説明

真偽判別可能な情報担持体

【課題】 本発明は、可視光下で観察角度を変化させることで二つの画像が視認され、更には特定の波長領域において、可視光下で視認されていた画像とは異なる画像が視認できる真偽判別用の情報担持体を提供する。
【解決手段】 基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、その印刷領域は、メタメリックペアインキを用いて、網点面積率の差異により形成された第三の画像と、その第三の画像を構成する網点を毛抜き合せで配置するためのペア画像によって、第一の画像が形成された第1の印刷層と、第1の印刷層上に、盛り上がりのある透明性のインキにより形成された画線を、配列方向を異ならせることで第二の画像が形成された第2の印刷層から成る真偽判別可能な情報担持体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、特に、可視光下で観察角度を変化させることで視認できる画像が変化する効果を有し、かつ、特定の波長領域の光を照射したり、可視光領域以外の波長の光で観察すると、可視光下で視認されていた画像とは異なる画像が視認できる偽造防止用又は真偽判別用の情報担持体に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティを要する貴重印刷物等には、新しい意匠性を持ち、かつ、偽造防止効果の高い偽造防止要素及び印刷技術が望まれている。このため、観察角度によって画像が変化するホログラム等の光学的なセキュリティ要素を貼付したもの、すなわち見た目に変化に富んだ偽造防止効果を有する印刷物や、特定の条件を満たした場合にのみ、埋め込まれた潜像画像を認証することができる秘匿性に優れた印刷物がある。
【0003】
前述のような光学的な変化を示す偽造防止印刷物は、一般的に高価、かつ、特殊な装置及び材料を必要とするため、付加的な製造工程が必要になり、コスト的にも負荷が高くなるといった問題があった。
【0004】
そこで、本出願人は、平面配向性パール顔料を用いた盛り上がりのある画線を形成し、背景情報部とメッセージ情報部で画線角度を異なる構成とすることで、斜めから観察した場合にのみ、メッセージ情報部がポジからネガへ、或いはネガからポジへ、変化して出現する効果を有する真偽判別可能な印刷物に関わる発明を出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1及び特許文献2で開示された真偽判別可能な印刷物は、基材の表面に盛り上がりのある画線構造によって、背景画像とメッセージ画像が形成され、かつ、背景画像の画線パターンとメッセージ画像の画線パターンは、異なる角度で形成されるために、拡散反射光が支配的な角度領域においては、メッセージ画像が肉眼ではほとんど視認されず、拡散反射光から正反射光が支配的な角度領域に変化するに従って、盛り上がりを有する背景画像とメッセージ画像が入射光に対してそれぞれ異なった光の反射を成す構造となり、メッセージ画像がネガ画像又はポジ画像として視認される効果を有する。
【0006】
また、これらの見た目の変化を重視した偽造防止印刷物とは逆に、一部の限られたユーザのみが認証可能な埋め込み画像を確認することができる、秘匿性に優れた偽造防止技術も同様に重要視されている。この技術の一例としては、可視光領域における観察では埋め込み画像を認知できず、ある特定の波長領域の光で観察した場合にのみ、埋め込み画像を視認できる技術がある。
【0007】
そこで、本出願人は、一つの第1の領域と、その第1の領域に隣接する一つの第2の領域とが複数組配置され、各々の第2の領域の周囲が、複数の第1の領域により囲まれ、第1の領域は、第2の領域より面積が大きく、さらに第2の領域は、赤外線吸収性色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と、赤外線吸収性色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の第2の領域における第2aの領域と第2bの領域との比率に応じて、複数の第2の領域における第2aの領域により階調画像が構成されていることを特徴とする網点印刷物を出願している(例えば、特許文献3参照)。この網点印刷物は、可視光領域における観察では埋め込み画像を視認できず、赤外線領域における観察では埋め込み画像を視認できる。したがって、目視では可視画像の中に不可視の埋め込み画像が付与されていることに気が付かないため、秘匿性を重視した偽造防止として有効な手段である。
【0008】
また、本出願人は、前述の特許文献3と同様に、特殊な網点構成又は画線構成を用いて、可視光領域における観察では、階調表現された第一の画像が視認でき、特定の波長領域においてのみ第二の画像が視認できる真偽判別可能な印刷物を出願している(例えば、特許文献4、5及び6参照)この印刷物は、特定の波長領域のみにおいて第二の画像を出現させるために、メタメリックペアインキを用いて、第二の画像の情報部と背景部を構成しているものであり、赤外線照射装置のような、特殊かつ高価な装置を用いなくても、簡易的なフィルターを用いるだけで、真偽判別が行えるという効果を奏するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3718712号公報
【特許文献2】再公表特許W02003/013871号公報
【特許文献3】特許第3544536号公報
【特許文献4】特開2008−49570号公報
【特許文献5】特開2008−68510号公報
【特許文献6】特開2008−68511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の真偽判別可能な印刷物は、斜めから観察した場合に、メッセージ部が光の入射角度に応じてネガ画像からポジ画像、あるいはポジ画像からネガ画像に変化して出現するものの、メッセージ画像以外の有意味画像を視認することができず、二つの異なる画像をスイッチさせることは不可能であった。
【0011】
また、特許文献2記載の真偽判別可能な印刷物において、特許文献1の印刷物の構造を用いて、観察者にメッセージ画像と相関のない有意味画像を視認させるために、盛り上がりを有する画線を印刷する前に、あらかじめ低濃度のインキで第1の画像を形成しておく必要があった。また、前述の低濃度の第1の画像と盛り上がりを有する画線によるメッセージ画像を鮮明にスイッチさせるために、メッセージ画像を視認される観察領域において第1の画像が消失しなければならず、そのためには、第1の画像は、明度が高い(淡い)画像とする必要があり、第1の画像の視認性を低く抑える必要があった。
【0012】
また、特許文献3に記載の真偽判別可能な印刷物は、高度な真偽判別可能な印刷物を市販のインクジェットプリンタでも手軽に作成可能な優れた発明であるが、可視画像の中に目視では視認不可能な埋め込み画像を形成するために、特殊な微細構造の網点構成を必要とし、オフセット印刷等により印刷する際、精密な刷り合わせを要することとなり、安定した品質を維持しながら大量生産をすることが困難であると共に、特殊な判別機器を用いなければ真偽判別が行えないという問題があった。
【0013】
さらに、特許文献4、5及び6については、可視光下における階調画像に対して、特定波長のみで出現する画像が埋め込まれており、簡易的なフィルターを判別具として用いるだけで、真偽判別が行えるという効果を奏するものではあるが、それでも、判別具を持ち合わせないと真偽判別ができず、どこでも、しかも誰もが真偽判別をその場で行えるというものではなかった。
【0014】
そこで、本発明は、可視光下において、第一の画像が視認され、観察角度を変化させることによって、第二の画像にスイッチして視認できるため、判別具を用いなくても一次的な真偽判別が行えると共に、さらなる信憑性を得るため、所定のフィルターを用いることで、第三の画像が視認できるという、異なる三つの観察条件において三つの画像が出現し、より高度な偽造防止効果を奏する情報担持体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の課題を解決するために、基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、印刷領域に三つの画像を備え、観察条件を異ならせることで三つの画像が視認可能となる真偽判別可能な情報担持体であって、印刷領域は、基材の色とは異なるメタメリックペアインキにより形成された第1の印刷層と、第1の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を備えた材料を含有した透明性のインキによって形成された第2の印刷層から成り、 第1の印刷層は、メタメリックペアインキのうちの第1のメタメリックインキを用いて複数の画像要素を配置して形成した第三の画像と、メタメリックペアインキのうちの第2のメタメリックインキを用いて複数の画像要素を配置して形成したペア画像から成り、第三の画像を形成する画像要素が、ペア画像を形成する画像要素内に毛抜き合せに配置されて第一の画像が形成され、第2の印刷層は、透明性のインキにより盛り上がりを有する画線が、第1の方向に複数配列された情報部と、情報部に隣接し、かつ、第1の方向とは異なる第2の方向に複数配列された背景部から成る第二の画像が形成され、基材に対して拡散反射光が支配的な観察角度領域においては第一の画像が、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域においては第二の画像が、更には特定の波長領域の光においては第三の画像がそれぞれ単独に視認されることを特徴とする真偽判別可能な情報担持体である。
【0016】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第三の画像を形成する画像要素面積率が、第一の画像を形成する最低の画像要素面積率と同じ又は小さいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第1のメタメックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値が、第2のメタメックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、第1のメタメックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値が、第2のメタメリックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値と略同一であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体における第1の印刷層は、画像要素面積率が50〜100%の範囲であり、第一の画像の情報部と背景部の画像要素面積率の差異が、10〜40%の範囲で形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第一の画像の情報部及び背景部の各画像要素面積率が、同一箇所の第三の画像の画像要素面積率とペア画像の画像要素面積率との合計と等しいことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第1の方向と第2の方向の角度の差異が、5〜90°であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第2の印刷層を形成する画線のピッチ及び画線幅が、0.06〜1mmであることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第2の印刷層を形成する透明性のインキによる画線の盛り上がりの高さが、3〜150μmであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、第三の画像を形成する画像要素が、網点、画線、画素、記号又は文字のいずれか一つ又は組合せから成ることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体は、ペア画像を形成する画像要素が、網点、画線、画素、記号、文字又はベタ模様から成り、画像要素内において、第三の画像を形成する画像要素の形状が抜かれた形状を有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の真偽判別可能な情報担持体において、第二の画像の情報部は、印刷領域内において複数配置された図柄を有し、複数配置された図柄の少なくとも二つの図柄を形成する画線が配列されている第1の方向が、背景部を形成する画線が配列されている第2の方向との差異である5〜90°の範囲内で異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、拡散光が支配的な観察角度領域においては第一の画像が、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域においては第二の画像が、更には特定の波長領域の光においては第三の画像がそれぞれ単独に視認されることから、異なる観察条件において三つの異なる画像を視認することができる。
【0027】
本発明は、盛り上がりを有する印刷方法とカラーフリップフロップ性を有するインキで形成することから、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域において、潜像となる第二の画像がポジからネガへ、あるいはネガからポジへ鮮やかな色相変化を伴って濃淡反転する効果を有している。
【0028】
本発明は、三つの画像がスイッチするにも関わらず、第1の印刷層と第2の印刷層の二つの層を形成するだけで作製でき、かつ、第1の印刷層と第2の印刷層には精密な刷り合わせを必要とせず、第1の印刷層と第2の印刷層が重なりあった印刷領域を有するだけで、その効果を発揮することが可能であることから、生産性が極めて優れている。
【0029】
さらに、本発明は、拡散反射光下で視認される第一の画像を、明度の高い(淡い)画像とする必要はなく、明度の低い(濃い)画像で形成することが可能であることから、画像の濃淡の幅が広く、濃度設計の自由度があると共に、第一の画像の視認性を高く保つことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態における情報担持体の正面図及び側面図を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における第一の画像及び第三の画像を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるペア画像を示す図である。
【図4】第三の画像とペア画像をはめ合わせるための画像要素の例を示す図である。
【図5】本発明に用いるメタメリックペアインキの光学特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における第二の画像を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における基材と第三の画像とペア画像と第二の画像の印刷順所を示す図である。
【図8】情報担持体と光源と観察者の視点との位置関係による三つの観察領域を示す図である。
【図9】拡散反射光が支配的な観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図10】拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図11】可視光のうちの特定の光のみを透過するフィルタを通して観察した場合に視認される画像を示す図である。
【図12】実施例1における情報担持体を示す図である。
【図13】実施例1における第三の画像の画像を示す図である。
【図14】実施例1におけるペア画像を示す図である。
【図15】実施例1における第一の画像を示す図である。
【図16】実施例1における第二の画像を示す図である。
【図17】実施例1において、拡散反射光が支配的な観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図18】実施例1において、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図19】実施例1において、可視光のうちの特定の光のみを透過するフィルタを通して観察した場合に視認される画像を示す図である。
【図20】実施例2における情報担持体を示す図である。
【図21】実施例2における第三の画像の画像を示す図である。
【図22】実施例2におけるペア画像を示す図である。
【図23】実施例2における第一の画像を示す図である。
【図24】実施例2における第二の画像を示す図である。
【図25】実施例2において、拡散反射光が支配的な観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図26】実施例2において、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域において観察される画像を示す図である。
【図27】実施例2において、可視光のうちの特定の光のみを透過するフィルタを通して観察した場合に視認される画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな形態が実施可能である。
【0032】
図1から図11を用いて、本発明の情報担持体の基本的な画線構成と、観察角度の違いによる第一の画像と第二の画像がスイッチして視認される原理、かつ、可視光のうちの特定の波長の光のみで視認される第三の画像の原理について説明する。
【0033】
まず、本発明の情報担持体の基本的な画線構成と層構造を説明する。図1(a)は、本発明の情報担持体(1)を示す図であり、基材(2)上に印刷領域(3)を有し、印刷領域(3)中には、後述する二つの画像を有する第1の印刷層(4)及び盛り上がりを有する複数の画線で形成された第2の印刷層(5)とが重なり合って形成されている。なお、第1の印刷層(4)と第2の印刷層(5)の関係は、図1(b)に示すように、第1の印刷層(4)の上に第2の印刷層(5)が形成されている。
【0034】
ここで、第1の印刷層(4)の構成について説明する。第1の印刷層(4)は、図2(a)に示す第一の画像(6)のアルファベット文字「A」と、図2(b)に示す第三の画像(7)のアルファベット文字「C」を有して成る。第一の画像(6)は、情報部(8)と背景部(9)から成り、第三の画像(7)も情報部(10)と背景部(11)から成る。なお、この第1の印刷層は、画像要素面積率が50〜100%の範囲で形成されている。それぞれの画像の情報部(8、10)と背景部(9,11)は、画像要素面積率の差異により区分けされている。ただし、第三の画像(7)の背景部(11)については、説明上、図2(b)のように、第三の画像(7)の情報部(10)である「C」を取り囲む六角形の枠を設けてあるため、存在しているように思えるが、この六角形の枠については、その他の要素との位置関係を明瞭にするために図示しているだけであり、実際には存在していないため、第三の画像(7)の背景部は、図3に示すように、第一の画像(6)の背景部(9)の一部及び情報部(8)の一部と共有している。
【0035】
本発明における第一の画像(6)は、前述のとおり、画像要素面積率の差異により情報部(8)と背景部(9)に区分けされているが、ここでいう画像要素面積率とは、印刷領域(3)の一定面積中に占める複数配置された画像要素(13)(画像要素の詳細については、後述する)の割合のことである。
【0036】
また、本発明における第一の画像(6)については、情報部(8)と背景部(9)の区分けをするために、一定面積中に占める複数の画像要素の割合、所謂画像要素面積率の差異が、情報部(8)と背景部(9)とで10〜40%で構成する必要がある。画像要素面積率の差異が10%よりも少ない場合は、情報部(8)と背景部(9)との濃淡の差がでず、拡散反射光が支配的な観察角度領域において、第一の画像(6)を視認することが困難となってしまう。また、画像要素面積率の差異が40%よりも多い場合は、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域において、後述する第二の画像(14)を視認することが困難となってしまう。
【0037】
本発明の情報担持体(1)は、この第一の画像(6)が、可視光下における所定の観察領域(この観察領域については、後述する)において視認される画像であり、この第一の画像(6)に対して、特定の波長領域で観察すると第三の画像(7)が視認できるものであるため、図2(a)に示す第一の画像(6)には、実際には第三の画像(7)が埋め込まれている構成となっている。
【0038】
第1の印刷層(4)は、図3に示すような、図2(a)に示した第一の画像(6)に対して、図2(b)に示した第三の画像(7)がくり抜かれたような形状(以下、「ペア画像(12)という。」に、図2(b)の第三の画像(7)を毛抜き合せによりはめ合わせて印刷して形成されている。
【0039】
第1の印刷層(4)を構成している第三の画像(7)は、網点、画線、画素、記号又は文字等の画像要素(13)、ペア画像(12)は、網点、画線、画素、記号、文字又は第三の画像(13)の画像要素がくり抜かれた形状を有するベタ模様等の画像要素(13)によって形成されている。そこで、第三の画像(7)とペア画像(12)をはめ合わせて第一の画像(6)を形成するための各画像要素(13)の例を、画線及び網点構成の例を用いて、図4により説明する。
【0040】
図4(a)は、第三の画像(7)、ペア画像(12)及び第一の画像(6)を構成する画像要素(13)が、すべて画線によって形成されたものであり、図4(a)の(イ)に示した第三の画像(7)の画像要素(13−1)を毛抜き合せで、図4(a)の(ロ)に示したペア画像(12)の画像要素(13−2)の空白領域にはめ合わせると、図4(a)の(ハ)に示した第一の画像(6)の画像要素(13−3)となる。なお、図4(a)の(ハ)においては、第三の画像(7)の画像要素(13−1)がはめ合わされた状態を説明するために、第三の画像(7)の画像要素(13−1)内の空白領域を斜線にて示しているが、実際には、図4(a)の(ニ)のように、可視光下では、第三の画像(7)の画像要素(13−1)は、第一の画像(6)の画像要素(13−3)内において区別はできない。
【0041】
したがって、第1の印刷層(4)において、第三の画像(7)が形成されていない領域は、図4(a)の(ニ)に示した第一の画像(6)の画像要素(13−3)のみで構成されており、第三の画像(7)が形成されている領域は、第三の画像(6)の画像要素(13−1)がペア画像(12)の画像要素(13−2)にはめ合わされた状態の画像要素である図4(a)の(ハ)に示した画像要素によって構成されていることとなる。
【0042】
また、同様に、図4(b)は、第三の画像(7)、ペア画像(12)及び第一の画像(6)を構成する画像要素(13)が、すべて網点により形成したものであり、第三の画像(7)の画像要素(13−1)を毛抜き合せでペア画像(12)の画像要素(13−2)にはめ合わせると第一の画像(6)の画像要素(13−3)となる。
【0043】
さらに、図4(c)は、第三の画像(7)を構成する画像要素(13−1)を網点とし、この第三の画像(7)の画像要素(13−1)がベタ模様からくり抜かれた形状を成す形状を、ペア画像(12)の画像要素(13−2)とし、ペア画像(12)の画像要素(13−2)内の空白領域に、第三の画像(7)の画像要素(13−1)をはめ合わせると第一の画像(6)の画像要素(13−3)となる。
【0044】
したがって、第三の画像(7)の画像要素がペア画像(12)の画像要素内に毛抜き合せにてはめ合わさることとなるため、ペア画像(12)の画像要素には、図4(ロ)に示すように、第三の画像(7)の画像要素の形状と等しい形状を有する空白領域を有することとなる。
【0045】
なお、図4は、第1の印刷層(4)を構成する第一の画像(6)、第三の画像(7)及びペア画像(12)の関係を説明するための1例であり、第三の画像(7)及びペア画像(12)を構成する画像要素(13)は、前述のとおり、網点、画線、画素、記号又は文字等によって形成することが可能である。ただし、画像要素(13)を記号又は文字により形成する場合、画線又は網点のような単純な形状とは異なるため、第三の画像(7)の画像要素(13−1)をペア画像(12)の画像要素(13−2)に毛抜き合せにてはめ合わせて印刷することが難しい状況となる。
【0046】
本発明の各画像の構成は、前述のとおり、その形状については三つの例の画像要素(13)の構成のみに限られるものではなく、第三の画像(7)とペア画像(12)とが毛抜き合わせで構成されて第一の画像(6)を形成可能であれば、どのような画像要素(13)を用いても問題ない。例えば、第三の画像(7)の複数の画像要素において、異なる形状の画像要素(13)を配置しても良い。ただし、前述のとおり、第三の画像(7)の画像要素(13)がペア画像(12)の画像要素(13)に毛抜き合わせにてはめ合わさることが出来なければならないため、同じ箇所に該当する第三の画像(7)の画像要素(13)とペア画像(12)の画像要素(13)内に配置される空白領域は、必ず同じ大きさ及び形状とする必要がある。
【0047】
また、これらの構成で基本となるのは、第三の画像(7)の画像要素(13−1)は、第一の画像(6)の画像要素(13−2)の内部にはめ合わさって目視上隠蔽される構成であることから、第三の画像(7)における画像要素面積率は、同一箇所における第一の画像(6)の最低の画像要素面積率を、少なくとも上回らない構成とする必要がある。この最低の画像要素面積率については、第一の画像(6)を階調画像とした場合、画像要素面積率は、その階調に合わせて画像要素面積率に範囲が生じることとなるが、その範囲内における画像要素面積率の中の最低の画像要素面積率のことである。
【0048】
ここで前述した第1の印刷層(4)を構成する第一の画像(6)、第三の画像(7)及びペア画像(12)の画像要素面積率について図2及び図3を用いて詳細に説明する。
まず、第1の印刷層(4)は、第三の画像(7)の画像要素(13)とペア画像(12)の画像要素から形成されているため、第1の印刷層(4)の画像要素面積率、いわゆる第一の画像の画像要素面積率は、第三の画像(7)の画像要素面積率と、ペア画像(12)の画像要素面積率の合計となる。これは、例えば、図2(a)の点線による丸囲みの(V)に該当する第一の画像(6)の情報部(8)の箇所の画像要素面積率は、図2(b)の第三の画像(7)の画像要素の同じ箇所に該当する(V’)の画像要素面積率と、図3のペア画像(12)の画像要素の同じ箇所に該当する(V”)の画像要素面積率の合計となり、(V)=(V’)+(V”)の関係となる。
【0049】
第一の画像(6)の(V)の箇所は、第一の画像(6)内において、情報部(8)に該当することとなるが、この箇所に該当する第三の画像(7)の(V’)の箇所は、実際には画像要素が配置されていない、所謂画像要素面積率が0の領域であるため、ペア画像(12)の(V”)の画像要素面積率と第一の画像の(V)の画像要素面積率は等しいこととなる。同様に、第一の画像(6)の(X)の箇所は、第一の画像(6)内において、背景部(9)に該当することとなるが、やはり、この箇所に該当する第三の画像(7)の(X’)の箇所は、実際には画像要素が配置されていない、所謂画像要素面積率が0の領域であるため、ペア画像(12)の(X”)の画像要素面積率と第一の画像の(X)の画像要素面積率は等しく、(X)=(X’=0)+(X”)、所謂(X)=(X”)の関係となる。
【0050】
また、第一の画像(6)の(Y)の箇所は、第一の画像(6)内において、情報部(8)に該当することとなるが、この(Y)の箇所は、第三の画像(7)の(Y’)の箇所となる情報部(10)が存在することとなり、併せて、その第三の画像(7)の画像要素が毛抜き合わせで配置される画像要素がペア画像(12)に存在する(図3参照)。したがって、第一の画像(6)の(Y)の箇所の画像要素面積率は、第三の画像(6)の画像要素面積率と、ペア画像(12)の画像要素面積率との合計となり、(Y)=(Y’)+(Y”)の関係となる。
【0051】
同様に、第一の画像(6)の(Z)の箇所は、第一の画像(6)内において、背景部(9)に該当することとなるが、この(Z)の箇所は、第三の画像(7)の(Z’)の箇所となる情報部(10)が存在することとなり、併せて、その第三の画像(7)の画像要素が毛抜き合わせで配置される画像要素がペア画像(12)に存在する(図3参照)。したがって、第一の画像(6)の(Z)の箇所の画像要素面積率は、第三の画像(6)の画像要素面積率と、ペア画像(12)の画像要素面積率との合計となり、(Z)=(Z’)+(Z”)の関係となる。
【0052】
次に、第三の画像(7)を構成する画像要素(13−1)を、ペア画像(12)を構成する画像要素(13−2)にはめ合わせて印刷することということは、第三の画像(7)を第一の画像(6)内に埋め込むとためであり、埋め込まれた第三の画像(7)は、図2(a)に示したように、肉眼では、第三の画像(7)は視認できない状態とするものであるため、単に第三の画像(7)の画像要素(13−1)を、ペア画像(12)の画像要素(13−2)にはめ合わせれば良いということではなく、互いの画像要素(13)同士を同じ色とする必要性がある。
【0053】
さらに、第三の画像(7)は、特定の波長領域のみで視認可能とする必要がある。そこで、第三の画像(7)の画像要素(13−1)とペア画像(12)の画像要素(13−2)は、色を同じとし、更に互いの特性が異なるメタメリックペアの関係を有する第1のメタメリックインキと第2のメタメリックインキを用いて形成する。ここでいう、メタメリックペアインキについて説明する。
【0054】
第1のメタメリックインキと第2のメタメリックインキの分光反射率は、可視領域内の第1の波長の範囲で近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値となる。つまり、第1のメタメリックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値は、第2のメタメリックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、第1のメタメリックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値は、第2のメタメリックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値と略同一であることが好ましい。
【0055】
図5は、本発明で使用するメタメリックペアインキである第1のメタメリックインキ及び第2のメタメリックインキの分光反射率曲線の一例である。図5の例では、第1のメタメリックインキ及び第2のメタメリイクインキの分光反射率の関係が、640〜700nm間で30%以上の分光反射率の差が生じる設計とし、400〜600nm間で20%以下の分光反射率の差が生じる設計で第1のメタメリックインキ及び第2のメタメリックインキを作製している。
【0056】
図5に示すように、660nm以上でより顕著な分光反射率の差が生じており、660〜700nmの光を透過するシャープカットフィルタ等を用いる場合、屋内の光源では透過する光量が不足してしまい、インキの反射及び吸収特性が如何に優れている場合でも、画像自体が暗く沈み、ほとんど視認することが不可能となることから、強力な光源を必要とする場合が多い。したがって、異なる色彩に視認できるための波長範囲として、640nm〜700nmにおいて約2倍以上の差を生じるメタメリックペアインキを用いる。このメタメリックペアインキを用いることで、400〜700nmまでの可視全波長では同じ色に見えるにもわらず、所定のフィルタ等が透過する特定の波長で観察した場合に色が異なって見えたり、どちらか一方のみが濃く見えることとなる。
【0057】
以下、本実施の形態では、第1のメタメリックインキをメタメリックインキAとし、第2のメタメリイクインキをメタメリックインキBとして、この二つのインキの組合せによるメタメリックペアインキを用いて説明する。このメタメリックペアインキは、400nm〜700nmで同じ色に見え、640nm〜700nmの光を透過するカットフィルタ(FUJI FILM製 シャープカットフィルタ SC64)でメタメリックインキAが淡く見え、メタメリックインキBが濃く見える特性を有する。
【0058】
本実施の形態においては、メタメリックインキAでペア画像(12)の画像要素(13−2)を、メタメリックインキBで第三の画像(7)の画像要素(13−1)を印刷しているが、逆に、メタメリックインキAで第三の画像(7)の画像要素(13−1)を、メタメリックインキBでペア画像(12)の画像要素(13−2)を印刷しても良い。
【0059】
次に、第2の印刷層(5)の構成について説明する。図6は、第一の印刷層(4)の上に形成される第二の印刷層(5)を示すものであり、アルファベットの「B」を示す情報部(15)と、その周りを取り囲む六角形の背景部(16)で構成している。また、アルファベットの「B」を示す情報部(15)は、第1の方向(S)に画線が複数配列されており、その周りを取り囲む六角形の背景部(16)は、第1の方向(S)とは異なる第2の方向(S)に画線が複数配列されて構成している。この情報部(15)と背景部(16)を合わせた画像を第二の画像(14:第二の印刷層と同じ)と呼ぶ。なお、本実施の形態では、第1の方向(S)は、基材底辺に対して垂直の方向であり、配列されている画線は、所謂横方向に引かれた状態を示し、また、第2の方向(S)は、基材底辺に対して水平の方向であり、配列されている画線は、所謂縦方向に引かれた状態を示す。
【0060】
図6に示した第2の印刷層(5)を構成している情報部(15)と背景部(16)の画線の配列方向は、垂直方向と水平方向の組合せとなっているが、これに限定されるものではなく、第1の方向(S)と第2の方向(S)は5〜90°異なっていればいい。なお、第1の方向に対して90°以上の異なる角度とは、第1の方向の始点を逆側に考えれば、やはり5〜90°の範囲ということになり、所謂第1の方向に対して±5〜90°の角度となる。そこで、本発明における第1の方向(S)と第2の方向(S)との差異は、総称して5〜90°としている。第1の方向(S)に対する第2の方向(S)の角度を5°よりも小さくすると、第二の画像(14)が視認できなくなってしまう。好ましくは、水平方向と垂直方向の90°の差を有して構成する。
【0061】
さらに、図6における第2の印刷層(5)は、情報部(15)を一つだけ配置しているが、これに限定されるものではなく、同じ第2の印刷層(5)内に複数の情報部(15)を配置して構成しても良い。この複数の情報部(15)を構成する画線の配列方向については、全て同じ配列方向としても良いが、異なる情報部(15)ごとに配列方向を異ならせても良い。この場合、前述のとおり、背景部(16)を構成している画線の配列方向とは、5〜90°の角度の差を設けていれば良いこととなる。全ての情報部(15)の配列方向を異ならせることで、入射する光に対する画線角度の違いによって、光の微妙な濃淡が生じ、変化に富んだ画像として視認することが可能となる。
【0062】
この第2の印刷層(5)を構成する各画線の画線幅及びピッチについては、0.06〜1mmの範囲で形成する。0.06mm以下で形成することは製造上困難であり、1mmを越えると解像度が低くなり過ぎてしまい、第二の画像(14)の鮮明さがなくなってしまうからである。なお、情報部(15)と背景部(16)を形成する画線の画線幅の関係については、使用するインキの色によっても異なる。
【0063】
例えば、透明インキを用いて第2の印刷層(5)を形成する場合、情報部(15)と背景部(16)の画線幅は、特に関連性はなく、前述した0.06〜1mmの範囲内であれば良い。また、半透明インキ(着色顔料が配合されている)を用いて第2の印刷層(5)を形成する場合、情報部(15)と背景部(16)の画線幅に差があると、情報部(15)と背景部(16)に濃淡が生じ、第一の画像(6)のみが本来視認される拡散反射光が支配的な観察角度においても、第二の画像(14)も混ざって視認されてしまうこととなる。したがって、半透明インキを用いる場合には、情報部(15)と背景部(16)の画線の画線幅を同じとすることが好ましい。
【0064】
また、第2の印刷層(5)を構成する各画線は、盛り上がりのある画線によって形成する。この画線の盛り上がりの高さについては、3〜150μmの範囲で形成する。3μm未満の盛り上がりで形成した場合、第二の画像(14)が視認できなくなってしまい、また、150μmより高い盛り上がりの画線を形成することは、製造上困難である。
【0065】
さらに、第2の印刷層(5)を構成する情報部(15)及び背景部(16)の各画線は、カラーフリップフロップ性を有する透明又は半透明なインキによって形成する。なお、透明又は半透明なインキを、以下「透明性のインキ」という。
【0066】
本明細書中でいう カラーフリップフロップ性とは、光が入射した場合に明暗のみが変化する明暗フリップフロップ性とは異なり、光が入射した場合に色相も変化する特性のことである。これらの特性を有する光輝性材料には、鱗片状マイカ顔料、鱗片状金属顔料、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等がある。以上が本発明の情報担持体(1)の基本的な画線構成とその層構造である。このような構成で画像を形成した場合には、光の入射角度に応じて画線中の光を強く反射する部位が変わることから、画像を光に対して傾けることで情報部(15)が強く光ったり、背景部(16)が強く光ったりすることで、第二の画像(14)がネガポジ反転して観察される。また、盛り上がりのある画線は、カラーフリップフロップ性を有することから、単なる濃淡変化だけでなく、色相変化を伴ったネガポジ反転効果となる。
【0067】
本発明に使用する透明性のインキについて、パール顔料を使用する場合、二色性パール顔料、虹彩色パール顔料又はその他の鱗片状顔料を用いても良い。パール顔料の粒子の大きさは、使用する印刷方式に応じて選択するものであるが、好ましくは1〜50μmであって、平均粒径は、5〜15μm程度が好ましい。このように、いずれのパール顔料を用いても良いが、より鱗片状顔料の配向性(リーフィング効果)を向上させるためには、3〜150μmの盛り上がっている線画の表面で顔料が配向するような処理を施すことが望ましい。具体的には、例えば特開2001−106937号公報に記載されたような撥水、撥油性処理等の表面処理を行うことで、印刷部の画線表面で顔料を配向させることができ、正反射光によるパールの干渉色をより鮮やかに出現させることが可能となる。本明細書に記載したパール顔料は、市販の顔料に対して、すべて前述の表面処理を行って用いている。
【0068】
また、印刷方式は、3μm〜150μmの盛り上がりのある画線を形成し、かつ、粒径の大きなパール顔料を使用する必要があることから、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷方式又は凹版印刷方式が好ましい。この中でも、形成する画線の高さの自由度や使用するパール顔料の粒径の許容性から、UV乾燥型のスクリーン印刷方式がより好ましい。
【0069】
図7は、本発明の情報担持体(1)を形成する印刷順を示すものであり、基材(2)に第三の画像(7)とペア画像(12)をメタメリックペアインキで印刷する。図7では、第三の画像(7)を先に印刷し、その後、ペア画像(12)を印刷しているが、第三の画像(7)とペア画像(12)の印刷に限って、印刷順は逆でも良い。
【0070】
第三の画像(7)とペア画像(12)を完全にはめ合わせてメタメリックペアインキで印刷することで、図2に示す第一の画像(6)が形成され、この時点で第三の画像(7)は、肉眼では完全に不可視となる。その後、図6に示す第二の印刷層(5)を、カラーフリップ・フロップ性を備えた材料を含む透明性のインキを用いて盛り上がりのある画線で形成することで、図1に示す本発明の情報担持体(1)が完成する。
【0071】
本発明の情報担持体(1)に関する各画像の視認原理について説明するに当たって、まず、情報担持体(1)と光源(17)及び観察者の視点(18)の位置関係について定義する。図8のように、光源(17)から入射角度45°で光が入射する場合、入射方向と反対方向と成る受光角度45°の角度が最も強い反射が生じる領域となる。この領域は、正反射が支配的な角度であり、この受光角度45°±5近傍の領域を本明細書においては観察角度領域Cと呼ぶこととし、観察角度10°〜50°及び50°〜80°の正反射光と拡散反射光が混在した領域を観察角度領域Bと呼ぶこととし、観察角度−20°〜観察角度10°の拡散反射光が支配的な角度領域を観察角度領域Aと呼ぶこととする。
【0072】
以下に本発明の情報担持体(1)の画像が変化して視認される原理について説明する。観察角度領域Aは、拡散反射光が支配的な観察角度であることから、着色材料によって形成された色彩の差が強く認識され、光沢感を認識することは難しい。このため、物体色を有しない透明性のインキで形成された第二の印刷層(5)に形成された第二の画像(14)を視認することは困難であり、本発明の印刷領域(3)の中は、基材と異なる色を有するメタメリックペアインキを用いて形成された第一の画像(6)のみが視認される。
【0073】
また、観察角度領域Bにおいては、印刷領域(3)に差し込む入射光の角度と反射する光の角度が近くなり、印刷領域(3)から生じる正反射光と拡散反射光とが混在する。このような観察角度領域においては、物体の立体構造の違いによって生じる光の反射率の差異が強く認識され、着色材料によって形成された色彩の差を認識するのは困難となる。このため、盛り上がりを有する画線で形成された第二の印刷層(5)の面構造の違い、すなわち、盛り上がりを有する画線の方向の違いが強く視認されることとなり、第二の画像(14)のみが視認されることとなる。
【0074】
加えて、第二の印刷層(5)は、カラーフリップフロップ性を有するインキで形成されているため、第二の画像(14)の画線の角度の違いによって生じる光の反射率の差異は、光の明暗の差だけでなく、色相の違いとなってより一層強調される。以上の原理によって、本発明の情報担持体(1)の印刷領域(3)中における画像が、第一の画像(6)から第二の画像(14)に変化して視認される。
【0075】
図9は、観察角度領域Aの位置にいる観察者(18)が、本発明の情報担持体(1)を観察した場合に、印刷領域(3)中に視認される画像であり、第一の画像(6)のみが視認される。図10(a)及び(b)は、観察角度領域Bの位置にいる観察者(18)が、本発明の情報担持体(1)を観察した場合に、印刷領域(3)中に視認される画像であり、第二の画像(14)のみが視認される。また、この領域中においては、入射する光に対してわずかに印刷物を傾けることで色相変化を伴う画像のネガポジ反転効果を視認することが可能となり、図10の(a)から(b)、逆の(b)から(a)へ反転する。
【0076】
観察角度領域Cにおいては、強い正反射光が入射することで印刷領域(3)中は、ほぼ無像となるが、この角度領域は、狭い上に観察角度領域Bに挟み込まれていることから、観察者が注意して観察しない限り、第二の画像(14)が見え続けているように感じられる。
【0077】
図11は、640nm〜700nmの光を透過するカットフィルタ(FUJI FILM製 シャープカットフィルタ SC64)を通して、本発明の情報担持体(1)を観察した場合に、印刷領域(3)中に視認される画像であり、メタメリックインキBで形成した第三の画像(7)の「C」の文字のみが強く視認される。
【0078】
以上の原理と効果によって、本発明の情報担持体(1)の印刷領域(3)を観察した場合には、観察角度領域Aにおいては第一の画像(6)が、観察角度領域Bにおいては第二の画像(14)が視認され、カットフィルタを用いた観察では第三の画像(7)が視認されることとなる。
【0079】
(実施例1)
以下の実施例において、可視光下で観察角度を変えることで第一の画像と第二の画像の二つの画像がスイッチし、加えて、特定のフィルタを用いて観察することで、第三の画像が視認できる構成について図5及び図12〜図19までを用いて説明する。
【0080】
図12は、本発明の実施例1における情報担持体(1’)であり、基材(2’)上に印刷領域(3’)を有し、印刷領域(3’)中には、第1の印刷層(4’)の上に、盛り上がりを有する複数の画線で形成された第2の印刷層(5’)とが重なり合って形成されている。
【0081】
図13は、第1の印刷層(4’)を形成する画像の1要素である第三の画像(7’)を示す図であり、「JPN」のアルファベット文字を形成している。図13の「JPN」のアルファベット文字である第三の画像(7’)を取り囲む六角形の枠は、その他の要素との位置関係を明瞭にするために図示しているだけであり、第三の画像(7’)には含まれない。
【0082】
図14は、第1の印刷層(4’)を形成する画像のもう一つの要素であるペア画像(12’)を示している。このペア画像(12’)と図13に示した第三の画像(7’)とをはめ合わせることで、図15に示す第一の画像(6’)が形成される。なお、実際には、各画像を構成している画像要素(13)同士をはめ合わせることとなり、そうすることで、第1の印刷層(4’)においては、第三の画像(7’)とペア画像(12’)がはめ合わさった状態となっている。本実施例1における第三の画像(7’)の「JPN」のアルファベット文字は、網点面積率45%で形成している。また、本実施例1における第三の画像(7’)とペア画像(12’)をはめ合わせて第一の画像(6’)を形成するための画像要素(13)は、図4(c)に示した方法を用いている。
【0083】
図15は、第三の画像(6’)とペア画像(12’)がはめ合わさった状態の第1の印刷層(4’)を示す図であり、「日本」の文字を形成する情報部(8’)と階調画像(流れていく桜の花びらを表した)を囲んだ六角形の背景部(9’)とで第一の画像(6’)を形成している。本実施例1において、第一の印刷層(4’)と第一の画像(6’)は同一である。第一の画像(6’)を形成する情報部(8’)の網点面積率は100%であり、背景部(9’)は、網点面積率50から80%の範囲で構成している。本実施例1における第三の画像(7’)の「JPN」のアルファベット文字は、網点面積率45%であり、第一の画像(6’)は、網点面積率50%以上で構成していることから、網点のはめ合わせの構成を用いることで第三の画像(7’)の「JPN」のアルファベット文字を第一の画像(6’)中に目視上完全に隠蔽して埋め込むことができる構成となる。
【0084】
図5に、本実施例1で用いるメタメリックペアインキの分光反射特性を示す。折れ線(19)は、メタメリックインキAの分光反射特性を示し、折れ線(20)は,メタメリックインキBの分光反射特性を示している。このメタメリックインキAとメタメリックインキBは、両インキ共に褐色のインキであって、目視上等色に感じられるにもかかわらず、図5に示すように、600nm以上の分光反射率が全く異なる特徴を有している。
【0085】
本実施例1の情報担持体(1’)を形成するに当たっては、まず、メタメリックインキAを用いて第三の画像(7’)をオフセット印刷方式により基材(2’)に印刷し、次にメタメリックインキBを用いてペア画像(12’)を重ね合わせて印刷し、第三の画像(7’)とペア画像(12’)のはめ合わせによって第一の画像(6’)を構成する。この段階で、第三の画像(7’)は第一の画像(6’)中に隠蔽され、完全に不可視となる。
【0086】
続いて、図16に示す第二の画像(14’)を、表1に示すスクリーン用パールインキにより、第一の画像(6’)の上に重ねてスクリーン印刷によって形成する。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すスクリーンインキは、カラーフリップフロップ性を有する材料として虹彩色パール顔料を用いたインキであり、本インキは、拡散反射では透明であり、正反射した場合に金色の干渉色を生じるインキである。本実施例1においては、UVスクリーン印刷で第二の画像(14’)を形成したことから、画線の高さは12μmである。ただし、画線の高さはこれに限定されるものではなく、画線高さが3μm以上あれば、本発明の成す第一の画像(6’)と第二の画像(14’)の画像のチェンジ効果や、第二の画像(14’)のネガポジ反転効果を発揮することは可能である。
【0089】
図16に示す第2の印刷層(5’)に形成された第二の画像(14’)は、桜の花びらを表した複数の情報部(15’)とそれを取り囲んだ六角形の背景部(16’)から成り、情報部(15’)と背景部(16’)の画線の角度は異なっている必要がある。本実施例1において、情報部(15’)を形成する画線は、第1の方向(S)である基材底辺に対して垂直の方向に複数配列され、背景部(16’)を形成する画線は、第2の方向(S)である基材底辺に対して水平の方向に複数配列され、それぞれの画線が直交する関係の画線で構成している。この情報部(15’)と背景部(16’)の画線の配列角度は、直交する(角度差90度)関係の場合に、第二の画像(14’)の視認性が最も高くなるが、前述したように、これに限定されるものではなく、角度差5度以上あれば第二の画像(14’)を視認することは可能であり、15度以上の角度差があることが好ましい。情報部(15’)と背景部(16’)は、いずれもピッチ0.4mm及び画線幅0.3mmの画線で構成した。
【0090】
以上の手順で作製した本実施例1の情報担持体(1’)を観察角度領域Aで観察した結果、図17に示すように、第一の画像(6’)のみが視認され、観察角度領域Bで観察した結果、図18(a)及び(b)に示すように、第二の画像(14’)のみが、その傾きによって金色の干渉色を発するパール効果を伴ってネガポジ反転しながら視認されることが確認できた。
【0091】
観察角度領域Cにおいてはほぼ無像となるが、実際には、観察角度領域Cは、その角度自体が狭く、観察角度領域Bに挟まれていることから、第二の画像(14’)が視認されて観察される結果となった。よって、可視光下の観察においては、入射光に対して、本実施例1の情報担持体(1’)の観察角度を変化させることで、第一の画像(6’)と第二の画像(14’)がスイッチして視認されることを確認できた。
【0092】
また、本情報担持体(1’)を可視光のうちの特定の波長域の光のみを透過するフィルタ(FUJI FILM製 シャープカットフィルタ SC64)を通して観察したところ、図19に示すように第三の画像(7’)が視認されることが確認できた。
【0093】
以上のように、可視光下の観察においては、入射光に対して本発明の情報担持体(1’)の角度を変化させることで豊かな諧調を有する第一の画像(6’)と第二の画像(14’)がスイッチして視認されることを確認でき、また、特定の波長域の光のみを透過するフィルタを用いて観察すると、第三の画像(7’)が視認できることが確認できた。
【0094】
(実施例2)
以下の実施例において、可視光下で観察角度を変えることで複雑な階調を有する第一の画像と第二の画像の二つの画像がスイッチし、加えて特定のフィルタを用いて観察することで複雑な階調を有する第三の画像が視認できる構成について図20から図27までを用いて説明する。図20は、本発明の実施例2における情報担持体(1’’)であり、基材(2’’)上に印刷領域(3’’)を有し、印刷領域(3’’)中には、第一の印刷層(4’’)の上に、盛り上がりを有する画線群で形成された第二の印刷層(5’’)とが重なり合って形成されている。
【0095】
図21は、第一の印刷層(4’’)を形成する画像の1要素である第三の画像(7’’)を示す図であり、正面を向いた女性の顔画像を形成している。図21の第三の画像(7’’)を取り囲む円形の枠は、その他の要素との位置関係を明瞭にするために図示しているだけであり、実際の第三の画像(7’’)には含まれない。
【0096】
図22は、第一の印刷層(4’’)を形成する画像のもう一つの要素であるペア画像(12’’)を示している。このペア画像(12’’)と図21に示した第三の画像(7’’)とをはめ合わせることで、図23に示す第一の画像(6’’)が形成される。本実施例2における第三の画像(7’’)の正面を向いた女性の顔画像は、網点面積率0%〜45%で形成している。また、本実施例2における第三の画像(7’’)とペア画像(12’’)をはめ合わせて第一の画像(6’’)を形成するための画像要素(13)は、図6(b)に示した網点構成を用いている。
【0097】
図23は、第一の印刷層(4’’)を示す図であり、「サングラスをかけた女性の横顔」を表した階調画像を形成する情報部(8’’)とそれを囲んだ円形の背景部(9’’)とで第一の画像(6’’)を形成している。本実施例2において、第一の印刷層(4’’)と第一の画像(6’’)は、同一である。
【0098】
第一の画像(6’’)を形成する情報部(8’)の網点面積率は、60%〜100%であり、背景部(9’)は、網点面積率50%で構成している。本実施例2における第三の画像(7’’)の正面を向いた女性の顔画像は、網点面積率45%以下であり、第一の画像(6’’)は、いずれの部分においても網点面積率50%以上で構成していることから、網点のはめ合わせの構成を用いることで、第三の画像(7’’)の正面を向いた女性の顔画像を第一の画像(6’’)中に、目視上完全に隠蔽して埋め込むことができる構成となる。
【0099】
本実施例2で用いるメタメリックペアインキは、実施例1で使用したインキと同じであり、実施例1同様に、メタメリックインキAとメタメリックインキBを用いる。本実施例2の情報担持体(1’’)を形成するに当たっては、まずメタメリックインキAを用いて第三の画像(7’’)をオフセット印刷方式で基材(2’’)に印刷し、次にメタメリックインキBを用いてペア画像(12’’)を重ね合わせて印刷し、第三の画像(7’’)とペア画像(12’’)のはめ合わせによって第一の画像(6’’)を構成する。この段階で第三の画像(7’’)は第一の画像(6’’)中に隠蔽され、完全に不可視となる。
【0100】
続いて、図24に示す第二の画像(14’’)を、表2に示すスクリーン用パールインキを用いて、第一の画像(6’’)の上に重ねてスクリーン印刷によって形成する。
【0101】
【表2】

【0102】
表2に示すスクリーンインキは、カラーフリップフロップ性を有する材料として虹彩色パール顔料を用いたインキであり、本インキは拡散反射では透明であり、正反射した場合に赤色の干渉色を生じるインキである。本実施例2においては、UVスクリーン印刷で第二の画像(14’’)を形成したことから、画線の高さは12μmである。
【0103】
図24に示す第二の画像(12’’)は、「Genuine」のアルファベットの文字と三つの星を表した情報部(15’’−1、15’’−2、15’’−3、15’’−4、)と、それを取り囲んだ円形の背景部(16’’)から成っている。本実施例2において、情報部は、複数配置された図柄を有しており、部分的に画線角度を変えて構成され、図柄の一つである「Genuine」のアルファベットの文字(15’’−1)は、第1の方向(S)である基材底辺に対して水平の方向に、画線を複数配列して形成し、他の図柄の星1(15’’−2)は、第1の方向(S)から30°傾斜させた角度の画線を配列して形成し、他の図柄の星2(15’’−3)は、第1の方向(S)から45°傾斜させた角度の画線を配列して形成し、他の図柄の星3(15’’−4)は、第1の方向(S)から‐30°傾斜させた角度の画線を配列して形成し、さらに背景部(16’’)は、基材底辺に対して垂直の方向である第2の方向(S)に、画線を複数配列して形成している。複数の図柄を有する情報部(15’’−1、15’’−2、15’’−3、15’’−4、)と背景部(16’’)は、いずれもピッチ0.3mm及び画線幅0.2mmの画線で構成した。
【0104】
なお、本発明における第1の方向と第2の方向については、前述したとおり、第1の方向に対して、第2の方向が5〜90°の方向差を有していれば良いため、本実施例2における複数の情報部(15’’)については、個々の情報部(15’’)の画線の配列方向が全て異なっているが、いずれも、背景部(16’’)を形成している画線の配列方向とは、5〜90°の方向差を設けて配列している。
【0105】
また、本実施例2においては、背景部(16’’)を形成している画線を第2の方向(S)としており、この第2の方向(S)と、情報部(15’’)を形成している画線を第1の方向(S)としているため、複数配置されている情報部(15’’)の画線の配列方向は、情報部(15’’−1、15’’−2、15’’−3、15’’−4、)の全ての画線の配列方向も異なっているが、第2の方向(S)と異なる方向に画線を配列することで画像を出現させるものであることから、これらの情報部(15’’−1、15’’−2、15’’−3、15’’−4、)を形成している各画線の配列方向は、全て第1の方向(S)とする。
【0106】
したがって、本発明において、第二の画像をより一層変化に富んだパール画像として表現する場合には、第二の画像の情報部を複数配置し、複数配置された情報部のうち、少なくとも二つの情報部を構成する画線の配列方向、所謂第1の方向(S)を、背景部を構成する画線が配列されている第2の方向(S)に対して、5〜90°の範囲内で異ならせて配列すれば良い。この場合、複数配置された情報部の全ての第1の方向(S)をそれぞれ異ならせても良い。
【0107】
以上の手順で作製した本実施例2の情報担持体(1’’)を観察角度領域Aで観察した結果、図25に示すように、第一の画像(6’’)のみが視認され、観察角度領域Bで観察した結果、図26(a)及び(b)に示すように、第二の画像(14’’)のみがその傾きによって赤色の干渉色を発するパール効果を伴ってネガポジ反転しながら視認されることが確認できた。第二の画像(14’’)は、「Genuine」のアルファベットの文字と三つの星を表した情報部(15’’−1、15’’−2、15’’−3、15’’−4、)は、それぞれの画線の角度が異なっていることから、入射する光に対して画線角度の違いによって生じる光の微妙な濃淡が生じ、より一層変化に富んだパール画像として視認された。
【0108】
観察角度領域Cにおいては、ほぼ無像となるが、実際には観察角度領域Cは、その角度自体が狭く、観察角度領域Bに挟まれていることから、第二の画像(14’’)が視認されて観察される結果となった。よって、可視光下の観察においては、入射光に対して本発明の情報担持体(1’’)の観察角度を変化させることで第一の画像(6’’)と第二の画像(14’’)がスイッチして視認されることを確認できた。
【0109】
また、本情報担持体(1’’)を可視光のうちの特定の波長域の光のみを透過するフィルタ(FUJI FILM製 シャープカットフィルタ SC64)を通して観察したところ、図27に示すように、第三の画像(7’’)が視認されることが確認できた。
【0110】
以上のように、可視光下の観察においては、入射光に対して本実施例2の情報担持体(1’’)の角度を変化させることで豊かな諧調を有する第一の画像(6’’)と第二の画像(14’’)がスイッチして視認されることを確認でき、また、特定の波長域の光のみを透過するフィルタを用いて観察すると、豊かな階調を有する第三の画像(7’’)が視認できることが確認できた。
【符号の説明】
【0111】
1、1’、1’’ 情報担持体
2、2’、2’’ 基材
3、3’、3’’ 印刷領域
4、4’、4’’ 第1の印刷層
5、5’、5’’ 第2の印刷層
6、6’、6’’ 第一の画像
7、7’、7’’ 第二の画像
8、8’、8’’ 第一の画像の情報部
9、9’、9’’ 第一の画像の背景部
10、10’、10’’ 第三の画像の情報部
11、11’、11’’ 第三の画像の背景部
12、12’、12’’ ペア画像
13 画像要素
14、14’、14’’ 第二の画像
15、15’、15’’ 第二の画像の情報部
16、16’、16’’ 第二の画像の背景部
17 光源
18 観察者の視点
19 メタメリックインキBの分光反射率
20 メタメリックインキAの分光反射率
A 拡散反射光が支配的な観察角度領域
B 拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域
C 正反射光が支配的な観察角度領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に印刷領域を有し、前記印刷領域に三つの画像を備え、観察条件を異ならせることで前記三つの画像が視認可能となる真偽判別可能な情報担持体であって、
前記印刷領域は、前記基材の色とは異なるメタメリックペアインキにより形成された第1の印刷層と、前記第1の印刷層の上に、カラーフリップフロップ性を備えた材料を含有した透明性のインキによって形成された第2の印刷層から成り、
前記第1の印刷層は、前記メタメリックペアインキのうちの第1のメタメリックインキを用いて複数の画像要素を配置して形成した第三の画像と、前記メタメリックペアインキのうちの第2のメタメリックインキを用いて複数の画像要素を配置して形成したペア画像から成り、前記第三の画像を形成する画像要素が、前記ペア画像を形成する画像要素内に毛抜き合せに配置されて第一の画像が形成され、
前記第2の印刷層は、前記透明性のインキにより盛り上がりを有する画線が、第1の方向に複数配列された情報部と、前記情報部に隣接し、かつ、前記第1の方向とは異なる第2の方向に複数配列された背景部から成る第二の画像が形成され、
前記基材に対して拡散反射光が支配的な観察角度領域においては第一の画像が、拡散反射光と正反射光が混在する観察角度領域においては第二の画像が、更には特定の波長領域の光においては第三の画像がそれぞれ単独に視認されることを特徴とする真偽判別可能な情報担持体。
【請求項2】
前記第三の画像を形成する画像要素面積率は、前記第一の画像を形成する最低の画像要素面積率と同じ又は小さいことを特徴とする請求項1記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項3】
前記第1の印刷層は、画像要素面積率が50〜100%の範囲で形成されていることを特徴とする請求項1又は2記際の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項4】
前記第1のメタメックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値は、前記第2のメタメックインキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、前記第1のメタメックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値は、前記第2のメタメリックインキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値と略同一であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項5】
前記第一の画像の情報部と背景部の画像要素面積率の差異は、10〜40%の範囲で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項6】
前記第一の画像の情報部及び背景部の各画像要素面積率は、同一箇所の前記第三の画像の画像要素面積率と前記ペア画像の画像要素面積率との合計と等しいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項7】
前記第1の方向と前記第2の方向の角度の差異は、5〜90°であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項8】
前記第2の印刷層を形成する画線のピッチ及び画線幅は、0.06〜1mmであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項9】
前記第2の印刷層を形成する透明性のインキによる画線の盛り上がりの高さは、3〜150μmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項10】
前記第三の画像を形成する画像要素は、網点、画線、画素、記号又は文字のいずれか一つ又は組合せから成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項11】
前記ペア画像を形成する画像要素は、網点、画線、画素、記号、文字又はベタ模様から成り、前記画像要素内において、前記第三の画像を形成する画像要素の形状が抜かれた形状を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。
【請求項12】
前記第二の画像の情報部は、前記印刷領域内において複数配置された図柄を有し、前記複数配置された図柄の少なくとも二つの図柄を形成する画線が配列されている前記第1の方向が、前記背景部を形成する画線が配列されている前記第2の方向との差異である5〜90°の範囲内で異なっていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の真偽判別可能な情報担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−269476(P2010−269476A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121478(P2009−121478)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】