説明

直結式給水装置

【課題】並列運転される複数台の可変速モータポンプを備え、並列運転中の吸込圧力の変動によっても圧力変動の少ない安定した制御を行うことができる直結式給水装置を提供する。
【解決手段】本発明の直結式給水装置は、水道本管9に接続される複数台のポンプ1と、ポンプ1をそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器2と、吐出側圧力センサ4と、吸込側圧力センサ10と、これら機器を制御する制御装置15とを備え、複数台のポンプ1を並列運転する。制御装置15は、吐出側圧力センサ4の検出圧力に応じて変速運転される変速ポンプと所定の速度で運転される固定速ポンプとで並列運転を行い、変速ポンプへの周波数指令値が0Hzではなく、且つ、変速ポンプが少水量状態である場合に、変速ポンプを解列停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直結式給水装置に係り、特に水道本管に接続される複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やビルなどに設置され、各給水端へ水を供給する装置として給水装置がある。図1はそのような給水装置の典型例を示すもので、給水装置は2台のモータポンプ1と、2台のモータポンプ1を駆動するための電力を供給するインバータ(周波数変換器)2を備えている。給水装置は、ポンプ1の吐出側に、圧力タンク3と吐出側圧力センサ4を備え、夫々のポンプ毎にフロースイッチ(流量検出手段)6と逆止弁7を備えている。また、ポンプの吸込側配管8は水道本管9に接続され、この吸込側配管8に吸込側圧力センサ10と逆流防止装置11とが設けられている。さらに、水道本管の圧力のみで給水を行うためのバイパス管12がポンプ1の吸込側配管8と吐出側配管13との間に設けられている。そして、バイパス管12の途中には逆止弁14が設けられている。モータポンプ1の制御を行う制御装置15は、これらのセンサ類からの信号に基づき、状況に応じたポンプ1の回転数制御及び台数制御を行う。
【0003】
図2はこのような給水装置の推定末端圧力一定制御を行う際のQH線図であり、横軸が流量Qを示し、縦軸が圧力(ヘッド)Hを示す。給水系の最低必要圧力PBと最大需要水量での必要圧力PAとは流量に依存する管路の抵抗曲線Rにより結ばれ、各流量における抵抗曲線Rの示す圧力が給水装置で供給すべき目標圧力となる。前記給水系の最低必要圧力PBおよび最大需要水量での必要圧力PAは、設定手段により予め制御装置15に設定され、記憶されている。制御装置15は、締切状態で圧力がPBとなるポンプ回転数HzBとポンプ最高回転数HzMaxとの間でインバータ2への回転数指令を行うが、現在のポンプ回転数指令値から流量を推定してその時点での目標圧力を決定し、吐出側圧力センサ4の検出圧力がその目標圧力に一致するようにインバータ2へ回転数指令を行う。
【0004】
上述のように構成された給水装置において、ポンプ停止中に需要側で水が使用され、吐出側圧力センサ4の検出圧力が始動圧力(最低必要圧力)PBを下回ると、制御装置15はポンプ1を1台起動させる。この場合、ポンプ1はポンプ回転数HzBで運転される。需要水量が増えると、ポンプ1はポンプ回転数HzBから、Hz1、Hz2・・・と回転数を上げていくが、流量がQ1以上になると、ポンプ回転数が最高回転数であるHzMaxに達しているので、目標圧力を満足することができなくなる。そこで、ポンプ回転数指令が最高回転数HzMaxに達すると、ポンプをもう1台追加で起動する。このとき、先に起動していたポンプ(先発ポンプ)は、運転速度が最高回転数HzMaxよりも若干低い所定の回転数HzMax’に固定され固定速ポンプとなり、追加されたポンプ(後発ポンプ)が需要水量によって可変速制御される変速ポンプとなり目標圧力を満たす。固定速ポンプは、吐出圧力の変動に拘らず、予め決められた所定の回転数で運転される。
【0005】
2台のポンプが運転しているときに需要水量が減ると、後発ポンプの回転数が下げられていくが、Q1以下の水量であればポンプ1台で需要を満たすことができるため、後発ポンプを停止させる。制御装置15は、後発ポンプのフロースイッチ6により後発ポンプの送水水量が少水量であることを検知して、後発ポンプを解列停止し、先発ポンプを再び可変速制御する。
更に需要水量が減少すると先発ポンプの回転数が下げられていくが、先発ポンプのフロースイッチ6により水量が少水量であることを検知すると、制御装置15は先発ポンプも停止させ、再び水が使用されて吐出側圧力センサ4の検出圧力が始動圧力(最低必要圧力)PB以下になるまで待機状態となる。
【0006】
また、直結式給水装置では、ポンプ吸込側に水道本管の圧力がかかっており、その圧力も変動する。吸込圧力が高くなると、より低いポンプ回転数で同じ圧力、流量を賄うことができるため、上述のPBとHzBの関係などが変化する。このため、吸込圧力に応じて目標圧力とポンプ回転数指令との関係を適宜補正して、適切な推定末端圧力一定制御を行うようになっている。吸込圧力が更に高くなり、目標圧力を超えるとポンプを駆動しなくとも給水が可能になるため、制御装置15はポンプを停止状態にする。吸込圧力が低下して目標圧力以下になると、再びポンプが駆動される。
【0007】
【特許文献1】特開平9−268978号公報
【特許文献2】特開2003−21069号公報
【特許文献3】特開平5−118280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
推定末端圧力一定制御では、上述のようにポンプの回転数指令値に基づいてそのときの目標圧力を決定する。ポンプが2台運転されている状況では、吸込圧力に変動がなければ固定速で運転される先発ポンプの性能曲線に変動は生じないが、直結式給水装置では吸込圧力が変動するため、先発ポンプにも吸込圧力の変動を考慮しないと安定した末端圧力一定制御は行うことができない。
【0009】
また、水道本管の圧力が上昇して、水道本管の圧力だけで給水できるようになるとポンプを停止状態にするが、このとき水は主にバイパス管を流れ、ポンプなどがあり流路抵抗の大きい、ポンプの設置された配管に流れる水量は小さい。このため、需要水量が大きくポンプが2台運転している最中でも、水道本管の圧力が上昇して水道本管の圧力だけでの給水が行われるようになると、後発ポンプのフロースイッチが少水量を検知して、ポンプ1台のみの運転に移行してしまう。その後、水道本管の圧力が低下して吐出側圧力センサの検出圧力が目標圧力を下回ると、ポンプが再び回転を始めるが、吸込圧力の低下が急であって、需要水量が大きなままであった場合、ポンプ1台の運転では賄いきれず後発ポンプを追加しなければならなくなる。この結果、吐出圧力に変動をきたしてしまい、需要家に不快な思いをさせてしまうおそれがある。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、並列運転される複数台の可変速モータポンプを備え、並列運転中の吸込圧力の変動によっても圧力変動の少ない安定した制御を行うことができる直結式給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明の第1の態様は、水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、前記制御装置は、前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転される変速ポンプと所定の速度で運転される固定速ポンプとで並列運転を行い、前記変速ポンプへの周波数指令値が0Hzではなく、且つ、前記変速ポンプが少水量状態である場合に、前記変速ポンプを解列停止することを特徴とする。
ここで固定速ポンプとは、吐出圧力の変動には関係しない、所定の回転数で運転されるポンプを指し、所定の回転数が吐出圧力の変動以外の要因により変更されることは妨げない。
【0012】
本発明の第2の態様は、水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、前記制御装置は、前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転される変速ポンプと所定の速度で運転される固定速ポンプとで並列運転を行い、並列運転中に吸込圧力の上昇によりポンプを停止させる場合に、前記変速ポンプと前記固定速ポンプとの停止条件に差を持たせて前記変速ポンプを先に停止させ、吸込圧力の低下によりポンプを再始動させる際に前記変速ポンプを再始動させる前に予め前記固定速ポンプを先に再始動させることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記制御装置は、第一の圧力設定値と、該第一の圧力設定値より高い第二の圧力設定値とを有し、並列運転中に前記吸込側圧力センサの検出圧力が前記第一の圧力設定値を上回ると前記変速ポンプを停止させ、前記第二の圧力設定値を上回ると前記固定速ポンプを停止すると共に、吸込圧力が低下して前記吸込側圧力センサの検出圧力が前記第二の圧力設定値を下回ると前記固定速ポンプを再始動することを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、前記制御装置は、並列運転中に、1台の変速ポンプを前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転すると共に、他の固定速ポンプを前記吸込側圧力センサの検出圧力に応じて設定される速度にて運転することを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記制御装置は、前記吸込側圧力センサの検出圧力に応じて設定される速度を、該速度での締切圧力が吸込圧力の変動に拘らず一定となるように設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、並列運転される複数台の可変速モータポンプを備え、並列運転中の吸込圧力の変動によっても圧力変動の少ない安定した制御を行うことができる。
より具体的には、以下に列挙する効果を奏する。
(1)本発明の1態様によれば、吸込圧力が上昇してポンプが停止状態になったときに、並列運転を解除して後発ポンプを解列停止しないように、可変速運転しているポンプへの周波数指令値が0Hzである場合、もしくは、吸込圧力がPA以上ある場合、もしくは、HzB(その時の吸込圧力での締切圧力が給水系の最低必要圧力PB以上となる周波数)が0である場合には、解列動作を行わないという制御が行われる。
(2)本発明の1態様によれば、並列運転中に吸込圧力の上昇によりポンプが停止する場合に、可変速運転中のポンプと固定速運転中のポンプとの停止条件に差を持たせて可変速運転中のポンプを先に停止させるようにし、吸込圧力の低下によりポンプが再始動する際にも吐出圧力が目標圧力を下回る前に固定速ポンプが予め始動するため、圧力変動を抑制した安定した給水が可能になる。
(3)本発明の1態様によれば、ポンプの並列運転中に吸込圧力が上昇して第一の圧力設定値以上になると、変速運転している後発ポンプを停止させるが、固定速ポンプとして運転されている先発ポンプの運転は継続させる。吸込圧力が低下し、吐出圧力が目標圧力以下になると後発ポンプを再始動させるが、吸込圧力が更に上昇して第二の圧力設定値を超えると先発ポンプも停止させる。全てのポンプが停止した状態から、吸込圧力が低下して第二の圧力設定値を下回ると、先発ポンプを再始動し、その後吐出圧力が目標圧力を下回ると後発ポンプが変速運転で再始動される。したがって、複数台のポンプを再始動させる際に、圧力変動を抑制した安定した給水が可能になる。
(4)本発明の1態様によれば、並列運転中に、変速ポンプを変速運転するとともに、固定速ポンプを吸込圧力に応じて設定される速度で運転するため、固定速ポンプも吸込圧力の変動を考慮した安定した末端圧力一定制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施形態]
図3は、本発明の第1実施形態に係る直結式給水装置の概略構成図である。図3において図1と同一の構成については同一符号を付している。図3に示す直結式給水装置では、ポンプ1は3台備えられており、それぞれが並列に接続されている。また各ポンプ1に対応して、各ポンプ1を駆動するための電力を供給するインバータ(周波数変換器)2が設けられている。給水装置は、ポンプの吐出側に、圧力タンク3と吐出側圧力センサ4を備え、夫々のポンプ毎にフロースイッチ(流量検出手段)6と逆止弁7を備えている。また、ポンプの吸込側配管8は水道本管9に接続され、この吸込側配管8に吸込側圧力センサ10と逆流防止装置11とが設けられている。さらに、水道本管の圧力のみで給水を行うためのバイパス管12がポンプ1の吸込側配管8と吐出側配管13との間に設けられている。そして、バイパス管12の途中には逆止弁14が設けられている。
【0018】
制御装置15には、外部操作により給水系の最低必要圧力PBや最大需要水量での必要圧力PA等が設定され、記憶される。制御装置15と各インバータ2とはRS485等の通信手段により接続され、制御装置15からインバータ2へは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(起動・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ2から制御装置15へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況が逐次送られる。また、制御装置15は、吐出側圧力センサ4、吸込側圧力センサ10やフロースイッチ6等のセンサ類の信号を受け取り、それぞれのインバータの発停(起動・停止)の判断、周波数指令値の演算を行う。
【0019】
図4は、このような給水装置の推定末端圧力一定制御のフローチャートである。まず、制御装置15に、吐出側圧力センサ4の検出圧力を取り込み、吸込側圧力センサ10の検出圧力を取り込む。次いで、その時の吸込圧力において、締切状態で給水系の最低必要圧力PBとなるポンプ回転数HzBを算出する。制御装置15は、吸込圧力とポンプの締切圧力とポンプ回転数との関係をテーブルデータや関数として記憶しており、この関係を用いてポンプ回転数HzBを算出する。また、その時の吸込圧力における最高運転周波数(ポンプ最高回転数)HzMaxを算出する。この最高運転周波数HzMaxはその時の吸込圧力で締切運転をして、吸込圧力が0の時にポンプの最高回転数で締切運転したときの圧力Pmax(図5参照)となる回転数である。上述した、その時の吸込圧力における最高運転周波数HzMaxも、制御装置15に記憶された吸込圧力とポンプの締切圧力と回転数との関係を示すテーブルデータや関数を用いて算出される。
【0020】
次に、制御装置15は、算出したHzBや現在の周波数指令値に基づいて、推定末端圧力一定制御の目標圧力を算出する。そして、この算出された目標圧力と現在の吐出圧力とを比較して、PI演算により変速運転されているポンプの周波数指令値を演算し、この周波数指令値がHzBよりも小さければ周波数指令値をHzBとし、大きければ演算された値をそのまま周波数指令値とする。
次に、2台以上のポンプが並列で運転中かどうかを確認し、並列運転中であれば固定速ポンプとして運転されている先発ポンプの周波数指令として、上記ステップで算出したHzMaxの95%の周波数を指定する。そして、この周波数指令値もHzBを下回らないか否かが確認されて最終的に確定する。なお、ここではHzMaxの95%としたが、HzMaxを下回る周波数であれば、HzMaxに所定比率(95%に限らない)をかけた周波数でも、HzMaxから所定値を差し引いた周波数でも構わない。
【0021】
以上により、運転されているポンプ1の周波数指令値が決定し、制御装置15は各インバータ2にそれぞれの周波数指令値を送信する。HzMaxが吸込圧力によって変動するため、先発ポンプは固定速ポンプとはいえ、実際には吸込圧力の変動に応じてその運転周波数を変化させることになる。つまり、ここでいう固定速ポンプとは、吐出圧力と目標圧力との比較演算とは無関係であり、吸込圧力の変動に対応してのみ運転周波数を変化させるポンプである。そして、この運転周波数の変化により、その周波数での締切圧力が吸込圧力の変動に拘らず一定となり、つまり、先発ポンプの性能曲線が吸込圧力に拘らず一定になるため、推定末端圧力一定制御の目標圧力の算出が安定する。
【0022】
次に、吸込圧力が変動したときの制御を図5を参照して説明する。図5では横軸がポンプの運転周波数を表し、縦軸が圧力を表している。PB、PAは、図2と同様に、それぞれ給水系の最低必要圧力、最大需要水量での必要圧力である。曲線C0は吸込圧力が0の時のポンプの運転周波数とその時の締切圧力との関係を表している。圧力PB一定の直線と曲線C0との交点の周波数がHzBとなり、ポンプ最高回転数HzMaxでの圧力がPmaxとなる。
曲線C1〜C4のそれぞれは、吸込圧力がPin1〜Pin4となったときのポンプの運転周波数とその時の締切圧力との関係を表している。図4で説明したように、HzB、HzMaxは吸込圧力の変動によって更新されるが、その値は、図5中の曲線と圧力がPB一定,Pmax一定となる直線との交点によって表されており、吸込圧力がPin1のとき、HzB1、HzMax1となる。吸込圧力がPin2まで上がると、曲線C2と圧力PB一定の直線とは交差しなくなるが、このときのHzBはHzB2=0として設定される。更に吸込圧力が上がりPmaxよりも高いPin4になると、曲線C4は圧力Pmax一定の直線とも交わらなくなるが、このときのHzMaxはHzMax4=0として設定される。
【0023】
今、ポンプ2台が並列運転されており、吸込圧力がPin1だとすると、先発ポンプはHzMax1×0.95の周波数で固定速ポンプとして運転されており、後発ポンプはHzB1以上の周波数で可変速運転されている。この状態で吸込圧力がPin3まで高まると、推定末端圧力一定制御における目標圧力の最大値PAを超えることになるので、変速運転されている後発ポンプへの指令周波数の演算結果は0Hzとなり、実質的に停止状態になる。一方、固定速ポンプとして運転される先発ポンプは、HzMax3×0.95>0Hzであるため、運転は継続している。このとき、給水はバイパス管を通しても行われている。そして、更に吸込圧力がPin4まで上がると、HzMax4=0となるので、先発ポンプへの指令周波数も0Hzとなり、実質的な停止状態となる。この例で吸込圧力がPin3以上で後発ポンプが停止した状態では、後発ポンプへの水の流れが小さくなるため、後発ポンプのフロースイッチは少水量状態を検知することになる。
【0024】
本実施形態では、吸込圧力が上昇してポンプが停止状態になったときに、並列運転を解除して後発ポンプを解列停止しないように、可変速運転しているポンプへの周波数指令値が0Hzである場合、もしくは、吸込圧力がPA以上ある場合、もしくは、HzB(その時の吸込圧力での締切圧力が給水系の最低必要圧力PB以上となる周波数)が0である場合には、解列動作を行わないという制御が行われる。つまり、本実施形態では、ポンプの解列停止条件として、可変速運転しているポンプが少水量状態になったことに加えて、そのポンプへの周波数指令が0Hzより大きいこと、もしくは、吸込圧力がPA以下であること、もしくは、HzB>0Hzであることが追加される。
この制御により、本実施形態では、流入圧力がPin4の状態で先発ポンプ、後発ポンプ共に周波数指令が0Hzで停止状態にはあるが、並列運転は解除されていない。ここから吸込圧力が下がっていき、Pmax以下になると、HzMaxが0Hzより大きくなるので、まず固定速ポンプとして運転される先発ポンプが再始動し、更に吸込圧力が下がってPAより小さくなると変速運転される後発ポンプも再始動する。
【0025】
従来のように並列運転が解除されてしまっていると、吸込圧力がPAより小さくなるまでポンプは再始動しないが、本実施形態の場合、それ以前に固定速ポンプとして運転される先発ポンプが再始動しているため、需要水量が大きく、吸込圧力のPA以下への低下が急だった場合にも圧力変動を抑制した安定した給水が可能になる。このように、並列運転中に吸込圧力の上昇によりポンプが停止する場合に、可変速運転中のポンプと固定速運転中のポンプとの停止条件に差を持たせて可変速運転中のポンプを先に停止させるようにし、吸込圧力の低下によりポンプが再始動する際にも吐出圧力が目標圧力を下回る前に固定速ポンプが予め始動するため、圧力変動を抑制した安定した給水が可能になる。
【0026】
[第2の実施形態]
上述の第1実施形態では、吸込圧力の上昇時にポンプへの周波数指令値を0Hzまで低下させて、実質的な停止状態にするように制御したが、吸込圧力が所定値以上になったことを条件にポンプを停止させる制御が行われることがある。
図5を参照して説明すると、吸込圧力が給水系の最大目標圧力であるPA以上の所定値を超えると、駆動しているポンプを停止させるという制御が行われるが、複数のポンプが並列運転されている状態で全てのポンプを停止させてしまうと、吸込圧力が急に低下したときに複数台のポンプを再始動させなければならないため、圧力変動を生じさせやすい。
本実施形態では、変速運転されているポンプを停止させる第一の圧力設定値と、固定速ポンプとして運転されているポンプを停止させる第二の圧力設定値とを設定しておく。第一の圧力設定値は上述と同じく、PA以上となる所定の値であり、第二の圧力設定値は第一の圧力設定値より高い値であり、図5で言えば、Pmaxかその近傍の圧力値が望ましい。
【0027】
制御装置15は、ポンプの並列運転中に吸込圧力が上昇して第一の圧力設定値以上になると、変速運転している後発ポンプを停止させるが、固定速ポンプとして運転されている先発ポンプの運転は継続させる。吸込圧力が低下し、吐出圧力が目標圧力以下になると後発ポンプを再始動させるが、吸込圧力が更に上昇して第二の圧力設定値を超えると先発ポンプも停止させる。全てのポンプが停止した状態から、吸込圧力が低下して第二の圧力設定値を下回ると、先発ポンプを再始動し、その後吐出圧力が目標圧力を下回ると後発ポンプが変速運転で再始動される。
本実施形態でも、並列運転中に吸込圧力の上昇によりポンプが停止する場合に、可変速運転中のポンプと固定速運転中のポンプとの停止条件に差を持たせて可変速運転中のポンプを先に停止させるようにし、吸込圧力の低下によりポンプが再始動する際にも吐出圧力が目標圧力を下回る前に固定速ポンプが予め始動するため、圧力変動を抑制した安定した給水が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】給水端へ水を供給する給水装置の従来例を示す図である。
【図2】給水端へ水を供給する給水装置の推定末端圧力一定制御を行う際のQH線図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る直結式給水装置の概略構成図である。
【図4】給水端へ水を供給する給水装置の推定末端圧力一定制御のフローチャートである。
【図5】吸込圧力が変動したときの制御において、ポンプの運転周波数とその時の締切圧力との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
1 モータポンプ
2 インバータ(周波数変換器)
3 圧力タンク
4 吐出側圧力センサ
6 フロースイッチ(流量検出手段)
7,14 逆止弁
8 吸込側配管
9 水道本管
10 吸込側圧力センサ
11 逆流防止装置
12 バイパス管
13 吐出側配管
15 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、
前記制御装置は、前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転される変速ポンプと所定の速度で運転される固定速ポンプとで並列運転を行い、前記変速ポンプへの周波数指令値が0Hzではなく、且つ、前記変速ポンプが少水量状態である場合に、前記変速ポンプを解列停止することを特徴とする直結式給水装置。
【請求項2】
水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、
前記制御装置は、前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転される変速ポンプと所定の速度で運転される固定速ポンプとで並列運転を行い、並列運転中に吸込圧力の上昇によりポンプを停止させる場合に、前記変速ポンプと前記固定速ポンプとの停止条件に差を持たせて前記変速ポンプを先に停止させ、吸込圧力の低下によりポンプを再始動させる際に前記変速ポンプを再始動させる前に予め前記固定速ポンプを先に再始動させることを特徴とする直結式給水装置。
【請求項3】
前記制御装置は、第一の圧力設定値と、該第一の圧力設定値より高い第二の圧力設定値とを有し、並列運転中に前記吸込側圧力センサの検出圧力が前記第一の圧力設定値を上回ると前記変速ポンプを停止させ、前記第二の圧力設定値を上回ると前記固定速ポンプを停止すると共に、吸込圧力が低下して前記吸込側圧力センサの検出圧力が前記第二の圧力設定値を下回ると前記固定速ポンプを再始動することを特徴とする請求項2記載の直結式給水装置。
【請求項4】
水道本管に接続される複数台のポンプと、該ポンプをそれぞれ変速運転する複数の周波数変換器と、吐出側圧力センサと、吸込側圧力センサと、これら機器を制御する制御装置とを備え、複数台のポンプを並列運転する直結式給水装置であって、
前記制御装置は、並列運転中に、1台の変速ポンプを前記吐出側圧力センサの検出圧力に応じて変速運転すると共に、他の固定速ポンプを前記吸込側圧力センサの検出圧力に応じて設定される速度にて運転することを特徴とする直結式給水装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記吸込側圧力センサの検出圧力に応じて設定される速度を、該速度での締切圧力が吸込圧力の変動に拘らず一定となるように設定することを特徴とする請求項4記載の直結式給水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−8034(P2009−8034A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171517(P2007−171517)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】