説明

直流試験装置及び半導体試験装置

【課題】大幅なコスト上昇及び試験効率の低下を招くことなく直流信号をDUTに印加する際の悪影響を効果的に排除することができる直流試験装置等を提供する。
【解決手段】直流試験装置1は、DUT30に印加すべき直流信号を出力するアンプ21と、アンプ21の出力端とDUT30との間を接続又は遮断するスイッチ16と、DUT30とアンプ21の入力端とを電気的に接続してDUT30のピンPに現れる電圧をアンプ21の入力端に帰還させる帰還回路(抵抗17、スイッチ18、及びスイッチ24)と、アンプ21の出力端とスイッチ16との間に設けられ、スイッチ16がオフ状態になってアンプ21の出力端とDUT30との間が遮断されている場合に、DUT30のピンPに現れる電圧を出力側に保持しつつ、入力側と出力側との間を遮断状態にする電圧保持回路(コンデンサ14及びスイッチ26)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに対する直流試験を行う直流試験装置、及び当該装置を備える半導体試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体試験装置を用いた半導体デバイス(以下、DUT(Device Under Test)という)の試験は、直流試験と交流試験とに大別される。ここで、直流試験とは、DUTの特定のピンに直流信号を印加したときに測定される直流信号が予め定められた規格内であるか否かを判定する試験であり、交流試験とは、パルス状の試験信号をDUTに印加したときに、期待通りの信号が得られるか否かを判定する試験である。
【0003】
上記の直流試験は、電圧印加電流測定試験(VFIM試験)、電流印加電圧測定試験(IFVM試験)、及び電流印加電流測定試験(IFIM試験)に大別される。ここで、VFIM試験とは、DUTの特定のピンに電圧を印加したときにそのピンから出力される電流を測定する試験である。また、IFVM試験とはDUTの特定のピンに電流を供給したときにそのピンに現れる電圧を測定する試験であり、IFIM試験とはDUTの特定のピンに電流を供給したときにそのピンから出力される電流を測定する試験である。尚、DUTの特定のピンに電圧を印加したときにそのピンとは異なるピンに現れる電圧を測定する電圧印加電圧測定試験(VFVM試験)もある。
【0004】
以下の特許文献1には、上記のVFIM試験が可能な直流試験装置の一例が開示されている。この直流試験装置は、DUTに印加すべき電圧を設定するディジタル/アナログ変換器(DAC)と、DACのピンに現れる電圧を検出するセンスアンプと、センスアンプで検出される電圧がDACの設定電圧と平衡するようにDUTのピンに印加されるべき電圧を制御するフォースアンプと、フォースアンプの出力電圧に対応した電流をDUTのピンに出力する電圧電流変換回路と、電圧電流変換回路の入力電圧に基づいてDUTのピンに流れる電流を測定する電流測定手段とを備えており、DUTへの電圧印加の際に生ずる切替スイッチによる電圧効果、漏れ電流等を防止するものである。
【特許文献1】特開2008−232636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、直流試験装置を用いてDUTの直流試験を行う場合には、上記の特許文献1に開示されている通り、切替スイッチをオン状態にしてアンプで増幅された直流信号をDUTに印加し、又は切替スイッチをオフ状態にしてDUTに印加されていた直流信号を遮断する動作が頻繁に行われる。切替スイッチの切り替えによってDUTに入出力される信号が急激に変化すると、DUTが破壊されてしまう等の悪影響が生ずることがある。
【0006】
このため、従来の直流試験装置では、切替スイッチがオフ状態である場合には、DUTに現れている電圧を検出してアンプに入力し、そのアンプからDUTに現れている電圧と同じ電圧が出力されるようにしている。アンプから出力される電圧が、DUTに現れている電圧と同じであれば、切替スイッチをオン状態にしてもDUTに入出力される信号が急激に変化することはないため、DUTの破壊等の悪影響を防止することができる。
【0007】
しかしながら、従来の直流試験装置では、DUTに現れている電圧と同じ電圧がアンプから出力されている状態で切替スイッチをオン状態にすると、アンプに対して正帰還ループが形成されてしまう。このため、アンプにオフセット電圧がある場合には、アンプの周波数特性に応じてアンプの出力電圧が大幅に増加又は減少してアンプの出力電圧が電源電圧の近傍に達することがある。すると、DUTに入出力される信号の急激な変化を防止する対策を行っているにも拘わらず、DUTに入出力される信号が急激に変化してDUTの破壊等の悪影響が生じてしまう。
【0008】
以上の正帰還ループの形成によって生ずる悪影響を防止するためには、切替スイッチをオン状態にしてアンプの出力端とDUTとが接続されてから、即座にDUTとアンプの入力端との間の接続を断状態にして正帰還ループを解消すれば良いと考えられる。しかしながら、アンプの出力端とDUTとの間に設けられる切替スイッチは、切り替え指令を出力してから状態が確実に切り替わるまでにはある程度の時間が必要になり、また、切替スイッチ毎に切り替えに要する時間のバラツキがある。このため、切替スイッチが確実にオン状態になる前に正帰還ループが解消されたり、切替スイッチがオン状態になった後にも正帰還ループが維持されてしまう虞が考えられる。
【0009】
また、以上の正帰還ループが形成されていても、アンプの周波数帯域が制限されていれば、アンプの出力電圧の大きな変動を防ぐことはできる。しかしながら、周波数帯域が制限されたアンプを用いると、DUTの試験時における応答特性も悪化してしまい、DUTの試験に要する時間が長くなって試験効率が低下してしまう。ここで、切替スイッチの切り替えを行う場合にのみアンプの周波数帯域や直流ゲインを動的に低下させる回路を直流試験装置に組み込めば、上記の試験効率の低下を防止することができると考えられる。しかしながら、かかる回路の追加によって直流試験装置のコストが上昇するという新たな問題が生じてしまう。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大幅なコスト上昇及び試験効率の低下を招くことなく直流信号をDUTに印加する際の悪影響を効果的に排除することができる直流試験装置、及び当該装置を備える半導体試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様による直流試験装置は、半導体デバイス(30)に印加すべき直流信号を出力する増幅器(21)と、前記増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間を接続又は遮断する切替器(16)とを備える直流試験装置(1、2)において、前記半導体デバイスと前記増幅器の入力端とを電気的に接続して前記半導体デバイスに現れる電圧を前記増幅器の入力端に帰還させる帰還回路(17、18、24、31)と、前記増幅器の出力端と前記切替器との間、又は前記帰還回路によって電気的に接続される前記半導体デバイスと前記増幅器の入力端との間に設けられ、前記切替器によって前記増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間が遮断されている場合に前記半導体デバイスに現れる電圧を出力側に保持しつつ、入力側と出力側との間を遮断状態にする電圧保持回路(14、26、32、33)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、切替器によって増幅器の出力端と半導体デバイスとの間が遮断されると、増幅器の出力端と切替器との間、又は帰還回路によって電気的に接続される半導体デバイスと増幅器の入力端との間に設けられた電圧保持回路の出力側に、半導体デバイスに現れる電圧が保持されつつ、電圧保持回路の入力側と出力側との間が遮断状態にされる。
また、本発明の第1の態様による直流試験装置は、前記電圧保持回路が、入力側と出力側との間に設けられて入力側と出力側との間を接続又は遮断するスイッチ(26、32)と、出力側に接続されたコンデンサ(14、33)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の第1の態様による直流試験装置は、出力端が前記切替器に接続された補助増幅器(13)を備えることを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様による直流試験装置は、半導体デバイス(30)に印加すべき直流信号を出力する増幅器(21)と、当該増幅器の出力端に接続される補助増幅器(13)と、前記増幅器と前記補助増幅器との間を接続又は遮断する第1切替器(26)と、前記補助増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間を接続又は遮断する第2切替器(16)とを備える直流試験装置(3)において、前記半導体デバイスと前記補助増幅器の入力端とを電気的に接続して前記半導体デバイスに現れる電圧を前記補助増幅器の入力端に帰還させる帰還回路(17、18、31)と、前記帰還回路によって電気的に接続される前記半導体デバイスと前記補助増幅器の入力端との間に設けられ、前記第1切替器によって前記増幅器と前記補助増幅器との間が遮断され、且つ前記第2切替器によって前記補助増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間が遮断されている場合に前記半導体デバイスに現れる電圧を出力側に保持しつつ、入力側と出力側との間を遮断状態にする電圧保持回路(41〜43)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、第2切替器によって補助増幅器の出力端と半導体デバイスとの間が遮断されると、第1切替器によって増幅器と補助増幅器との間が遮断され、帰還回路によって電気的に接続される半導体デバイスと補助増幅器の入力端との間に設けられた電圧保持回路の出力側に、半導体デバイスに現れる電圧が保持されつつ、電圧保持回路の入力側と出力側との間が遮断状態にされる。
また、本発明の第2の態様による直流試験装置は、前記電圧保持回路が、入力側と出力側との間に設けられて入力側と出力側との間を接続又は遮断する第1スイッチ(41)と、出力側に接続されたコンデンサ(43)と、前記コンデンサを出力側から電気的に切り離す第2スイッチ(42)とを備えることを特徴としている。
本発明の半導体試験装置は、半導体デバイス(30)に試験信号を印加して得られる信号を用いて前記半導体デバイスの試験を行う半導体試験装置において、前記直流信号を前記試験信号として前記半導体デバイスに印加する上記の何れかに記載の直流試験装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、切替器によって増幅器の出力端と半導体デバイスとの間を遮断した場合には、増幅器の出力端と切替器との間に設けられた電圧保持回路、帰還回路によって電気的に接続される半導体デバイスと増幅器の入力端との間に設けられた電圧保持回路、又は帰還回路によって電気的に接続される半導体デバイスと補助増幅器の入力端との間に設けられた電圧保持回路の出力側に半導体デバイスに現れる電圧を保持しつつ、電圧保持回路の入力側と出力側との間を切断状態にしている。このため、切替器によって増幅器の出力端と半導体デバイスとの間を接続したときに正帰還ループが形成されることはなく、しかも半導体デバイスに印加される電圧が急激に変化することもないから、直流信号を半導体デバイスに印加する際の悪影響を効果的に排除することができるという効果がある。また、増幅器の周波数帯域を制限する必要がないため試験効率の低下を防止することができ、また、従来に比べて大幅な回路の追加を行う必要がないため、大幅なコストの上昇を招くこともないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による直流試験装置及び半導体試験装置について詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の直流試験装置1は、ディジタル/アナログ変換器(DAC)11、DC測定部12、アンプ13(補助増幅器)、コンデンサ14(電圧保持回路)、抵抗15、スイッチ16(切替器)、抵抗17(帰還回路)、スイッチ18(帰還回路)、スイッチ19、及びアナログ/ディジタル変換器(ADC)20を備えており、DUT30(半導体デバイス)に対するIFVM試験及びVFIM試験が可能である。
【0015】
IFVM試験ではDUT30のピンPに所定の電流を供給したときにピンPに現れる電圧の測定が測定され、VFIM試験ではDUT30のピンPに所定の電圧Vを印加したときにピンPに流れる電流が測定される。尚、本実施形態の直流試験装置1は、DUT30に試験信号を印加して得られる信号に基づいてDUT30のパス/フェイルの試験を行う半導体試験装置に複数設けられているものとする。
【0016】
DAC11は、DUT30のピンPに印加すべき電圧(目標電圧)又は供給すべき電流(目標電流)を示すディジタル信号を入力としており、このディジタル信号をアナログ信号に変換して目標信号S1として出力する。DC測定部12は、アンプ21(増幅器)、アンプ22,23、スイッチ24(帰還回路)、スイッチ25、スイッチ26(電圧保持回路)、及びスイッチ27,28を備えており、DAC11から出力される目標信号S1に基づいてDUT30のピンPに印加すべき電圧又は供給すべき電流を出力するとともに、電圧印加によりピンPに流れる電流又は電流供給によりピンPに現れる電圧をADC20に出力する。尚、DC測定部12は、集積化されて1つの半導体チップとして実現される。
【0017】
アンプ21は、非反転入力端(+)がスイッチ24に接続されているとともに反転入力端(−)がスイッチ27に接続されており、スイッチ24,27を介して非反転入力端及び反転入力端にそれぞれ入力される信号の差である誤差信号を求め、その誤差信号を所定の増幅率で増幅して出力する。アンプ22は、非反転入力端が抵抗15の一端に接続されているとともに反転入力端が抵抗15の他端に接続されており、抵抗15の両端における電圧降下を検出し、その検出結果を所定の増幅率で増幅して出力する。アンプ23は、出力端と反転入力端とが接続された増幅率が「1」であるアンプであり、スイッチ18,19の一端に接続されている非反転入力端に入力される電圧を出力端から出力する。
【0018】
スイッチ24は、アンプ21の非反転入力端に対して、DAC11を接続するか、又はスイッチ18,19の一端を接続するかを切り替える。スイッチ25は、アンプ21の出力端と反転入力端とを接続するか否かを切り替える。スイッチ25によってアンプ21の出力端と反転入力端とが接続されると、アンプ21の増幅率は「1」になる。スイッチ26は、アンプ21の出力端とアンプ13の非反転入力端との間を接続又は遮断する。尚、上記のアンプ21が、その出力を高インピーダンスにすることができるものである場合(スリーステートである場合)には、アンプ21の出力を高インピーダンスにすればアンプ21の出力端とアンプ13の非反転入力端との間を実質的に遮断することができるため、スイッチ26を省略することができる。
【0019】
スイッチ27は、アンプ21の反転入力端に対して、アンプ22の出力端を接続するか、又はアンプ23の出力端を接続するかを切り替える。スイッチ28は、ADC20に対して、アンプ22の出力端を接続するか、又はアンプ23の出力端を接続するかを切り替える。尚、詳細は後述するが、IFVM試験の場合には、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端が接続されるようスイッチ27が切り替えられるとともに、ADC20に対してアンプ23の出力端が接続されるようスイッチ28が切り替えられる。これに対し、VFIM試験の場合には、アンプ21の反転入力端に対してアンプ23の出力端が接続されるようスイッチ27が切り替えられるとともに、ADC20に対してアンプ22の出力端が接続されるようスイッチ28が切り替えられる。
【0020】
アンプ13は、出力端と反転入力端とが接続された増幅率が「1」であるアンプであり、DC測定部12のアンプ21から出力されてスイッチ26を介して非反転入力端に入力される信号を出力端から出力する。このアンプ13は、アンプ21の電流供給能力を補強するために設けられる。コンデンサ14は、アンプ13の非反転入力端に接続されており、スイッチ16がオフ状態である場合にDUT30に現れる電圧を保持する。このコンデンサ14は、スイッチ16をオン状態にしたときに、DUT30に入出力される信号が急激に変化してDUT30が破壊されてしまう等の悪影響を防止するために設けられる。
【0021】
抵抗15は、アンプ15の出力端に接続されて、DUT30のピンPに供給される電流を検出するために用いられる抵抗値が既知の電流検出用の抵抗であって、温度変化等による抵抗値の変動が極めて小さな抵抗である。スイッチ16は、抵抗15とDUT30のピンPとの間に設けられ、抵抗15とDUT30との間を接続又は遮断する。このスイッチ16によって、アンプ21及びアンプ13とDUT30との間も接続又は遮断されることになる。尚、スイッチ16としては、例えば機械式のリレーやフォトモスリレー(登録商標)等の電子式のリレーを用いることができる。
【0022】
抵抗17は、DUT30のピンPに接続される抵抗である。スイッチ18は、他端が抵抗17に接続されており、抵抗17とアンプ23の入力端との間を接続又は遮断する。スイッチ19は、アンプ23の非反転入力端を接地するするか否かを切り替える。ADC20は、スイッチ28を介して入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する。これにより、電圧印加によりピンPに流れる電流、又は電流供給によりピンPに現れる電圧が測定される。尚、以上説明したスイッチ16,18,19及びDC測定部12に設けられたスイッチ24〜28のオン状態・オフ状態の切り替えは不図示の制御装置によって行われる。
【0023】
次に、上記構成における直流試験装置1の動作について説明する。図2は、本発明の第1実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。尚、以下では、直流試験装置1によってDUT30に対するIFVM試験を行う場合の動作について説明する。また、図2では、理解を容易にするために、DUT30のピンPの電位と等電位の配線のうちの主なものを太線で図示している。
【0024】
まず、不図示の制御装置によって、スイッチ16,18,19及びDC測定部12に設けられたスイッチ24〜28のオン状態・オフ状態の設定が行われる。具体的には、スイッチ16,19がオフ状態に設定されるとともにスイッチ18がオン状態に設定される。また、アンプ21の非反転入力端に対してスイッチ18,19の一端が接続されるようスイッチ24が設定され、スイッチ25,26がオン状態され、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端及びアンプ23の出力端の何れも接続されないようにスイッチ27が設定され、ADC20に対してアンプ23の出力端が接続されるようにスイッチ28が設定される。
【0025】
以上の設定が終了すると、図2(a)に示す通り、DUT30のピンPから抵抗17、スイッチ18、スイッチ24、アンプ21、スイッチ26、アンプ13、及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位が、DUT30のピンPの電位と等しくなる。すると、アンプ13の非反転入力端に接続されたコンデンサ14の一方の電極の電位がDUT30のピンPの電位と等しくなる。コンデンサ14の他方の電極は接地されているため、コンデンサ14にはDUT30のピンPに現れる電圧が保持される。
【0026】
次に、不図示の制御装置によってスイッチ26がオフ状態に切り替えられる。すると、図2(b)に示す通り、アンプ21の出力端とアンプ13の非反転入力端との間が遮断される。ここで、スイッチ26がオフ状態に切り替えられても、DUT30のピンPから抵抗17、スイッチ18、スイッチ24、及びアンプ21を介してスイッチ26に至る経路は図2(a)と同様であるため、この経路の電位はDUT30のピンPの電位と等しくなる。
【0027】
また、アンプ13の非反転入力端には、DUT30のピンPに現れる電圧が保持されたコンデンサ14が接続されているため、スイッチ26がオフ状態に切り替えられても、アンプ13及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位もDUT30のピンPの電位と等しくなる。このように、アンプ21とアンプ13との間に設けられたコンデンサ14とスイッチ26とからなる回路(電圧保持回路)によって、DUT30のピンPに現れる電圧が出力側(アンプ13の非反転入力端に接続されている側)に保持されるとともに、その回路の入力側と出力側との間が遮断される。
【0028】
スイッチ26がオフ状態に切り替えられて直流試験装置1が図2(b)に示す状態になると、不図示の制御装置によってスイッチ16がオン状態に切り替えられ、直流試験装置1とDUT30のピンPとが電気的に接続される。また、スイッチ16の切り替えに合わせて、アンプ21の非反転入力端に対してDAC11が接続されるようスイッチ24が切り替えられ、スイッチ25がオフ状態に切り替えられるとともにスイッチ26がオン状態に切り替えられ、更にアンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端が接続されるようにスイッチ27が切り替えられる。以上の切り替えによって、直流試験装置1は図1に示す状態になる。
【0029】
つまり、DAC11から出力される目標信号S1がアンプ21の非反転入力端に入力されて所定の増幅率で増幅され、増幅された信号に応じた電流が、スイッチ26、アンプ13、抵抗15、及びスイッチ16を順に介してDUT30のピンPに供給される。ここで、DUT30のピンPに供給される電流が抵抗15を介することによって、DUT30のピンPに供給される電流に応じた電圧降下が抵抗15で生する。この電圧降下はアンプ22で検出されてスイッチ27を介してアンプ21の反転入力端にフィードバックされる。かかるフィードバックにより、DUT30に流れる電流が目標信号S1で示される電流に一致するように制御される。
【0030】
他方、DUT30のピンPに対する電流供給によってピンPに現れる電圧は、抵抗17及びスイッチ18を順に介してアンプ23の非反転入力端に入力される。アンプ23は、出力端と反転入力端とが接続された増幅率が「1」であるアンプであるため、出力端からは非反転入力端に入力される電圧が出力される。アンプ23から出力された電圧は、スイッチ28を介してADC20に入力されディジタル信号に変換される。以上の動作によって、DUT30の特定のピンPに電流を供給したときにそのピンPに現れる電圧を測定するIFVM試験が行われる。
【0031】
直流試験装置1をDUT30から電気的に切り離す場合には、不図示の制御装置によってスイッチ16がオフ状態に切り替えられて、直流試験装置1が図2(a)に示す状態に切り替えられる。つまり、スイッチ16の切り替えに合わせて、アンプ21の非反転入力端に対してスイッチ18,19の一端が接続されるようスイッチ24が切り替えられ、スイッチ25がオン状態に切り替えられ、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端及びアンプ23の出力端の何れも接続されないようにスイッチ27が切り替えられる。そして、再びDUT30に対してIFVM試験を行う場合には、直流試験装置1を、図2(b)に示す状態、図1に示す状態に順に切り替える。
【0032】
尚、図1に示す状態の直流試験装置1において、アンプ21の反転入力端に対してアンプ23の出力端が接続されるようスイッチ27を切り替えるとともに、ADC20に対してアンプ22の出力端が接続されるようスイッチ28を切り替えることにより、VFIM試験を行うことができる。VFIM試験は、スイッチ27,28の切り替え以外は、以上説明したIFVM試験を行う場合の動作と同様の動作により行うことができる。
【0033】
以上説明した通り、本実施形態の直流試験装置1によれば、アンプ21の出力端とアンプ13の入力端との間にコンデンサ14及びスイッチ26が設けられた構成にし、直流試験装置1とDUT30のピンPとを電気的に接続するスイッチ16がオフ状態のときに、DUT30のピンPに現れる電圧をコンデンサ14に保持しつつ、アンプ21の出力端とアンプ13の入力端とを遮断している。このため、スイッチ16をオン状態に切り替えても正帰還ループが形成されることはなく、しかもDUT30に印加される電圧が急激に変化することもないから、直流信号をDUT30に印加する際の悪影響を効果的に排除することができる。
【0034】
尚、実際の回路では、図2(b)に示す通り、スイッチ26がオフ状態になると、スイッチ26の漏れ電流(オフリーク電流)、アンプ13の入力バイアス電流、及び基板のリーク電流等によりコンデンサ14が放電又は充電されるため、アンプ13の出力が変動することがある。しかしながら、これらの電流は極めて小さく(例えば、1μA程度以下)、スイッチ16がオフ状態になっている時間に応じてコンデンサ14の容量を適宜選択することで、上記の電流に起因するアンプ13の出力変動を許容可能な範囲に収めることは可能である。
【0035】
また、前述の通り、本実施形態では正帰還ループが形成されないため、アンプ21,13の周波数帯域を制限する必要はないが、実際の回路では、アンプ21の出力インピーダンスとコンデンサ14とによってローパスフィルタが形成されるため、周波数帯域が若干制限されてしまう。しかしながら、上記のリーク電流等から必要とされるコンデンサ14の容量は数百pF〜10nF程度と極めて小さいため、正帰還ループが形成される従来の直流試験装置で必要となる周波数帯域の制限に比べて十分広い周波数帯域を確保することができる。
【0036】
例えば、正帰還ループが形成される従来の直流試験装置において、スイッチ16をオフ状態にしてからオン状態にするまでの待ち時間を100μsecとすると、アンプ21の周波数帯域を10kHzよりも十分低く設定する必要がある。しかしながら、本実施形態の直流試験装置では、例えばコンデンサ14の容量が10nFであり、アンプ21の出力インピーダンスが100Ωである場合には、これらによって形成されるローパスフィルタの周波数帯域は159kHz程度になり、正帰還ループが形成される従来の直流試験装置に比べてアンプ21の周波数帯域を高く設定することができる。
【0037】
このように、本実施形態では、正帰還ループが形成される従来に比べてアンプ21の周波数帯域を高く設定することができるため、試験効率の低下を防止することができる。また、図1に示す本実施形態の直流試験装置1は、DUT30のピンPに現れる電圧を保持するコンデンサ14を追加するだけで良いため、従来に比べて大幅な回路の追加を行う必要がないため、大幅なコストの上昇を招くこともない。
【0038】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。図3に示す通り、本実施形態の直流試験装置2は、図1に示す直流試験装置1が備えるスイッチ18,19とアンプ23との間にアンプ31(帰還回路)、スイッチ32(電圧保持回路)、及びコンデンサ33(電圧保持回路)を新たに設け、アンプ21とアンプ13との間のコンデンサ14を省略した構成である。尚、本実施形態の直流試験装置2もDUT30に対するIFVM試験及びVFIM試験が可能である。
【0039】
アンプ31は、出力端と反転入力端とが接続された増幅率が「1」であるアンプであり、スイッチ18,19の一端に接続されている非反転入力端に入力される電圧を出力端から出力する。スイッチ32は、アンプ31の出力端とアンプ23の非反転入力端との間を接続又は遮断する。尚、本実施形態では、スイッチ24の切り替えによってアンプ21の非反転入力端にアンプ31の出力端が接続されることがある。アンプ21の非反転入力端にアンプ31の出力端が接続されている場合に、上記のスイッチ32によって、アンプ31の出力端とアンプ23の非反転入力端との間が遮断されると、アンプ31の出力端とアンプ21の非反転入力端との間も遮断される。スイッチ32としては、スイッチ16と同様に、例えば機械式のリレーやフォトモスリレー(登録商標)等の電子式のリレーを用いることができる。
【0040】
コンデンサ33は、スイッチ32に接続されており、スイッチ16がオフ状態である場合にDUT30に現れる電圧を保持する。このコンデンサ33は、図1に示すコンデンサ14と同様に、スイッチ16をオン状態にしたときに、DUT30に入出力される信号が急激に変化してDUT30が破壊されてしまう等の悪影響を防止するために設けられる。コンデンサ33の容量は、図1に示すコンデンサ14と同様に、許容されるリーク電流や確保すべき周波数帯域等を考慮して設定される。
【0041】
次に、上記構成における直流試験装置2の動作について説明する。図4は、本発明の第2実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。尚、以下では、直流試験装置2によってDUT30に対するIFVM試験を行う場合の動作について説明する。また、図4では、理解を容易にするために、図2と同様に、DUT30のピンPの電位と等電位の配線のうちの主なものを太線で図示している。
【0042】
まず、不図示の制御装置によって、スイッチ16,18,19,32及びDC測定部12に設けられたスイッチ24〜28のオン状態・オフ状態の設定が行われる。具体的には、スイッチ16,19がオフ状態に設定されるとともにスイッチ18,32がオン状態に設定される。また、アンプ21の非反転入力端に対してアンプ31の出力端が接続されるようスイッチ24が設定され、スイッチ25,26がオン状態され、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端及びアンプ23の出力端の何れも接続されないようにスイッチ27が設定され、ADC20に対してアンプ23の出力端が接続されるようにスイッチ28が設定される。
【0043】
以上の設定が終了すると、図4(a)に示す通り、DUT30のピンPから抵抗17、スイッチ18、アンプ31、スイッチ32、スイッチ24、アンプ21、スイッチ26、アンプ13、及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位が、DUT30のピンPの電位と等しくなる。すると、アンプ21の非反転入力端に接続されたコンデンサ33の一方の電極の電位がDUT30のピンPの電位と等しくなる。コンデンサ33の他方の電極は接地されているため、コンデンサ33にはDUT30のピンPに現れる電圧が保持される。
【0044】
次に、不図示の制御装置によってスイッチ32がオフ状態に切り替えられる。すると、図4(b)に示す通り、アンプ31の出力端とアンプ23,21の非反転入力端との間が遮断される。ここで、アンプ21の非反転入力端には、スイッチ24を介してDUT30のピンPに現れる電圧が保持されたコンデンサ33が接続されているため、スイッチ32がオフ状態に切り替えられても、スイッチ24、アンプ21、スイッチ26、アンプ13、及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位はDUT30のピンPの電位と等しくなる。
【0045】
このように、本実施形態では、抵抗17、スイッチ18、アンプ31、及びスイッチ24からなる帰還回路によって電気的に接続されたDUT30のピンPとアンプ21との間に、コンデンサ33とスイッチ32とからなる回路(電圧保持回路)が設けられている。そして、この回路によって、DUT30のピンPに現れる電圧が出力側(アンプ21の非反転入力端に接続されている側)に保持されるとともに、その回路の入力側と出力側との間が遮断される。
【0046】
スイッチ32がオフ状態に切り替えられて直流試験装置2が図4(b)に示す状態になると、不図示の制御装置によってスイッチ16がオン状態に切り替えられ、直流試験装置2とDUT30のピンPとが電気的に接続される。また、スイッチ16の切り替えに合わせて、アンプ21の非反転入力端に対してDAC11が接続されるようスイッチ24が切り替えられ、スイッチ25がオフ状態に切り替えられ、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端が接続されるようにスイッチ27が切り替えられ、更にスイッチ32がオン状態に切り替えられる。以上の切り替えによって、直流試験装置2は図3に示す状態になり、第1実施形態と同様のIFVM試験が行われる。
【0047】
尚、図3に示す直流試験装置2をDUT30から電気的に切り離す場合には、図1に示す第1実施形態の直流試験装置1と同様に、不図示の制御装置によってスイッチ16がオフ状態に切り替えられて、スイッチ16の切り替えに合わせてスイッチ24,25,27の切り替えが行われる。また、本実施形態においても、スイッチ27,28のオン・オフ状態を変えることにより、VFIM試験を行うことができる。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態の直流試験装置2によれば、抵抗17、スイッチ18、アンプ31、及びスイッチ24からなる帰還回路によって電気的に接続されたDUT30のピンPとアンプ21との間に、コンデンサ33及びスイッチ32が設けられた構成にし、直流試験装置2とDUT30のピンPとを電気的に接続するスイッチ16がオフ状態のときに、DUT30のピンPに現れる電圧をコンデンサ33に保持しつつ、アンプ31の出力端とアンプ21の入力端とを遮断している。このため、スイッチ16をオン状態に切り替えても正帰還ループが形成されることはなく、しかもDUT30に印加される電圧が急激に変化することもないから、直流信号をDUT30に印加する際の悪影響を効果的に排除することができる。
【0049】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、正帰還ループが形成される従来の直流試験装置に比べてアンプ21の周波数帯域を高く設定することができるため、試験効率の低下を防止することができる。また、DUT30のピンPに現れる電圧を保持するコンデンサ33及びスイッチ21を追加するだけで良く、従来に比べて大幅な回路の追加を行う必要がないため、大幅なコストの上昇を招くこともない。
【0050】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。図5に示す通り、本実施形態の直流試験装置3は、図2に示す直流試験装置2が備えるDC測定部12に代えてDC測定部40を設け、スイッチ32及びコンデンサ33に代えてスイッチ41(電圧保持回路、第1スイッチ)、スイッチ42(電圧保持回路、第2スイッチ)、及びコンデンサ43(電圧保持回路)を設けた構成である。尚、本実施形態の直流試験装置3もDUT30に対するIFVM試験及びVFIM試験が可能である。
【0051】
DC測定部40は、図1及び図4に示すDC測定部12と同様に、アンプ21〜23及びスイッチ24〜28を備えるが、スイッチ24とアンプ23の非反転入力端を接続する配線が省略されている点が図1及び図4に示すDC測定部12とは相違する。このため、本実施形態においては、DUT30のピンPに現れる電圧がアンプ21に入力される(帰還される)ことはない。本実施形態の直流試験装置3は、スイッチ24とアンプ23の非反転入力端を接続する配線が省略されたDC測定部40を用いる場合であっても、直流信号をDUT30に印加する際の悪影響を効果的に排除するためのものである。
【0052】
スイッチ41,42は、アンプ31の出力端とアンプ13の非反転入力端との間に直列接続されている。また、コンデンサ43は、一方の電極がスイッチ41,42の接続点に接続されており、他方の電極が接地されている。スイッチ41をオフ状態にするとともにスイッチ42をオン状態にすると、コンデンサ43がアンプ13の非反転入力端に接続された状態で、アンプ31の出力端とアンプ13の非反転入力端との間を遮断することができる。これに対し、スイッチ42をオフ状態にすると、コンデンサ43をアンプ13の非反転入力端(電後保持回路の出力側)から電気的に切り離すことができる。
【0053】
上記のスイッチ41,42としては、スイッチ16と同様に、例えば機械式のリレーやフォトモスリレー(登録商標)等の電子式のリレーを用いることができる。また、コンデンサ43の容量は、図1に示すコンデンサ14及び図3に示すコンデンサ33と同様に、許容されるリーク電流や確保すべき周波数帯域等を考慮して設定される。
【0054】
次に、上記構成における直流試験装置3の動作について説明する。図6は、本発明の第3実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。尚、以下では、第1,第2実施形態と同様に、直流試験装置3によってDUT30に対するIFVM試験を行う場合の動作について説明する。また、図6では、理解を容易にするために、図2,図4と同様に、DUT30のピンPの電位と等電位の配線のうちの主なものを太線で図示している。
【0055】
まず、不図示の制御装置によって、スイッチ16,18,19,41,42及びDC測定部12に設けられたスイッチ24〜28のオン状態・オフ状態の設定が行われる。具体的には、スイッチ16,19がオフ状態に設定されるとともにスイッチ18,41,42がオン状態に設定される。また、アンプ21の非反転入力端が接地されるようスイッチ24が設定され、スイッチ25がオン状態にされるとともにスイッチ26がオフ状態にされ、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端及びアンプ23の出力端の何れも接続されないようにスイッチ27が設定され、ADC20に対してアンプ23の出力端が接続されるようにスイッチ28が設定される。
【0056】
以上の設定が終了すると、図6(a)に示す通り、DUT30のピンPから抵抗17、スイッチ18、アンプ31、スイッチ41,42、アンプ13、及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位が、DUT30のピンPの電位と等しくなる。すると、スイッチ42によってアンプ13の非反転入力端に接続されたコンデンサ43の一方の電極の電位がDUT30のピンPの電位と等しくなる。コンデンサ43の他方の電極は接地されているため、コンデンサ43にはDUT30のピンPに現れる電圧が保持される。
【0057】
次に、不図示の制御装置によってスイッチ41がオフ状態に切り替えられる。すると、図6(b)に示す通り、アンプ31の出力端とアンプ13の非反転入力端との間が遮断される。ここで、アンプ13の非反転入力端には、スイッチ42を介してDUT30のピンPに現れる電圧が保持されたコンデンサ43が接続されているため、スイッチ41がオフ状態に切り替えられても、アンプ13及び抵抗15を介してスイッチ16に至る経路の電位はDUT30のピンPの電位と等しくなる。
【0058】
このように、本実施形態では、抵抗17、スイッチ18、及びアンプ31からなる帰還回路によって電気的に接続されたDUT30のピンPとアンプ13との間に、スイッチ41,42とコンデンサ43とからなる回路(電圧保持回路)が設けられている。そして、この回路によって、DUT30のピンPに現れる電圧が出力側(アンプ13の非反転入力端に接続されている側)に保持されるとともに、その回路の入力側と出力側との間が遮断される。
【0059】
スイッチ41がオフ状態に切り替えられて直流試験装置3が図6(b)に示す状態になると、不図示の制御装置によってスイッチ16がオン状態に切り替えられ、直流試験装置3とDUT30のピンPとが電気的に接続される。また、スイッチ16の切り替えに合わせて、アンプ21の非反転入力端に対してDAC11が接続されるようスイッチ24が切り替えられ、スイッチ25がオフ状態に切り替えられるとともにスイッチ26がオン状態に切り替えられ、アンプ21の反転入力端に対してアンプ22の出力端が接続されるようにスイッチ27が切り替えられ、更にスイッチ42がオフ状態に切り替えられる。スイッチ42がオフ状態になると、コンデンサ43がアンプ13の非反転入力端から電気的に切り離される。以上の切り替えによって、直流試験装置3は図5に示す状態になり、第1,第2実施形態と同様のIFVM試験が行われる。
【0060】
尚、図3に示す直流試験装置3をDUT30から電気的に切り離す場合には、不図示の制御装置によってスイッチ16がオフ状態に切り替えられて、スイッチ16の切り替えに合わせてスイッチ24〜27の切り替えが行われ、更にはスイッチ41,42の切り替えが行われる。また、本実施形態においても、スイッチ27,28のオン・オフ状態を変えることにより、VFIM試験を行うことができる。
【0061】
以上説明した通り、本実施形態の直流試験装置3によれば、抵抗17、スイッチ18、及びアンプ31からなる帰還回路によって電気的に接続されたDUT30のピンPとアンプ13との間に、スイッチ41,42及びコンデンサ43が設けられた構成にし、直流試験装置3とDUT30のピンPとを電気的に接続するスイッチ16がオフ状態のときに、DUT30のピンPに現れる電圧をコンデンサ43に保持しつつ、アンプ31の出力端とアンプ13の入力端とを遮断している。このため、スイッチ16をオン状態に切り替えても正帰還ループが形成されることはなく、しかもDUT30に印加される電圧が急激に変化することもないから、直流信号をDUT30に印加する際の悪影響を効果的に排除することができる。
【0062】
また、本実施形態においても、第1,第2実施形態と同様に、正帰還ループが形成される従来の直流試験装置に比べてアンプ13の周波数帯域を高く設定することができるため、試験効率の低下を防止することができる。また、DUT30のピンPに現れる電圧を保持するコンデンサ43及びスイッチ41,42を追加するだけで良く、従来に比べて大幅な回路の追加を行う必要がないため、大幅なコストの上昇を招くこともない。
【0063】
更に、本実施形態では、スイッチ42によってコンデンサ43がアンプ13の非反転入力端から電気的に切り離されるため、アンプ21の出力インピーダンスとコンデンサ43とによってローパスフィルタが形成されることはない。このため、第1,第2実施形態によりも高い周波数帯域を設定することができる。尚、コンデンサ43による周波数帯域の問題が生じない場合には、スイッチ42を省略することができる。
【0064】
〔その他の実施形態〕
前述した第1,第2実施形態では、アンプ21とスイッチ16との間に、アンプ21の電流供給能力を補強するアンプ13を設けていたが、アンプ21の電流供給能力に問題がなければ、アンプ13を省略することができる。アンプ13を省略した場合でも、第1,第2実施形態の各々において前述した手順と同様の手順でIFVM試験を実施することができる。尚、第3実施形態においても、アンプ13を省略することが可能である。
【0065】
ここで、アンプ13が省略されると、アンプ13に対する入力バイアスの影響を考える必要がなくなる。このため、第1実施形態による直流試験装置1において、アンプ13を省略した場合には、コンデンサ14の容量を小さくすることができる。すると、アンプ21の出力インピーダンスとコンデンサ14とによって形成されるローパスフィルタのカットオフ周波数が高くなるため、アンプ13を設けた場合に比べて高い周波数帯域を設定することができる。
【0066】
また、スイッチ26の漏れ電流(オフリーク電流)及び基板のリーク電流等が数nA程度である場合には、コンデンサ14の容量が数pF〜1nF程度で良い。このため、基板に形成された配線の配線容量を積極的に利用して、コンデンサ14と同様のものを分布定数回路で実現しても良い。これにより、部品としてのコンデンサ14を省略することができる。
【0067】
更に、前述した第1,第2実施形態においても、図5に示すスイッチ42と同様のスイッチを設けても良い。つまり、図1に示す第1実施形態による直流試験装置1では、コンデンサ14をアンプ13の非反転入力端から電気的に切り離すスイッチを設け、図3に示す第2実施形態による直流試験装置2では、コンデンサ33を、スイッチ24を介して接続されたアンプ21の非反転入力端から電気的に切り離すスイッチを設けても良い。これにより、第3実施形態と同様に高い周波数帯域を設定することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態による直流試験装置及び半導体試験装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、VFIM試験及びIFVM試験が可能である直流試験装置について説明したが、本発明の直流試験装置はIFIM試験やVFVM試験を行う場合にも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の第2実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第3実施形態による直流試験装置の要部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態による直流試験装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0070】
1〜3 直流試験装置
13 アンプ
14 コンデンサ
16 スイッチ
17 抵抗
18 スイッチ
21 アンプ
24 スイッチ
26 スイッチ
30 DUT
31 アンプ
32 スイッチ
33 コンデンサ
41,42 スイッチ
43 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスに印加すべき直流信号を出力する増幅器と、前記増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間を接続又は遮断する切替器とを備える直流試験装置において、
前記半導体デバイスと前記増幅器の入力端とを電気的に接続して前記半導体デバイスに現れる電圧を前記増幅器の入力端に帰還させる帰還回路と、
前記増幅器の出力端と前記切替器との間、又は前記帰還回路によって電気的に接続される前記半導体デバイスと前記増幅器の入力端との間に設けられ、前記切替器によって前記増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間が遮断されている場合に前記半導体デバイスに現れる電圧を出力側に保持しつつ、入力側と出力側との間を遮断状態にする電圧保持回路と
を備えることを特徴とする直流試験装置。
【請求項2】
前記電圧保持回路は、入力側と出力側との間に設けられて入力側と出力側との間を接続又は遮断するスイッチと、
出力側に接続されたコンデンサと
を備えることを特徴とする請求項1記載の直流試験装置。
【請求項3】
出力端が前記切替器に接続された補助増幅器を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の直流試験装置。
【請求項4】
半導体デバイスに印加すべき直流信号を出力する増幅器と、当該増幅器の出力端に接続される補助増幅器と、前記増幅器と前記補助増幅器との間を接続又は遮断する第1切替器と、前記補助増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間を接続又は遮断する第2切替器とを備える直流試験装置において、
前記半導体デバイスと前記補助増幅器の入力端とを電気的に接続して前記半導体デバイスに現れる電圧を前記補助増幅器の入力端に帰還させる帰還回路と、
前記帰還回路によって電気的に接続される前記半導体デバイスと前記補助増幅器の入力端との間に設けられ、前記第1切替器によって前記増幅器と前記補助増幅器との間が遮断され、且つ前記第2切替器によって前記補助増幅器の出力端と前記半導体デバイスとの間が遮断されている場合に前記半導体デバイスに現れる電圧を出力側に保持しつつ、入力側と出力側との間を遮断状態にする電圧保持回路と
を備えることを特徴とする直流試験装置。
【請求項5】
前記電圧保持回路は、入力側と出力側との間に設けられて入力側と出力側との間を接続又は遮断する第1スイッチと、
出力側に接続されたコンデンサと、
前記コンデンサを出力側から電気的に切り離す第2スイッチと
を備えることを特徴とする請求項4記載の直流試験装置。
【請求項6】
半導体デバイスに試験信号を印加して得られる信号を用いて前記半導体デバイスの試験を行う半導体試験装置において、
前記直流信号を前記試験信号として前記半導体デバイスに印加する請求項1から請求項5の何れか一項に記載の直流試験装置を備えることを特徴とする半導体試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−127820(P2010−127820A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304342(P2008−304342)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】