説明

直動案内装置用仮軸

【課題】全長の長いスライダであっても、作業性良くスライダの脱落防止機構をセットすることが出来る直動案内装置用仮軸を提供すること。
【解決手段】仮軸の軸方向の両端部には、該仮軸に組付けられたスライダの両端部からの脱落を防止するための脱落防止機構が設けられ、脱落防止機構の少なくとも一方は、移動部材と該移動部材が移動するための軌道とを備え、移動部材は、軌道を移動して、前記移動部材の一部が軸方向と直角に交差する方向について仮軸の外側面よりも外方に突出している状態の第1の位置と、前記移動部材の全部が前記軸方向と直角に交差する方向について前記外側面よりも内側にある状態の第2の位置とを切替えが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置の運搬時あるいは工作機械等への取付け時等において、案内レールから取り外されたスライダを仮に組付けておくための仮軸に関する。
【背景技術】
【0002】
案内レールと該案内レールに滑動自在に取付けられたスライダとを備えた直動案内装置は、運搬時あるいは工作機械等への取付け時等において、スライダが案内レールから取り外される場合がある。このとき、案内レールから取り外されたスライダは樹脂製の仮軸に組付けられる。このような場合において、スライダが仮軸から抜けて脱落しないように、スライダを仮軸に固定するための様々な方法、あるいは脱落防止用のストッパ機構が提案されている。以下に、従来のスライダ固定方法あるいは脱落防止用のストッパ機構を説明する。
【0003】
最初の例として、輪ゴムを用いてスライダを仮軸に固定する場合を説明する。この場合、仮軸の下面の両端部近傍には、それぞれ仮軸の長手方向と直角に交差する方向、すなわち仮軸の幅方向に延在する溝が設けられている。これら2つの溝は、仮軸の両側の側面を貫通して設けられている。スライダはこれら2つの溝間の仮軸上に配置されている。この状態の仮軸およびスライダにおいて、輪ゴムは次のように仮軸とスライダとに掛けられている。なお、輪ゴムの取付け状態を理解し易くするために、輪ゴムの形状を略方形に弾性変形させた状態として説明する。
【0004】
まず、略方形とした輪ゴムの一対の対向する辺を仮軸の下方側から仮軸下面の前記2つの溝にそれぞれ当接させる。このとき該一対の対向する辺は仮軸の幅方向に平行であり、他の一対の辺は仮軸の軸方向に平行である。その状態から、輪ゴムの他の一対の辺をスライダの上面に引き伸ばして掛ける。このとき、該他の一対の辺が、スライダの上面に仮軸の幅とほぼ同じ間隔で平行となるように配置する。
【0005】
輪ゴムをこのようにスライダおよび仮軸に掛ければ、輪ゴムの弾性によりスライダと仮軸とは互いに相手の方へ押し付けられる。その結果、スライダは仮軸に固定され、仮軸からの脱落を防止することが出来る。
【0006】
次の例として、固定バンドを用いてスライダを仮軸に固定する場合を説明する。この場合も、仮軸の下面の両端部近傍には、それぞれ仮軸の長手方向と直角に交差する方向に延在する溝が形成され、スライダはこれら2つの溝間の仮軸上に配置される。固定バンドはスライダの各端部近傍に1つずつ配置される。各固定バンドは、仮軸下面の溝のある位置で、仮軸を周方向に取巻いた状態で配置される。固定バンドをこのように配置すれば、スライダが軸方向に移動しても、スライダは固定バンドに接触することによってそれ以上の軸方向の移動を規制される。その結果、スライダの仮軸からの脱落を防止することが出来る。
【0007】
さらに他の例として、特許文献1には、線状部材で形成されたストッパ(以下、「線材ストッパ」と略記する。)が記載されている。図7(a)は線材ストッパの形状を示す外観図であり、図7(b)は該線材ストッパが挿入スリーブ、すなわち仮軸に組付けられて使用されている状態を示す側面図である。特許文献1によれば、線材ストッパ201は、図7(a)に示すように、平行に配置された一対の脚部204、204と、一対の脚部204、204の一方側の各端部を連結するブリッジ部207と、一対の脚部204、204の他方側の各端部を内側に折り曲げて形成された一対の係止部210、210とから構成されている。このような構成の線材ストッパ201は、図7(b)に示すように、ブリッジ部207が挿入スリーブ213の上面に幅方向に沿って配置され、一対の脚部204、204が挿入スリーブ213の両側の側面に沿ってそれぞれ斜め下方に延在するように配置される。そして線材ストッパ201は、係止部210、210が挿入スリーブ213の両側の側面に設けられた穴部216に挿入されることで挿入スリーブ213に係合される。線材ストッパ201はスライダ219の両端部に1つずつ配置され、各線材ストッパ201のブリッジ部207がスライダ219の各端部にそれぞれ接触することでスライダ219の軸方向の移動を規制し、スライダ219の挿入スリーブ213からの脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3927282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スライダには塵等の浸入を防ぐための防塵部品が両端部に取付けられるが、取付ける防塵部品が多くなると防塵部品を含めたスライダの全長は長くなる。図8は、仮軸に全長の長いスライダを組付けた状態の側面図であり、(a)は輪ゴムを用いた場合を示し、(b)は、固定バンドを用いた場合を示している。
【0010】
防塵部品222を取付けてスライダ219の全長が長くなると、輪ゴムを用いる場合にあっては、複数の輪ゴムを連結して大きな輪ゴム225を作り、当該大きな輪ゴム225を用いてスライダ219を固定する。そうすると、大きな輪ゴム225を作るために複数の輪ゴムを連結する作業が必要となり、作業性が悪くなる。さらに、図8(a)に示すように、輪ゴム225を限界まで伸ばして固定することとなり、輪ゴム225が切れてしまう恐れがある。その結果、スライダ219を仮軸213に固定することが出来なくなり、スライダ219の脱落を防止することが出来なくなってしまう。
【0011】
また、固定バンド228を用いる場合では、防塵部品222を取付けてスライダ219の全長が仮軸213下面の2つの溝231、231間の長さ寸法と同等またはこれより長くなると、図8(b)に示すように、スライダ219の端部が仮軸213の端部の近傍に位置することとなる。このような状態では、図8(b)に示すように、仮軸213の上面には固定バンド228が配置される充分なスペースが確保できなくなる。そうすると、取付けた固定バンド228がずれて脱落しやすくなったり、場合によっては固定バンド228を取付けること自体が出来なくなったりしてしまう。その結果、スライダ219を仮軸213に固定することが出来なくなり、スライダ219の脱落を防止することが出来なくなってしまう。
【0012】
一方、特許文献1に記載の線材ストッパ201にあっては、スライダ219の全長に合った線材ストッパ201を用いればスライダ219を固定することが出来る。つまり、図7(a)に示す脚部204、204の長さを変えた線材ストッパ201を用いることとなる。しかし、そうすると、様々な全長のスライダ219に対して、それぞれの長さに対応した線材ストッパ201を用意することが必要となり、部品点数が増えてしまう。また、スライダ219の長さに応じて線材ストッパ201を入れ替え調整する必要があり、作業性が悪くなってしまう。
【0013】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、全長の長いスライダであっても、作業性良くスライダの脱落防止機構をセットすることが出来る直動案内装置用仮軸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するために、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、案内レールに、該案内レールの軸方向に移動可能に取付けられるスライダを仮に組付けるための直動案内装置用仮軸において、前記仮軸の軸方向の両端部には、該仮軸に組付けられた前記スライダの前記両端部からの脱落を防止するための脱落防止機構が設けられ、前記脱落防止機構の少なくとも一方は、移動部材と該移動部材が移動するための軌道とを備え、前記移動部材は、前記軌道を移動して、前記移動部材の一部が前記軸方向と直角に交差する方向について前記仮軸の外側面よりも外方に突出している状態の第1の位置と、前記移動部材の全部が前記軸方向と直角に交差する方向について前記外側面よりも内側にある状態の第2の位置とを切替え可能であることを特徴とする。
【0015】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記移動部材は、前記第1の位置において、前記仮軸に組付けられた前記スライダの前記軸方向への移動を規制することを特徴とする。
【0016】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記移動部材は、前記軌道を前記軸方向と直角に交差する方向に摺動することを特徴とする。
【0017】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記軌道は、前記仮軸の前記端部の端面の一部を切り欠いて形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記脱落防止機構は、前記移動部材の位置を前記第1の位置または前記第2の位置に係止するための係止機構を備えていることを特徴とする。
【0019】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記係止機構は、前記移動部材または前記軌道の何れか一方に形成された凸部と、前記移動部材または前記軌道の何れか他方に形成され、前記凸部に係合する凹部であることを特徴とする。
【0020】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記凸部および前記凹部はそれぞれ複数が形成され、前記移動部材の位置が前記第1の位置の時は、前記複数の凸部のうちの一部と、前記複数の凹部のうちの一部とが係合し、前記第2の位置の時は、前記複数の凸部の全てと、前記複数の凹部の全てとが係合していることを特徴とする。
【0021】
また、好適には、本発明に係る直動案内装置用仮軸は、前記軌道はあり溝であり、前記移動部材は前記あり溝に係合する板部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、全長の長いスライダであっても、作業性良くスライダの脱落防止機構をセットすることが出来る直動案内装置用仮軸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る直動案内装置用仮軸に組付けられるスライダが、本来の使用に供される案内レールに組付けられている状態を示す部分断面図である。
【図2】本実施形態に係る直動案内装置用仮軸の要部を示す斜視図である。
【図3】(a)は、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸を軸方向から見た正面図であって、ストッパ機構を分解して示し、(b)は、(a)のA−A線、B−B線の断面図であり、(c)は、(a)の斜視図である。
【図4】本実施形態に係る直動案内装置用仮軸の使用状態を示す要部の斜視図であり、(a)はストッパがストッパ挿入部に完全に収容されている状態を示し、(b)はストッパの上部が仮軸の上面から突出している状態を示している。
【図5】(a)、(b)とも本実施形態に係る直動案内装置用仮軸にスライダが組付けられた状態を示す側面図であり、(b)のスライダには、(a)よりも防塵部品が多く取付けられている。
【図6】(a)は本実施形態の変形例に係る直動案内装置用仮軸の要部を示す斜視図であり、(b)はストッパおよびストッパ挿入部の断面図であり、それぞれ上下方向の中心線での断面を示している。
【図7】(a)は従来の線材ストッパの形状を示す外観図であり、(b)は該線材ストッパが挿入スリーブに組付けられて使用されている状態を示す側面図である。
【図8】仮軸に全長の長いスライダを組付けた状態の側面図であり、(a)は輪ゴムを用いた場合を示し、(b)は、固定バンドを用いた場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態に係る直動案内装置用の仮軸に組付けられるスライダと、当該スライダの本来の使用に供される案内レールについて説明する。なお、本明細書においては、案内レールまたは仮軸を通常に水平にした状態において、案内レールまたは仮軸の長手方向を軸方向とし、軸方向に対して水平方向に直角に交差する方向を幅方向とし、軸方向および幅方向に対して垂直に交差する方向を上下方向する。また、このとき、軸方向に延在する上側の面、下側の面、および両側の面を、それぞれ上面、下面、および側面とし、軸方向の端部側の面を端面とする。また、これらの方向および各面の呼称は、スライダにおいては、スライダが案内レールまたは仮軸に組付けられた状態において同様とする。
【0025】
図1は、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸に組付けられるスライダが、本来の使用に供される案内レールに組付けられている状態を示す部分断面図である。
【0026】
図1に示すように、直動案内装置1は軸方向に延在する断面略角型の案内レール4と、該案内レール4に転動体である鋼球7を介して軸方向に移動可能に組付けられたスライダ10とを備えている。スライダ10は、下面側に軸方向に延在する凹部13が形成され、断面形状は略コ字状となっている。凹部13はスライダ10の両端面を貫いて形成されている。スライダ10は凹部13が案内レール4を跨いで該案内レール4上に配置されている。案内レール4の一方側の側面4aと上面4cとが交差する稜線部には、鋼球7が転動するための転動溝16が軸方向に延在して形成されている。該転動溝16は、断面形状が略1/4円弧状に形成されている。案内レール4の他方側の側面4bと上面4cとの稜線部にも同様の転動溝16が形成されている。また、案内レール4の一方側の側面4aの上下方向略中間位置には、鋼球7が転動するための他の転動溝16が軸方向に延在して形成されている。該他の転動溝16は、断面形状が略1/2円弧状に形成されている。案内レール4の他方側の側面4bの上下方向略中間位置にも、同様の転動溝16が形成されている。このように案内レール4には、各側面4a、4bにそれぞれ2本ずつ、計4本の転動溝16が形成されている。
【0027】
スライダ10は、スライダ本体部19と、スライダ本体部19の軸方向の各端部にそれぞれ着脱可能に取付けられたエンドキャップ22a、22bとで構成されている。スライダ本体部19は、案内レール4の各側面4a、4bに沿ってそれぞれ下方に延在する一対の脚部25a、25bと、一対の脚部25a、25bを案内レール4の上面4c側で連結する胴体部28とから構成されている。各エンドキャップ22a、22bのスライダ本体部19側とは反対側の軸方向端部、すなわちスライダ10の軸方向の最も外側となる各端部には、防塵部品であるサイドシール31a、31bがそれぞれ装着されている。これらのサイドシール31a、31bは、案内レール4とスライダ10との隙間を密封し、外部から塵等の異物が侵入することを防止している。
【0028】
スライダ本体部19の一方の脚部25aの内側面、すなわち案内レール4の一方側の側面4aと対向する面には、該一方側の側面4aに形成された2本の転動溝16、16と対向する位置に、それぞれ鋼球7が転動するための転動溝34、34が形成されている。スライダ本体部19の他方の脚部25bの内側面にも同様の転動溝34、34(図示省略)が形成されている。案内レール4側の各転動溝16と、これら各転動溝16のそれぞれと対向するスライダ本体部19の転動溝34とで、鋼球7が転動するための転動路37が形成されている。転動路37は断面がほぼ円形となっている。案内レール4およびスライダ10には、片側に2本ずつ、全部で4本の転動路37が形成されている。
【0029】
また、スライダ10の一方の脚部25aには、2本の転動路37のそれぞれと平行に該脚部25aの肉厚部分を軸方向に貫通する直線路40が形成されている。つまり、一方の脚部25aには2本の直線路40が形成されている。スライダ10の他方の脚部25bにも同様に2本の直線路40(図示省略)が形成されている。各エンドキャップ22a、22bは、スライダ本体部19との当接面側であってスライダ本体部19の一対の脚部25a、25bに対応する部分に、鋼球7の転動路37と直線路40とを連通させる半ドーナツ状の湾曲路(図示省略)が形成されている。各エンドキャップ22a、22bには、片側2つで計4つの湾曲路が形成されている。そして直線路40と両端の湾曲路とで鋼球7を転動路37の一方側の端部から他方側の端部へ送り循環させる戻し路が形成され、該戻し路と転動路37とで環状の循環路43が形成されている。すなわち、案内レール4およびスライダ10には、全部で4本の循環路43が形成されている。環状の循環路43には多数の鋼球7が転動自在に装填されている。スライダ10は、これら多数の鋼球7を介して案内レール4上を軸方向に移動する。
【0030】
スライダ10を案内レール4の軸方向に沿って移動させると、転動路37に位置する鋼球7は、転動路37内を転がり移動しつつ案内レール4に対してスライダ10と同じ方向へ移動する。そして鋼球7が転動路37の一方側の端部に到達すると、エンドキャップ22a(または22b)内に設けられた湾曲路へ入っていく。湾曲路に入った鋼球7はUターンして直線路40に入り、直線路40を転動して反対側のエンドキャップ22b(または22a)内に設けられた湾曲路に到達する。そして該反対側の湾曲路で再度Uターンして転動路37の他方側の端部に戻る。鋼球7は、スライダ10の移動に伴い、循環路43内でこのような循環を繰り返す。
【0031】
また、案内レール4はスライダ10の本来の使用に供するためのものなので、該案内レール4を工作機械等の被取付け部に取付けるためのボルト穴46が設けられている。
【0032】
このような直動案内装置1は、運搬や工作機械等への取付けの際、スライダ10は案内レール4から取り外されて扱われる。また、スライダ10に他の案内レールとの互換性がある場合には、スライダ10を他の案内レールに移動する際も元の案内レール1から取り外される。スライダ10を案内レール4から取り外すとスライダ10に装填された鋼球7が脱落してしまい、使用できなくなる恐れがある。そのため、スライダ10を案内レール4から取り外す場合は、スライダ10は本来の使用に供される案内レール1の外形と同様の外形形状を有する仮軸に組付けられる。
【0033】
以下、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸について説明する。図2は、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸の要部(一方側の端部)を示す斜視図である。
【0034】
図2に示すように、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸49(以下、「仮軸49」と略記する。)は長尺体であり、軸方向から見た形状は案内レール1を軸方向から見た形状と略同様に形成されている。すなわち、仮軸49の両方の側面には、案内レール1の両方の側面4a、4bに形成された転動溝16と同様の転動溝52が形成されている。また、仮軸49は案内レール4とは異なり、スライダ10を仮に組付けておくためのものであるので、上面50は機能上平面である必要はない。そのため、仮軸49の上面50側には仮軸49の寸法精度を向上させるために凹状の複数の肉ぬすみ部55が形成されている。仮軸49は耐油性樹脂からなり、射出成形によって形成されている。
【0035】
本実施形態に係る仮軸49は、端部側にも肉ぬすみ部55が設けられている。従って、仮軸49の端部は、或る厚みを有する壁部58となっている。つまり壁部58の一方側の面は仮軸49の端面61であり、他方側の面は肉ぬすみ部55を形成する面の1つとなっている。
【0036】
次に、本実施形態に係る仮軸49に備えられた、スライダ10の脱落防止機構であるストッパ機構64について説明する。図3(a)は、本実施形態に係る直動案内装置用仮軸49を軸方向から見た正面図であり、ストッパ機構64を分解して示し、(b)は、(a)のA−A線の断面図およびB−B線の断面図であり、(c)は、(a)の斜視図である。
【0037】
本実施形態に係る仮軸のストッパ機構64は、仮軸49の端部の壁部58に設けられている。具体的には、該壁部58の壁面のうち、仮軸49の端面61側に設けられている。なお、本実施形態に係る仮軸49には、両端部に同様の構成のストッパ機構64が設けられているが、本明細書では一方側の端部に設けられたストッパ機構64について説明し、他方側のものについては重複を避けるために説明を省略する。
【0038】
図2、および図3の各図に示すように、仮軸49の端面61には、仮軸49の上面50側から端面61の中央部まで上下方向に延在する溝67が形成されている。溝67は、仮軸49の上面50の一部および端面61の一部を切り欠いて形成されている。溝67の底面68は仮軸49の端面61と平行に形成されている。溝67は、仮軸49の端面61側の開口部の幅よりも、底面68側の幅の方が広い寸法に形成され、側面は傾斜面あるいは段部となっている。すなわち、溝67は断面形状が略台形状のあり溝である。溝67は、仮軸49の軸方向から見て、端面61の左右方向の中央部に形成され、端面61の全幅の略1/3〜1/4の幅を有するように形成されている。また、溝67の深さは、壁部58の厚みの半分程度の深さに形成されている。本実施形態では、当該溝67がストッパ機構64のストッパ挿入部となっている(以下、溝67のことをストッパ挿入部67という。)。ストッパ挿入部67は、仮軸49と一体に射出成形によって形成されている。
【0039】
ストッパ挿入部67には、仮軸49の上面50側からストッパ70が挿入されている。ストッパ挿入部67とストッパ70とでストッパ機構64を構成している。ストッパ70は板部材であり、仮軸49と同様に耐油性樹脂からなり、射出成形によって形成されている。ストッパ70は、ストッパ挿入部67のあり溝形状に対応するあり形状に形成されている。ストッパ70の高さ、幅、厚さの各寸法は、対応するストッパ挿入部67のあり溝形状の高さ、幅、深さの各寸法よりも僅かに小さく形成されている。また、ストッパ70の断面形状は、ストッパ挿入部67のあり溝の断面形状に対応する略台形状となっている。ストッパ70はこのような形状なので、ストッパ挿入部67に挿入された状態において、仮軸49の軸方向に脱落することがない。
【0040】
ストッパ70は、ストッパ挿入部67に対して上下方向に摺動可能となっている。すなわち、ストッパ70は、ストッパ挿入部67のあり溝に係合して上下方向に摺動する。言い換えると、ストッパ挿入部67は、ストッパ70が上下に摺動するための軌道となっている。上述したように、ストッパ70の各寸法はストッパ挿入部67の対応する各寸法よりも僅かに小さく形成されているので、ストッパ70はストッパ挿入部67に対して滑らかに摺動することができる。また、ストッパ70はこのような寸法で形成されているので、ストッパ挿入部67の最下部まで挿入されると、ストッパ70の上面73は仮軸49の上面50よりも僅かに下に位置することとなる。言い換えると、ストッパ70は、ストッパ挿入部67の最下部まで挿入された状態において、該ストッパ70の上面73が仮軸の上面50よりも上方に突出しないように形成されている。さらに言い換えると、ストッパ70は、ストッパ挿入部67の最下部まで挿入された状態において、ストッパ70全体が、軸方向と直角に交差する方向について、仮軸49の上面50よりも内側にある状態となるように形成されている。
【0041】
ストッパ挿入部67の底面68、すなわちあり溝の底面には、図3各図に示すように、仮軸49の軸方向に突出する凸部76が設けられている。凸部76は上下方向に所定の間隔を空けて2つ形成されている。一方、ストッパ70には、ストッパ挿入部67の底面68と対向する側の面に凹部79が設けられている。凹部79は上下方向に所定の間隔を空けて2つ形成されている。これらの凹部79の深さ寸法は、ストッパ挿入部67の凸部76の高さ寸法と同じ、あるいは僅かに深く形成されている。また、これら2つの凹部79は、ストッパ70がストッパ挿入部67の最下部まで挿入された状態において、ストッパ挿入部67の2つの凸部76に対応する位置に形成されている。つまり、ストッパ70がストッパ挿入部67の最下部まで挿入されると、ストッパ挿入部67の2つの凸部76がそれぞれ対応する凹部79に係合する。この係合により、ストッパ70はストッパ挿入部67の最下部に挿入された状態で係止され、上下方向の移動が規制される。
【0042】
一方、ストッパ70がストッパ挿入部67の最下部まで挿入された状態から、ストッパ70を上方に摺動させて引き上げると、ストッパ70の2つの凹部79は、両方ともストッパ挿入部67の2つの凸部76との係合が解かれる。同時に、ストッパ70の上部が仮軸49の上面50よりも上方に突出し始める。ストッパ70をさらに上方に摺動させていくと、ストッパ70の2つの凹部79のうち下側の凹部79が、ストッパ挿入部67の上側の凸部76に係合する。そしてストッパ70の上方への摺動は当該係合により規制され、ストッパ70はストッパ挿入部67に係止される。このとき、ストッパ70の最下部は、ストッパ挿入部67の下側の凸部76よりも上側に位置している。また、このとき、ストッパ70の上部は、所定量が仮軸49の上面50よりも上方に突出している状態となっている。言い換えると、ストッパ70の一部が、軸方向と直角に交差する方向について、ストッパ49の上面50よりも外側にある状態となっている。仮軸49に組付けられたスライダ10(図1参照)は、軸方向の端面が仮軸49から突出しているストッパ70の上部に接触することによって軸方向の移動が規制される。
【0043】
このように、ストッパ機構64は、ストッパ70がストッパ挿入部67の最下部まで挿入された状態、すなわちストッパ70がストッパ挿入部67に完全に収容された状態と、ストッパ70の上部が仮軸49の上面50よりも上方に所定量突出している状態との2つの状態にすることが出来る。そしてこれら2つの状態を任意に切替えることが可能となっている。これら2つの状態の何れの状態にするかは、ストッパ70の上下2つの凹部79がストッパ挿入部67の上下2つの凸部76にそれぞれ係合している状態か、ストッパ70の下側の凹部79がストッパ挿入部67の上側の凸部76に係合している状態かを選択することによって決定される。つまり、ストッパ70の2つの凹部79およびストッパ挿入部67の2つの凸部76は、ストッパ70の位置決め機構、さらにはストッパ70の移動規制機構を構成している。本実施形態に係る仮軸49には、このような構成のストッパ機構64が両端部に設けられている。
【0044】
次に、本実施形態に係る仮軸49のストッパ機構64の使用方法について説明する。ここでは、ストッパ機構64の使用方法が理解し易いように、本来の使用に供される案内レール1に組付けられたスライダ10(それぞれ図1参照)を一旦仮軸49に移動させる場合について説明する。
【0045】
図4は、本実施形態に係る仮軸49の使用状態を示す要部の斜視図であり、(a)はストッパ70がストッパ挿入部67の最下部に位置している状態、すなわちストッパ挿入部67に完全に収容されている状態を示し、(b)はストッパ70の上部が仮軸49の上面50から突出している状態を示している。
【0046】
案内レール1から仮軸49にスライダ10を移動させる場合、スライダ10に装填された鋼球7が脱落することを防止する必要がある。そのため、案内レール1と仮軸49との端部どうしを突き合わせた状態で案内レール1から仮軸49へとスライダ10を移動させる。このとき、本実施形態にかかる仮軸49のストッパ機構64は次の状態とする。案内レール1と突き合わせた側の端部のストッパ機構64は、図4(a)に示す状態にしておく。すなわち、ストッパ70をストッパ挿入部67の最下部まで挿入し、ストッパ70の2つの凹部79がストッパ挿入部67の2つの凸部76に係合している状態とする。同時に、反対側の端部のストッパ機構64は、図4(b)に示す状態にしておく。すなわち、ストッパ70の下側の凹部79がストッパ挿入部67の上側の凸部76に係合している状態とする。以下、仮軸49の両端部のうち、案内レール1と突き合わせた側の端部を一方側の端部とし、反対側の端部を他方側の端部として説明する。
【0047】
この状態においては、一方側の端部のストッパ70はストッパ挿入部67に完全に収容され、仮軸49の上面50よりも上部に突出する部分はない。かつ、ストッパ70の2つの凹部79がストッパ挿入部67の2つの凸部76に係合しているので、ストッパ70は上下方向の移動が規制されている。したがって、スライダ10をスムーズに案内レール1から仮軸49へと移動させることが出来る。これに対し、他方側の端部のストッパ70は、所定量が仮軸49の上面50よりも上方へ突出し、かつストッパ70の下側の凹部79がストッパ挿入部67の上側の凸部76に係合しているので上下方向の移動が規制されている。したがって、仮軸49へ移動させたスライダ10がさらに他方側の方へ移動したとしても、スライダ10の他方側の端部が当該上方へ突出したストッパ70の部分に接触することよって、それ以上の移動が規制される。その結果、スライダ10が仮軸49の他方側の端部から脱落することを防止することが出来る。
【0048】
スライダ10を仮軸49の方へ完全に移動させたら、仮軸49の一方側の端部と案内レール1の端部とを引き離し、一方側の端部のストッパ70を上方に引き上げる。すなわち、図4(b)に示す状態にする。そうすると、一方側の端部のストッパ70も一部が仮軸49の上面50よりも上方に突出した状態で係止され、スライダ10の一方側への移動を規制する。その結果、スライダ10が仮軸49の一方側の端部から脱落することを防止することが出来る。これで、スライダ10の仮軸49への組付け、およびスライダ10の脱落防止機構であるストッパ機構64のセットが完了する。
【0049】
このように、本実施形態に係る仮軸49のストッパ機構64は、ストッパ70をストッパ挿入部67でスライドさせることで、ワンタッチで脱落防止状態にセットすることが出来る。また、ストッパ70の凹部79とストッパ挿入部67の凸部76との係合によりストッパ70の位置決めができるので、作業性は良好となっている。
【0050】
また、本実施形態に係る仮軸49は、両端の最端部にストッパ機構64が設けられているため、仮軸49の全長とほぼ同じ全長を有するスライダ10であっても、脱落を防止した状態で組付けることが出来る。つまり、端部に多くの防塵部品を取付けて全長が長くなったスライダ10であっても、確実に脱落を防止した状態で組付けることが可能である。図5各図は、本実施形態に係る仮軸49に、端部に多くの防塵部品82を取付けて全長が長くなったスライダ10が組付けられた状態を示す側面図であり、(b)のスライダ10には、(a)のスライダ10よりも防塵部品82が多く取付けられ、全長が長くなっている。
【0051】
図5(a)、(b)に示すように、本実施形態に係る仮軸49は、様々な全長のスライダ10を組付けることが可能である。さらに、スライダの10全長が異なっても、ストッパ機構64の使用方法は同じであり、組付けるスライダ10の全長に合わせて部品交換する必要もない。従って、スライダ10の組付けの際のストッパ機構64の作業性は、スライダ10の全長にかかわらず良好である。
【0052】
このように本実施形態に係る仮軸49は、組付けるスライダ10の全長にかかわらず、ストッパ機構64をワンタッチで脱落防止状態にセットすることができ、作業性は良好である。また、ストッパ挿入部67は仮軸49と一体に成型加工でき、組付けるスライダ10の全長にかかわらずストッパ挿入部67には同じストッパ70が挿入されるので、仮軸49全体での構成部品を少なくでき、部品管理が容易である。さらに、ストッパ10をストッパ挿入部67から取り外して用いることがないので、ストッパ70を紛失してしまうことがない。
【0053】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。当該変形例については、上記実施形態と異なる構成を中心に説明し、同様の構成については、重複する説明は省略する。
【0054】
図6(a)は、本実施形態の変形例に係る仮軸の要部を示す斜視図である。
本変形例に係る仮軸149は、上記実施形態と略同様である。すなわち、軸方向に延在する長尺体であり、軸方向から見た形状は案内レール1(図1参照)を軸方向から見た形状と略同様に形成されている。
【0055】
本変形例においては、仮軸149の端部に設けられたストッパ機構164の構成が上記実施形態と異なっている。以下、本変形例に係る仮軸149のストッパ機構164について説明する。なお、本変形例においては、図6(a)に示す仮軸149の端面161に向かって左方を仮軸149の左側、右方を仮軸149の右側として説明する。
【0056】
本変形例に係る仮軸149の端面161には、図6(a)に示すように、仮軸149の左の側面側から端面161の中央部まで幅方向に延在する溝167が形成されている。溝167は、仮軸149の左の側面の一部および端面161の一部を切り欠いて形成されている。溝167の底面168は仮軸149の端面161と平行に形成されている。溝167は、仮軸149の端面161側の開口部の上下幅よりも、底面168側の上下幅の方が広い寸法に形成され、側面は傾斜面あるいは段部となっている。すなわち、溝167は断面形状が略台形状のあり溝である。溝167は、仮軸149の軸方向から見て、端面161の上下方向の中央部に形成され、端面161の全高の略1/3〜1/4の上下幅を有するように形成されている。また、溝167の深さは、壁部158の厚みの半分程度の深さに形成されている。本変形例では、当該溝167がストッパ機構164のストッパ挿入部となっている(以下、溝167のことをストッパ挿入部167という。)。
【0057】
ストッパ挿入部167には、仮軸149の左の側面側からストッパ170が挿入されている。ストッパ170の長さ、上下幅、厚さの各寸法は、対応するストッパ挿入部167のあり溝形状の長さ、上下幅、深さの各寸法よりも小さく形成されている。また、ストッパ170の断面形状はストッパ挿入部167のあり溝の断面形状に対応する略台形状となっている。ストッパ170はこのような形状なので、ストッパ挿入部167に挿入された状態において、仮軸149の軸方向に脱落することがない。ストッパ170は、ストッパ挿入部167に対して幅方向に摺動可能となっている。
【0058】
上述したように、ストッパ170の各寸法はストッパ挿入部167の各寸法よりも小さく形成されているので、ストッパ挿入部167の最右方まで挿入されると、ストッパ170の左の側面は仮軸149の左の側面よりも右側に位置することとなる。つまり、ストッパ170は、ストッパ挿入部167の最右方まで挿入された状態において、該ストッパ170の左の側面が仮軸149の左の側面よりも左方に突出しないように形成されている。言い換えると、ストッパ170全体が、軸方向と直角に交差する方向について、仮軸149の左の側面よりも内側にある状態となるように形成されている。
【0059】
図6(b)は、ストッパ170およびストッパ挿入部167の断面図であり、それぞれ上下方向の中心線での断面を示している。図6(b)に示すように、ストッパ挿入部167の底面168には、仮軸149の軸方向に突出する凸部176が設けられている。凸部176は幅方向に所定の間隔を空けて2つ形成されている。一方、ストッパ170には、ストッパ挿入部167の底面168と対向する側の面に凹部179が設けられている。凹部179は幅方向に所定の間隔を空けて2つ形成されている。これら2つの凹部179は、ストッパ170がストッパ挿入部167の最右方まで挿入された状態において、ストッパ挿入部167の2つの凸部176に対応する位置に形成されている。つまり、ストッパ170がストッパ挿入部167の最右方まで挿入されると、ストッパ挿入部167の2つの凸部176がそれぞれ対応する凹部179に係合する位置に形成されている。この係合により、ストッパ170はストッパ挿入部167の最右方に挿入された状態で係止され、幅方向の移動が規制される。
【0060】
一方、ストッパ170がストッパ挿入部167の最右方まで挿入された状態から、ストッパ170を左方に摺動させると、ストッパ170の2つの凹部179は、両方ともストッパ挿入部167の2つの凸部176との係合が解かれる。これと同時に、ストッパ170の左方部が仮軸149の左の側面よりも左方に突出し始める。ストッパ170をさらに左方に摺動させていくと、ストッパ170の2つの凹部179のうち右側の凹部179が、ストッパ挿入部167の左側の凸部176に係合する。そしてストッパ170の左方への摺動は当該係合により規制され、ストッパ170はストッパ挿入部167に係止される。このとき、ストッパ170の最右方部は、ストッパ挿入部167の右側の凸部176よりも左側に位置している。また、このとき、ストッパ170の左方部は、所定量が仮軸149の左の側面よりも左方に突出している状態となっている。言い換えると、ストッパ170の一部が、軸方向と直角に交差する方向について、仮軸149の左の側面よりも外側にある状態となっている。仮軸149に組付けられたスライダ10(図1参照)は、軸方向の端面の左方側の脚部25bに対応する部分が、仮軸149から突出しているストッパ170の左方部に接触することによって軸方向の移動が規制される。
【0061】
このように、本変形例に係る仮軸149のストッパ機構164は、ストッパ170がストッパ挿入部167の最右方まで挿入された状態、すなわちストッパ170がストッパ挿入部167に完全に収容された状態と、ストッパ170の左方部が仮軸149の左の側面よりも左方に所定量突出している状態との2つの状態とにすることが出来る。そしてこれら2つの状態を任意に切替えることが可能となっている。これら2つの状態の何れの状態にするかは、ストッパ170の左右2つの凹部179がストッパ挿入部167の左右2つの凸部176にそれぞれ係合している状態か、ストッパ170の右側の凹部179がストッパ挿入部167の左側の凸部176に係合している状態かを選択することによって決定される。言い換えると、ストッパ170の2つの凹部179およびストッパ挿入部167の2つの凸部176は、ストッパ170の位置決め機構、さらには移動規制機構を構成している。本変形例に係る仮軸149には、このような構成のストッパ機構164が両端部に設けられている。
【0062】
本変形例に係る仮軸149のストッパ機構164の使用方法は、上記実施形態とはストッパ170のスライド方向が左右方向であることが異なる他は同様であるので、説明は省略する。
【0063】
本変形例に係る仮軸149おいても、上記実施形態と同様の効果を発揮する。すなわち、組付けるスライダ10の全長にかかわらず、ストッパ機構164をワンタッチで脱落防止状態にセットすることができ、作業性は良好である。また、ストッパ挿入部167は仮軸149と一体に成型加工でき、組付けるスライダ10の全長にかかわらずストッパ挿入部167には同じストッパ170が挿入されるので、仮軸149全体での構成部品を少なくでき、部品管理が容易である。さらに、ストッパ170をストッパ挿入部167から取り外して用いることがないので、ストッパを紛失してしまうことがない。
【0064】
以上で本発明の実施形態および変形例についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されず、適宜変形が可能である。例えば、仮軸に設けられる転動溝は、片側に1つでも良いし、3つでも良い。また、本実施形態または変形例に係るストッパ機構を一方側の端部にのみ有し、他方側の端部には他のタイプのストッパ機構を設けても良い。他のタイプのストッパとは、例えば固定タイプのストッパであり、仮軸上面に設けられた凸部、あるいは公知の線材ストッパ等であっても良い。また、ストッパ挿入部のあり溝形状およびこれに対応するストッパの断面形状は、ストッパが軸方向に脱落せず、スライド可能であれば台形状でなくても構わない。例えばストッパの両側面に凸条を形成し、ストッパ挿入部である溝の両側面に該凸条と係合する凹溝を形成しても良い。また、ストッパ挿入部の底面に凹部を設け、ストッパのストッパ挿入部の底面と対向する側の面に凸部を設けても良い。また、上記変形例では、ストッパ挿入部は仮軸の左の側面側から端面の中央部まで幅方向に延在して設けられているが、仮軸の右の側面側から設けても良い。また、ストッパ挿入部およびストッパの寸法も適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 直動案内装置
4 案内レール
7 鋼球
10 スライダ
13 凹部
16 転動溝
19 本体部
22 エンドキャップ
25 (スライダの)脚部
28 胴体部
31 サイドシール
34 (スライダの)転動溝
37 転動路
40 直線路
43 循環路
46 ボルト穴
49 仮軸
52 (仮軸の)転動溝
55 肉ぬすみ部
58 壁部
61 仮軸の端面
64 ストッパ機構
67 ストッパ挿入部
70 ストッパ
73 ストッパの上面
76 凸部
79 凹部
82 防塵部品
201 線材ストッパ
213 挿入スリーブ
225 輪ゴム
228 固定バンド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールに、該案内レールの軸方向に移動可能に取付けられるスライダを仮に組付けるための直動案内装置用仮軸において、
前記仮軸の軸方向の両端部には、該仮軸に組付けられた前記スライダの前記両端部からの脱落を防止するための脱落防止機構が設けられ、
前記脱落防止機構の少なくとも一方は、移動部材と該移動部材が移動するための軌道とを備え、
前記移動部材は、前記軌道を移動して、前記移動部材の一部が前記軸方向と直角に交差する方向について前記仮軸の外側面よりも外方に突出している状態の第1の位置と、前記移動部材の全部が前記軸方向と直角に交差する方向について前記外側面よりも内側にある状態の第2の位置とを切替え可能であることを特徴とする直動案内装置用仮軸。
【請求項2】
前記移動部材は、前記第1の位置において、前記仮軸に組付けられた前記スライダの前記軸方向への移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項3】
前記移動部材は、前記軌道を前記軸方向と直角に交差する方向に摺動することを特徴とする請求項1または2に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項4】
前記軌道は、前記仮軸の前記端部の端面の一部を切り欠いて形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項5】
前記脱落防止機構は、前記移動部材の位置を前記第1の位置または前記第2の位置に係止するための係止機構を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項6】
前記係止機構は、前記移動部材または前記軌道の何れか一方に形成された凸部と、前記移動部材または前記軌道の何れか他方に形成され、前記凸部に係合する凹部であることを特徴とする請求項5に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項7】
前記凸部および前記凹部はそれぞれ複数が形成され、前記移動部材の位置が前記第1の位置の時は、前記複数の凸部のうちの一部と、前記複数の凹部のうちの一部とが係合し、前記第2の位置の時は、前記複数の凸部の全てと、前記複数の凹部の全てとが係合していることを特徴とする請求項6に記載の直動案内装置用仮軸。
【請求項8】
前記軌道はあり溝であり、前記移動部材は前記あり溝に係合する板部材であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の直動案内装置用仮軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100852(P2013−100852A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244447(P2011−244447)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】