説明

直流電源装置、及びそれを搭載する電池式電子機器

電池電圧(Vi)が外部負荷(L)への出力電圧(Vo)より高い期間、バイパス制御部(6)はバイパススイッチ(5)をオン状態に維持する。出力電圧(Vo)が目標電圧(ET)まで降下するとき、コンバータ制御部(4)がスイッチング制御を即座に開始し、昇圧チョッパ(3)が昇圧動作を速やかに開始する。バイパス制御部(6)は、昇圧チョッパ(3)による昇圧動作の開始時点から電池電圧(Vi)と出力電圧(Vo)との一致時点までバイパススイッチ(5)をオン状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池式電子機器に搭載される直流電源装置に関し、特にDC−DCコンバータと並列に接続されるバイパススイッチを有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源装置はDC−DCコンバータを搭載し、電池電圧、又は商用交流電源から整流器を通し入力される実質的な直流電圧を所定の直流電圧へ変換し、外部の負荷(他の電力変換装置又は電力系統を含む)へ出力する。直流電源装置は特に、半導体デバイスによる電子回路を搭載する機器、すなわち電子機器に組み込まれ、その電子機器に対し一定の直流電圧を安定に供給する。
【0003】
電池式電子機器、特に、携帯電話、ノートPC、PDA、又はポータブルオーディオプレイヤ等の携帯情報機器では、内蔵電池からできるだけ多くの電力を引き出すこと、すなわち電池容量の利用効率の向上が電子機器の動作可能時間の延長に繋がるので望ましい。
電池式電子機器に搭載される直流電源装置では、DC−DCコンバータが例えば昇圧チョッパを含み、その昇圧動作により電池容量の利用効率を以下のように向上させる。ここで、昇圧動作とは、電圧変換率(入力電圧に対する出力電圧の比)を1より高い値に維持するための動作、すなわち外部負荷への出力電圧を入力電圧より高く上昇させるための動作をいう。以下、1より高い電圧変換率を昇圧比という。
【0004】
電池放電の初期から中期にわたり、電池電圧は初期電圧から比較的緩やかに降下する。電池式電子機器では、その期間で電池電圧が動作電圧に対する許容下限より高く維持されるように、内蔵電池の種類及びセル数が設定される。直流電源装置はその期間で昇圧チョッパを停止状態に維持し、電池から入力される直流電力を、例えば実質上そのまま外部負荷(すなわち電子機器内の他の装置)へ出力する。こうして、電子機器の動作電圧が許容下限より高く維持される。
【0005】
電池放電の末期では電池電圧が比較的急速に落下する。直流電源装置は目標電圧を例えば電子機器の動作電圧に対する許容下限よりある程度の余裕だけ高く設定する。電池電圧がその目標電圧を実質的に下回るとき、直流電源装置は昇圧チョッパを起動する。それにより、出力電圧を電池電圧から目標電圧まで上昇させ、電子機器へ供給する。こうして、電池が完全放電状態近くに達するまで、直流電源装置は電子機器への出力電圧を目標電圧に維持できる。その結果、電子機器は電池容量のほとんどを電力として利用できる。
【0006】
電池式電子機器に搭載される上記の直流電源装置としては従来、例えば次のようなものが知られる(例えば、特開平5−137267号公報参照)。
図19はその従来の直流電源装置100の回路図である。直流電源装置100の入力端子101Aと101Bとはそれぞれ、電池Bの正極端子と負極端子とへ接続される。直流電源装置100の出力端子102Aと102Bとはそれぞれ、外部負荷L(すなわち電子機器内の他の装置)の高電位側端子と低電位側端子とへ接続される。それにより、直流電源装置100は電池Bからの入力電圧(すなわち電池電圧)Viを外部負荷Lへの出力電圧Voへ変換する。
【0007】
直流電源装置100は、昇圧チョッパ103、コンバータ制御部104、バイパススイッチ105、バイパス制御部106、及び入力電圧検出部107を有する。
昇圧チョッパ103はチョッパスイッチ103Sのスイッチングにより昇圧動作を行う。
コンバータ制御部104は出力端子102Aと102Bとの間の電圧Voを検出し、外部負荷Lへ供給すべき目標電圧ETと比較する。ここで、その目標電圧ETは例えば、外部負荷Lの動作電圧に対する許容下限より所定の余裕だけ高く設定される。コンバータ制御部104は更に、出力電圧Voの目標電圧ETからのずれに基づきチョッパスイッチ103Sのスイッチングをパルス幅変調(PWM)方式で制御する。
【0008】
バイパススイッチ105は、直流電源装置100の高電位側入力端子101Aと高電位側出力端子102Aとの間に、昇圧チョッパ103と並列に接続される。バイパススイッチ105がオン状態であるとき、高電位側入力端子101Aからバイパススイッチ105を通り高電位側出力端子102Aへ至る経路は、インダクタ103Lとダイオード103Dとの直列接続を含む昇圧チョッパ103内の経路のバイパスとして機能する。
バイパス制御部106はバイパススイッチ105のスイッチングを制御する。特に以下に示す通り、昇圧チョッパ103の停止期間ではバイパススイッチ105をオン状態に維持し、昇圧チョッパ103の動作期間ではバイパススイッチ105をオフ状態に維持する。
【0009】
入力電圧検出部107は入力端子101Aと101Bとの間の電圧すなわち電池電圧Viを検出し、その検出値を所定の閾値Ei(以下、起動入力電圧という)と比較する。ここで、バイパススイッチ105のオン期間、すなわち昇圧チョッパ103の停止期間では、高電位側入力端子101Aと高電位側出力端子102Aとの間に電圧降下(以下、停止時電圧降下という)が生じる。起動入力電圧Eiは例えば、コンバータ制御部104の目標電圧ETより停止時電圧降下の上限だけ高く設定される:Ei>ET。
【0010】
直流電源装置100の入力電圧(すなわち電池電圧)Viと出力電圧Voとは、電池Bの放電期間中、図20A、20Bに示されるように変化する。ここで、電池電圧Viの時間変化、すなわち電池Bの放電曲線が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。図20Bは図20Aの点Ss(電池電圧Viと起動入力電圧Eiとの一致点)近傍の拡大図である。
【0011】
電池Bの放電初〜中期では電池Bの放電曲線が比較的平坦である。この平坦部では電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高い。入力電圧検出部107は、電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高いことをコンバータ制御部104とバイパス制御部106とへ通知する。コンバータ制御部104はそのとき停止状態を維持し、チョッパスイッチ103Sをオフ状態に維持する。一方、バイパス制御部106はバイパススイッチ105をオン状態に維持する。こうして、電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高く維持される期間(図20A、20Bに示される領域I)では、昇圧チョッパ103が停止し、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低く維持される。それにより、出力電圧Voは目標電圧ETより高く維持される。
【0012】
昇圧チョッパ103の停止期間(図20A、20Bに示される領域I)では、停止時電圧降下Vonが小さいほど導通損失が低減する。上記の直流電源装置100では、昇圧チョッパ103の停止期間中、バイパススイッチ105がオンする。そのとき、電流が高電位側入力端子101Aと高電位側出力端子102Aとの間で二つに分岐し、一方は昇圧チョッパ103内にあるインダクタ103Lとダイオード103Dとの直列接続を通り、他方はバイパススイッチ105を通る。従って、高電位側入力端子101Aと高電位側出力端子102Aとの間の抵抗はバイパススイッチ105のオンにより低減する。こうして、直流電源装置100は停止時電圧降下Vonを抑制する。その結果、昇圧チョッパ103の停止期間中での直流電源装置100の導通損失が、バイパスを持たない直流電源装置の導通損失より低減するので、電池容量の利用効率が高く維持される。
【0013】
電池Bの放電末期では電池電圧Viが急落する。入力電圧検出部107は電池電圧Viによる起動入力電圧Eiへの降下(図20A、20Bに示される点Ss参照)を検出し、コンバータ制御部104とバイパス制御部106とへ通知する。そのときコンバータ制御部104はPWM制御を開始する。それと同時に、バイパス制御部106はバイパススイッチ105をオフさせる。それにより、電池電圧Viが起動入力電圧Eiと一致する時刻Ts以後、電池電圧Viが起動入力電圧Eiを下回る期間(図20A、20Bに示される領域II)では昇圧チョッパ103が動作し、出力電圧Voを電池電圧Viより高く上昇させ、目標電圧ETと実質的に等しく維持する。
こうして、電池Bが完全放電状態近くに達するまで、直流電源装置100は出力電圧Voを目標電圧ETに維持できる。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
【0014】
電池式電子機器のうち、特に携帯情報機器ではリチウムイオン二次電池が多用される。リチウムイオン二次電池は特に高エネルギー密度の点で、他の二次電池より有利である。
近年、新型のリチウムイオン二次電池が開発されている(例えば特開2003-47238号公報(EP1381135)参照)。新型リチウムイオン二次電池では新たな電極材料が採用される。それにより、エネルギー密度が更に高い。
【0015】
図21には、新型リチウムイオン二次電池(以下、新型電池という)の放電曲線が実線で示され、現行のリチウムイオン二次電池(以下、現行電池という)の放電曲線が破線で示される。新型電池の放電時間は現行電池の放電時間より長い。すなわち、新型電池の放電容量は現行電池の放電容量より大きい。一方、新型電池では現行電池と比べ、放電終止電圧が低く、放電曲線の傾きが大きい(図21に示される放電終止点E、E0、及び放電曲線PL、PL0参照)。
【0016】
携帯情報機器の電池としては高エネルギー密度化の点で、新型電池の採用が望ましい。しかし、新型電池の採用には、電池電圧の低下に合わせた回路設計の変更が必要である。特に、電池電圧をそのまま動作電圧として利用する回路については、より低い電圧で動作可能なように回路設計が変更されねばならない。そのような設計変更は一般に容易ではない。
携帯情報機器が例えば、携帯電話機のように無線による通信機能を持つとき、その携帯情報機器は無線送信部を有する。無線送信部に含まれる電力増幅部は通常、電池電圧をそのまま動作電圧として利用し、送信対象の信号を増幅する。新型電池の採用により電池電圧の変動範囲全体が低下するとき、電力増幅部の出力すべき電力は決まっているので、入力電流が増加する。従って、信号の増幅効率が低下する。そのような効率低下は電池の持続時間の延長を阻むので好ましくない。それ故、新型電池の採用は電力増幅部に対して、より低い動作電圧下での高効率化を要求する。そのような要求を満たすべく、電力増幅部の回路設計を変更するのは容易ではない。
【0017】
電池式電子機器の動作電圧が従来と同程度に維持されるとき、現行電池では電池電圧Viが放電末期で初めて上記の目標電圧(例えば、動作電圧に対する許容下限より所定の余裕だけ高い値ET)を下回る(図21に示される破線PL0と目標電圧ETとの交差点Ss0参照)。一方、新型電池では電池電圧Viが放電末期より早く、すなわち放電中期で目標電圧ETを下回り得る(図21に示される実線PLと目標電圧ETとの交差点Ss参照)。従って、新型電池の採用には特に、上記の直流電源装置100が有効である。
【0018】
従来の直流電源装置は上記の通り、バイパススイッチのオンとコンバータ制御部の起動とを同期させる。
しかし、コンバータ制御部は通常、その起動時点から実質的に零より長い時間(以下、起動時間という)の経過後にスイッチング制御を開始できる。コンバータ制御部の起動時間は、例えばコンバータ制御部の初期化時間、すなわち、基準電圧提供用の内部電源の立ち上げ時間とラッチ回路の初期化時間とを含む。
従って、上記のような従来の直流電源装置では、コンバータ制御部によるスイッチング制御の開始、すなわち昇圧チョッパによる昇圧動作の実際の開始がバイパススイッチのオフから上記の起動時間だけ遅れる。
【0019】
昇圧チョッパによる昇圧動作の実際の開始時点がバイパススイッチのオフ時点から遅れることは、例えば図19に示される従来の直流電源装置100では次のような問題を生じた。
図20Bに示される領域I、すなわち電池電圧Viが起動入力電圧Eiと一致する時刻Ts以前では、電池電圧Vi(破線)が出力電圧Vo(実線)より停止時電圧降下Vonだけ高い。
【0020】
電池電圧Viが起動入力電圧Eiと一致する時刻Ts(図20Bに示される点Ss参照)ではバイパススイッチ105がオフし、同時にコンバータ制御部104が起動する。しかし、出力電圧Voが目標電圧ETと等しく維持され始める時刻Tf(図20Bに示される点Sf参照)は時刻Tsから遅れ時間ΔTだけ遅れる。ここで、遅れ時間ΔTは、コンバータ制御部104の起動時間と、その起動時間中に急落した出力電圧Voが昇圧チョッパ103の昇圧動作により目標電圧ETへ復帰するまでに要する時間(以下、回復時間という)との和である。時刻Tsから時刻Tf=Ts+ΔTまでの期間では出力電圧Voが目標電圧ETから一時的に急落し、アンダーシュートUsを生じる。出力電圧Voの過大なアンダーシュートUsは外部負荷Lである電子機器を突然停止させるおそれがあった。従って、従来の直流電源装置100の信頼性を更に向上させるには、過大なアンダーシュートUsの発生を抑制しなければならなかった。
【0021】
例えば平滑コンデンサ103Cの容量を十分に増大させれば、アンダーシュートUsは十分に低減し得る。しかし、平滑コンデンサ103Cの容量の増大は直流電源装置100全体の回路規模を増大させる。電源部の拡大は、特に携帯情報機器等の電子機器では小型軽量化の向上を阻むので、好ましくなかった。
【0022】
昇圧チョッパ103の停止期間、すなわちバイパススイッチ105のオン期間では電池電圧Viが出力電圧Voより高い。逆に、昇圧チョッパ103の動作期間、すなわちバイパススイッチ105のオフ期間では一般に、電池電圧Viが出力電圧Voより低い。従って、バイパスにはバイパススイッチ105に代え、ダイオードが含まれても良い。バイパス制御部106はそのとき不要であるので、回路規模が低減できる。
しかし、ダイオードの順電圧降下は一般に、スイッチ素子のオン電圧より大きい。すなわち、ダイオードはスイッチ素子より、導通損失が大きい。従って、バイパススイッチ105からダイオードへの置換は変換効率の点で不利であった。
【発明の開示】
【0023】
本発明は、回路規模と導通損失とを共に小さく維持したまま、バイパススイッチのオフ時点での過大なアンダーシュートの発生を抑制し、それにより高い信頼性を獲得する直流電源装置、の提供を目的とする。
【0024】
本発明による直流電源装置は、
スイッチング動作により、外部直流電源から印加される入力電圧をそれ以上の出力電圧へ変換し、その出力電圧を外部負荷へ印加するDC−DCコンバータ;
DC−DCコンバータの出力電圧を目標電圧と比較し、それらの差に基づきDC−DCコンバータのスイッチング動作を制御するコンバータ制御部;
DC−DCコンバータの入出力間を短絡させるバイパススイッチ;及び、
DC−DCコンバータの停止期間ではバイパススイッチをオン状態に維持し、DC−DCコンバータがスイッチング動作を開始するとき、その開始時点から所定時間、更にバイパススイッチをオン状態に維持するバイパス制御部;
を有する。
【0025】
本発明による上記の直流電源装置は好ましくは、電池式電子機器に搭載される。すなわち、上記の外部直流電源は好ましくは電池である。その他に、交流電源から入力される交流電力を整流した実質的な直流電力であっても良い。一方、上記の外部負荷は好ましくは、直流電源装置を搭載する電池式電子機器内の他のモジュールである。その他に、別の電力系統、インバータ、又はコンバータであっても良い。
【0026】
目標電圧は例えば、停止時出力下限(DC−DCコンバータの停止期間での出力電圧の許容下限)又は動作時出力下限(DC−DCコンバータの動作期間での出力電圧の許容下限)のいずれか高い方と等しく設定される。
停止時出力下限は例えば、外部負荷の動作電圧の許容下限より所定の余裕(以下、停止時出力余裕という)だけ高く設定される。停止時出力余裕は、コンバータ制御部の起動時間中の入力電圧の降下量と、外部負荷での電流量の予測可能な急増(例えば、ノートPCでのアプリケーションの起動による急増)に伴う出力電圧の落下に対する余裕との和で決まる。
コンバータ制御部の起動時間とは、コンバータ制御部がその起動時の状態からスイッチング制御動作が可能な状態へ遷移する時間をいう。コンバータ制御部の起動時間は主に、コンバータ制御部による初期化処理に要する時間である。その初期化処理は例えば、基準電圧提供用の内部電源の立ち上げ及びラッチ回路の初期化を含む。
動作時出力下限は例えば、外部負荷の動作電圧の許容下限より所定の余裕(以下、動作時出力余裕という)だけ高く設定される。動作時出力余裕は、DC−DCコンバータの動作期間での出力電圧に含まれるリプル電圧と、外部負荷での電流量の予測可能な急増に伴う出力電圧の落下に対する余裕との和で決まる。
【0027】
本発明による上記の直流電源装置はDC−DCコンバータとバイパススイッチとを有する。入力電圧が目標電圧より十分に高いとき、コンバータ制御部がDC−DCコンバータを停止状態に維持する。バイパス制御部はそのときバイパススイッチをオン状態に維持する。それにより、出力電圧が入力電圧よりDC−DCコンバータとバイパススイッチとの並列接続による電圧降下だけ低く維持される。逆に、入力電圧が目標電圧より低いとき、コンバータ制御部がDC−DCコンバータを動作させる。バイパス制御部はそのときバイパススイッチをオフ状態に維持する。出力電圧はDC−DCコンバータの昇圧動作により入力電圧を超えて上昇し、目標電圧と実質的に等しく維持される。こうして、入力電圧が大きく変動するとき(例えば、電池電圧が放電末期で落下するとき、又は整流器から送出される直流電圧が脈動するとき)、上記の直流電源装置は出力電圧を低くとも目標電圧と実質的に等しく維持できる。特に外部電源が電池であるとき、その電池が実質的な完全放電状態に達するまで、上記の直流電源装置は出力電圧を目標電圧と実質的に等しく維持できる。その結果、電池容量の利用効率が向上する。
【0028】
本発明による上記の直流電源装置を搭載する電池式電子機器では好ましくは、電池の放電中期で電池電圧が上記の目標電圧を下回る。特に現行のリチウムイオン二次電池より高いエネルギー密度を持つ新型のリチウムイオン二次電池は、放電終止電圧が比較的低く、放電曲線の傾きが比較的大きい。そのとき、本発明による上記の直流電源装置は確実に、出力電圧を低くとも目標電圧と等しく維持する。従って、特に新型のリチウムイオン二次電池の利用では、電池容量の利用効率の点で本発明による上記の直流電源装置が有利である。
【0029】
本発明による上記の直流電源装置を搭載する電池式電子機器は好ましくは、信号を電波で送出する無線送信部、を具備する。すなわち、その電池式電子機器は例えば携帯電話機であり、無線による通信機能を持つ。
無線送信部は更に好ましくは、DC−DCコンバータの出力電圧を印加されて送信対象の信号を増幅する電力増幅部、を有する。電力増幅部は一般に、動作電圧の低下が困難である。従って、目標電圧が一般に比較的高い。それ故、電池の放電中期で電池電圧が目標電圧を下回る。そのとき、本発明による上記の直流電源装置は確実に、出力電圧を低くとも目標電圧と等しく維持する。従って、特に無線通信機能を持つ電池式電子機器では、電池容量の利用効率の点で本発明による上記の直流電源装置が有利である。
【0030】
本発明による上記の直流電源装置では、DC−DCコンバータの停止期間中、バイパス制御部がバイパススイッチをオン状態に維持する。そのとき、電流は上記の直流電源装置の入出力間で二つに分岐し、一方はDC−DCコンバータを通り、他方はバイパススイッチを通る。従って、上記の直流電源装置の入出力間の抵抗はバイパススイッチのオンにより低減する。こうして、上記の直流電源装置はDC−DCコンバータの停止期間で入出力間の電圧降下(停止時電圧降下)を低減させる。その結果、DC−DCコンバータの停止期間中での導通損失が小さく抑えられる。特に外部直流電源が電池であるとき、電池容量の利用効率が向上する。
【0031】
本発明による上記の直流電源装置では特に従来の直流電源装置とは異なり、バイパス制御部がバイパススイッチを、DC−DCコンバータによるスイッチング動作の開始時点から所定時間更にオン状態に維持し、その後オフさせる。その所定時間は短くともコンバータ制御部の起動時間と等しく設定される。好ましくは、出力電圧がDC−DCコンバータの昇圧動作により上昇し、入力電圧と一致する時点まで、バイパス制御部がバイパススイッチをオン状態に維持する。従って、DC−DCコンバータがスイッチング動作を開始する時、入力電圧と出力電圧との差が停止時電圧降下以下に抑えられる。特に出力電圧には過大なアンダーシュートが発生しない。こうして、本発明による上記の直流電源装置は出力電圧の安定性に対する信頼性が高い。特に外部負荷が電子機器であるとき、動作電圧の急落によるその電子機器の突然の停止が回避される。
更に好ましくは、バイパススイッチを通る電流(以下、バイパス電流という)が実質的に零に等しい状態でバイパス制御部はバイパススイッチをオフさせる。それによりスイッチング損失が生じない。従って、本発明による上記の直流電源装置は消費電力を小さく抑える。その結果、特に外部直流電源が電池であるとき、電池容量の利用効率が向上する。
【0032】
DC−DCコンバータによるスイッチング動作の開始時点から所定時間、更にバイパススイッチをオン状態に維持するための具体的な手段としては、特に次の二つの態様が好ましい。
第一の態様では、バイパス制御部がDC−DCコンバータの昇圧動作に起因する入出力間の状態変化に基づき、バイパススイッチのオン/オフを決定する。
第二の態様では、バイパス制御部がコンバータ制御部に対する起動信号を所定の遅延時間だけ遅らせ、バイパススイッチに対しオフ信号として送出する。
【0033】
第一の態様では、バイパス制御部が
DC−DCコンバータの入力電圧と出力電圧とを比較し、
入力電圧が出力電圧より高いとき、バイパススイッチをオンさせ、
入力電圧が出力電圧より低いとき、バイパススイッチをオフさせる。好ましくは、バイパス制御部がコンパレータを含む。そのコンパレータはDC−DCコンバータの入力電圧と出力電圧との大小に応じ論理レベルを出力する。更にそのH/Lレベルがそれぞれオン/オフ信号として、又はその逆として、バイパススイッチへ送出される。
第一の態様では、DC−DCコンバータによるスイッチング動作の開始時点から入力電圧と出力電圧との実質的な一致時点まで、バイパススイッチがオン状態を維持する。それにより、その期間では入力電圧と出力電圧との差が停止時電圧降下以下に抑えられる。特に出力電圧には過大なアンダーシュートが発生しない。更に、バイパス電流が実質的に零に等しい状態でバイパススイッチがオフするので、スイッチング損失が生じない。
【0034】
上記のバイパス制御部はDC−DCコンバータの入力電圧と出力電圧とを比較し、バイパススイッチのオン/オフを決定する。バイパス制御部はその他に、バイパス電流を検出し、その大きさ又は方向に基づきバイパススイッチのオン/オフを決定しても良い。好ましくは、DC−DCコンバータがスイッチング動作を開始した後、バイパス電流が実質的に零まで減衰する時点でバイパス制御部がバイパススイッチをオフさせる。バイパス電流の方向が反転する時点でバイパス制御部がバイパススイッチをオフさせても良い。バイパス制御部は更にDC−DCコンバータの出力電流と外部負荷への出力電流(以下、負荷電流という)を検出し、それらの検出値に基づきバイパススイッチのオン/オフを決定しても良い。例えば、負荷電流がDC−DCコンバータの出力電流と実質的に一致する時点でバイパス制御部がバイパススイッチをオフさせても良い。
【0035】
第二の態様では、
DC−DCコンバータの入力電圧若しくは出力電圧のいずれか又は両方に基づきコンバータ制御部へ所定の起動信号を送出する起動制御部、を上記の直流電源装置が有し;
コンバータ制御部がその停止期間中、起動信号の受信により起動し;
バイパス制御部が、
(a) 起動信号をその受信時点から所定の遅延時間だけ保持する信号遅延部、及び、
(b) 信号遅延部から起動信号を受信するまではバイパススイッチをオン状態に維持し、起動信号の受信時にバイパススイッチをオフさせるスイッチ駆動部、を含む。ここで、遅延時間は短くともコンバータ制御部の起動時間と実質的に等しく設定され、好ましくは、コンバータ制御部の起動時点から入力電圧と出力電圧との一致時点までの時間として推定される一定値と実質的に等しい。
【0036】
第二の態様では、信号遅延部がスイッチ駆動部への起動信号の送出を、その起動信号の発生から上記の遅延時間だけ遅らせる。それにより、バイパススイッチがコンバータ制御部の起動後、短くともコンバータ制御部の起動時間、更にオン状態を維持する。従って、入力電圧と出力電圧との差が、短くともコンバータ制御部の起動時間内では停止時電圧降下以下に維持される。特に出力電圧には過大なアンダーシュートが発生しない。
更に、遅延時間の上記の好ましい設定により、バイパススイッチのオフ時点が入力電圧と出力電圧との一致時点に十分近い。従って、バイパス電流が十分に小さい状態でバイパススイッチがオフするので、スイッチング損失が小さく抑えられる。ここで、バイパス制御部は、起動信号の受信後バイパス電流を監視し、その電流量に基づき遅延時間を調節しても良い。その調節により、バイパス電流が実質的に零まで減衰するときにバイパススイッチをオフさせる。それにより、そのオフ時点でのバイパススイッチのスイッチング損失が低減する。
【0037】
第二の態様では更に、
起動制御部がDC−DCコンバータの入力電圧に基づきコンバータ制御部へ所定の停止信号を送出し;
コンバータ制御部がその動作期間中、停止信号の受信により停止し;
バイパス制御部では、
(a) 信号遅延部が停止信号をその受信時点から所定の遅延時間だけ保持し、
(b) スイッチ駆動部が、信号遅延部から停止信号を受信するまではバイパススイッチをオフ状態に維持し、停止信号の受信時にバイパススイッチをオンさせても良い。ここで、遅延時間は起動信号に対する遅延時間と実質的に等しくても良い。
外部電源が例えば電池であるとき、その充放電の反復により入力電圧が降下と上昇とを交互に繰り返す。DC−DCコンバータの昇圧動作中に入力電圧が上昇し、例えば入力電圧に対する目標電圧の比が所定値に達するとき、起動制御部が停止信号を送出し、コンバータ制御部及びDC−DCコンバータが停止する。一方、バイパス制御部は停止信号の遅延により、バイパススイッチをDC−DCコンバータの停止後も上記の遅延時間だけ更にオフ状態に維持する。それにより、入力電圧と出力電圧との差が十分に低減し、バイパス電流が十分に減衰するときバイパススイッチがオンする。その結果、バイパススイッチのオンについてスイッチング損失が低減する。
【0038】
本発明による上記の直流電源装置が、DC−DCコンバータの入力電圧を起動入力電圧と比較する入力電圧検出部、を有し;
コンバータ制御部が、入力電圧検出部の出力に基づき、
(a) 入力電圧が起動入力電圧より高い期間ではDC−DCコンバータを停止状態に維持し、
(b) 入力電圧による起動入力電圧への降下を検出するとき、DC−DCコンバータにスイッチング動作を開始させても良い。ここで、起動入力電圧はコンバータ制御部の起動時の入力電圧として設定される。この構成では入力電圧が起動入力電圧より高い期間でコンバータ制御部が停止状態を維持しても良い。それにより、その期間ではコンバータ制御部による消費電力が低減する。
【0039】
起動入力電圧は例えば、低くとも目標電圧及び電圧降下上限(停止時電圧降下の許容上限)の和と等しく設定される。ここで、電圧降下上限は、バイパススイッチのオン期間での直流電源装置の入出力間の抵抗と負荷電流の許容上限との積で決まる。目標電圧は停止時出力下限以上である。従って、起動入力電圧は停止時出力下限と電圧降下上限との和以上である。それ故、入力電圧が起動入力電圧へ降下するとき、出力電圧が停止時出力下限以上である。こうして、コンバータ制御部の起動時間中、出力電圧が外部負荷の動作電圧の許容下限より十分に高く維持される。
【0040】
起動入力電圧はその他に、低くとも停止時出力下限と電圧降下上限との和と等しく設定されても良い。そのとき、起動入力電圧が目標電圧より低くても良い。DC−DCコンバータには一般に、その昇圧比について1より大きい下限を持つものがある。以下、その昇圧比の下限を最低昇圧比という。本発明による上記の直流電源装置では、DC−DCコンバータが1より大きい最低昇圧比を持つとき、目標電圧が低くとも、起動入力電圧の最低昇圧比倍又は動作時出力下限のいずれか高い方と等しく設定される。その場合、コンバータ制御部の起動時、入力電圧に対する目標電圧の比が最低昇圧比より高い。それ故、出力電圧が目標電圧を大きく超えないように、コンバータ制御部はDC−DCコンバータを安定に制御できる。その結果、DC−DCコンバータが安定に動作する。
【0041】
本発明による上記の直流電源装置が、
DC−DCコンバータの入力電圧を停止入力電圧と比較する入力電圧検出部;
DC−DCコンバータの出力電圧を起動出力電圧と比較する出力電圧検出部;及び、
出力電圧検出部の出力に基づき、
(a) 出力電圧が起動出力電圧より高い期間ではコンバータ制御部を停止状態に維持し、
(b) 出力電圧による起動出力電圧への降下を検出するとき、コンバータ制御部を起動させ、
入力電圧検出部の出力に基づき、
(c) 入力電圧が停止入力電圧より低い期間ではコンバータ制御部を動作状態に維持し、
(d) 入力電圧による停止入力電圧への上昇を検出するとき、コンバータ制御部を停止させる、起動制御部;
を更に有しても良い。ここで、起動出力電圧はコンバータ制御部の起動時の出力電圧として設定される。停止入力電圧は、動作中のコンバータ制御部を停止させるときの入力電圧として設定される。
【0042】
起動出力電圧は例えば、低くとも停止時出力下限と等しく設定される。そのとき、起動出力電圧が目標電圧より低くても良い。特にDC−DCコンバータが1より大きい最低昇圧比を持つとき、目標電圧が低くとも、起動出力電圧と電圧降下上限との和にDC−DCコンバータの最低昇圧比を乗じた値、又は動作時出力下限のいずれか高い方と等しく設定される。コンバータ制御部の起動時、出力電圧は起動出力電圧と実質的に等しく、入力電圧は出力電圧と電圧降下上限との和以下である。従って、入力電圧に対する目標電圧の比が最低昇圧比以上である。それ故、出力電圧が目標電圧を大きく超えないように、コンバータ制御部はDC−DCコンバータを安定に制御できる。その結果、DC−DCコンバータが安定に動作する。
【0043】
停止入力電圧は例えば、低くとも起動出力電圧と電圧降下上限との和と等しく設定される。更にDC−DCコンバータが1より大きい最低昇圧比を持つとき、停止入力電圧は目標電圧を最低昇圧比で割った値以下に設定される。すなわち、停止入力電圧に対する目標電圧の比が最低昇圧比以上である。外部電源が例えば電池であるとき、その充放電の反復により入力電圧が降下と上昇とを交互に繰り返す。DC−DCコンバータの昇圧動作中に入力電圧が上昇するとき、出力電圧は目標電圧と実質的に等しく維持されるので、入力電圧に対する出力電圧の比が降下する。入力電圧が停止入力電圧と一致するとき、コンバータ制御部が停止し、更にDC−DCコンバータが停止する。そのとき、入力電圧に対する出力電圧の比が最低昇圧比以上である。こうして、入力電圧の上昇時、DC−DCコンバータが安定に停止する。
【0044】
DC−DCコンバータの停止後、出力電圧は目標電圧から降下し入力電圧と一致する。そのときバイパス制御部はバイパススイッチをオンさせる。それにより、出力電圧は入力電圧より停止時電圧降下だけ低いレベルに維持される。ここで、入力電圧は停止入力電圧以上であるので、出力電圧は起動出力電圧以上に維持される。
こうして、入力電圧が降下と上昇とを交互に繰り返すとき、出力電圧は外部負荷の動作電圧の許容下限より十分に高く維持される。
【0045】
本発明による上記の直流電源装置では更に、起動制御部が入力電圧検出部と出力電圧検出部との出力に基づき、
(a) DC−DCコンバータの入力電圧が停止入力電圧より高く、かつDC−DCコンバータの出力電圧が起動出力電圧より高い期間ではコンバータ制御部を停止状態に維持し、
(b) 入力電圧が停止入力電圧より低く降下し、かつ出力電圧による起動出力電圧への降下を検出するとき、コンバータ制御部を起動させても良い。上記の直流電源装置に対して例えば満充電の電池との接続により電源が投入されるとき、入力電圧は停止入力電圧より高く、出力電圧は起動出力電圧より低い。上記の起動制御部は出力電圧だけでなく入力電圧にも基づきコンバータ制御部の起動を的確に判断する。特に入力電圧が停止入力電圧より低く、かつ出力電圧が起動出力電圧より低いとき、コンバータ制御部が起動する。従って、電源投入時でのDC−DCコンバータの誤作動が回避され、過大な出力電圧の発生が防止される。
【0046】
本発明による上記の直流電源装置では、
DC−DCコンバータが、入力電圧をそれ以上である出力電圧へ変換する昇圧動作に加え、入力電圧をそれ以下である出力電圧へ変換する降圧動作を実行可能であり;
コンバータ制御部が、DC−DCコンバータの出力電圧と目標電圧との差に基づき、DC−DCコンバータに降圧動作若しくは昇圧動作を実行させ、又はDC−DCコンバータを停止状態に維持し;
バイパス制御部が、DC−DCコンバータが昇圧動作を開始するとき、その開始時点から所定時間、更にバイパススイッチをオン状態に維持しても良い。
この構成では、目標電圧が例えば低くとも、DC−DCコンバータの降圧動作時の出力下限、又は昇圧動作時の出力下限のいずれか高い方と等しく設定される。動作時出力下限は例えば、外部負荷の動作電圧の許容下限よりそれぞれの動作時の出力余裕だけ高く設定される。動作時出力余裕は、動作期間での出力電圧に含まれるリプル電圧と、外部負荷での電流量の予測可能な急増に伴う出力電圧の落下に対する余裕との和で決まる。
【0047】
入力電圧が目標電圧より高いとき、コンバータ制御部はDC−DCコンバータに降圧動作を実行させる。バイパス制御部はそのとき、バイパススイッチをオフ状態に維持する。出力電圧はDC−DCコンバータの降圧動作により降下し、目標電圧と実質的に等しく維持される。逆に、入力電圧が目標電圧より低いとき、コンバータ制御部はDC−DCコンバータに昇圧動作を実行させる。バイパス制御部はそのとき、バイパススイッチをオフ状態に維持する。出力電圧はDC−DCコンバータの昇圧動作により上昇し、目標電圧と実質的に等しく維持される。こうして、入力電圧が大きく変動するとき、本発明による上記の直流電源装置は入力電圧の変動期間全体にわたり、出力電圧を目標電圧と実質的に等しく維持できる。特に外部電源が電池であるとき、その電池の放電期間全体で出力電圧が目標電圧と実質的に等しく維持される。その結果、電池容量の利用効率が更に向上する。
【0048】
入力電圧が目標電圧近傍で推移するとき、コンバータ制御部がDC−DCコンバータを停止状態に維持する。バイパス制御部はそのとき、バイパススイッチをオン状態に維持する。それにより、出力電圧が入力電圧より停止時電圧降下だけ低く維持される。DC−DCコンバータの停止期間では更に、電流が直流電源装置の入出力間で二つに分岐し、一方はDC−DCコンバータを通り、他方はバイパススイッチを通る。従って、直流電源装置の入出力間の抵抗はバイパススイッチのオンにより低減する。こうして、本発明による上記の直流電源装置は停止時電圧降下を低く抑える。その結果、DC−DCコンバータの停止期間中での導通損失が小さく抑えられる。特に外部電源が電池であるとき、電池容量の利用効率が向上する。
【0049】
特にDC−DCコンバータによる昇圧動作の開始時、バイパススイッチがオン状態に維持される。それにより、DC−DCコンバータの停止期間では入力電圧と出力電圧との差が停止時電圧降下以下に維持される。特に出力電圧には過大なアンダーシュートが生じない。更に、バイパス電流が実質的に零に等しい状態でバイパススイッチがオフするので、スイッチング損失が生じない。こうして、本発明による上記の直流電源装置は出力電圧の安定性に対する信頼性が高い。
【0050】
以上に述べられた本発明による直流電源装置はいずれも、好ましくは、
DC−DCコンバータの動作期間ではそのスイッチング動作と同期して整流を行い、DC−DCコンバータの停止期間ではオン状態を維持する同期整流部、を有する。特にDC−DCコンバータが昇圧動作に加え降圧動作を実行可能であるとき、同期整流部はDC−DCコンバータの昇圧動作期間ではそのスイッチング動作と同期して整流を行い、DC−DCコンバータの停止期間ではオン状態を維持する。同期整流部は一般にダイオードより導通損失が小さい。従って、この直流電源装置ではDC−DCコンバータの導通損失が小さい。
【0051】
本発明による上記の直流電源装置は好ましくは、DC−DCコンバータとして昇圧チョッパ、すなわちインダクタを用いた昇圧型コンバータを有する。更に、降圧動作を実行可能なDC−DCコンバータとして、インダクタを用いた昇降圧型コンバータを有しても良い。その他に、DC−DCコンバータが、例えば、Cuk、Zeta、及びSepicコンバータのような昇降圧型コンバータであっても良い。DC−DCコンバータは更に、コンデンサとスイッチとを用いるチャージポンプを採用しても良い。
【0052】
以上に述べられた本発明による直流電源装置は更に好ましくは、停止スイッチを有する。その停止スイッチは外部負荷によりオンオフ制御され、外部直流電源からの入力電流又は外部負荷への出力電流のいずれかを遮断する。特に、外部負荷と並列に接続される出力平滑コンデンサ、をDC−DCコンバータが含み、かつDC−DCコンバータとバイパススイッチとの間の外部負荷側にある接続点が出力平滑コンデンサより外部直流電源側にあるとき、停止スイッチは好ましくは、その接続点と出力平滑コンデンサとの間に接続される。停止スイッチはその他に、DC−DCコンバータとバイパススイッチとの間の、外部直流電源側にある接続点より外部直流電源側に接続されても良い。
外部負荷が例えば休止状態に移行するとき、外部負荷は停止スイッチをオフさせる。それによりDC−DCコンバータの出力電流とバイパス電流とが共に遮断され、すなわち負荷電流が遮断される。こうして、外部負荷は直流電源装置からの電力を断つ。その結果、外部負荷には電力が供給されないので、外部負荷による電力消費が抑制される。特に外部電源が電池であるとき、その利用効率が向上する。
【0053】
本発明による上記の直流電源装置が上記の停止スイッチを含むとき、バイパス制御部が更に、DC−DCコンバータの出力電流と停止スイッチのオン電圧とを検出し、それらの検出値に基づきバイパススイッチのオン/オフを決定しても良い。バイパス制御部は例えば、停止スイッチのオン電圧から負荷電流を検出し、その負荷電流がDC−DCコンバータの出力電流と実質的に一致する時点でバイパススイッチをオフさせても良い。
【0054】
以上の説明の通り、本発明による直流電源装置では従来の直流電源装置とは異なり、バイパス制御部がバイパススイッチを、DC−DCコンバータによるスイッチング動作の開始時点から所定時間、更にオン状態に維持する。その所定時間は特に、コンバータ制御部の起動時間と出力電圧の目標電圧への回復時間との和に相当する。従って、DC−DCコンバータによるスイッチング動作の開始時、入力電圧と出力電圧との差が停止時電圧降下以下に抑えられる。特に出力電圧には過大なアンダーシュートが発生しない。こうして、本発明による直流電源装置は出力電圧の安定性に対する信頼性が高い。特に外部負荷が電子機器であるとき、動作電圧の急落によるその電子機器の突然の停止が回避される。
【0055】
発明の新規な特徴は添付の請求の範囲に特に記載したものに他ならないが、構成及び内容の双方に関して本発明は、他の目的や特徴と合わせて図面と共に以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解され評価されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
以下に述べる本発明の実施形態による直流電源装置はいずれも電池式電子機器に搭載される。ここで、電池式電子機器は好ましくは、携帯電話、ノートPC、PDA、又はポータブルオーディオプレイヤ等の携帯情報機器である。その携帯情報機器は更に好ましくは無線による通信機能を持ち、無線送信部は電力増幅部を有する。
【0057】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1による直流電源装置10の回路図である。
直流電源装置10の入力端子1Aと1Bとはそれぞれ、電池Bの高電位側端子と低電位側端子とへ接続される。ここで、電池Bは好ましくは二次電池であり、更に好ましくは、リチウムイオン二次電池である。
直流電源装置10の高電位側出力端子2Aと低電位側出力端子2Bとはそれぞれ、外部負荷Lの高電位側端子と低電位側端子とへ接続される。ここで、外部負荷Lは電池式電子機器内にある他の回路であり、特に好ましくは無線送信部内の電力増幅部を含む。
【0058】
直流電源装置10は電池Bからの入力電圧(すなわち電池電圧)Viを外部負荷Lへの出力電圧Voへ変換し、その出力電圧Voを目標電圧ET以上の高さに維持する。
ここで、目標電圧ETは後述のように、外部負荷Lの動作電圧の許容下限より十分に高く設定される。特に上記の電力増幅部については、目標電圧ETが電池Bの初期電圧(すなわち満充電時の電池電圧であり、二次電池の場合、充電終止電圧と等しい)と放電終止電圧との中間に位置する。
一方、電池Bの放電末期では電池電圧Viが落下し、出力電圧Voが目標電圧ETを下回る。電池Bが特に高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池である場合、放電終止電圧が低く、放電曲線の傾きが大きい。従って、放電中期で出力電圧Voが目標電圧ETを下回り得る。
直流電源装置10はそのとき、後述のように、その昇圧動作で出力電圧Voを電池電圧Viより高く変換し、目標電圧ETと実質的に等しく維持する。
【0059】
直流電源装置10は、昇圧チョッパ3、コンバータ制御部4、バイパススイッチ5、及びバイパス制御部6を有する。
昇圧チョッパ3は、インダクタ3L、ダイオード3D、出力平滑コンデンサ3C、及びチョッパスイッチ3Sを含む。インダクタ3Lの一端は高電位側入力端子1Aへ接続され、他端はダイオード3Dのアノードへ接続される。ダイオード3Dのカソードは、高電位側出力端子2Aへ接続される。出力平滑コンデンサ3Cは高電位側出力端子2Aと低電位側出力端子2Bとの間に接続される。
【0060】
チョッパスイッチ3Sは好ましくはNチャネルMOSFETである。そのドレインはインダクタ3Lとダイオード3Dとの間の接続点Pへ接続される。そのソースは低電位側入力端子1Bと低電位側出力端子2Bとの両方へ接続される。そのゲートはコンバータ制御部4へ接続される。
チョッパスイッチ3Sは、ゲートの論理レベルがHレベルであるときオン状態であり、Lレベルであるときオフ状態である。
【0061】
昇圧チョッパ3はチョッパスイッチ3Sのスイッチングにより、以下のような昇圧動作を行う。ここで、以下の説明では次のことを前提とする:出力平滑コンデンサ3Cには十分に多量の電荷が既に蓄えられているので、外部負荷Lへの出力電圧Voが十分に高い。更にバイパススイッチ5がオフ状態に維持される。
【0062】
チョッパスイッチ3Sがオン状態にあるとき、ダイオード3Dには逆電圧(≒−Vo)が加えられるので、ダイオード3Dの順電流Idが0まで減衰する。一方、インダクタ3Lは電池電圧Viで励磁されるので、インダクタ3Lを流れる電流I3が増加し、インダクタ3Lに蓄えられる磁気エネルギーが増大する。
【0063】
チョッパスイッチ3Sがオフ状態へ切り換えられるとき、インダクタ3Lの作用によりインダクタ3Lとダイオード3Dとの間の接続点Pの電位が急上昇し、ダイオード3Dに順電圧が加えられる。それによりダイオード3Dが導通するので、その順電流Idが増加する。その結果、チョッパスイッチ3Sのオン時間中インダクタ3Lに蓄えられた磁気エネルギーが、チョッパスイッチ3Sのオフ時間中出力平滑コンデンサ3C及び外部負荷Lへ供給される。
【0064】
チョッパスイッチ3Sのスイッチング周期での電池電圧Viと出力電圧Voとのそれぞれの変動を無視するとき、電池電圧Viと出力電圧Voとはインダクタ3Lに対するリセット条件(チョッパスイッチ3Sのオン時間中、インダクタ3Lに蓄えられた磁気エネルギーが、チョッパスイッチ3Sのオフ時間中、インダクタ3Lから放出される磁気エネルギーと釣り合うための条件)に基づき、次式を満たす:Vi×Ton=(Vo−Vi)×(T−Ton)。ここで、スイッチング周期をTとし、一周期当たりのオン時間をTonとする。従って、昇圧チョッパ3の電圧変換率Vo/Viは、チョッパスイッチ3Sの通流率r=Ton/Tで決まる:Vo/Vi=1/(1−r)。通流率rは1より低いので、電圧変換率Vo/Viは1より高い:Vo/Vi>1。こうして、昇圧チョッパ3はチョッパスイッチ3Sのスイッチングにより、電圧変換率を1より高く維持する。
【0065】
コンバータ制御部4は、発振回路(OSC)4A、帰還回路4B、及びPWM回路4Cを含む。
OSC4Aは高電位側入力端子1Aに接続され、直流電源装置10と電池Bとの接続時、電池電圧Viの印加により起動する。起動したOSC4Aは基準信号VRを発生させる。基準信号VRは好ましくは三角波であり、一定の周期(上記のスイッチング周期Tと実質的に等しい)と一定の振幅とを持つ。
【0066】
帰還回路4Bは、分圧器(二つの抵抗器R1とR2との直列接続)、基準電源4E、及び誤差増幅器4Dを含む。
分圧器は、直流電源装置10の出力電圧Voを分圧比F0=R2/(R1+R2)だけ降下させる。
基準電源4Eの電圧は目標電圧ETの分圧比F0倍F0×ETと等しい。ここで、目標電圧ETは低くとも、停止時出力下限Ec(昇圧チョッパ3の停止期間での出力電圧Voの許容下限)、又は動作時出力下限Eo(昇圧チョッパ3の動作期間での出力電圧Voの許容下限)のいずれか高い方と等しく設定される:ET≧max(Ec,Eo)。
誤差増幅器4Dは、分圧器の出力電圧F0×Voの基準電源4Eの電圧F0×ETからのずれF0×(Vo−ET)を反転増幅し、誤差信号VEとして出力する。すなわち、出力電圧Voが目標電圧ETから降下するほど、誤差信号VEのレベルが高い。
【0067】
停止時出力下限Ecは例えば、外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより停止時出力余裕αだけ高く設定される:Ec=El+α。停止時出力余裕αは、コンバータ制御部4の起動時間中の電池電圧Viの降下量γと、外部負荷Lでの電流量の予測可能な急増(例えば、ノートPCでのアプリケーションの起動による急増)に伴う出力電圧Voの落下に対する余裕δとの和で決まる:α=γ+δ。
動作時出力下限Eoは例えば、外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより動作時出力余裕βだけ高く設定される:Eo=El+β。動作時出力余裕βは、昇圧チョッパ3の動作期間での出力電圧に含まれるリプル電圧ρと、外部負荷Lでの電流量の予測可能な急増に伴う出力電圧Voの落下に対する余裕δとの和で決まる:β=ρ+δ。
【0068】
PWM回路4Cは昇圧チョッパ3のチョッパスイッチ3Sのゲートへ、スイッチング信号SGを送出する。スイッチング信号SGは一定振幅を持つ矩形電圧パルスである。チョッパスイッチ3Sは、スイッチング信号SGの立ち上がりでオフし、スイッチング信号SGの立ち下がりでオンする。特にスイッチング信号SGのパルス幅でチョッパスイッチ3Sのオン時間が決定される。
【0069】
PWM回路4Cは基準信号VRと誤差信号VEとのレベルを比較し、それらが一致するごとにスイッチング信号SGのレベルを切り換える。それにより、基準信号VRのレベルが誤差信号VEのレベルを超える期間ではスイッチング信号SGを例えばLレベルに維持し、チョッパスイッチ3Sをオフ状態に維持する。逆に、基準信号VRのレベルが誤差信号VEのレベルを下回る期間ではスイッチング信号SGをHレベルに維持し、チョッパスイッチ3Sをオン状態に維持する。
図2に示される通り、誤差信号VEのレベルが基準信号VRのレベルを超える期間が長いほど、スイッチング信号SGのパルス幅が長い。従って、チョッパスイッチ3Sのオン時間Tonが長い。一方、基準信号VRの周期は一定であるので、チョッパスイッチ3Sのスイッチング周期T(オン時間Tonとオフ時間Toffとの和:T=Ton+Toff)は一定である。それ故、誤差信号VEのレベルが基準信号VRのレベルを超える期間が長いほど、チョッパスイッチ3Sの通流率r=Ton/Tが大きい。すなわち、昇圧チョッパ3の昇圧比Vo/Vi=1/(1−r)が大きい。
【0070】
出力電圧Voが目標電圧ETと実質的に等しいとき(Vo≒ET)、誤差信号VEのレベルが基準信号VRの変動範囲内にあり、特に基準信号VRの最低レベルLB(図2に示される直線LB参照)より高い:VE>LB。
出力電圧Voが目標電圧ETから少しだけ降下するとき(Vo<ET)、誤差信号VEのレベルが上昇する。そのとき、PWM回路4Cはスイッチング信号SGのパルス幅を増大させる。それにより出力電圧Voが上昇し、目標電圧ETへ戻る。
逆に、出力電圧Voが目標電圧ETから少しだけ上昇するとき(Vo>ET)、誤差信号VEのレベルが降下する。そのとき、PWM回路4Cはスイッチング信号SGのパルス幅を減少させる。それにより出力電圧Voが降下し、目標電圧ETへ戻る。
こうして、PWM回路4Cは基準信号VRと誤差信号VEとに基づきスイッチング信号SGのパルス幅を変化させることで、昇圧チョッパ3の出力電圧Voの変動を抑制し、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持する。
【0071】
バイパススイッチ5は、直流電源装置10の高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間に、昇圧チョッパ3と並列に接続される。バイパススイッチ5は好ましくはPチャネルMOSFETである。そのドレインは高電位側入力端子1Aへ接続される。そのソースは高電位側出力端子2Aへ接続される。そのゲートはバイパス制御部6へ接続される。
バイパススイッチ5は、ゲートの論理レベルがHレベルのときオフし、Lレベルのときオンする。
高電位側入力端子1Aからバイパススイッチ5を通り高電位側出力端子2Aへ至る経路は、インダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続を含む昇圧チョッパ3内の経路のバイパスとして機能する。バイパススイッチ5のオン抵抗は好ましくは、インダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続の抵抗より小さい。
【0072】
バイパス制御部6はコンパレータを含む。コンパレータは反転入力端子と非反転入力端子との間の電位差を検出する。反転入力端子が非反転入力端子より高電位であるとき、コンパレータは出力端子の電位をLレベルに維持する。逆に、反転入力端子が非反転入力端子より低電位であるとき、コンパレータは出力端子の電位をHレベルに維持する。
バイパス制御部6の反転入力端子は高電位側入力端子1Aへ接続される。その非反転入力端子は高電位側出力端子2Aへ接続される。その出力端子はバイパススイッチ5のゲートへ接続される。それにより、反転入力端子の電位は電池電圧Viと等しく、非反転入力端子の電位は出力電圧Voと等しい。
【0073】
バイパス制御部6は電池電圧Viと出力電圧Voとの差に基づき、バイパススイッチ5のオンオフを次のように制御する。
電池電圧Viが出力電圧Voより高いとき(Vi>Vo)、バイパス制御部6が出力をLレベルに維持する。それにより、バイパススイッチ5がオン状態に維持される。
電池電圧Viが出力電圧Voより低いとき(Vi<Vo)、バイパス制御部6が出力をHレベルに維持する。それにより、バイパススイッチ5がオフ状態に維持される。
【0074】
昇圧チョッパ3の停止期間、すなわちチョッパスイッチ3Sのオフ状態に維持される期間にバイパススイッチ5がオン状態に維持されるとき、電池Bから外部負荷Lへ流れる電流(以下、負荷電流という)Ioは高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で二つに分岐する。一方の支流I3はインダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続を流れ、その直列接続の抵抗により電圧降下を発生させる。他方の支流(バイパス電流)I5はバイパススイッチ5を流れ、そのドレイン−ソース間にバイパススイッチ5のオン抵抗による電圧降下(以下、オン電圧という)を発生させる。インダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続による電圧降下はバイパススイッチ5のオン電圧と等しい。以下、その電圧降下を停止時電圧降下Vonという。バイパススイッチ5のオン期間での高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗をRとすると、停止時電圧降下Vonはその抵抗Rと負荷電流Ioとの積と等しい:Von=R×Io。こうして、昇圧チョッパ3の停止期間にバイパススイッチ5がオン状態に維持されるとき、出力電圧Voは電池電圧Viより停止時電圧降下量Vonだけ低いレベルに維持される。
【0075】
直流電源装置10は以上の構成により、例えば満充電の電池Bとの接続による電源投入時、電池Bから外部負荷Lへ電力を次のように伝達する。
電池Bの放電期間では、電池電圧Viと直流電源装置10の出力電圧Voとが図3A、3Bに示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。
【0076】
満充電の電池Bが直流電源装置10へ接続された直後、電池電圧Viは出力電圧Voより高いので、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオンさせる。
バイパススイッチ5のオンによりバイパス電流I5が流れる。そのとき、図3Bに示される通り、直流電源装置10の出力電圧Vo(実線)は電池電圧Vi(破線)より停止時電圧降下Vonだけ低く維持される。
【0077】
直流電源装置10と満充電の電池Bとの接続直後、電池電圧Viは満充電時のレベル(すなわち初期電圧)である(図3Aに示される点A参照)。そのとき、コンバータ制御部4が起動する。それによりOSC4Aが基準信号VRを送出し始める。
コンバータ制御部4は更にOSC4Aの起動と並行し、初期化処理を行う。その初期化処理は例えば、基準電圧提供用の内部電源の立ち上げ及びラッチ回路の初期化等を含む。コンバータ制御部4はその初期化処理により、その起動時の状態から、スイッチング制御動作が可能な状態へ遷移する。ここで、その遷移に要する時間をコンバータ制御部4の起動時間という。コンバータ制御部4の起動時間は通常、実質的に零より長い。しかし、電池Bの放電初〜中期での放電曲線の平坦部、すなわち電池電圧Viが比較的緩やかに降下する期間(図3Aに示される領域I)の長さよりかなり短い。従って、コンバータ制御部4は電池Bの放電開始から程なく、スイッチング制御動作が可能な状態に遷移する。
【0078】
電池電圧Viは放電開始直後に一旦急落した後、比較的緩やかに降下する(図3Aに示される領域I参照)。その領域Iで出力電圧Voが目標電圧ETより十分に高く維持されるように、電池Bの種類及びセル数は設定される。従って、領域Iでは、誤差信号VEのレベルが基準信号VRの最低レベルLBより低い(図3C参照)。それ故、PWM回路4Cはスイッチング信号SGのパルス幅を0に維持し、スイッチング信号SGをLレベルに維持する。それによりチョッパスイッチ3Sがオフ状態に維持される。こうして、領域Iではコンバータ制御部4が、スイッチング制御動作が可能な状態で待機し、昇圧チョッパ3は停止状態を維持する。
領域Iでは、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い。従って、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。バイパススイッチ5のオン期間では、負荷電流Ioが高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で、インダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続を通る電流I3とバイパス電流I5とに分岐する。こうして、高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗がバイパススイッチ5のオンにより低減するので、停止時電圧降下Vonは小さい。その結果、領域Iでは直流電源装置10の導通損失が小さいので、電池容量の利用効率が高く維持される。
【0079】
電池Bの放電末期では電池電圧Viが急落する。その急落に伴い出力電圧Voが急落し、時刻Tsで目標電圧ETまで降下する(図3A、3Bに示される点Ss参照)。電池Bが特に高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池である場合は、放電中期で出力電圧Voが目標電圧ETまで降下する。そのとき、誤差信号VEのレベルが基準信号VRの最低レベルLBに達する(図3Cに示される点Ss参照)。従って、PWM回路4Cがスイッチング信号SGのレベルの切換を即座に開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を開始する。こうして、昇圧チョッパ3が昇圧動作を速やかに開始する。
【0080】
時刻Tsでは出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い。バイパス制御部6は時刻Ts以後も、出力電圧Voが電池電圧Viと一致する時刻Tf(図3Bに示される点Sf参照)まではバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される。
【0081】
昇圧チョッパ3による昇圧動作の時刻Tsでの速やかな開始とバイパススイッチ5による時刻Ts〜時刻Tfでのオン状態の維持との結果、出力電圧Voが時刻Ts以後、電池電圧Viの更なる降下に関わらず、目標電圧ETと実質的に等しく維持される。特に時刻Ts〜時刻Tfでは、出力電圧Voには過大なアンダーシュートが生じない。
こうして、時刻Ts以後、電池Bが完全放電状態近くに達するまで、直流電源装置10は出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持できる(図3に示される領域II参照)。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置10は有利である。
【0082】
本発明の実施形態1による直流電源装置10では上記の通り、電池Bとの接続によりコンバータ制御部4が起動し、スイッチング制御動作が可能な状態で待機する。出力電圧Voが目標電圧ETまで落下するときコンバータ制御部4がスイッチング制御を即座に開始する。それにより、昇圧チョッパ3が昇圧動作を速やかに開始する。一方、バイパス制御部6は、出力電圧Voが電池電圧Viと一致するまではバイパススイッチ5をオン状態に維持する。従って、バイパススイッチ5のオフ直後、出力電圧Voには過大なアンダーシュートが生じない。更に、バイパス電流I5が実質的に零に等しい状態でバイパススイッチ5がオフするので、スイッチング損失が生じない。こうして、動作電圧の許容下限以下への急落による電子機器の突然の停止が防止される。
【0083】
本発明の実施形態1による直流電源装置10では、バイパス制御部6がその反転入力端子の電位Viと非反転入力端子の電位Voとの差Vi−Voに基づき、バイパススイッチ5のオン/オフを決定する。バイパス制御部6はその他に、バイパス電流I5を検出し、その大きさ又は方向に基づき、バイパススイッチ5のオン/オフを決定しても良い。好ましくは、昇圧チョッパ3による昇圧動作の開始後、バイパス電流I5が実質的に零まで減衰する時点でバイパススイッチ5をオフさせる。バイパス電流I5の方向が反転する時点でバイパススイッチ5をオフさせても良い。
バイパス制御部6は更に、昇圧チョッパ3の出力電流と負荷電流Ioとを検出し、それらの検出値に基づきバイパススイッチ5のオン/オフを決定しても良い。例えば、負荷電流Ioが昇圧チョッパ3の出力電流と実質的に一致する時点でバイパススイッチ5をオフさせても良い。
【0084】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2による直流電源装置20の回路図である。その直流電源装置20は、図1に示される実施形態1による直流電源装置10と同様な構成要素を含む。従って、図4ではそれら同様な構成要素に対して図1に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態1についての説明を援用する。
【0085】
本発明の実施形態2による直流電源装置20は実施形態1による直流電源装置10と異なり、入力電圧検出部7を有する。
入力電圧検出部7は電池電圧Viを監視する。電池電圧Viが例えば初期電圧(図3Aに示される点A参照)から所定のレベル(以下、起動入力電圧Eiという)まで降下するとき、入力電圧検出部7がその降下を検知する。更にその検知と同時にコンバータ制御部4へ起動信号Stを送出する。それによりコンバータ制御部4が起動し、OSC4Aが基準信号VRの送出を開始する。
【0086】
入力電圧検出部7は、第二の分圧器(二つの抵抗器R3とR4との直列接続)、第二の基準電源7B、及び第二のコンパレータ7Aを含む。
第二の分圧器は電池電圧Viを第二の分圧比F1=R4/(R3+R4)だけ降下させる。
第二の基準電源7Bの電圧は、起動入力電圧Eiの第二の分圧比F1倍F1×Eiと等しい。起動入力電圧Eiは低くとも、目標電圧ETと電圧降下上限Vonmaxとの和と等しく設定される:Ei≧ET+Vonmax。ここで、電圧降下上限Vonmaxは停止時電圧降下Vonの上限、すなわち、バイパススイッチ5のオン期間での高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗Rに負荷電流Ioの許容上限Iomaxを乗じた値で決まる:Vonmax=R×Iomax。
【0087】
第二のコンパレータ7Aは、第二の分圧器の出力電圧F1×Viを第二の基準電源7Bの電圧F1×Eiと比較し、その大小関係に基づき論理レベルを起動信号Stのレベルとして送出する。具体的には、第二の分圧器の出力電圧F1×Viが第二の基準電源7Bの電圧F1×Eiより高いとき、第二のコンパレータ7Aは出力をLレベルに維持する。逆に、第二の分圧器の出力電圧F1×Viが第二の基準電源7Bの電圧F1×Eiより低いとき、第二のコンパレータ7Aは出力をHレベルに維持する。コンバータ制御部4は、起動信号StがLレベルのとき停止し、Hレベルのとき動作する。その結果、電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高いときコンバータ制御部4は停止し、電池電圧Viが起動入力電圧Eiまで降下するときコンバータ制御部4は起動する。
【0088】
直流電源装置20は例えば電池Bとの接続時、電池Bから外部負荷Lへ電力を次のように伝達する。
電池Bと直流電源装置20との接続時、電池電圧Viは出力電圧Voより高い。従って、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオンさせる。それによりバイパス電流I5が流れる。そのとき、出力電圧Voは電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低く維持される。
電池電圧Viは更に、一般には起動入力電圧Eiより十分に高い。従って、入力電圧検出部7は起動信号StをLレベルに維持する。それによりコンバータ制御部4は停止状態を維持する。
【0089】
電池電圧Viは放電時間の経過と共に徐々に降下する。電池電圧Viが起動入力電圧Eiまで降下するとき、入力電圧検出部7は起動信号Stを立ち上げ、すなわち起動信号StをHレベルに遷移させる。それによりコンバータ制御部4が起動する。すなわち、OSC4Aが基準信号VRの送出を開始し、かつ初期化処理が実行される。こうして、電池電圧Viによる起動入力電圧Eiへの降下時点からコンバータ制御部4の起動時間の経過後、コンバータ制御部4は、スイッチング制御動作が可能な状態へ遷移する。
【0090】
電池電圧Viによる起動入力電圧Eiへの降下時点では出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い。従って、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、短くともコンバータ制御部4の起動時間中では、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに維持される。ここで、起動入力電圧Eiは目標電圧ETと電圧降下上限Vonmaxとの和以上であり、目標電圧ETは停止時出力下限Ec以上である:Ei≧ET+Vonmax、ET≧Ec。従って、起動入力電圧Eiは停止時出力下限Ecと電圧降下上限Vonmaxとの和以上である:Ei≧Ec+Vonmax。それ故、電池電圧Viによる起動入力電圧Eiへの降下時点では出力電圧Voが停止時出力下限Ec以上である:Vo≧Ei−Vonmax≧Ec=El+α。こうして、コンバータ制御部4の起動時間中、出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。
【0091】
バイパススイッチ5のオン期間では更に、負荷電流Ioがインダクタ3Lとダイオード3Dとの直列接続を通る電流I3とバイパス電流I5とに分岐する。こうして、高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗がバイパススイッチ5のオンにより低減するので、停止時電圧降下Vonは小さい。その結果、直流電源装置10の導通損失が小さいので、電池容量の利用効率が高く維持される。
【0092】
出力電圧Voが目標電圧ETまで降下するとき、誤差信号VEのレベルが基準信号VRの最低レベルLBに達する(図3B、3Cに示される点Ss参照)。従って、PWM回路4Cがスイッチング信号SGのレベルの切換を即座に開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を開始する。こうして、昇圧チョッパ3が昇圧動作を速やかに開始する。
一方、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い(図3Bに示される点Ss参照)。出力電圧Voが目標電圧ETまで降下する時点から電池電圧Viが出力電圧Voと一致する時点(図3Bに示される点Sf参照)まで、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される。
以上の結果、出力電圧Voが目標電圧ETへの降下時点以後、目標電圧ETと実質的に等しく維持される(図3B参照)。特に出力電圧Voにはアンダーシュートが生じない。更に、バイパス電流I5が実質的に零に等しい状態でバイパススイッチ5がオフするので、スイッチング損失が生じない。
こうして、本発明の実施形態2による直流電源装置20は出力電圧の安定性に対する信頼性が高い。
【0093】
本発明の実施形態2による直流電源装置20は更に、電池Bが完全放電状態近くに達するまで出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持できる。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置20は有利である。
【0094】
起動入力電圧Eiが上記の設定条件を満たす範囲で低く設定されるほど、コンバータ制御部4の起動時点が遅い。それにより、昇圧チョッパ3の停止期間(図3Aに示される領域I)ではコンバータ制御部4による消費電力を低減できる。
【0095】
[実施形態3]
本発明の実施形態3による直流電源装置は図4に示される実施形態2による直流電源装置20と共通の回路構成を有する。従って、その回路構成については図4を参照し、その共通部分の詳細は実施形態2についての説明を援用する。
【0096】
本発明の実施形態3による直流電源装置は実施形態2による直流電源装置20とは次の点で異なる。
まず、入力電圧検出部7が起動入力電圧Eiを低くとも、停止時出力下限Ecと電圧降下上限Vonmaxとの和と等しく設定する:Ei≧Ec+Vonmax。
次に、PWM回路4Cがチョッパスイッチ3Sのオン時間Tonについて、無視できない大きさの下限Tonmin(以下、最小オン幅という)を設定する。それにより通流率r=Ton/T(T:スイッチング周期)には下限rmin=Tonmin/Tが生じる。従って、昇圧チョッパ3の昇圧比Vo/Vi=1/(1−r)には1より高い下限1/(1−rmin)>1(以下、最低昇圧比という)が生じる。帰還回路4Bはそのとき、目標電圧ETを低くとも、起動入力電圧Eiと最低昇圧比1/(1−rmin)との積、又は動作時出力下限Eoのいずれか高い方と等しく設定する:ET≧max(Ei/(1−rmin),Eo)。
【0097】
電池Bの放電期間では、電池電圧Viと直流電源装置の出力電圧Voとが図5に示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。
【0098】
電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高い期間(図5に示される領域I)では入力電圧検出部7が起動信号StをLレベルに維持するので、コンバータ制御部4が停止状態を維持する。従って、コンバータ制御部4はスイッチング信号SGをLレベルに維持するので、チョッパスイッチ3Sがオフ状態に維持される。すなわち、昇圧チョッパ3は停止状態を維持する。
一方、領域Iでは電池電圧Viが出力電圧Voより高いので、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。バイパススイッチ5のオン期間では、負荷電流Ioが高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で二つに分岐するので、実施形態1と同様に、昇圧チョッパ3の停止期間中での直流電源装置10の導通損失が低減する。
【0099】
電池電圧Viが目標電圧ETを下回り、更に起動入力電圧Eiまで降下するとき(図5に示される点Ss参照)、入力電圧検出部7は起動信号Stを立ち上げる。それによりコンバータ制御部4が起動する。その時刻Ts以降、OSC4Aが基準信号VRを送出し、かつ初期化処理が行われる。
時刻Tsでは出力電圧Voが目標電圧ETより低い:Vo<ET。従って、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間が経過するとき、PWM回路4Cは直ちにスイッチング信号SGのレベルの切換を開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を開始する。すなわち、昇圧チョッパ3が昇圧動作を開始する。
一方、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い。従って、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、時刻Ts以後、早くともコンバータ制御部4の起動時間が経過するまでは、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される(図5に示される点Ss参照)。ここで、起動入力電圧Eiは停止時出力下限Ecと電圧降下上限Vonmaxとの和以上である:Ei≧Ec+Vonmax。それ故、時刻Tsでは出力電圧Voが停止時出力下限Ec以上である:Vo≧Ei−Vonmax≧Ec=El+α。
こうして、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間の経過時まで、出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。
【0100】
電池電圧Viは時刻Ts以後起動入力電圧Eiから更に降下を続けるので、昇圧チョッパ3による昇圧動作の開始時では起動入力電圧Eiより低い:Vi<Ei(図5参照)。ここで、目標電圧ETは起動入力電圧Eiの最低昇圧比倍Ei/(1−rmin)以上である:ET≧Ei/(1−rmin)。従って、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが最低昇圧比1/(1−rmin)より高い:ET/Vi>ET/Ei≧1/(1−rmin)。それ故、出力電圧Voが目標電圧ETを大きく超えないように、コンバータ制御部4は昇圧チョッパ3を安定に制御できる。こうして、昇圧チョッパ3が安定に動作する。
【0101】
昇圧チョッパ3による安定な昇圧動作は出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しくかつ安定に維持する。ここで、目標電圧ETは動作時出力下限Eo以上である:ET≧Eo。従って、出力電圧Voが時刻Ts〜時刻Tfの期間で外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。こうして、直流電源装置20は出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0102】
更に、時刻Ts以後電池Bが完全放電状態近くに達するまで、直流電源装置20は出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持できる。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置20は有利である。
【0103】
出力電圧Voは、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間の経過後昇圧チョッパ3の昇圧動作により速やかに上昇し、時刻Tfで電池電圧Viと一致する(図5に示される点Sf参照)。そのとき、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオフさせる。こうして、バイパススイッチ5のオフによるスイッチング損失が抑制される。
【0104】
[実施形態4]
図6は、本発明の実施形態4による直流電源装置40の回路図である。実施形態4による直流電源装置40は実施形態2による直流電源装置20と同様な回路構成を持つ。従って、図6ではそれらの同様な構成要素に対して、図4に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態2についての説明を援用する。
【0105】
本発明の実施形態4による直流電源装置40は、実施形態2による直流電源装置20の構成に加え、出力電圧検出部8と起動制御部9とを有し、実施形態2による直流電源装置20とは次の点で異なる。
まず、出力電圧検出部8が出力電圧Voを監視し、出力電圧Voによる起動出力電圧Euへの降下を検出するとき、その検出を起動制御部9へ通知する。起動制御部9はそのときコンバータ制御部4へ起動信号Stを送出する。それによりコンバータ制御部4が起動する。ここで、起動出力電圧Euは低くとも、停止時出力下限Ecと等しく設定される:Eu≧Ec。
【0106】
次に、PWM回路4Cがチョッパスイッチ3Sの最小オン幅Tonminを設定する。そのとき実施形態2同様、昇圧チョッパ3の昇圧比Vo/Vi=1/(1−Ton/T)=1/(1−r)(T:スイッチング周期、r:チョッパスイッチ3Sの通流率=Ton/T)には最低昇圧比1/(1−Tonmin/T)=1/(1−rmin)>1(rmin:通流率の下限=Tonmin/T)が生じる。帰還回路4Bはそのとき目標電圧ETを低くとも、起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和に昇圧チョッパ3の最低昇圧比1/(1−rmin)を乗じた値(Eu+Vonmax)/(1−rmin)、又は動作時出力下限Eoのいずれか高い方と等しく設定する:ET≧max((Eu+Vonmax)/(1−rmin),Eo)。目標電圧ETは特に起動出力電圧Euより高い:ET>Eu。
【0107】
更に、入力電圧検出部7が電池電圧Viを監視し、電池電圧Viによる停止入力電圧Esより低いレベルから停止入力電圧Esへの上昇を検出するとき、その検出を起動制御部9へ通知する。起動制御部9はそのときコンバータ制御部4へ停止信号Suを送出する。それによりコンバータ制御部4が停止する。ここで、停止入力電圧Esは、起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和と実質的に等しい下限から、目標電圧を最低昇圧比1/(1−rmin)で割った値と実質的に等しい上限までの範囲内に設定される:Eu+Vonmax≦Es≦ET×(1−rmin)。
【0108】
入力電圧検出部7は第二の基準電源7Bの電圧を停止入力電圧Esの第二の分圧比F1倍F1×Esと等しく設定する。それにより、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高いとき、第二のコンパレータ7Aは出力をLレベルに維持する。逆に、電池電圧Viが停止入力電圧Esより低いとき、第二のコンパレータ7Aは出力をHレベルに維持する。
【0109】
出力電圧検出部8は第三の分圧器(二つの抵抗器R5とR6との直列接続)、第三の基準電源8B、及び第三のコンパレータ8Aを含む。
第三の分圧器は直流電源装置40の出力電圧Voを第三の分圧比F2=R6/(R5+R6)だけ降下させる。
第三の基準電源8Bの電圧は、起動出力電圧Euの第三の分圧比F2倍F2×Euと等しい。
第三のコンパレータ8Aは第三の分圧器の出力電圧F2×Voを第三の基準電源8Bの電圧F2×Euと比較し、その大小関係に基づき論理レベルを送出する。具体的には、第三の分圧器の出力電圧F2×Voが第三の基準電源8Bの電圧F2×Euより高いとき、すなわち出力電圧Voが起動出力電圧Euより高いとき、第三のコンパレータ8Aは出力をLレベルに維持する。逆に、第三の分圧器の出力電圧F2×Voが第三の基準電源8Bの電圧F2×Euより低いとき、すなわち出力電圧Voが起動出力電圧Euより低いとき、第三のコンパレータ8Aは出力をHレベルに維持する。
【0110】
起動制御部9はインバータ9Iとラッチ回路9Rとを含む。インバータ9Iは入力電圧検出部7の論理レベルを反転させ、ラッチ回路9RのリセットRへ送出する。ラッチ回路9Rは、インバータ9Iの出力をリセットRから取り込み、出力電圧検出部8の出力をセットSから取り込む。電池電圧Viが停止入力電圧Esより低い期間、入力電圧検出部7がその出力をHレベルに維持するので、インバータ9IはリセットRをLレベルに維持する。その期間中、出力電圧Voが起動出力電圧Euを下回るとき、出力電圧検出部8がその出力をHレベルに遷移させる。そのとき、セットSがHレベルに遷移する。従って、ラッチ回路9Rの出力QがHレベルに遷移する。その遷移後、リセットRがLレベルに維持される期間中、ラッチ回路9RはセットSのレベルに関わらず、出力QをHレベルに固定する。電池電圧Viが停止入力電圧Esを超えるとき、入力電圧検出部7がその出力をLレベルに遷移させる。そのとき、インバータ9IはリセットRをHレベルに遷移させる。従って、ラッチ回路9Rの出力QがLレベルに遷移する。
【0111】
コンバータ制御部4はラッチ回路9Rの出力Qについて、LレベルからHレベルへの遷移を起動信号Stとして解釈し、HレベルからLレベルへの遷移を停止信号Suとして解釈する。すなわち、コンバータ制御部4は出力Qの立ち上がりにより起動し、出力Qの立ち下がりにより停止する。その結果、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高い期間ではコンバータ制御部4は停止する。一方、電池電圧Viが停止入力電圧Esより低い期間中、出力電圧Voが起動出力電圧Euまで降下するときコンバータ制御部4は起動する。
【0112】
電池Bの放電開始時、電池電圧Viが出力電圧Voより高いので、バイパス制御部6がバイパススイッチ5をオンさせる。それにより、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高く維持される期間では、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに維持される。従って、その期間ではバイパス制御部6がバイパススイッチ5をオン状態に安定に維持する。
【0113】
停止入力電圧Esは起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和以上である:Es≧Eu+Vonmax。従って、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高く維持される期間(Vi>Es)では出力電圧Voが起動出力電圧Euより高い:Vo≧Vi−Vonmax>Es−Vonmax≧Eu。それ故、起動制御部9が出力QをLレベルに安定に維持する。その結果、コンバータ制御部4が停止状態を安定に維持する。それにより、チョッパスイッチ3Sがオフ状態を安定に維持し、すなわち、昇圧チョッパ3が停止状態を安定に維持する。
【0114】
電池Bの放電中〜末期、及びそれに続く充電初期では、電池電圧Viと直流電源装置40の出力電圧Voとが図7に示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。
【0115】
出力電圧Voが起動出力電圧Euより高い期間(図7に示される領域I)では、起動制御部9が出力QをLレベルに維持するので、昇圧チョッパ3が停止状態を維持する。ここで、停止入力電圧Esと起動出力電圧Euとの差が電圧降下上限Vonmax以上である:Es−Eu≧Vonmax。従って、電池電圧Viによる停止入力電圧Esへの降下(図7に示される点Sb参照)が出力電圧Voによる起動出力電圧Euへの降下(図7に示される点Ss参照)より早い。従って、領域I末期で起動制御部9の出力QがLレベルに安定に維持されるので、昇圧チョッパ3が停止状態を安定に維持する。
【0116】
電池電圧Viが停止入力電圧Esへ降下する(図7に示される点Sb参照)。そのとき入力電圧検出部7が出力をHレベルに遷移させるので、ラッチ回路9RのリセットRがLレベルに遷移する。続いて、出力電圧Voが起動出力電圧Euまで降下する(図7に示される点Ss参照)。そのとき、出力電圧検出部8がラッチ回路9RのセットSをHレベルに遷移させる。従って、ラッチ回路9Rは出力QをHレベルに遷移させ、すなわち起動信号Stを送出する。それによりコンバータ制御部4が起動する。その時刻Ts以降、OSC4Aが基準信号VRを送出し、かつ、実施形態2と同様な初期化処理が行われる。
【0117】
起動出力電圧Euは目標電圧ETより低い:Eu<ET。従って、時刻Tsでは出力電圧Voが目標電圧ETより低い:Vo≒Eu<ET。それ故、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間が経過するとき、PWM回路4Cが直ちにスイッチング信号SGのレベルの切換を開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を速やかに開始する。すなわち、昇圧チョッパ3が昇圧動作を速やかに開始する。
【0118】
時刻Tsではバイパススイッチ5がオン状態であるので、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低い。従って、バイパス制御部6は時刻Tsではバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、時刻Ts以後早くともコンバータ制御部4の起動時間が経過するまでは、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される(図7に示される点Ss参照)。
一方、起動出力電圧Euは停止時出力下限Ec以上である:Eu≧Ec。それ故、時刻Tsでは出力電圧Voが実質的に停止時出力下限Ec以上である:Vo≒Eu≧Ec=El+α。その結果、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間の経過時まで、出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。
【0119】
バイパススイッチ5のオン期間では電池電圧Viが出力電圧Voと電圧降下上限Vonmaxとの和以下である:Vi=Vo+Von≦Vo+Vonmax。特に時刻Tsでは電池電圧Viが停止入力電圧Es以下であり、すなわち目標電圧ETを最低昇圧比1/(1−rmin)で割った値ET×(1−rmin)以下である:Vi≦Es≦ET×(1−rmin)(図7に示される点Ss参照)。従って、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが最低昇圧比1/(1−rmin)以上である:ET/Vi≧1/(1−rmin)。それ故、出力電圧Voが目標電圧ETを大きく超えないように、コンバータ制御部4は昇圧チョッパ3を安定に制御できる。こうして、昇圧チョッパ3が安定に動作する。
【0120】
出力電圧Voは、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間の経過後昇圧チョッパ3の昇圧動作により速やかに上昇し、時刻Tfで電池電圧Viと一致する(図7に示される点Sf参照)。そのとき、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオフさせる。こうして、バイパススイッチ5のオフによるスイッチング損失が抑制される。
【0121】
昇圧チョッパ3による安定な昇圧動作は、出力電圧Voによる目標電圧ETへの到達時点以降、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく、かつ安定に維持する。ここで、目標電圧ETは動作時出力下限Eo以上である:ET≧Eo=El+β。従って、出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。こうして、直流電源装置40は、出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0122】
直流電源装置40は更に、時刻Ts以後電池Bが完全放電状態近くに達するまで、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持できる(図7に示される領域II参照)。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置40は有利である。
【0123】
時刻Tfより後、電池式電子機器が外部電源に接続され、電池Bの充電と共に、直流電源装置40を通した直流電力による駆動を継続するときを想定する。直流電源装置40ではそのとき、昇圧チョッパ3が昇圧動作を継続し、出力電圧Voを目標電圧ETに維持する。一方、電池電圧Viが電池Bの充電により上昇する。それにより、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが降下する。
電池電圧Viが停止入力電圧Esまで上昇するとき(図7に示される点Sh参照)、入力電圧検出部7はインバータ9Iを通し、ラッチ回路9RのリセットRをHレベルに遷移させる。そのとき、ラッチ回路9Rは出力QをLレベルに遷移させる。従って、コンバータ制御部4が停止し、昇圧チョッパ3が停止する。ここで、停止入力電圧Esに対する目標電圧ETの比ET/Esは最低昇圧比1/(1−rmin)以上である:ET/Es≧1/(1−rmin)。それ故、電池電圧Viが停止入力電圧Esまで上昇する時刻Thでは昇圧チョッパ3が安定に停止する。
【0124】
時刻Th以後、出力電圧Voは目標電圧ETから降下し、時刻Tgで電池電圧Viと一致する(図7に示される点Sg参照)。そのとき、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオンさせる。それにより、出力電圧Voが時刻Tg以後、電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに維持される:Vo=Vi−Von。更に、停止入力電圧Esが起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和以上であり、かつ、時刻Th以後電池電圧Viが停止入力電圧Es以上である:Es≧Eu+Vonmax、Vi≧Es。従って、時刻Th以後、出力電圧Voが起動出力電圧Eu以上に維持される:Vo≧Vi−Vonmax≧Es−Vonmax≧Eu≧Ec=El+α。こうして、出力電圧Voは時刻Th以後、外部負荷Lの動作電圧に対する許容下限Elより十分に高く維持される。出力電圧Voは更に、電池電圧Viとの差を停止時電圧降下Vonと実質的に等しく保ちつつ、電池Bの充電による電池電圧Viの上昇と共に上昇する(図7に示される領域III参照)。
【0125】
本発明の実施形態4による直流電源装置40は上記の通り、電池Bの充放電が繰り返されるとき、出力電圧Voを外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持する。それ故、出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0126】
[実施形態5]
図8は、本発明の実施形態5による直流電源装置50の回路図である。実施形態5による直流電源装置50は、実施形態4による直流電源装置40と同様な回路構成を持つ。従って、図8ではそれらの同様な構成要素に対して、図6に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態4についての説明を援用する。
【0127】
本発明の実施形態5による直流電源装置50は起動制御部9内にAND回路9Aを更に有する点で、実施形態4による直流電源装置40とは異なる。
AND回路9Aは入力電圧検出部7の出力と出力電圧検出部8の出力との論理積をラッチ回路9Rへ送出する。ラッチ回路9Rは、インバータ9Iの出力をリセットRから取り込み、AND回路9Aの出力をセットSから取り込む。
電池電圧Viが停止入力電圧Esより低い期間では入力電圧検出部7の出力がHレベルに維持される。従って、その期間ではAND回路9Aの出力すなわちラッチ回路9RのセットSの論理レベルが出力電圧検出部8の出力の論理レベルと等しい。それ故、電池電圧Viが停止入力電圧Esより低い期間では、起動制御部9は実施形態4と同様に動作する。
【0128】
電池電圧Viが停止入力電圧Esより高い期間では入力電圧検出部7の出力がLレベルに維持されるので、インバータ9Iはラッチ回路9RのリセットRをHレベルに維持する。その状態で、出力電圧検出部8が出力をHレベルに遷移させるとき、AND回路9Aがラッチ回路9RのセットSをLレベルに維持する。それにより、ラッチ回路9Rは出力QをLレベルに安定に維持する。こうして、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高く、かつ出力電圧Voが起動出力電圧Euを下回るときでも、起動制御部9はコンバータ制御部4に対し停止信号Suを安定に送出する。
【0129】
満充電の電池Bが直流電源装置50へ接続された直後、電池電圧Viと直流電源装置50の出力電圧Voとが図9に示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。図9は図3Aに示される点A近傍の拡大図に相当する。
【0130】
電池電圧Viは初期電圧VAと実質的に等しく、特に停止入力電圧Esより高い。一方、出力電圧Voは一般に0であり、特に起動出力電圧Euより低い。そのとき電池電圧Viが出力電圧Voより高いので、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオンさせる。一方、入力電圧検出部7の出力がLレベルであり、かつ出力電圧検出部8の出力がHレベルである。従って、インバータ9Iはその出力をHレベルに維持し、AND回路9Aはその出力をLレベルに維持する。それ故、ラッチ回路9Rはその出力QをLレベルに維持する。こうして、コンバータ制御部4が停止状態を維持するので、昇圧チョッパ3は停止状態を維持する。
【0131】
出力電圧Voは電池Bの放電開始直後、速やかに上昇し(図9に示される実線参照)、時刻Taで起動出力電圧Euを超える(図9に示される点Sa参照)。そのとき、出力電圧検出部8はその出力をLレベルに遷移させる。しかし、インバータ9I及びAND回路9Aはいずれも出力を変えないので、ラッチ回路9Rはその出力QをLレベルに安定に維持する。
出力電圧Vo(実線)は時刻Ta以降も上昇を続け、電池電圧Vi(破線)より停止時電圧降下Vonだけ低いレベルで安定に維持される。
こうして、起動制御部9は直流電源装置50と電池Bとの接続直後で停止信号Suを安定に送出する。それにより、電池Bの放電開始直後での昇圧チョッパ3の誤作動を確実に防ぐ。
【0132】
実施形態5による直流電源装置50は、図9に示される期間以後の電池Bの放電期間、特に放電中〜末期、及びそれに続く充電期間での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とについて、実施形態4による直流電源装置40と共通する。それら共通の時間変化については、図7及び実施形態4についての説明を援用する。
【0133】
[実施形態6]
図10は、本発明の実施形態6による直流電源装置60の回路図である。実施形態6による直流電源装置60は実施形態1による直流電源装置10と同様な回路構成を持つ。従って、図10ではそれら同様な構成要素に対して図1に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態1についての説明を援用する。
【0134】
直流電源装置60は電池電圧Viを外部負荷Lへの出力電圧Voへ変換し、電池Bの放電期間全体にわたり、その出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持する。
電池Bの放電初期では電池電圧Viが目標電圧ETより高い。直流電源装置60はそのとき、後述のように降圧動作を行い、出力電圧Voを電池電圧Viより低く変換する。
電池Bの放電末期では電池電圧Viが落下する。直流電源装置60はそのとき、後述のように昇圧動作を行い、出力電圧Voを電池電圧Viより高く変換する。
【0135】
直流電源装置60は、DC−DCコンバータ、コンバータ制御部4、バイパススイッチ5、及びバイパス制御部6を有する。
DC−DCコンバータは、降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32とによる昇降圧型コンバータである。降圧チョッパ31は、降圧チョッパスイッチ3S1、第一のダイオード3D1、及びインダクタ3Lを含む。昇圧チョッパ32は、インダクタ3L、第二のダイオード3D、出力平滑コンデンサ3C、及び昇圧チョッパスイッチ3S2を含む。ここで、インダクタ3Lは降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32とにより共用される。
【0136】
降圧チョッパスイッチ3S1は好ましくはPチャネルMOSFETである。そのソースは高電位側入力端子1Aへ接続される。そのドレインはインダクタ3Lの一端へ接続される。そのゲートはコンバータ制御部4内にある第一のPWM回路4C1へ接続される。
インダクタ3Lの他端は第二のダイオード3D2のアノードへ接続される。第二のダイオード3Dのカソードは高電位側出力端子2Aへ接続される。
第一のダイオード3D1のカソードは降圧チョッパスイッチ3S1とインダクタ3Lとの間の接続点P1へ接続される。そのアノードは低電位側入力端子1Bと低電位側出力端子2Bとの両方へ接続される。
昇圧チョッパスイッチ3S2は好ましくは、NチャネルMOSFETである。そのドレインはインダクタ3Lと第二のダイオード3D2との間の接続点P2へ接続される。そのソースは低電位側入力端子1Bと低電位側出力端子2Bとの両方へ接続される。そのゲートはコンバータ制御部4内にある第二のPWM回路4C2へ接続される。
出力平滑コンデンサ3Cは、高電位側出力端子2Aと低電位側出力端子2Bとの間に接続される。
【0137】
降圧チョッパスイッチ3S1は、ゲートの論理レベルがHレベルであるときオフ状態であり、Lレベルであるときオン状態である。
昇圧チョッパスイッチ3S2は、ゲートの論理レベルがHレベルであるときオン状態であり、Lレベルであるときオフ状態である。
コンバータ制御部4は後述のように、降圧チョッパスイッチ3S1に対しオンオフ制御を行うときは昇圧チョッパスイッチ3S2をオフ状態に維持する。逆に、昇圧チョッパスイッチ3S2に対しオンオフ制御を行うときは降圧チョッパスイッチ3S1をオン状態に維持する。
【0138】
降圧チョッパ31は降圧チョッパスイッチ3S1のスイッチングにより以下のような降圧動作を行う。ここで、以下の説明では次のことを前提とする:出力平滑コンデンサ3Cには十分に多量の電荷が既に蓄えられているので、外部負荷Lへの出力電圧Voが十分に高い。但し、電池電圧Viよりは低い。更にバイパススイッチ5及び昇圧チョッパスイッチ3S2が共にオフ状態に維持される。
【0139】
降圧チョッパスイッチ3S1がオン状態にあるとき、第一のダイオード3D1には逆電圧(≒−Vi)が加えられるので、第一のダイオード3D1の順電流Id1が0まで減衰する。一方、第二のダイオード3D2には順電圧(≒Vi−Vo)が加えられるので、第二のダイオード3D2には順電流Id2が流れる。インダクタ3Lは電池電圧Viと出力電圧Voとの差Vi−Voで励磁されるので、インダクタ3Lに蓄えられる磁気エネルギーが増大する。
【0140】
降圧チョッパスイッチ3Sがオフ状態へ切り換えられるとき、インダクタ3Lの作用によりインダクタ3Lと第一のダイオード3D1との間の接続点P1の電位が急降下し、第一のダイオード3D1に順電圧が加えられる。それにより第一のダイオード3D1が導通するので、その順電流Id1が増加する。その結果、降圧チョッパスイッチ3S1のオン時間中、インダクタ3Lに蓄えられた磁気エネルギーが、降圧チョッパスイッチ3S1のオフ時間中、出力平滑コンデンサ3C及び外部負荷Lへ供給される。
【0141】
降圧チョッパスイッチ3S1のスイッチング周期での電池電圧Viと出力電圧Voとのそれぞれの変動を無視するとき、電池電圧Viと出力電圧Voとはインダクタ3Lに対するリセット条件(降圧チョッパスイッチ3S1のオン時間中、インダクタ3Lに蓄えられた磁気エネルギーが、降圧チョッパスイッチ3S1のオフ時間中、インダクタ3Lから放出される磁気エネルギーと釣り合うための条件)に基づき、次式を満たす:(Vi−Vo)×Ton=Vo×(T−Ton)。ここで、スイッチング周期をTとし、一周期当たりのオン時間をTonとする。従って、降圧チョッパ31の電圧変換率Vo/Viは降圧チョッパスイッチ3S1の通流率r=Ton/Tと等しい:Vo/Vi=r。通流率rは1より低いので、電圧変換率Vo/Viは1より低い:Vo/Vi<1。こうして、降圧チョッパ31は降圧チョッパスイッチ3S1のスイッチングにより、電圧変換率を1より低く維持する。
【0142】
昇圧チョッパ32は昇圧チョッパスイッチ3S2のスイッチングにより、実施形態1による昇圧チョッパ3と同様に、電圧変換率を1より高く維持する。その詳細の説明は実施形態1についての説明を援用する。
【0143】
コンバータ制御部4は、OSC4A、帰還回路4B、第一のPWM回路4C1、レベルシフト部4L、及び第二のPWM回路4C2を含む。ここで、OSC4Aと帰還回路4Bとは実施形態1によるものと同様であるので、その詳細の説明は実施形態1についての説明を援用する。
【0144】
帰還回路4Bは目標電圧ETを低くとも、降圧チョッパ31に対する動作時出力下限Eo1(降圧チョッパ31の動作期間での出力電圧Voの許容下限)、又は、昇圧チョッパ32に対する動作時出力下限Eo2(昇圧チョッパ32の動作期間での出力電圧Voの許容下限)、のいずれか高い方と等しく設定する:ET≧max(Eo1,Eo2)。それぞれのチョッパに対する動作時出力下限Eo1、Eo2は例えば、外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elよりそれぞれのチョッパに対する動作時出力余裕β1、β2だけ高く設定される:Eo1=El+β1、Eo2=El+β2。動作時出力余裕β1、β2は、それぞれのチョッパの動作期間での出力電圧Voに含まれるリプル電圧ρ1、ρ2と、外部負荷Lでの電流量の予測可能な急増に伴う出力電圧Voの落下に対する余裕δとの和で決まる:β1=ρ1+δ、β2=ρ2+δ。
【0145】
帰還回路4Bに含まれる誤差増幅器4Dにより送出される誤差信号を、降圧誤差信号VE1と呼ぶ。目標電圧ETに対する出力電圧Voの高さが低減するほど、降圧誤差信号VE1のレベルが高い。
【0146】
第一のPWM回路4C1は降圧チョッパスイッチ3S1のゲートへ、第一のスイッチング信号SG1を送出する。第一のスイッチング信号SG1は一定振幅を持つ矩形電圧パルスである。降圧チョッパスイッチ3S1は、第一のスイッチング信号SG1の立ち上がりでオフし、第一のスイッチング信号SG1の立ち下がりでオンする。特に第一のスイッチング信号SG1のパルス幅で降圧チョッパスイッチ3S1のオフ時間が決定される。
【0147】
第一のPWM回路4C1は基準信号VRと降圧誤差信号VE1とのレベルを比較し、それらのレベルが一致するごとに第一のスイッチング信号SG1のレベルを切り換える。それにより、基準信号VRのレベルが降圧誤差信号VE1のレベルを超える期間では第一のスイッチング信号SG1を例えばHレベルに維持し、降圧チョッパスイッチ3S1をオフ状態に維持する。逆に、基準信号VRのレベルが降圧誤差信号VE1のレベルを下回る期間では第一のスイッチング信号SG1をLレベルに維持し、降圧チョッパスイッチ3S1をオン状態に維持する。
【0148】
レベルシフト部4Lは降圧誤差信号VE1のレベルを一定の変位量LS(以下、その変位量をレベルシフト量という)だけ下げ、昇圧誤差信号VE2として第二のPWM回路4C2へ送出する:VE2=VE1−LS。レベルシフト量LSは少なくとも基準信号VRの振幅、すなわち基準信号VRの最高レベルLTと最低レベルLBとの差LT−LBと実質的に等しい:LS≧LT−LB。
【0149】
第二のPWM回路4C2は昇圧チョッパスイッチ3S2のゲートへ、第二のスイッチング信号SG2を送出する。第二のスイッチング信号SG2は一定振幅を持つ矩形電圧パルスである。昇圧チョッパスイッチ3S2は、第二のスイッチング信号SG2の立ち上がりでオンし、第二のスイッチング信号SG2の立ち下がりでオフする。特に第二のスイッチング信号SG2のパルス幅で昇圧チョッパスイッチ3S2のオン時間が決定される。
【0150】
第二のPWM回路4C2は基準信号VRと昇圧誤差信号VE2とのレベルを比較し、それらのレベルが一致するごとに第二のスイッチング信号SG2のレベルを切り換える。それにより、基準信号VRのレベルが昇圧誤差信号VE2のレベルを超える期間では第二のスイッチング信号SG2を例えばHレベルに維持し、昇圧チョッパスイッチ3S2をオン状態に維持する。逆に、基準信号VRのレベルが昇圧誤差信号VE2のレベルを下回る期間では第二のスイッチング信号SG2をLレベルに維持し、昇圧チョッパスイッチ3S2をオフ状態に維持する。
【0151】
図11に示される通り、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRのレベルを下回る期間が短いほど、第一のスイッチング信号SG1のパルス幅が短い。従って、降圧チョッパスイッチ3S1のオフ時間Toffが短い。基準信号VRの周期は一定であるので、降圧チョッパスイッチ3S1のスイッチング周期T(T=Ton+Toff)は一定である。それ故、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRのレベルを下回る期間が短いほど、降圧チョッパスイッチ3S1の通流率r=1−Toff/T、すなわち降圧チョッパ31の電圧変換率Vo/Vi=rが1に近い。
【0152】
降圧チョッパ31の動作期間では、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの変動範囲内にある:LB≦VE1≦LT。
出力電圧Voが目標電圧ETから少しだけ降下するとき(Vo<ET)、降圧誤差信号VE1のレベルが上昇する。そのとき、第一のPWM回路4C1は第一のスイッチング信号SG1のパルス幅を減少させる。それにより降圧チョッパ31の電圧変換率が1に接近するので出力電圧Voが上昇し、目標電圧ETへ戻る。
逆に、出力電圧Voが目標電圧ETから少しだけ上昇するとき(Vo>ET)、降圧誤差信号VE1のレベルが降下する。そのとき、第一のPWM回路4C1は第一のスイッチング信号SG1のパルス幅を増加させる。それにより降圧チョッパ31の電圧変換率が低下するので出力電圧Voが降下し、目標電圧ETへ戻る。
こうして、第一のPWM回路4C1は基準信号VRと降圧誤差信号VE1とに基づき第一のスイッチング信号SG1のパルス幅を変化させることで、降圧チョッパ31の出力電圧Voの変動を抑制し、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持する。
【0153】
図11に示される通り、昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRのレベルを超える期間が長いほど、第二のスイッチング信号SG2のパルス幅が長い。従って、昇圧チョッパスイッチ3S2のオン時間Tonが長い。基準信号VRの周期は一定であるので、昇圧チョッパスイッチ3S2のスイッチング周期T(T=Ton+Toff)は一定である。それ故、昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRのレベルを超える期間が長いほど、昇圧チョッパスイッチ3S2の通流率r=Ton/Tが大きい。すなわち昇圧チョッパ32の昇圧比Vo/Vi=1/(1−r)が大きい。
【0154】
第二のPWM回路4C2は、基準信号VRと昇圧誤差信号VE2とに基づき第二のスイッチング信号SG2のパルス幅を変化させることで、昇圧チョッパ32の出力電圧Voの変動を抑制し、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持する。その制御は実施形態1によるPWM回路4Cと同様であるので、その詳細の説明は実施形態1についての説明を援用する。
【0155】
降圧誤差信号VE1と昇圧誤差信号VE2との間のレベル差、すなわちレベルシフト量LSが基準信号VRの振幅LT−LBより大きいとき(LS>LT−LB)、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高く、かつ昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRの最低レベルLBより低い状態があり得る(図11に示される領域W参照)。その領域Wでは、降圧誤差信号VE1のレベル及び昇圧誤差信号VE2のレベルがいずれも基準信号VRの変動範囲外である。そのとき、第一のPWM回路4C1は降圧チョッパスイッチ3S1をオン状態に維持し、第二のPWM回路4C2は昇圧チョッパスイッチ3S2をオフ状態に維持する。それにより、DC−DCコンバータでは、降圧チョッパスイッチ3S1、インダクタ3L、及び第二のダイオード3D2の直列接続が導通状態を維持する。
【0156】
バイパススイッチ5は高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間に、DC−DCコンバータと並列に接続される。バイパススイッチ5は好ましくは、第一のPチャネルMOSFET(以下、PMOSと略す)5Aと第二のPMOS5Bとの直列接続である。第一のPMOS5Aのソースが高電位側入力端子1Aへ接続される。第一のPMOS5Aのドレインが第二のPMOS5Bのドレインへ接続される。第二のPMOS5Bのソースは高電位側出力端子2Aへ接続される。第一のPMOS5Aのゲート及び第二のPMOS5Bのゲートは共にバイパス制御部6内にあるOR回路6Rの出力端子へ接続される。第一のPMOS5A及び第二のPMOS5Bはいずれも、ゲートの論理レベルがHレベルのときオフし、Lレベルのときオンする。
高電位側入力端子1Aからバイパススイッチ5を通り高電位側出力端子2Aへ至る経路は、降圧チョッパスイッチ3S1、インダクタ3L、及び第二のダイオード3D2の直列接続を含むDC−DCコンバータ内の経路のバイパスとして機能する。バイパススイッチ5のオン抵抗は好ましくは、その直列接続の抵抗より小さい。
【0157】
バイパス制御部6は、第一のコンパレータ6C、第二のコンパレータ6D、第二の基準電源6E、及びOR回路6Rを含む。
第一のコンパレータ6Cの反転入力端子は高電位側入力端子1Aへ接続される。その非反転入力端子は高電位側出力端子2Aへ接続される。その出力端子はOR回路6Rへ接続される。それにより、反転入力端子の電位は電池電圧Viと等しく、非反転入力端子の電位は出力電圧Voと等しい。従って、第一のコンパレータ6Cは、電池電圧Viが出力電圧Voより高いとき(Vi>Vo)出力をLレベルに維持し、電池電圧Viが出力電圧Voより低いとき(Vi<Vo)出力をHレベルに維持する。
【0158】
第二のコンパレータ6Dの反転入力端子はコンバータ制御部4内にある帰還回路4Bの出力端子へ接続される。その非反転入力端子は第二の基準電源6Eへ接続される。その出力端子はOR回路6Rへ接続される。それにより、反転入力端子の電位は降圧誤差信号VE1のレベルと等しく、非反転入力端子の電位は第二の基準電源6Eの電圧と等しい。ここで、第二の基準電源6Eの電圧は基準信号VRの最高レベルLTと実質的に等しく設定される。従って、第二のコンパレータ6Dは、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより低いとき(VE1<LT)出力をHレベルに維持し、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高いとき(VE1>LT)出力をLレベルに維持する。
【0159】
OR回路6Rは第一のコンパレータ6Cの出力と第二のコンパレータ6Dの出力との論理和を計算する。OR回路6Rはその計算結果を、第一のPMOS5Aと第二のPMOS5Bとのゲートの論理レベルとして設定する。従って、第一のPMOS5Aと第二のPMOS5Bとはオン/オフ状態が共通である。すなわち、第一のPMOS5Aがオン状態であるとき第二のPMOS5Bはオン状態であり、第一のPMOS5Aがオフ状態であるとき第二のPMOS5Bはオフ状態である。
【0160】
バイパス制御部6は、電池電圧Viと出力電圧Voとの差、及び降圧誤差信号VE1のレベルと基準信号VRの最高レベルLTとの差に基づき、バイパススイッチ5のオンオフを次のように制御する。
電池電圧Viが出力電圧Voより高く(Vi>Vo)、かつ降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高いとき(VE1>LT)、OR回路6Rの出力がLレベルに維持される。従って、バイパススイッチ5では、第一のPMOS5A及び第二のPMOS5Bがいずれもオン状態に維持される。
電池電圧Viが出力電圧Voより低く(Vi<Vo)、又は降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより低いとき(VE1<LT)、OR回路6Rの出力がHレベルに維持される。従って、バイパススイッチ5では、第一のPMOS5A及び第二のPMOS5Bがいずれもオフ状態に維持される。
【0161】
降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高い期間では第一のPWM回路4C1が降圧チョッパスイッチ3S1をオン状態に維持し、降圧チョッパ31が停止する。一方、昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRの最低レベルLBより低い期間では、第二のPWM回路4C2が昇圧チョッパスイッチ3S2をオフ状態に維持し、昇圧チョッパ32が停止する。
降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32とが共に停止する期間にバイパススイッチ5がオン状態に維持されるとき、負荷電流Ioは高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で二つに分岐する。一方の支流Id2は降圧チョッパスイッチ3S1、インダクタ3L、及び第二のダイオード3D2の直列接続を流れる。他方の支流(バイパス電流)I5はバイパススイッチ5を流れる。バイパススイッチ5のオン期間での高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗をRとすると、停止時電圧降下Vonはその抵抗Rと負荷電流Ioとの積と等しい:Von=R×Io。こうして、降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32との停止期間にバイパススイッチ5がオン状態に維持されるとき、出力電圧Voは電池電圧Viより停止時電圧降下量Vonだけ低いレベルに維持される。
【0162】
直流電源装置60は、以上の構成により、例えば満充電の電池Bとの接続による電源投入時、電池Bから外部負荷Lへ電力を次のように伝達する。
満充電の電池Bが直流電源装置60へ接続された直後、電池電圧Viは出力電圧Voより高く、かつ降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高いので、バイパス制御部6がバイパススイッチ5をオンさせる。
バイパススイッチ5のオンによりバイパス電流I5が流れる。そのとき、出力電圧Voが速やかに上昇し、目標電圧ETを超える。
【0163】
直流電源装置60と満充電の電池Bとの接続直後、電池電圧Viは初期電圧と等しい(図3Aに示される点A参照)。従って、コンバータ制御部4が起動し、OSC4Aが基準信号VRを送出し始める。
出力電圧Voが目標電圧ETを超えるとき、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTを下回る。それにより、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオフさせる。一方、第一のPWM回路4C1は降圧チョッパスイッチ3S1に対するスイッチング制御を開始し、降圧チョッパ31が起動する。更に昇圧誤差信号VE2のレベルは基準信号VRの最低レベルLBより低いので、第二のPWM回路4C2は昇圧チョッパスイッチ3S2をオフ状態に維持する。
出力電圧Voの上昇は降圧チョッパ31の降圧動作により速やかに抑えられ、出力電圧Voが降圧目標電圧ET1と実質的に等しく維持される。
【0164】
降圧チョッパ31の動作期間では、放電時間の経過による電池電圧Viの降下に伴い、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが低減する。そのとき降圧チョッパ31により達成されるべき電圧変換率Vo/Viが1に接近するので、降圧誤差信号VE1のレベルが上昇する。すなわち、降圧誤差信号VE1が基準信号VRを下回る期間が短縮される。
【0165】
電池Bの放電末期では電池電圧Viが急落し、目標電圧ETまで降下する。電池Bが特に高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池である場合は、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETまで降下する。そのとき、降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTと実質的に等しいレベルまで達する(図11に示される点Sl参照)。それにより、降圧チョッパスイッチ3S1はオン状態に維持され、降圧チョッパ31が停止する。一方、バイパス制御部6はバイパススイッチ5をオンさせる。そのとき、負荷電流Ioは高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で二つに分岐し、降圧チョッパスイッチ3S1、インダクタ3L、及び第二のダイオード3D2の直列接続、並びにバイパススイッチ5を並行して流れる。従って、出力電圧Voは電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに維持され、電池電圧Viの降下と共に降下する。
【0166】
降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTを超える時点(図11に示される点Sl)から、昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRの最低レベルLBに到達する時点まで(図11に示される点Ss)の期間(図11に示される領域W)では、降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32とが共に停止状態を維持する。更に、降圧チョッパスイッチ3S1、インダクタ3L、及び第二のダイオード3D2の直列接続が導通状態を維持する。その上、バイパススイッチ5がオン状態を維持する。ここで、高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間の抵抗はバイパススイッチ5のオンにより低減するので、停止時電圧降下Vonは小さい。従って、降圧チョッパ31と昇圧チョッパ32との停止期間では直流電源装置60の導通損失が小さい。それにより、電池容量の利用効率が高く維持される。
【0167】
電池電圧Viが更に落下するとき、昇圧誤差信号VE2のレベルが基準信号VRの最低レベルLBに達する(図11に示される点Ss参照)。従って、第二のPWM回路4C2が第二のスイッチング信号SG2のレベルの切換を即座に開始する。それにより、昇圧チョッパ32内では昇圧チョッパスイッチ3S2がスイッチング動作を開始する。こうして、昇圧チョッパ32が速やかに昇圧動作を開始する。
【0168】
昇圧チョッパ32による昇圧動作の開始時、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低く、かつ降圧誤差信号VE1のレベルが基準信号VRの最高レベルLTより高い。従って、バイパス制御部6は、昇圧チョッパ32による昇圧動作の開始後、出力電圧Voが電池電圧Viと一致するまではバイパススイッチ5をオン状態に維持する。それにより、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される。特に出力電圧Voには過大なアンダーシュートが生じない。更に、バイパス電流I5が実質的に零に等しい状態でバイパススイッチ5がオフするので、スイッチング損失が生じない。
【0169】
直流電源装置60は更に、電池Bが完全放電状態近くに達するまで、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持できる。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置60は有利である。
【0170】
本発明の実施形態6による直流電源装置60は上記の通り、電池Bの放電期間全体を通し出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく維持する。その結果、電池容量の利用効率が高い。特に昇圧チョッパ32による昇圧動作の開始時、出力電圧Voには過大なアンダーシュートが生じない。こうして、出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0171】
[実施形態7]
図12は、本発明の実施形態7による直流電源装置70の回路図である。実施形態7による直流電源装置70は実施形態2による直流電源装置20と同様な回路構成を持つ。従って、図12ではそれら同様な構成要素に対して、図4に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態2についての説明を援用する。
【0172】
本発明の実施形態7による直流電源装置70は、実施形態2によるバイパス制御部6に代え、バイパス制御部11を有する。バイパス制御部11は遅延回路とスイッチ駆動部11Aとを含む。
遅延回路は抵抗(抵抗値R)とコンデンサ(容量C)とによるローパスフィルタであり、起動信号Stを時定数R×C程度の一定の遅延時間ΔTDだけ遅らせ、スイッチ駆動部11Aへ伝達する。ここで、その遅延時間ΔTDは短くともコンバータ制御部4の起動時間と実質的に等しく設定される。遅延時間ΔTDは好ましくは、コンバータ制御部4の起動時点から電池電圧Viと出力電圧Voとの一致時点までの時間として推定される一定値と実質的に等しく設定される。
スイッチ駆動部11Aは起動信号Stを増幅し、バイパススイッチ5のゲートへ送出する。それにより、起動信号StがHレベルであるとき、バイパススイッチ5がオフする。逆に、起動信号StがLレベルであるとき、バイパススイッチ5がオンする。
【0173】
電池Bの放電期間では、電池電圧Viと直流電源装置70の出力電圧Voとが図13に示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。
【0174】
電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高い期間(図13に示される領域I)では入力電圧検出部7が起動信号StをLレベルに維持するので、コンバータ制御部4が停止状態を維持する。従って、コンバータ制御部4はスイッチング信号SGをLレベルに維持するので、チョッパスイッチ3Sがオフ状態に維持される。すなわち昇圧チョッパ3は停止状態を維持する。
一方、領域Iでは起動信号StがLレベルに維持されるので、バイパス制御部11はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。バイパススイッチ5のオン期間では負荷電流Ioが高電位側入力端子1Aと高電位側出力端子2Aとの間で二つに分岐する。従って、実施形態2と同様に、昇圧チョッパ3の停止期間中での直流電源装置70の導通損失が低減する。
【0175】
電池電圧Viが目標電圧ETを下回り、更に起動入力電圧Eiまで降下するとき(図13に示される点Ss参照)、入力電圧検出部7は起動信号Stを立ち上げる。それによりコンバータ制御部4が起動する。その時刻Ts以降、OSC4Aが基準信号VRを送出し、かつ初期化処理が行われる。一方、バイパス制御部11の遅延作用により、時刻Tsではバイパススイッチ5のゲート電位が立ち上がらず、バイパススイッチ5はオン状態に維持される。
【0176】
時刻Tsでは出力電圧Voが目標電圧ETより低い:Vo<ET。従って、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間が経過するとき、PWM回路4Cは直ちにスイッチング信号SGのレベルの切換を開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を開始する。すなわち、昇圧チョッパ3が昇圧動作を開始する。
【0177】
電池電圧Viは昇圧チョッパ3による昇圧動作の開始時、起動入力電圧Ei以下である:Vi≦Ei。一方、目標電圧ETは起動入力電圧Eiの最低昇圧比倍Ei/(1−rmin)以上である:ET≧Ei/(1−rmin)。従って、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが最低昇圧比1/(1−rmin)以上である:ET/Vi≧ET/Ei≧1/(1−rmin)。それ故、出力電圧Voが目標電圧ETを大きく超えないように、コンバータ制御部4は昇圧チョッパ3を安定に制御できる。こうして、昇圧チョッパ3が安定に動作する。
【0178】
出力電圧Voは昇圧チョッパ3の昇圧動作により速やかに上昇し、時刻Tmで電池電圧Viと上下関係を逆転させる(図13に示される点Sm参照)。そのとき、バイパス電流I5が向きを反転させる。
【0179】
バイパス制御部11は時刻Tsから遅延時間ΔTD後の時刻Tfにバイパススイッチ5をオフさせる(図13に示される点Sf参照)。遅延時間ΔTDはコンバータ制御部4の実際の起動時間と十分に近い。従って、時刻Tsから早くともコンバータ制御部4の実際の起動時間の経過時点に十分近い時点までは、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される(図13に示される点Ss参照)。ここで、起動入力電圧Eiは停止時出力下限Ecと電圧降下上限Vonmaxとの和以上である:Ei≧Ec+Vonmax。それ故、時刻Tsでは出力電圧Voが停止時出力下限Ec以上である:Vo≧Ei−Vonmax≧Ec=El+α。こうして、時刻Tsからコンバータ制御部4の実際の起動時間の経過時点近くまで出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される
【0180】
更に、遅延時間ΔTDに対する上記の設定により、バイパススイッチ5がオフする時刻Tfは、電池電圧Viと出力電圧Voとが一致する時刻Tmに十分近い。従って、バイパス電流I5が十分に小さい状態でバイパススイッチ5がオフするので、スイッチング損失が小さく抑えられる。
【0181】
出力電圧Voは時刻Tf以降速やかに目標電圧ETに達し、目標電圧ETと実質的に等しく維持される。昇圧チョッパ3による安定な昇圧動作は出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく、かつ安定に維持する。ここで、目標電圧ETは動作時出力下限Eo以上である:ET≧Eo=El+β。従って、出力電圧Voが時刻Tf以後、外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。こうして、直流電源装置70は出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0182】
直流電源装置70は更に、電池Bが完全放電状態近くに達するまで、出力電圧Voを目標電圧VTに維持できる。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置70は有利である。
【0183】
[実施形態8]
図14は、本発明の実施形態8による直流電源装置80の回路図である。実施形態8による直流電源装置80は、実施形態4による直流電源装置40と実施形態7による直流電源装置70と同様な回路構成を持つ。従って、図14ではそれら同様な構成要素に対して、図6、12に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態4及び実施形態7についての説明を援用する。
【0184】
本発明の実施形態8による直流電源装置80は、実施形態7による直流電源装置70の構成に加え、実施形態4による直流電源装置40と同様な出力電圧検出部8と起動制御部9とを有し、実施形態7による直流電源装置70とは次の点で異なる。
まず、出力電圧検出部8が出力電圧Voを監視し、出力電圧Voによる起動出力電圧Euへの降下を検出するとき、その検出を起動制御部9へ通知する。起動制御部9はそのときコンバータ制御部4へ起動信号Stを送出する。それによりコンバータ制御部4が起動する。ここで、起動出力電圧Euは低くとも停止時出力下限Ecと等しく設定される:Eu≧Ec。
【0185】
次に、PWM回路4Cがチョッパスイッチ3Sの最小オン幅Tonminを設定する。そのとき、昇圧チョッパ3の昇圧比Vo/Vi=1/(1−Ton/T)=1/(1−r)には最低昇圧比1/(1−Tonmin/T)=1/(1−rmin)>1が生じる。帰還回路4Bはそのとき目標電圧ETを低くとも、起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和に昇圧チョッパ3の最低昇圧比1/(1−rmin)を乗じた値(Eu+Vonmax)/(1−rmin)、又は動作時出力下限Eoのいずれか高い方と等しく設定する:ET≧max((Eu+Vonmax)/(1−rmin),Eo)。目標電圧ETは特に起動出力電圧Euより高い:ET>Eu。
【0186】
更に、入力電圧検出部7が電池電圧Viを監視し、電池電圧Viによる停止入力電圧Esより低いレベルから停止入力電圧Esへの上昇を検出するとき、その検出を起動制御部9へ通知する。起動制御部9はそのときコンバータ制御部4へ停止信号Suを送出する。それにより、コンバータ制御部4が停止する。ここで、停止入力電圧Esは、起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和と実質的に等しい下限から、目標電圧を最低昇圧比1/(1−rmin)で割った値と実質的に等しい上限までの範囲内に設定される:Eu+Vonmax≦Es≦ET×(1−rmin)。
【0187】
実施形態8による直流電源装置80では、コンバータ制御部4が起動制御部9の出力について、LレベルからHレベルへの遷移を起動信号Stとして解釈し、HレベルからLレベルへの遷移を停止信号Suとして解釈する。
バイパス制御部11では、遅延回路が停止信号Suを起動信号Stと同様に時定数R×C程度の一定の遅延時間ΔTDだけ遅らせ、スイッチ駆動部11Aへ伝達する。一方、スイッチ駆動部11Aが停止信号Suを起動信号Stと同様に増幅し、バイパススイッチ5のゲートへ送出する。それにより、バイパススイッチ5が起動信号Stの受信時にオフし、停止信号Suの受信時にオンする。
【0188】
電池Bの放電初〜中期では電池電圧Viが停止入力電圧Esより高い:Vi>Es。ここで、停止入力電圧Esは起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和以上である:Es≧Eu+Vonmax。従って、電池電圧Viが停止入力電圧Esより高く維持される期間(Vi>Es)では、出力電圧Voが起動出力電圧Euより高い:Vo≧Vi−Vonmax>Es−Vonmax≧Eu。それ故、起動制御部9が出力QをLレベルに安定に維持する。従って、バイパス制御部11はバイパススイッチ5をオン状態に安定に維持する。それにより出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに安定に維持される。一方、コンバータ制御部4が停止状態を安定に維持するので、チョッパスイッチ3Sがオフ状態を安定に維持する。すなわち、昇圧チョッパ3が停止状態を安定に維持する。
【0189】
電池Bの放電中〜末期、及びそれに続く充電初期では、電池電圧Viと直流電源装置80の出力電圧Voとが図15に示されるような時間変化を示す。ここで、電池電圧Viの時間変化が破線で示され、出力電圧Voの時間変化が実線で示される。
【0190】
出力電圧Voが起動出力電圧Euより高い期間(図15に示される領域I)では、起動制御部9が出力QをLレベルに維持するので、昇圧チョッパ3が停止状態を維持する。ここで、停止入力電圧Esと起動出力電圧Euとの差が電圧降下上限Vonmax以上である:Es−Eu≧Vonmax。従って、電池電圧Viによる停止入力電圧Esへの降下(図15に示される点Sb参照)が出力電圧Voによる起動出力電圧Euへの降下(図15に示される点Ss参照)より早い。従って、領域I末期で起動制御部9の出力QがLレベルに安定に維持されるので、昇圧チョッパ3が停止状態を安定に維持する。
【0191】
電池電圧Viが停止入力電圧Esへ降下する(図15に示される点Sb参照)。そのとき入力電圧検出部7が出力をHレベルに遷移させるので、ラッチ回路9RのリセットRがLレベルに遷移する。続いて、出力電圧Voが起動出力電圧Euまで降下する(図15に示される点Ss参照)。そのとき出力電圧検出部8がラッチ回路9RのセットSをHレベルに遷移させるので、ラッチ回路9Rは出力QをHレベルに遷移させ、すなわち起動信号Stを送出する。それによりコンバータ制御部4が起動する。その時刻Ts以降、OSC4Aが基準信号VRの送出を開始し、かつ実施形態2と同様な初期化処理が行われる。一方、バイパス制御部11の遅延作用により、時刻Tsではバイパススイッチ5のゲート電位が立ち上がらず、バイパススイッチ5はオン状態に維持される。
【0192】
起動出力電圧Euは目標電圧ETより低い:Eu<ET。従って、時刻Tsでは出力電圧Voが目標電圧ETより低い:Vo≒Eu<ET。それ故、時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間が経過するとき、PWM回路4Cが直ちにスイッチング信号SGのレベルの切換を開始する。それにより、昇圧チョッパ3内ではチョッパスイッチ3Sがスイッチング動作を速やかに開始する。すなわち、昇圧チョッパ3が昇圧動作を速やかに開始する。
【0193】
バイパススイッチ5のオン期間では電池電圧Viが出力電圧Voと電圧降下上限Vonmaxとの和以下である:Vi=Vo+Von≦Vo+Vonmax。特に時刻Tsでは、電池電圧Viが停止入力電圧Es以下であり、すなわち目標電圧ETを最低昇圧比1/(1−rmin)で割った値ET×(1−rmin)以下である:Vi≦Es≦ET×(1−rmin)(図15に示される点Ss参照)。従って、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが最低昇圧比1/(1−rmin)以上である:ET/Vi≧1/(1−rmin)。それ故、出力電圧Voが目標電圧ETを大きく超えないように、コンバータ制御部4は昇圧チョッパ3を安定に制御できる。こうして、昇圧チョッパ3が安定に動作する。
【0194】
出力電圧Voは時刻Ts以降、昇圧チョッパ3の昇圧動作により速やかに上昇し、時刻Tmで電池電圧Viと上下関係を逆転させる(図15に示される点Sm参照)。そのとき、バイパス電流I5が向きを反転させる。
【0195】
バイパス制御部11は時刻Tsから遅延時間ΔTD後の時刻Tfにバイパススイッチ5をオフさせる(図15に示される点Sf参照)。遅延時間ΔTDはコンバータ制御部4の実際の起動時間と十分に近い。従って、時刻Tsから早くともコンバータ制御部4の実際の起動時間の経過時点に十分近い時点までは、出力電圧Voが電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベル以上に維持される(図15に示される点Ss参照)。
一方、起動出力電圧Euは停止時出力下限Ec以上である:Eu≧Ec。それ故、時刻Tsでは出力電圧Voが実質的に停止時出力下限Ec以上である:Vo≒Eu≧Ec=El+α。その結果、時刻Tsからコンバータ制御部4の実際の起動時間の経過時点近くまで出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。
【0196】
更に、遅延時間ΔTDに対する上記の設定により、バイパススイッチ5がオフする時刻Tfは、電池電圧Viと出力電圧Voとが一致する時刻Tmに十分近い。従って、バイパス電流I5が十分に小さい状態でバイパススイッチ5がオフするので、スイッチング損失が小さく抑えられる。
【0197】
昇圧チョッパ3による安定な昇圧動作は、出力電圧Voによる目標電圧ETへの到達時点以降、出力電圧Voを目標電圧ETと実質的に等しく、かつ安定に維持する。ここで、目標電圧ETは動作時出力下限Eo以上である:ET≧Eo=El+β。従って、出力電圧Voが外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持される。こうして、直流電源装置80は出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0198】
直流電源装置80は更に、電池Bが完全放電状態近くに達するまで、出力電圧Voを目標電圧VTと実質的に等しく維持できる(図15に示される領域II参照)。その結果、電池Bの容量のほとんどを外部負荷Lへ電力として提供できる。
特に、無線による通信機能を持つ電池式電子機器が高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を採用するとき、電池電圧Viの降下により出力電圧Voが放電中期で目標電圧ETを下回る。そのような場合では特に、電池容量の利用効率の向上の点で直流電源装置80は有利である。
【0199】
時刻Tfより後、電池式電子機器が外部電源に接続され、電池Bの充電と共に、直流電源装置80を通した直流電力による駆動を継続するときを想定する。直流電源装置80ではそのとき、昇圧チョッパ3が動作を継続し、出力電圧Voを目標電圧ETに維持する。一方、電池電圧Viが電池Bの充電により上昇する。それにより、電池電圧Viに対する目標電圧ETの比ET/Viが降下する。
【0200】
電池電圧Viが停止入力電圧Esまで上昇するとき(図15に示される点Sh参照)、入力電圧検出部7はインバータ9Iを通し、ラッチ回路9RのリセットRをHレベルに遷移させる。そのときラッチ回路9Rは出力QをLレベルに遷移させるので、コンバータ制御部4が停止し、昇圧チョッパ3が停止する。ここで、停止入力電圧Esに対する目標電圧ETの比ET/Esは最低昇圧比1/(1−rmin)以上である:ET/Es≧1/(1−rmin)。従って、電池電圧Viが停止入力電圧Esまで上昇する時刻Thでは昇圧チョッパ3が安定に停止する。
一方、バイパス制御部11の遅延作用により、時刻Thではバイパススイッチ5のゲート電位が立ち下がらず、バイパススイッチ5はオフ状態に維持される。
【0201】
時刻Th以後、出力電圧Voは目標電圧ETから降下し、時刻Tgで電池電圧Viと一致する(図15に示される点Sg参照)。そのとき、バイパススイッチ5ではボディダイオード5Dがオンする。更に、時刻Thから遅延時間ΔTDの経過時、バイパス制御部11がバイパススイッチ5をオンさせる(図15に示される点Si参照)。それにより、出力電圧Voが時刻Tg以後、電池電圧Viより停止時電圧降下Vonだけ低いレベルに維持される:Vo=Vi−Von。更に、停止入力電圧Esが起動出力電圧Euと電圧降下上限Vonmaxとの和以上であり、かつ、時刻Th以後電池電圧Viが停止入力電圧Es以上である:Es≧Eu+Vonmax、Vi≧Es。従って、時刻Th以後、出力電圧Voが起動出力電圧Eu以上に維持される:Vo≧Vi−Vonmax≧Es−Vonmax≧Eu≧Ec=El+α。こうして、出力電圧Voは時刻Th以後、外部負荷Lの動作電圧に対する許容下限Elより十分に高く維持される。出力電圧Voは更に、電池電圧Viとの差を停止時電圧降下Vonと実質的に等しく保ちつつ、電池Bの充電による電池電圧Viの上昇と共に上昇する(図15に示される領域III参照)。
【0202】
本発明の実施形態8による直流電源装置80は上記の通り、電池Bの充放電が繰り返されるとき、出力電圧Voを外部負荷Lの動作電圧の許容下限Elより十分に高く維持する。それ故、出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0203】
[実施形態9]
図16は、本発明の実施形態9による直流電源装置90の回路図である。実施形態9による直流電源装置90は、実施形態5による直流電源装置50及び実施形態8による直流電源装置80と同様な回路構成を持つ。従って、図16ではそれらの同様な構成要素に対して、図8、14に示される符号と同じ符号を付す。それら同様な構成要素の詳細は更に、実施形態5及び実施形態8についての説明を援用する。
【0204】
本発明の実施形態9による直流電源装置90は、実施形態5による直流電源装置50と同様に、起動制御部9内にAND回路9Aを更に有する点で、実施形態8による直流電源装置80とは異なる。
更に、実施形態9による直流電源装置90の入力電圧Viと出力電圧Voとは、実施形態5による直流電源装置50でのものと同様な時間変化を示す。従って、特に満充電の電池Bとの接続直後でのそれらの時間変化については、図9を援用する。
【0205】
満充電の電池Bが直流電源装置90へ接続された直後、電池電圧Viは満充電での電池電圧VAと実質的に等しく、特に停止入力電圧Esより高い。一方、出力電圧Voは一般に実質的に0であり、特に起動出力電圧Euより低い。従って、入力電圧検出部7の出力がLレベルであり、かつ出力電圧検出部8の出力がHレベルである。それ故、インバータ9Iはその出力をHレベルに維持し、AND回路9Aはその出力をLレベルに維持する。こうして、ラッチ回路9Rはその出力QをLレベルに維持する。それによりコンバータ制御部4が停止状態を維持するので、昇圧チョッパ3は停止状態を維持する。一方、バイパス制御部11はバイパススイッチ5をオン状態に維持する。
【0206】
出力電圧Voは電池Bの放電開始直後、速やかに上昇し(図9に示される実線参照)、時刻Taで起動出力電圧Euを超える(図9に示される点Sa参照)。そのとき、出力電圧検出部8はその出力をLレベルに遷移させる。しかし、インバータ9I及びAND回路9Aはいずれも出力を変えないので、ラッチ回路9Rはその出力QをLレベルに安定に維持する。
出力電圧Vo(実線)は時刻Ta以降も上昇を続け、電池電圧Vi(破線)より停止時電圧降下Vonだけ低いレベルで安定に維持される。
こうして、起動制御部9は直流電源装置90と電池Bとの接続直後で停止信号Suを安定に送出する。それにより、電池Bの放電開始直後での昇圧チョッパ3の誤作動を確実に防ぐ。
【0207】
[実施形態10]
図17は、本発明の実施形態10による直流電源装置30の回路図である。この直流電源装置30は実施形態2による直流電源装置20と同様な回路構成を有する。従って、図17ではそれら同様な構成要素に対して、図4に示される符号と同じ符号を付す。更にそれら同様な構成要素の詳細は実施形態2についての説明を援用する。
【0208】
実施形態10による直流電源装置30は実施形態2による直流電源装置20とは異なり、ダイオード3Dに代え同期整流スイッチ3Rを有し、更に同期整流制御部12を有する。
同期整流スイッチ3Rは好ましくはPチャネルMOSFETである。そのドレインはインダクタ3Lとチョッパスイッチ3Sとの間の接続点Pへ接続される。そのソースは高電位側出力端子2Aへ接続される。そのゲートは同期整流制御部12の出力端子へ接続される。
【0209】
同期整流スイッチ3Rでは、ゲートの論理レベルとオンオフとの関係がチョッパスイッチ3Sでの関係と逆に設定される。すなわち、ゲートの論理レベルがHレベルであるときオフ状態であり、逆にLレベルであるときオン状態である。
PWM回路4Cは同期整流スイッチ3Rのゲートへ同期信号SHを送出する。同期信号SHは一定振幅を持つ矩形電圧パルスである。同期整流スイッチ3Rは、同期信号SHの立ち下がりでオンし、同期信号SHの立ち上がりでオフする。
PWM回路4Cは停止期間では同期信号SHをLレベルに維持する。一方、動作期間では同期信号SHの論理レベルをスイッチング信号SGの論理レベルと共通に設定する。すなわち、スイッチング信号SGがHレベルであるとき同期信号SHはHレベルであり、スイッチング信号SGがLレベルであるとき同期信号SHはLレベルである。
【0210】
同期整流制御部12はAND回路を有し、入力電圧検出部7から送出される同期信号SHとPWM回路4Cから送出される起動信号Stとの論理積を計算する。更に、その計算結果と同期整流スイッチ3Rのゲートの論理レベルとを一致させる。同期整流制御部12は同期整流スイッチ3Rのゲートの論理レベルを次のように制御する。
起動信号StのレベルがLレベルであるとき、同期整流制御部12は同期整流スイッチ3Rのゲートの論理レベルをLレベルに維持する。
起動信号StのレベルがHレベルであるとき、同期整流制御部12は同期整流スイッチ3Rのゲートの論理レベルを同期信号SHの論理レベルと一致させる。
【0211】
直流電源装置30は同期整流制御部12により、同期整流スイッチ3Rに対し次のようなオンオフ制御を実現する。
電池電圧Viが起動入力電圧Eiより高い期間(図5に示される領域I参照)では入力電圧検出部7が起動信号StをLレベルに維持する。従って、同期整流スイッチ3Rはオン状態を維持する。ここで、その期間ではコンバータ制御部4、すなわちPWM回路4Cが停止状態を維持する。
【0212】
電池電圧Viが起動入力電圧Eiまで降下する時刻Tsでは(図5に示される点Ss参照)、入力電圧検出部7が起動信号StをHレベルに遷移させる。それによりコンバータ制御部4が起動する。更にコンバータ制御部4の起動時間の経過時、PWM回路4Cがスイッチング信号SGと同期信号SHとのレベル切換を開始する。
同期整流スイッチ3Rのゲートの論理レベルは時刻Ts以降、同期信号SHの論理レベルと一致する。時刻Tsからコンバータ制御部4の起動時間の経過までの期間では、同期信号SHがLレベルに維持される。従って、同期整流スイッチ3Rがオン状態に維持される。コンバータ制御部4の起動時間の経過時、同期信号SHのレベル切換が始まる。そのとき同期整流スイッチ3Rは同期信号SHに従い、スイッチング動作を開始する。特に、チョッパスイッチ3Sがオン状態であるとき同期整流スイッチ3Rはオフ状態であり、チョッパスイッチ3Sがオフ状態であるとき同期整流スイッチ3Rはオン状態である。
【0213】
以上のオンオフ制御から明らかな通り、同期整流スイッチ3Rのオンオフのタイミングは実施形態2による直流電源装置20内にあるダイオード3D(図4参照)のオンオフのタイミングと同様である。具体的には、同期整流スイッチ3SはPWM回路4Cの停止期間ではオン状態を維持する。一方、PWM回路4Cの動作期間ではチョッパスイッチ3Sのオンオフとは逆にオンオフする。すなわち、チョッパスイッチ3Sがオン状態であるとき同期整流スイッチ3Rはオフ状態であり、チョッパスイッチ3Sがオフ状態であるとき同期整流スイッチ3Rはオン状態である。
こうして、実施形態10による直流電源装置30は実施形態2による直流電源装置20と同様に動作する。特に出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高い。
【0214】
スイッチ素子は一般にダイオードより導通損失が小さい。従って、実施形態10による直流電源装置30は、昇圧チョッパ3の導通損失が小さい点で、実施形態2による直流電源装置20より有利である。
【0215】
上記の実施形態1〜9による直流電源装置では昇圧チョッパ3がダイオード3Dを含む。それらの直流電源装置では、例えば実施形態10による直流電源装置30と同様、昇圧チョッパ3がダイオード3Dに代え、同期整流スイッチと同期整流制御部とを含んでも良い。そのとき特に、それぞれの直流電源装置内にある同期整流スイッチのオンオフがダイオード3Dのオンオフと同期するように制御される。具体的には、同期整流スイッチが、PWM回路4Cの停止期間ではバイパススイッチ5と共にオン状態を維持し、PWM回路4Cの動作期間ではチョッパスイッチ3Sのオンオフとは逆にオンオフする。そのようなオンオフ制御は、実施形態10での同期整流制御部12によるオンオフ制御に基づき、同業者には容易に理解されるだろう。従って、ダイオード3Dから同期整流スイッチへの置換はそれぞれの実施形態による直流電源装置の動作を損なわない。特に出力電圧Voの安定性に対する信頼性が高く維持される。
更に、スイッチ素子は一般にダイオードより導通損失が小さいので、上記の置換はDC−DCコンバータの導通損失が小さい点で有利である。
【0216】
[実施形態11]
図18は、本発明の実施形態11による直流電源装置35の回路図である。この直流電源装置35は実施形態1による直流電源装置10と同様な回路構成を有する。従って、図18ではそれら同様な構成要素に対して、図1に示される符号と同じ符号を付す。更に、それら同様な構成要素の詳細は実施形態1についての説明を援用する。
【0217】
実施形態11による直流電源装置35は実施形態1による直流電源装置10の構成に加え、停止スイッチ3U及びそのドライバ3Vを有する。停止スイッチ3Uは好ましくはNチャネルMOSFETである。そのドレインはダイオード3Dのカソードとバイパススイッチ5のソースとの接続点Jへ接続される。ここで、バイパス制御部6の非反転入力端子はその接続点Jへ接続される。停止スイッチ3Uのソースは高電位側出力端子2Aへ接続される。停止スイッチ3Uは特に、出力平滑コンデンサ3Cより電池B側に配置される。停止スイッチ3Uのゲートはドライバ3Vへ接続される。停止スイッチ3Uは、ゲートの論理レベルがHレベルであるときオン状態であり、Lレベルであるときオフ状態である。停止スイッチ3Uがオフするとき、負荷電流Ioが遮断される。
【0218】
ドライバ3Vは外部負荷Lの制御端子CTLへ接続される。ドライバ3Vは外部負荷Lから制御端子CTLを通し入力される停止信号Suに従い、停止スイッチ3Uのゲートの論理レベルを決定する。外部負荷Lは例えばノートPCの制御部であり、停止スイッチ3Uのオンオフを制御する。すなわち、外部負荷Lはその制御端子CTLからドライバ3Vへ停止信号Suを送出し、停止信号Suのレベルで停止スイッチ3Uのゲートの論理レベルをドライバ3Vに対し指示する。停止信号Suは一定振幅を持つ矩形電圧パルスである。ドライバ3Vは、停止信号Suの立ち上がりで停止スイッチ3Uをオンさせ、停止信号Suの立ち下がりで停止スイッチ3Uをオフさせる。
【0219】
コンバータ制御部4は停止信号Suを監視する。停止信号SuがLレベルであるとき、コンバータ制御部4は起動信号Stのレベルに関わらず、停止状態を維持する。停止信号SuがHレベルであるとき、コンバータ制御部4は起動信号Stのレベルに応じ起動する。
【0220】
例えばノートPCが休止状態に入るとき、外部負荷Lは停止信号SuのレベルをHレベルからLレベルへ遷移させる。それにより停止スイッチ3Uがオフし、昇圧チョッパ3に含まれるダイオード3Dを通る電流Idとバイパス電流I5とを共に遮断する。一方、コンバータ制御部4が停止状態を維持するので、昇圧チョッパ3が停止状態を維持する。こうして、外部負荷Lは直流電源装置35からの電力を断つ。その結果、外部負荷Lには電力が供給されないので、外部負荷Lによる電力消費が抑制され、電池Bの利用効率が向上する。
【0221】
停止スイッチは負荷電流Ioを遮断できる位置にあれば良い。例えば、停止スイッチがインダクタ3Lとバイパススイッチ5のドレインとの接続点より電池B側に接続されても良い。特にDC−DCコンバータが二つの入力端子1Aと1Bとの間に入力平滑コンデンサを含むとき、停止スイッチはその入力平滑コンデンサと高電位側入力端子1Aとの間に接続されても良い。
しかし、特に昇圧チョッパ3の動作時、直流電源装置35の出力電流すなわち負荷電流Ioは直流電源装置35の入力電流I3+I5より一般に小さい。従って、停止スイッチが上記の停止スイッチ3Uの位置、すなわち出力平滑コンデンサ3Cのすぐ電池B側に配置されるとき、そのスイッチング損失が低減する。
【0222】
上記の実施形態1〜10による直流電源装置が実施形態11による直流電源装置35と同様な停止スイッチを含んでも良い。その場合、バイパス制御部が更に、昇圧チョッパの出力電流と停止スイッチのオン電圧とを検出し、それらの検出値に基づきバイパススイッチのオン/オフを決定しても良い。バイパス制御部は例えば、停止スイッチのオン電圧から負荷電流Ioを検出し、その負荷電流Ioが昇圧チョッパの出力電流と実質的に一致する時点でバイパススイッチをオフさせても良い。
【0223】
上記の実施形態1〜11による直流電源装置はDC−DCコンバータとして昇圧チョッパ3、すなわちインダクタ3Iを用いた昇圧型コンバータを有する。実施形態6による直流電源装置60は更に降圧チョッパ31、すなわちインダクタ3Iを用いた降圧型コンバータを有する。本発明の実施形態ではDC−DCコンバータが、例えば、Cuk、Zeta、及びSepicコンバータのような昇降圧型コンバータであっても良い。DC−DCコンバータは更に、インダクタを用いるコンバータに代え、コンデンサとスイッチとを用いるチャージポンプを採用しても良い。
【0224】
以上に説明される本発明の実施形態による直流電源装置はいずれも、電池式電子機器に搭載され、電池を電源とする。電源はその他に、例えば商用交流電源から入力される交流電力を整流したものであっても良い。すなわち、上記の直流電源装置は例えば、全波整流回路と他のDC−DCコンバータとの間に縦続接続され、それらと協働して交流電力を一定の直流電力へ変換しても良い。上記の直流電源装置は出力電圧を、電源電圧の零点のごく近傍を除き一定値以上に維持し、交流電源から外部負荷への電力供給に関する力率を向上させる。上記の直流電源装置は特にバイパススイッチのオフによる出力電圧の過大なアンダーシュートの発生を抑制し、出力電圧の急落を防止できる。
【0225】
発明をある程度の詳細さをもって好適な形態について説明したが、この好適形態の現開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各要素の組合せや順序の変化は請求された発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、DC−DCコンバータとバイパススイッチとの並列接続を含む直流電源装置に関し、上記の通り、DC−DCコンバータのスイッチング動作の開始時にバイパススイッチをオン状態に維持し、出力電圧の急落を防止する。このように本発明は明らかに産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明の実施形態1による直流電源装置10の回路図である。
【図2】本発明の実施形態1による直流電源装置10での、基準信号VR、誤差信号VE、及びスイッチング信号SGの波形図である。
【図3A】本発明の実施形態1による直流電源装置10について、電池Bの放電期間全体での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフである。
【図3B】図3Aに示される点Ss(出力電圧Voと目標電圧ETとの一致点)近傍の拡大図である。
【図3C】図3Bに示される放電期間での基準信号VRと誤差信号VEとの波形図である。
【図4】本発明の実施形態2による直流電源装置20の回路図である。
【図5】本発明の実施形態2による直流電源装置20について、電池Bの放電期間での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフであり、特に電池電圧Viと起動入力電圧Eiとの一致点Ss近傍の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態4による直流電源装置40の回路図である。
【図7】本発明の実施形態4による直流電源装置40について、電池Bの放電末期、及びそれに続く充電初期での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態5による直流電源装置50の回路図である。
【図9】本発明の実施形態5による直流電源装置50と満充電の電池Bとの接続直後での電池電圧Viと出力電圧Voとの時間変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態6による直流電源装置60の回路図である。
【図11】本発明の実施形態6による直流電源装置60での、基準信号VR、降圧誤差信号VE1、昇圧誤差信号VE2、第一のスイッチング信号SG1、及び第二のスイッチング信号SG2の波形図である。
【図12】本発明の実施形態7による直流電源装置70の回路図である。
【図13】本発明の実施形態7による直流電源装置70について、電池Bの放電期間での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフであり、特に電池電圧Viと起動入力電圧Eiとの一致点Ss近傍の拡大図である。
【図14】本発明の実施形態8による直流電源装置80の回路図である。
【図15】本発明の実施形態8による直流電源装置80について、電池Bの放電末期、及びそれに続く充電初期での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフである。
【図16】本発明の実施形態9による直流電源装置90の回路図である。
【図17】本発明の実施形態10による直流電源装置30の回路図である。
【図18】本発明の実施形態11による直流電源装置35の回路図である。
【図19】電池式電子機器に含まれる従来の直流電源装置100の回路図である。
【図20A】従来の直流電源装置100について、電池Bの放電期間全体での電池電圧Viの時間変化と出力電圧Voの時間変化とを示すグラフである。
【図20B】図20Aに示される点Ss(出力電圧Voと目標電圧ETとの一致点)近傍の拡大図である。
【図21】新型リチウムイオン二次電池と現行のリチウムイオン二次電池とのそれぞれの放電曲線を示すグラフである。 図面の一部又は全部は、図示を目的とした概要的表現により描かれており、必ずしもそこに示された要素の実際の相対的大きさや位置を忠実に描写しているとは限らないことは考慮願いたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング動作により、外部直流電源から印加される入力電圧をそれ以上の出力電圧へ変換し、その出力電圧を外部負荷へ印加するDC−DCコンバータ;
前記出力電圧を目標電圧と比較し、それらの差に基づき前記DC−DCコンバータの前記スイッチング動作を制御するコンバータ制御部;
前記DC−DCコンバータの入出力間を短絡させるバイパススイッチ;及び、
前記DC−DCコンバータの停止期間では前記バイパススイッチをオン状態に維持し、前記DC−DCコンバータが前記スイッチング動作を開始するとき、その開始時点から所定時間、更に前記バイパススイッチをオン状態に維持するバイパス制御部;
を有する直流電源装置。
【請求項2】
前記バイパス制御部が、
前記入力電圧と前記出力電圧とを比較し、
前記入力電圧が前記出力電圧より高いとき、前記バイパススイッチをオンさせ、
前記入力電圧が前記出力電圧より低いとき、前記バイパススイッチをオフさせる、
請求項1記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記入力電圧若しくは前記出力電圧のいずれか又は両方に基づき前記コンバータ制御部へ所定の起動信号を送出する起動制御部、を前記直流電源装置が有し;
前記コンバータ制御部がその停止期間中、前記起動信号の受信により起動し;
前記起動信号をその受信時点から所定の遅延時間だけ保持する信号遅延部、及び、
前記信号遅延部から前記起動信号を受信するまでは前記バイパススイッチをオン状態に維持し、前記起動信号の受信時に前記バイパススイッチをオフさせるスイッチ駆動部、
を前記バイパス制御部が含む;
請求項1記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記起動制御部が前記入力電圧に基づき前記コンバータ制御部へ所定の停止信号を送出し;
前記コンバータ制御部がその動作期間中、前記停止信号の受信により停止し;
前記バイパス制御部では、
前記信号遅延部が前記停止信号をその受信時点から所定の遅延時間だけ保持し、
前記スイッチ駆動部が前記信号遅延部から前記停止信号を受信するまでは前記バイパススイッチをオフ状態に維持し、前記停止信号の受信時に前記バイパススイッチをオンさせる;
請求項3記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記入力電圧を起動入力電圧と比較する入力電圧検出部、を前記直流電源装置が有し;
前記コンバータ制御部が前記入力電圧検出部の出力に基づき、
前記入力電圧が前記起動入力電圧より高い期間では前記DC−DCコンバータを停止状態に維持し、
前記入力電圧による前記起動入力電圧への降下を検出するとき、前記DC−DCコンバータに前記スイッチング動作を開始させる;
請求項1記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記入力電圧を停止入力電圧と比較する入力電圧検出部;
前記出力電圧を起動出力電圧と比較する出力電圧検出部;及び、
前記出力電圧検出部の出力に基づき、前記出力電圧が前記起動出力電圧より高い期間では前記コンバータ制御部を停止状態に維持し、前記出力電圧による前記起動出力電圧への降下を検出するとき、前記コンバータ制御部を起動させ、
前記入力電圧検出部の出力に基づき、前記入力電圧が前記停止入力電圧より低い期間では前記コンバータ制御部を動作状態に維持し、前記入力電圧による前記停止入力電圧への上昇を検出するとき、前記コンバータ制御部を停止させる、
起動制御部;
を有する、請求項1記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記起動制御部が前記入力電圧検出部と前記出力電圧検出部との出力に基づき、
前記入力電圧が前記停止入力電圧より高く、かつ前記出力電圧が前記起動出力電圧より高い期間では前記コンバータ制御部を停止状態に維持し、
前記入力電圧が前記停止入力電圧より低く降下し、かつ前記出力電圧による前記起動出力電圧への降下を検出するとき、前記コンバータ制御部を起動させる、
請求項6記載の直流電源装置。
【請求項8】
前記DC−DCコンバータが、前記入力電圧をそれ以上である前記出力電圧へ変換する昇圧動作に加え、前記入力電圧をそれ以下である前記出力電圧へ変換する降圧動作を実行可能であり;
前記コンバータ制御部が、前記出力電圧と前記目標電圧との差に基づき、前記DC−DCコンバータに前記降圧動作若しくは前記昇圧動作を実行させ、又は前記DC−DCコンバータを停止状態に維持し;
前記バイパス制御部が、前記DC−DCコンバータが昇圧動作を開始するとき、その開始時点から所定時間、更に前記バイパススイッチをオン状態に維持する;
請求項1記載の直流電源装置。
【請求項9】
前記DC−DCコンバータの動作期間ではそのスイッチング動作と同期して整流を行い、前記DC−DCコンバータの停止期間ではオン状態を維持する同期整流部、を有する、請求項1記載の直流電源装置。
【請求項10】
前記DC−DCコンバータの昇圧動作期間ではそのスイッチング動作と同期して整流を行い、前記DC−DCコンバータの停止期間ではオン状態を維持する同期整流部、を有する、請求項8記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記外部負荷によりオンオフ制御され、前記外部直流電源からの入力電流又は前記外部負荷への出力電流のいずれかを遮断する停止スイッチ、を有する、請求項8記載の直流電源装置。
【請求項12】
前記外部負荷と並列に接続される出力平滑コンデンサ、を前記DC−DCコンバータが含み;
前記DC−DCコンバータと前記バイパススイッチとの間の、前記外部負荷側にある接続点が前記出力平滑コンデンサより前記外部直流電源側にあり;
前記停止スイッチが前記接続点と前記出力平滑コンデンサとの間に接続される;
請求項11記載の直流電源装置。
【請求項13】
前記DC−DCコンバータと前記バイパススイッチとの間の、前記外部直流電源側にある接続点より前記外部直流電源側に前記停止スイッチが接続される、請求項11記載の直流電源装置。
【請求項14】
所定の電池電圧を供給する電池;並びに、
スイッチング動作により、前記電池電圧をそれ以上の出力電圧へ変換するDC−DCコンバータ;
前記出力電圧を目標電圧と比較し、それらの差に基づき前記DC−DCコンバータの前記スイッチング動作を制御するコンバータ制御部;
前記DC−DCコンバータの入出力間を短絡させるバイパススイッチ;及び、
前記DC−DCコンバータの停止期間では前記バイパススイッチをオン状態に維持し、前記DC−DCコンバータが前記スイッチング動作を開始するとき、その開始時点から所定時間、更に前記バイパススイッチをオン状態に維持するバイパス制御部;
を有する直流電源装置;
を具備する電池式電子機器。
【請求項15】
前記電池の放電中期で前記電池電圧が前記目標電圧を下回る、請求項14記載の電池式電子機器。
【請求項16】
外部に向けて信号を電波で送出する無線送信部、を具備する、請求項14記載の電池式電子機器。
【請求項17】
前記DC−DCコンバータの前記出力電圧を印加されて送信対象の信号を増幅する電力増幅部、を前記無線送信部が有する、請求項16記載の電池式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【公表番号】特表2007−529185(P2007−529185A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519252(P2006−519252)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011396
【国際公開番号】WO2005/013455
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】