目標の位置、速度、目標長さを推定しているが、レーダセンサと目標の位置関係は3次元空間であっても良い。その場合、上記(7)(8)式、において、レーダセンサにより得られる仰角に対するアスペクト角、およびz軸方向の位置・速度成分を考慮すれば良い。また、この発明の実施の形態1では、観測値重心算出部203からの出力、位置・速度推定部210および目標長さ推定部220で用いる座標系として直交座標を用いたが、これは極座標であっても良い。これらは、以下の実施の形態においても同様である。
【0056】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図5はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0057】
図4に示すこの実施の形態では、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ安定化部223が加わった場合であり、かつ、目標長さ平滑処理部222から目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、目標長さ安定化部223を介して行われる場合に相当する。
【0058】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および目標重心平滑処理部212の機能は、上記実施の形態1と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、表示部230、および新たに加えられた目標長さ安定化部223の動作について説明する。
【0059】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ安定化部223より1サンプリング前の安定化された目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0060】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、さらに位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0061】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ安定化部223に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0062】
目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。そして、安定化された目標長さ平滑値(以降、安定化済み目標長さ平滑値と称する)を目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0063】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ安定化部223より入力された安定化済み目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0064】
次に、この発明の実施の形態2に係る目標追尾装置の動作を、図5のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0065】
ステップS201〜S203、S211〜S212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、S230、および新たに加わったステップS223について説明する。
【0066】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ安定化部223より1サンプリング前の安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L*k-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0067】
【数12】
【0068】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)式の(ハット)Lk-1|k-1が(ハット)L*k-1|k-1に置き換えられた場合に相当する。
【0069】
(ステップS223)目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。目標長さ安定化部223における、目標長さ平滑値に対する安定化処理の方法としては、例えば(14)式で表される一次フィルタを適用する。
【0070】
【数13】
【0071】
(14)式において、(ハット)L*k|kは現サンプリングにおける安定化済み目標長さ平滑値、λkは(15)式によって算出される重み付け係数である。また、(15)式におけるτは時定数であり、事前に設定するパラメータである。
【0072】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0073】
【数14】
【0074】
と、目標長さ安定化部223より入力された安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L*k|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0075】
この発明の実施の形態2によれば、目標重心平滑処理部212より出力される目標重心平滑値の速度ベクトルが不安定になり、その結果、(8)式におけるアスペクト角(ハット)βk-1|k-1の算出結果が不安定となる場合において、目標長さ平滑値を安定化させることができる。
【0076】
この実施の形態においては、目標長さ平滑値に対する安定化処理の方法の例として一次フィルタを適用したが、かかる安定化処理の方法は他のものであっても良い。
【0077】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図7はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0078】
図6に示すこの実施の形態では、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、位置・速度推定部210内に速度安定化部213が加わった場合であり、かつ、目標重心平滑処理部212から目標重心予測処理部211、目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、速度安定化部213を介して行われる場合に相当する。
【0079】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、および目標長さ平滑処理部222の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる目標重心予測処理部211、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、表示部230、および新たに加えられた速度安定化部213の動作について説明する。
【0080】
位置・速度推定部210における目標重心予測処理部211は、速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分、および速度安定化部213によって安定化された目標重心平滑値の速度成分を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。
【0081】
目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との残差である減算部21aの出力を入力し、さらに目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0082】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を速度安定化部213に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0083】
速度安定化部213は、目標重心平滑処理部212より現サンプリングにおける目標重心平滑値を入力し、かかる目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理を行う。そして、目標重心平滑値の位置成分と、安定化された目標重心平滑値の速度成分(以降、安定化済み速度平滑値と称する)を目標重心予測処理部211、目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221、および表示部230に入力する。
【0084】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値を入力し、位置・速度推定部210の速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分および安定化済み速度平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0085】
表示部230は、速度安定化部213より入力された目標重心平滑値の位置成分および安定化済み速度平滑値、および目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0086】
次に、この発明の実施の形態3に係る目標追尾装置の動作を、図7のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0087】
ステップS201〜ステップS203、ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS211、ステップS221、ステップS230、および新たに加わったステップS213について説明する。
【0088】
(ステップS211)目標重心予測処理部211は、速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値(ハット)xk-1|k-1の位置成分
【0089】
【数15】
【0090】
、および安定化済み速度平滑値
【0091】
【数16】
【0092】
を入力し、現サンプリングにおける目標重心予測値
【0093】
【数17】
【0094】
を算出する。この過程は、(6)式において、右辺の(ハット)xk-1|k-1の第4、5、6成分が1サンプリング前の安定化済み速度平滑値
【0095】
【数18】
【0096】
に置き換えられた場合に相当する。
【0097】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ平滑処理部222より1サンプリング前の目標長さ平滑値((ハット)xk-1|k-1の目標長さ成分)(ハット)Lk-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の速度安定化部213より1サンプリング前の目標重心平滑値の位置成分
【0098】
【数19】
【0099】
および安定化済み速度平滑値
【0100】
【数20】
【0101】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)(8)式において、1サンプリング前の目標重心平滑値の速度成分
【0102】
【数21】
【0103】
(x、y成分のみを表示)が安定化済み速度平滑値
【0104】
【数22】
【0105】
(x、y成分のみを表示)に置き換えられた場合に相当する。
【0106】
(ステップS213)速度安定化部213は、目標重心平滑処理部212より現サンプリングにおける目標重心平滑値
【0107】
【数23】
【0108】
を入力し、かかる目標重心平滑値の速度成分
【0109】
【数24】
【0110】
に対する安定化処理を行う。速度安定化部213における、目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理の方法としては、例えば(16)式で表される一次フィルタを適用する。
【0111】
【数25】
【0112】
(16)式において、(ハット・ドット)x*k|kは現サンプリングにおける安定化済み速度平滑値、λkは(17)式によって算出される重み付け係数である。また、(15)式におけるτは時定数であり、事前に設定するパラメータである。
【0113】
(ステップS230)表示部230は、速度安定化部213より入力された目標重心平滑値の位置成分
【0114】
【数26】
【0115】
安定化済み速度平滑値
【0116】
【数27】
【0117】
および目標長さ平滑処理部222より入力された目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0118】
この発明の実施の形態3によれば、目標重心平滑処理部212より出力される目標重心平滑値の速度ベクトルが不安定になり、その結果、(8)式におけるアスペクト角(ハット)βk-1|k-1の算出結果が不安定となる場合において、目標長さ平滑値を安定化させることができる。
【0119】
この発明の実施の形態3においては、目標重心平滑値の速度成分に対する安定化処理の方法の例として一次フィルタを適用したが、かかる安定化処理の方法は他のものであっても良い。
【0120】
実施の形態4.
図8はこの発明の実施の形態4による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図9はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0121】
図8は、先の実施の形態2における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ最終値選択部224が加わった場合であり、かつ、目標長さ安定化部223から目標長さ予測処理部221および表示部230への入力が、目標長さ最終値選択部224を介して行われる場合に相当する。
【0122】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および目標重心平滑処理部212の機能は、先の実施の形態2における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、目標長さ安定化部223、表示部230、および新たに加えられた目標長さ最終値選択部224の動作について説明する。
【0123】
目標長さ推定部220の目標長さ予測処理部221は、目標長さ最終値選択部224より目標長さ最終値を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0124】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0125】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ安定化部223および目標長さ最終値選択部224に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0126】
目標長さ安定化部223は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、かかる目標長さ平滑値に対する安定化処理を行う。そして、安定化済み目標長さ平滑値を目標長さ最終値選択部224に入力する。
【0127】
目標長さ最終値選択部224は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値を入力し、目標長さ安定化部223より安定化済み目標長さ平滑値を入力する。そして、かかる目標長さ平滑値と安定化済み目標長さ平滑値とを比較し、適合度の高い方の値を目標長さ最終値として目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0128】
表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値と、目標長さ最終値選択部224より入力された目標長さ最終値を、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0129】
次に、この発明の実施の形態4に係る目標追尾装置の動作を、図9のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0130】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、ステップS230、および新たに加わったステップS224について説明する。
【0131】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、目標長さ最終値選択部224より1サンプリング前の目標長さ最終値(ハット)L**k-1|k-1を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より1サンプリング前の目標重心平滑値
【0132】
【数28】
【0133】
を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。この過程は、(7)式の(ハット)Lk-1|k-1が(ハット)L**k-1|k-1に置き換えられた場合に相当する。
【0134】
(ステップS224)目標長さ最終値選択部224は、目標長さ平滑処理部222より現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|kを入力し、目標長さ安定化部223より現サンプリングにおける安定化済み目標長さ(ハット)L*k|kを入力する。そして、かかる(ハット)Lk|kと(ハット)L*k|kとを適切な方法で比較し、適切な方を現サンプリングにおける目標長さ最終値(ハット)L**k|kとして選択し、目標長さ予測処理部221および表示部230に入力する。
【0135】
ステップS224において(ハット)Lk|kと(ハット)L*k|kとを比較し、適切な方を選択する手段として、例えば、1サンプリング前の目標長さ最終値(ハット)L**k-1|k-1との差が小さい方を、現サンプリングにおける目標長さ最終値(ハット)L**k|kとして採用する方法を適用する。
【0136】
(ステップS230)表示部230は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値
【0137】
【数29】
【0138】
と、目標長さ最終値選択部224より入力された安定化済み目標長さ平滑値(ハット)L**k|kを、現サンプリングにおける目標状態の推定値として表示する。
【0139】
この発明の実施の形態4によれば、先の実施の形態2の構成に対して、最終的に出力される目標長さ平滑値を適正化することができる。
【0140】
この実施の形態4においては、目標長さ最終値選択部224において適切な値を選択する手段の例として、目標長さ平滑値と安定化済み目標長さ平滑値のうち1サンプリング前の目標長さ最終値との差が小さい方を採用する方法を適用したが、かかる選択手段は他のものであっても良い。
【0141】
実施の形態5.
図10はこの発明の実施の形態5による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図11はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0142】
図10は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ補間部225が加わった場合であり、かつ、信号処理部202から目標長さ補間部225を介して目標長さ平滑処理部222へ入力され、目標長さ平滑処理部222からの出力先として目標長さ補間部225が加わっている場合に相当する。
【0143】
アンテナ/送受信系201、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、および表示部230の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、信号処理部202、目標長さ平滑処理部222、および新たに加えられた目標長さ補間部225の動作について説明する。
【0144】
信号処理部202は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値を生成し、目標レンジビン数を算出する。そして、信号処理部202は、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部203に入力し、目標レンジビン数を目標長さ補間部225に入力する。
【0145】
目標長さ補間部225は、目標長さ平滑処理部222よりサンプリング毎に目標長さ平滑値を入力し、かかるサンプリング毎の目標長さ平滑値に基づく目標長さ補間値を算出する。目標長さ補間部225は、信号処理部202より入力された目標レンジビン数に応じて、下記の機能を担う。
【0146】
目標長さ補間部225は、目標レンジビン数が1となった場合、信号処理部202より入力された目標レンジビン数を、上記で算出された目標長さ補間値に基づく値に置き換えて出力する。目標レンジビン数が2以上の場合は、信号処理部202より入力された目標レンジビン数をそのまま出力する。
【0147】
目標長さ平滑処理部222は、目標長さ補間部225からの現サンプリングにおける目標レンジビン数(信号処理部202より入力された目標レンジビン数が1の場合は、目標長さ補間値に基づく値)と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0148】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221、目標長さ補間部225、および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0149】
次に、この発明の実施の形態5に係る目標追尾装置の動作を、図11のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0150】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS222、および新たに加わったステップS225a、ステップS225b、ステップS225cについて説明する。
【0151】
(ステップS225a)目標長さ補間部225は、信号処理部202より入力されたレンジビン数no,kが1の場合、ステップS225bの処理(no,k=1の側のフロー)に進む。信号処理部202より入力されたレンジビン数no,kが2以上の場合は、かかるレンジビン数をそのまま目標長さ予測処理部221側に入力し、ステップS221の処理(no,k≧2の側のフロー)に進む。すなわちそのままの目標レンジビン数が出力されて、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222が動作する。
【0152】
(ステップS225b)目標長さ補間部225は、no,k=1の時、1サンプリング前までのサンプリング毎の目標長さ平滑値(ハット)Li|i(i=1, …,k-1)に基づく目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1からレンジビン数補間値(オーバーバー)no,kを算出し、ステップS221の処理に進む。上記のレンジビン数補間値(オーバーバー)no,kは、例えば(18)式のように算出する。
【0153】
【数30】
【0154】
上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1の算出方法については、(ステップS225c)の説明において述べる。
【0155】
(ステップS222)目標長さ平滑処理部222は、目標長さ補間部225からの現サンプリングにおける目標レンジビン数補間値(オーバーバー)no,k(目標レンジビン数が1の場合)または目標レンジビン数観測値no,k(目標レンジビン数が2以上の場合)と目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値nk|k-1との残差(減算部22aの出力)を入力し、目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。そしてこれらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、カルマンフィルタアルゴリズムに従い、現サンプリングにおける目標長さ平滑値(ハット)Lk|k、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。
【0156】
上記のステップS222の過程は、(10)〜(13)式のうち、(10)式に入力される観測ベクトルzkの第4成分が、信号処理部202で算出される目標レンジビン数no,kに応じて、(19)式のように変化する場合に相当する。
【0157】
【数31】
【0158】
(ステップS225c)目標長さ補間部225は、目標長さ平滑処理部222より入力されたサンプリング毎の目標長さ平滑値(ハット)Lk|kに基づき、目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1を算出する。上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1としては、例えば(20)式のように、第1サンプリングから最新サンプリングまでの目標長さ平滑値の平均値を採用する。
【0159】
【数32】
【0160】
また、上記の目標長さ補間値(オーバーバー)Lk-1としては、(21)式のように、最新サンプリングまでのMサンプリング分の目標長さ平滑値の平均値を採用しても良い。
【0161】
【数33】
【0162】
この発明の実施の形態5によれば、先の実施の形態1の構成において、アンテナ/送受信系201で得られる受信電力の変化が大きくなること等が原因で、目標レンジビン数が1となった場合に対して、目標長さ推定の安定性を確保することができる。
【0163】
この発明の実施の形態5では、目標長さ補間部225における目標長さ補間値の算出方法の例として、過去の目標長さ平滑値の平均値を採用する方法を2通り挙げたが、かかる目標長さ補間値の算出方法は、他のものであっても良い。
【0164】
実施の形態6.
図12はこの発明の実施の形態6による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図13はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0165】
図12は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成に対し、目標長さ推定部220内に目標長さ予測値補正部226が加わった場合であり、かつ、目標重心平滑処理部212から目標長さ予測処理部221への入力、および目標長さ平滑処理部222から目標長さ予測処理部221への入力が目標長さ予測値補正部226を介して行われる場合に相当する。
【0166】
アンテナ/送受信系201、信号処理部202、観測値重心算出部203、目標重心予測処理部211、および表示部230の機能は、先の実施の形態1における目標追尾装置の構成と同一である。以下では、入出力関係が先の実施の形態1における構成と異なる、目標重心平滑処理部212、目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222、および新たに加えられた目標長さ予測値補正部226の動作について説明する。
【0167】
目標重心平滑処理部212は、観測値重心算出部203からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部211からの目標重心予測値との残差である減算部21aの出力を入力し、目標長さ推定部220の目標長さ平滑処理部222より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0168】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部212は現サンプリングにおける目標重心平滑値、および目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。さらに、目標重心平滑処理部212は算出された目標重心平滑値を目標重心予測処理部211、表示部230、および目標長さ予測値補正部226に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部222に入力する。
【0169】
目標長さ平滑処理部222は、信号処理部202からの現サンプリングにおける目標レンジビン数観測値と、目標長さ予測処理部221からの目標レンジビン数予測値との残差である減算部22aの出力を入力し、位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212より目標長さに対する目標重心との相関情報を入力する。
【0170】
そして、これらの入力に基づき、目標長さ平滑処理部222は、現サンプリングにおける目標長さ平滑値、および目標重心に対する目標長さの相関情報を算出する。さらに、目標長さ平滑処理部222は算出された目標長さ平滑値を目標長さ予測値補正部226および表示部230に入力し、目標重心に対する目標長さの相関情報を位置・速度推定部210の目標重心平滑処理部212に入力する。
【0171】
目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値から計算される1サンプリング前のアスペクト角平滑値、および目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値を記憶する。そして、目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より目標長さ予測値補正部226に入力された1サンプリング前の目標重心平滑値に応じて、下記のように機能する。
【0172】
1サンプリング前のアスペクト平滑値が直角から一定値以内の場合、目標長さ予測値補正部226は、1サンプリング前のアスペクト角平滑値を自身が記憶している2サンプリング前のアスペクト角平滑値で置き換え、1サンプリング前の目標長さ平滑値を2サンプリング前の目標長さ平滑値で置き換える。そして、上記の2サンプリング前のアスペクト角平滑値と2サンプリング前の目標長さ平滑値を目標長さ予測処理部221に入力する。
【0173】
1サンプリング前のアスペクト平滑値が直角から一定値の範囲を超えている場合、目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212から入力された1サンプリング前のアスペクト角平滑値と、目標長さ平滑処理部222から入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値をそのまま目標長さ予測処理部221に入力する。
【0174】
目標長さ予測処理部221は、目標長さ予測値補正部226より2サンプリング前のアスペクト平滑値と目標長さ平滑値(1サンプリング前のアスペクト角平滑値が上述の直角から一定値以内の場合)、または1サンプリング前のアスペクト平滑値と目標長さ平滑値(1サンプリング前のアスペクト角平滑値が上述の直角から一定値の範囲を超えた値である場合)を入力する。そして、これらの入力に基づき、目標長さ予測処理部221は、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値を算出する。
【0175】
次に、この発明の実施の形態6に係る目標追尾装置の動作を、図13のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0176】
ステップS201〜ステップS203、ステップS211〜ステップS212、およびステップS222における動作は、先の実施の形態1における構成と同一である。以下では、先の実施の形態1における構成と動作が異なるステップS221、および新たに加わったステップS226a、ステップS226b、ステップS226cについて説明する。
【0177】
(ステップS226a)目標長さ予測値補正部226における処理は、目標重心平滑処理部212より入力される1サンプリング前のアスペクト角が
π/2−Δβ≦(ハット)βk−1|k−1≦π/2+Δβ
または
−π/2−Δβ≦(ハット)βk−1|k−1≦−π/2+Δβ
である場合、ステップS226b(「直角から一定値以内」のフロー)へ進む。目標重心平滑処理部212より入力される1サンプリング前のアスペクト角が上記の範囲外の場合、ステップS221(「直角から一定値の範囲外」のフロー)へ進む。なお、上記において、Δβは事前に定めるパラメータである。
【0178】
(ステップS226b)目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1を2サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−2|k−2で置き換える。また、目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を2サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−2|k−2でおきかえる。そして、上記、(ハット)βk−2|k−2、(ハット)Lk−2|k−2の値を目標長さ予測処理部221に入力する。
【0179】
(ステップS221)目標長さ予測処理部221は、ステップS226aから当処理へ直接進んできた場合、目標長さ予測値補正部226より1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1と1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を入力し、これらの入力に基づき、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0180】
ステップS226aからステップS226bを経て当処理へ進んできた場合は、目標長さ予測値補正部226より2サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−2|k−2と2サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−2|k−2を入力し、これらの入力に基づき、現サンプリングにおける目標レンジビン数予測値nk|k-1を算出する。
【0181】
上記ステップS221の過程は、ステップS226aからステップS221へ直接進んできた場合には(7)式で表され、ステップS226aからステップS226bを経てステップS221へ進んできた場合には(7)式を(22)式で置き換えた場合に相当する。
【0182】
【数34】
【0183】
(ステップS226c)目標長さ予測値補正部226は、目標重心平滑処理部212より入力された目標重心平滑値から計算される1サンプリング前のアスペクト角平滑値(ハット)βk−1|k−1、および目標長さ平滑処理部222より入力された1サンプリング前の目標長さ平滑値(ハット)Lk−1|k−1を記憶する。
【0184】
この発明の実施の形態6によれば、先の実施の形態1の構成に対し、アスペクト角平滑値が直角となって(7)式右辺の計算結果が0となること、また、アスペクト平滑値が直角に非常に近い値となって(7)式右辺の計算結果が不当に小さい値となることを回避し、目標長さ推定の安定性を確保することができる。
【0185】
この発明の実施の形態6においては、アスペクト角平滑値が直角に近い値となった場合の、目標長さ予測値補正方法として、2サンプリング前のアスペクト角平滑値と目標長さ平滑値を用いて目標レンジビン数予測値を算出する方法を示したが、この補正方法は他のものであっても良い。
【0186】
実施の形態7.
図14はこの発明の実施の形態7による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図、図15はこの実施の形態の目標追尾装置における、1サンプリング分の動作を示したフローチャートである。上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示す。
【0187】
この発明の実施の形態7における目標追尾装置は、アンテナ/送受信系201、信号処理部302、同一目標判定部303、観測値重心算出部304、位置・速度推定部310、目標長さ推定部320、表示部230を備える。位置・速度推定部310は、内部に目標重心予測処理部311と目標重心平滑処理部312と減算部31aを備える。目標長さ推定部320は、内部に目標長さ予測処理部321と目標長さ平滑処理部322と減算部32aを備える。アンテナ/送受信系201、および表示部230の機能は、実施の形態1における構成と同一である。
【0188】
信号処理部302は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、目標を観測している各レンジビンの観測値(目標レンジビン観測値)を生成する。そして、生成した観測値を同一目標判定部303に入力する。
【0189】
同一目標判定部303は信号処理部302より目標レンジビン観測値を入力し、入力された各目標レンジビンに対して同一目標のものであるかを判定する処理を行う。同一目標判定部303は、入力された目標レンジビン観測値が同一目標のものであるか、同一目標のものでないかによって、下記のように機能する。
【0190】
入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定された場合には、同一目標判定部303は、かかる複数の目標レンジビンに同一目標フラグを付与し、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力する。また、上記の同一目標フラグを付与された目標レンジビン数を目標長さ推定部320に入力する。
【0191】
入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものでないと判定された場合には、同一目標判定部303は、かかる複数の目標レンジビンを個別の目標と見なし、目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力する。また、この場合、同一目標判定部303から目標長さ推定部320への入力は行われない。
【0192】
観測値重心算出部304は、同一目標判定部303より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されているか、同一目標フラグが付与されていないかで、下記のように機能する。
【0193】
同一目標判定部より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されている場合、観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されている目標レンジビンの重心を算出する。そして、算出された観測値重心を位置・速度推定部310に入力する。
【0194】
同一目標判定部より入力された目標レンジビン観測値に同一目標フラグが付与されていない場合、観測値重心算出部304は、入力された目標レンジビン観測値それぞれを目標重心として、位置・速度推定部310に入力する。
【0195】
目標重心予測処理部311は、目標重心平滑処理部312より1サンプリング前の目標重心平滑値を入力し、現サンプリング時における目標重心予測値を算出する。
【0196】
目標重心平滑処理部312は、観測値重心算出部304からの現サンプリングにおける観測値重心と、目標重心予測処理部311からの目標重心予測値との残差である減算部31aの出力を入力し、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には、目標長さ推定部320の目標長さ平滑処理部322より目標重心に対する目標長さとの相関情報を入力する。
【0197】
そして、これらの入力に基づき、目標重心平滑処理部312は現サンプリングにおける目標重心平滑値、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には目標長さに対する目標重心の相関情報を算出する。
【0198】
さらに、目標重心平滑処理部312は算出された目標重心平滑値を表示部230、目標重心予測処理部311に入力し、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には目標重心平滑値を目標長さ推定部320の目標長さ予測処理部321に入力し、目標長さに対する目標重心との相関情報を目標長さ平滑処理部322に入力する。
【0199】
目標長さ予測処理部321、目標長さ平滑処理部322は、上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものであると判定されている場合には、それぞれ実施の形態1における目標長さ予測処理部221、目標長さ平滑処理部222と同一の機能を有する。上記の同一目標フラグ付与における処理で同一目標判定部303に入力された複数の目標レンジビンが同一目標のものでないと判断されている場合は、目標長さ予測処理部321および目標長さ平滑処理部322は動作しない。
【0200】
次に、この発明の実施の形態7に係る目標追尾装置の動作を、図15のフローチャートおよび数式を用いて説明する。
【0201】
ステップS201およびステップS230の動作は、実施の形態1における構成と同一である。
【0202】
(ステップS302)信号処理部302は、アンテナ/送受信系201より入力されたビデオ信号に対して信号処理を行い、時刻kにおいて目標を観測しているno,k個のレンジビンそれぞれについて目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を生成する。そして、信号処理部302は、目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を同一目標判定部303に入力する。
【0203】
(ステップS303a)同一目標判定部303は信号処理部302より目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)を入力し、かかる各目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]Tに対して同一目標のものであるかを判定する処理を行う。同一目標であると判定した目標レンジビン観測値については、ステップS303bの処理(「Yes」の側のフロー)に進む。同一目標ではないと判定した目標レンジビン観測値については、各目標レンジビン観測値を個別の目標として扱い、ステップS304aの処理(「No」の側のフロー)に進む。
【0204】
(ステップS303b)同一目標判定部303は、信号処理部302より入力された目標レンジビン観測値[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…,no,k)のうち、ステップS303aで同一目標と判定された目標レンジビンに同一目標フラグを付与する。例えば、上記目標レンジビン観測値のうち、m1番目からm2番目までの観測値が同一目標であると判定されている場合には、[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)のように同一目標フラグを付与する。そして、上記の同一目標フラグが付与された目標レンジビン観測値[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)を観測値重心算出部304に入力し、ステップS304に進む。また、上記の同一目標フラグを付与された目標レンジビン数(上記の目標の場合は、m2−m1−1)を目標長さ推定部320に入力し、ステップS321に進む。
【0205】
なお、上記では観測値のうちm1番目からm2番目までの一組が同一目標と判定された状況を例として数式を示しているが、同一目標と判定される観測値が複数組存在する場合には、かかる観測値の組毎に同一目標フラグが付与された目標レンジビン観測値を観測値重心算出部304に入力し、対応する目標レンジビン数を目標長さ推定部320に入力すれば良い。
【0206】
(ステップS304a)観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されていない目標レンジビン観測値(上記ステップS303bにおいてm1番目からm2番目までの観測値が同一目標と判定されている場合は、それ以外の観測値である[Ro,i,k Eo,i,k Azo,i,k]T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k))のそれぞれを観測値重心[xo,i,G yo,i,G zo,i,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)とする。
【0207】
(ステップS304b)観測値重心算出部304は、同一目標フラグが付与されている目標レンジビン観測値[R(m1)o,j,k E(m1)o,j,k Az(m1)o,j,k]T (j=m1,…,m2)の重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tを算出する。そして、観測値重心算出部304は算出された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tを位置・速度推定部310に入力する。
【0208】
(ステップS311)実施の形態1におけるステップS211と同様の処理により、ステップS304aを経た、同一目標フラグが付与されていない観測値重心[xo,i,G yo,i,G zo,i,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)に対応する目標重心予測値、およびステップS304bを経た、同一目標フラグが付与された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する目標重心予測値を算出する。
【0209】
(ステップS321)実施の形態1におけるステップS221と同様の処理により、ステップS303bを経た観測値に対応した、目標長さ予測値を算出する。
【0210】
ステップS311およびステップS321の過程は、下記(23)(24)式または下記(25)〜(28)式で表される。
【0211】
ステップS304aを経た、個別の目標と判定されている観測値に対応する予測値算出の処理は、それぞれの目標について目標長さを1レンジビン分(ΔR)と固定して上記(6)(9)式を適用する場合に相当し、下記(23)(24)式で表される。この場合、ステップS321にフローが進まないため、上記(7)(8)式に相当する処理は行わない。
【0212】
【数35】
【0213】
ステップS304bを経た、同一目標フラグ付きの観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する予測値の算出には上記(6)〜(9)を適用し、同一目標フラグの表示を考慮して下記(25)〜(28)式で表される。
【0214】
【数36】
【0215】
なお、ステップS303bで同一目標フラグを付与された観測値が複数組存在する場合は、かかる組の観測値重心に対応する予測値ベクトル毎に上記(25)〜(28)式を適用すれば良い。
【0216】
(ステップS312)実施の形態1におけるステップS212と同様の処理により、ステップS304aを経た、同一目標フラグが付与されていない観測値重心[x(i)o,G y(i)o,G z(i)o,G] T (i=1,…m1−1,m2+1,…,no,k)に対応する目標重心平滑値、およびステップS304bを経た、同一目標フラグが付与された観測値重心[x(m1)o,G y(m1)o,G z(m1)o,G] Tに対応する目標重心平滑値を算出する。
【0217】
(ステップS322)実施の形態1におけるステップS322と同様の処理により、ステップS303bを経た観測値に対応した、目標長さ平滑値を算出する。ステップS312およびステップS322の過程は、下記(29)〜(32)式および下記(33)〜(36)式で表される。
【0218】
ステップS304aを経た、個別の目標と判定されている観測値に対しては、位置・速度についてのみ平滑値を算出する。これは、それぞれの目標について目標長さ平滑値を1レンジビン分(ΔR)と固定して上記(10)〜(13)式を適用する場合に相当し、下記(29)〜(32)式で表される。
【0219】
【数37】
【0220】
この場合、ステップS321、ステップS322にフローが進まないため、目標長さ推定部320が動作しない。従って、位置・速度平滑値と目標長さ平滑値が相関しないため、(32)式における観測行列Hkの第4行の構成が上記(13)式と異なっている。
【0221】
ステップS304bを経た、同一目標フラグ付きの観測値重心[x(m)o,G y(m)o,G z(m)o,G] Tに対応する位置・速度平滑値算出には上記(10)〜(13)式を適用し、同一目標フラグの表示を考慮して下記(33)〜(36)式で表される。
【0222】
【数38】
【0223】
なお、ステップS303bで同一目標フラグを付与された観測値が複数組存在する場合は、かかる組の観測値重心に対応する平滑値ベクトル毎に上記(33)〜(36)式を適用すれば良い。
【0224】
この発明の実施の形態7によれば、信号処理部より得られた複数の観測値が同一目標のものであるかを判定し、かかる観測値が同一目標のものであると判定された場合には実施の形態1と同様の処理を行っている。
また、同一目標のものでないと判定された場合には、かかる観測値を個別の目標のものとして扱い、各目標の位置・速度のみを推定している。
上記のような処理により、実施の形態1における目標追尾装置に対し、複数の観測値を用いて目標の位置、速度および目標長さを推定する過程に異なる目標から得られた観測値を誤って用いることを防止するという効果を奏する。
また、これにより、実施の形態1における目標追尾装置を複数の目標に対する位置、速度および目標長さの推定に対応させ、かつ目標の位置、速度および目標長さの推定をより安定的に行うことができるという効果を奏する。
【0225】
この発明の実施の形態7の同一目標判定部303における同一目標判定処理の方法としては、いかなる方法を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】この発明の実施の形態1による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1による目標追尾装置のレーダセンサと目標が2次元のxy平面内にある場合の目標の状態を推定する状況を説明するための図である。
【図4】この発明の実施の形態2による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態4による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態5による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態5による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態6による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態6による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態7による目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図15】この発明の実施の形態7による目標追尾装置における動作を示したフローチャートである。
【図16】従来の目標追尾装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図17】従来の目標追尾装置での目標長さを推定する状況を説明するための図である。
【符号の説明】
【0227】
21a,22a,31a,32a 減算部、201 アンテナ/送受信系、202,302 信号処理部、203,304 観測値重心算出部、210,310 位置・速度推定部、211,311 目標重心予測処理部、212,312 目標重心平滑処理部、213 速度安定化部、220,320 目標長さ推定部、221,321 目標長さ予測処理部、222,322 目標長さ平滑処理部、223 目標長さ安定化部、224 目標長さ最終値選択部、225 目標長さ補間部、226 目標長さ予測値補正部、230 表示部、303 同一目標判定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分解能のレーダセンサにより、1目標につき複数得られる観測値の時系列データに基づいて、前記目標の位置、速度と同時に目標長さを推定する目標追尾装置であって、
前記目標の位置、速度の運動諸元を推定する位置・速度推定用追尾フィルタである位置・速度推定部と、
前記目標の目標長さを推定する目標長さ推定用追尾フィルタである目標長さ推定部と、
を備え、
前記位置・速度推定用部と前記目標長さ推定部の間で前記目標の位置、速度と目標長さを推定する過程で前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させることを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
複数得られた観測値に対して同一目標判定処理を行う同一目標判定部を備え、
前記位置・速度推定部及び目標長さ推定部は、
前記同一目標判定部によって同一目標のものであると判定された観測値に対して前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させ、前記の同一目標であると判定された観測値の組が複数組存在する場合には、かかる複数組の観測値の組それぞれに対して前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させ、
前記同一目標判定部によって同一目標のものでないと判定された観測値に対しては、かかる観測値のそれぞれを個別の目標として扱い、それぞれの位置、速度のみを推定し、複数目標に対する位置、速度、目標長さの推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記目標長さ推定部が、前記目標の目標長さ推定値である目標長さ平滑値の時系列の値を安定化させる目標長さ安定化部を含むことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記位置・速度推定部が、前記目標の運動諸元の推定値である位置、速度平滑値のうち、速度平滑値の時系列の値を安定化させる速度安定化部を含み、前記速度安定化部により安定化された速度平滑値を用いて前記目標の位置、速度および目標長さを推定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記目標長さ推定部が、前記目標長さ平滑値と、前記目標長さ平滑値によって安定化された目標長さ平滑値のうち、適合度の高い値を選択する目標長さ最終値選択部を含むことを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記目標長さ推定部が、前記目標長さ推定部による過去の目標長さ推定値の履歴に基づく目標長さ補間値を算出する目標長さ補間部を含み、1目標につき得られる観測値が1つである場合には前記目標長さ補間部によって算出された目標長さ補間値に基づいて目標の長さ方向の観測値数を補間することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
前記目標長さ推定部が、1サンプリング前の目標速度平滑値に応じて目標長さ予測値を補正する目標長さ予測値補正部を含むことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項1】
高分解能のレーダセンサにより、1目標につき複数得られる観測値の時系列データに基づいて、前記目標の位置、速度と同時に目標長さを推定する目標追尾装置であって、
前記目標の位置、速度の運動諸元を推定する位置・速度推定用追尾フィルタである位置・速度推定部と、
前記目標の目標長さを推定する目標長さ推定用追尾フィルタである目標長さ推定部と、
を備え、
前記位置・速度推定用部と前記目標長さ推定部の間で前記目標の位置、速度と目標長さを推定する過程で前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させることを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
複数得られた観測値に対して同一目標判定処理を行う同一目標判定部を備え、
前記位置・速度推定部及び目標長さ推定部は、
前記同一目標判定部によって同一目標のものであると判定された観測値に対して前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させ、前記の同一目標であると判定された観測値の組が複数組存在する場合には、かかる複数組の観測値の組それぞれに対して前記目標の位置、速度の各成分と目標長さを互いに相関させ、
前記同一目標判定部によって同一目標のものでないと判定された観測値に対しては、かかる観測値のそれぞれを個別の目標として扱い、それぞれの位置、速度のみを推定し、複数目標に対する位置、速度、目標長さの推定を行うことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項3】
前記目標長さ推定部が、前記目標の目標長さ推定値である目標長さ平滑値の時系列の値を安定化させる目標長さ安定化部を含むことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記位置・速度推定部が、前記目標の運動諸元の推定値である位置、速度平滑値のうち、速度平滑値の時系列の値を安定化させる速度安定化部を含み、前記速度安定化部により安定化された速度平滑値を用いて前記目標の位置、速度および目標長さを推定することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記目標長さ推定部が、前記目標長さ平滑値と、前記目標長さ平滑値によって安定化された目標長さ平滑値のうち、適合度の高い値を選択する目標長さ最終値選択部を含むことを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記目標長さ推定部が、前記目標長さ推定部による過去の目標長さ推定値の履歴に基づく目標長さ補間値を算出する目標長さ補間部を含み、1目標につき得られる観測値が1つである場合には前記目標長さ補間部によって算出された目標長さ補間値に基づいて目標の長さ方向の観測値数を補間することを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
前記目標長さ推定部が、1サンプリング前の目標速度平滑値に応じて目標長さ予測値を補正する目標長さ予測値補正部を含むことを特徴とする請求項1に記載の目標追尾装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−112747(P2010−112747A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283394(P2008−283394)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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